カキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法
【課題】カキ肉エキスの濃縮液から効率よくアデノシンを取り出すことが出来、しかも、カキ肉エキスの主要な成分であるセレンについても、前記のアデノシンとほぼ同様の挙動を示すことも明らかになり、もって、アデノシンのみならずセレンについても豊富に取り出すことができるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法を提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂にカキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を抽出容器内に注入して、抽出容器内を通液させ、イオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、ことを特徴とする。
【解決手段】本発明は、イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂にカキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を抽出容器内に注入して、抽出容器内を通液させ、イオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、ことを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ガキ等のカキ肉より抽出したカキ肉エキスの濃縮液より、アデノシン、セレンなどカキ肉エキスの特に有効な成分を分離して、かつ効率よく取り出すことが出来るカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明においてカキ肉エキスの有効な成分の一つであるアデノシン (Adenosine)とは、例えば、アデニンとリボースからなるヌクレオシドの一つであり、前記アデニンとリボースは
β-N9-グリコシド結合し、分子量(C10H13N5O4)で267と指標される。
ここで、アデノシンは、生体内で重要な役割を担っており、DNAやRNAの塩基として遺伝情報のコードに用いられている他、生化学過程でもATPやADPの一部としてエネルギー輸送に関わったり、環状AMPとしてシグナル伝達に関わったりし、もって生体内で重要な役割を有して機能する。
【0003】
そして、アデノシンは、アデノシン三リン酸(ATP)の分解産物であり、多くの臓器において主要な局所的機能制御因子の一つとして作用する。
たとえば、心臓血管系においても、生理的または病的状態において多彩な機能を担っており、細胞分化、血管新生、冠血流、刺激伝導系、代謝、及び交感神経に対する感受性などの制御や、虚血時においては心筋虚血耐性獲得に重要な役割を果たすなどである。
【0004】
近年、カキ肉のエキスは健康補助食品として各種の有益物質を多く含んだ極めて優れた製品であると一般にその認識度は日増しに高まっている。
そして、現在では例えば多種多様な抽出法によって抽出されたカキ肉エキスに関する健康補助食品が販売されている(特開平10−136946号公報)。
【0005】
しかして、かかるカキ肉のエキスの抽出に際しては、グリコーゲンやタウリンあるいは蛋白質等の有益な栄養源及び亜鉛等を含むいわゆる血小板の凝集を抑制する作用を有する物質を多量に含有され、効率よくカキ肉エキス中に回収できる様抽出することが望ましいとされていたが、前記カキ肉エキス、例えばカキ肉エキスの濃縮液からのアデノシンの抽出、取り出しについては従来何ら提案されておらず、前記のようにアデノシンの重要性が高まってきている近年、カキ肉エキスからアデノシンを効率よく、しかも豊富に取り出す取り出し方法、あるいは抽出する抽出方法が要請されるに至っているのである。
【0006】
生カキ肉からアデノシンが豊富に含有されたカキ肉のエキスを得ることができれば、従来のカキ肉エキス製品とは含有する有効成分の異なった健康食品を市場に提供することが出来るものとなる。
【特許文献1】特開平10−136946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものであり、カキ肉エキスの濃縮液から効率よくアデノシンを取り出すことが出来、しかも、カキ肉エキスの主要な成分であるセレンについても、前記のアデノシンとほぼ同様の挙動を示すことも明らかになり、もって、アデノシンのみならずセレンについても豊富に取り出すことができるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法は、
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入
し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、前記イオン交換樹脂に吸着された前記カキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とし、
または、
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで水を注入して前記抽出容器内を通液させ、前記水に溶出するイオン交換樹脂に吸着した前記カキ肉エキス濃縮液の成分を取得し、
次に、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、未だイオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分を前記エタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はアデノシンである、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はセレンである、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液は、50%エタノール溶液である、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法によれば、
