説明

オープナーキャップ

【課題】内容物を飛散させずに開口予定部のフィルムを容易に開封することができる安全性の高いオープナーキャップを提供することである。
【解決手段】缶本体10とスクリューキャップ20をネジ締結し、スクリューキャップ20とオープナー30を、スクリューキャップ20が締まる方向に一体となって回転するようにラチェット結合する。なお、環状刃34の刃角は、スクリューキャップ20が緩む方向の刃角が締まる方向の刃角に対し緩くなるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アルミ箔層を含む多層フィルム等で密閉された容器を開封し且つ開封後の密封を維持するオープナー付きキャップ、特に内容物を飛散させずに開口予定部のフィルムを容易に開封することができる安全性の高いオープナーキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
レギュラーコーヒー等を収容する容器(缶)は、開封された後もオーバーキャップによって密封されながら繰り返し使用される。このような缶の中には、缶上蓋の開口予定部が環状カール部によって仕切られ、その環状カール部内側を、アルミニウム箔層を含むガスバリア性の多層合成樹脂フィルムによって缶蓋裏面から密に封止した缶が知られている。このような缶の上蓋のフィルムを切り取り開封する方法として、オーバーキャップの下部内周面に雌ネジを、缶本体の上部外周面に雄ネジをそれぞれ形成し、更にはオーバーキャップの天板裏面に折り畳まれた状態のカッターを装着し、カッターを引き起こした後オーバーキャップを缶本体にねじ込むことによって、オーバーキャップが回転しながら下方に変位し、カッターがフィルムを突き刺し円形に切り取るように構成されたスクリュー式の切断方法が知られている(例えば、特許文献1を参照。)。このようなスクリュー式のオーバーキャップオープナーでは、カッターは折り畳まれた状態でオーバーキャップに装着されていて開封時に指先で引き起こす必要があり、また一旦引き起こした後は常時、オーバーキャップ天板裏面から突出した状態であるため、ユーザがオーバーキャップを開閉して使用する際にカッターによって指が傷つけられる危険性がある。
【0003】
一方、オーバーキャップと別途に環状の刃を有する環状カッターからなるオープナーを形成し、開封に際してオープナーを指で把持して環状刃をフィルムに対し直接に突き刺してその状態でオープナーを直接回転させることによってフィルムを円形に切り取る環状カッターと打栓式オーバーキャップを組合わせたものも提案されている(例えば、特許文献2、3を参照。)。このような環状カッターによるもののうち、特許文献2に記載のものは、フィルム開封後、オープナーは環状刃がオーバーキャップの天板裏面に向いた姿勢でオーバーキャップ内側に収納される形式のものであり、特許文献3に記載のものはフィルム切断後にオープナーをオーバーキャップ内側に収納するのではなく、フィルムを切断した後は、オープナーを缶上蓋の環状カール部に嵌合した状態(すなわち環状刃が缶本体の内部に向いた状態)で残留させる形式のものである。これらのものは、開封後には環状刃は表に露出しなくなるため、オーバーキャップを缶本体から取り外す際に環状刃によって指を負傷する危険性は解消できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−168318号公報
【特許文献2】特開2006−27732号公報
【特許文献3】特開2010−30620号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の環状カッター(オープナー)による開封は、何れもオープナー自体を指で把持して、環状刃をフィルムに押し込み、次いで回転させてフィルム片を円形に切開して開口することにより行なう。しかしながら、オープナーの把持部は缶上蓋の環状カール部程度の外径しか有しておらず、ユーザが掴む部位が十分ではなく、オープナーに力をかけにくく、その結果フィルムの開封操作がしにくいという問題があった。また、上記容器が例えば、レギュラーコーヒー缶等で内容物の酸化防止用として不活性ガスが充填され、あるいは内容物のコーヒーから放出される炭酸ガスも加わって、缶内圧が大気圧より高く設定されたいわゆる陽圧缶である場合、上記従来の環状オープナーでの開封は、オープナーの環状刃をフィルムに押し込む際、不活性ガスの吹き出しと共に内容物が外部に飛散するという問題があった。
