説明

カウルトップ構造

【課題】 カウルトップ上の水を円滑に排出することが可能なカウルトップ構造を提供する
【解決手段】 車両1のフロントウインドシールド2の下縁に沿って車幅方向に配置されたカウルトップ5と、前記カウルトップの側方においてフードヒンジの上方を覆うように上方に隆起するフードヒンジカバー6とを備えたカウルトップ構造4において、前記カウルトップは、車幅方向にわたって延在する排水溝55を有し、前記フードヒンジカバーは、前記カウルトップと当接する周縁部76に前記カウルトップと当接して通水路78を形成する切欠部77を有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は自動車のカウルトップ構造に関し、より詳細にはカウルトップおよびフードヒンジカバーから構成されるカウルトップ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車のフロントウインドシールドの下縁とエンジンフードの後縁との間に設けられたカウルボックスは、樹脂製のカウルトップによって覆われ、水等の浸入が防止されている。カウルトップは、フロントウインドシールドの下縁に沿って延びる部材であり、かつ端部においては大きく湾曲しているため、分割構造が採用されることがある。
【0003】
分割構造のカウルトップ構造としては、フロントウインドシールドの下縁の中央部から両側部の大部分にわたって配置されたカウルトップと、その両端部に配置されたフードヒンジカバーとから構成し、両パネルを爪および孔の係合により接続するようにしたものがある(例えば、特許文献1および2)。
【特許文献1】特開2006−327447号公報
【特許文献2】特開2005−67374号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記のような分割構造のカウルトップ構造においては、カウルトップ上面に溜まる水の排水路が画定されていないため、カウルトップおよびフードヒンジカバーとの接触部付近に水が溜まるという問題ある。また、フードヒンジカバーとカウルトップとの係合部には爪等の部材が存在するため、水の排出を阻害し、水をカウルトップ上に停滞させるという問題がある。
【0005】
本発明は以上の問題を鑑みてなされたものであって、カウルトップとフードヒンジカバーとから構成されるカウルトップ構造において、カウルトップ上に溜まる水を円滑に排出することが可能なカウルトップ構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の第1の発明は、車両(1)のフロントウインドシールド(2)の下縁に沿って車幅方向に配置されたカウルトップ(5)と、前記カウルトップの側方においてフードヒンジの上方を覆うように上方に隆起するフードヒンジカバー(6)とを備えたカウルトップ構造(4)において、前記カウルトップは、車幅方向にわたって延在する排水溝(55)を有し、前記フードヒンジカバーは、前記カウルトップと当接する周縁部(76)に前記カウルトップと当接して通水路(78)を形成する切欠部(77)を有することを特徴とする。
【0007】
これによれば、カウルトップ上の水は排水溝によってカウルトップの端部へと導かれるとともに、通水路を通過してカウルトップの端部側へと移動することが可能となるため、カウルトップとフードヒンジカバーとの当接部において水が溜まることがなくなる。
【0008】
第2の発明は第1の発明において、前記カウルトップは、車幅方向における端部であって、前記排水溝の底部(55a)より前記フードヒンジカバー側に突設されるとともに基部に排水孔(61)を備えた係合突部(58)を有し、前記フードヒンジカバーは、前記係合突部(74)と係合する係合孔を有することを特徴とする。
【0009】
これによれば、カウルトップの端部へと到達した水は係合突部の基部に設けられた排水孔から排出されるため、水は係合突部に流れを阻害されることなく円滑に排出されるようになる。また、係合突部の基部は排水溝を形成する部材の相対位置を規制するため、排水溝の形状およびカウルトップの形状が維持されるようになる。また、フードヒンジカバーに車体側取付クリップを取り付ける係合孔を形成した場合、フードヒンジカバーには孔のみが形成されるようになるため、成形時のスライド型を小型化することができ、狭い範囲に複数のスライド型を容易に配置でき、成形が容易となる。なお、フードヒンジカバーに係合突部を設け、かつカウルトップに係合孔を設けた場合には、フードヒンジカバーの狭い範囲に係合突部と車体取付クリップを取り付ける係合孔とが混在することになり、係合突部のスライド型は大きいことから、複数のスライド型の配置が困難となる。
