説明

オーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法、装置および溶融金属鍍金鋼板の製造方法、装置

【課題】 溶接部位以外の急峻な幅違い部位がバッフルプレートを通過する時に起こり得る、設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することができる。
【解決手段】 溶融金属鍍金浴中から鋼板1を連続的に引き上げて、鋼板1に金属鍍金液を付着させる際に、金属鍍金液を鋼板1の幅方向に亘って均一に付着させるための、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置において、バッフルプレート3の連続鍍金ライン上流側に設けられた板幅検出装置4と、鋼板1の移動距離を検出するブライドルロール回転検出器8と、ライン運転を制御するラインコントローラと、コントロール装置とを備え、前記コントロール装置は、板幅検出装置4による板幅測定値に基づいて、鋼板1の幅違いの有無を判断し、この判断結果に基づいて、バッフルプレート3の開閉指令を発し、前記開閉指令を発するタイミングは、前記ブライドルロール回転検出器8により検出される幅違い部位の位置に基づいて決定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼板の連続鍍金設備において、金属鍍金液の鋼板への付着量を開閉可能なバッフルプレートにより板幅方向に均一化させる際に、鋼板の急峻な幅違い部位がバッフルプレートを通過することにより生じる設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することができる、オーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法、装置およびこの開閉制御方法、装置を用いた溶融金属鍍金鋼板の製造方法、装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鋼板の連続鍍金設備において、金属鍍金液の鋼板への付着量を開閉可能なバッフルプレートにより板幅方向に均一化させる際に、鋼板の幅違い部位がバッフルプレートを通過することにより生じる設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することを目的とした、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置が特許文献1(特公昭52−43457号)に開示されている。以下、この装置を従来装置という。
【0003】
上記従来装置は、図4に示すように、鋼板1の端部と接触するタッチロール2をバッフルプレート3と連動して設け、板幅変動に応じてバッフルプレート3を開閉させるものである。
【0004】
この従来装置によれば、タッチロール2とバッフルプレート3とが連動しているので、板幅変動に応じてバッフルプレート3が開閉し、この結果、連続鍍金時における鋼板端部のオーバーコートが防止される。
【0005】
【特許文献1】特開昭52−43457号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来装置は、次のような問題があった。すなわち、従来装置のバッフルプレート3は、緩やかな板幅変動に対しては追従するが、急峻な板幅変動部位、すなわち、急峻な幅違い部位がバッフルプレート3を通過する際には、バッフルプレート3の設置位置が鍍金槽の直上にあることもあり、バッフルプレート3の開動作(退避動作)が間に合わず、バッフルプレート3が鋼板1に引っかかる等の事態が発生し、これによって、設備破損および鋼板亀裂破断を起こす恐れがあった。
【0007】
急峻な幅違い部位は、鋼板の連続鍍金に際して、板幅の異なるコイルを順次、溶接する場合の溶接部位以外に、次のような場合に発生する。すなわち、鋼板のエッジ部分に欠陥等があって、その欠陥を残したまま通板すると、それ以降の圧延工程によってライントラブルが発生する。従って、この場合には、欠陥を検出した時点で、手動によりエッジ部にある欠陥部の周辺をカットしていた。これによって、カットした部分が急峻な幅違い部位となる。
【0008】
なお、溶接部位については、ライン運転を制御している装置からの信号を元に自動開閉を行っていたことにより、上述のような問題はなかった。
【0009】
