カスタマイズされた整形外科用インプラント及び関連方法並びに変形可能な関節テンプレート
補綴インプラントを設計する方法である。例示的な方法は、1つ又はそれ以上の2次元画像から、解剖学的特徴の3次元モデルを開発することを含むことができる。3次元モデルは、接触面のそれぞれの部分の形状を表す複数の曲率半径を含むことができる。幾つかの例示的な実施形態においては、集団の多数の構成員に関連付けられた3次元モデルを用いて、補綴インプラントのためのテンプレートを作成することができる。患者の解剖学的特徴の3次元モデルを、利用可能なテンプレートと比較することができ、適したテンプレートを、該テンプレートを患者の解剖学的特徴の3次元モデルに仮想的に植え込むことによって試験することができる。幾つかの実施形態においては、適した既成のテンプレートを利用することができない患者の3次元モデルを用いて、既製のテンプレートをカスタマイズして、適切なインプラントを設計することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整形外科用インプラントに関し、より具体的には、関節置換及び修正手術に使用される整形外科用インプラント及び整形外科用ジグの設計に用いられる方法及び装置に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その各々の開示が引用によりここに組み入れられる、2009年2月25日付で出願された「DEFORMABLE ARTICULATING TEMPLATE」という名称の米国仮特許出願番号第61/208,509号、及び2009年7月2日付で出願された「CUSTOMIZED ORTHOPAEDIC IMPLANTS AND RELATED METHODS」という名称の米国仮特許出願番号第61/222,560号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
埋め込み可能な整形外科用装置を開発するために、異なる民族集団間における膝関節の固有の形状の差異を分析することは、膝補綴具の業界にとって主たる関心事である。それゆえ、提示される研究は3つの側面をもつ。すなわち、新規な自動化された特徴検出アルゴリズムを開発することにより、形態計測的に高度に異形の領域に基づく自動化された測定値の集合を定めることができ、これが次に、異なる集団の膝関節の差異を分析する場合の統計学的枠組みを可能にする。
【0004】
インプラントの設計においては、アジア系集団と西洋系集団との間での変動が重要であるため、下肢の形態学における民族的差異は、アジア系集団と西洋系集団との間の差異に焦点を合わせている。例えば、中国人の大腿骨はコーカソイドの大腿骨に比べて、より前方に湾曲し、かつ外方に転回しており、髄間管(intermedullary canal)はより小さく、また遠位顆もより小さい。同様に、コーカソイドの大腿骨は、長さ及び遠位顆の寸法の点で日本人の大腿骨より大きい。近位大腿骨の骨塩量(BMD)及び股関節軸長についても、アメリカ系黒人と白人との間には民族による差異が存在する。黒人女性が、白人女性に比べて骨粗しょう症性骨折の有病率が少ないのは、BMDがより高いこと、股関節軸長がより短いこと、及び転子間幅がより短いことの相乗効果であるとすれば説明が付く。同様に、アジア人及び黒人の高齢男性は、白人及びヒスパニック系男性よりも、皮質が厚く、かつBMDが高いことが判明しており、このことが、これらの民族群における骨強度の高さに貢献している可能性がある。一般に、黒人は、白人に比べて、骨皮質がより厚く、骨内膜直径がより狭く、BMDがより大きい。しかし興味深いことには、これらの特色は、アメリカ系黒人と比べてアフリカ系黒の場合に最も顕著である。
【0005】
以下の分析は、現代のアメリカ系黒人、白人、及び東アジア人の下肢における計量的及び幾何学的な形態計測的変動を考える。自動化測定、並びに生物医学研究において使用される測定及び幾つかの新たに考案された測定という形で、迅速かつ正確なデータ収集を容易にするために、3次元の統計学的骨アトラスが用いられる。形状分析は、主成分分析(PCA)と重判別分析とを組み合わせた統計学的処理によって実施される。計量分析は、t検定、パワー検定、及び線形判別分析を用いて、インプラント設計分析スイート(Implant Design and Analysis Suite)(その開示が引用によりここに組み入れられる「IMPLANT DESIGN ANALYSIS SUITE」という名称の同時係属中の米国特許出願番号第12/673,640号を参照のこと)システムにおいて行われる。本開示の残りの部分で概説されるように、これらの分析の結果は、膝関節における形態学的変動についての既存の知識に追加され、膝補綴具設計のために抽出することができる有用な情報を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本手法の革新性は、部分的には、統計学的骨アトラスによって提供される計算能力及び精度と組み合わされた、データ収集のためのコンピュータ断層撮影(CT)スキャンの使用によるものである。男女943人(81.5%がアメリカ系白人、9%がアメリカ系黒人、9.5%が東アジア人であり、全体の男/女比は65/35%である)を含む例示的なデータセットを、CTスキャンを用いてスキャンした。この研究には、正常な大腿骨及び脛骨のみを含めた。重篤な骨棘及びその他の異常を有する大腿骨及び脛骨は、特に除外された。各個人から1本の大腿骨及び脛骨のみが選ばれ、右側又は左側のいずれかを優先することはしなかった。
【0007】
骨は、0.625mm×0.625mm×0.625mmの立方体ボクセルを用いてCTスキャンされた。得られた結果は、DICOM画像スライスの形態の高解像度3次元放射線写真である。次に、この積層された画像データをセグメント化し、表面モデルを生成した。このプロセスは、観察者内誤差及び観察者間誤差が無視できる信頼性のあるものであることが見いだされた。次いで、これらのモデルを、民族特異的統計学的骨アトラスに追加した。
【0008】
簡潔に述べると、骨アトラスは、骨の主要な形状変動を捉え、群又は集団間の大域的な形状の差異の比較を可能にする、平均型又はテンプレート・メッシュである。骨アトラスは当初、自動的な医療用画像セグメント化のために開発されたが、骨をデジタル的に再現し、統計学的形状分析を行う手段として用いることもできる。さらに、骨アトラスは、生物学的人類学において、性的二形を研究するための手段として、及び、原人の化石を再構築して化石種間の形状比較を行うために有用であることが証明されている。
【0009】
民族的差異の分析のために、骨形状の統計学的表現を作成するために以前に開発された技術を、新たな方式で利用した。1つのアトラスはアメリカ系白人の大腿骨のみを含み、1つのアトラスはアメリカ系黒人の大腿骨のみを含み、1つのアトラスは東アジア人の大腿骨のみを含む、3つの独立した大腿骨の統計学的アトラスを編集した。同様に、脛骨について、同様に分類される3つの独立したアトラスを作成した(すなわち、アメリカ系白人、アメリカ系黒人、及び東アジア人の脛骨)。これらの統計学的アトラスを作成し、アトラスに骨を追加するプロセスを以下で概説する。
【0010】
最初に、データセット内の全ての骨モデルを比較し、テンプレート・メッシュとしての役割を果たす平均的な形状特性を有する骨モデルを選択した。次いで、テンプレート・メッシュ内の点を、その他の全てのトレーニング・モデル内の対応する点に対してマッチングした。これにより、全ての骨が同数の頂点及び同じ三角形連結度を有することを保証する。次に、一連の重ね合わせ及び歪曲技術を用いて、トレーニング・セット内の全てのその他の骨モデル上の対応する点を選択した。アトラスに追加される新たなモデル上の点対応を選び出すこのプロセスは、「非自明である」。以下で説明されるマッチング・アルゴリズムは、幾つかの周知のコンピュータ・ビジョン技術、並びに、最終的な表面位置合わせのための新たな貢献を用いる。
【0011】
マッチング・アルゴリズムの第1のステップ中に、テンプレート・メッシュの重心と新たなメッシュの重心とを位置合わせし、テンプレート・メッシュを、新たなメッシュのバウンディング・ボックスの寸法に合致するように予めスケーリングした。第2に、標準的な頂点−頂点の反復最近接点(Iterative Closest Point:ICP)アルゴリズムを用いて、新たなメッシュに対するテンプレート・メッシュの固定位置合わせ(rigid alignment)を行った。第3に、固体位置合わせの後で、一般アフィン変形を反復なしで行った。この方法を適用して、自由度12(回転、並進、スケーリング、及びずれを含む)を用いて、テンプレート・メッシュを新たなメッシュに位置合わせした。アフィン変形ステップ後、テンプレート及び新たなモデルは、線形変換の限界に達しているが、モデルの局所部分はなおも著しく隔たったままである。最終的な表面−表面マッチングの目標は、新たなモデルの表面上に、テンプレート・モデルと同様の局所空間特性を有する新たな点を作り出すことにあるので、位置合わせのずれを減らすための新規な非線形反復歪曲手法を開発した。
【0012】
図1を参照すると、点対応を達成するために、今までと同様にテンプレートから新たなモデルへの最近接頂点−頂点対応を見いだす反復アルゴリズムが用いられるが、今回は、新たなモデルからテンプレート・モデルへの対応も見いだされる。これらの両方の点対応を用いて、テンプレート・メッシュ上の点が、対応するベクトルの非対称重みづけを用いて、新たなメッシュ上の位置に向かって移動される。次に、反復平滑化アルゴリズムから成るサブルーチンが、今回変形されたテンプレート・メッシュに適用される。この平滑化アルゴリズムは、テンプレート・メッシュ上の隣接する三角形の大きさを平均し、それにより不連続性を排除しようとするものである。歪曲アルゴリズムの初期には、平滑化アルゴリズムは、周囲の三角形の実際の面積を用いて、各点に適用される平滑化ベクトルを規定し、これが、大きな三角形をもつ外れの点を効果的に除外することを助ける。その結果として、プロセスの初期には、テンプレート・メッシュは、大きなステップを行い、より大きな平滑化が必要とされる。しかしながら、プロセスの終期に向かって、平滑化ベクトルは、周囲の三角形の合計面積によって正規化され、これにより、テンプレート・メッシュを拡大して、高い曲率の区域とすることが可能になる。それぞれのアトラスの中の全ての大腿骨及び脛骨に対してこの手順が完了した後、アトラスは、形態学的形状分析及び自動化計量比較の準備が整う。
【0013】
2つの群の間の全般的な形状の差異を分析するために、革新的な統計学的処理を用いた。この方法は、変数低減の手段及び大域的形状記述子の両方として、(線形及び非線形)PCAの力を用いる。この方法は、スケーリングするために最初に考慮される第1主成分(PC)に対して正規化されたときに、異なる性別及び/又は異なる民族群の間で識別力が高い点を見いだすように設計されている。この手順は、他のいずれの情報も用いることなく、識別力が高いであろうモデル上の区域を強調する。このアルゴリズムにより同定されたランドマークは、その他のいずれのランドマークも用いることなく、民族群間の妥当な識別力を提供する。この特徴発見アルゴリズムを用いて、アメリカ系白人、黒人、及び東アジア人の間での、大きさの差異に依存しない、大腿骨及び脛骨の形状の差異を検査する。
【0014】
民族特異的統計学的アトラス上で定められたランドマークにおける特定の測定を用いて、広範な比較を行った。これらのランドマークは、外科的な重要性、臨床上の関連性、及び歴史的な測定に基づいて選択された。アトラスは、各々の大腿骨又は脛骨モデル上の相同の点から構成されているので、このプロセスを自動化するための豊富な情報を提供する。また、アトラス内の各骨モデルも、同一の座標フレームに対して位置合わせされている。合計で99本の大腿骨及び23本の脛骨の測定値、角度、及び指数が計算された。さらに、簡略化のために、結果のセクションにおいては、最も有意な計量特性のみを論じる。特に指定のない限り、以下で概説する測定値は、ランドマーク対の間の3次元(3D)ユークリッド距離を表し、角度は、ベクトル間の3D回転として測定される。幾つかの例においては、当該分野における先行研究との比較のため、これらの測定値を平面上に投影した。これらの測定値のサブセットを図2−図4に示す。測定の端点を定めるランドマークが、最初に計算され、その後、外科的及び解剖学的軸線に対して定められる。
【0015】
遠位大腿骨及び近位脛骨における民族的差異を大域的スケールで確認し、識別的情報を提供する可能性の高い領域を発見し、植え込まれる補綴具の設計を支援するために関連の外科的及び解剖学的特徴を測定するための、新規な方法が提示される。様々な研究が、確度及び精度に欠ける測定技術を用いて、大腿骨及び脛骨の民族的差異を同定するべく試行してきた。残念ながら、これらの方法では、重要さが小さい特徴を見いだすことが不可能であった。
【0016】
本開示に従って用いられる、順序付けられた一連の方法は、性別及び民族間での有意な大域的差異を証拠付け、これが、引き続き、特徴発見法を用いて、高度に異なる可能性のある領域の単離を可能にし、最終的には、外科的に妥当な解剖学的特徴を高度な確度及び再現性で探索及び測定するためのアルゴリズムのコード化を可能にする。異なるスケールを有する骨は、大きさに依存した形状変化の可能性を有するものと見なされていた。この方法では、民族に固有の明白な形状の差異を露わにするために、測定された変数と大きさとの間の相関は除外されていた。
【0017】
発明者は、上記の分析を用いて、アメリカ系黒人は、アメリカ系白人と比べて、より長く、真っ直ぐな大腿骨を有し、膝が狭いことを確定した。さらに、この分析は、遠位大腿骨の全体的な形状の差異をもたらす、外側顆の寸法及び向きにおける差異を明らかにした。すなわち、アメリカ系黒人は台形状の膝を有し、アメリカ系白人はそれより正方形に近い膝を有する。各群について、遠位大腿骨における差異は、隣接する脛骨にも反映され、アメリカ系黒人は、より長い外側脛骨顆を有する。脛骨プラトーの平均の内外長さは、黒人の方が白人より僅かに長いが、この差異は、サンプル寸法を考慮すれば過度に有意なものではなかった。しかしながら、アメリカ系黒人は、有意に、より長く、より頑丈な脛骨を有する。この研究においては、東アジア系集団と、アメリカ系白人及びアメリカ系黒人の両方との間で、主要な形状の差異が見いだされた。
【0018】
下肢の形態に遺伝的差異がどの程度まで寄与するのかは明らかではなく、混血個体は、課題を提起する。実際に、血液型データは、合衆国到着以来、アメリカ系黒人はアメリカ系白人に近づいてきており、祖先の西アフリカ系集団から離れてきていることを示している。
【0019】
下肢の形態における人種的差異は明らかであり、統計学的に有意であることが示されているとはいえ、アメリカ系黒人サンプル対アメリカ系白人サンプルには、より多くの統計学的ノイズが存在する可能性がある。このノイズは、合衆国到着以来の遺伝的混合と、より温和な環境における選抜緩和との複合的影響がもたらした結果であり得る。とはいえ、上記で論じたように、混血の影響は、アメリカ人集団のこれらのサブグループ間の弁別的な形態学的差異を消し去っていない。
【0020】
正常な膝関節の運動力学を理解するには、まず、膝関節の関節面の解剖学を理解する必要がある。膝関節は、ヒトの脚における2つの最大の骨である大腿骨と脛骨との関節である。膝関節における関節面は、大腿骨の遠位部分の外側顆及び内側顆を形成し、かつ脛骨の近位部分の外側及び内側脛骨プラトーと接触する、湾曲した面から成る。
【0021】
大腿顆は、膝蓋骨すなわち膝頭に対する関節である前溝、すなわち滑車へとつながる。脛骨プラトーは、前十字靱帯及び半月板の付着点の役割を果たす顆間隆起によって分けられる。脛骨プラトーはさらに、非対称形であり、2つのうちの小さい方が外側プラトーである。大腿脛骨関節の解剖学的研究は、内側区域の方が外側区域よりも大きい接触面積を有することを示している。
【0022】
腓骨は脛骨の外側に、その長さに沿った緻密な膜によって、及び、端部においては靱帯が支える軟骨性関節によって付着している。この骨同士の接続は、非常に小さい相対運動しか許容しない。近位の脛腓関節は、脛骨−大腿骨関節の水平面よりも下にあり、一方、2つの骨の遠位端は、踵関節の近位端を形成する。