そこで、本発明は、かかる従来技術の問題点に鑑みなされたものであって、解決しようとする課題は、把持が容易で力がかけ易く開口予定部のフィルムを容易に、且つ内容物を飛散させずに開封することができる安全性の高いオープナーキャップを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記目的を達成するための請求項1に記載のオープナーキャップは、缶本体の側面上部に形成された雄ネジに結合する雌ネジを備えた半円錐状または円筒状のスクリューキャップと、前記缶本体の上蓋に形成された開口予定部としてのフィルムを切り裂く環状刃を備え、該フィルム開封後に前記上蓋の開口に残留するオープナーとの組合せからなり、前記スクリューキャップの天板裏面に形成された円筒リブの開口端部と、前記環状刃と反対側の前記オープナーの開口端部には、前記スクリューキャップが締まる方向にのみ互いに噛み合う上部ラチェット歯、下部ラチェット歯がそれぞれ形成されていることを特徴とするものである。
上記オープナーキャップでは、スクリューキャップとオープナーは、スクリューキャップが締まる方向、すなわちスクリューキャップが缶本体にねじ込まれる方向にのみ一体となって回転・降下するラチェット結合を構成している。
そのため、従来の環状カッター(オープナー)単独を回転させて開封する機構と相違して、スクリューキャップを缶本体に締まる方向に回転させることにより、オープナーの環状刃が缶上蓋のフィルムを突き刺しながら円形に切り裂いて、缶上蓋に開口を形成することになる。
【0007】
請求項2に記載のオープナーキャップでは、前記スクリューキャップの雌ネジと前記缶本体の雄ネジが噛み合い開始後に遅れて、前記上部ラチェット歯と前記下部ラチェット歯が噛み合うように構成されていることとした。
【0008】
請求項3に記載のオープナーキャップでは、前記スクリューキャップの上部ラチェット歯と前記オープナーの下部ラチェット歯は、全周に渡って互いに当接できる関係に形成されていることとした。
【0009】
請求項4に記載のオープナーキャップでは、前記オープナーの最大包絡径は、前記スクリューキャップの雌ネジの山部の最小内径よりわずかに小さくしていることとした。
【0010】
請求項5に記載のオープナーキャップでは、前記オープナーの環状刃は、前記スクリューキャップの緩む方向の刃角が同締まる方向の刃角に対し小さくなっている左右非対称刃であることとした。
【発明の効果】
【0011】
請求項1に記載の本発明のオープナーキャップは、缶本体とスクリューキャップはネジ締結すると共に、スクリューキャップとオープナーはスクリューキャップが締まる方向にのみ一体となって回転するラチェット結合を成すように構成されているので、フィルムの開封操作においてスクリューキャップを缶本体にねじ込むだけで、オープナーが缶上蓋のフィルムを円形に切り取るようになる。従って、開封操作において、ユーザの把持部分はスクリューキャップとなるため、従来のオープナー単体を回すよりも把持部分を大きく且つ回転半径を大きく確保することができ、スクリューキャップを回す時に力をかけやすくなり、フィルムの開封操作が容易となる。
さらに、このフィルムの開封操作は、スクリューキャップを缶上蓋に被せた状態で行われることになるため、開封する際に内容物がスクリューキャップの外部に飛散することがない。
更に、オープナーはフィルム開封後に缶上蓋の開口に残留することになるが、スクリューキャップが緩む方向には双方のラチェット歯は噛み合うことはないため、ユーザがスクリューキャップを缶本体から取り外す場合であっても、オープナーが缶本体から外れることはない。従って、フィルム開封後は、オープナーは常時刃を缶本体内部に向けた姿勢で缶蓋の開口に残留することになり、フィルムの切り取り縁を覆うことになるため、ユーザが使用中に指を傷つけられる危険性が小さくなり安全である。
