説明

オーロラキナーゼB阻害剤治療に対する応答性を予見およびモニターするためのマーカー

本発明は、ABCB1遺伝子、ABCB4遺伝子またはそれらの組み合わせにおける1つ以上のコピー数増加の有無の同定、オーロラキナーゼ阻害剤治療を単独療法か併用療法の一部のいずれかとして受けるのに適格である患者の同定およびこのような治療に対する患者の応答性のモニタリングに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願情報)
本願は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、2009年1月31日に出願された米国特許出願第61/148,957号明細書の利益を主張するものである。
【0002】
(配列表)
本願は、これによってその全体が参照により本明細書に組み込まれている、EFS−Webを経由して提出された配列表を含む。前記ASCIIコピーは9700.txtと命名され、そのサイズは79キロバイトである。
【0003】
本発明は、1種以上のオーロラキナーゼB阻害剤を用いた癌治療法の選択のための患者の分類に有用な診断検査に関する。本発明は、特に、ABCB1遺伝子、ABCB4遺伝子またはそれらの組み合わせにおける1つ以上のコピー数増加の有無の同定、オーロラキナーゼ阻害剤治療を単独療法か併用療法の一部のいずれかとして受けるのに適格である患者の同定およびこのような治療に対する患者の応答性のモニタリングに関する。
【背景技術】
【0004】
オーロラキナーゼファミリーは、一群の有糸分裂の主要制御因子として機能する高度に近縁のセリン/スレオニンキナーゼである。哺乳動物細胞において、3種のオーロラキナーゼが発現する。これらオーロラキナーゼは、オーロラA、オーロラBおよびオーロラCである。これらオーロラキナーゼはそれぞれが異なる細胞内局在を示し、異なる役割を果たす(Carmena M.E.W.、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、4:842−854(2003)およびDucat、D.Z.Y.、Exp.Cell Res.、301:60−67(2004)を参照)。具体的には、オーロラAは、紡錘体極に局在し、二極性の紡錘体形成において重要な役割を有する(Marumoto、T.Z.D.ら、Nat.Rev.Cancer、5:42−50(2005)を参照)。染色体パッセンジャータンパク質であるオーロラBは、有糸分裂初期にはセントロメアに、続いて後期には紡錘体中間帯に局在する。オーロラBは、有糸分裂におけるヒストンH3リン酸化、染色体の二極配向、紡錘体アセンブリーチェックポイントおよび細胞質分裂に必要とされる(Andrews、P.D.ら、Curr.Opin.Cell Biol.、15:672−683(2003))。オーロラCもまた染色体パッセンジャータンパク質であり、正常細胞におけるその発現は、主に雄性配偶子形成に機能する精巣に限定される。オーロラキナーゼは有糸分裂に必須の機能を果たすため、このキナーゼファミリーは癌治療の標的として大いに注目されてきた。ヘスペラジン、ZM447439、VX−680/MK0457、AZD1152およびMLN8054等、数種の小分子阻害剤が開発された(Ditchfield、C、J.V.ら、J.Cell Biol.、161:267−280(2003)、Harrington、E.A.ら、Nat.Med.、10:262−267(2004)、Hauf、S.ら、J.Cell Biol.、161:281−294(2003)、Manfredi、M.G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、104:4106−4111(2007)を参照)。
【0005】
AZD1152は、ヒト血漿において活性薬剤であるAZD1152HQPAへと速やかに変換される、新規のアセトアニリド置換ピラゾール−アミノキナゾリンプロドラッグである(Mortlock、A.A.ら、J.Med.Chem.、50:2213−2224(2007)を参照)。AZD1152HQPAは、オーロラA(Kは1369nM)と比べてオーロラB(Kは0.36nM)の非常に強力で選択的な阻害剤であり、他の50種のキナーゼパネルに対して不活性である。AZD1152は、免疫不全マウスにおけるヒト結腸、肺および血液腫瘍異種移植片の成長を強力に阻害する。AZD1152を静脈内に処置したSW620直腸結腸腫瘍を有する無胸腺ラットにおける詳細な薬力学的解析は、腫瘍における表現型事象の時系列を明らかにした。すなわち、ヒストンH3リン酸化の一過的抑制、4n DNAを有する細胞の蓄積、続いて倍数体(>4n DNA)細胞の割合の増加である。組織学的解析は、AZD1152処置腫瘍におけるアポトーシス増加と同時発生する異常細胞分裂、すなわち骨髄増殖阻害に二次的な一過性骨髄抑制が観察されたが、この効果はAZD1152処置の休止後では完全に可逆的であったことを示した(Wilkinson、R.W.ら、Clin.Cancer Res.、13:3683−3688(2007)を参照)。
【0006】
癌化学療法において直面する重大な障壁は、腫瘍が細胞毒(腫瘍細胞が暴露されたことのない薬剤であっても)に対して交差耐性を生じることである。多剤耐性(MDR)として知られるこの表現型は、抗癌剤治療後に頻繁に観察される。MDRの分子基盤は多くの場合複雑であるが、第1選択および第2選択の標準的治療で普及している化学療法剤の活性を回避するために腫瘍細胞が利用する中核的な細胞自律的メカニズムとして、ATP結合カセット(ABC)トランスポータースーパーファミリーメンバーの上方制御が浮上してきた。以前の化学療法が不成功であった個体はより最新の実験的な薬剤を受ける可能性が非常に高いため、MDR感受性は腫瘍学における創薬における重要なハードルを表す。ABCトランスポーターのプロトタイプである多剤耐性1(MDR1;P−糖タンパク質すなわちP−gpとしても知られ、ABCB1遺伝子にコードされる)は、2個の膜貫通ドメインおよび2個のヌクレオチド結合ドメインからなり、ATPの加水分解により濃度勾配に逆らい溶質を細胞外間隙に輸送する。乳癌耐性タンパク質(BRCP;ABCG2遺伝子にコードされる)等、他のABCトランスポーターは半分のトランスポーターとして発現し、二量体化して成熟した機能ユニットを生じる。BRCPの化学療法耐性への貢献はまだ明らかではないが、MDR1の上方制御は、急性骨髄性白血病(AML)または骨髄異形成症候群の個体の化学療法の不成功および生存率低下の一貫した徴候であった(Pallis、M.R.N.、Leukemia、18:1927−1930(2004)およびvan der Holt、B.L.B.ら、Blood、106:2646−2654(2005))。さらに、MDR1は、31例の乳癌治験のメタ分析において化学療法に対する応答性低下を伴った(Trock、B.J.ら、J.Natl.Cancer Inst.、89:917−931(1997)参照)。その結果、1種以上のABCトランスポーターを阻害または調節する物質の開発に多くの労力が投入された。実際に、この種の第2および第三世代の阻害剤が、臨床試験において化学療法増感剤として評価されている(Bates、S.F.ら、Novartis Found.Symp.、83−96(2002))。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】Carmena M.E.W.、Nat.Rev.Mol.Cell Biol.、4:842−854(2003)
【非特許文献2】Ducat、D.Z.Y.、Exp.Cell Res.、301:60−67(2004)
【非特許文献3】Marumoto、T.Z.D.ら、Nat.Rev.Cancer、5:42−50(2005)
【非特許文献4】Andrews、P.D.ら、Curr.Opin.Cell Biol.、15:672−683(2003)
【非特許文献5】Ditchfield、C、J.V.ら、J.Cell Biol.、161:267−280(2003)
【非特許文献6】Harrington、E.A.ら、Nat.Med.、10:262−267(2004)
【非特許文献7】Hauf、S.ら、J.Cell Biol.、161:281−294(2003)
【非特許文献8】Manfredi、M.G.ら、Proc.Natl.Acad.Sci.、USA、104:4106−4111(2007)
【非特許文献9】Mortlock、A.A.ら、J.Med.Chem.、50:2213−2224(2007)
【非特許文献10】Wilkinson、R.W.ら、Clin.Cancer Res.、13:3683−3688(2007)
【非特許文献11】Pallis、M.R.N.、Leukemia、18:1927−1930(2004)
【非特許文献12】van der Holt、B.L.B.ら、Blood、106:2646−2654(2005)
【非特許文献13】Trock、B.J.ら、J.Natl.Cancer Inst.、89:917−931(1997)
【非特許文献14】Bates、S.F.ら、Novartis Found.Symp.、83−96(2002)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
AZD1152は、望ましい前臨床での有効性を示し、AMLおよび固形腫瘍の第I/II相臨床試験において評価されているが、AZD1152に対する耐性を発現する可能性については調査されていない。したがって、本技術分野において、オーロラキナーゼB阻害剤で治療されている対象に対して腫瘍細胞耐性を付与する遺伝子を同定し、これら遺伝子に包含されるタンパク質の上方制御または下方制御等、これら遺伝子から得られた情報を使用し、オーロラキナーゼB阻害剤を用いた治療に患者が適格であるかどうかを決定または分類するための診断法および1種以上のオーロラキナーゼB阻害剤で治療されている癌患者を薬剤耐性の発現に関してモニターするための方法を開発する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
(要旨)
第1の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に対する適格性に関して患者を分類する方法に関する。方法は、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、および
c)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子のコピー数増加の有無に基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤による治療を受けるのに適格であると分類するステップ
を含む。
【0010】
第2の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に対する適格性に関して患者を分類する方法に関する。方法は、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、および
c)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無に基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤による治療を受けるのに適格であると分類するステップ
を含む。
【0011】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、オーロラキナーゼB阻害剤は、AZD1152、ZM447439、VX−680/MK0457またはヘスペラジンとすることができる。
【0012】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、試験サンプルは、組織サンプルを含むことができる。具体的には、組織サンプルは、末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル、または末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプルもしくはパラフィン包埋組織サンプルの内いずれかから作製された抽出液もしくは処理サンプルを含む。
【0013】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、in situハイブリダイゼーションによって行われてよい。具体的には、in situハイブリダイゼーションは、蛍光標識した核酸プローブを用いて行われてよい。より具体的には、in situハイブリダイゼーションは、少なくとも2種の核酸プローブを用いて行われてよい。あるいは、in situハイブリダイゼーションは、ペプチド核酸プローブを用いて行われる。
【0014】
あるいは、上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、ポリメラーゼ連鎖反応によって行われてよい。
【0015】
さらにあるいは、決定ステップ(b)は、核酸マイクロアレイアッセイによって行われてよい。
【0016】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、癌は結腸直腸癌または膵癌とすることができる。
【0017】
第1の態様において、ABCB1遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR1ポリペプチドの発現増加と相関する。第2の態様において、ABCB4遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR3ポリペプチドの発現増加と相関する。
【0018】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、ABCB1遺伝子、ABCB4遺伝子またはABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の組み合わせの内の少なくとも1種と結合するよう設計されたアンチセンス薬によって治療されている。
【0019】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、任意に化学療法、放射線照射またはそれらの組み合わせによって治療されてもよい。
【0020】
第三の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者をモニターする方法に関する。方法は、
a)現在少なくとも1種類のオーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB1遺伝子のコピー数をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップおよび
d)ステップc)における比較に基づき、患者がオーロラキナーゼB阻害剤による治療を継続するべきかどうかを決定するステップ
を含む。
【0021】
第四の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者をモニターする方法に関する。方法は、
a)現在少なくとも1種類のオーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップおよび
d)ステップc)における比較に基づき、患者がオーロラキナーゼB阻害剤による治療を継続するべきかどうかを決定するステップ
を含む。
【0022】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、オーロラキナーゼB阻害剤は、AZD1152、ZM447439、VX−680/MK0457またはヘスペラジンとすることができる。