従って、この発明の目的は、開閉可能なバッフルプレートの連続鍍金ライン上流側に、板幅検出装置を設置して、板幅を連続的に測定し、幅違いが発生した部位を判断し、次に、この幅違い情報をトラッキングして、バッフルプレート位置の手前の所定距離の位置でバッフルプレートを自動的に開き、そして、所定距離、通過後に自動的に閉じ、かくして、鋼板の急峻な幅違い部位がバッフルプレートを通過することにより生じる設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することができる、オーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法、装置およびこの開閉制御方法、装置を用いた溶融金属鍍金鋼板の製造方法、装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであって、下記を特徴とするものである。
【0011】
請求項1記載の発明は、溶融金属鍍金浴中から鋼板を連続的に引き上げて、前記鋼板に金属鍍金液を付着させる際に、前記金属鍍金液を前記鋼板の幅方向に亘って均一に付着させるための、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法において、前記バッフルプレートの連続鍍金ライン上流側に、板幅検出装置を設置し、前記板幅検出装置により前記鋼板の急峻な幅違いが発生した部位を検出し、その部位の位置をトラッキングして、前記急峻な幅違い部位が前記バッフルプレートを通過するタイミングに合わせて、前記バッフルプレートの開閉を制御することに特徴を有するものである。
【0012】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明において、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートによって、鋼板への金属鍍金液の付着量を、鋼板の幅方向に亘って均一化させる鍍金付着量制御工程を含み、前記鍍金付着量制御工程において、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法を用いることに特徴を有するものである。
【0013】
請求項3記載の発明は、溶融金属鍍金浴中から鋼板を連続的に引き上げて、前記鋼板に金属鍍金液を付着させる際に、前記金属鍍金液を前記鋼板の幅方向に亘って均一に付着させるための、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置において、前記バッフルプレートの連続鍍金ライン上流側に設けられた板幅検出装置と、前記鋼板の移動距離を検出する通板ロール回転検出器と、ライン運転を制御するラインコントローラと、コントロール装置とを備え、前記コントロール装置は、前記板幅検出装置による板幅測定値に基づいて、前記鋼板の幅違いの有無を判断し、この判断結果に基づいて、前記バッフルプレートの開閉指令を発し、前記開閉指令を発するタイミングは、前記通板ロール回転検出器により検出される前記幅違い部位の位置に基づいて決定することに特徴を有するものである。
【0014】
請求項4記載の発明は、請求項3記載の発明において、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートによって、鋼板への金属鍍金液の付着量を、鋼板の幅方向に亘って均一化させる鍍金付着量制御工程を含み、前記鍍金付着量制御工程において、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置を用いることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明によれば、溶接部位以外の急峻な幅違い部位がバッフルプレートを通過する時に起こり得る、設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明の一実施形態を、図面を参照しながら説明する。
【0017】
図1は、この発明を適用した鋼板の連続鍍金設備の構成図、図2は、この発明の制御装置を示すブロック図、図3は、この発明のコントロール装置による制御処理を示すフローチャートである。
【0018】
この発明の開閉可能なバッフルプレートの開閉制御装置を用いた、溶融金属鍍金鋼板の製造装置は、図1に示すような鋼板1の連続鍍金設備において、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレート3の連続鍍金ライン上流側に設置した、CCDカメラ5および照明6を備えた板幅検出装置4により板幅を高速で連続的に測定し、図2に示すように、この板幅測定データをコントロール装置7に取り込む。そして、コントロール装置7よって、板幅現在値と平均処理して求めていた板幅前回値とを比較し、測定板幅の違いを判定する。また、板幅検出装置4の下流側に設けたブライドルロール回転検出器8からの信号も合わせてコントロール装置7に取り込む。そして、測定板幅に違いがあった時には、その位置データを順次トラッキングする。