【0012】
また、請求項2に記載の発明によれば、上記効果に加えさらに、スクリューキャップが缶本体にネジ締結開始後に遅れてスクリューキャップとオープナーがラチェット結合を成すように構成されていることにより、先ずスクリューキャップと缶本体がネジ結合することによって、オープナーがフィルムを開封する際の基準となるスクリューキャップの軸芯が決定され、遅れてスクリューキャップとオープナーがラチェット結合することによりオープナーの軸芯が決定されることにより、スクリューキャップを缶本体にねじ込むことだけで、オープナーの芯出しが好適になされ、オープナーによるフィルムの開封が安定かつ正確に成されるようになる。
【0013】
更に、請求項3に記載の発明によれば、上記ラチェット結合は、全周に渡って互いに当接するように構成されていることにより、フィルムの開封操作を安定して行うことができるようになることに加えて、スクリューキャップを缶本体にねじ込むことにより、上記ラチェット結合部、ならびにオープナーと缶上蓋開口部との接合部がシール部となり、缶本体を密封するようになる。これにより、フィルム開封後において、缶本体の密封性(リシール性)が保持されるようになる。その結果、例えば缶が横倒しになった場合であっても内容物が缶蓋上にこぼれることがなくなる。
【0014】
更にまた請求項4の発明によれば、前記オープナーの最大包絡径は、前記スクリューキャップの雌ネジの山部の最小内径より僅かに小さくなるように構成されている。これにより、オープナーの軸芯がスクリューキャップの軸芯に対しずれてセットされた場合であっても、オープナーのはみ出した部位に、スクリューキャップの雌ネジの何れかの(ねじ)山部が当たることにより、オープナーの軸芯のズレを補正してオープナーは正しい位置に戻すように作用する。
【0015】
また、請求項5の発明によれば、オープナーの環状刃は締め付け方向と反対側の刃角が小さくなっているため、締め付け方向の刃(前方刃)が切り裂いたフィルムの切り口を、緩む方向の刃(後方刃)がトレースして塞ぐことになり、フィルム開封操作の際、内容物の外部への飛散を好適に抑制するようになる。また、刃を左右非対称刃とすることにより、結果的に刃は周方向に長くなり強度に余裕が生じることになる。従って、刃を薄くしても元の強度が保持されることになる。つまり、刃を薄くして切り裂き性を良好にするとともに材料の使用量を低減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の実施形態に係るオープナーキャップを缶本体に装着して開封開始時における断面説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るスクリューキャップを示し、(a)は断面図、(b)は底面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るオープナーを示し、(a)は平面図、(b)はそのA−A断面図、(c)は正面図である。
【図4】本発明の実施形態に係るオープナーキャップを缶本体に装着した工場出荷時(未使用)の状態における断面説明図である。
【図5】容器のフィルム開封操作工程におけるオープナーキャップを示す断面説明図である。
【図6】オープナーに対する軸芯のズレの補正を示す断面説明図である。
【図7】フィルム開封後のオープナーキャップを示す断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図に示す実施の形態により本発明をさらに詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態に係るオープナーキャップ100を示す要部断面説明図である。なお、この図は、オープナー30が缶本体10のフィルム12を開封する直前の状態(フィルム開封直前)を示している。
