説明

カウルルーバ

【課題】簡素な構造で歩行者保護性能に優れたカウルルーバを提供する。
【解決手段】カウルルーバ1は、開口2を有するカウルルーバ本体部3と、開口を閉じるようにカウルルーバ本体部に脱着可能に取り付けられる別体ルーバ4と、を備え、カウルルーバ本体部3は、第1の面状部3Aと第1の面状部の後端から上方へ起立した縦壁部3Bと縦壁部の上端から後方へ向けて連接した第2の面状部3Cとを備えており、開口2が第1の面状部3Aを切り欠いて形成され、カウルルーバ本体部3の開口2に別体ルーバ4を取り付けた状態において別体ルーバが第1の面状部と面一状になるように、別体ルーバ4が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカウルルーバの構造に係り、特に、サービスホールとしての開口を閉じる別体ルーバを脱着可能に備えたカウルルーバに関するものである。
【背景技術】
【0002】
車両前部がショートノーズであると、エンジンルーム内が通常の車両に比べて狭小になるため、カウルルーバと、エンジンルーム内の保守・点検作業等のための所謂サービスホールとが重なってしまう。この種の車両においては、カウルルーバの一部を脱着可能に別体ルーバとして構成し、保守・点検作業時等に別体ルーバを外すことでサービスホールを利用することができる。
【0003】
このようなカウルルーバ100は、図4及び図5に示すように、カウルルーバ本体部101と別体ルーバ102とから構成されており、図4に示す状態では、別体ルーバ102がカウルルーバ本体部101の開口103を覆うように被着している。図5に示す状態では、別体ルーバ102がカウルルーバ本体部101から外れている。なお、図中のFrは車両前方を、Wは車幅方向を、Upは車両上方を示す。
【0004】
カウルルーバ本体部101は、第1の面状部101Aと、この第1の面状部101Aの後縁から上方へ起立した正面縦壁部101Bと、この正面縦壁部101Bの上端からカウルルーバ本体部後方へ向けて連接した第2の面状部101Cと、を備えている。開口103は、正面縦壁部101B及び第2の面状部101Cの一部をくりぬくように形成されている。開口103の周辺において、開口103の円弧状の縁部103Aに沿って内縦壁部103Bが起立している。内縦壁部103Bは、その左右端部において正面縦壁部101Bに繋がっていると共に、上端において第2の面状部101Cと繋がっている。
【0005】
別体ルーバ102は、カウルルーバ本体部101のくりぬかれた領域を閉塞するように、カウルルーバ本体部101に取り付けられる。具体的には、別体ルーバ102は、カウルルーバ本体部101と面一となるように、正面縦壁部101Bと同じ断面形状の縦壁部102Bと、第2の面状部101Cと同じ断面形状の面状部102Cとを有する。このように構成された別体ルーバ102は、その周縁に設けた爪部102Dを、カウルルーバ本体部101に設けた取付穴101Dに係合させることで、カウルルーバ本体部101に取り付けられる。
【特許文献1】特開2003−252145号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、図4に示す公知のカウルルーバ100のB−B線断面図であり、特に、内縦壁部103Bと正面縦壁部101Bとが成すコーナーR(図5参照)周辺におけるカウルルーバ100の断面を示している。この図に示すように、別体ルーバ102はカウルルーバ本体部101と重なる面積が大きいために、従来のカウルルーバ100においては材料費などの製造コストが嵩んでいる。なお、図6において、110はフードであり、120はフロントガラスである。
【0007】
本発明は、以上の点に鑑み創作されたもので、簡素な構造のカウルルーバを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明は、開口を有するカウルルーバ本体部と開口を閉じるようにカウルルーバ本体部に脱着可能に取り付けられる別体ルーバとを備えたカウルルーバであって、カウルルーバ本体部が、第1の面状部と、第1の面状部の後端から上方へ起立した縦壁部と、縦壁部の上端から後方へ向けて連接した第2の面状部と、を備えており、開口が第1の面状部を切り欠いて形成され、カウルルーバ本体部の開口に別体ルーバを取り付けた状態において別体ルーバが第1の面状部と面一状になるように、別体ルーバが形成されていることを特徴としている。
【0009】
別体ルーバは、好ましくは、第1の面状部と同形状の断面を有するように形成されている。