【0019】
また、工場操作員がいる監視操作装置9からバッフルプレート3の開閉動作所要時間を考慮して、バッフルプレート3の開閉タイミング(α、β)を設定する。そして、幅違い部位がバッフルプレート3の手前αmに到達したら、バッフルプレート3を開閉させる電磁弁10に自動で開指令を出力して、バッフルプレート3を開く。次に、閉タイミング位置であるバッフルプレート通過後βmに到達したら、自動で閉指令を出力して、バッフルプレート3を閉じる。なお、溶接部については、既設ラインコントローラからの信号により同様に開閉させる。
【0020】
上述したように、この発明の開閉制御装置の全体をコントロールするコントロール装置7には、板幅検出装置4、バッフルプレート3の開閉を行う開閉用電磁弁10、作業者が操作する運転室の監視操作装置9、鋼板1の移動距離を検出する通板ロール回転検出器としてのブライドルロール回転検出器8、および、ライン運転を制御するラインコントローラ11が接続されている。
【0021】
監視操作装置9は、板幅検出装置4によって検出された鋼板1の幅違い部位の存在や、幅違い部位の接近によりバッフルプレート3の開閉を行っていることを、運転室にいる操作員に知らせる。また、操作員によってマニュアル運転を行うことも可能である。
【0022】
鋼板1の幅違い部位の検出は、次にようにして行われる。すなわち、板幅検出装置4により鋼板1の板幅を常時測定し、一定距離の移動量に対して、板幅の変化量が所定値以上となった場合、例えば、搬送方向への移動量10mmに対して、板幅の変化量が10mm以上となった場合に、鋼板1の幅違いがあったと判断する。
【0023】
なお、板幅検出装置4は、水平方向に搬送される鋼板1に対して、鋼板1の鉛直方向下側に、板幅より長い蛍光灯等の線状光源を備えた照明6を設け、鉛直上方にCCDカメラ5を設け、鋼板1に遮られる光の領域により、鋼板1の幅を測定する方式のものであるが、鋼板1の幅を測定できるものであれば、その方式は問わない。
【0024】
ラインコントローラ11は、ライン運転を制御しており、PLGを備えたブライドルロール回転検出器8からの信号に基づいて、搬送される鋼板1の位置の管理も行っている。この例では、板幅検出装置4が設置されている近辺(ライン下流側)に、PLGを備えたブライドルロール回転検出器8を設置し、その信号を入力し、鋼板1の位置を管理している。
【0025】
コントロール装置7も同様に、ブライドルロール回転検出器8からの信号を入力する。板幅検出装置4により検出された幅違い部がバッフルプレート3の位置に来ているか否かは、予め、板幅検出装置4とバッフルプレート3との間隔となる距離を測定しておき、板幅検出装置4により検出された後、その間隔に相当する長さを移動したら、バッフルプレート3に到達すると判断する。また、ラインコントローラ11から溶接部位情報をコントロール装置7に入力し、溶接部位前後でのバッフルプレート3の開閉を制御している。これは、同幅の溶接部位では、幅違いがなく、板幅検出器4では検出できないからである。
【0026】
コントロール装置7は、幅違い部位がバッフルプレート3に近づいた時点、例えば、数m手前で開閉用電磁弁10にバッフルプレート開信号を出力して、バッフルプレート3と鋼板1が衝突しないようにする。
【0027】
図3を参照しながら、この発明のコントロール装置7による制御処理フローを説明する。
【0028】
板幅検出装置4により測定された鋼板1の板幅現在値がコントロール装置7に入力されると、板幅前回値と比較される。なお、板幅前回値は、板幅検出装置4からの測定値一点ずつをメモリ等の記憶装置に格納する。そして、平均化処理を行う。このように、板幅前回値を求めるのに平均化処理を行う理由は、次の通りである。板幅前回値は、板幅現在値との比較のための参照値であることから、基本的には一点のみの代表板幅前回値で良いが、この代表板幅前回値に測定誤差があると、板幅現在値と比較した上で行うバッフルプレート3の開閉制御が良好に行えない。この問題を回避するために数点、または数十点の板幅前回値の平均化処理を行って、データ処理の信頼性を高めるためである。なお、板幅の測定誤差は、鋼板エッジの反射やラインノイズ等の影響により生じる。
【0029】
そして、このように算出された板幅前回値と、板幅現在値とを比較し、その差が所定の量より大きいかどうかを判断して、幅違いの有無を判断する。
【0030】