【発明の効果】
【0010】
以上のように構成することによって、カウルトップとフードヒンジカバーとから構成されるカウルトップ構造において、カウルトップ上に水が溜まることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面を参照して、本発明のカウルトップ構造の一実施形態について説明する。
図1は、実施形態に係るカウルトップ構造が適用された自動車を示す斜視図である。説明の便宜上、本発明が適用される自動車の進行方向を前方、進行方向と逆の方向を後方、前方を向いた際の右側を右、左側を左、鉛直上方を上方、鉛直下方を下方として説明する。
【0012】
図1に示すように、車体1のウインドシールドガラス2の下縁とエンジンフード3の後縁との間には車幅方向に延在するカウルトップ構造4が配置されている。カウルトップ構造4は、車室またはエアコンへと外気を導入するとともに、雨水等のカウルボックスへの浸入を防止する機能を有する。カウルトップ構造4から、ワイパ7のピボット軸が突出している。
【0013】
図2は、実施形態に係るカウルトップ構造を示す斜視図であって、後方側かつ上方側より見た図である。カウルトップ構造4は、車幅方向における中央部に配置されたカウルトップ5と、その両端部に配置されたフードヒンジカバー6とから構成されている。フードヒンジカバー6は、車体に設けられたフードヒンジを上側から覆い、車外側からフードヒンジを見えなくるするという機能を有する。カウルトップ5およびフードヒンジカバー6は、例えば樹脂材料を射出成形することによって形成される。
【0014】
カウルトップ5は、後部側に配置されるとともに車幅方向に延在する板状の下板51と、下板51の前方側の周縁部に沿って立設された板状の後壁52と、後壁52の上端から前方側に延びるともに車幅方向に延在する板状の上板53と、上板53の前端部より下方へと延びるとともに車幅方向に延在する前壁54(図5参照)とを備えている。下板51と後壁52とは、車幅方向に延在する横断面L字状の排水溝55を形成する。下板51と後壁52との接合部に形成される境界部分が排水溝55の底部55aとなる。また、カウルトップ5は車幅方向における中央部から端部へと進むにつれて下方へと向かうように湾曲して形成されている。
【0015】
また、カウルトップ5は、前壁54の下端部に後述するダッシュボードアッパ11の先端部と係合するための、断面U字状の係合部65(図5参照)を車幅方向にわたって備えている。また、係合部65の前端には前方側かつ上方側へと突出する突部66を車幅方向にわたって備えている。
【0016】
下板51および後壁52には、複数の孔からなる外気を導入するためのグリル部56が形成されている。下板51には、ワイパ7のピボット軸が挿通される貫通孔63が形成されている。また、下板51の下面側には、カウルトップ5を車体骨格に締結するためのクリップ20を取り付けるためのクリップ取付部57が形成されている。
【0017】
図3は、カウルトップ構造のカウルトップ5とフードヒンジカバー6とを分解して示す斜視図である。カウルトップ5の端部には、係合突部58が設けられている。係合突部58の基部59は、下板51の端面と後壁52の端面とに接続している。基部59の上部には係合爪60が設けられている。基部59の底部55aの延長線上には、基部59を貫通する排水孔61が形成されている。また、下板51の端面には、下板51の上面と段差をなして、車幅方向へと突出する突出片62が形成されている。
【0018】
図2および図3に示すように、フードヒンジカバー6はカウルトップ5の端部を上方側より覆う基部71と、基部71から車体後方側に延出する延出部72とを備えている。基部71は上方側へと膨出した形状を呈する中空の部材であって、内部には形状を保持するための支持板73が配置されている。支持板73には、係合突部58の係合爪60と係合するための係合孔74が形成されている。延出部72の下面側には、フードヒンジカバー6を車体骨格に締結するためのクリップ20を取り付けるためのクリップ取付部75が形成されている。
【0019】