本発明のオープナーキャップ100は、缶本体10にネジ締結してリシール可能に缶本体10の上蓋全体を繰り返し覆うと共に、オープナー30とラチェット結合してフィルム開封の際にはユーザの回転力をオープナー30に伝達し、フィルム開封後はオープナー30と協働してシール機能を発揮するスクリューキャップ20と、フィルム開封の際にはスクリューキャップ20とラチェット結合し一体となって回転・降下しながら缶本体10のフィルム12を円形に切り裂き、フィルム開封後は缶上蓋の開口(環状カール部11)に係止して残留するオープナー30とから構成される。
【0018】
缶本体10は、その構成は特に限定されるものではないが、本実施形態では缶蓋、缶胴および缶底(図示せず)から成る3ピース缶で、缶蓋と缶胴、あるいは缶底と缶胴は、外周端部においてそれぞれ二重巻締めされて気密に接合されている。また、缶本体10は、いわゆる陽圧缶で内容物の酸化防止用に不活性ガス(例えば、窒素ガスや炭酸ガスなど)が封入され、その内圧が大気圧より若干高く設定されている。また、缶上蓋の開口部である環状カール部11の内側部分(開口予定部)は、アルミニウム箔層を含むガスバリア性の多層合成樹脂フィルム(フィルム12)によって缶上蓋の裏面から密に封止されている。このフィルム12は、内部の不活性ガスによってドーム上に膨らんでいる。後述するようにユーザがスクリューキャップ20を缶本体10にねじ込むことにより、スクリューキャップ20と締まる方向にラチェット結合するオープナー30が一体となって回転・降下し、フィルム12はオープナー30の環状刃によって円形に切り裂かれることになる。
【0019】
缶本体10の上部外周面には、スクリューキャップ20の雌ネジと結合する雄ネジ13が形成されている。従って、スクリューキャップ20を上から見て時計方向(ネジが締まる方向)に回すことにより、スクリューキャップ20が缶本体10に対し軸芯を一定に保持したまま下方に変位することになる。その結果、後述するように、締まる方向にラチェット結合するオープナー30もスクリューキャップ20と一体となって回転し軸芯を一定に保持したまま下方に変位し、缶本体10のフィルム12を突き刺し、フィルム12を円形に切り裂くことになる。このように、ユーザがスクリューキャップ20を缶本体10にネジ込むことにより、フィルム開封時のオープナー30の芯出しが好適に成され、オープナー30によるフィルム12の開封が安定かつ正確に成されることになる。
【0020】
図2は、本発明の実施形態に係るスクリューキャップ20を示す説明図である。
図2(a)に示すように、スクリューキャップ20の天板裏面には円筒リブ21が形成され、その開口端部には後述するオープナー30の下部ラチェット歯32と係合する上部ラチェット歯22が形成されている。下部内周面には缶本体10の雄ネジ13と結合する雌ネジ23が形成されている。
【0021】
また、上部内周面には使用前(工場出荷時)においてオープナー30を逆向き状態でキャップ内部に安全に収納・係止するためのオープナー嵌合環状溝24が形成されている(図4を参照。)。また、その下方には、フィルム開封時にオープナー30が当接するオープナー当接テーパ面25が形成されている(図1を参照。)。このオープナー当接テーパ面25は、スクリューキャップ20が缶本体10にねじ込まれる際、スクリューキャップ20とオープナー30のラチェット結合を安定させる。
【0022】
上部ラチェット歯22は、各ラチェット歯が傾斜面22aと垂直面22bから成り、本実施形態では図2(b)に示すように、8個のラチェット歯から成る。スクリューキャップ20が時計方向(締まる方向)に回転する時に垂直面22bはオープナー30の下部ラチェット歯32の垂直面32bと噛み合いスクリューキャップ20とオープナー30は一体となって回転する一方、反時計方向(緩む方向)に回転する時には傾斜面22aとオープナー30の下部ラチェット歯32の傾斜面32aが互いに滑り合って、スクリューキャップ20とオープナー30は一体となって回転することはない。
【0023】
また、上部ラチェット歯22は、オープナー30の下部ラチェット歯32と円筒リブ21の全周に渡って当接し、オープナー30と環状カール部11との接合部(図7を参照。)と併せて、フィルム開封後において缶本体10から内容物がこぼれ出るのを好適に防止することになる。