【0023】
正常な膝では、屈曲が増している間中、後方大腿骨ロールバックが日常的に生じる。膝を深く曲げる運動のような大きな屈曲度を要する動作の最中には、より大きな量の後方大腿骨ロールバックが観察されている。後方ロールバックは、内側よりも外側の大腿脛骨関節において実質的に大きく、従って、屈曲が増大するにつれて、脛骨が大腿骨に対し内方に回転する内側旋回型の軸回転パターンを作り出す。数多くの運動力学的評価により、深い屈曲動作中の同様のパターン及び規模の後大腿骨ロールバックが見いだされている。これは、全膝関節形成術(TKA)後に観察される軸回転パターンとはいくぶん異なっており、その場合は、軸回転の規模がより小さく、ときとして外側旋回及び逆スクリューホーム回転(屈曲が増すにつれて脛骨が大腿骨に対し手相大敵に外方に回転する)といった病理学的な回転パターンを示した。
【0024】
また、TKA後に観察される脛骨上での大腿骨の前方並進は、多くの潜在的に好ましくない結果をもたらす。第1に、前方大腿骨並進の結果、屈曲軸がより前方になり、膝の最大屈曲が小さくなる。第2に、大腿四頭筋のモーメントアームが減少し、その結果、大腿四頭筋の効率が低下する。第3に、脛骨のポリエチレン(PE)表面上の大腿骨部品の前方摺動が、PE摩耗を早めるというリスクがある。
【0025】
TKAの主たる目的は、正常な膝の運動を再現することであるべきである。現在、この目的は、ほとんど見過ごされている。生体内で体重がかかった状態での数多くの透視分析は、既存の整形外科用インプラントを用いたTKA後に、正常な膝の運動を得ることは困難であることを示している。複数の運動異常(後方大腿骨ロールバックの減少、奇異前方大腿骨並進、逆の軸回転パターン、及び大腿顆のリフトオフ)が、通常、存在する。これらの運動の変動を理解することが、インプラントの性能又は寿命を制限するような悪条件を作り出すことなく、これらの運動異常を低減及び排除し、又は少なくともそれらに順応する方向で働く、より優れたTKAインプラントの設計を支援するものであった。膝インプラントのほとんどは、患者に特有の運動ではなく、平均的な動きに合わせて設計された、既製の膝システムである。従って、正常な膝と区別がつかないような膝のTKAの動き及び運動には、各患者に合わせたカスタマイズを利用すべきである。現在、カスタマイズは困難な作業であるが、本開示は、一部は、以下で説明される変形可能な関節テンプレート(DAT)方法論を提供することによって、このカスタマイズに対処する。
【0026】
本開示の目的に関して、曲率半径は、丸みを帯びた物体の曲率を近似する円周曲率を有する円の半径である。例えば、曲率半径は直線については無限であり、曲率が高くなるにつれて、その半径は無限から小さくなっていく。図5に見られるように、小さい円の曲率は大きい円の曲率よりも大きいので、小さい円の曲率半径は、大きい円の曲率半径より小さい。簡単に言えば、曲率半径が小さいほど、曲率が大きい。
【0027】
図6及び図7を参照すると、本発明者は、カム面に沿って前方から後方へ2つ又はそれ以上の曲率半径を適用することにより、生来の膝の顆の曲率をマッピングし、シミュレートすることができることを見いだした。特に、コーカソイド集団については、5つの互いに異なる曲率半径(r1−r5として識別される)が、顆の前方から後方に向かって、カム面の曲率に忠実に追従することが見出された。さらに、顆の曲率半径における非対称性が、屈曲中に脛骨を大腿骨に対して内旋させる原因であることが見いだされた。屈曲が20°を超えると、両顆上で摺動運動が始まる。
【0028】
膝関節の伸展は、大腿骨に対する脛骨の、結合された外旋を生じさせる。この回転は、膝の「スクリューホーム」運動として説明されている。このスクリューホーム運動は、内側顆の上に外側顆の上よりも広い面積の座面が存在することに起因する。外側顆の関節面全体が使い尽くされると、大腿骨は脛骨棘の周りを、関節がスクリューホームするまで、すなわち伸展状態で最密になるまで回転する。膝関節が屈曲及び伸展するときに、この回転は、脛骨を、内側大腿顆の解剖学的構成の結果として生じる渦形又は螺旋形に、大腿骨上で運動させる。脛骨は、完全に伸展した位置から大腿骨上で摺動するときに、内側大腿顆の湾曲を下降及び上昇し、同時に外旋する。脛骨が完全に屈曲した位置に戻るときに、この動きは逆に行われる。スクリューホーム機構は、大腿脛関節が仮に純粋な蝶番構造であったとした場合に可能であるよりも、いかなる姿勢においても、膝に高い安定性を与える。
【0029】
図8を参照すると、大腿顆と脛骨関節面との間の半月板軟骨(半月板)は、大腿顆を受け入れるように脛骨の関節面を深くする役割を果たす、2つの半月形の線維軟骨構造体である。断面を見ると、半月板は楔状の外観を有する。半月板は、(1)関節を通じた荷重の伝達、(2)関節の適合性を高めること、(3)関節面全体にわたる滑液の分配、及び(4)関節運動中の骨の衝突の防止を含む、幾つかの重要な機能を行う。半月板が存在する場合、各顆についての荷重負荷面積はおよそ6cm2であるが、半月板が損傷し、又は重篤な劣化が生じた場合には、この面積はおよそ2cm2まで減少する。従って、有効な荷重負荷面積が増大すると、軟骨に伝達される応力は減少し、逆もまた真である。
【0030】
図9及び図10を参照すると、正常な膝関節では、顆間空間内の関節の内側に位置する、前十字靱帯(ACL)及び後十字靱帯(PCL)が本来備わっている。これらの靱帯は、関節における前後運動及び軸回転運動を制御する。前十字靱帯は大腿骨に対する脛骨の前方移動に主たる拘束を与える一方、後十字靱帯は脛骨の後方運動に対する主たる拘束を与え、この動きに対する総抵抗の90%を超える割合を占める。図10は、膝関節の異なる屈曲角度におけるACL及びPCLの長さの変化を示す。後方に安定化された膝インプラントの設計に対するACL及びPCLの拘束の影響についての詳細な説明を、以下で、より詳細に論じる。
【0031】
遠位大腿骨の形態学的形状が、TKAに用いられる補綴置換物の形状、向き、及び運動力学を決定付けるべきである。従来の補綴設計は、滑車溝を中心に置き、対称の大腿顆を取り入れている。従来の外科技術は、大腿骨部品を遠位大腿骨の中央に置き、可変の骨ランドマークに対して相対的にこれを位置決めする。しかしながら、実証された不全のパターン及び運動力学的研究は、従来の設計及び外科技術が、膝蓋骨及びその遠位大腿骨のトラッキングを軽視していることに加えて、遠位大腿骨の形態学及び膝関節の運動力学に対する理解が不十分であることを反映していることを立証している。
【0032】
滑車は、膝蓋骨を案内し、かつ保持するような設計となっている。膝蓋骨トラッキングは、多くの異なる要因、すなわち、滑車溝の幾何学的形状、膝蓋骨の後方側の幾何学的形状、軟質組織伸筋機構、及び脛骨の向きによって影響を受ける。屈曲中の大腿骨上での膝蓋骨の正常な運動は、大腿膝蓋面の中心溝に沿って顆間切痕(intercondylar notch)を下降する、垂直方向の変位である。滑車溝及び膝蓋骨の後方側の幾何学的形状が、特に高屈曲角度において膝蓋骨トラッキングを拘束する。膝蓋骨は、大腿骨の溝に対する小関節面の適合、及び膝蓋大腿靱帯によって、中央に保持される。これらの靱帯は、膝蓋骨の内側及び外側の肥厚した構造内への包のコンホメーションを表している。これらの靱帯は、両側の上方及び下方に位置し、膝蓋骨の前面から後方に各大腿顆の側部に向かって延びる。これらの靱帯もまた、膝蓋骨の動きを拘束するが、溝による拘束又は外部の力によって覆されることがある。正常な膝においては、膝蓋骨のトラッキングは、滑車の向きにかなり相似するであろうと推定することが許される。結果として、この生来の膝蓋骨トラックを再現するためには、膝補綴具の滑車溝の向きは、生来の滑車の向きに相似したものとすべきである。
【0033】
まとめると、膝関節は、非常にうまくつり合いがとれた系の一例である。この系内の僅かな変化が、系全体に影響を及ぼす。膝蓋−大腿関節内での変化は、膝関節のこの部分内で伝達される力が相対的に高いので、相当長期的な影響を与えることができる。TKAは、膝蓋−大腿関節内での変化を容易に誘発する。現在のところ、シミュレートされたTKA部品の滑車溝の向きは、生来の滑車の向きに一致していない。従って、将来の大腿骨部品の溝の向きには、生来の大腿骨の滑車溝の生来の向きをシミュレートした滑車溝を組み入れるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】アトラス作成のプロセスを概説するフローチャートである。
【図2】IDASソフトウェアを用いた、ランドマークの自動計算を示すスクリーンショット及び関連付けられた画像である。
【図3】取得される軸線、ランドマーク、及び測定値を示す、大腿骨の遠位端の図である。
【図4】取得される特定の軸線、ランドマーク、及び測定値を示す、図3の大腿骨の正面図である。
【図5】異なる半径を有する円を用いてどのように骨の表面上の曲率を近似することができるかを示す例示的な図である。
【図6】前方から後方へのカム面の曲率を近似するために適用された5つの曲率半径を有する、ヒトの膝関節の外側顆の側面図である。
【図7】前方から後方へのカム面の曲率を近似するために適用された5つの曲率半径を有する、ヒトの膝関節の内側顆の側面図である。
【図8】ヒトの膝関節の一部を形成する軟骨を含む、ヒトの脛骨の近位端の平面図である。
【図9】膝を一部屈曲している間の前十字靱帯及び後十字靱帯を示す、膝関節の正面図である。
【図10】前十字靱帯及び後十字靱帯の位置を示す、種々の角度の膝屈曲における膝関節の一連の正面図を含む。
【図11】患者に合わせてカスタマイズされた整形外科用テンプレート又は一般集団のための一連のテンプレートのうちの1つを含む整形外科用インプラントを設計するための例示的なプロセスの全体としての概略図である。
【図12】ヒトの患者由来の実際の生来の大腿骨に対応する、医療用画像化機器から生成された幾つかの電子的3D遠位大腿骨モデルの底面図である。
【図13】屈曲位置の関節が示された、実際のヒトの膝関節の医療用画像化機器のデータに基づいた、軟骨及び靱帯を含むヒトの膝関節の電子的モデルである。
【図14】完全な伸展に近い関節が示された、実際のヒトの膝関節の医療用画像化機器データに基づいた、軟骨及び靱帯を含むヒトの膝関節の電子的モデルである。
【図15】完全な伸展に近い脛骨、大腿骨、及び膝蓋骨の間の相互作用を示す、膝関節の一連の2D垂直スライス表現である。
【図16】スライスが取得された場所、及び、完全な伸展に近い脛骨と大腿骨と膝蓋骨との相対位置を示す、その他の垂直スライスに追加された図15の2Dスライスの3D表現である。
【図17】内側及び外側のカム軌道に沿って、最も前方、遠位、及び後方の点を示す、大腿骨の遠位図である。
【図18】各顆の可動域全体にわたって各顆のカム面の最も外側の部分を近似する軌道を有する、遠位大腿骨の内側顆及び外側顆の図を編集した図である。
【図19】例示的な遠位大腿骨についての各顆のカム面の最も外側の部分の軌道、並びに遠位大腿骨に関連付けられた滑車溝の最も内側の面に対して脛骨及び膝蓋骨を示す、3D表現の後方立面図である。
【図20】遠位大腿骨を想像線で示したことに加えて、図18の脛骨及び膝蓋骨、並びにカム軌道及び滑車溝軌道を示す、膝関節の外側側面図である。
【図21】ヒトの男性及び女性の両方についての一連の遠位大腿骨に関する曲率半径の測定値、並びに測定値が取得された場所を表す例示的なチャートである。
【図22】外側顆及び内側顆の最も外側のカム面軌道についての対応する曲率半径の位置及び寸法に対して脛骨及び膝蓋骨を示す、膝関節の外側側面図である。
【図23】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での遠位大腿骨の形状間の通常の差異を示す正面図である。
【図24】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での内側大腿顆の形状間の通常の差異を示す側面図である。
【図25】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での外側大腿顆の形状間の通常の差異を示す側面図である。
【図26】c1−c4の測定が、本開示により製作される補綴装置の曲率にどのようにして変換されるかを示す、例示的な外側顆補綴具の例示的な縦断面図である。
【図27】外側顆及び内側顆並びに滑車溝の弓状プロファイリングに加えて、例示的な遠位大腿骨についての外側顆及び内側顆の最も外側のカム面軌道、並びに滑車溝の最も内側の軌道を示す、3D表現である。
【図28】生来の大腿骨の3D骨モデル上に重ね合わせた、図22の3D表現である。
【図29】大腿骨の遠位部分及び重ね合わされた3D表現を示す、図23の拡大図である。
【図30】表面の例示的な3D表現を含む、大腿骨の遠位部分の斜視図である。
【図31】図24に表示された曲率の数学的表現である。
【図32A】内側顆と外側顆の互いに対する比を0−30度についてプロットしたグラフである。
【図32B】内側顆と外側顆の互いに対する比を、40−70度についてプロットしたグラフである。
【図32C】内側顆と外側顆の互いに対する比を、80−110度についてプロットしたグラフである。
【図32D】内側顆と外側顆の互いに対する比を、120−150度についてプロットしたグラフである。
【図33】本開示に従って取得される軸、ランドマーク、及び測定値を示す、脛骨の近位端である。
【図34A】典型的なアジア人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図34B】典型的なアメリカ系白人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図34C】典型的なアメリカ系黒人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図35】典型的なアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人についての滑車軌道を示す複合図である。
【図36】典型的なアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人についての滑車軌道の形状を示す複合側面図である。
【図37】アジア人とアメリカ系白人との間での差異が最大の区域を示す、大腿骨の遠位図である。
【図38】アメリカ系白人とアメリカ系黒人との間での差異が最大の区域を示す、大腿骨の遠位図である。
【図39】アメリカ系白人とアメリカ系黒人との間での差異が最大の区域を示す、脛骨の立面斜視図である。
【図40】アジア人とアメリカ系白人との間での差異が最大の区域を示す、脛骨の近位図である。
【図41】本開示に従い、変形又は欠損した解剖学的構造をC1/C2比を用いて修復する、例示的なプロセスを示す図である。
【図42】AP高さ対ML幅の例示的なプロットである。
【図43】Dunn指数及び修正Dunn指数を用いてクラスターの最適数を決定するためのプロットである。
【図44】代替Dunn指数方程式(ADI)である。
【図45】内側プラトー及び外側のプラトーの主軸に対して垂直な一連の輪郭を用いた、脛骨プラトーの例示的な近似を示す図の集積である。
【図46】AP高さ対ML幅の例示的なプロットである。
【図47】例示的なポリエチレン製インプラントの斜視図である。
【図48】例示的なインプラントの一連の斜視図である。
【図49】例示的なインプラントの斜視図である。
【図50】例示的なインプラントの断面図である。
【図51】例示的なインプラントの斜視図である。
【図52】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品の前方図である。
【図53】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品のための外側顆及び顆受け器を横断して見た断面図である。
【図54】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品のための内側顆及び顆受け器を横断して見た断面図である。
【図55】解剖学的インプラントと既存の機能的インプラントとの間の違いを示す比較である。
【図56】膝の内側及び外側の前部の正しい比を復元する際の差異を示す比較である。