基部71のカウルトップ5側の周縁部76は、図2に示すように、フードヒンジカバー6がカウルトップ5に組み付けられた状態において、カウルトップ5の下板51と、後壁52と、上板53と当接するように形成されている。しかし、フードヒンジカバー6がカウルトップ5に組み付けられた状態において、周縁部76のカウルトップ5の底部55a付近に配置される部分には切欠部77が形成されており、当該切欠部77のおいてフードヒンジカバー6は下板51および後壁52と接触していない。切欠部77によって、フードヒンジカバー6およびカウルトップ5を組み合わせた状態において、フードヒンジカバー6とカウルトップ5との間であって底部55a部分に通水路78が形成される。
【0020】
カウルトップ5とフードヒンジカバー6との組み合わせは、カウルトップ5の係合突部58の係合爪60をフードヒンジカバー6の係合孔74に係合させることによって行われる。図4は、図2の矢印IV−IVの方向からみた断面図であって、カウルトップ5とフードヒンジカバー6との係合状態を示す図である。カウルトップ5とフードヒンジカバー6とが組み合わされた状態では、フードヒンジカバー6の周縁部76はカウルトップ5の下板51と、後壁52と、上板53と当接するとともに、カウルトップ5の底部55a部分に通水路78が形成される。また、延出部72の車幅方向におけるカウルトップ5側の周縁部79は、突出片62の上側に重なり合う。
【0021】
係合孔74の車幅方向における長さは、係合爪60の車幅方向における長さに対して若干長く形成されており、フードヒンジカバー6はカウルトップ5に対して車幅方向に若干スライド移動することが可能となっている。フードヒンジカバー6の基部71の周縁部76は下板51、後壁52、および上板53上に乗り上げているため、また、延出部72の周縁部79は突出片62上に重なりあっているため、フードヒンジカバー6が車幅方向における側方側に移動してもフードヒンジカバー6とカウルトップ5との間に隙間が形成されないようになっている。
【0022】
次に、実施形態に係るカウルトップ構造4を車体1に取り付けた状態について説明する。図5は、図1の矢印V−Vの方向から見た断面図である。図5に示すように、ウインドシールドガラス2の下縁の下部には、車幅方向に延在するカウルボックス10が設けられている。カウルボックス10の下部は、上方側に開口したダッシュボードアッパ11により形成されている。ダッシュボードアッパ11は、車室とエンジンルームとを分離するように車幅方向にわたって起立姿勢で設けられたダッシュボードロア12の上端に、後端部において接続され、車幅方向に延在するとともに前方側に突出している。
【0023】
カウルボックス10の上部は、ウインドシールドガラス2の下縁部を支持するウインドシールドロア(ウインドシールドガラスサポート)13によって形成されている。ウインドシールドロア13は、後端部においてダッシュボードアッパ11の後端部と接続し、当該接合部より上方側に延出した後、前方側へと延びている。ウインドシールドロア13の前端部は、傾斜したウインドシールドガラス2と平行に延びウインドシールドガラス2を支持するための座部14を形成している。座部14は、例えば防振ゴム(ダムラバー)といった防振材15を介してウインドシールドガラス2を支持している。ウインドシールドガラス2の下縁は接着剤16により座部14に固定されている。座部14は、ウインドシールドガラス2の下縁よりも下方側へと延び、先端部にカウルトップ構造4を固定するための嵌合孔17を複数個備えている。
【0024】
ダッシュボードアッパ11とウインドシールドロア13とによって形成されたカウルボックス10は、ウインドシールドガラス2の下縁とエンジンフード3の後縁との間において上方に開口している。カウルトップ構造4は、カウルボックス10の開口を閉鎖するように配置される。
【0025】
カウルトップ構造4の前方側は、カウルトップ5の係合部65において、例えばゴムのようなシーリング材18を介してダッシュボードアッパ11の前端部と係合する。また、カウルトップ構造4は、突部66において、エンジンフード3の後端に車幅方向にわたって配設されたウェザーストリップ19と係合する。
【0026】
カウルトップ構造4の後方側はクリップ20を介してウインドシールドロア13の先端部に固定される。クリップ20は、カウルトップ5およびフードヒンジカバー6のクリップ取付部57・75にスライド係合する2重フランジ形状の頭部21と、ウインドシールドロア13の嵌合孔17に弾発係合する弾発係合部22とから構成されている。クリップ20によりウインドシールドロア13に固定されたカウルトップ構造4の後端部は、ウインドシールドガラス2の表面上に密着した状態で配置される。