カキ肉エキスの濃縮液から効率よくアデノシン及び当該アデノシンとほぼ同様の挙動を示すセレンさえも速やかに取り出すことが出来、しかも豊富に取り出すことができるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施例に基づいて説明する。
まず、本発明を実施する前の段階から説明する。
図6に示すように、例えば洗浄容器10内に大量のイオン交換樹脂1・・を収納し、エタノール溶液に例えば2時間程度浸漬して洗浄、消毒する。
【0011】
次に、前記洗浄、消毒した大量のイオン交換樹脂1・・を抽出容器2内に充填する。その後、図8から理解されるように、50%エタノール溶液5を抽出容器2内に注入し、さらによく洗浄、消毒する。その後、図9に示すように、超純水4を抽出容器2内に注入し、エタノール溶液のエタノール臭がなくなるまで通液する。この様な前段階の準備が完了させることがきわめて大切である。
本発明の実施に際しては、まず、前記のように処理したイオン交換樹脂1の充填された抽出容器2を用意する。
【0012】
ここで、本発明で使用されるイオン交換樹脂1について説明すると、該イオン交換樹脂1は例えば食品安全に完璧を期したものが使用される。
そして、該イオン交換樹脂1は、その母体構造が、スチレン系であり、極性は、無極性であり、その表面積は約300平方メートル/gであり、平均孔径は
であるものが好ましい。
本発明で使用される当該イオン交換樹脂としては、アンバーライトXAD2(アンバーライト:登録商標)が一般に知られている。
しかして、このイオン交換樹脂1を抽出容器2内に充填する。通常抽出容器2は比較的長尺で、縦方向に細長い筒状のものが用いられる。そして、その中にイオン交換樹脂1を充填するが、もって、前記イオン交換樹脂1は縦長方向に比較的長い距離を有して充填されるものとなる。
【0013】
次に、縦長方向に充填されたが充填された抽出容器2内に、カキ肉エキス濃縮液3を注入する(図1参照)。
なお、当該カキ肉エキス濃縮液3についてであるが、従前より各種の方法でカキ肉エキス濃縮液3を生成している。しかしながら、本発明ではこのカキ肉エキス濃縮液3の生成方法については何ら限定されないものである。いかなる方法によって生成されたカキ肉エキス濃縮液3であっても本発明が適用出来る。
【0014】
イオン交換樹脂1が充填された抽出容器2内に前記カキ肉エキス濃縮液3を上方から注入すると、該カキ肉エキス濃縮液3は抽出容器2内の上部から下方に落下する。その際、カキ肉エキス濃縮液3は充填されている複数のイオン交換樹脂1間を通液する。そして、前記イオン交換樹脂1はカキ肉エキス濃縮液3の所定成分を吸着する。
ここで、吸着されるカキ肉エキス濃縮液3の所定成分としては、アデノシン6、セレン11をはじめAMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8などが挙げられる。
【0015】
なお、図1に示すように、カキ肉エキス濃縮液3は、濃縮度の高い、いわゆる半流動体に近いものとなっているため、抽出容器2の上方から注入しても、最後の下部まで届かず、ほとんど複数のイオン交換樹脂1の間に留まる。
その状態から、次に、前記抽出容器2内に、超純水4を上方から注入する。すると、この超純水4が前記イオン交換樹脂1間を通液し、前記イオン交換樹脂1に吸着している所定成分を前記吸着から解放し、超純水4に溶解させて、下方で流出させるものとなる。
この溶解して流出される所定成分としては、AMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8などが挙げられる(図4参照)。
【0016】
ところで、前記イオン交換樹脂1に吸着されたカキ肉エキス濃縮液3の所定成分のうち、前記のようにAMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8は、超純水4が通液することにより、前記吸着が解かれ、超純水4に溶解して下方へ流出されるが、他の成分、例えばアデノシン6、そして、当該アデノシン6とほぼ挙動を共にすると思われるセレン11は、超純水4には溶解せず、もって吸着が解かれて下方へ流出することがない(図4参照)。
【0017】
そこで、次に、50%濃度のエタノール溶液5を上方から注入するものとする(図3参照)。
すると、今までイオン交換樹脂1に吸着されていたアデノシン6、及び当該アデノシン6とほぼ挙動を共にすると思われるセレン11は、その吸着が解かれ、50%濃度のエタノール溶液5に溶解して下方へ流出されるものとなった(図5参照)。
なお、前記エタノール溶液の濃度であるが、本発明においては何ら限定されるものではなく、すなわち、50%濃度のエタノール溶液に限定されるものではない。濃度を薄めたエタノール溶液を使用して効率よくアデノシン6及びセレン11が回収できれば、コストをより安価にすることが出来る。
【0018】
しかして、図3に示すように、アデノシン6及びセレン11入り50%エタノール溶液5を回収し、当該50%エタノール溶液5内に溶出した固形分量及びアデノシン量また、セレン量を調べてみると、図10に示すように、カキ肉エキス濃縮液3中にある大量のアデノシン6を分離して回収することに成功した。また、図11から明らかのように、大量のセレン11をも分離して回収することに成功した。
【0019】