【0024】
図3は、本発明の実施形態に係るオープナー30を示す説明図である。
図3(a)に示すように、外周端部の3箇所にスクリューキャップ20に嵌合するキャップ嵌合凸部31が形成されている。このキャップ嵌合凸部31は、使用前(工場出荷時)においては、オープナーが天地逆向き状態でスクリューキャップ20のオープナー嵌合環状溝24に嵌合し、オープナー30をスクリューキャップ20の内部に収納する際のオープナー30の姿勢を好適に安定させる。他方、フィルム開封時においてはスクリューキャップ20のオープナー当接テーパ面25に当接し、スクリューキャップ20を缶本体10にねじ込む際のオープナー30とスクリューキャップ20のラチェット結合を好適に安定させる。
【0025】
図3(b)に示すように、オープナー30の開口端部の一方(開封操作時の上方側)には、スクリューキャップ20の上部ラチェット歯22と係合する下部ラチェット歯32が形成されている。なお、この下部ラチェット歯32は、スクリューキャップ20の上部ラチェット歯22と同じく傾斜面32aと垂直面32bから成り、8個のラチェット歯から成る。ラチェット結合の際、全ての傾斜面32aと垂直面32bは、スクリューキャップ20の上部ラチェット歯22の全ての傾斜面22aと垂直面22bに当接するように構成されている。本実施形態では下部ラチェット歯32及び上部ラチェット歯22はそれぞれ8個形成されているが、それに限るものでなく任意の歯数が採用できる。
【0026】
また、オープナー30の開口端部には、図3(b)に示すように、8個の下部ラチェット歯32の外周に接して、該下部ラチェット歯と同じ高さの周壁32cが設けられている。該周壁32cは、上部ラチェット歯22と噛み合う際にその歯先を案内する機能と、上部ラチェット歯22と下部ラチェット歯32が全周で当接する際に側面からシールを補助する機能を果たす。
また、前記周壁32cは、オープナー30がスクリューキャップ20内に倒立状態で収容された状態、およびフィルム開封後に缶上蓋開口部に嵌合した状態において、下部ラチェット歯32で指を傷付ける危険性を少なくする、等の作用がある。
【0027】
また、一のキャップ嵌合凸部31の反対側(内径側)の部位には、ユーザが係止状態にあるオープナー30を缶上蓋またはスクリューキャップ20の内部から取り出すのを容易にする指掛け部33を形成してもよい。
【0028】
下部ラチェット歯32の反対側の開口端部(開封操作時の下方側)には環状刃34が形成され、同時に径方向に対し段差面35が形成されている。また、環状刃34は、図3(c)に示すように、スクリューキャップ20が缶上蓋のフィルム12に対する締まる方向の刃角αが、緩む方向の刃角βに対し大きくなるようにα>βに構成された左右非対称刃である。このように構成することにより、環状刃34の前方刃34aがフィルム12を切り裂く時の切り口を後方刃34bがトレースしながら塞ぎ、内容部の飛散が好適に抑制されることになる。なお、刃角α、βの一例を挙げると、α=約45°、β=約15°である。
【0029】
また、詳細については図7を参照しながら後述するが、環状刃34の外周面には、フィルム開封後に缶本体10の環状カール部11に嵌合するための缶嵌合凸部36が形成されている。
【0030】
また、図3(a)に示すように、オープナー30の最大包絡径D(キャップ嵌合凸部31に外接する円の直径)は、スクリューキャップ20の雌ネジ23の山部の最小内径よりもわずかに小さくなるように構成されている。最大包絡径Dとネジ山の最小内径の差は、環状カール部11のカールの直径を越えない程度、好適には半径を超えないようにする。このように構成することにより、オープナー30が缶上蓋の環状カール部11から多少ずれて載置されている場合であっても、スクリューキャップ20の雌ネジ23の何れかのねじ山に当たり正しい位置に補正されるようになる。
【0031】
本実施形態のオープナーキャップは、以上のように構成され、使用前(工場出荷時)は図4に示すように、オープナーがその環状刃を上向き状態でスクリューキャップ内に収納されている状態にある。