【図57】多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【図58】多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【図59】アフリカ系アメリカ人集団とコーカソイド集団の間の変動を示し、影が薄いほど大きな差異に対応し、影が濃いほど少ない差異に対応する、例示的な影付きマップである。
【図60】3D骨モデルから患者特異的インプラントを生成するための例示的な流れ図である。
【図61】患者の骨の表面を表すのに用いられ、かつ骨の断面の輪郭を計算するのに用いられる、点クラウドを描く図である。
【図62】患者特異的インプラントの作成の初期段階における、患者特異的な輪郭を用いて、パラメータ化されたインプラント制約条件を更新することを描く図である。
【図63】本開示による、輪郭を掃引して患者特異的な滑らかな関節インプラント表面を生成することを示す図である。
【図64】解剖学的に適したテンプレートを用いて既存のレガシー・インプラント・システムを更新するための例示的なプロセス・フロー図である。
【図65】より解剖学的に正確な膝蓋溝を組み入れた、更新された既存のレガシー・インプラント・システムを描く図である。
【図66】本開示に従って設計された例示的な大腿骨部品を記述するために用いられるパラメータの例示的なリストである。
【図67】テンプレート・パラメータを自動的に更新し、インプラントCADを生成するプロセスを説明する、例示的なフローチャートである。
【図68】強調表示された対応する接触区域と共に示された、遠位大腿骨である。
【図69】0−40度の間の膝屈曲について強調表示された対応する接触区域と共に示された、近位脛骨である。
【図70】60−140度の間の膝屈曲について強調表示された対応する接触区域と共に示された、近位脛骨である。
【図71】正常な膝の運動力学をシミュレート又は近似するように修正又は再設計された脛骨トレー・インサートを上から見た図である。
【図72】制限された軸心周りの回転を有する、従来のPS膝インプラントである。
【図73】前十字靭帯の保持を提供する、本開示により設計された例示的な膝補綴具の立面斜視図である。
【図74】前十字靭帯修正外科手術の後に用いるための、本開示により設計された例示的な膝補綴具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の例示的な実施形態は、補綴膝インプラントを設計するための方法及び装置、より具体的には、生来の膝の生体力学をより忠実に追従する膝インプラントを設計するための装置及び方法、並びにその結果として得られるインプラント自体を包含するように、以下で説明され、例示される。もちろん、以下で論じられる好ましい実施形態は、本質的に例示的であり、本発明の範囲及び真意から逸脱することなく再構成することができることが、当業者には明らかとなろう。しかしながら、明確さ及び精度のために、以下で論じられる例示的な実施形態は、本発明の範囲内に入るための必要条件ではないことを当業者が認識するような、随意のステップ、方法、及び特徴を含むことがあり得る。
【0036】
以下は、遠位大腿骨に関する軸、ランドマーク、及び測定値の定義である(図2−図4参照)。これらの定義は、本開示において用いられるこれらの用語の正しい解釈の基準ともなる。
【0037】
「上顆横断軸(TEA)」−この測定値は、人類学の文献においては両上顆間幅として知られる。臨床的な上顆横断軸(TEA)を計算するために、平均的な大腿骨上の外側上顆の最も外側の隆起上及び内側上顆の最も内側の隆起上に、大まかな頂点の集合を手作業で定めた。大腿骨アトラス内の頂点は相同であるので、このステップは一度だけ行った。これらの点の大まかな集合を用いて、外側と内側の両方で、頂点の大まかな集合の重心から半径10mmの探索領域を定めた。次いでこれらの重心の各々からのベクトルを定義することで、TEAについての大まかな方向を与える。この大まかな方向における距離を最大化することによって、点の対が選択され、これらの選択された点が、TEA測定の端点を形成する(図2参照)。
「遠位解剖学的軸」−遠位解剖学的軸は、大腿骨全長の遠位三分の一及び遠位五分の一において骨幹の重心を位置決めすることによって定められた。
中心AP軸(CAP)−遠位解剖学的軸及びTEAを用いて、顆間切痕の後方面と顆間溝の最も前方の部分とに終端を有する相互直交軸を定めた。この軸の長さがCAPとして記録される(図3)。この軸は、「顆間切痕の高さ」に対して相似である。
「大腿鞍点」−顆間溝の最も遠位の延長に位置決めされるランドマーク。
「膝中心」(K)−CAP測定の2つの端点及び大腿鞍点を用いて、大腿骨を内側と外側とに二分する平面が定められる。この平面のTEAとの交差点が膝中心であり、これが、大腿骨の機械的軸(MA)の遠位端点を形成する。MAの近位端点は大腿骨頭の中心である(下記の近位大腿骨測定を参照のこと)。
「AP方向」−MA及びTEAを用いると、膝中心を原点とする相互直交ベクトルを用いて前後(AP)方向が定められ、Whiteside線に相似の方向が得られる。
「前方内外幅(AML)及び後方内外幅(PML)」−AP方向を使って、4つのランドマーク、すなわち、遠位大腿骨の内側顆及び外側顆の最も前方の点及び最も後方の点が位置決めされる。最も前方の点2つを結ぶと、滑車線に沿って前方内外幅(AML)の測定値が得られ、最も後方の点2つを結ぶと、後方顆軸(PCA)に沿って測定される後方内外幅(PML)の基準が得られる(図2参照)。
「内側顆及び外側顆のAP長(LAP及びMAP)」−上記で定められた外側及び内側のそれぞれの頂点の対を結ぶと、外側顆のAP長(LAP)及び内側顆のAP長(MAP)が得られる(図3参照)。
「後方平面」−PML測定の端点を含み、かつMLに対して平行でもある一意の平面を用いて、後方平面を定めた。
「全AP長」−外側前顆の隆起と後方平面との間の最小距離(図3参照)。
「AP角」−後方平面に対するAMLベクトルの角度(図3参照)。
「遠位内外長(DML)」−MAを基準方向に用いて、内側顆及び外側顆の最も遠位の面を記録した。これらの2つのランドマーク間の距離をDMLと名づけた。
「後方角(PA)」−DML長を結ぶベクトルと大腿骨の平均軸との間の角度(図4参照)。
「顆ねじれ角(CTA)」−TEAとPCAの間の角度。
「膝蓋溝高さ(GH)」−顆間切痕の後面と、2つのDML軸点間の中点との間で算出された(図4を参照)。
大腿骨幹軸曲率(SC)−大腿骨平均軸の曲率半径。
定義の記載の終わり
本文末尾に記載の表の説明
「表1」 典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人について、重要な大腿骨測定値−平均、標準偏差、t検定、及びパワー検定の結果を列挙する。
「表2」 典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人について、重要な脛骨測定値−平均、標準偏差、t検定、及びパワー検定の結果を列挙する。
「表3」 前十字靭帯及び後十字靭帯の長さの変化の百分率を膝屈曲角度に対して列挙する。
【0038】
図11を参照すると、例示的な膝設計プロセス100の模式的な概略は、電子データベース内に格納された1つ又はそれ以上の電子3次元(3D)骨表現102を取得することを含む。全膝関節形成術の場合の、大腿骨の遠位部、脛骨の近位部、それらの間の軟骨、及び膝蓋骨の少なくとも一部を置換することになる全膝関節インプラントを設計する目的のためには、遠位大腿骨、近位脛骨、及び膝蓋骨の3D骨表現、並びに、TKA整形外科用部品を受け入れるように、大腿骨、脛骨、及び膝蓋骨を準備するために用いられる3Dジグ表現を有することが有用である。これらの3D骨表現及び3Dジグ表現を生成するために、患者又は屍体に、CTスキャン、一連のX線、MRI、及び/又は超音波画像化を受けさせることができる。これらの検査から得られた骨及び軟質組織の画像と、可能であれば骨又は軟質組織の補間されたアスペクトとを利用して、1つ又はそれ以上の3D骨表現、及び1つ又はそれ以上の3Dジグ表現を構築する。
【0039】
上記の検査から得られた画像は、データ分析のためにコンピュータにロードされる。当業者には公知のように、MRIは、ヒトの解剖学的構造の関連部分の一連の2D「スライス」を作成する。次いで、これらの2Dスライスをセグメント化し、互いに積み重ねて、ヒトの解剖学的構造の3Dモデル又は表現を作成することができる。スライスの構築にMRIが用いられる限りにおいて、3Dモデルの精度は、部分的には、MRIから得られるスライスがどれだけ「厚い」かによって決まる。CTスキャン、X線、及び超音波についても、互いに異なる点から2D画像を取得し、これを利用して問題の解剖学的特徴の3Dモデルを構築する類似のプロセスが用いられ、例示のみを目的として、この問題の解剖学的特徴は、ヒトの膝関節を背景として説明される。
【0040】
2D画像を取得し、これらの画像を用いて3Dモデルを作成するための、この同じプロセスは、いずれのヒトの関節又は骨の3Dモデルの生成に対しても適用可能である。この同じプロセスは、更なる分析のための複数の骨又は関節のモデルを生成するために、生きた人間又は死んだ人間に適用することができる。これらの同じ2D画像は、各々のヒトの特徴(骨、関節など)の解剖学的構造をより正確に描くために、骨と骨との間、例示的な形態においては大腿骨と脛骨との間に選択的に挿入することができる、軟骨の3Dモデルを構築するためにも有用であることを理解されたい。以下で論じられるように、軟骨の3Dモデルは、3Dジグモデルを構築する際に有用であり得る。
【0041】
図12を参照すると、一連の3D遠位大腿骨表現が示される。以下でより詳細に論じられるように、例示的な膝設計プロセス100を利用して、各患者の解剖学的構造に独特の、カスタマイズされた膝インプラントを設計及び構築することができる。さらに、例示的な膝設計プロセス100を利用して、カスタマイズ費用が商業的に実現不可能又は好ましくない場合に、より大きな集団の解剖学的構造を近似するために用いることができる、1つ又はそれ以上汎用インプラントを設計及び構築することができる。
【0042】
再び図11を参照すると、3D表現が電子的形態で生成されるように1つ又はそれ以上の骨をモデル化した後で、3D表現は、追加データをこの3D表現と相関させる、データベース104内に格納される。例示的な形態において、データベース104は、これらの表現を分類するために、その骨、関節などをスキャンした元のヒトの年齢、性別、人種、及び身長を含むがこれらに限定されない、各3D表現に特異的なデータも含む。同時に、各3D表現は、骨、関節などの状態に関する等級又は評価を含むことができる。例示的な形態において、データベース104内に膝関節(少なくとも近位脛骨及び遠位大腿骨)の3D描写を保存するときに、軟骨の損耗、骨の変性、及び骨棘の発達についての分類を同定することができる。
【0043】
図13及び図14を参照すると、各々の個別の骨モデルの生成に続いて、例示的なプロセス100は、膝関節300の3Dモデルの生成を含む。この膝関節の3Dモデル300は、関節が完全に伸展したときに各々が取る向きに、遠位大腿骨302、近位脛骨304、及び膝蓋骨306を方向付けることを含む。その後、コンピュータ・ソフトウェアは、3Dモデルの骨を再配置して、膝関節が完全に屈曲するまでの仮想可動域を作成するように動作可能である。同時に、3Dモデル300は、脛骨304の近位端と協働して内側顆及び外側顆の受け器を形成する生来の軟骨を表すように、骨302、304、306の間に挿入される軟骨(図示せず)を含むことができる。
【0044】
図15及び図16を参照すると、3D関節モデル300は、膝関節がその可動域を通して動くに従い、各スライスの向きがどのように変化するのかを示す2Dの接触プロファイル又は「スライス」を生成するために有用である。特に、これらの2D表現は、補綴インプラントを、生来の膝とちょうど同じように、合同し、連携して関節全体を形成する、一連のスライスとして考えることができることを理解するときに有用である。結果として、各スライスの幾何学的形状を評価し、理解することによって、各患者に独特の特異的な輪郭を想像することもでき、又はより包括的な集団全体にわたって一般化することもできる。3D関節モデル300は、民族、性別、及び/又は年齢に応じて異なる局所解剖学的構造(topograhy)を組み入れることができることに留意されたい。これらの様々な局所解剖学的構造は、様々なスライスをもたらす。
【0045】
図17−図20を参照すると、各3Dモデル300が生成され、保存された後、各3Dモデルに関連付けられた内側顆及び外側顆308、310の両方について一連の曲率半径測定値が取得される。例示的な形態において、遠位大腿骨3Dモデルは、滑車溝312で隔てられた対応する内側顆及び外側顆308、310を含む。内側顆及び外側顆308、310は各々、カム面を含み、カム面は、大腿骨が可動域を通して回転するときに骨の中心から最も離れた点を該カム面に沿って有する。内側プロファイルを計算するために、内側前方点(内側顆において最も前方の点)と、内側遠位点(内側顆上の最も遠位の点)と、内側後方点(内側顆において最も後方の点)とにより定められる平面を遠位大腿骨と交差させ、この結果として、内側顆の表面上で最も突出した点に対応する輪郭が得られ、この同じ方法を用いて、図17、図19、及び図20に示されるような外側プロファイルが計算される。次いで、これらの3D軌道は、各顆ごとに1つの平面内の単一の最良適合軌道に変換される。
【0046】
溝プロファイルの計算のために、遠位大腿骨を、上顆横断軸の周りを10度ずつ回転する一連の平面と交差させることによって、輪郭の集合が抽出される。次いで、これらの輪郭上の最も低い点を用いて、図19に示されるように溝点が定められる。
【0047】
同様の手順を利用して、大腿骨がその可動域を通して回転するとき骨の中心に最も近接する、表面に沿った点を用いて、滑車溝の3D軌道に沿った点の集合を生成する。これらの最近接点(すなわち、トラフの最も低い部分)が、図19及び図20に示される。次いで、この3D軌道は、1つの平面内の単一の最良適合軌道に変換される(図19及び図20に示されるように)。
【0048】
図21及び図22を参照すると、本発明の発明者は、遠位大腿骨の生来の形状に非常に良く似た補綴大腿骨部品を設計する試みにとって、内側顆及び外側顆の両方の支持面についての2D軌道の形状、並びに滑車溝についての2D軌道が重要であることを見いだした。大腿骨部品を生成するための特定の寸法及び曲率の測定値を割り出すために、発明者は、各大腿顆に対して4つの曲率半径を適用することで、生来の大腿顆の曲率に正確に追従することを見いだした。
【0049】
図23−図25を参照すると、図23は、白人、黒人、及びアジア人の外側及び内側大腿顆の複合図であり、他方、図24は、白人、黒人、及びアジア人の内側大腿顆の内側プロファイルを示し、図25は、白人、黒人、及びアジア人の外側大腿顆の外側プロファイルを示す。
【0050】
再び、図6及び図21、並びに図26を参照すると、内側顆の最も外側のカム面及び外側顆の最も外側のカム面についての各軌道は、4つのゾーンにセグメント化される。これらのゾーンの各々の曲率は、円の曲率で近似することができることが、発明者によって確認された。換言すれば、各ゾーンは、円の一定の弧を近似する。例えば、第1のゾーンは、c1として同定される曲率半径を有する。簡単に言うと、このc1の値は、カム面の2D軌道の最も後方部分である軌道のこの部分の曲率を最も忠実に近似する円の半径である。第1のゾーンに直接隣接する第2のゾーンは、曲率半径c2を有する。ここでも、このc2の値は、この第2のゾーンの曲率を最も忠実に近似する円の半径である。第3のゾーンは第2のゾーンに続き、同じく曲率半径c3を含む。最後に、それぞれの顆の各々の前方部分の輪郭を近似する第4のゾーンは、曲率半径c4を有する。
【0051】
一連の膝関節が、X線、CTスキャン、MRIなどから電子的にモデル化される状況の場合、各ゾーン内及び全てのゾーンにわたって曲率半径がどのように変動するかを識別するために、比較を行うことができる。図21のチャートは、ヒトのX線、CTスキャン、及び/又は超音波から導出された実際の3D骨モデルから導出される。このチャートは、性別に基づく、各ゾーンについてメートル法で表した(センチメートル単位の)平均曲率半径を含む。各ゾーンについての平均曲率半径を示したのみならず、この表は、外側及び内側顆についてゾーン間でのすばやい比較ができるように、各ゾーンについての標準偏差も表している。