【0023】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、試験サンプルは、組織サンプルを含むことができる。具体的には、組織サンプルは、末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル、または末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプルもしくはパラフィン包埋組織サンプルの内いずれかから作製された抽出液もしくは処理サンプルを含む。
【0024】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、in situハイブリダイゼーションによって行われてよい。具体的には、in situハイブリダイゼーションは、蛍光標識した核酸プローブを用いて行われてよい。より具体的には、in situハイブリダイゼーションは、少なくとも2種の核酸プローブを用いて行われてよい。あるいは、in situハイブリダイゼーションは、ペプチド核酸プローブを用いて行われる。
【0025】
あるいは、上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、ポリメラーゼ連鎖反応によって行われてよい。
【0026】
さらにあるいは、決定ステップ(b)は、核酸マイクロアレイアッセイによって行われてよい。
【0027】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、癌は、結腸直腸癌または膵癌とすることができる。
【0028】
第三の態様において、ABCB1遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR1ポリペプチドの発現増加と相関する。第四の態様において、ABCB4遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR3ポリペプチドの発現増加と相関する。
【0029】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、ABCB1遺伝子、ABCB4遺伝子またはABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の組み合わせの内の少なくとも1種と結合するよう設計されたアンチセンス薬により治療されている。
【0030】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、任意に化学療法、放射線照射またはそれらの組み合わせによって治療されてもよい。
【0031】
第五の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に耐性である癌を有する患者を分類する方法に関する。方法は、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB1遺伝子のコピー数増加の有無をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップおよび
d)(i)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子のコピー数増加の存在および(ii)試験サンプルにおけるコピー数増加がベースラインレベルまたは所定のレベルよりも高いかどうかに基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤治療に耐性を有する癌であると分類するステップ
を含む。
【0032】
第六の態様において、本発明は、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に耐性である癌を有する患者を分類する方法に関する。方法は、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップおよび
d)(i)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の存在および(ii)試験サンプルにおけるコピー数増加がベースラインレベルまたは所定のレベルよりも高いかに基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤治療に耐性を有する癌であると分類するステップ
を含む。
【0033】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、オーロラキナーゼB阻害剤は、AZD1152、ZM447439、VX−680/MK0457またはヘスペラジンとすることができる。
【0034】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、試験サンプルは、組織サンプルを含むことができる。具体的には、組織サンプルは、末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル、または末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプルもしくはパラフィン包埋組織サンプルの内いずれかから作製された抽出液もしくは処理サンプルを含む。
【0035】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、in situハイブリダイゼーションによって行われてよい。具体的には、in situハイブリダイゼーションは、蛍光標識した核酸プローブを用いて行われてよい。より具体的には、in situハイブリダイゼーションは、少なくとも2種の核酸プローブを用いて行われてよい。あるいは、in situハイブリダイゼーションは、ペプチド核酸プローブを用いて行われる。
【0036】
あるいは、上の2つの態様のそれぞれにおいて、決定ステップ(b)は、ポリメラーゼ連鎖反応によって行われてよい。
【0037】
さらにあるいは、決定ステップ(b)は、核酸マイクロアレイアッセイによって行われてよい。
【0038】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、癌は結腸直腸癌または膵癌とすることができる。
【0039】
第五の態様において、ABCB1遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR1ポリペプチドの発現増加と相関する。第六の態様において、ABCB4遺伝子におけるコピー数増加の存在は、MDR3ポリペプチドの発現増加と相関する。
【0040】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、ABCB1遺伝子、ABCB4遺伝子またはABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の組み合わせの内の少なくとも1種と結合するよう設計されたアンチセンス薬により治療されている。
【0041】
上の2つの態様のそれぞれにおいて、患者は、任意に化学療法、放射線照射またはそれらの組み合わせによって治療されてもよい。
【0042】
第七の態様において、本発明は、
(a)ABCB1遺伝子のコピー数増加の有無を決定するための試薬、
(b)試験を行うための取扱説明書
を含むキットに関する。
【0043】
上のキットにおいて、コピー数増加の有無を決定するための試薬は、ABCB1遺伝子の少なくとも一部とハイブリダイズする検出可能に標識したポリヌクレオチドを含む。
【0044】
第八の実施形態において、本発明は、
(a)ABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するための試薬、
(b)試験を行うための取扱説明書
を含むキットに関する。
【0045】
上のキットにおいて、コピー数増加の有無を決定するための試薬は、ABCB4遺伝子の少なくとも一部とハイブリダイズする検出可能に標識したポリヌクレオチドを含む。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1A】図1は実施例に記載されている通りAZD1152HQPA耐性に対して選択されたSW620派生体において増幅および過剰発現された遺伝子としての、ABCB1およびABCB4の同定を示す図である。具体的には、親系統SW620細胞、SW620ABCB1/3細胞および薬剤を含まない培地で3ヵ月間培養した後のSW620ABCB1/3細胞における、Affymetrix 100K SNPチップを用いたCGHによって決定されたABCB1およびABCB4のコピー数を示す図である。縦線はABCB1遺伝子座の位置を示し、横線は正常なDNAコピー数(2コピー)を示す。
【図1B】他の溶質トランスポーターと比べたABCB1およびABCB4のmRNA発現値を示す図である。SW620ABCB1/3におけるABCB1(MDR1をコード)およびABCB4(MDR3をコード)の発現レベルは矢印で示す。
【図1C】Affymetrix HG−U133A GeneChipsを用いて決定した、14,000遺伝子+EST(約22,000プローブセット)のmRNA発現値を示す図である。データは、親系統SW620細胞と比べてSW620ABCB1/3細胞においてその発現が10倍以上増加した全遺伝子と比較した、遺伝子発現の倍数的変化として表されている。
【図1D】MDR1タンパク質の相対的発現がイムノブロット解析によって決定されたことを示す図である。β−アクチンは添加対照として用いた。
【図2A】図2はABCB1の抑制がSW620ABCB1/3派生体においてAZD1152HQPA耐性を逆行させることを示す図である。AZD1152HQPAで用量反応的に90分間処理した、SW620細胞、SW620ABCB1/3細胞および薬剤を含まない培地で3ヶ月間培養した後のSW620ABCB1/3細胞を示す図である。ヒストンH3のSer10リン酸化をイムノブロット解析により決定した。
【図2B】1μM AZD1152HQPAで4時間処理したSW620またはSW620ABCB1/3細胞を示す図である。細胞を分画し、LC−MS分析により各サンプル画分におけるAZD1152HQPA濃度を決定した。
【図2C】AZD1152HQPAで用量反応的に90分間処理する前に、DMSOか1μM PSC−833のいずれかで2時間処理したSW620ABCB1/3細胞を示す図である。その後、ヒストンH3のリン酸化をイムノブロッティングにより決定した。
【図2D】ルシフェラーゼ(siルシフェラーゼ)かABCB1(siABCB1)siRNAのいずれかをトランスフェクトし、次にトランスフェクトした細胞をAZD1152HQPAで90分間処理することにより、SW620ABCB1/3派生体におけるABCB1ノックダウンの効果が評価されたことを示す図である。ABCB1のイムノブロット解析は、siABCB1におけるタンパク質レベルがsiルシフェラーゼと比べて約75%減少したことを示した。
【図3A】図3はSW620対SW620ABCB1/3異種移植片におけるAZD1152HQPAの薬物動態学、薬力学および有効性の関係を示す図である。(上パネル)ヒストンH3リン酸化アッセイにおけるAZD1152HQPAの固有の効力と50%(vv−1)マウス血漿の存在下でアッセイしたAZD1152HQPA効力の倍数的減少の積を計算することによって評価された、異種移植片のヒストンH3リン酸化阻害に必要とされる予想閾値腫瘍内濃度を示す図である。下パネルは、100mgkg―1を1回腹腔内(i.p.)注射した後、投薬後0、2、8および24時間に決定されたAZD1152HQPAの腫瘍内薬物動態を示す。
【図3B】AZD1152HQPA(100mgkg―1、i.p.)を単回投与された、確立したSW620およびSW620ABCB1/3腫瘍異種移植片を有するマウスを示す図であり、各時点につき3個の腫瘍が回収された。AZD1152で処置した後、腫瘍を摘出し、SW620腫瘍(水色)およびSW620ABCB1/3腫瘍(紺青色)におけるリン酸化ヒストンH3レベルをイムノブロッティングにより決定した。イムノブロットを定量化し、データを曲線下面積として表した。個々の時点から得られた平均値は±s.e.m.で表す。
【図3C】実施例1に記載されている通りにscid−bgマウスに皮下注射されたSW620およびSW620ABCB1/3細胞を示す図である。腫瘍を約500mmにサイズ適合させ、接種7日後にAZD1152による処置を開始した。50または100mg/kg/日の用量でq2dスケジュールにおいて2週間、i.p.注射することによりAZD1152を投与した。各点は、10個の腫瘍の平均±s.d.を表す。
【図3D】実施例1に記載されている通りにscid−bgマウスに皮下注射されたSW620およびSW620ABCB1/3細胞を示す図である。腫瘍を約500mmにサイズ適合させ、接種7日後にAZD1152による処置を開始した。50または100mg/kg/日の用量でq2dスケジュールにおいて2週間i.p.注射することによりAZD1152を投与した。各点は、10個の腫瘍の平均±s.d.を表す。
【図4A】図4はABCB1を過剰発現する細胞系が、インビトロにおいてAZD1152HQPAおよびVX−680/MK0457に耐性を有することを示す図である。ABCB1の相対的発現を示す、異種移植片実験に用いた細胞系のイムノブロッティングを表す図である。
【図4B】7日間のコロニー形成(付着系統:SW620、SW620ABCB1/3、HCT−15、AsPC1)または生存能力(非付着系統:RS;411およびDoHH−2)において、AZD1152HQPA、VX−680/MK0457、MLN8054およびパクリタキセルに対する相対的感受性を評価した細胞系パネルを示す図である。細胞を用量反応的に処理して、IC50を決定した。
【図4C】表示の濃度でAZD1152HQPAを追加的な時間添加する前に、DMSOまたは1μM PSC−833で1時間処理したHCT−15細胞を示す図である。全ヒストンH3およびリン酸化(Ser10)ヒストンH3をイムノブロッティングにより決定した。
【図4D】図4Cに記載されている通り、DMSOまたは10μMフミトレモルギンCで1時間、次にAZD1152HQPAで処理したAsPC1細胞を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0047】
(詳細な記述)
本発明は、癌および腫瘍細胞のオーロラキナーゼB阻害剤治療耐性をモニターするための方法および組成物を提供する。本発明者らは、(i)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子、(ii)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子または(iii)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子とABCB4遺伝子それぞれのコピー数増加の存在が、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に対する耐性を伴うことを発見した。
【0048】
本発明者らは、全ゲノムスケールで遺伝子コピー数異常(例えば、コピー数増加およびコピー数減少)を検出するためのマイクロアレイに基づく比較ゲノムハイブリダイゼーション技法を用いて、したがってDNAコピー数変化を伴う染色体異常の全ゲノム的観点を提供して、上述のコピー数増加を発見した。この方法は、その内容がその全体により本明細書に組み込まれている、2008年10月31日に出願されて米国特許出願第61/110,281号を付与された「METHODS FOR ASSEMBLING PANELS OF CANCER CELL LINES FOR USE IN TESTING THE EFFICACY OF ONE OR MORE PHARMACEUTICAL COMPOSITIONS」において十分に開示されている。
