説明

カウルトップカバー

【課題】リアパネルの変形を抑制してフロントシールドガラス下端部への負荷を緩和するとともに、その差し込み作業時にその作業性を容易にすることができ、かつ該シールドガラス下端部への負荷を緩和したカウルトップカバーを提供すること。
【解決手段】カウルトップカバーであって、フロントフード後端の下方に位置するフロントパネルと、フロントパネルの後方に位置するカバー本体部と、カバー本体部の後方に位置しフロントシールドガラスの下端と結合するリアパネルとを有し、リアパネル部には、アッパレールとロアレールとで断面略U字状をなす前記ガラスの下端を受け入れる保持部を形成させ、ロアレール部には、その先端にガイド片が設けられ、ロアレールとアッパーレールの付け根には、前記ガイド片に対向する位置から変位した位置にリアパネル部と前記ロアレール部を連結して補強するリブが設けられたことを特徴とする車両用カウルトップカバー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、フロントウインドシールドガラスの下端部を保持する車両用カウルトップカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来乗用車等の車両には、フロントフードにより覆われた区画が車体前部に設置されている。例えば、前側に動力用エンジンが搭載された車輌(フロントエンジンレイアウト車)には車体前部にエンジン室が設置されていて、このエンジン室は、左右側面がフェンダパネルにより、また上面開口部が開閉自在なフロントフード(ボンネット)により覆われた構造となっており、エンジン室の後部上方で前記フロントフードの後端の下方からフロントウィンドシールドガラスの下端部との間には、カウルトップカバーが設けられている。リアエンジン車(リアエンジンレイアウト車、リアミッドシップレイアウト車)においては、スペアタイヤやラゲッジスペースとして用いられる区画が、また電気自動車、燃料電池車などにおいても、駆動装置の設置場所や荷物室として利用可能な区画が、同様に、車体前部に設けられるものがあり、上記と同様にカウルトップカバーが設けられている構造を採用することがある(以下、前部区画を「エンジン室」という)。
カウルトップカバーの吸気口は、車両の走行時車室内へ外気を取り入れるもので、雨水や雪、枯葉等が吸気口内へ侵入するのを防止するため、吸気口にメッシュが設けられており、このメッシュはカウルトップカバーを樹脂により射出成形する際、カウルトップカバーと一体成形されている。
【0003】
カウルトップカバーは、エンジン室の幅とほぼ同じ長さの長尺部材により形成されていて、全体が樹脂により射出成形されており、このような例として例えば特許文献1に記載されている。
【0004】
カウルトップカバーの後方上端部ではフロントウィンドシールドガラスの下端部が保持されている。この保持部はガラスの厚みに対応するような幅の狭い長尺でかつ通常湾曲した構造となっている。そのため該保持部にフロントウィンドシールドガラスを差し込む際に、その作業工程を容易にするように該保持部に沿ってガイドを設けたものがある。
しかし、シールドガラスの差し込み作業を容易にするためにガイドを保持部に沿ってその全域に配置すると保持部の剛性が強くなりすぎ、その結果、樹脂の成形製品であるカウルトップカバーの寸法精度の方がガラスの寸法精度を上回るという事情も加わって、シールドガラスの挿入作業時などにおいてシールドガラスに思わぬ負荷がかかり、ガラスを破損することがある。差し込みを容易にするためには保持部とガラスとの間の隙間を大きくすることも考えられるが、隙間を大きくすることは水やゴミなどの侵入、外観品質などの観点から好ましくない。
他方、薄く、平坦な長尺部をもつリアパネル部では剛性が不足すると組み立て時に変形が生じやすくまた波打ちが現れることもある。また、組み立て後、エンジンルームや直射日光の影響など熱による、あるいは走行時の車体のたわみなどの影響による同様な変形も懸念され、こうした点もシールドガラスに負荷をかける原因となる。
【特許文献1】特開平10−226286号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明はかかる問題を改善するためになされたもので、リアパネル部の剛性を高めてその変形を抑制してフロントウィンドシールドガラス下端部への負荷を緩和するとともに、該シールドガラス保持部についてはその差し込み作業時にその作業性を容易にすることができ、かつ該シールドガラス下端部への負荷を緩和することができる保持部としたカウルトップカバーを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者は、前記課題を解決するため鋭意検討した結果、前記保持部の適宜箇所に前記シールドガラスの差し込み作業を容易にするガイド片を設けるとともに、リアパネル部には前記ガイド片に対向する位置から外した位置に補強リブを設けることが有効であることを知見し、本発明に至った。
すなわち、本発明は、
[1] 車両のフロントカウル部に取り付けられそのフロントカウル部を覆うカウルトップカバーであって、
フロント区画側に位置しフロントフード後端の下方に位置するフロントパネル部と、フロントパネル部の後方に位置するカバー本体部と、カバー本体部の後方に位置しフロントウインドシールドガラスの下端部と結合するリアパネル部とを有し、
リアパネル部には、アッパーレール部と、アッパーレール部の下部から断面L字状に延設されるロアレール部とを備え、これらアッパレール部とロアレール部とで断面略U字状をなす前記フロントウインドシールドガラスの下端部を受け入れる保持部を形成させ、
ロアレール部には、その先端に、保持部開口の外方で前記フロントウインドシールドガラスの下端部を受け入れる方向に交差する方向に延設され、車両の車幅方向に所定の幅のガイド片が設けられ、ロアレール部とアッパーレール部の付け根には、前記ガイド片に対向する位置から変位した位置にリアパネル部と前記ロアレール部を連結して補強するリブが設けられたことを特徴とする車両用カウルトップカバー。