【0052】
再び図22及び図26を参照すると、ヒトの膝関節の側面図は、大腿骨の遠位部を取り去り、内側顆及び外側顆の両方についての4つのゾーンの各々の曲率半径(c1−c4)に対応する円でそれを置き換えている。この図は、曲率半径が、円弧及び円の相対的な大きさで、隣接する遠位大腿骨の解剖学的特徴に関して何を表しているかを示す代表図を与える。以下で論じられるように、これらの円は、補綴インプラントにおいて生来の遠位大腿骨の曲率を近似する試みに関連する。円の中心の位置は、例示的なモデルの内部で用いることができる。これらは、曲線の点の各集合において、その曲線に最も近似する円の半径及び中心を与える円の線形二乗フィッティングを用いて計算することができる。
【0053】
図27−図32を参照すると、上記で論じたように、内側顆及び外側顆の可動域の全体を通して最も外側にあるカム点、並びに滑車溝の可動域の全体を通して最も内側にある点をたどる、3D軌道が作成される。各々の最も外側のカムの軌道を滑車溝についての軌道と共に用いて、顆及び滑車溝の両方の局所解剖学的構造が数学的にマッピングされる。次いで、図27に示されるように曲線を正確に近似する、通過する円の最良の数を見いだすことによって、内側、外側及び溝のプロファイルの曲率が計算される。顆表面の曲率を捉えるために、先に大腿骨をTEAの周りの平面と交差させることによって作成しておいた曲線を、内側、外側、及び溝プロファイルの周囲でトリミングし、次いで、これらのトリミングされた輪郭の各々の曲率の円が、図27に示されるように計算される。
【0054】
滑車溝トラフ軌道に加えて、顆の最も外側のカム軌道の各々を、遠位大腿骨が脛骨に対して回転する可動域に沿って可変角度の増分で分割する。提示した画像においては増分10度の増分を用いたが、他の増分も本開示の範囲内にある(幾つかの例示的な実施形態においては、例えば、5−15度の増分を用いることができる)。各軌道の長さを増分10度で分割し、各増分の境界に1つの曲線が適用される。増分10度ごとの各顆及び滑車溝の横方向部分(内側から外側)には、個別の内側−外側曲線が適用される。個別の各々の内側−外側曲線の円弧は、それぞれの軌道に沿った各点における内側−外側曲率を最も忠実に近似するように選択される。その後、各々の内側−外側曲線ごとに、曲率半径が決定される。
【0055】
図33を参照して、遠位大腿骨について、以下のランドマーク及び測定値を自動的に同定した。
1)顆間隆起点−内側顆及び外側顆の隆起上の2つの最も高く突出した点。
2)隆起中点−外側顆間隆起点と内側顆間隆起点との間の中点。
3)脛骨粗面−脛骨粗面上の最も前方に突出した点。
4)ML−脛骨プラトーの内外方向の最大幅。
5)AP−脛骨顆間隆起の中点(すなわち隆起中点)を通る、前後(AP)方向の脛骨プラトーの長さ。
6)隆起幅(EW)−内側顆間隆起点と外側顆間隆起点との間の距離。
7)脛骨ねじれ角(TTA)−AP方向と、顆間隆起中点と脛骨粗面とを結ぶ線との間の角度。
8)外側プラトー高さ(LPH)−外側脛骨プラトーのAP方向の長さ。
9)外側プラトー幅(LPW)−外側脛骨プラトーのML方向の長さ。
10)内側プラトー高さ(MPH)−内側脛骨プラトーのAP方向の長さ。
11)内側プラトー幅(MPW)−内側脛骨プラトーのML方向の長さ。
12)隆起ML比(EMLR)−MLに対するMPW(すなわち内側プラトー幅)の比。
13)最大長−脛骨の内果から顆間隆起までの長さ。
【0056】
図34A−図36を参照すると、異なる民族の滑車溝は、異なる形状及び軌道を有することが判る。図34Aは典型的なアジア人の滑車溝軌道を表し、図34Bは典型的なアメリカ系白人の滑車溝軌道を表し、図34Cは典型的なアメリカ系黒人の滑車溝軌道を表す。さらに、図35は、典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人についての滑車軌道の複合図を示す。最後に、図36は、同じくアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間でどのように滑車溝の形状に変動があるのかを表す側面図を示す。上で説明したような特徴発見形状分析ツールから得られた結果は、遠位大腿骨に加えて、大腿骨幹、外側顆、及び大転子における形状の差異を強調する。
【0057】
表1及び図37−図40を参照すると、自動測定値に対するt検定及びパワー検定から得られる結果である。アメリカ系黒人では、外側顆は高めのAP高さを有していた(p<0.01)のに対して内側顆の高さは有意ではなかったことから、アメリカ系白人の場合のより正方形に近い形状の膝に比べて、より台形状の膝が形成されるので、その結果として、アメリカ系黒人ではAP顆角度がより大きかった。一方、東アジア系集団の遠位大腿骨に対して我々の分析を行ったところ、AP及びMLにおける明確なパターンが同定され、コーカソイド系及びアフリカ系アメリカ人の両集団と比べて、東アジア系集団ではAP及びML測定値が小さかった(p<0.01)。一般に、アジア系集団は、コーカソイド系及びアフリカ系アメリカ人集団よりも台形に近い形状を示す(p<0.01)。さらに、東アジア系集団は、より細い前方幅も有する(p<0.01)。
【0058】
外側プロファイル及び内側プロファイルの両方の曲率を分析すると、これらのプロファイルは、アメリカ系黒人及びアメリカ系白人については4つの互いに異なる曲率半径によって、東アジア人については3つの互いに異なる曲率半径によって、正確に近似できることが見いだされた(図6参照)。これら4つの半径は両民族(アメリカ系黒人及びアメリカ系白人)間で首尾一貫していたが、それらの半径の値は、図23−図25に示されるように、各民族で異なっていた。
【0059】
脛骨についての特徴発見の結果は、アメリカ系黒人とアメリカ系白人との間での民族による形状の差異が、脛骨粗面区域周辺では形状の差異がより大きいのに対して、内側及び外側プラトー区域では有意ではないことを示している。近位前脛骨における軽微な差異を除けば、有意であった唯一の区域は、内果の先端部であった(図39及び図40参照)。しかしながら、東アジア系集団と、アメリカ系白人及びアメリカ系黒人の両方との間では、大きな形状の差異が見いだされた(図23−図35)。t検定及びパワー検定から得られた結果も同様に、これらの知見を強調している。最も有意な変数は、最大長、骨幹の頑強さの尺度、及び脛骨プラトーの幾つかの測定値を含む、スケールに関連した変数である。簡単に述べると、アメリカ系黒人の脛骨は、より長く、かつ、より頑強な骨幹とわずかに広い脛骨プラトーとを有する。
【0060】
表2は、脛骨についての自動測定値を示し、外側プラトー高さが最も有意な測定値であり(p<0.05)、これは、外側大腿顆高さにおける有意な差異と相関する。
【0061】
再び図31を参照すると、内側顆及び外側顆の両方について、後方から前方に、増分10度ごとに内側−外側曲線についての曲率半径を求めた。第1の列は、内側顆及び外側顆の両方について、各々の最も外側のカム面軌道に沿って、増分10度で構成されている。第2及び第3の列は、それぞれの角度増分における内側顆及び外側顆の曲率半径を示す。最後の2つの列は、内側−外側曲率半径の曲率を、それぞれのカム面軌道についての曲率半径で割ったものに対応する比である。換言すれば、この比は、各顆の端から端までの曲率半径である分子と、各顆の最も外側のカム面の軌道に沿ったゾーンの曲率半径である分母(ゾーンごとに同じ数である)とを有する。次いで、この比を、機械軸(MA)に対して特定の角度で取った様々な平面について、ゾーンごとにプロットする。
【0062】
図41を参照すると、C1/C2(図29参照)の比を用いて、患者特異的インプラントの滑らかな関節面を生成するよう、変形した解剖学的構造を修復することができる。プロセスは、先の論点で概説したように、患者ごとに顆表面の外側及び内側のプロファイル及び曲線を計算することから開始することができ、次いで、これらの輪郭は、各区画の曲線の曲率が正常な解剖学的範囲内にあることを検証するために評価される。次いで、変形した区画が強調され、解剖学的に正しい区画についてC1/C2比が計算され、次いでこれらの区画を用いて変形した区画についての比が補間され、このプロセスが完了すると、患者の正しい解剖学的構造を模倣する、滑らかなインプラント関節曲率が生成される。
【0063】
骨内に異常が存在する場合には、上記結果を利用して、顆に沿った曲率半径C2を近似する。内側顆及び外側顆について、C1及びC2の比の間の関係が同定され、これを用いて、いずれかの顆に沿った特定の位置についての曲率半径C2を計算することができる。
【0064】
内側顆及び外側顆についての最も外側のカム面軌道についての曲率半径、並びに内側−外側弧についての曲率マッピングを用いて、患者特異的な新たな補綴インプラントを製作することができる。各々の角度の増分において、曲率半径と、内側顆、滑車溝、及び外側顆に沿った3点とを用いて、滑らかな曲線が生成される(図29を参照)。次いで、これらの滑らかな曲線を掃引する面を用いて、インプラントの関節面が近似される。
【0065】
図41及び図26を参照すると、外側顆及び内側顆の最も外側のカム面に対して、4つの互いに異なる曲率半径が同定された。
【0066】
図42−図44を参照すると、前後方向高さとML幅との間のアスペクト比を分析することにより、カッティング・ボックスの寸法が同定された。AP高さは、大腿骨上の寸法決め点(sizing point)と最も後方の点との間の距離として定義され、一方、ML幅は、内外方向の大腿骨の寸法として定義される。次いで、このアスペクト比を、全集団について、表1において強調される特徴に限られないがそれらと共に計算し、次いでこれを集団をクラスター化するための多次元特徴ベクトルとして用い、クラスターがどれだけコンパクトで、かつ良く分離されているかを識別するために用いられるDunn指数及び修正Dunn指数の両方を用いて、クラスターの最良の数が決定される(図43及び図44参照)。例示的な形態において、アメリカ系白人集団を最も良く代表する、男性についての6つのクラスターと女性についての6つのクラスターとに分けられる12個のクラスターが見いだされた。
【0067】
図45を参照して、脛骨プラトーは、内側及び外側プラトーの主軸に垂直な一連の輪郭を用いて近似される。これらの輪郭を用いて、脛骨インプラントのためのポリエチレンの表面がパラメータ化される。
【0068】
図46を参照して、脛骨面の前後方向の長さを測定し、かつ内外方向における脛骨の長さを測定することにより、6つの脛骨プレートの寸法を同定した。次いで、これらの2つの測定値の間の比を、ファジィc平均を用いてクラスター化し、この集団に最良適合する6つの寸法を同定した。
【0069】
図47−図51を参照すると、ポリエチレン部品は、十字保持インプラント(図47参照)及び双十字インプラント(図48−図51参照)について、脛骨プラトーの解剖学的形状を反映する。ポリエチレン部品は、モジュール式にすることが可能であり、脛骨隆起を保全する内側及び外側のポリエチレン・インサートを含むことができる。インサートの正確な設置を保証するために、コネクタが用いられる(図39)。一旦固定されると、コネクタは取り除かれ、内側及び外側のポリエチレン・インサート並びに脛骨トレーのみが正しい位置に残される(図51)。
【0070】
図52−図54を参照すると、2つの部品の半径間で合致する曲率を示す、膝の解剖学的形状に対応するインプラントの大腿骨部品及び脛骨部品である。
【0071】
図55−図58を参照すると、比較は、解剖学的インプラントと既存の機能的インプラントとの間の違いを示す。図55は、膝の内側前部と外側前部との間の正しい比を復元する場合の違いを示す。既存の機能的インプラント(青)は、この比を適正に復元していないので、四頭筋に沿ってより強い緊張を生じさせ、これは、膝の動きを変化させることがあり、膝蓋骨の亜脱臼を引き起こしかねない。図56−図58は、解剖学的インプラントの内側及び外側プロファイルの曲率を、既存の機能的インプラントとの比較で示す。図56は、典型的なインプラントとの直接比較を示し、一方、図57及び図58は、多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【0072】
図59を参照すると、カラーマップは、アフリカ系アメリカ人集団とコーカソイド集団との間の変動を示す。明るい色は、暗い色よりも大きな差異を示す。外側顆は僅かな差異を示しているが、大腿骨の遠位端にはほとんど変動が存在しない。
【0073】
患者の解剖学的構造に最良適合するテンプレートを選択する例示的なプロセスは、以下のように説明することができる。最初に、患者の膝を画像化し、患者の大腿骨及び脛骨の3D表面を生成する。次いで、大腿骨を分析し、内側及び外側のカム軌道を計算する。次いで、内側及び外側の矢状曲線が計算される。大腿骨の前後寸法及び内外寸法も計算する。矢状曲線に沿ったカム軌道の曲率、AP寸法、及び/又は内外幅を用いて、患者に最良適合するテンプレートを探索することができる。インプラントのテンプレートがその解剖学的構造に適合しない患者については、図11の右の分岐によって示されるようにカスタム・インプラントが生成される。
【0074】
図60を参照すると、患者特異的インプラントをいずれかの画像化様式から生成するための例示的なプロセスは、3次元の患者特異的モデルを生成することを含み、次にこれらのモデルは上記の(DAT)統計学的アトラスに追加され、点対応及び正規化が達成され、このプロセスが完了すると、関連する外科的ランドマークが自動的に計算される(TEA、MA、PCA、…など)。
【0075】
図61−図63を参照すると、次いでTEAの周りを回転する平面を用いて、骨の断面の輪郭が計算され(図61参照)、次いでMAに対して垂直な別の輪郭の集合が計算される(図62参照)。次いで、これら2つの輪郭の集合を用いて、パラメータ化されたインプラント・テンプレートの制約条件を自動的に更新し、これらの制約条件が更新されると、次いで、インプラントの関節面を掃引して、滑らかな連続面が生成される(図63参照)。さらに患者の骨から得られた前後高さ及び内外幅の測定値を用いて、テンプレートのカッティング・ボックスを更新する。次いで、このボックスを滑らかな関節面と組み合わせて、患者特異的インプラントのCADモデルを生成する。次いで、このインプラントの3DのCADモデルを患者特異的な骨の3Dモデルに対して評価して、配置を検証し、3Dインプラント・モデルと3D骨モデルとを用いて可動域のシミュレーションを行う。検証プロセスが完了すると、インプラントを製造するために、3Dインプラント・モデルがコンピュータから製造施設に出力される。例示的な形態において、3Dインプラント・モデルのコンピュータ出力は、CNCマシンのためのGコードの形態とすることができる。
【0076】
図64を参照すると、例示的なフローチャートは、集団に最良適合するクラスターから生成されたインプラント・テンプレートを既存のレガシー・システムの更新にも用いて、患者の解剖学的傾向との適合を保証する方法を概説する。このプロセスは、既存のインプラント・システムのCADモデルをインポートし、これを解剖学的テンプレートと同じパラメータ表示空間に対して変形することを伴う。このプロセスは、インプラントの中央軸の周りに3次元輪郭の集合を生成することを含む。これらの輪郭を用いて、解剖学的テンプレートと同様の方法で制約条件の集合を生成する。テンプレートと同じようにインプラントがパラメータ化されると、テンプレートのパラメータ値を用いて、パラメータ化されたインプラントの特徴を更新する。これらのパラメータ化されたインプラントの特徴は、膝蓋溝の曲率、顆の曲率、AP高さ、及びML幅を含むが、これらに限定されない。
【0077】
図65は、解剖学的に適したテンプレートを用いて既存のインプラント・ファミリーを更新して、解剖学的膝蓋溝を模倣するインプラントを作成することができる方法を示す。
【0078】