【0049】
本発明は、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子それぞれのコピー数増加の有無に関して試験サンプルを評価するステップを含む、癌患者を同定、分類およびモニターするための診断検査を提供する。発明に関するアッセイは、オーロラキナーゼB治療(単独療法か、併用療法の一部(例えば、化学療法、放射線照射またはそれらの組み合わせ等と共に)のいずれかとして)を受けるのに適格である患者を同定するためおよびこのような治療に対する患者の応答性をモニターするためのアッセイ法を含む。例えば、本発明は、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子それぞれのコピー数増加の有無を蛍光in situハイブリダイゼーションにより決定するステップを含む。(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子それぞれのコピー数増加を有すると分類された患者は、この治療に効果を示す可能性が低いため、オーロラキナーゼB治療を少なくとも単独療法として受けるのに適格ではない。さらに、この増幅を有する患者は他の癌治療法に耐性を有する可能性がある。したがって、癌および腫瘍細胞における(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子それぞれのコピー数増加の存在の決定は、一般的治療の分類マーカーとして有用である。
【0050】
本発明はその一実施形態において、
(a)患者から得られた組織サンプルを準備するステップ、
(b)(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、および
(c)(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の欠如に基づいて、患者をオーロラキナーゼB阻害剤による治療に適格であると分類するステップ
を含む、患者をオーロラキナーゼB阻害剤による治療(単独療法か、併用療法の一部のいずれかとして)に適格であると同定または分類するための方法を含む。上の方法において、患者は、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の存在に基づき、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に(少なくとも単独療法としては)適格ではない可能性がある。試験サンプルを採取する患者は、癌と疑われるまたは癌と診断された患者とすることができる。さらに、本発明者らは、ABCB1遺伝子のコピー数増加が、MDR1ポリペプチドの発現増加と相関し、ABCB4遺伝子のコピー数増加がMDR3ポリペプチドの発現増加と相関することを見出した。
【0051】
この実施形態において、癌は結腸直腸癌や膵癌等、どの種類の癌であってもよい。さらに、この実施形態において、遺伝子増幅は、例えば肺癌腫瘍生検サンプルのマルチカラー蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイによって決定されてよい。他の実施形態において、定量的ポリメラーゼ連鎖反応(Q−PCR)法が用いられる。
【0052】
さらに別の一実施形態において、本発明は、
(a)患者から得られた試験サンプル(例えば、組織サンプル等)を準備するステップ、
(b)(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、および
(c)(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の存在に基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤に耐性を有する癌であると分類するステップ
を含む、オーロラキナーゼB阻害剤による治療に耐性である癌を有する患者を同定または分類するための方法を含む。
【0053】
この実施形態において、癌は結腸直腸癌や膵癌等、どの種類の癌であってもよい。さらに、この実施形態において、遺伝子増幅は、例えば肺癌腫瘍生検サンプルのマルチカラー蛍光in situハイブリダイゼーション(FISH)アッセイによって決定されてよい。他の実施形態において、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が用いられる。
【0054】
さらにまた別の一実施形態において、本発明は、
(a)少なくとも1種類のオーロラキナーゼ阻害剤により治療されている癌患者から得られた試験サンプル(任意に、組織サンプルから得られた腫瘍または癌細胞が同定または抽出されてよい)を準備するステップ、
(b)試験サンプル(例えば、腫瘍または癌細胞における)における(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
(c)試験サンプル(腫瘍または癌細胞における等)から得られた(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップ、および
(d)ステップ(c)における比較に基づき、患者がオーロラキナーゼB阻害剤による治療を継続するべきかどうかを決定するステップ
を含む、オーロラキナーゼB阻害剤により治療されている患者をモニターするための方法を対象とする。具体的には、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数が増加した試験サンプル(例えば、腫瘍または癌細胞)がベースラインレベルまたは所定のレベルと同一またはより高い場合、その後オーロラキナーゼB阻害剤による治療は、(単独療法として単一で用いられていれば)中断、中止または終了されてよい。あるいは、治療医は、オーロラキナーゼB阻害剤を併用療法として、少なくとも第2の治療(例えば、第2の小分子による治療)と組み合わせることを決定できる。しかし、試験サンプル(例えば、腫瘍または癌細胞)から得られた(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子もしくは(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加がベースラインレベルもしくは所定のレベルより少ない場合、または(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子もしくは(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加が検出されない場合、その後オーロラキナーゼB阻害剤による治療は継続されてよい。また一方、前記治療により得られた結果次第で、治療医は、オーロラキナーゼB阻害剤を併用療法として少なくとも第2の治療(例えば、第2の小分子による治療)と組み合わせることを決定できる。
【0055】
また一方、FISH法およびPCR法が、患者から得られた試験サンプルにおける(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無の検出に用いられてよい。
【0056】
本発明は、例えば、PCRプライマー、FISHプローブ等として用いられるよう設計されたオリゴヌクレオチドまたはポリヌクレオチドを包装したキットも対象とする。
【0057】
本発明は、癌治療、特にオーロラキナーゼB阻害剤治療のための患者分類の改善を提供する重要な能力を有する。本発明によるこれらバイオマーカーの評価は、個々の患者の治療に対する応答性を追跡することもできる。
【0058】
A.定義
本節に用いられているような節の表題および本明細書における開示全体は、限定を目的としない。
【0059】
本明細書において、文脈が明らかに別のことを示さない限り、単数形「a」、「an」、および「the」は、複数形を含む。本明細書における数値範囲の記述において、その間に介在する同程度の精度の各数値が明確に企図される。例えば、6−9の範囲において、6および9に加えて7および8の数値が企図され、6.0−7.0の範囲において、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9および7.0の数値が明確に企図される。
【0060】
a)オーロラキナーゼB阻害剤
「オーロラキナーゼB阻害剤」は、オーロラキナーゼBまたはオーロラBの少なくとも1種と結合し、オーロラキナーゼBまたはオーロラBに関連する核酸またはタンパク質の活性と拮抗する、小分子、抗体、アンチセンス、低分子干渉RNAまたはマイクロRNAに基づく化合物を含む、あらゆる種類(例えば、非選択的または選択的)の治療用化合物を意味する。例えば、多くのオーロラキナーゼB阻害剤は、ヒストンH3リン酸化または細胞分裂の少なくとも一方を阻害することが知られている。さらに、多くのオーロラキナーゼB阻害剤は、少なくとも1種類の細胞系(急性骨髄性白血病細胞系、原発性急性骨髄性白血病培養物等)におけるアポトーシスを誘導することが知られている。本発明の方法は、どの公知のまたは将来的に開発されるオーロラキナーゼB阻害剤にも有用である。オーロラキナーゼB阻害剤の例として、AZD1152、ZM447439、VX−680/MK0457およびヘスペラジンが挙げられる。
【0061】
2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチル二水素リン酸としても知られているAZD1152は、ピラゾロキナゾリンオーロラキナーゼ阻害剤(AZD1152−ヒドロキシキナゾリンピラゾールアニリド(HQPA))のプロドラッグであり、血漿において活性型AZD1152−HQPAに速やかに変換される(Mortlock、AAら、J.Med.Chem.、50:2213−24(2007)を参照)。AZD1152−HQPAは、オーロラBの非常に強力で選択的な阻害剤である。
【0062】
4−(4−(N−ベンゾイルアミノ)アニリノ)−6−メトキシ−7−(3−(1−モルホリノ)プロポキシ)キナゾリンとしても知られているZM447439は、キナゾリン誘導体であり、オーロラAおよびオーロラBを阻害する。ZM447439の化学構造は、Ditchfield、Cら、J.Cell Bio.、161(2):267−280(2003)およびMontembault、E.ら、Drugs of the Future、30(1):1−9(2005)に提供されている。
【0063】
VX−680/MK0457は、{4−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−6−(5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミノ)−ピリミジン−2−イルスルファニル]−フェニル}−アミドのシクロプロパンカルボン酸であり、オーロラA、オーロラBおよびオーロラCを阻害する。VX−680/MK0457の化学構造は、Montembault、E.ら、Drugs of the Future、30(1):1−9(2005)に提供されている。
【0064】
インドリノンであるヘスペラジンは、オーロラBを阻害する。ヘスペラジンの化学構造は、Hauf、S.ら、J.Cell Bio.、161(2):281−294(2003)およびMontembault、E.ら、Drugs of the Future、30(1):1−9(2005)に提供されている。
【0065】
b)%配列同一性を有するポリヌクレオチドから実質的になる
「%配列同一性を有するポリヌクレオチドから実質的になる」は、ポリヌクレオチドの長さは実質的に変わらないが、配列が実質的に異なり得ることを意味する。したがって、100ヌクレオチドの公知の配列「B」と少なくとも80%の配列同一性を有するポリヌクレオチドから実質的になるポリヌクレオチド「A」は、ポリヌクレオチド「A」が約100ヌクレオチド(nt)長であるが、最大20ntが「B」配列と異なり得ることを意味する。問題のポリヌクレオチド配列は、目的の二次構造を形成するように実質的な非同一配列が付加される場合等、例えば特定の種類のプローブ、プライマーおよびその他の分子ツール等を作製するための1−15ヌクレオチドの付加等、末端の修飾のために長くなることも短くなることもできる。このような非同一ヌクレオチドは、配列が「から実質的になる」によって修飾される場合、配列同一性の計算に考慮されない。
【0066】
c)発現、アンチセンス阻害およびコサプレッション
「発現」は、機能的最終産物の生成を意味する。遺伝子の発現は、遺伝子の転写と、mRNAの前駆または成熟タンパク質への翻訳を含む。「アンチセンス阻害」は、標的タンパク質発現を抑制することのできるアンチセンスRNA転写産物の生成を意味する。「コサプレッション」は、同一または実質的に同様の外来または内因性遺伝子の発現を抑制することのできるセンスRNA転写産物の生成を意味する(米国特許第5,231,020号明細書)。
【0067】
d)単離された
本明細書において、核酸分子またはポリヌクレオチドの文脈における用語「単離された」は、天然の核酸分子源またはポリヌクレオチド源に存在する他の核酸分子またはポリヌクレオチドから分離された核酸分子またはポリヌクレオチドを意味する。さらに、cDNA分子等、「単離された」核酸分子またはポリヌクレオチドは、組換え技法によって生成された場合は他の細胞性物質または培地を実質的に含まなくてよく、また化学的に合成された場合は前駆的化学物質または他の化学物質を実質的に含まなくてよい。一態様において、核酸分子またはポリヌクレオチドが単離される。
【0068】
e)遺伝子
「遺伝子」は、コード配列の前(5’非コード配列)および後(3’非コード配列)に存在する調節配列を含む、特定のタンパク質を発現する核酸断片を意味する。
【0069】
f)天然の遺伝子およびキメラコンストラクト
「天然の遺伝子」は、それ自身の調節配列を備えた天然に存在する遺伝子を意味する。対照的に、「キメラコンストラクト」は、通常天然では一緒に存在しない核酸断片の組み合わせを意味する。したがって、キメラコンストラクトは、異なるソースに由来する調節配列およびコード配列を含むことも、同一ソースに由来する調節配列およびコード配列を含むこともできるが、通常天然に存在する配置とは異なる仕方で配置されている。
【0070】
g)パーセント(%)核酸配列同一性
核酸配列に関する「パーセント(%)核酸配列同一性」は、候補配列における、目的配列におけるヌクレオチドと同一のヌクレオチドの比率として定義され、配列を整列し必要に応じてギャップを導入した後に最大のパーセント配列同一性を得る。%核酸配列同一性を決定するためのアライメントは、例えばBLAST、BLAST−2、ALIGNまたはMegalign(DNASTAR)ソフトウエア等、一般に利用できるコンピューターソフトウエアを用いた、当業者の技能範囲内の様々な方法により達成できる。当業者であれば、比較されている配列の全長にわたって最大限のアライメントを達成するのに必要とされる任意のアルゴリズム等、アライメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。
【0071】
ヌクレオチド配列を整列させると、所与の核酸配列Cの、所与の核酸配列Dとの、Dに関するまたはDに対する%核酸配列同一性(あるいは、所与の核酸配列Dと、Dに関してまたはDに対して特定の%核酸配列同一性を有するまたは含む所与の核酸配列Cと表すこともできる)は、次の通り計算できる。
%核酸配列同一性=W/Z*100