即ち、オープナー30は環状刃34が円筒リブ21の内側に収納された状態(オープナー30が倒立した姿勢)でスクリューキャップ20の内側に収納され、スクリューキャップ20は缶本体10にネジ締結している。この状態では、スクリューキャップ20のオープナー嵌合環状溝24に、オープナー30のキャップ嵌合凸部31が嵌合し、オープナー30の環状刃34は、スクリューキャップ20の円筒リブ21の内側に収納されている。また、スクリューキャップ20の円筒リブ21開口端部の上部ラチェット歯22は、オープナー30により保護され、倒立状態で下方を向いた下部ラチェット歯32は、缶上蓋に触れない高さに保持されている。従って、環状刃34が容器のフィルム面に不用意に突き刺さることがなく、安定してオープナーがスクリューキャップ内に保持されている。
【0032】
次に、上記構成の本実施形態に係るオープナーキャップで、容器を密封しているフィルムを切断して開封する方法を図5〜図7により詳細に説明する。
図5は、フィルム開封前のオープナーキャップ100を示す要部断面説明図である。
この図は、図4に示す状態にあるオープナーキャップ100から、スクリューキャップ20を緩めて缶本体10から分離し、次にオープナー30の指掛け部33を利用してオープナー30をスクリューキャップ20から取り出し、オープナー30を反転させ、環状刃34が缶上蓋の環状カール部11の内側部(開口予定部)に位置するように、オープナー30を缶本体10のフィルム12上に置いた状態を示している。
仮に、オープナー30が缶上蓋に正しく置かれていない場合、すなわち、オープナー30の軸芯が缶本体10の軸芯に対してズレて取り付けられている場合は、図6に示すように、オープナー30のキャップ嵌合凸部31がスクリューキャップ20の雌ネジ23の何れかのねじ山23tに当接して、オープナー30は中央部に戻されオープナー30の軸芯のズレが補正されるようになる。
【0033】
軸芯のズレが補正されたオープナー30は、図1に示す形態で、スクリューキャップ20を缶本体10にねじ込むことによって、スクリューキャップ20にラチェット結合したオープナー30が一体となって回転・降下して、環状刃34が缶本体10のフィルム12を円形に切り裂くことになる。
【0034】
図7は、フィルム開封後のオープナーキャップ100を示す要部断面説明図である。
この状態では、オープナー30による缶本体10のフィルム12の開封が完了しており、オープナー30は、段差面35と缶嵌合凸部36によって形成される凹部を介して缶上蓋の環状カール部11に嵌合し、環状刃34は缶本体10の内部に向いた状態で缶上蓋に係止している。その結果、環状刃34が缶本体の缶蓋裏面に接着残留しているフィルムの切り取り縁を覆っているので、該切り取り縁で指先を傷付ける危険性を少なくし、また該切り取り縁が開口部に露出して、内容物の取り出しに邪魔になることを防ぐことができる。
【0035】
スクリューキャップ20を缶本体10にねじ込むことにより、スクリューキャップ20が回転・降下し、スクリューキャップ20とオープナー30とのラチェット接合部を圧着するのと同時に、缶上蓋の環状カール部11とオープナー30の段差面35との接合部を圧着する。これにより、両接合部がシール部となり、缶本体10の内容物がこぼれ出るのを防止するようになる。
【0036】
以上のように、このオープナーキャップ100は、先ず缶本体10とスクリューキャップ20がネジ締結した後で、遅れてスクリューキャップ20とオープナー30がラチェット結合することになる。このように、缶本体10とスクリューキャップ20が先にネジ締結することにより、オープナー30がフィルム12を切り裂く際の(フィルム開封時の)基準となるスクリューキャップ20の軸芯が決定され、その後、スクリューキャップ20とオープナー30がラチェット結合することによって、フィルム開封の際のオープナー30の芯出しが好適に成されることになる。
【0037】