図66及び図67を参照すると、例示的なパラメータで表された大腿骨CADモデルは、300個を超えるパラメータから構成される。CADモデルは、TEA軸の周りの増分10度の断面により定められる。パラメータは、各断面における特定の点及び曲率を定める。インプラントの膝蓋−大腿骨区画は、先に考察したように、3つの半径と共に、内側、外側、及び溝の曲率由来の3つの点によって定められる。顆の断面については、内側及び外側が、2つの点と1つの半径とによって定められる。完全なインプラントCADモデルを自動的に作成するために、成形情報は断面内で固有である。
【0079】
図68−図70を参照すると、正常な膝の動きを最も忠実に模倣する機能的インプラントを設計するためには、脛骨に対する大腿骨の全可動域を完全に特徴付けするべきである。この目的を達成するために、解剖学的区域の集合を大腿骨上で局所化し、全可動域にわたって脛骨に投影する。最初に、完全に伸展した場合の大腿骨と脛骨との接触域である大腿骨の内側上の最も遠位の区域を局所化した(A1)(図69参照)。第2の区域は外側顆の最も遠位の区域であり(A2)、一方、第3の区域は内側顆の最も後方の区域であり(A3)、第4の区域は外側顆の最も後方の区域である(A4)(図70参照)。全可動域にわたって、大腿骨上の各々の区域を脛骨上に投影して、脛骨プラトー面に対するこれらの区域の動きを特徴付けた。区域A1が40度屈曲までは前方に移動し、その後、脛骨面との接触から外れる明確な運動パターンが、内側上で観察された。同時に、40度より後では、区域A3が、軸方向回転トラッキングを行いながら前方への移動を開始する。外側においては、区域A2が、40度屈曲まではA1に比べてより小規模に前方に移動し、そこでA1と同様に接触から外れる。同時に、区域A4が、接触するようになり、区域A3に比べて小さい区域内を前方に移動する。
【0080】
図68−図72を参照すると、機能的PSインプラントを用いて正常な運動パターンを達成するためには、より自然な動きを提供するように、大腿骨インプラントの曲率及びポリエチレン部品の両方の設計を修正すべきである。さらに、ポリエチレン部品上のカム位置を修正することで、大腿骨の動きに制約を与え、軸心周りのさらなる回転を可能にする(図71参照)。既存の機能的インプラントでは、正常な膝において観察される軸心周りの回転と同じほどの回転を与えるように作動可能なものはない。PSインプラント(例えば図72参照)を埋め込み、その後、X線蛍光透視法での検討を行って、カムに対する大腿骨部品の位置を観察したところ、カム位置が大腿骨インプラント内に入り込んでいることが観察され、これは、このカム位置が軸心周りでの十分な回転を許容していないことを暗示していた。インプラント接合部の軸心周りでの回転を改善するために、内側上での位置に従って、カム位置を外側に傾くように修正した。この修正により、生来の膝関節の正常な可動域をより忠実に近似する、より良好な軸心周りの回転範囲が可能になった。
【0081】
図69及び図70に見られるように、脛骨の外側は、2つの異なる部位を有する。図71におけるPSポリエチレンの外側曲率は、そのような独特の条件に順応するように設計される。0度から40度までの屈曲中は、ポリエチレン部品の前部は4組の曲率によって定められる。この幾何学的形状はさらに、これらの屈曲角度の間に大腿骨部品が過度に前方に摺動することを防止するような角度とされる。ポリエチレン部品の後部も4組の曲率によって定められ、これは、60度から140度までの屈曲中に外側顆に係合する。この部分は、より滑らかな動きを提供し、かつ衝突を防ぐため、より平坦になるように設計される。内側は、60度から140度までの屈曲中のローリング運動に合わせて深皿の形に成形された1組の曲率を有する。第2の曲率の組は、最初は60度から120度までの屈曲の位置に追従し、それから0度から40度までの屈曲の位置へとつながる、独特のトラックを導入し、これが、2つの位置でのトラック間での滑らかな遷移を可能にする。
【0082】
図73−図74及び表3を参照すると、解剖学的に適した双十字、ACL、及びPCLインプラントを設計するには、膝関節をその可動域を通して動かしたときのPCL及びACLの位置を研究しなければならない。統計学的アトラスを利用して、集団全体にわたって、ACL及びPCLの挿入位置を局所化し、伝播した。可動域にわたる靱帯の形状及び長さの変化をマッピングするために、可動域を通して膝関節を動かすことによってACLとPCLの両方を変形した。表3は、ACLとPCLとの長さの差を、ACL長さに対する百分率として強調する。このデータを用いて、PCL又はACLの一方、又はACL及びPCL両方の保持に順応するインプラントを設計することができる。
【0083】
上記の説明及び発明の概要に従えば、ここで説明された方法及び装置は本発明の例示的な実施形態を構成するが、ここに含まれる発明は、この通りの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなくそのような実施形態に対して変更を行うことができることが、当業者には明らかとなるはずである。さらに、本発明は特許請求の範囲によって定められるものであり、ここで示された例示的な実施形態を説明するいかなる限定又は要素も、そのような限定又は要素が明示的に述べられていない限り、いずれの請求項の要素の解釈にも組み入れられることが意図されないことを理解すべきである。同様に、本発明は特許請求の範囲により定められるものであり、ここで明示的に論じられていなかったとしても本発明の潜在的な及び/又は予見されない利点が存在することがあるので、いずれかの請求項の範囲内であるためには、ここで開示された本発明の確認された利点又は目的のいずれか又は全てを満たすことは必ずしも必要ではないことを理解すべきである。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【技術分野】
【0001】
本開示は、整形外科用インプラントに関し、より具体的には、関節置換及び修正手術に使用される整形外科用インプラント及び整形外科用ジグの設計に用いられる方法及び装置に関する。
【0002】
(関連出願の相互参照)
本出願は、その各々の開示が引用によりここに組み入れられる、2009年2月25日付で出願された「DEFORMABLE ARTICULATING TEMPLATE」という名称の米国仮特許出願番号第61/208,509号、及び2009年7月2日付で出願された「CUSTOMIZED ORTHOPAEDIC IMPLANTS AND RELATED METHODS」という名称の米国仮特許出願番号第61/222,560号に基づく優先権を主張する。
【背景技術】
【0003】
埋め込み可能な整形外科用装置を開発するために、異なる民族集団間における膝関節の固有の形状の差異を分析することは、膝補綴具の業界にとって主たる関心事である。それゆえ、提示される研究は3つの側面をもつ。すなわち、新規な自動化された特徴検出アルゴリズムを開発することにより、形態計測的に高度に異形の領域に基づく自動化された測定値の集合を定めることができ、これが次に、異なる集団の膝関節の差異を分析する場合の統計学的枠組みを可能にする。
【0004】
インプラントの設計においては、アジア系集団と西洋系集団との間での変動が重要であるため、下肢の形態学における民族的差異は、アジア系集団と西洋系集団との間の差異に焦点を合わせている。例えば、中国人の大腿骨はコーカソイドの大腿骨に比べて、より前方に湾曲し、かつ外方に転回しており、髄間管(intermedullary canal)はより小さく、また遠位顆もより小さい。同様に、コーカソイドの大腿骨は、長さ及び遠位顆の寸法の点で日本人の大腿骨より大きい。近位大腿骨の骨塩量(BMD)及び股関節軸長についても、アメリカ系黒人と白人との間には民族による差異が存在する。黒人女性が、白人女性に比べて骨粗しょう症性骨折の有病率が少ないのは、BMDがより高いこと、股関節軸長がより短いこと、及び転子間幅がより短いことの相乗効果であるとすれば説明が付く。同様に、アジア人及び黒人の高齢男性は、白人及びヒスパニック系男性よりも、皮質が厚く、かつBMDが高いことが判明しており、このことが、これらの民族群における骨強度の高さに貢献している可能性がある。一般に、黒人は、白人に比べて、骨皮質がより厚く、骨内膜直径がより狭く、BMDがより大きい。しかし興味深いことには、これらの特色は、アメリカ系黒人と比べてアフリカ系黒の場合に最も顕著である。
【0005】
以下の分析は、現代のアメリカ系黒人、白人、及び東アジア人の下肢における計量的及び幾何学的な形態計測的変動を考える。自動化測定、並びに生物医学研究において使用される測定及び幾つかの新たに考案された測定という形で、迅速かつ正確なデータ収集を容易にするために、3次元の統計学的骨アトラスが用いられる。形状分析は、主成分分析(PCA)と重判別分析とを組み合わせた統計学的処理によって実施される。計量分析は、t検定、パワー検定、及び線形判別分析を用いて、インプラント設計分析スイート(Implant Design and Analysis Suite)(その開示が引用によりここに組み入れられる「IMPLANT DESIGN ANALYSIS SUITE」という名称の同時係属中の米国特許出願番号第12/673,640号を参照のこと)システムにおいて行われる。本開示の残りの部分で概説されるように、これらの分析の結果は、膝関節における形態学的変動についての既存の知識に追加され、膝補綴具設計のために抽出することができる有用な情報を提供する。
【発明の概要】
【0006】
本手法の革新性は、部分的には、統計学的骨アトラスによって提供される計算能力及び精度と組み合わされた、データ収集のためのコンピュータ断層撮影(CT)スキャンの使用によるものである。男女943人(81.5%がアメリカ系白人、9%がアメリカ系黒人、9.5%が東アジア人であり、全体の男/女比は65/35%である)を含む例示的なデータセットを、CTスキャンを用いてスキャンした。この研究には、正常な大腿骨及び脛骨のみを含めた。重篤な骨棘及びその他の異常を有する大腿骨及び脛骨は、特に除外された。各個人から1本の大腿骨及び脛骨のみが選ばれ、右側又は左側のいずれかを優先することはしなかった。
【0007】
骨は、0.625mm×0.625mm×0.625mmの立方体ボクセルを用いてCTスキャンされた。得られた結果は、DICOM画像スライスの形態の高解像度3次元放射線写真である。次に、この積層された画像データをセグメント化し、表面モデルを生成した。このプロセスは、観察者内誤差及び観察者間誤差が無視できる信頼性のあるものであることが見いだされた。次いで、これらのモデルを、民族特異的統計学的骨アトラスに追加した。
【0008】
簡潔に述べると、骨アトラスは、骨の主要な形状変動を捉え、群又は集団間の大域的な形状の差異の比較を可能にする、平均型又はテンプレート・メッシュである。骨アトラスは当初、自動的な医療用画像セグメント化のために開発されたが、骨をデジタル的に再現し、統計学的形状分析を行う手段として用いることもできる。さらに、骨アトラスは、生物学的人類学において、性的二形を研究するための手段として、及び、原人の化石を再構築して化石種間の形状比較を行うために有用であることが証明されている。
【0009】
民族的差異の分析のために、骨形状の統計学的表現を作成するために以前に開発された技術を、新たな方式で利用した。1つのアトラスはアメリカ系白人の大腿骨のみを含み、1つのアトラスはアメリカ系黒人の大腿骨のみを含み、1つのアトラスは東アジア人の大腿骨のみを含む、3つの独立した大腿骨の統計学的アトラスを編集した。同様に、脛骨について、同様に分類される3つの独立したアトラスを作成した(すなわち、アメリカ系白人、アメリカ系黒人、及び東アジア人の脛骨)。これらの統計学的アトラスを作成し、アトラスに骨を追加するプロセスを以下で概説する。
【0010】
最初に、データセット内の全ての骨モデルを比較し、テンプレート・メッシュとしての役割を果たす平均的な形状特性を有する骨モデルを選択した。次いで、テンプレート・メッシュ内の点を、その他の全てのトレーニング・モデル内の対応する点に対してマッチングした。これにより、全ての骨が同数の頂点及び同じ三角形連結度を有することを保証する。次に、一連の重ね合わせ及び歪曲技術を用いて、トレーニング・セット内の全てのその他の骨モデル上の対応する点を選択した。アトラスに追加される新たなモデル上の点対応を選び出すこのプロセスは、「非自明である」。以下で説明されるマッチング・アルゴリズムは、幾つかの周知のコンピュータ・ビジョン技術、並びに、最終的な表面位置合わせのための新たな貢献を用いる。
【0011】
マッチング・アルゴリズムの第1のステップ中に、テンプレート・メッシュの重心と新たなメッシュの重心とを位置合わせし、テンプレート・メッシュを、新たなメッシュのバウンディング・ボックスの寸法に合致するように予めスケーリングした。第2に、標準的な頂点−頂点の反復最近接点(Iterative Closest Point:ICP)アルゴリズムを用いて、新たなメッシュに対するテンプレート・メッシュの固定位置合わせ(rigid alignment)を行った。第3に、固体位置合わせの後で、一般アフィン変形を反復なしで行った。この方法を適用して、自由度12(回転、並進、スケーリング、及びずれを含む)を用いて、テンプレート・メッシュを新たなメッシュに位置合わせした。アフィン変形ステップ後、テンプレート及び新たなモデルは、線形変換の限界に達しているが、モデルの局所部分はなおも著しく隔たったままである。最終的な表面−表面マッチングの目標は、新たなモデルの表面上に、テンプレート・モデルと同様の局所空間特性を有する新たな点を作り出すことにあるので、位置合わせのずれを減らすための新規な非線形反復歪曲手法を開発した。
【0012】
図1を参照すると、点対応を達成するために、今までと同様にテンプレートから新たなモデルへの最近接頂点−頂点対応を見いだす反復アルゴリズムが用いられるが、今回は、新たなモデルからテンプレート・モデルへの対応も見いだされる。これらの両方の点対応を用いて、テンプレート・メッシュ上の点が、対応するベクトルの非対称重みづけを用いて、新たなメッシュ上の位置に向かって移動される。次に、反復平滑化アルゴリズムから成るサブルーチンが、今回変形されたテンプレート・メッシュに適用される。この平滑化アルゴリズムは、テンプレート・メッシュ上の隣接する三角形の大きさを平均し、それにより不連続性を排除しようとするものである。歪曲アルゴリズムの初期には、平滑化アルゴリズムは、周囲の三角形の実際の面積を用いて、各点に適用される平滑化ベクトルを規定し、これが、大きな三角形をもつ外れの点を効果的に除外することを助ける。その結果として、プロセスの初期には、テンプレート・メッシュは、大きなステップを行い、より大きな平滑化が必要とされる。しかしながら、プロセスの終期に向かって、平滑化ベクトルは、周囲の三角形の合計面積によって正規化され、これにより、テンプレート・メッシュを拡大して、高い曲率の区域とすることが可能になる。それぞれのアトラスの中の全ての大腿骨及び脛骨に対してこの手順が完了した後、アトラスは、形態学的形状分析及び自動化計量比較の準備が整う。
【0013】
2つの群の間の全般的な形状の差異を分析するために、革新的な統計学的処理を用いた。この方法は、変数低減の手段及び大域的形状記述子の両方として、(線形及び非線形)PCAの力を用いる。この方法は、スケーリングするために最初に考慮される第1主成分(PC)に対して正規化されたときに、異なる性別及び/又は異なる民族群の間で識別力が高い点を見いだすように設計されている。この手順は、他のいずれの情報も用いることなく、識別力が高いであろうモデル上の区域を強調する。このアルゴリズムにより同定されたランドマークは、その他のいずれのランドマークも用いることなく、民族群間の妥当な識別力を提供する。この特徴発見アルゴリズムを用いて、アメリカ系白人、黒人、及び東アジア人の間での、大きさの差異に依存しない、大腿骨及び脛骨の形状の差異を検査する。
【0014】