ここで、
Wは、配列アライメントプログラムまたはアルゴリズムによるCとDのアライメントによって同一マッチとして計数されたヌクレオチド数であり、
Zは、Dにおけるヌクレオチドの総数である。
【0072】
核酸配列Cの長さが核酸配列Dの長さと等しくない場合、CのDに対する%核酸配列同一性は、DのCに対する%核酸配列同一性と等しくなくなる。
【0073】
h)ポリメラーゼ連鎖反応すなわちPCR
「ポリメラーゼ連鎖反応」すなわち「PCR」は、一連の反復サイクルからなる、大量の特定DNAセグメントの合成のための技法である(Perkin Elmer Cetus Instruments、ノーウォーク、コネチカット州)。通常、二本鎖DNAが熱変性され、標的セグメントの3’境界に相補的な2種のプライマーが低い温度でアニーリングし、続いて中間の温度で伸長する。これら連続した3ステップの1セットをサイクルと言う。
【0074】
PCRは、短い時間でテンプレートを繰り返し複製することにより、DNAを何百万倍にも増幅するのに用いられる強力な技法である((Mullis、K.ら、Cold Spring Harb Symp Quant Biol.51 Pt 1:263−73(1986))、欧州特許出願第50,424号明細書、欧州特許出願第84,796号明細書、欧州特許出願第258,017号明細書、欧州特許出願第237,362号明細書、欧州特許出願第201,184号明細書、米国特許第4,683,202号明細書、米国特許第4,582,788号明細書および米国特許第4,683,194号明細書)。このプロセスは、DNA合成を準備するための特定のインビトロ合成オリゴヌクレオチドのセットを用いる。プライマーの設計は、解析されるべきDNAの配列に依存する。この技法は、高温でのテンプレートメルティング、テンプレート内の相補配列へのプライマーのアニーリング、そしてDNAポリメラーゼによるテンプレートの複製による、多くの(通常20−50)サイクルによって行われる。
【0075】
PCR反応の産物は、アガロースゲルで分離し、続いてエチジウムブロマイド染色してUVトランスイルミネーションで可視化することにより解析され得る。あるいは、標識が産物に取り込まれるよう、放射性dNTPがPCRに添加されてもよい。この場合、ゲルをX線フィルムに露光することによってPCR産物が可視化される。PCR産物を放射標識する別の利点は、個々の増幅産物のレベルが定量化され得ることである。
【0076】
i)ポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」は、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、修飾RNAもしくはDNAまたはRNAもしくはDNA模倣体(PNA等)ならびにそれらの誘導体およびホモログの核酸ポリマーである。したがって、ポリヌクレオチドは、天然の核酸塩基、糖およびヌクレオシド間共有結合(骨格)からなるポリマーと共に、同様に機能する非天然部分を有するポリマーを含む。このような修飾または置換された核酸ポリマーは本技術分野においてよく知られており、「アナログ」と呼ばれる。オリゴヌクレオチドは一般に、約10から最大約160または200ヌクレオチド由来の短いポリヌクレオチドである。
【0077】
ポリヌクレオチドは、核酸配列のアナログおよび/または誘導体ならびにそれらのホモログ等、標的配列と特異的にハイブリダイズするプライマーも含む。
【0078】
ポリヌクレオチドは、Applied Biosystems USA Inc.(フォスターシティー、カリフォルニア州、米国)、DuPont(ウィルミントン、デラウエア州、米国)またはMilligen(ベッドフォード、マサチューセッツ州、米国)から入手できる機器等の市販の機器を用いた固相合成法等、従来の技法によって調製できる。ホスホロチオエートやアルキル化誘導体等、修飾ポリヌクレオチドもまた、本技術分野で公知の同様の方法によって容易に調製できる(米国特許第4,948,882号、第5,464,746号および第5,424,414号明細書を参照)。
【0079】
j)ポリヌクレオチドアナログ
本明細書において、用語「ポリヌクレオチドアナログ」は、修飾された骨格または非天然ヌクレオシド間結合を有するポリマーを意味する。修飾された骨格は、ホスホロチオエート、キラルホスホロチオエート、ホスホロジチオエート、ホスホトリエステル、アミノアルキルホスホトリエステル、メチルおよび他のアルキルホスホネート等、リン原子を骨格に保持する骨格ならびに短鎖アルキルもしくはシクロアルキルヌクレオシド間結合、ヘテロ原子とアルキルもしくはシクロアルキルの混合ヌクレオシド間結合または1もしくは複数種の短鎖へテロ原子もしくは複素環ヌクレオシド間結合によって生成された骨格等、リン原子を持たない骨格を含む。修飾核酸ポリマー(アナログ)は、1種以上の修飾糖成分を含むことができる。
【0080】
ヌクレオチドユニットの糖とヌクレオシド間結合の両方が新規の基で置換されている、RNAまたはDNA模倣体であるアナログも有用である。これら模倣体において、塩基ユニットは標的配列とのハイブリダイゼーションのため維持される。優れたハイブリダイゼーション特性を有することが示されたこのような模倣体の例として、ペプチド核酸(PNA)が挙げられる(Buchardt、O.、P.NielsenおよびR.Berg.1992.Peptide Nucleic Acids)。
【0081】
k)所定のレベル
本明細書において、用語「所定のレベル」は、アッセイ結果を所定のレベルに対して比較することによる診断結果の評価に用いられるアッセイのカットオフ値を一般に言い、所定のレベルは既に様々な臨床的パラメーター(例えば、リスク評価、疾病の重症度、進行/非進行/改善、試験サンプルの年齢決定、試験サンプル(例えば、血清または血漿)が溶血されたかの決定等)とリンクまたは関連している。本発明は、例示的な所定のレベルを提供し、本明細書に記載されている例示的なアッセイに関してこのようなレベルと臨床的パラメーターとの初期リンクまたは関連を説明する。しかし、カットオフ値がアッセイの性質に依存して変化し得ることはよく知られている。さらに、他のアッセイに本明細書における発明を適用して本明細書に基づきこれら他のアッセイに関するアッセイ特異的カットオフ値を得ることは、十分に当業者の通常の技能範囲内にある。
【0082】
l)プライマーまたはプローブ
本明細書における「プローブ」または「プライマー」は、少なくとも8ヌクレオチドの長さであり、標的領域内の配列とプローブまたはプライマーにおける少なくとも一配列の相補性のため、標的配列とハイブリッド構造を形成するポリヌクレオチドである。プローブのポリヌクレオチド領域は、DNAおよび/またはRNAおよび/または合成ヌクレオチドアナログからなることができる。好ましくは、プローブは、ポリメラーゼ連鎖反応において標的配列の準備に用いられる配列(単数または複数)と相補的な配列を含まない。
【0083】
m)組換え
「組換え」は、例えば、化学合成による、または遺伝子工学的技法による核酸の単離セグメントの操作による、本来は別個である2種の配列セグメントの人工的な組み合わせを意味する。
【0084】
n)特異的にハイブリダイズする
「特異的にハイブリダイズする」は、核酸が第2の核酸と検出可能および特異的に結合する能力を意味する。ポリヌクレオチドは、非特異的核酸による相当量の検出可能な結合を最低限に抑えるハイブリダイゼーション条件および洗浄条件下で、標的核酸鎖と特異的にハイブリダイズする。
【0085】
o)ストリンジェンシーまたはストリンジェントな条件
一本鎖DNAが相補断片とハイブリダイズする特異性は、反応条件のストリンジェンシーによって決定される。ハイブリダイゼーションストリンジェンシーは、DNA二本鎖が形成される傾向が減少するに従って増加する。核酸ハイブリダイゼーション反応において、特異的ハイブリダイゼーション(高ストリンジェンシー)に有利なストリンジェンシーが選択され得る。関連するが厳密に同じではないDNA分子(相同であるが同一ではない)またはセグメントを同定するために、特異性の低いハイブリダイゼーション(低ストリンジェンシー)が用いられてよい。
【0086】
DNA二本鎖は、(1)相補的塩基対の数、(2)塩基対の種類、(3)反応混合液の塩濃度(イオン強度)、(4)反応温度および(5)DNA二本鎖安定性を低減させるホルムアミド等、特定の有機溶媒の存在に応じて安定化される。一般的なアプローチとして温度を変化させる。よりストリンジェントな反応条件をもたらすより高い相対温度(Ausubel、F.M.、R.Brent、R.E.Kingstonら、1987、Current Protocols in Molecular Biology.John Wiley&Sons、ニューヨークを参照)は、ハイブリダイゼーション反応のストリンジェンシーに説得力のある説明を提供する。
【0087】
「ストリンジェントな条件」下のハイブリダイゼーションは、互いに少なくとも60%の相同性を有するヌクレオチド配列同士がハイブリダイゼーションを維持できるハイブリダイゼーションプロトコールを意味する。ポリヌクレオチドは、ペプチド(例えば、インビボで宿主細胞のレセプターを標的とするための)や、細胞膜を通じた輸送を容易にする薬剤等、他の追加群を含むことができる。さらに、オリゴヌクレオチドは、ハイブリダイゼーション誘発性の切断剤(van der Krolら、Biotechniques.6:958−76(1988)を参照)またはintercalculating agents(Zon、G.、Pharm Res.5:539−49(1988))によって修飾され得る。オリゴヌクレオチドは、他の分子、例えばペプチド、ハイブリダイゼーション誘発性の架橋剤、輸送剤、ハイブリダイゼーション誘発性の切断剤等と結合されてよい。
【0088】
p)対象または患者
本明細書において、用語「対象」および「患者」は、対象が何らかの形の処置を受けたか現在受けているかに関わらず、互換的に用いられる。本明細書において、用語「単数の対象」および「複数の対象」は、哺乳動物(例えば、ウシ、ブタ、ラクダ、ラマ、ウマ、ヤギ、ウサギ、ヒツジ、ハムスター、モルモット、ネコ、イヌ、ラットおよびマウス、非ヒト霊長目(例えば、カニクイザル、チンパンジー等、サル)ならびにヒト)を含むがこれらに限定されない任意の脊椎動物を意味する。好ましくは、対象はヒトである。対象または患者は、生きていても死んでいてもよい。
【0089】
q)標的配列または標的核酸配列
「標的配列」または「標的核酸配列」は、例えば、ポリヌクレオチドプライマーまたはプローブを用いて増幅、検出またはその両方がなされる、遺伝子もしくは相補体またはそれらの断片を包含する核酸配列を意味する。さらに、標的配列という用語は二本鎖核酸配列を意味する場合もあるが、標的配列は一本鎖であってもよい。標的が二本鎖である場合、ポリヌクレオチドプライマー配列は、好ましくは標的配列の両方の鎖を増幅する。特定の生物に多かれ少なかれ特異的な標的配列が選択され得る。例えば、標的配列は、属全体、2以上の属、種もしくは亜種、血清群、栄養要求型、血清型、株、分離株または他の生物サブセットに特異的とすることができる。
【0090】
r)試験サンプル
「試験サンプル」は、対象または体液から採取された、標的配列を含み得るサンプルを意味する。試験サンプルは、例えば、組織、血液、唾液、痰、粘液、汗、尿、尿道スワブ、子宮頸部スワブ、泌尿生殖器または肛門スワブ、結膜スワブ、眼球レンズ液、大脳脊髄液等、どのソースから採取されてもよい。試験サンプルは、(i)ソースから得られたものとして直接的に、または(ii)サンプル特性を改変するための前処理の後に用いられてよい。したがって、試験サンプルは、例えば、血液から血漿または血清を調製し、細胞またはウイルス粒子を破壊し、固形材料から液体を調製し、粘性のある液体を希釈し、液体をろ過し、試薬を添加し、核酸を精製すること等によって、使用前に前処理されてよい。
【0091】
s)処理、処置または治療
本明細書に用いられている用語「処理」、「処置」または「治療」は、(i)病態が発生するのを予防する(例えば、予防法)、(ii)病態を抑制またはその発症を妨げる、(iii)病態を緩和させるおよび/またはこのような病態を伴う1つ以上の症状を予防もしくは重症度を低減させる試みにおいて、項目(i)から(iii)の内いずれが対象で成功するかに関係なく、1種以上の活性薬剤または化合物を対象に投与することを意味する。
【0092】
t)変異型ポリヌクレオチドまたは変異型核酸配列
「変異型ポリヌクレオチド」または「変異型核酸配列」は、所定の核酸配列と少なくとも約60%の核酸配列同一性、より好ましくは少なくとも約61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%の核酸配列同一性、さらにより好ましくは少なくとも約99%の核酸配列同一性を有するポリヌクレオチドを意味する。変異型は、天然のヌクレオチド配列を包含しない。
【0093】
通常、変異型ポリヌクレオチドは、少なくとも約8ヌクレオチドの長さ、多くの場合少なくとも約9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、26、27、28、29、30、35、40、45、50、55、60ヌクレオチドの長さ、またはさらには約75−200ヌクレオチド以上の長さである。
【0094】
ヌクレオチドの範囲は、核酸分子が、置換、化学物質、酵素または他の適切な手段によって天然のヌクレオチド以外の部分で共有結合的に修飾された誘導体を含む。
【0095】
B.ポリヌクレオチドアッセイ
本発明において有用な核酸アッセイ法は、(i)無傷組織または細胞サンプルのin situハイブリダイゼーションアッセイ、(ii)組織サンプルから抽出された染色体DNAのマイクロアレイハイブリダイゼーションアッセイおよび(iii)組織サンプルから抽出された染色体DNAのポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の増幅アッセイによる、コピー数増加の有無の検出を含む。これらの様式の内いずれかにおいて、ペプチド核酸等、核酸の合成アナログを用いたアッセイが用いられてもよい。
【0096】
本発明のアッセイは、オーロラキナーゼB阻害剤治療に対する治療応答性の予見と患者応答性のモニタリングの両方における使用のための、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の同定に用いられる。応答性予見のためのアッセイは治療開始前に行うことができ、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加を示さないまたは提示を呈さない患者は、オーロラキナーゼB阻害剤治療を受けるのに適格である。(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加は、化学療法や放射線照射治療等、他の癌治療への耐性を示し得る。患者応答性をモニターするために、治療開始においてアッセイが行われて、組織サンプルにおけるバイオマーカーのベースラインレベル、例えば、コピー数増加を示す細胞のサンプルにおける全細胞パーセントまたは細胞数を確定することができる。次に、同一組織がサンプリングされてアッセイされ、バイオマーカーのレベルがベースラインと比較される。レベルが同一のままか減少する場合、治療は効果的であると思われ、これを継続することができる。ベースラインレベルよりも有意な上昇が生じる場合、患者は応答していないまたは継続的オーロラキナーゼB阻害剤治療への耐性を発現した可能性がある。
【0097】