【0027】
以上のように構成されたカウルトップ構造4の作用効果について説明する。本実施形態に係るカウルトップ構造4が適用された自動車に雨水等の水がカウルトップ構造4およびウインドシールドガラス2上に降り注ぐと、水はカウルトップ構造4の下板51および後壁52によって形成された排水溝55に集められる。排水溝55に集められた水は、カウルトップ構造4が湾曲しているため、排水溝55の底部、すなわち底部55aに沿って車幅方向における側方へと流れる。そして、水はフードヒンジカバー6とカウルトップ5との間に形成された通水路78を通過し、排水孔61からカウルトップ構造4外へと排出される。通水路78を設けたことにより、水は妨害されることなくカウルトップ5の端部まで円滑に流れることが可能となる。また、排水孔61を設けたことにより、カウルトップ構造4の排水経路を一定させることが可能となる。カウルトップ構造4より排出された水は、別途ダクト等を設けて車外に排出してもよい。
【0028】
係合突部58は、基部59に排水孔61を備えることから、水の排水を妨げることなく大型化することができる。そのため、一箇所の係合により、カウルトップ5とフードヒンジカバー6とを安定的に固定することができる。
【0029】
係合突部58の基部59は、下板51の端面と後壁52の端面とに接続しているため、補強構造として機能し、下板51と後壁52との相対位置が維持され、カウルトップ構造4の構造強度が向上する。また、本実施形態のフードヒンジカバー6は、クリップ20を介してウインドシールドロア13と接続されるため、カウルトップ構造4の取付安定性が向上する。
【0030】
以上で具体的実施形態の説明を終えるが、本発明は上記実施形態に限定されることなく幅広く変形実施することができる。例えば、実施形態における係合突部やフードヒンジカバーの係合部の形状および係合態様は例示であって、適宜変更することができる。その他、カウルトップの形状等は発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】実施形態に係るカウルトップ構造が適用された自動車を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係るカウルトップ構造を示す斜視図である。
【図3】カウルトップ構造のカウルトップとフードヒンジカバーとを分解して示す斜視図である。
【図4】図2の矢印IV−IVの方向から見た断面図である。
【図5】図1の矢印V−Vの方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0032】
2 ウインドシールドガラス
3 エンジンフード
4 カウルトップ構造
5 カウルトップ
6 フードヒンジカバー
10 カウルボックス
11 ダッシュボードアッパ
13 ウインドシールドロア
20 クリップ
55 排水溝
55a 底部
58 係合突部
61 排水孔
74 係合孔
76 周縁部
77 切欠部
78 通水路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフロントウインドシールドの下縁に沿って車幅方向に配置されたカウルトップと、前記カウルトップの側方においてフードヒンジの上方を覆うように上方に隆起するフードヒンジカバーとを備えたカウルトップ構造において、
前記カウルトップは、車幅方向にわたって延在する排水溝を有し、
前記フードヒンジカバーは、前記カウルトップと当接する周縁部に前記カウルトップと当接して通水路を形成する切欠部を有することを特徴とするカウルトップ構造。
【請求項2】
前記カウルトップは、車幅方向における端部であって、前記排水溝の底部より前記フードヒンジカバー側に突設されるとともに基部に排水孔を備えた係合突部を有し、
前記フードヒンジカバーは、前記係合突部と係合する係合孔を有することを特徴とする、請求項1に記載のカウルトップ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−23662(P2010−23662A)
【公開日】平成22年2月4日(2010.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−187468(P2008−187468)
【出願日】平成20年7月18日(2008.7.18)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】