民族特異的統計学的アトラス上で定められたランドマークにおける特定の測定を用いて、広範な比較を行った。これらのランドマークは、外科的な重要性、臨床上の関連性、及び歴史的な測定に基づいて選択された。アトラスは、各々の大腿骨又は脛骨モデル上の相同の点から構成されているので、このプロセスを自動化するための豊富な情報を提供する。また、アトラス内の各骨モデルも、同一の座標フレームに対して位置合わせされている。合計で99本の大腿骨及び23本の脛骨の測定値、角度、及び指数が計算された。さらに、簡略化のために、結果のセクションにおいては、最も有意な計量特性のみを論じる。特に指定のない限り、以下で概説する測定値は、ランドマーク対の間の3次元(3D)ユークリッド距離を表し、角度は、ベクトル間の3D回転として測定される。幾つかの例においては、当該分野における先行研究との比較のため、これらの測定値を平面上に投影した。これらの測定値のサブセットを図2−図4に示す。測定の端点を定めるランドマークが、最初に計算され、その後、外科的及び解剖学的軸線に対して定められる。
【0015】
遠位大腿骨及び近位脛骨における民族的差異を大域的スケールで確認し、識別的情報を提供する可能性の高い領域を発見し、植え込まれる補綴具の設計を支援するために関連の外科的及び解剖学的特徴を測定するための、新規な方法が提示される。様々な研究が、確度及び精度に欠ける測定技術を用いて、大腿骨及び脛骨の民族的差異を同定するべく試行してきた。残念ながら、これらの方法では、重要さが小さい特徴を見いだすことが不可能であった。
【0016】
本開示に従って用いられる、順序付けられた一連の方法は、性別及び民族間での有意な大域的差異を証拠付け、これが、引き続き、特徴発見法を用いて、高度に異なる可能性のある領域の単離を可能にし、最終的には、外科的に妥当な解剖学的特徴を高度な確度及び再現性で探索及び測定するためのアルゴリズムのコード化を可能にする。異なるスケールを有する骨は、大きさに依存した形状変化の可能性を有するものと見なされていた。この方法では、民族に固有の明白な形状の差異を露わにするために、測定された変数と大きさとの間の相関は除外されていた。
【0017】
発明者は、上記の分析を用いて、アメリカ系黒人は、アメリカ系白人と比べて、より長く、真っ直ぐな大腿骨を有し、膝が狭いことを確定した。さらに、この分析は、遠位大腿骨の全体的な形状の差異をもたらす、外側顆の寸法及び向きにおける差異を明らかにした。すなわち、アメリカ系黒人は台形状の膝を有し、アメリカ系白人はそれより正方形に近い膝を有する。各群について、遠位大腿骨における差異は、隣接する脛骨にも反映され、アメリカ系黒人は、より長い外側脛骨顆を有する。脛骨プラトーの平均の内外長さは、黒人の方が白人より僅かに長いが、この差異は、サンプル寸法を考慮すれば過度に有意なものではなかった。しかしながら、アメリカ系黒人は、有意に、より長く、より頑丈な脛骨を有する。この研究においては、東アジア系集団と、アメリカ系白人及びアメリカ系黒人の両方との間で、主要な形状の差異が見いだされた。
【0018】
下肢の形態に遺伝的差異がどの程度まで寄与するのかは明らかではなく、混血個体は、課題を提起する。実際に、血液型データは、合衆国到着以来、アメリカ系黒人はアメリカ系白人に近づいてきており、祖先の西アフリカ系集団から離れてきていることを示している。
【0019】
下肢の形態における人種的差異は明らかであり、統計学的に有意であることが示されているとはいえ、アメリカ系黒人サンプル対アメリカ系白人サンプルには、より多くの統計学的ノイズが存在する可能性がある。このノイズは、合衆国到着以来の遺伝的混合と、より温和な環境における選抜緩和との複合的影響がもたらした結果であり得る。とはいえ、上記で論じたように、混血の影響は、アメリカ人集団のこれらのサブグループ間の弁別的な形態学的差異を消し去っていない。
【0020】
正常な膝関節の運動力学を理解するには、まず、膝関節の関節面の解剖学を理解する必要がある。膝関節は、ヒトの脚における2つの最大の骨である大腿骨と脛骨との関節である。膝関節における関節面は、大腿骨の遠位部分の外側顆及び内側顆を形成し、かつ脛骨の近位部分の外側及び内側脛骨プラトーと接触する、湾曲した面から成る。
【0021】
大腿顆は、膝蓋骨すなわち膝頭に対する関節である前溝、すなわち滑車へとつながる。脛骨プラトーは、前十字靱帯及び半月板の付着点の役割を果たす顆間隆起によって分けられる。脛骨プラトーはさらに、非対称形であり、2つのうちの小さい方が外側プラトーである。大腿脛骨関節の解剖学的研究は、内側区域の方が外側区域よりも大きい接触面積を有することを示している。
【0022】
腓骨は脛骨の外側に、その長さに沿った緻密な膜によって、及び、端部においては靱帯が支える軟骨性関節によって付着している。この骨同士の接続は、非常に小さい相対運動しか許容しない。近位の脛腓関節は、脛骨−大腿骨関節の水平面よりも下にあり、一方、2つの骨の遠位端は、踵関節の近位端を形成する。
【0023】
正常な膝では、屈曲が増している間中、後方大腿骨ロールバックが日常的に生じる。膝を深く曲げる運動のような大きな屈曲度を要する動作の最中には、より大きな量の後方大腿骨ロールバックが観察されている。後方ロールバックは、内側よりも外側の大腿脛骨関節において実質的に大きく、従って、屈曲が増大するにつれて、脛骨が大腿骨に対し内方に回転する内側旋回型の軸回転パターンを作り出す。数多くの運動力学的評価により、深い屈曲動作中の同様のパターン及び規模の後大腿骨ロールバックが見いだされている。これは、全膝関節形成術(TKA)後に観察される軸回転パターンとはいくぶん異なっており、その場合は、軸回転の規模がより小さく、ときとして外側旋回及び逆スクリューホーム回転(屈曲が増すにつれて脛骨が大腿骨に対し手相大敵に外方に回転する)といった病理学的な回転パターンを示した。
【0024】
また、TKA後に観察される脛骨上での大腿骨の前方並進は、多くの潜在的に好ましくない結果をもたらす。第1に、前方大腿骨並進の結果、屈曲軸がより前方になり、膝の最大屈曲が小さくなる。第2に、大腿四頭筋のモーメントアームが減少し、その結果、大腿四頭筋の効率が低下する。第3に、脛骨のポリエチレン(PE)表面上の大腿骨部品の前方摺動が、PE摩耗を早めるというリスクがある。
【0025】
TKAの主たる目的は、正常な膝の運動を再現することであるべきである。現在、この目的は、ほとんど見過ごされている。生体内で体重がかかった状態での数多くの透視分析は、既存の整形外科用インプラントを用いたTKA後に、正常な膝の運動を得ることは困難であることを示している。複数の運動異常(後方大腿骨ロールバックの減少、奇異前方大腿骨並進、逆の軸回転パターン、及び大腿顆のリフトオフ)が、通常、存在する。これらの運動の変動を理解することが、インプラントの性能又は寿命を制限するような悪条件を作り出すことなく、これらの運動異常を低減及び排除し、又は少なくともそれらに順応する方向で働く、より優れたTKAインプラントの設計を支援するものであった。膝インプラントのほとんどは、患者に特有の運動ではなく、平均的な動きに合わせて設計された、既製の膝システムである。従って、正常な膝と区別がつかないような膝のTKAの動き及び運動には、各患者に合わせたカスタマイズを利用すべきである。現在、カスタマイズは困難な作業であるが、本開示は、一部は、以下で説明される変形可能な関節テンプレート(DAT)方法論を提供することによって、このカスタマイズに対処する。
【0026】
本開示の目的に関して、曲率半径は、丸みを帯びた物体の曲率を近似する円周曲率を有する円の半径である。例えば、曲率半径は直線については無限であり、曲率が高くなるにつれて、その半径は無限から小さくなっていく。図5に見られるように、小さい円の曲率は大きい円の曲率よりも大きいので、小さい円の曲率半径は、大きい円の曲率半径より小さい。簡単に言えば、曲率半径が小さいほど、曲率が大きい。
【0027】
図6及び図7を参照すると、本発明者は、カム面に沿って前方から後方へ2つ又はそれ以上の曲率半径を適用することにより、生来の膝の顆の曲率をマッピングし、シミュレートすることができることを見いだした。特に、コーカソイド集団については、5つの互いに異なる曲率半径(r1−r5として識別される)が、顆の前方から後方に向かって、カム面の曲率に忠実に追従することが見出された。さらに、顆の曲率半径における非対称性が、屈曲中に脛骨を大腿骨に対して内旋させる原因であることが見いだされた。屈曲が20°を超えると、両顆上で摺動運動が始まる。
【0028】
膝関節の伸展は、大腿骨に対する脛骨の、結合された外旋を生じさせる。この回転は、膝の「スクリューホーム」運動として説明されている。このスクリューホーム運動は、内側顆の上に外側顆の上よりも広い面積の座面が存在することに起因する。外側顆の関節面全体が使い尽くされると、大腿骨は脛骨棘の周りを、関節がスクリューホームするまで、すなわち伸展状態で最密になるまで回転する。膝関節が屈曲及び伸展するときに、この回転は、脛骨を、内側大腿顆の解剖学的構成の結果として生じる渦形又は螺旋形に、大腿骨上で運動させる。脛骨は、完全に伸展した位置から大腿骨上で摺動するときに、内側大腿顆の湾曲を下降及び上昇し、同時に外旋する。脛骨が完全に屈曲した位置に戻るときに、この動きは逆に行われる。スクリューホーム機構は、大腿脛関節が仮に純粋な蝶番構造であったとした場合に可能であるよりも、いかなる姿勢においても、膝に高い安定性を与える。
【0029】
図8を参照すると、大腿顆と脛骨関節面との間の半月板軟骨(半月板)は、大腿顆を受け入れるように脛骨の関節面を深くする役割を果たす、2つの半月形の線維軟骨構造体である。断面を見ると、半月板は楔状の外観を有する。半月板は、(1)関節を通じた荷重の伝達、(2)関節の適合性を高めること、(3)関節面全体にわたる滑液の分配、及び(4)関節運動中の骨の衝突の防止を含む、幾つかの重要な機能を行う。半月板が存在する場合、各顆についての荷重負荷面積はおよそ6cm2であるが、半月板が損傷し、又は重篤な劣化が生じた場合には、この面積はおよそ2cm2まで減少する。従って、有効な荷重負荷面積が増大すると、軟骨に伝達される応力は減少し、逆もまた真である。
【0030】
図9及び図10を参照すると、正常な膝関節では、顆間空間内の関節の内側に位置する、前十字靱帯(ACL)及び後十字靱帯(PCL)が本来備わっている。これらの靱帯は、関節における前後運動及び軸回転運動を制御する。前十字靱帯は大腿骨に対する脛骨の前方移動に主たる拘束を与える一方、後十字靱帯は脛骨の後方運動に対する主たる拘束を与え、この動きに対する総抵抗の90%を超える割合を占める。図10は、膝関節の異なる屈曲角度におけるACL及びPCLの長さの変化を示す。後方に安定化された膝インプラントの設計に対するACL及びPCLの拘束の影響についての詳細な説明を、以下で、より詳細に論じる。
【0031】
遠位大腿骨の形態学的形状が、TKAに用いられる補綴置換物の形状、向き、及び運動力学を決定付けるべきである。従来の補綴設計は、滑車溝を中心に置き、対称の大腿顆を取り入れている。従来の外科技術は、大腿骨部品を遠位大腿骨の中央に置き、可変の骨ランドマークに対して相対的にこれを位置決めする。しかしながら、実証された不全のパターン及び運動力学的研究は、従来の設計及び外科技術が、膝蓋骨及びその遠位大腿骨のトラッキングを軽視していることに加えて、遠位大腿骨の形態学及び膝関節の運動力学に対する理解が不十分であることを反映していることを立証している。
【0032】
滑車は、膝蓋骨を案内し、かつ保持するような設計となっている。膝蓋骨トラッキングは、多くの異なる要因、すなわち、滑車溝の幾何学的形状、膝蓋骨の後方側の幾何学的形状、軟質組織伸筋機構、及び脛骨の向きによって影響を受ける。屈曲中の大腿骨上での膝蓋骨の正常な運動は、大腿膝蓋面の中心溝に沿って顆間切痕(intercondylar notch)を下降する、垂直方向の変位である。滑車溝及び膝蓋骨の後方側の幾何学的形状が、特に高屈曲角度において膝蓋骨トラッキングを拘束する。膝蓋骨は、大腿骨の溝に対する小関節面の適合、及び膝蓋大腿靱帯によって、中央に保持される。これらの靱帯は、膝蓋骨の内側及び外側の肥厚した構造内への包のコンホメーションを表している。これらの靱帯は、両側の上方及び下方に位置し、膝蓋骨の前面から後方に各大腿顆の側部に向かって延びる。これらの靱帯もまた、膝蓋骨の動きを拘束するが、溝による拘束又は外部の力によって覆されることがある。正常な膝においては、膝蓋骨のトラッキングは、滑車の向きにかなり相似するであろうと推定することが許される。結果として、この生来の膝蓋骨トラックを再現するためには、膝補綴具の滑車溝の向きは、生来の滑車の向きに相似したものとすべきである。
【0033】
まとめると、膝関節は、非常にうまくつり合いがとれた系の一例である。この系内の僅かな変化が、系全体に影響を及ぼす。膝蓋−大腿関節内での変化は、膝関節のこの部分内で伝達される力が相対的に高いので、相当長期的な影響を与えることができる。TKAは、膝蓋−大腿関節内での変化を容易に誘発する。現在のところ、シミュレートされたTKA部品の滑車溝の向きは、生来の滑車の向きに一致していない。従って、将来の大腿骨部品の溝の向きには、生来の大腿骨の滑車溝の生来の向きをシミュレートした滑車溝を組み入れるべきである。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】アトラス作成のプロセスを概説するフローチャートである。
【図2】IDASソフトウェアを用いた、ランドマークの自動計算を示すスクリーンショット及び関連付けられた画像である。
【図3】取得される軸線、ランドマーク、及び測定値を示す、大腿骨の遠位端の図である。
【図4】取得される特定の軸線、ランドマーク、及び測定値を示す、図3の大腿骨の正面図である。
【図5】異なる半径を有する円を用いてどのように骨の表面上の曲率を近似することができるかを示す例示的な図である。
【図6】前方から後方へのカム面の曲率を近似するために適用された5つの曲率半径を有する、ヒトの膝関節の外側顆の側面図である。
【図7】前方から後方へのカム面の曲率を近似するために適用された5つの曲率半径を有する、ヒトの膝関節の内側顆の側面図である。
【図8】ヒトの膝関節の一部を形成する軟骨を含む、ヒトの脛骨の近位端の平面図である。
【図9】膝を一部屈曲している間の前十字靱帯及び後十字靱帯を示す、膝関節の正面図である。
【図10】前十字靱帯及び後十字靱帯の位置を示す、種々の角度の膝屈曲における膝関節の一連の正面図を含む。
【図11】患者に合わせてカスタマイズされた整形外科用テンプレート又は一般集団のための一連のテンプレートのうちの1つを含む整形外科用インプラントを設計するための例示的なプロセスの全体としての概略図である。
【図12】ヒトの患者由来の実際の生来の大腿骨に対応する、医療用画像化機器から生成された幾つかの電子的3D遠位大腿骨モデルの底面図である。
【図13】屈曲位置の関節が示された、実際のヒトの膝関節の医療用画像化機器のデータに基づいた、軟骨及び靱帯を含むヒトの膝関節の電子的モデルである。
【図14】完全な伸展に近い関節が示された、実際のヒトの膝関節の医療用画像化機器データに基づいた、軟骨及び靱帯を含むヒトの膝関節の電子的モデルである。
【図15】完全な伸展に近い脛骨、大腿骨、及び膝蓋骨の間の相互作用を示す、膝関節の一連の2D垂直スライス表現である。
【図16】スライスが取得された場所、及び、完全な伸展に近い脛骨と大腿骨と膝蓋骨との相対位置を示す、その他の垂直スライスに追加された図15の2Dスライスの3D表現である。
【図17】内側及び外側のカム軌道に沿って、最も前方、遠位、及び後方の点を示す、大腿骨の遠位図である。
【図18】各顆の可動域全体にわたって各顆のカム面の最も外側の部分を近似する軌道を有する、遠位大腿骨の内側顆及び外側顆の図を編集した図である。
【図19】例示的な遠位大腿骨についての各顆のカム面の最も外側の部分の軌道、並びに遠位大腿骨に関連付けられた滑車溝の最も内側の面に対して脛骨及び膝蓋骨を示す、3D表現の後方立面図である。
【図20】遠位大腿骨を想像線で示したことに加えて、図18の脛骨及び膝蓋骨、並びにカム軌道及び滑車溝軌道を示す、膝関節の外側側面図である。
【図21】ヒトの男性及び女性の両方についての一連の遠位大腿骨に関する曲率半径の測定値、並びに測定値が取得された場所を表す例示的なチャートである。
【図22】外側顆及び内側顆の最も外側のカム面軌道についての対応する曲率半径の位置及び寸法に対して脛骨及び膝蓋骨を示す、膝関節の外側側面図である。
【図23】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での遠位大腿骨の形状間の通常の差異を示す正面図である。