本発明のアッセイは、固形腫瘍(例えば、肉腫または癌腫)または血液悪性腫瘍(例えば、血液、骨髄およびリンパ節に影響する癌)の標的療法等、標的癌治療法に用いられてよい。本発明のアッセイは、結腸直腸癌、膵癌、甲状腺癌、前立腺癌、膀胱癌、肝癌、胆管癌、口腔癌、非小細胞肺癌、小細胞肺癌、卵巣癌または乳癌等、固形腫瘍に用いられてよい。本発明のアッセイは、急性リンパ球性白血病(ALL)、急性骨髄性白血病(AML)、慢性骨髄性白血病(CML)、びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)、フィラデルフィア染色体陽性の急性リンパ芽球性白血病(Ph+ALL)および慢性リンパ球性白血病(CLL)等、血液悪性腫瘍に用いられてよい。アッセイは、オーロラキナーゼBの増幅または過剰発現が関与する、どの種類の癌に関して行われてもよい。末梢血、腫瘍または疑わしい腫瘍組織(新鮮凍結および固定パラフィン包埋組織等)、血液サンプルにおいて分離または同定された循環上皮細胞等の細胞分離株、リンパ節組織、骨髄および細針生検サンプルを含む、任意の種類の患者の組織サンプル等、任意の種類の試験サンプルまたはそれらの派生体において、発明に関するアッセイが行われる。
【0098】
本発明は、デオキシリボ核酸(DNA)プローブやタンパク質核酸(PNA)プローブ等、検出可能に標識した核酸に基づくプローブまたは特定の染色体標的とハイブリダイズするよう設計/選択された非標識プライマーを用いたハイブリダイゼーションアッセイによるゲノムバイオマーカーの検出を含む。非標識プライマーは、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)等による増幅アッセイで用いられ、プライマーが結合した後、続く検出のためにポリメラーゼが標的核酸配列を増幅する。PCRまたは他の増幅アッセイで用いられる検出プローブは、好ましくは蛍光であり、さらにより好ましくは「リアルタイムPCR」に有用な検出プローブである。蛍光標識もまた、in situハイブリダイゼーションにおける使用に好ましいが、通常ハイブリダイゼーション技法に用いられる他の検出可能な標識、例えば、酵素、発色性および同位体標識が用いられてもよい。有用なプローブ標識技法が文献に記載されている(その内容が参照により本明細書に組み込まれている、Fan、Y.−S.2002.Molecular cytogenetics:protocols and applications.Humana Press、トトワ、ニュージャージー州、xiv、p.411)。マイクロアレイ解析によるゲノムバイオマーカーの検出において、これらのプローブ標識技法は患者サンプルから抽出された染色体DNAの標識に適用され、これは続いてマイクロアレイとハイブリダイズする。
【0099】
ヒトABCB1遺伝子のポリヌクレオチド配列(配列番号1;GenBank受託番号NM_000927)を表1に示す。
【0100】
【表1】


【0101】
ヒトABCB4遺伝子のポリヌクレオチド配列(配列番号2;GenBank受託番号NM_018849)を表1に示す。
【0102】
【表2】



【0103】
好ましくは、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の染色体コピー数増加の存在を検出するために、in situハイブリダイゼーションが用いられる。プライマーおよびプローブは、配列番号1および配列番号2の配列を用いることによって当業者により作製され得る。
【0104】
本発明のin situハイブリダイゼーション法における使用のためのプローブは、大きく2つの群に分類される。染色体計数プローブ、すなわち通常反復配列領域である染色体領域とハイブリダイズして染色体全体の有無を示すプローブ、および遺伝子座特異的プローブ、すなわち染色体上の特定の遺伝子座とハイブリダイズし、特定の遺伝子座の有無を検出するプローブである。染色体腕プローブ、すなわち染色体領域とハイブリダイズして特定の染色体腕の有無を示すプローブが用いられてもよい。ABCB1およびABCB4遺伝子座等、調査している遺伝子座における独自の染色体DNA配列の変化を検出することのできる遺伝子座特異的プローブを用いることが好ましい。in situハイブリダイゼーションのための独自の配列プローブを使用するための方法は、その内容が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,447,841号明細書に記載されている。
【0105】
染色体計数プローブは、セントロメア近傍または遠位のいずれかに位置する反復配列とハイブリダイズすることができる、または染色体上の任意の位置に存在する独自の配列とハイブリダイズすることができる。例えば、染色体計数プローブは、染色体のセントロメアに関連する反復DNAとハイブリダイズすることができる。霊長目の染色体セントロメアは、α−サテライトDNAと呼ばれる約171塩基対のモノマー反復長からなる長いDNA縦列反復の複合ファミリーを含む。14番および18番染色体それぞれのセントロメアの蛍光in situハイブリダイゼーションプローブは、Abbott Molecular(デス・プレーンズ、イリノイ州)から市販されている。
【0106】
群を抜いて有用なin situハイブリダイゼーションプローブは、参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,491,224号明細書に記載されているプローブ等、直接標識蛍光プローブである。米国特許第5,491,224号明細書は、2種以上の蛍光標識プローブを用いた同時FISHアッセイについても説明する。
【0107】
有用な遺伝子座特異的プローブは、いずれの方法において作製されてもよく、一般に約10,000から約1,000,000塩基長の染色体DNA標的配列とハイブリダイズする配列を含む。好ましくは、プローブは、少なくとも100,000塩基長から約500,000塩基長の標的遺伝子座における染色体DNAの標的鎖とハイブリダイズし、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,756,696号明細書に開示されている通り、プローブの非特異的結合を防ぐためにプローブ混合液に非標識ブロッキング核酸を含む。非標識合成オリゴマー核酸またはペプチド核酸をブロッキング核酸として用いることもできる。特定の遺伝子座を標的化するために、プローブは、遺伝子に及ぶ核酸配列を含み、したがって全ゲノムコード遺伝子座の両サイドとハイブリダイズすることが好ましい。プローブは、バクテリア人工染色体(BAC)その他等、ヒトDNA含有クローンを出発材料に作製されてよい。ヒトゲノムのBACライブラリーは、Invitrogen(カールズバッド、カリフォルニア州)から入手でき、有用なクローンの同定のために研究することができる。カリフォルニア大学サンタクルーズ校のゲノムブラウザを用いて、標的遺伝子座におけるDNA配列を同定することが好ましい。次に、これらのDNA配列は、BACライブリースクリーニングの使用のためのPCRプライマーの合成に用いられ、有用なクローンを同定することができる。次に、クローンは従来のニックトランスレーション法によって標識され、in situハイブリダイゼーションプローブとして試験され得る。
【0108】
本明細書に記載されているin situハイブリダイゼーション法に用いられ得る蛍光プローブの例として、7−アミノ−4−メチルクマリン−3−酢酸(AMCA)、Texas Red(商標)(Molecular Probes、Inc.、ユージーン、オレゴン州)、5−(および−6)−カルボキシ−X−ローダミン、リサミンローダミンB、5−(および−6)−カルボキシフルオレセイン、フルオレセイン−5−イソチオシアネート(FITC)、7−ジエチルアミノクマリン−3−カルボン酸、テトラメチル−ローダミン−5−(および−6)−イソチオシアネート、5−(および−6)−カルボキシテトラメチルローダミン、7−ヒドロキシ−クマリン−3−カルボン酸、6−[フルオレセイン5−(および−6)−カルボキサミド]ヘキサン酸、N−(4,4−ジフルオロ−5,7−ジメチル−4−ボラ−3a,4aジアザ−3−インダセンプロピオン酸、エオシン−5−イソチオシアネート、エリスロシン−5−イソチオシアネート、5−(および−6)−カルボキシローダミン6GおよびCascade(商標)ブルーアセチルアジド(Molecular Probes;Invitrogenブランド)が挙げられる。
【0109】
プローブは、蛍光顕微鏡および各蛍光プローブに適切なフィルターを用いて、または複数の蛍光プローブを観察するための二重もしくは三重バンドパスフィルターセットを用いることによって観察され得る。例えば、その内容が参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,776,688号明細書を参照。ハイブリダイズしたプローブを可視化するために、自動デジタル画像システム等、任意の適切な顕微鏡イメージング法が用いられてよい。あるいは、染色体プローブのハイブリダイゼーションパターンを試験するために、フローサイトメトリー等の技法が用いられてよい。
【0110】
in situ ハイブリダイゼーションによる細胞毎の遺伝子増幅解析が好ましいが、定量的PCRによりゲノムバイオマーカーが検出されてもよい。この実施形態において、組織サンプルから染色体DNAが抽出され、次に(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の内、少なくとも1種に特異的な一対のプライマーを用いたPCR、または複数対のプライマーを用いたマルチプレックスPCRにより増幅される。バイオマーカーのための任意のプライマー配列が用いられてよい。用いられ得るプライマーの例を表3に示す。次に、参照増幅基準と比較することにより組織のコピー数が決定される。
【0111】
【表3】

【0112】
マイクロアレイに基づくコピー数解析が用いられてもよい。この実施例において、基質表面1平方センチメートル当たり最大数百万プローブのプローブ密度で配置された複数の固定化非標識核酸プローブを有する基質を含むマイクロアレイへのハイブリダイゼーションのため、抽出後の染色体DNAが標識される。複数のマイクロアレイ様式が存在するが、本発明においてそのいずれが用いられてもよい。用いられ得るマイクロアレイの例として、これらのそれぞれがAffymetrix、Inc.、サンタクララ、カリフォルニア州)から市販されているAffymetrix GeneChip(登録商標)Mapping 100K Set SNP Array(Matsuzaki、H.ら、「Genotyping over 100,000 SNPs on a pair of oligonucleotide arrays」、Nat Methods.1:109−11(2004)を参照)、Affymetrix GeneChip(登録商標)Mapping 250K Assay Kit類(GeneChip(登録商標)Human Mapping 250K Nsp ArrayやGeneChip(登録商標)Human Mapping 250K Sty Array等)またはAffymetrix GeneChip(登録商標)Mapping 500K Array Setや、Agilent Human Genome aCGH Microarray 44B(Agilent Technologies、Inc.、サンタクララ、カリフォルニア州から市販)、Illumina microarrays(Illumina、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)、Nimblegen aCGH microarrays(Nimblegen、Inc.、マディソン、ウィスコンシン州)等が挙げられる。オリゴヌクレオチドマイクロアレイを用いて増幅を検出する場合、標的領域において4以上の離間した位置にプローブ配列を有するマイクロアレイを用いることが好ましい。マイクロアレイに用いられ得るプローブの例を下の表4および配列番号23−321に示す。下の表4に列挙したプローブのフランキング配列を下の表5に示す。
【0113】
【表4】







【0114】
【表5】

【0115】
C.発現:mRNAの検出
(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の遺伝子発現レベルは、試験サンプル中の1種以上のmRNAの量を評価することによって決定され得る。サンプル中のmRNAを測定する方法は、本技術分野で公知のものである。mRNAレベルを測定するため、試験サンプル中の細胞が溶解され、本技術分野でよく知られている多様な方法によって、ライセートにおけるまたはライセートから精製もしくは粗精製されたRNAにおけるmRNAレベルが測定され得る。このような方法は、検出可能に標識したDNAまたはRNAプローブを用いたハイブリダイゼーションアッセイ(すなわち、ノーザンブロッティング)または適切なオリゴヌクレオチドプライマーを用いた定量的または半定量的RT−PCRの手法を含む。あるいは、定量的または半定量的in situハイブリダイゼーションアッセイは、例えば組織切片または溶解されていない細胞懸濁液および検出可能な標識(例えば、蛍光または酵素標識)DNAまたはRNAプローブを用いて行われてよい。mRNAを定量するための追加的な方法は、RNAプロテクションアッセイ(RPA)、cDNAおよびオリゴヌクレオチドマイクロアレイ、representation difference解析(RDA)、ディファレンシャルディスプレイ、EST配列解析ならびに遺伝子発現連続解析(SAGE)を含む。
【0116】
適切な実施形態において、試験サンプルにおける(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子を検出するために、PCR増幅が用いられる。すなわち、PCRにおいて、マーカー配列の向かい合った相補鎖における領域と相補的な、例えば(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の配列を含む2種のプライマー配列が調製される。DNAポリメラーゼ、例えばTaqポリメラーゼと共に過剰のデオキシヌクレオチド三リン酸が反応混合液に添加される。サンプル中に標的配列が存在すれば、プライマーが配列と結合し、ヌクレオチドを添加することによってポリメラーゼがプライマーをマーカー配列に沿って伸長させることになる。反応混合液の温度を上下させることにより、伸長されたプライマーがマーカーから解離して反応産物を形成し、過剰のプライマーがマーカーおよび反応産物に結合し、このプロセスが繰り返されることにより増幅産物を生成する。増幅されたmRNA量を定量するため、逆転写PCR増幅手順が行われてもよい。
【0117】
(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子の任意の適切な断片が増幅、検出されてよい。効率的なPCRプライマーの設計は、当業者の通常の技能範囲内である。用いられ得るプライマーの例を表3に示す。通常、検出のための増幅断片は、約50から300ヌクレオチドの長さである。
【0118】
増幅産物は、数通りの方法で検出され得る。増幅産物は、サンプルをゲル電気泳動し、続いてDNA結合染色試薬、例えばエチジウムブロマイドで染色することによって可視化され得る。あるいは、増幅産物は、放射性または蛍光ヌクレオチドで一体的に標識され、次にX線フィルムを用いてまたは適切な励起スペクトル下で可視化されてもよい。
【0119】