また、図から明らかな通り、スクリューキャップ20とオープナー30のラチェット結合は、互いの接合面が全て当接したいわゆる全周当接である。これにより、オープナー30が環状カール部11に残留するフィルム開封後、スクリューキャップ20を缶本体10に締め付ける(ねじ込む)ことにより、オープナー30と環状カール部11との接合部(図7を参照。)と併せてこのラチェット当接部分もシール部となり、缶本体10が横転あるいは倒立する場合であっても内容物が缶上蓋にこぼれなくなる。なお、オープナー30は、フィルム開封後、環状刃34が缶本体10内部に向いた状態で缶上蓋に残留することになるため、ユーザが使用中に環状刃によって指を傷つけられる危険性が少なくなる。
【0038】
また、オープナー30の環状刃はいわゆる左右非対称刃である。スクリューキャップ20が緩む方向の刃角が締まる方向の刃角に対し緩くなっている。環状刃の刃角をこのように左右非対称とすることによって、前方刃による切り口を後方刃が塞ぐようになり、内容物の飛散を好適に抑制する。
【0039】
さらに、環状刃がフィルムを切り裂くフィルム開封時においては、缶本体10の上蓋全体がスクリューキャップ20によって覆われるため、内容物が缶本体10の外部に飛散することはなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本発明のオープナーキャップは、開口部が密封フィルム部を備えた陽圧缶や常圧缶又は陰圧缶等の容器の開封と開封後のリシールを行なうオーバーキャップとして、種々の内容物充填容器に適用でき、特にレギュラーコーヒー缶のように、内部に不活性ガスが充填され、開口予定部がガスバリア性のフィルムで密封された陽圧缶に対して好適に適用可能である。
【符号の説明】
【0041】
10 缶本体
11 環状カール部
12 フィルム
13 雄ネジ
20 スクリューキャップ
21 円筒リブ
22 上部ラチェット歯
23 雌ネジ
24 オープナー嵌合環状溝
25 オープナー当接テーパ面
30 オープナー
31 キャップ嵌合凸部
32 下部ラチェット歯
33 指掛け部
34 環状刃
35 段差面
36 缶嵌合凸部
37 キャップ嵌合凹部
100 オープナーキャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
缶本体の側面上部に形成された雄ネジに結合する雌ネジを備えたスクリューキャップと、前記缶本体の開口部が形成された上蓋を封止する開口予定部としてのフィルムを切り裂く環状刃を備え、該フィルム開封後に前記上蓋の開口部に残留するオープナーとの組合せからなり、
前記スクリューキャップの天板裏面に形成された円筒リブの開口端部には上部ラチェット歯が、前記環状刃と反対側の前記オープナーの開口端部には下部ラチェット歯が、前記スクリューキャップが締まる方向にのみ互いに噛み合うように形成されていることを特徴とするオープナーキャップ。
【請求項2】
前記スクリューキャップの雌ネジと前記缶本体の雄ネジが噛み合い開始後に遅れて、前記上部ラチェット歯と前記下部ラチェット歯が噛み合うように構成されている請求項1に記載のオープナーキャップ。
【請求項3】
前記スクリューキャップの上部ラチェット歯と前記オープナーの下部ラチェット歯は、全周に渡って互いに当接できる関係に形成されている請求項1又は2に記載のオープナーキャップ。
【請求項4】
前記オープナーの最大包絡径は、前記スクリューキャップの雌ネジの山部の最小内径よりわずかに小さい請求項1に記載のオープナーキャップ。
【請求項5】
前記オープナーの環状刃は、前記スクリューキャップの緩む方向の刃角が同締まる方向の刃角に対し小さくなっている左右非対称刃である請求項1に記載のオープナーキャップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−71751(P2013−71751A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211765(P2011−211765)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000104489)キーコーヒー株式会社 (12)
【Fターム(参考)】