【図24】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での内側大腿顆の形状間の通常の差異を示す側面図である。
【図25】アジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間での外側大腿顆の形状間の通常の差異を示す側面図である。
【図26】c1−c4の測定が、本開示により製作される補綴装置の曲率にどのようにして変換されるかを示す、例示的な外側顆補綴具の例示的な縦断面図である。
【図27】外側顆及び内側顆並びに滑車溝の弓状プロファイリングに加えて、例示的な遠位大腿骨についての外側顆及び内側顆の最も外側のカム面軌道、並びに滑車溝の最も内側の軌道を示す、3D表現である。
【図28】生来の大腿骨の3D骨モデル上に重ね合わせた、図22の3D表現である。
【図29】大腿骨の遠位部分及び重ね合わされた3D表現を示す、図23の拡大図である。
【図30】表面の例示的な3D表現を含む、大腿骨の遠位部分の斜視図である。
【図31】図24に表示された曲率の数学的表現である。
【図32A】内側顆と外側顆の互いに対する比を0−30度についてプロットしたグラフである。
【図32B】内側顆と外側顆の互いに対する比を、40−70度についてプロットしたグラフである。
【図32C】内側顆と外側顆の互いに対する比を、80−110度についてプロットしたグラフである。
【図32D】内側顆と外側顆の互いに対する比を、120−150度についてプロットしたグラフである。
【図33】本開示に従って取得される軸、ランドマーク、及び測定値を示す、脛骨の近位端である。
【図34A】典型的なアジア人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図34B】典型的なアメリカ系白人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図34C】典型的なアメリカ系黒人の滑車軌道を示す、遠位大腿骨の端面図である。
【図35】典型的なアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人についての滑車軌道を示す複合図である。
【図36】典型的なアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人についての滑車軌道の形状を示す複合側面図である。
【図37】アジア人とアメリカ系白人との間での差異が最大の区域を示す、大腿骨の遠位図である。
【図38】アメリカ系白人とアメリカ系黒人との間での差異が最大の区域を示す、大腿骨の遠位図である。
【図39】アメリカ系白人とアメリカ系黒人との間での差異が最大の区域を示す、脛骨の立面斜視図である。
【図40】アジア人とアメリカ系白人との間での差異が最大の区域を示す、脛骨の近位図である。
【図41】本開示に従い、変形又は欠損した解剖学的構造をC1/C2比を用いて修復する、例示的なプロセスを示す図である。
【図42】AP高さ対ML幅の例示的なプロットである。
【図43】Dunn指数及び修正Dunn指数を用いてクラスターの最適数を決定するためのプロットである。
【図44】代替Dunn指数方程式(ADI)である。
【図45】内側プラトー及び外側のプラトーの主軸に対して垂直な一連の輪郭を用いた、脛骨プラトーの例示的な近似を示す図の集積である。
【図46】AP高さ対ML幅の例示的なプロットである。
【図47】例示的なポリエチレン製インプラントの斜視図である。
【図48】例示的なインプラントの一連の斜視図である。
【図49】例示的なインプラントの斜視図である。
【図50】例示的なインプラントの断面図である。
【図51】例示的なインプラントの斜視図である。
【図52】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品の前方図である。
【図53】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品のための外側顆及び顆受け器を横断して見た断面図である。
【図54】患者の膝の解剖学的形状に対応するように製作された十字保持インプラントのための例示的な大腿骨及び脛骨部品のための内側顆及び顆受け器を横断して見た断面図である。
【図55】解剖学的インプラントと既存の機能的インプラントとの間の違いを示す比較である。
【図56】膝の内側及び外側の前部の正しい比を復元する際の差異を示す比較である。
【図57】多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【図58】多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【図59】アフリカ系アメリカ人集団とコーカソイド集団の間の変動を示し、影が薄いほど大きな差異に対応し、影が濃いほど少ない差異に対応する、例示的な影付きマップである。
【図60】3D骨モデルから患者特異的インプラントを生成するための例示的な流れ図である。
【図61】患者の骨の表面を表すのに用いられ、かつ骨の断面の輪郭を計算するのに用いられる、点クラウドを描く図である。
【図62】患者特異的インプラントの作成の初期段階における、患者特異的な輪郭を用いて、パラメータ化されたインプラント制約条件を更新することを描く図である。
【図63】本開示による、輪郭を掃引して患者特異的な滑らかな関節インプラント表面を生成することを示す図である。
【図64】解剖学的に適したテンプレートを用いて既存のレガシー・インプラント・システムを更新するための例示的なプロセス・フロー図である。
【図65】より解剖学的に正確な膝蓋溝を組み入れた、更新された既存のレガシー・インプラント・システムを描く図である。
【図66】本開示に従って設計された例示的な大腿骨部品を記述するために用いられるパラメータの例示的なリストである。
【図67】テンプレート・パラメータを自動的に更新し、インプラントCADを生成するプロセスを説明する、例示的なフローチャートである。
【図68】強調表示された対応する接触区域と共に示された、遠位大腿骨である。
【図69】0−40度の間の膝屈曲について強調表示された対応する接触区域と共に示された、近位脛骨である。
【図70】60−140度の間の膝屈曲について強調表示された対応する接触区域と共に示された、近位脛骨である。
【図71】正常な膝の運動力学をシミュレート又は近似するように修正又は再設計された脛骨トレー・インサートを上から見た図である。
【図72】制限された軸心周りの回転を有する、従来のPS膝インプラントである。
【図73】前十字靭帯の保持を提供する、本開示により設計された例示的な膝補綴具の立面斜視図である。
【図74】前十字靭帯修正外科手術の後に用いるための、本開示により設計された例示的な膝補綴具の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明の例示的な実施形態は、補綴膝インプラントを設計するための方法及び装置、より具体的には、生来の膝の生体力学をより忠実に追従する膝インプラントを設計するための装置及び方法、並びにその結果として得られるインプラント自体を包含するように、以下で説明され、例示される。もちろん、以下で論じられる好ましい実施形態は、本質的に例示的であり、本発明の範囲及び真意から逸脱することなく再構成することができることが、当業者には明らかとなろう。しかしながら、明確さ及び精度のために、以下で論じられる例示的な実施形態は、本発明の範囲内に入るための必要条件ではないことを当業者が認識するような、随意のステップ、方法、及び特徴を含むことがあり得る。
【0036】
以下は、遠位大腿骨に関する軸、ランドマーク、及び測定値の定義である(図2−図4参照)。これらの定義は、本開示において用いられるこれらの用語の正しい解釈の基準ともなる。
【0037】
「上顆横断軸(TEA)」−この測定値は、人類学の文献においては両上顆間幅として知られる。臨床的な上顆横断軸(TEA)を計算するために、平均的な大腿骨上の外側上顆の最も外側の隆起上及び内側上顆の最も内側の隆起上に、大まかな頂点の集合を手作業で定めた。大腿骨アトラス内の頂点は相同であるので、このステップは一度だけ行った。これらの点の大まかな集合を用いて、外側と内側の両方で、頂点の大まかな集合の重心から半径10mmの探索領域を定めた。次いでこれらの重心の各々からのベクトルを定義することで、TEAについての大まかな方向を与える。この大まかな方向における距離を最大化することによって、点の対が選択され、これらの選択された点が、TEA測定の端点を形成する(図2参照)。
「遠位解剖学的軸」−遠位解剖学的軸は、大腿骨全長の遠位三分の一及び遠位五分の一において骨幹の重心を位置決めすることによって定められた。
中心AP軸(CAP)−遠位解剖学的軸及びTEAを用いて、顆間切痕の後方面と顆間溝の最も前方の部分とに終端を有する相互直交軸を定めた。この軸の長さがCAPとして記録される(図3)。この軸は、「顆間切痕の高さ」に対して相似である。
「大腿鞍点」−顆間溝の最も遠位の延長に位置決めされるランドマーク。
「膝中心」(K)−CAP測定の2つの端点及び大腿鞍点を用いて、大腿骨を内側と外側とに二分する平面が定められる。この平面のTEAとの交差点が膝中心であり、これが、大腿骨の機械的軸(MA)の遠位端点を形成する。MAの近位端点は大腿骨頭の中心である(下記の近位大腿骨測定を参照のこと)。
「AP方向」−MA及びTEAを用いると、膝中心を原点とする相互直交ベクトルを用いて前後(AP)方向が定められ、Whiteside線に相似の方向が得られる。
「前方内外幅(AML)及び後方内外幅(PML)」−AP方向を使って、4つのランドマーク、すなわち、遠位大腿骨の内側顆及び外側顆の最も前方の点及び最も後方の点が位置決めされる。最も前方の点2つを結ぶと、滑車線に沿って前方内外幅(AML)の測定値が得られ、最も後方の点2つを結ぶと、後方顆軸(PCA)に沿って測定される後方内外幅(PML)の基準が得られる(図2参照)。
「内側顆及び外側顆のAP長(LAP及びMAP)」−上記で定められた外側及び内側のそれぞれの頂点の対を結ぶと、外側顆のAP長(LAP)及び内側顆のAP長(MAP)が得られる(図3参照)。
「後方平面」−PML測定の端点を含み、かつMLに対して平行でもある一意の平面を用いて、後方平面を定めた。
「全AP長」−外側前顆の隆起と後方平面との間の最小距離(図3参照)。
「AP角」−後方平面に対するAMLベクトルの角度(図3参照)。
「遠位内外長(DML)」−MAを基準方向に用いて、内側顆及び外側顆の最も遠位の面を記録した。これらの2つのランドマーク間の距離をDMLと名づけた。
「後方角(PA)」−DML長を結ぶベクトルと大腿骨の平均軸との間の角度(図4参照)。
「顆ねじれ角(CTA)」−TEAとPCAの間の角度。
「膝蓋溝高さ(GH)」−顆間切痕の後面と、2つのDML軸点間の中点との間で算出された(図4を参照)。
大腿骨幹軸曲率(SC)−大腿骨平均軸の曲率半径。
定義の記載の終わり
本文末尾に記載の表の説明
「表1」 典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人について、重要な大腿骨測定値−平均、標準偏差、t検定、及びパワー検定の結果を列挙する。
「表2」 典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人について、重要な脛骨測定値−平均、標準偏差、t検定、及びパワー検定の結果を列挙する。
「表3」 前十字靭帯及び後十字靭帯の長さの変化の百分率を膝屈曲角度に対して列挙する。
【0038】
図11を参照すると、例示的な膝設計プロセス100の模式的な概略は、電子データベース内に格納された1つ又はそれ以上の電子3次元(3D)骨表現102を取得することを含む。全膝関節形成術の場合の、大腿骨の遠位部、脛骨の近位部、それらの間の軟骨、及び膝蓋骨の少なくとも一部を置換することになる全膝関節インプラントを設計する目的のためには、遠位大腿骨、近位脛骨、及び膝蓋骨の3D骨表現、並びに、TKA整形外科用部品を受け入れるように、大腿骨、脛骨、及び膝蓋骨を準備するために用いられる3Dジグ表現を有することが有用である。これらの3D骨表現及び3Dジグ表現を生成するために、患者又は屍体に、CTスキャン、一連のX線、MRI、及び/又は超音波画像化を受けさせることができる。これらの検査から得られた骨及び軟質組織の画像と、可能であれば骨又は軟質組織の補間されたアスペクトとを利用して、1つ又はそれ以上の3D骨表現、及び1つ又はそれ以上の3Dジグ表現を構築する。
【0039】
上記の検査から得られた画像は、データ分析のためにコンピュータにロードされる。当業者には公知のように、MRIは、ヒトの解剖学的構造の関連部分の一連の2D「スライス」を作成する。次いで、これらの2Dスライスをセグメント化し、互いに積み重ねて、ヒトの解剖学的構造の3Dモデル又は表現を作成することができる。スライスの構築にMRIが用いられる限りにおいて、3Dモデルの精度は、部分的には、MRIから得られるスライスがどれだけ「厚い」かによって決まる。CTスキャン、X線、及び超音波についても、互いに異なる点から2D画像を取得し、これを利用して問題の解剖学的特徴の3Dモデルを構築する類似のプロセスが用いられ、例示のみを目的として、この問題の解剖学的特徴は、ヒトの膝関節を背景として説明される。
【0040】
2D画像を取得し、これらの画像を用いて3Dモデルを作成するための、この同じプロセスは、いずれのヒトの関節又は骨の3Dモデルの生成に対しても適用可能である。この同じプロセスは、更なる分析のための複数の骨又は関節のモデルを生成するために、生きた人間又は死んだ人間に適用することができる。これらの同じ2D画像は、各々のヒトの特徴(骨、関節など)の解剖学的構造をより正確に描くために、骨と骨との間、例示的な形態においては大腿骨と脛骨との間に選択的に挿入することができる、軟骨の3Dモデルを構築するためにも有用であることを理解されたい。以下で論じられるように、軟骨の3Dモデルは、3Dジグモデルを構築する際に有用であり得る。
【0041】
図12を参照すると、一連の3D遠位大腿骨表現が示される。以下でより詳細に論じられるように、例示的な膝設計プロセス100を利用して、各患者の解剖学的構造に独特の、カスタマイズされた膝インプラントを設計及び構築することができる。さらに、例示的な膝設計プロセス100を利用して、カスタマイズ費用が商業的に実現不可能又は好ましくない場合に、より大きな集団の解剖学的構造を近似するために用いることができる、1つ又はそれ以上汎用インプラントを設計及び構築することができる。
【0042】
再び図11を参照すると、3D表現が電子的形態で生成されるように1つ又はそれ以上の骨をモデル化した後で、3D表現は、追加データをこの3D表現と相関させる、データベース104内に格納される。例示的な形態において、データベース104は、これらの表現を分類するために、その骨、関節などをスキャンした元のヒトの年齢、性別、人種、及び身長を含むがこれらに限定されない、各3D表現に特異的なデータも含む。同時に、各3D表現は、骨、関節などの状態に関する等級又は評価を含むことができる。例示的な形態において、データベース104内に膝関節(少なくとも近位脛骨及び遠位大腿骨)の3D描写を保存するときに、軟骨の損耗、骨の変性、及び骨棘の発達についての分類を同定することができる。
【0043】
図13及び図14を参照すると、各々の個別の骨モデルの生成に続いて、例示的なプロセス100は、膝関節300の3Dモデルの生成を含む。この膝関節の3Dモデル300は、関節が完全に伸展したときに各々が取る向きに、遠位大腿骨302、近位脛骨304、及び膝蓋骨306を方向付けることを含む。その後、コンピュータ・ソフトウェアは、3Dモデルの骨を再配置して、膝関節が完全に屈曲するまでの仮想可動域を作成するように動作可能である。同時に、3Dモデル300は、脛骨304の近位端と協働して内側顆及び外側顆の受け器を形成する生来の軟骨を表すように、骨302、304、306の間に挿入される軟骨(図示せず)を含むことができる。
【0044】