増幅は、「リアルタイム」法を用いてモニターされてもよい。リアルタイムPCRは、核酸標的の検出および定量を可能にする。通常、定量的PCRのこのアプローチは蛍光染色試薬を利用するが、これはSYBR GREEN(登録商標)等、二本鎖特異的染色試薬とすることができる。あるいは、他の蛍光染色試薬(例えば、FAMまたはHEX)は、オリゴヌクレオチドプローブまたはプライマーと結合することができる。リアルタイムPCRを行うことのできる様々な装置は、本技術分野において公知のものであり、例えばABI PRISM(登録商標)7900(Applied Biosystems)およびLIGHTCYCLER(登録商標)systems(Roche)を含む。PCRの各サイクルで生じた蛍光シグナルは、PCR産物の量に比例する。蛍光対サイクル数のプロットは増幅反応速度の説明に用いられ、蛍光閾値は最初のテンプレート濃度に関連した分画サイクル数を画定するのに用いられる。増幅が行われ、熱サイクルの間に蛍光を読み取ることのできる装置で検出される場合、目的のPCR産物はメルティング解析により非特異的PCR産物から識別され得る。増幅とシグナル生成の後に反応液の温度を徐々に上昇させつつ蛍光の変化を測定することによって、目的産物と非特異的産物のTmを決定することができる。
【0120】
方法は、「マルチプレックス検出」または「マルチプレックス」としても知られている、サンプル中の複数の核酸を増幅するステップを含むことができる。「マルチプレックスPCR」は、1種以上の標的遺伝子マーカー由来の核酸等、複数の核酸を検出および定量するために、2セット以上のPCRプライマーを反応液に添加することに関するPCRを意味する。さらに、内部標準(例えば、18S rRNA、GADPHまたはアクチン)を用いたマルチプレックスは、反応なしでPCR対照を提供する。
【0121】
D.サンプル処理およびアッセイの実施
本明細書において前述した通り、本発明の試験サンプルは組織サンプルとすることができる。本発明の方法によってアッセイされるべき組織サンプルは、末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル、または末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプルもしくはパラフィン包埋組織サンプルの内いずれかから作製された抽出液もしくは処理サンプル等、どの種類を含むこともできる。例えば、患者の末梢血サンプルは、最初に上皮細胞集団を抽出するよう処理されて、続いてこの抽出物がアッセイされてよい。疑わしい腫瘍細胞が濃縮された細胞サンプルを得るための組織サンプルのマイクロダイセクションが用いられてもよい。本明細書における使用に好ましい組織サンプルは、末梢血や、細針生検サンプル、新鮮凍結組織およびパラフィン包埋組織等、腫瘍組織または疑わしい腫瘍組織ならびに骨髄である。
【0122】
組織サンプルは、in situハイブリダイゼーションまたは他の核酸アッセイを行うための任意の所望の方法によって処理されてよい。好ましいin situハイブリダイゼーションアッセイのため、パラフィン包埋した腫瘍組織サンプルまたは骨髄サンプルをガラス製顕微鏡スライド上に固定し、溶媒、通常はキシレンで脱パラフィンする。組織脱パラフィンおよびin situハイブリダイゼーションの有用なプロトコールは、Abbott Molecular Inc.(デス・プレーンズ、イリノイ州)から入手できる。本発明に関するアッセイの実施において、任意の適切な器具使用または自動化が用いられてよい。PCRに基づくアッセイは、m2000装置システム(Abbott Molecular、デス・プレーンズ、イリノイ州)において行われてよい。好ましい蛍光in situハイブリダイゼーションアッセイのために、自動イメージングが用いられてよい。
【0123】
一実施形態において、サンプルは患者から得られた末梢血サンプルを含み、これは循環血中の腫瘍または癌細胞の抽出液を作製するよう処理されて、(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を試験される。循環血中の腫瘍細胞は、Immunicon(ハンティンドンバレー、ペンシルベニア州)から市販されているもの等、免疫磁気分離技法によって分離できる。次に、循環血中の腫瘍細胞に対して決定されたコピー数は、治療開始等、前の時点で決定されたコピー数を有する循環血中の腫瘍細胞のベースラインレベルまたは所定のレベルと比較される。ベースラインレベルまたは所定のレベルと比べてのコピー数増加は、治療の失敗を示唆し得る。
【0124】
試験サンプルは、臨床診断に十分な任意の数の細胞を含むことができ、通常少なくとも約100個の細胞を含む。通常のFISHアッセイにおいて、約25−1,000個の細胞のハイブリダイゼーションパターンが評価される。サンプルに十分な比率で遺伝子増幅が含まれることが判明した場合、試験サンプルは通常「アッセイ陽性」であると考えられる。染色体コピー数により同定され、特定のサンプルの陽性としての分類に用いられた細胞数は一般に、サンプル中の細胞数によって変化する。陽性の分類に用いられた細胞数は、カットオフ値としても知られる。決定に用いられ得るカットオフ値の例として、細胞約5、25、50、100および250個、またはサンプル集団における細胞の5%、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、50%および60%が挙げられる。1個の細胞のような少なさであっても、サンプルを陽性と分類するのに十分となることができる。通常のパラフィン包埋組織サンプルにおいて、少なくとも30個の細胞を陽性と同定することが好ましく、少なくとも20個の細胞を染色体コピー数増加が陽性であると同定することがより好ましい。例えば、通常のパラフィン包埋結腸直腸癌の30個の細胞における検出は、組織を陽性であり治療に適格であると分類するのに十分となる。
【0125】
E.キット
本発明は、試験サンプルにおける(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を検出するためのキットも企図する。このようなキットは、上述のコピー数増加の有無を決定するための1種以上の試薬を含むことができる。例えば、前記キットは、1種以上の核酸プローブを含むことができる。あるいは、またはプローブに加えて、キットは1種以上の核酸プライマーを含むことができる。
【0126】
したがって、本開示は、1種以上の核酸プライマー、核酸プローブまたは本明細書に記載されている核酸プライマーおよびプローブを含む、診断および品質管理のキットをさらに提供する。任意に、本発明のアッセイ、キットおよびキット構成要素は、市販のプラットフォーム(例えば、Abbott Laboratories、アボットパーク、イリノイ州のPrism(登録商標)、AxSYM(登録商標)、ARCHITECT(登録商標)およびEIA(ビーズ)プラットフォームにおけるイムノアッセイならびに他の市販および/またはインビトロ診断検査)における使用に最適化され得る。さらに、アッセイ、キットおよびキット構成要素は、他の様式、例えば電気化学的または他のハンドヘルドもしくはポイントオブケアアッセイシステムで用いられてよい。本開示は、例えばTnI、CKMBおよびBNP等、数種類の心臓マーカーのサンドイッチ式イムノアッセイを行う、市販のAbbott Point of Care(i−STAT(登録商標)、Abbott Laboratories、アボットパーク、イリノイ州)電気化学的イムノアッセイシステムに適用できる。使い捨て試験器具におけるイムノセンサーおよびこれを操作する方法は、例えば参照により本明細書に組み込まれている、米国特許出願公開第2003/0170881号、第2004/0018577号、第2005/0054078号および第2006/0160164号明細書に記載されている。電気化学的および他の種類のイムノセンサーの製造のさらなる背景は、それに関してその教示のために同様に参照により本明細書に組み込まれている米国特許第5,063,081号明細書に見出すことができる。
【0127】
任意に、キットは、品質管理試薬(例えば、感受性パネル、標準物質および陽性対照)を含む。品質管理試薬の調製は本技術分野でよく知られおり、例えば様々な免疫診断薬挿入シートに記載されている。
【0128】
キットは、蛍光プローブ、放射性部分、酵素、ビオチン/アビジン標識、発色団、化学発光標識その他等、検出可能な標識を組み込むことができる、またはキットは、核酸プライマー、核酸プローブまたは本明細書に記載されているコピー数増加の有無を検出するための核酸プライマーおよび核酸プローブを標識するための試薬を含むことができる。プライマーおよび/またはプローブ、標準物質および/または対照は、別々の容器に提供、または適切なアッセイ形式、例えばマイクロタイタープレートに前分注してよい。
【0129】
キットは、バッファー、塩、酵素、酵素補助因子、基質、検出試薬等、診断検査を行うまたは品質管理評価を容易にするのに必要とされる他の試薬を、任意に含むことができる。試験サンプルの単離および/または処理のためのバッファーや溶液(例えば、前処理試薬)等、他の構成要素がキットに含まれてもよい。キットは、1種以上の他の対照を追加的に含むことができる。1つ以上のキット構成要素は、凍結乾燥されてよく、キットは凍結乾燥された要素の再構成に適した試薬をさらに含むことができる。
【0130】
様々なキット構成要素は、任意に適切な容器に提供される。上に示す通り、1つ以上の容器は、マイクロタイタープレートとすることができる。キットは、サンプルを維持または保存するための容器(例えば、血液または尿サンプルのための容器またはカートリッジ)をさらに含むことができる。必要に応じて、キットは、反応槽、混合槽および試薬または試験サンプルの調製を容易にする他の構成要素を任意に含むこともできる。キットは、シリンジ、ピペット、ピンセット、メジャースプーンその他等、試験サンプル採取を補助するための1つ以上の器具を含むこともできる。
【0131】
キットはさらに、書面、またはディスク、CD、DVDその他等のコンピューター可読媒体に提供され得る、使用のための取扱説明書を任意に含むことができる。
【0132】
F.キットの適応
例えば、米国特許第5,089,424号および第5,006,309号明細書に記載されているように、また例えば、Abbott Laboratories(アボットパーク、イリノイ州)からARCHITECT(登録商標)として市販されているように、構成要素および本明細書に記載されている方法を用いて(i)ABCB1遺伝子、(ii)ABCB4遺伝子または(iii)ABCB1遺伝子とABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定する方法ならびにキット(またはその構成要素)は、様々な自動および半自動システム(固相が微粒子を含むシステム等)における使用に適応させることができる。
【0133】
自動または半自動システムの、非自動システム(例えば、ELISA)に対する相違の一部として、第1の特異的結合相手(例えば、捕集抗体)が結合する基質(これはサンドイッチ形成および分析物の反応性に影響を与える可能性がある)、捕集の長さとタイミング、検出および/または任意な何らかの洗浄ステップが挙げられる。ELISA等、非自動様式がサンプルと捕集試薬とのインキュベーションに比較的長い時間(例えば、約2時間)を必要とし得るのに対し、自動または半自動様式(例えば、ARCHITECT(登録商標)、Abbott Laboratories)は、比較的短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)では約18分間)でよい。同様に、ELISA等、非自動形式が比較的長いインキュベーション時間(例えば、約2時間)で結合試薬等、検出抗体をインキュベートし得るのに対し、自動または半自動様式(例えば、ARCHITECT(登録商標))は比較的短いインキュベーション時間(例えば、ARCHITECT(登録商標)では約4分間)でよい。
【0134】
Abbott Laboratoriesから入手できる他のプラットフォームは、AxSYM(登録商標)、IMx(登録商標)(例えば、これにより参照によりその全体が本明細書に組み込まれている米国特許第5,294,404号明細書を参照)、PRISM(登録商標)、EIA(ビーズ)およびQuantum(商標)IIならびに他のプラットフォームを含むが、これらに限定されるものではない。さらに、アッセイ、キットおよびキット構成要素は、他の様式、例えば電気化学的または他のハンドヘルドもしくはポイントオブケアアッセイシステムで用いられてよい。本開示は、例えば、サンドイッチイムノアッセイを行う市販のAbbott Point of Care(i−STAT(登録商標)、Abbott Laboratories)電気化学的イムノアッセイシステムに適用できる。イムノセンサーならびにその製造方法および使い捨て試験器具における操作方法は、例えば、それに関する教示のためその全体が参照により本明細書に組み込まれている、米国特許第5,063,081号明細書、米国特許出願公開第2003/0170881号、第2004/0018577号、第2005/0054078号および第2006/0160164号明細書に記載されている。
【0135】
さらに、言うまでもなく、本明細書に記載されている方法およびキットは、アッセイを行うための他の試薬および方法を必然的に包含する。例えば、本技術分野で公知のバッファーおよび/または容易に調製または使用に最適化され得るバッファー等、様々なバッファーが包含される。
【0136】
次に、本開示の実施例を示すが、これは具体例によるものであり、限定されるものではない。
【実施例】
【0137】
試薬
次の通り、提示のサプライヤーから抗体を購入した。Calbiochem(サンディエゴ,カリフォルニア州)からMDR1/P−糖タンパク質(カタログ番号517310)、Santa Cruz Biotechnology、Inc.(サンタクルーズ、カリフォルニア州)から抗BRCP抗体(カタログ番号sc−58222)、Cell Signaling Technology(ダンバース、マサチューセッツ州)から抗リン酸化ヒストンH3(Ser10)(カタログ番号9701)および抗ヒストンH3(カタログ番号9715)、BD Biosciences(フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)からフィコエリトリン(PE)結合ヤギ抗マウスIgG(カタログ番号550589)およびPE結合抗ヒトCD44(カタログ番号555479)、Sigma Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)からβ−アクチン、Invitrogen(カールズバッド、カリフォルニア州)からAlexa Fluor680結合ヤギ抗ウサギIgG(カタログ番号A21109)ならびにRockland Immunochemicals、Inc.(ギルバーツビル、ペンシルベニア州)からIRDye800結合ロバ抗マウス(カタログ番号610−732−124)。Sigma Aldrich(セントルイス、ミズーリ州)からパクリタキセルを購入し、Wenger Chemtech(リーエン、スイス)からPSC−833を購入し、Alexis Biochemicals Corporation(サンディエゴ、カリフォルニア州)からフミトレモルギンCを購入した。
【0138】
MLN8054(4−{[9−クロロ−7−(2,6−ジフルオロフェニル)−5H−ピリミド[5,4−D][2]ベンザゼピン−2−イル]アミノ}−安息香酸)(Manfriedi、MGら、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、104:4106−4111(2007)を参照;MLN8075はオーロラAを阻害)、AZD1152(2−[[3−({4−[(5−{2−[(3−フルオロフェニル)アミノ]−2−オキソエチル}−1H−ピラゾール−3−イル)アミノ]−キナゾリン−7−イル}オキシ)プロピル](エチル)アミノ]エチル二水素リン酸)およびVX−680/MK−0457(シクロロプロパンカルボン酸{4−[4−(4−メチル−ピペラジン−1−イル)−6−(5−メチル−2H−ピラゾール−3−イルアミノ)−ピリミジン−2−イルスルファニル]−フェニル}−アミド)の化学構造は開示され、当業者に知られている。