この様に、イオン交換樹脂1であるアンバーライトXAD2を用い、超純水4で溶出後、50%エタノール溶液5で溶出することにより、カキ肉エキス濃縮液3に含まれるアデノシン6、及び当該アデノシンとほぼ挙動を共にすると思われるセレン11を選択的に分取することができたのである。
よって、アデノシン6やセレン11が大量に入った健康食品を容易に、かつ確実に生成できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】本発明の構成を説明する構成説明図(その3)である。
【図4】本発明の構成を説明する構成説明図(その4)である。
【図5】本発明の構成を説明する構成説明図(その5)である。
【図6】本発明の構成を説明する構成説明図(その6)である。
【図7】本発明の構成を説明する構成説明図(その7)である。
【図8】本発明の構成を説明する構成説明図(その8)である。
【図9】本発明の構成を説明する構成説明図(その9)である。
【図10】50%エタノール溶液に溶出したアデノシン量を示す表である。
【図11】50%エタノール溶液に溶出したセレン量を示す表である。
【符号の説明】
【0021】
1 イオン交換樹脂
2 抽出容器
3 カキ肉エキス濃縮液
4 超純水
5 50%エタノール溶液
6 アデノシン
7 AMP
8 微量金属
10 洗浄容器
11 セレン
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ガキ等のカキ肉より抽出したカキ肉エキスの濃縮液より、アデノシン、セレンなどカキ肉エキスの特に有効な成分を分離して、かつ効率よく取り出すことが出来るカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明においてカキ肉エキスの有効な成分の一つであるアデノシン (Adenosine)とは、例えば、アデニンとリボースからなるヌクレオシドの一つであり、前記アデニンとリボースは
β-N9-グリコシド結合し、分子量(C10H13N5O4)で267と指標される。
ここで、アデノシンは、生体内で重要な役割を担っており、DNAやRNAの塩基として遺伝情報のコードに用いられている他、生化学過程でもATPやADPの一部としてエネルギー輸送に関わったり、環状AMPとしてシグナル伝達に関わったりし、もって生体内で重要な役割を有して機能する。
【0003】
そして、アデノシンは、アデノシン三リン酸(ATP)の分解産物であり、多くの臓器において主要な局所的機能制御因子の一つとして作用する。
たとえば、心臓血管系においても、生理的または病的状態において多彩な機能を担っており、細胞分化、血管新生、冠血流、刺激伝導系、代謝、及び交感神経に対する感受性などの制御や、虚血時においては心筋虚血耐性獲得に重要な役割を果たすなどである。
【0004】
近年、カキ肉のエキスは健康補助食品として各種の有益物質を多く含んだ極めて優れた製品であると一般にその認識度は日増しに高まっている。
そして、現在では例えば多種多様な抽出法によって抽出されたカキ肉エキスに関する健康補助食品が販売されている(特開平10−136946号公報)。
【0005】
しかして、かかるカキ肉のエキスの抽出に際しては、グリコーゲンやタウリンあるいは蛋白質等の有益な栄養源及び亜鉛等を含むいわゆる血小板の凝集を抑制する作用を有する物質を多量に含有され、効率よくカキ肉エキス中に回収できる様抽出することが望ましいとされていたが、前記カキ肉エキス、例えばカキ肉エキスの濃縮液からのアデノシンの抽出、取り出しについては従来何ら提案されておらず、前記のようにアデノシンの重要性が高まってきている近年、カキ肉エキスからアデノシンを効率よく、しかも豊富に取り出す取り出し方法、あるいは抽出する抽出方法が要請されるに至っているのである。
【0006】
生カキ肉からアデノシンが豊富に含有されたカキ肉のエキスを得ることができれば、従来のカキ肉エキス製品とは含有する有効成分の異なった健康食品を市場に提供することが出来るものとなる。
【特許文献1】特開平10−136946号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
かくして本発明は上記の課題に鑑みて創案されたものであり、カキ肉エキスの濃縮液から効率よくアデノシンを取り出すことが出来、しかも、カキ肉エキスの主要な成分であるセレンについても、前記のアデノシンとほぼ同様の挙動を示すことも明らかになり、もって、アデノシンのみならずセレンについても豊富に取り出すことができるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法は、
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入
し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、前記イオン交換樹脂に吸着された前記カキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とし、
または、
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで水を注入して前記抽出容器内を通液させ、前記水に溶出するイオン交換樹脂に吸着した前記カキ肉エキス濃縮液の成分を取得し、
次に、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、未だイオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分を前記エタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はアデノシンである、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はセレンである、
ことを特徴とし、
または、
前記エタノール溶液は、50%エタノール溶液である、
ことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法によれば、
カキ肉エキスの濃縮液から効率よくアデノシン及び当該アデノシンとほぼ同様の挙動を示すセレンさえも速やかに取り出すことが出来、しかも豊富に取り出すことができるとの優れた効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明を好適な実施例に基づいて説明する。
まず、本発明を実施する前の段階から説明する。
図6に示すように、例えば洗浄容器10内に大量のイオン交換樹脂1・・を収納し、エタノール溶液に例えば2時間程度浸漬して洗浄、消毒する。
【0011】
次に、前記洗浄、消毒した大量のイオン交換樹脂1・・を抽出容器2内に充填する。その後、図8から理解されるように、50%エタノール溶液5を抽出容器2内に注入し、さらによく洗浄、消毒する。その後、図9に示すように、超純水4を抽出容器2内に注入し、エタノール溶液のエタノール臭がなくなるまで通液する。この様な前段階の準備が完了させることがきわめて大切である。
本発明の実施に際しては、まず、前記のように処理したイオン交換樹脂1の充填された抽出容器2を用意する。
【0012】
ここで、本発明で使用されるイオン交換樹脂1について説明すると、該イオン交換樹脂1は例えば食品安全に完璧を期したものが使用される。
そして、該イオン交換樹脂1は、その母体構造が、スチレン系であり、極性は、無極性であり、その表面積は約300平方メートル/gであり、平均孔径は
であるものが好ましい。
本発明で使用される当該イオン交換樹脂としては、アンバーライトXAD2(アンバーライト:登録商標)が一般に知られている。
しかして、このイオン交換樹脂1を抽出容器2内に充填する。通常抽出容器2は比較的長尺で、縦方向に細長い筒状のものが用いられる。そして、その中にイオン交換樹脂1を充填するが、もって、前記イオン交換樹脂1は縦長方向に比較的長い距離を有して充填されるものとなる。
【0013】
次に、縦長方向に充填されたが充填された抽出容器2内に、カキ肉エキス濃縮液3を注入する(図1参照)。
なお、当該カキ肉エキス濃縮液3についてであるが、従前より各種の方法でカキ肉エキス濃縮液3を生成している。しかしながら、本発明ではこのカキ肉エキス濃縮液3の生成方法については何ら限定されないものである。いかなる方法によって生成されたカキ肉エキス濃縮液3であっても本発明が適用出来る。
【0014】
イオン交換樹脂1が充填された抽出容器2内に前記カキ肉エキス濃縮液3を上方から注入すると、該カキ肉エキス濃縮液3は抽出容器2内の上部から下方に落下する。その際、カキ肉エキス濃縮液3は充填されている複数のイオン交換樹脂1間を通液する。そして、前記イオン交換樹脂1はカキ肉エキス濃縮液3の所定成分を吸着する。
ここで、吸着されるカキ肉エキス濃縮液3の所定成分としては、アデノシン6、セレン11をはじめAMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8などが挙げられる。
【0015】
なお、図1に示すように、カキ肉エキス濃縮液3は、濃縮度の高い、いわゆる半流動体に近いものとなっているため、抽出容器2の上方から注入しても、最後の下部まで届かず、ほとんど複数のイオン交換樹脂1の間に留まる。
その状態から、次に、前記抽出容器2内に、超純水4を上方から注入する。すると、この超純水4が前記イオン交換樹脂1間を通液し、前記イオン交換樹脂1に吸着している所定成分を前記吸着から解放し、超純水4に溶解させて、下方で流出させるものとなる。
この溶解して流出される所定成分としては、AMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8などが挙げられる(図4参照)。
【0016】
ところで、前記イオン交換樹脂1に吸着されたカキ肉エキス濃縮液3の所定成分のうち、前記のようにAMP7、亜鉛、鉄、銅、クロムなどの微量金属8は、超純水4が通液することにより、前記吸着が解かれ、超純水4に溶解して下方へ流出されるが、他の成分、例えばアデノシン6、そして、当該アデノシン6とほぼ挙動を共にすると思われるセレン11は、超純水4には溶解せず、もって吸着が解かれて下方へ流出することがない(図4参照)。
【0017】
そこで、次に、50%濃度のエタノール溶液5を上方から注入するものとする(図3参照)。
すると、今までイオン交換樹脂1に吸着されていたアデノシン6、及び当該アデノシン6とほぼ挙動を共にすると思われるセレン11は、その吸着が解かれ、50%濃度のエタノール溶液5に溶解して下方へ流出されるものとなった(図5参照)。
なお、前記エタノール溶液の濃度であるが、本発明においては何ら限定されるものではなく、すなわち、50%濃度のエタノール溶液に限定されるものではない。濃度を薄めたエタノール溶液を使用して効率よくアデノシン6及びセレン11が回収できれば、コストをより安価にすることが出来る。
【0018】
しかして、図3に示すように、アデノシン6及びセレン11入り50%エタノール溶液5を回収し、当該50%エタノール溶液5内に溶出した固形分量及びアデノシン量また、セレン量を調べてみると、図10に示すように、カキ肉エキス濃縮液3中にある大量のアデノシン6を分離して回収することに成功した。また、図11から明らかのように、大量のセレン11をも分離して回収することに成功した。
【0019】
この様に、イオン交換樹脂1であるアンバーライトXAD2を用い、超純水4で溶出後、50%エタノール溶液5で溶出することにより、カキ肉エキス濃縮液3に含まれるアデノシン6、及び当該アデノシンとほぼ挙動を共にすると思われるセレン11を選択的に分取することができたのである。