本発明のカウルルーバにおいて、第1の面状部が開口に近接した位置に第1の取付穴を有し、縦壁部が開口に近接した位置に第2の取付穴を有し、別体ルーバが、第1の取付穴に脱着可能に係合する第1の爪部と第2の取付穴に脱着可能に係合する第2の爪部とを有している。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、図6に示す従来のカウルルーバ100と比較すると、別体ルーバがカウルルーバ本体部と重なる面積が少ないので、製造コストなどを低減させることができる。 また、サービスホールの上方に対応した位置の断面構造として、図6に示す従来のカウルルーバ100では二つの縦壁部材が近接して配置されているのに対して、本発明のカウルルーバでは、別体ルーバがカウルルーバ本体部の縦壁部に近接した位置に縦壁部と同形の縦壁状の部材を備えていないので、例えば、車両が歩行者に衝突して歩行者の頭部がカウルルーバにぶつかった際に、頭部のカウルルーバ下方への進行方向に対して、その進入を遮る縦壁部が一つであるため、頭部に対する傷害値をより一層低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、図面に基づいて本発明の実施形態を説明する。
図1及び図2は本発明の実施形態に係るカウルルーバ1を示す部分斜視図である。カウルルーバ1は、開口2を有するカウルルーバ本体部3と、開口2を閉じるようにカウルルーバ本体部3に脱着可能に取り付けられる別体ルーバ4と、を備えている。図1に示す状態では、別体ルーバ4がカウルルーバ本体部3の開口2を覆うように被着している。図2に示す状態では、別体ルーバ4がカウルルーバ本体部3から外れている。ここで、図中のFrは車両前方を、Wは車幅方向を、Upは車両上方を示す。
【0012】
カウルルーバ本体部3は、第1の面状部3Aと、この第1の面状部3Aの後端から上方へ起立した縦壁部3Bと、この縦壁部3Bの上端から車両後方へ連接した第2の面状部3Cと、を備えている。
【0013】
開口2は、第1の面状部3Aを切り欠いて形成されている。図示例では、第1の面状部3Aの先端から後端までを切り欠いて、開口2が形成されているが、第1の面状部3Aの中をくり抜くようにして形成されてもよい。
【0014】
別体ルーバ4は、カウルルーバ本体部3の開口2に取り付けた状態において、第1の面状部3Aと面一状になるようにその形状が形成されている。具体的には、別体ルーバ4は開口2の輪郭形状と同形状に形成されていると共に、第1の面状部3Aと同形状の断面を有するように形成されている。図示例では、第1の面状部3Aは、縦壁部3BとのコーナーCから前方へ延出した第1の水平部31Aと、この第1の水平部31Aの前端から前上方へ向けて傾斜した第1の傾斜部31Bと、この第1の傾斜部31Bの上端から前方へ延出した第2の水平部31Cと、を備えており、別体ルーバ4は、第1の水平部31Aに対応した第3の水平部41Aと、この第3の水平部41Aの前端から前上方へ向けて、上記第1の傾斜部31Bと同程度の傾きを有する第2の傾斜部41Bと、この第2の傾斜部41Bの上端から前方へ向けて、第2の水平部31Cと同程度の長さで延出した第4の水平部41Cと、を備えている。
【0015】
さらに、別体ルーバ4は、開口2の左右に隣接した第2の水平部31Cの前端部に一つずつ開設された第1の取付穴3A1に脱着可能に係合する第1の爪部4A1を有する。また、別体ルーバ4は、開口2の左右に隣接している第1の面状部3Aと縦壁部3Bとが成すコーナーCの延長線上であって、前方に開口2が在る縦壁部3Bの領域に開設された3つの第2の取付穴3B1に脱着可能に係合する第2の爪部4B1を有している。図示例では、第1の爪部4A1は、第4の水平部41Cの前端の左右の角部にそれぞれ隣接した位置で、下方へ突出して設けられている。第2の爪部4B1は、第3の水平部41Aの後縁から後方へ向けて突出するように設けられており、その数は図示例では3つであるが、それに限定されるものではない。本実施形態に係る別体ルーバ4は、第1の爪部4A1を第1の面状部3Aの第1の取付穴3A1に係合させ、第2の爪部4B1を縦壁部3Bの第2の取付穴3B1に係合させることで、カウルルーバ本体部3の開口2を閉塞するように、カウルルーバ本体部3に取り付けられる。なお、本実施形態に係るカウルルーバ本体部3は、縦壁部3Bの下端から第1の面状部3Aより下方へ突出する延長部3Dを有し、第2の取付穴3B1が、縦壁部3Bと延長部3Dとの境界線に近接した位置に配置されている。
【0016】