【0139】
細胞培養およびAZD1152HPQA耐性細胞系の作製
American Type Culture Collection(ATCC;マナサス、バージニア州)からSW620、HCT−15およびAsPC1細胞系を入手し、ATCCの推奨に従って増殖させた。
【0140】
1μM AZD1152HQPAの存在下(1週間に2回培地を交換しつつ)3ヶ月の期間にわたって培養することにより、ポリクローナルSW620ABCB1/3細胞を選択した。12週間後、AZD1152HQPAに対する感受性を評価した。薬剤選択後に親/薬剤耐性ペア各系統の時間を倍にしても、顕著な変化はなかった。全細胞を37℃、5%COにおいて維持した。
【0141】
フローサイトメトリー
Cytofix/Cytopermキット(カタログ番号554714、BD Biosciences(フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を用いたフローサイトメトリーにより、BCRPまたはヒトCD44の細胞表面発現の決定を行った。サンプルをBD LSR IIフローサイトメーターにかけ、BD FACSDivaソフトウエア(BD Biosciences、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)を用いて解析した。
【0142】
コロニー形成アッセイ
SW620ABCB1/3およびそれぞれの親細胞系を洗浄し、6ウェルプレート中の薬剤を含まない培地に500個/ウェルの細胞を播種した。次いで、24時間後、化合物をDMEMまたはRPMIで希釈し、細胞に添加し、これを37℃で7−10日間培養した。次いで、細胞を固定し、0.2%クリスタルバイオレットで染色して可視化し、コロニーを計数した。
【0143】
マイクロアレイ解析
全RNAを単離し、その5μgをAffymetrix、Inc.(サンタクララ、カリフォルニア州)による標準的なプロトコールを用いたマイクロアレイ解析に用いた。IVT標識化キットを用いて断片化した標識cRNAを合成し、高密度Affymetrixマイクロアレイ(AffymetrixヒトゲノムU133Aバージョン2.0)と45℃で一晩ハイブリダイズさせた。スキャンした画像および強度ファイルをRosetta Resolver遺伝子発現解析ソフトウエア、バージョン6.0(Rosetta Inpharmatics、カークランド、ワシントン州)に取り込んだ。ResolverのAffymetrixエラーモデルを適用し、反復を組み合わせた。発現プロファイルは、各細胞系の3種の独立したサンプルから得られたmRNAに由来する。
【0144】
イムノブロット解析
SW620およびSW620ABCB1/3細胞を洗浄し、薬剤を含まない培地で一晩増殖させた。ヒストンH3のリン酸化をモニターするため、細胞をAZD1152HQPAで90分間処理し、次に、ホスファターゼ阻害剤カクテル1および2ならびにプロテアーゼ阻害剤カクテル(Sigma Aldrich(セントルイス、ミズーリ州))を添加したBiosource(カマリロ、カリフォルニア州)製の細胞抽出バッファー(カタログ番号FNN0011)中で速やかに抽出した。続いて、ライセートを10秒間探触子(probe)で超音波処理し、次に15,000g、15分間、4℃の遠心分離により清澄化した。SDSサンプルバッファーで処理した後、タンパク質抽出物をNuPAGE Bis−Tris4−12%ゲル(Invitrogen(カールズバッド、カリフォルニア州))で分離した。サンプルをPVDF膜(Invitrogen(カールズバッド、カリフォルニア州))へ電気的に転写させ、一次抗体と一晩インキュベートし、Pierce Dura−Signal化学発光試薬(Pierce、ロックフォード、イリノイ州)またはLI−COR Biosciences(リンカーン、ネブラスカ州)製のOdyssey赤外線イメージングシステムを用いて撮像した。
【0145】
細胞内および細胞外薬剤濃度の測定
SW620およびSW620ABCB1/3細胞を洗浄し、薬剤を含まない培地で一晩増殖させた。次に、細胞を1μM AZD1152HQPAで4時間処理した。サイトゾルにおける薬剤蓄積をLC−MS分析により決定した。すなわち、細胞をPBSで1回リンスし、細胞溶解バッファー中で抽出した。培地、PBS洗浄液および細胞ライセートを2容の酸性化MeOHで処理した。次に、15000g、15分間、4℃で遠心分離することによって、粗全細胞ライセートを清澄化し、不溶性細胞ペレットとサイトゾルを得た。不溶性細胞ペレットを50%アセトニトリルで1:10希釈し、11,000gで5分間遠心分離した。純粋化合物から作成した検量線と比較して、各画分におけるAZD1152HQPA濃度を決定した。
【0146】
siRNAによるABCB1およびABCB4のサイレンシング
4種それぞれのsiRNA(ABCB1;カタログ番号LQ−003868、ABCB4;カタログ番号LQ−007302−00)およびルシフェラーゼsiRNA陰性対照(5’−AACGUACGCGGAAUACUUCGA−3’(配列番号3)の解析されたON−TARGETplus SMARTpoolをDharmacon、Inc.(ラファイエット、コロラド州)から購入した。SW620およびSW620ABCB1/3細胞を洗浄し、1ウェル当たり30,000細胞で24ウェルプレートに播種し、一晩付着させた。翌日、Lipofectamine2000(Invitrogen、カールズバッド、カリフォルニア州)を用いて、メーカーの取扱説明書に従って細胞を1オリゴ当たり最終濃度25nMのsiRNAオリゴでトランスフェクトした。トランスフェクション48時間後に細胞を回収した。
【0147】
DNA配列解析のためのRNA単離およびRT−PCR
RNeasy Mini Kit(Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州)を用いて細胞系から全細胞RNAを単離し、UV吸光度分光法により定量した。Qiagen製の(OneStep RT−PCRキット)を用いて逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT−PCR)を行った。オーロラBプライマー(フォワードプライマー:5’−GGAGAGTAGCAGTGCCTTGGACC−3’(配列番号4)およびリバースプライマー:5’−AGGAGGAGGTAGAAAACAGATAAGGGAAC−3’(配列番号5))をPCR増幅に用いた。オーロラBネステッドプライマー(フォワードプライマー:5’−AGTGCCTTGGACCCCAGCTCTC−3’(配列番号6)およびリバースプライマー:5’−GAAAACAGATAAGGGAACAGTTAGGGATC−3’(配列番号7))をBigDye Terminator v3.1サイクル配列解析キット(Applied Biosystems、フォスターシティー、カリフォルニア州)による直接配列解析に用いた。Abbott LaboratoriesのDNA配列解析実験室がDNA配列解析を行った。すなわち、Applied Biosystems Big Dye(商標)Terminatorバージョン3.1サイクル配列解析試薬を用いて、メーカー推奨のプロトコール(P/N4337035)に従ってRT−PCR産物の直接配列解析を行った。配列解析用プライマーは、5プライムおよび3’プライム増幅プライマーとそれぞれ10および11塩基が内部で入れ子形成している。3130xl Genetic Analyzerにおいて50cmアレイおよびPOP−7(商標)ポリマーを用いて、蛍光標識配列解析産物の電気泳動を行った。KBベースコーラーを用いたSequence Analysisバージョン5.2により、ベースコーリングを行った。
【0148】
比較ゲノムハイブリダイゼーション
DNAeasyキット(Qiagen、バレンシア、カリフォルニア州)を用いてゲノムDNAを単離し、100K SNP遺伝子型決定アレイセット(Affymetrix、サンタクララ、カリフォルニア州)にかけた。メーカーのプロトコールに従ってアレイを行った。マイクロアレイ生データファイルをGene Expression Omnibus(受託番号GSE7068)(Gene Expression Omnibusは、MIAME対応データ寄託を支持する遺伝子発現/分子存在量のレポジトリおよび遺伝子発現データの走査、問い合わせおよび検索の監督されたオンライン提供のことである)およびArray Express(受託番号E−MEXP−1008)(ArrayExpressは、MGED推奨に従ってMIAMEおよびMINSEQE対応データ保存を目的とする、トランスクリプトミクスデータの公共のレポジトリである。ArrayExpress Warehouseは、レポジトリにおける実験の監督されたサブセット由来の遺伝子指標の発現プロファイルを保存する。)にロードした。GTYPEソフトウエア(Affymetrix、サンタクララ、カリフォルニア州)を用いてデータ処理し、各プローブセット(SNP)の推定コピー数の情報を含むコピー数(.cnt)ファイルを作成した。この.cntファイルは、セット内の両方のアレイから組み合わせた情報を含んでいた。社内開発されたUNIX(登録商標)ベースのソフトウエアパッケージ(Olejniczakら、Mol.Can.Res.、5(4):331−339(2007)を参照)であるGeneWalkerを用いてファイルを解析した。
【0149】
インビボ実験
Charles River Laboratories(ウィルミントン、マサチューセッツ州、米国)から5−6週齢のC.B.−17scid−bg(scid−bg)またはC.B.−17scid(scid)マウスを入手し、8週齢を超えたおよび/またはサイズが約20グラムを超えたときに実験に用いた。全動物実験は、American Association of Laboratory Animal Care認定のInternal Institutional Animal Care and Use Committee(IACUC)に従って、米国農務省動物保護法による基準、動物実験の人道的管理と使用に関する公衆衛生局規範および実験動物の福祉に関するNIH指針を満たすまたはそれに勝る条件下で、特定の無病原体環境で行った。明らかな脱水の兆候、毛づくろいの不足、嗜眠、15%を超える体重減少および体重の20%を超える腫瘍体積は、腫瘍エンドポイントの決定に用いた。
【0150】
ATCC(マナサス、バージニア州)からSW620細胞系を入手し、その推奨するところに従って抗生物質なしで培養し、インビボ接種前に定期的にマイコプラズマ属(Mycoplasma)の試験をして感染性微生物PCR増幅試験(IMPACT;Missouri Research Animal Diagnostic Laboratory、コロンビア、ミズーリ州)により微生物が存在しないことを確認した。1mM L−グルタミンおよび10%ウシ胎仔血清(FBS)を添加したDulbecco基礎培地(DMEM)でSW620細胞を培養し、37℃で、5%CO、95%空気で平衡化した加湿雰囲気で維持し、対数期における腫瘍細胞接種の場合、継代3−7の間用いた。細胞(1−2×10)をマトリゲル(BD Biosciences、フランクリン・レイクス、ニュージャージー州)と1:1で混合し、雌マウスの剪毛した側腹部に皮下注射(0.2ml)した。投薬が始まる前に腫瘍をサイズ適合(408−605mm)し、処置群に割り当てた。2本の交差する直径をノギスで測定し、腫瘍体積を式、(長さ×幅)/2により概算した。腫瘍成長速度における処置効果は、[(X日目における処置群の平均腫瘍体積/X日目における対照賦形剤群の平均腫瘍体積)×100]により計算される、96T/Cdayを決定することによって評価した。100−算出した%T/Cdayによって、%TGIを計算した。10%Solutol(BASF、フローラム・パーク、ニュージャージー州)および90%酒石酸(Sigma Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)を含む賦形剤において、VX−680を腹腔内投与した(i.p.、50mg/kg/day、1日2回(b.i.d.)を最後まで;エンドポイントに達して実験終了したときに依存して17−21日間)。2%エタノール、5%Tween20、20%PEG−400および73%HPMC(Sigma Aldrich、セントルイス、ミズーリ州)を含む賦形剤において、AZD1152を腹腔内投与した(100mg/kg/day、b.i.d.×3、4日間投与、3日間休止を1−2サイクル)。
【0151】
結果
オーロラキナーゼ阻害剤の活性を無効にするために癌細胞が細胞自律的に利用できる潜在的なメカニズムを明らかにするため、AZD1152、AZD1152HQPAの活性アルコールに生来耐性を有する細胞系を作製する試みがなされた。1μM AZD1152HQPA(約50倍のIC50)の存在下、3ヶ月の期間SW620結腸癌細胞を増殖させた。5代継代後、0.01%未満の細胞がこの処理で生存していた(データなし)。初期選別期に生存していた細胞は、1μM AZD1152HQPAの存在下さらに3ヶ月間維持するか、または薬剤なしで同じ期間増殖させた。次に、親細胞および薬剤耐性細胞の全ゲノムマイクロアレイ解析を行って、AZD1152HQPA耐性と相関する可能性のある遺伝子発現の変化を同定した。薬剤耐性SW620派生体(以後、SW620ABCB1/3と呼ぶ)において、MDR1をコードするABCB1はアレイにおいて最も高度に過剰発現した遺伝子であり、これは2種類の異なるプローブセットによって同定された(図1A、挿入図)。SW620ABCB1/3において、ABCB1ほどではないが、第2の遺伝子であるMDR3をコードするABCB4もまた上方制御されることも観察された。公知の小分子トランスポーターをコードする遺伝子セットの中で、高度にディファレンシャルな発現を示すのはABCB1およびABCB4の2種だけであった(図1A)。7番染色体長腕の共通ゲノム遺伝子座(7q21.1)内にこれらの遺伝子が並んで存在することを考慮すると、ABCB1とABCB4の明らかな同時上方制御は興味深い。このことは、ABCB1およびABCB4を含むゲノム領域が、AZD1152HQPA選択の間に増幅され、これらトランスポーター遺伝子のタンデムな過剰発現をもたらした可能性があることを示唆する。比較ゲノムハイブリダイゼーション(CGH)解析により、親系統SW620と比べてSW620ABCB1/3においてABCB1(5コピー)とABCB4(3コピー)両方のDNAコピー数の増加が観察された(図1B)。SW620ABCB1/3において、両方の遺伝子のコピー数変化は、培地からAZD1152HQPAを退薬した後3ヶ月間維持され(図1B)、これは耐性の表現型が遺伝子増幅と一致する持続的な遺伝的事象を伴うことを示した。MDR1は、AZD1152HQPAの存在下で増殖した細胞においてタンパク質レベルで高度に上方制御され、選択圧がなくなった後であっても持続した(図1C)。
【0152】