もし、幅違いが有ると判断された場合には、搬送される鋼板1の位置を管理するトラッキング処理がスタートする。なお、板幅が変化している場合、すなわち、板幅が狭くなっていく状態あるいは広がっていく状態の場合は、バッフルプレート3を開状態にすると判断し、一方、幅の変化量が所定値より小さくなった場合には、正常な板幅となったとし、バッフルプレート3を閉状態にすると判断する。その開閉判断の結果と、トラッキング情報によって、バッフルプレート3の近辺に、例えば、数m手前に幅違い部位が来たら、開指令を電磁弁10に出力し、そして、正常な板幅に戻ったら閉指令を出力する。なお、幅違い部位が到達する手前、どこの位置(αm)で開状態とするか、通過後、どこの位置(βm)で閉状態とするかは、監視操作装置9から操作者によって設定を変更することができるようになっている。
【0031】
以上のように、この発明によれば、板幅検出装置4による鋼板の板幅測定値に基づきバッフルプレート3の開閉を制御することによって、溶接部位以外の急峻な幅違い部位がバッフルプレートを通過する場合に起こり得る、設備破損や鋼板亀裂破断を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】この発明を適用した鋼板の連続鍍金設備の構成図である。
【図2】この発明の制御装置を示すブロック図である。
【図3】この発明のコントロール装置による制御処理を示すフローチャートである。
【図4】従来装置の概略斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1:鋼板
2:タッチロール
3:バッフルプレート
4:板幅検出装置
5:CCDカメラ
6:照明
7:コントロール装置
8:ブライドルロール回転検出器
9:監視操作装置
10:電磁弁
11:ラインコントローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融金属鍍金浴中から鋼板を連続的に引き上げて、前記鋼板に金属鍍金液を付着させる際に、前記金属鍍金液を前記鋼板の幅方向に亘って均一に付着させるための、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法において、
前記バッフルプレートの連続鍍金ライン上流側に、板幅検出装置を設置し、前記板幅検出装置により前記鋼板の急峻な幅違いが発生した部位を検出し、その部位の位置をトラッキングして、前記急峻な幅違い部位が前記バッフルプレートを通過するタイミングに合わせて、前記バッフルプレートの開閉を制御することを特徴とする、オーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法。
【請求項2】
開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートによって、前記鋼板への金属鍍金液の付着量を、前記鋼板の幅方向に亘って均一化させる鍍金付着量制御工程を含み、前記鍍金付着量制御工程において、請求項1記載の、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御方法を用いることを特徴とする、溶融金属鍍金鋼板の製造方法。
【請求項3】
溶融金属鍍金浴中から鋼板を連続的に引き上げて、前記鋼板に金属鍍金液を付着させる際に、前記金属鍍金液を前記鋼板の幅方向に亘って均一に付着させるための、開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置において、
前記バッフルプレートの連続鍍金ライン上流側に設けられた板幅検出装置と、前記鋼板の移動距離を検出する通板ロール回転検出器と、ライン運転を制御するラインコントローラと、コントロール装置とを備え、前記コントロール装置は、前記板幅検出装置による板幅測定値に基づいて、前記鋼板の幅違いの有無を判断し、この判断結果に基づいて、前記バッフルプレートの開閉指令を発し、前記開閉指令を発するタイミングは、前記通板ロール回転検出器により検出される前記幅違い部位の位置に基づいて決定することを特徴とする、オーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置。
【請求項4】
開閉可能なオーバーコート防止用バッフルプレートによって、前記鋼板への金属鍍金液の付着量を、前記鋼板の幅方向に亘って均一化させる鍍金付着量制御工程を含み、前記鍍金付着量制御工程において、請求項3記載の、鋼板端部のオーバーコート防止用バッフルプレートの開閉制御装置を用いることを特徴とする、溶融金属鍍金鋼板の製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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