本発明の実施形態に係るカウルルーバ1は以上のように構成されている。ここで、図3は図1のA−A線断面図である。この図に示すように、カウルルーバ1は、別体ルーバ4をカウルルーバ本体部3に取り付けた状態において図6に示す従来のカウルルーバ100と比較すると、別体ルーバ4がカウルルーバ本体部3と重なる面積が少ないので、製造コストなどを低減させることができる。
【0017】
さらに、図6に示すように、従来のカウルルーバ100は、カウルルーバ本体部101の内縦壁部103Bに近接して、別体ルーバ102の縦壁部102Bが配置され、即ち、サービスホールの上方に対応した位置におけるカウルルーバ100の断面構造として二つの壁部が近接して配置されている(図中のβの領域)。これに対して、本実施形態におけるカウルルーバ1では、カウルルーバ本体部3の縦壁部3Bに近接した位置(図中のαの領域)に該縦壁部3Bと同形の縦壁状の部材を別体ルーバ4が備えられていないので、例えば、車両が歩行者に衝突して歩行者の頭部Hがカウルルーバ1にぶつかった際に、頭部Hのカウルルーバ下方への進行方向Tに対して、その進入を遮る縦壁部3Bが一つであるため、頭部Hに対する傷害値をより一層低減することができる。
【0018】
以上説明したが、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲において様々な形態で実施をすることができる。例えば、第1の取付穴3A1、第2の取付穴3B1、第1の爪部4A1、第2の爪部4B1の位置や数は図示例に限定されるものではない。また、開口2の位置も図示例に限定されるものではないことは明白である。別体ルーバ4は、その縁部が、第1の面状部3Aの開口縁部と重なるように、カウルルーバ本体部3の開口2に取り付けられてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の実施形態に係るカウルルーバを示す部分斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るカウルルーバを示す部分斜視図である。
【図3】図1のA−A線断面図である。
【図4】従来のカウルルーバを示す斜視図である。
【図5】従来のカウルルーバを示す部分斜視図である。
【図6】図4のB−B線断面図である。
【符号の説明】
【0020】
1 カウルルーバ
2 開口
3 カウルルーバ本体部
3A 第1の面状部
3A1 第1の取付穴
3B 縦壁部
3B1 第2の取付穴
3C 第2の面状部
3D 延長部
4 別体ルーバ
4A1 第1の爪部
4B1 第2の爪部
31A 第1の水平部
31B 第1の傾斜部
31C 第2の水平部
41A 第3の水平部
41B 第2の傾斜部
41C 第4の水平部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口を有するカウルルーバ本体部と、上記開口を閉じるように上記カウルルーバ本体部に脱着可能に取り付けられる別体ルーバと、を備えたカウルルーバであって、
上記カウルルーバ本体部が、第1の面状部と、該第1の面状部の後端から上方へ起立した縦壁部と、該縦壁部の上端から後方へ向けて連接した第2の面状部と、を備えており、
上記開口が、上記第1の面状部を切り欠いて形成され、
上記カウルルーバ本体部の開口に上記別体ルーバを取り付けた状態において、該別体ルーバが上記第1の面状部と面一状になるように形成されていることを特徴とする、カウルルーバ。
【請求項2】
前記別体ルーバが前記第1の面状部と同形状の断面を有するように形成されていることを特徴とする、請求項1に記載のカウルルーバ。
【請求項3】
前記第1の面状部が、前記開口に近接した位置に第1の取付穴を有し、
前記縦壁部が、前記開口に近接した位置に第2の取付穴を有し、
前記別体ルーバが、上記第1の取付穴に脱着可能に係合する第1の爪部と上記第2の取付穴に脱着可能に係合する第2の爪部とを有していることを特徴とする、請求項1又は2に記載のカウルルーバ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−87601(P2008−87601A)
【公開日】平成20年4月17日(2008.4.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−269847(P2006−269847)
【出願日】平成18年9月29日(2006.9.29)
【出願人】(000157083)関東自動車工業株式会社 (1,164)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】