SW620ABCB1/3派生体は、オーロラB基質であるヒストンH3のリン酸化阻害のために、親系統より約100倍多いAZD1152HQPAを必要とした(図2A)。MDR1はATP依存性の生体異物トランスポーターであるため、SW620ABCB1/3の細胞内区画からの流出によりAZD1152HQPAが除去される可能性があり、したがってヒストンH3リン酸化が残ることは合理的である。LC−MS分析により、親系統SW620細胞と比べて顕著に少ない薬剤が耐性系統のサイトゾルで測定された(図2B)。MDR1(Girdler、F.ら、Chem.Biol.、15:552−562(2008)、Twentyman PR、Eur.J.Cancer、27:1639−1642(1991)を参照)およびMDR3(Boesch、D.、Cancer Res.、51:4226−4233(1991)を参照)の小分子阻害剤であるPSC−833は、SW620ABCB1/3細胞のAZD1152HQPA耐性を後退させるのに効果的であった(図2C)。SW620ABCB1/3において、siRNAによるABCB1の部分ノックダウン(約75%)は、AZD1152HQPAによるヒストンH3リン酸化の阻害を部分的に回復させ(図2D)、これはこのモデルにおける完全なAZD1152HQPA耐性にABCB1が必要とされることを示唆した。
【0153】
50%(v/v)マウス血漿の存在下でアッセイした場合、SW620またはSW620ABCB1/3(それぞれ0.02または2μM)におけるAZD1152HQPAの内因性効力の産物およびAZD1152HQPAの効力の倍数的減少を計算することによって、オーロラBの阻害に必要なAZD1152HQPAの最小腫瘍内濃度を評価した(効力喪失は恐らく血漿タンパク質の結合が原因である;データなし)。この推測に基づくと、ヒストンH3リン酸化の阻害を生じるためには、それぞれSW620またはSW620ABCB1/3異種移植片において、0.1または10μMのAZD1152HQPA最小閾値濃度が達成されなければならない(図3A、上パネル)。投薬後24時間の期間にわたり、AZD1152HQPAの1回のIP投与後に腫瘍薬物動態を評価した。この解析は、親コホートと比較したSW620ABCB1/3異種移植片における腫瘍AUC全体の減少を示した。前述の推測に基づくと、SW620ABCB1/3腫瘍におけるAZD1152HQPA濃度は、ほんの短い期間(約6時間)最小閾値濃度を超えた一方、SW620腫瘍において閾値を超える濃度が少なくとも24時間達成された(図3A、下パネル)。それに応じて、親系統の腫瘍と比べると、SW620ABCB1/3で一過性のヒストンH3リン酸化阻害だけが観察された。倍数体化は有糸分裂におけるオーロラB阻害の徴候であるため、腫瘍における増殖細胞が1回有糸分裂を試みるのに十分な長さ、またはほぼ1回の細胞周期に相当する期間(15−20時間)、最小閾値濃度でAZD1152が存在したに相違ないことが予見される。親系統SW620異種移植片におけるオーロラBの持続した阻害は、このモデルで観察された非常に有効な活性に付随し、一方、SW620ABCB1/3腫瘍に観察された一過性阻害は、いずれの用量においても抗腫瘍効果をほとんど生じないまたは生じない(cf.図3B対図3C−D)。
【0154】
これらのモデルにおいて遺伝子ABCB1およびABCB4の上方制御がインビトロとインビボの両方でAZD1152の抗癌特性への耐性を付与するのであれば、次のステップは、これら推定オーロラ阻害剤耐性遺伝子の存在が内因性腫瘍耐性の確実な前兆となるか否かを解明することである。ヒト異種移植片パネルから得られた内部遺伝子発現データ(データなし)を問い合わせ、ABCB1(MDR1)の上方制御を示した腫瘍モデルを同定した。これらのモデルの中で、HCT−15およびAsPC1は、それぞれ高レベルのMDR1をタンパク質レベルで発現することが確認された(図4A)。3種類の代表的なオーロラキナーゼ阻害剤および公知のMDR1基質であるパクリタキセル(Smith AJ.、J.Biol.Chem.、275:23530−23539(2000)を参照)をHCT−15およびAsPC1を組み入れた細胞系パネルにおけるコロニー形成および細胞増殖アッセイにおいて評価した。一般に、大部分の細胞系は、低ナノモル濃度範囲内のIC50を示すAZD1152HQPAに非常に感受性があった(4−15nM;図4B)。対照的に、SW620ABCB1/3、HCT−15およびAsPC1は、この化合物に対して有意な耐性を有する(それぞれ2、1.4および2.2、.63μMのIC50)。興味深いことに、SW620ABCB1/3、HCT−15およびAsPC1の耐性の程度は低かったが、全オーロラキナーゼ阻害剤のVX−680は、細胞系パネルにおいて同様の活性プロファイルを示した。予想通り、SW620ABCB1/3およびHCT−15(AsPC1は除く)は天然の産物であるパクリタキセルには比較的感受性がなかった。オーロラA選択的化合物であるMLN8054の明らかな効力減少は観察されなかった。重要なことに、AZD1152HQPAに比較的感受性のあるSW620細胞系は、イムノブロット解析で検出可能なABCB4(MDR3)を発現しなかった(図4Aおよびデータなし)。PSC−833およびフミトレモルギンCを用いて、それぞれHCT−15およびAsPC1におけるAZD1152HQPA耐性にBRCPが必要とされることを確認した(図4C−D)。
【0155】
HCT−15結腸癌異種移植片の増殖は、AZD1152かVX−680のいずれかによる処理によっても衰えなかった(図4E)が、一方両方の治療法は、代替的な結腸癌モデルであるHCT116において(図4D)またDoHH−2 B細胞リンパ腫異種移植片において(図4C)顕著な腫瘍増殖阻害を誘導した。
【0156】
当業者であれば、本開示が、目的を実行して記載の目標および利点ならびにそれらに特有の目標および利点を得るように十分に構成されていることを容易に理解できる。本明細書に記載されている分子複合体、方法、手順、処置、分子および特異的化合物は、目下好ましい実施形態の代表的なものであり、例示的であり、本発明の範囲の限定を目的とするものではない。当業者であれば、本発明の範囲および精神を逸脱することなく、本明細書に開示されている発明に対し様々な置き換えや修正が行われてよいことを容易に理解できる。
【0157】
本明細書に記載されているあらゆる特許および刊行物は、本発明が属す当業者の水準を示す。あらゆる特許および刊行物は、各刊行物それぞれが特にまた個々に参照により本明細書に組み込まれていることを示すのと同程度で、参照により本明細書に組み込まれている。
【0158】
本明細書に例示的に記載されている発明は、本明細書に特に開示されていないいかなる要素(単数または複数)や、限定(単数または複数)がなくても適切に実行できる。したがって、例えば、本明細書における各事例において、用語「を含む」、「から実質的になる」および「からなる」のいずれも、それ以外の2個の用語に置き換えられてよい。用いられている用語および表現は、限定のための用語ではなく説明のための用語として用いられ、このような用語および表現の使用において、示され記載されている特性またはその一部のどの均等物も排除する意図はなく、請求されている本発明の範囲内で様々な修正が可能であることが認識されている。したがって、本開示は好ましい実施形態および任意の特性により特に開示されているが、本明細書に開示されている概念の修正および変更が当業者により行われてよいこと、またこのような修正および変更が、添付の特許請求の範囲により定義されている本発明の範囲内にあると考えられることを理解するべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オーロラキナーゼB阻害剤治療に対する適格性に関して患者を分類する方法であって、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)(1)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子または(2)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、および
c)(1)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子または(2)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無に基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤による治療を受けるのに適格であると分類するステップ
を含む、方法。
【請求項2】
オーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者をモニターする方法であって、
a)現在少なくとも1種類のオーロラキナーゼB阻害剤により治療されている癌患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)(1)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子または(2)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB1遺伝子またはABCB4遺伝子のコピー数をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップ、および
d)ステップc)における比較に基づき、患者がオーロラキナーゼB阻害剤による治療を継続すべきかどうかを決定するステップ
を含む、方法。
【請求項3】
オーロラキナーゼB阻害剤による治療に耐性である癌を有する患者を分類する方法であって、
a)患者から得られた試験サンプルを準備するステップ、
b)(1)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子または(2)染色体座7q21.1におけるABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するステップ、
c)試験サンプルにおけるABCB1遺伝子またはABCB4遺伝子のコピー数増加の有無をベースラインレベルまたは所定のレベルと比較するステップ、および
d)(i)染色体座7q21.1におけるABCB1遺伝子またはABCB4遺伝子のコピー数増加の存在および(ii)試験サンプルにおけるコピー数増加がベースラインレベルまたは所定のレベルよりも高いかどうかに基づき、患者をオーロラキナーゼB阻害剤治療に耐性である癌を有すると分類するステップ
を含む、方法。
【請求項4】
オーロラキナーゼB阻害剤がAZD1152、ZM447439、VX−680/MK0457またはヘスペラジンである、請求項1、2または3の方法。
【請求項5】
試験サンプルが組織サンプルを含む、請求項1、2または3の方法。
【請求項6】
組織サンプルが、末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、リンパ節サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプル、パラフィン包埋組織サンプル、または末梢血サンプル、腫瘍組織もしくは疑わしい腫瘍組織、薄層細胞診サンプル、細針生検サンプル、骨髄サンプル、尿サンプル、腹水サンプル、洗浄サンプル、食道擦過サンプル、膀胱もしくは肺洗浄液サンプル、髄液サンプル、脳液サンプル、管吸引サンプル、乳頭分泌サンプル、胸水サンプル、新鮮凍結組織サンプルもしくはパラフィン包埋組織サンプルの内のいずれかから作製された抽出液もしくは処理サンプルを含む、請求項5の方法。
【請求項7】
決定ステップ(b)がin situハイブリダイゼーションにより行われる、請求項1、2または3の方法。
【請求項8】
in situハイブリダイゼーションが、(a)蛍光標識した核酸プローブ、(b)少なくとも2種の核酸プローブまたは(c)ペプチド核酸プローブを用いて行われる、請求項7の方法。
【請求項9】
決定ステップ(b)が、ポリメラーゼ連鎖反応または核酸マイクロアレイアッセイにより行われる、請求項1、2または3の方法。
【請求項10】
癌が結腸直腸癌または膵癌である、請求項1、2または3の方法。
【請求項11】
(a)ABCB1遺伝子におけるコピー数増加の存在がMDR1ポリペプチドの発現増加と相関するまたは(b)ABCB4遺伝子におけるコピー数増加の存在がMDR3ポリペプチドの発現増加と相関する、請求項1、2または3の方法。
【請求項12】
患者が、化学療法、放射線照射またはそれらの組み合わせによっても治療されている、請求項1、2または3の方法。
【請求項13】
(a)ABCB1遺伝子のコピー数増加の有無を決定するための試薬、
(b)試験を行うための取扱説明書
を含むキット。
【請求項14】
コピー数増加の有無を決定するための試薬が、ABCB1遺伝子の少なくとも一部とハイブリダイズする検出可能に標識したポリヌクレオチドを含む、請求項13のキット。
【請求項15】
(a)ABCB4遺伝子のコピー数増加の有無を決定するための試薬、
(b)試験を行うための取扱説明書
を含むキット。
【請求項16】
コピー数増加の有無を決定するための試薬が、ABCB4遺伝子の少なくとも一部とハイブリダイズする検出可能に標識したポリヌクレオチドを含む、請求項15のキット。

【図1A】
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【図1B】
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【図1C】
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【図1D】
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【図2A】
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【図2B】
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【図2C】
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【図2D】
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【図3A】
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【図3B】
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【図3C】
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【図3D】
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【図4A】
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【図4B】
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【図4C】
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【図4D】
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【公表番号】特表2012−516160(P2012−516160A)
【公表日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−548326(P2011−548326)
【出願日】平成22年1月29日(2010.1.29)
【国際出願番号】PCT/US2010/022518
【国際公開番号】WO2010/088470
【国際公開日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【出願人】(391008788)アボット・ラボラトリーズ (650)
【氏名又は名称原語表記】ABBOTT LABORATORIES
【Fターム(参考)】