に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、カウルトップカバーのリアパネル部に具備するアッパーレール部とロアレール部とで形成したフロントウインドシールドガラスの下端部を保持する保持部に沿って設けるガイドをその全域でなくその適宜箇所にガイド片として設けることで、保持部とガラスとの隙間を広げることなく、フロントウインドシールドガラスの下端部をカウルトップカバーの保持部に差し込む作業を容易に行うことができ、同時に該保持部の剛性を緩和し、ガラスに対して無理な負荷がかかることを防止することができる。また、リアパネル部補強リブの配設位置をガイド片に対向する位置からずらして配置したことにより、補強リブ配設による保持部での剛性増加を抑制してフロントウインドシールドガラスの下端部への負荷を緩和しつつリアパネル部の変形を防止することができ、この変形により該ガラス下端部に無理な負荷がかかるのを防止することができる。こうしてガラス差し込み作業工程でのあるいは車両完成後のガラスの破損を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、カウルトップカバーのフロントウインドシールドガラスの下端部を差し込む保持部の構成及びその保持部に連続するリアパネル部の構成が重要である。
以下に図面により、本発明のカウルトップカバーを説明する。
【実施例】
【0009】
図1は、カウルトップカバーの斜視図である。図1中、1はカウルトップカバー、2はフロントパネル部、3は本体部、4はリアパネル部、5はフロントウインドシールドガラスの下端部が差し込まれこれを保持する保持部、6はその保持部に設けた該ガラスの差し込みをガイドするガイド片を示す。ガイド片は、該ガラスの差し込み作業を容易に円滑にするために設ける部材であり、その目的に適合する限り、その形状、配設箇所に配設数に基本的には制限はない。
【0010】
図2は、前記保持部及びガイド片の説明図である。保持部は、リアパネル部4から延びるアッパーレール部7とアッパーレール部の下部から(図2では上部)から断面L字状に延びるロアレール部8とにより断面が略U字状に形成される。ガイド片6は、ロアレール部の先端に保持部開口の外方でフロントウインドシールドガラスの下端部を受け入れる方向に交差する方向に延設されている。
このガイド片は、車輌の車幅方向に所定の幅を有するが、この幅などガイド片の寸法はその目的に沿うように決定すれば良い。例えば、車幅方向の幅が10 〜25mm、図2中の高さ方向で5〜10mmが好ましい。
また、リアパネル部4にはリアパネル部4の波打ちなどの変形を防止するように補強する補強リブ9がリアパネル部とロアパネル部とを連結して配設されている。本発明においてはこの補強リブの配設位置も重要である。この補強リブは、ガイド片6に対向する位置からずれた位置(変位した位置)に設ける必要がある。補強リブをガイド片に対向する位置に配設した場合には、リアパネル部の剛性もまた前記保持部の剛性も過度に増大することとなり、その結果前記フロントウインドシールドガラスの下端部へ無理な負荷がかかることとなる。
本発明において前記補強リブを設ける位置は、ガイド片に対向する位置からずれるようにすれば良い。すなわち、ガイド片とガイド片の間に対応するリアパネル部に設ければよい。好ましくはガイド片の間の中間位置である。また、本発明において補強リブは、リアパネル部の波打ちなどの変形を防止するために設けるものであるのであるから、ガイド片の配設されていない部位においても必要に応じてその目的に適合する部位に設けることができる。
【0011】
図3は、図2中、A−A線断面説明図、図4は、図2中、B−B線断面説明図でいずれも前記保持部にガラス下端部が差し込まれた状態を説明する図である。
ここで、ガラス下端部の差し込み深さは、保持部5の奥まで到達しない限度で十分な深さであれば良いが、車体製作上のバラツキ等を考慮して、カウルトップカバーの寸法設計上、保持部5のちょうど中間点になるようするのがよい。例えば、保持部のロアレール部の内部幅寸法が16mmであれば、ガラス下端部の差し込み深さを8mmと設定する。通常2〜3mmの誤差を生じることがあり、まれに5mm程度の誤差となることもあるので、上記寸法に設定することにより十分寸法誤差を吸収可能である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の車両用カウルトップカバーの一例を示す実施例である。
【図2】保持部及びガイド片の説明図である。
【図3】図2A−A線断面説明図である。
【図4】図2B−B線断面説明図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントカウル部に取り付けられそのフロントカウル部を覆うカウルトップカバーであって、
フロント区画側に位置しフロントフード後端の下方に位置するフロントパネル部と、フロントパネル部の後方に位置するカバー本体部と、カバー本体部の後方に位置しフロントウインドシールドガラスの下端部と結合するリアパネル部とを有し、
リアパネル部には、アッパーレール部と、アッパーレール部の下部から断面L字状に延設されるロアレール部とを備え、これらアッパレール部とロアレール部とで断面略U字状をなす前記フロントウインドシールドガラスの下端部を受け入れる保持部を形成させ、
ロアレール部には、その先端に、保持部開口の外方で前記フロントウインドシールドガラスの下端部を受け入れる方向に交差する方向に延設され、車両の車幅方向に所定の幅のガイド片が設けられ、ロアレール部とアッパーレール部の付け根には、前記ガイド片に対向する位置から変位した位置にリアパネル部と前記ロアレール部を連結して補強するリブが設けられたことを特徴とする車両用カウルトップカバー。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2009−107464(P2009−107464A)
【公開日】平成21年5月21日(2009.5.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−281518(P2007−281518)
【出願日】平成19年10月30日(2007.10.30)
【出願人】(000229955)日本プラスト株式会社 (740)
【Fターム(参考)】