よって、アデノシン6やセレン11が大量に入った健康食品を容易に、かつ確実に生成できるものとなった。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の構成を説明する構成説明図(その1)である。
【図2】本発明の構成を説明する構成説明図(その2)である。
【図3】本発明の構成を説明する構成説明図(その3)である。
【図4】本発明の構成を説明する構成説明図(その4)である。
【図5】本発明の構成を説明する構成説明図(その5)である。
【図6】本発明の構成を説明する構成説明図(その6)である。
【図7】本発明の構成を説明する構成説明図(その7)である。
【図8】本発明の構成を説明する構成説明図(その8)である。
【図9】本発明の構成を説明する構成説明図(その9)である。
【図10】50%エタノール溶液に溶出したアデノシン量を示す表である。
【図11】50%エタノール溶液に溶出したセレン量を示す表である。
【符号の説明】
【0021】
1 イオン交換樹脂
2 抽出容器
3 カキ肉エキス濃縮液
4 超純水
5 50%エタノール溶液
6 アデノシン
7 AMP
8 微量金属
10 洗浄容器
11 セレン
【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、前記イオン交換樹脂に吸着された前記カキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とするカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項2】
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで水を注入して前記抽出容器内を通液させ、前記水に溶出するイオン交換樹脂に吸着した前記カキ肉エキス濃縮液の成分を取得し、
次に、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、未だイオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分を前記エタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とするカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項3】
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はアデノシンである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項4】
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はセレンである、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項5】
前記エタノール溶液は、50%エタノール溶液である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項1】
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、前記イオン交換樹脂に吸着された前記カキ肉エキス濃縮液の成分をエタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とするカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項2】
イオン交換樹脂を充填した抽出容器内に、カキ肉エキス濃縮液を注入し、充填してあるイオン交換樹脂に前記カキ肉エキス濃縮液の成分を吸着させ、次いで水を注入して前記抽出容器内を通液させ、前記水に溶出するイオン交換樹脂に吸着した前記カキ肉エキス濃縮液の成分を取得し、
次に、エタノール溶液を前記抽出容器内に注入して、該抽出容器内を通液させ、未だイオン交換樹脂に吸着されたカキ肉エキス濃縮液の成分を前記エタノール溶液に溶出させて取り出す、
ことを特徴とするカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項3】
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はアデノシンである、
ことを特徴とする請求項1または請求項2記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項4】
前記エタノール溶液に溶出させて取り出すカキ肉エキス濃縮液の成分はセレンである、
ことを特徴とする請求項1、請求項2または請求項3記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【請求項5】
前記エタノール溶液は、50%エタノール溶液である、
ことを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3または請求項4記載のカキ肉エキス濃縮液からの成分取り出し方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−261372(P2009−261372A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118189(P2008−118189)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(596161031)株式会社渡辺オイスター研究所 (13)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(596161031)株式会社渡辺オイスター研究所 (13)
【Fターム(参考)】
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