図15及び図16を参照すると、3D関節モデル300は、膝関節がその可動域を通して動くに従い、各スライスの向きがどのように変化するのかを示す2Dの接触プロファイル又は「スライス」を生成するために有用である。特に、これらの2D表現は、補綴インプラントを、生来の膝とちょうど同じように、合同し、連携して関節全体を形成する、一連のスライスとして考えることができることを理解するときに有用である。結果として、各スライスの幾何学的形状を評価し、理解することによって、各患者に独特の特異的な輪郭を想像することもでき、又はより包括的な集団全体にわたって一般化することもできる。3D関節モデル300は、民族、性別、及び/又は年齢に応じて異なる局所解剖学的構造(topograhy)を組み入れることができることに留意されたい。これらの様々な局所解剖学的構造は、様々なスライスをもたらす。
【0045】
図17−図20を参照すると、各3Dモデル300が生成され、保存された後、各3Dモデルに関連付けられた内側顆及び外側顆308、310の両方について一連の曲率半径測定値が取得される。例示的な形態において、遠位大腿骨3Dモデルは、滑車溝312で隔てられた対応する内側顆及び外側顆308、310を含む。内側顆及び外側顆308、310は各々、カム面を含み、カム面は、大腿骨が可動域を通して回転するときに骨の中心から最も離れた点を該カム面に沿って有する。内側プロファイルを計算するために、内側前方点(内側顆において最も前方の点)と、内側遠位点(内側顆上の最も遠位の点)と、内側後方点(内側顆において最も後方の点)とにより定められる平面を遠位大腿骨と交差させ、この結果として、内側顆の表面上で最も突出した点に対応する輪郭が得られ、この同じ方法を用いて、図17、図19、及び図20に示されるような外側プロファイルが計算される。次いで、これらの3D軌道は、各顆ごとに1つの平面内の単一の最良適合軌道に変換される。
【0046】
溝プロファイルの計算のために、遠位大腿骨を、上顆横断軸の周りを10度ずつ回転する一連の平面と交差させることによって、輪郭の集合が抽出される。次いで、これらの輪郭上の最も低い点を用いて、図19に示されるように溝点が定められる。
【0047】
同様の手順を利用して、大腿骨がその可動域を通して回転するとき骨の中心に最も近接する、表面に沿った点を用いて、滑車溝の3D軌道に沿った点の集合を生成する。これらの最近接点(すなわち、トラフの最も低い部分)が、図19及び図20に示される。次いで、この3D軌道は、1つの平面内の単一の最良適合軌道に変換される(図19及び図20に示されるように)。
【0048】
図21及び図22を参照すると、本発明の発明者は、遠位大腿骨の生来の形状に非常に良く似た補綴大腿骨部品を設計する試みにとって、内側顆及び外側顆の両方の支持面についての2D軌道の形状、並びに滑車溝についての2D軌道が重要であることを見いだした。大腿骨部品を生成するための特定の寸法及び曲率の測定値を割り出すために、発明者は、各大腿顆に対して4つの曲率半径を適用することで、生来の大腿顆の曲率に正確に追従することを見いだした。
【0049】
図23−図25を参照すると、図23は、白人、黒人、及びアジア人の外側及び内側大腿顆の複合図であり、他方、図24は、白人、黒人、及びアジア人の内側大腿顆の内側プロファイルを示し、図25は、白人、黒人、及びアジア人の外側大腿顆の外側プロファイルを示す。
【0050】
再び、図6及び図21、並びに図26を参照すると、内側顆の最も外側のカム面及び外側顆の最も外側のカム面についての各軌道は、4つのゾーンにセグメント化される。これらのゾーンの各々の曲率は、円の曲率で近似することができることが、発明者によって確認された。換言すれば、各ゾーンは、円の一定の弧を近似する。例えば、第1のゾーンは、c1として同定される曲率半径を有する。簡単に言うと、このc1の値は、カム面の2D軌道の最も後方部分である軌道のこの部分の曲率を最も忠実に近似する円の半径である。第1のゾーンに直接隣接する第2のゾーンは、曲率半径c2を有する。ここでも、このc2の値は、この第2のゾーンの曲率を最も忠実に近似する円の半径である。第3のゾーンは第2のゾーンに続き、同じく曲率半径c3を含む。最後に、それぞれの顆の各々の前方部分の輪郭を近似する第4のゾーンは、曲率半径c4を有する。
【0051】
一連の膝関節が、X線、CTスキャン、MRIなどから電子的にモデル化される状況の場合、各ゾーン内及び全てのゾーンにわたって曲率半径がどのように変動するかを識別するために、比較を行うことができる。図21のチャートは、ヒトのX線、CTスキャン、及び/又は超音波から導出された実際の3D骨モデルから導出される。このチャートは、性別に基づく、各ゾーンについてメートル法で表した(センチメートル単位の)平均曲率半径を含む。各ゾーンについての平均曲率半径を示したのみならず、この表は、外側及び内側顆についてゾーン間でのすばやい比較ができるように、各ゾーンについての標準偏差も表している。
【0052】
再び図22及び図26を参照すると、ヒトの膝関節の側面図は、大腿骨の遠位部を取り去り、内側顆及び外側顆の両方についての4つのゾーンの各々の曲率半径(c1−c4)に対応する円でそれを置き換えている。この図は、曲率半径が、円弧及び円の相対的な大きさで、隣接する遠位大腿骨の解剖学的特徴に関して何を表しているかを示す代表図を与える。以下で論じられるように、これらの円は、補綴インプラントにおいて生来の遠位大腿骨の曲率を近似する試みに関連する。円の中心の位置は、例示的なモデルの内部で用いることができる。これらは、曲線の点の各集合において、その曲線に最も近似する円の半径及び中心を与える円の線形二乗フィッティングを用いて計算することができる。
【0053】
図27−図32を参照すると、上記で論じたように、内側顆及び外側顆の可動域の全体を通して最も外側にあるカム点、並びに滑車溝の可動域の全体を通して最も内側にある点をたどる、3D軌道が作成される。各々の最も外側のカムの軌道を滑車溝についての軌道と共に用いて、顆及び滑車溝の両方の局所解剖学的構造が数学的にマッピングされる。次いで、図27に示されるように曲線を正確に近似する、通過する円の最良の数を見いだすことによって、内側、外側及び溝のプロファイルの曲率が計算される。顆表面の曲率を捉えるために、先に大腿骨をTEAの周りの平面と交差させることによって作成しておいた曲線を、内側、外側、及び溝プロファイルの周囲でトリミングし、次いで、これらのトリミングされた輪郭の各々の曲率の円が、図27に示されるように計算される。
【0054】
滑車溝トラフ軌道に加えて、顆の最も外側のカム軌道の各々を、遠位大腿骨が脛骨に対して回転する可動域に沿って可変角度の増分で分割する。提示した画像においては増分10度の増分を用いたが、他の増分も本開示の範囲内にある(幾つかの例示的な実施形態においては、例えば、5−15度の増分を用いることができる)。各軌道の長さを増分10度で分割し、各増分の境界に1つの曲線が適用される。増分10度ごとの各顆及び滑車溝の横方向部分(内側から外側)には、個別の内側−外側曲線が適用される。個別の各々の内側−外側曲線の円弧は、それぞれの軌道に沿った各点における内側−外側曲率を最も忠実に近似するように選択される。その後、各々の内側−外側曲線ごとに、曲率半径が決定される。
【0055】
図33を参照して、遠位大腿骨について、以下のランドマーク及び測定値を自動的に同定した。
1)顆間隆起点−内側顆及び外側顆の隆起上の2つの最も高く突出した点。
2)隆起中点−外側顆間隆起点と内側顆間隆起点との間の中点。
3)脛骨粗面−脛骨粗面上の最も前方に突出した点。
4)ML−脛骨プラトーの内外方向の最大幅。
5)AP−脛骨顆間隆起の中点(すなわち隆起中点)を通る、前後(AP)方向の脛骨プラトーの長さ。
6)隆起幅(EW)−内側顆間隆起点と外側顆間隆起点との間の距離。
7)脛骨ねじれ角(TTA)−AP方向と、顆間隆起中点と脛骨粗面とを結ぶ線との間の角度。
8)外側プラトー高さ(LPH)−外側脛骨プラトーのAP方向の長さ。
9)外側プラトー幅(LPW)−外側脛骨プラトーのML方向の長さ。
10)内側プラトー高さ(MPH)−内側脛骨プラトーのAP方向の長さ。
11)内側プラトー幅(MPW)−内側脛骨プラトーのML方向の長さ。
12)隆起ML比(EMLR)−MLに対するMPW(すなわち内側プラトー幅)の比。
13)最大長−脛骨の内果から顆間隆起までの長さ。
【0056】
図34A−図36を参照すると、異なる民族の滑車溝は、異なる形状及び軌道を有することが判る。図34Aは典型的なアジア人の滑車溝軌道を表し、図34Bは典型的なアメリカ系白人の滑車溝軌道を表し、図34Cは典型的なアメリカ系黒人の滑車溝軌道を表す。さらに、図35は、典型的なアジア人、典型的なアメリカ系白人、及び典型的なアメリカ系黒人についての滑車軌道の複合図を示す。最後に、図36は、同じくアジア人、アメリカ系白人、及びアメリカ系黒人の間でどのように滑車溝の形状に変動があるのかを表す側面図を示す。上で説明したような特徴発見形状分析ツールから得られた結果は、遠位大腿骨に加えて、大腿骨幹、外側顆、及び大転子における形状の差異を強調する。
【0057】
表1及び図37−図40を参照すると、自動測定値に対するt検定及びパワー検定から得られる結果である。アメリカ系黒人では、外側顆は高めのAP高さを有していた(p<0.01)のに対して内側顆の高さは有意ではなかったことから、アメリカ系白人の場合のより正方形に近い形状の膝に比べて、より台形状の膝が形成されるので、その結果として、アメリカ系黒人ではAP顆角度がより大きかった。一方、東アジア系集団の遠位大腿骨に対して我々の分析を行ったところ、AP及びMLにおける明確なパターンが同定され、コーカソイド系及びアフリカ系アメリカ人の両集団と比べて、東アジア系集団ではAP及びML測定値が小さかった(p<0.01)。一般に、アジア系集団は、コーカソイド系及びアフリカ系アメリカ人集団よりも台形に近い形状を示す(p<0.01)。さらに、東アジア系集団は、より細い前方幅も有する(p<0.01)。
【0058】
外側プロファイル及び内側プロファイルの両方の曲率を分析すると、これらのプロファイルは、アメリカ系黒人及びアメリカ系白人については4つの互いに異なる曲率半径によって、東アジア人については3つの互いに異なる曲率半径によって、正確に近似できることが見いだされた(図6参照)。これら4つの半径は両民族(アメリカ系黒人及びアメリカ系白人)間で首尾一貫していたが、それらの半径の値は、図23−図25に示されるように、各民族で異なっていた。
【0059】
脛骨についての特徴発見の結果は、アメリカ系黒人とアメリカ系白人との間での民族による形状の差異が、脛骨粗面区域周辺では形状の差異がより大きいのに対して、内側及び外側プラトー区域では有意ではないことを示している。近位前脛骨における軽微な差異を除けば、有意であった唯一の区域は、内果の先端部であった(図39及び図40参照)。しかしながら、東アジア系集団と、アメリカ系白人及びアメリカ系黒人の両方との間では、大きな形状の差異が見いだされた(図23−図35)。t検定及びパワー検定から得られた結果も同様に、これらの知見を強調している。最も有意な変数は、最大長、骨幹の頑強さの尺度、及び脛骨プラトーの幾つかの測定値を含む、スケールに関連した変数である。簡単に述べると、アメリカ系黒人の脛骨は、より長く、かつ、より頑強な骨幹とわずかに広い脛骨プラトーとを有する。
【0060】
表2は、脛骨についての自動測定値を示し、外側プラトー高さが最も有意な測定値であり(p<0.05)、これは、外側大腿顆高さにおける有意な差異と相関する。
【0061】
再び図31を参照すると、内側顆及び外側顆の両方について、後方から前方に、増分10度ごとに内側−外側曲線についての曲率半径を求めた。第1の列は、内側顆及び外側顆の両方について、各々の最も外側のカム面軌道に沿って、増分10度で構成されている。第2及び第3の列は、それぞれの角度増分における内側顆及び外側顆の曲率半径を示す。最後の2つの列は、内側−外側曲率半径の曲率を、それぞれのカム面軌道についての曲率半径で割ったものに対応する比である。換言すれば、この比は、各顆の端から端までの曲率半径である分子と、各顆の最も外側のカム面の軌道に沿ったゾーンの曲率半径である分母(ゾーンごとに同じ数である)とを有する。次いで、この比を、機械軸(MA)に対して特定の角度で取った様々な平面について、ゾーンごとにプロットする。
【0062】
図41を参照すると、C1/C2(図29参照)の比を用いて、患者特異的インプラントの滑らかな関節面を生成するよう、変形した解剖学的構造を修復することができる。プロセスは、先の論点で概説したように、患者ごとに顆表面の外側及び内側のプロファイル及び曲線を計算することから開始することができ、次いで、これらの輪郭は、各区画の曲線の曲率が正常な解剖学的範囲内にあることを検証するために評価される。次いで、変形した区画が強調され、解剖学的に正しい区画についてC1/C2比が計算され、次いでこれらの区画を用いて変形した区画についての比が補間され、このプロセスが完了すると、患者の正しい解剖学的構造を模倣する、滑らかなインプラント関節曲率が生成される。
【0063】
骨内に異常が存在する場合には、上記結果を利用して、顆に沿った曲率半径C2を近似する。内側顆及び外側顆について、C1及びC2の比の間の関係が同定され、これを用いて、いずれかの顆に沿った特定の位置についての曲率半径C2を計算することができる。
【0064】
内側顆及び外側顆についての最も外側のカム面軌道についての曲率半径、並びに内側−外側弧についての曲率マッピングを用いて、患者特異的な新たな補綴インプラントを製作することができる。各々の角度の増分において、曲率半径と、内側顆、滑車溝、及び外側顆に沿った3点とを用いて、滑らかな曲線が生成される(図29を参照)。次いで、これらの滑らかな曲線を掃引する面を用いて、インプラントの関節面が近似される。
【0065】
図41及び図26を参照すると、外側顆及び内側顆の最も外側のカム面に対して、4つの互いに異なる曲率半径が同定された。
【0066】
図42−図44を参照すると、前後方向高さとML幅との間のアスペクト比を分析することにより、カッティング・ボックスの寸法が同定された。AP高さは、大腿骨上の寸法決め点(sizing point)と最も後方の点との間の距離として定義され、一方、ML幅は、内外方向の大腿骨の寸法として定義される。次いで、このアスペクト比を、全集団について、表1において強調される特徴に限られないがそれらと共に計算し、次いでこれを集団をクラスター化するための多次元特徴ベクトルとして用い、クラスターがどれだけコンパクトで、かつ良く分離されているかを識別するために用いられるDunn指数及び修正Dunn指数の両方を用いて、クラスターの最良の数が決定される(図43及び図44参照)。例示的な形態において、アメリカ系白人集団を最も良く代表する、男性についての6つのクラスターと女性についての6つのクラスターとに分けられる12個のクラスターが見いだされた。
【0067】
図45を参照して、脛骨プラトーは、内側及び外側プラトーの主軸に垂直な一連の輪郭を用いて近似される。これらの輪郭を用いて、脛骨インプラントのためのポリエチレンの表面がパラメータ化される。
【0068】
図46を参照して、脛骨面の前後方向の長さを測定し、かつ内外方向における脛骨の長さを測定することにより、6つの脛骨プレートの寸法を同定した。次いで、これらの2つの測定値の間の比を、ファジィc平均を用いてクラスター化し、この集団に最良適合する6つの寸法を同定した。
【0069】
図47−図51を参照すると、ポリエチレン部品は、十字保持インプラント(図47参照)及び双十字インプラント(図48−図51参照)について、脛骨プラトーの解剖学的形状を反映する。ポリエチレン部品は、モジュール式にすることが可能であり、脛骨隆起を保全する内側及び外側のポリエチレン・インサートを含むことができる。インサートの正確な設置を保証するために、コネクタが用いられる(図39)。一旦固定されると、コネクタは取り除かれ、内側及び外側のポリエチレン・インサート並びに脛骨トレーのみが正しい位置に残される(図51)。
【0070】
図52−図54を参照すると、2つの部品の半径間で合致する曲率を示す、膝の解剖学的形状に対応するインプラントの大腿骨部品及び脛骨部品である。
【0071】
図55−図58を参照すると、比較は、解剖学的インプラントと既存の機能的インプラントとの間の違いを示す。図55は、膝の内側前部と外側前部との間の正しい比を復元する場合の違いを示す。既存の機能的インプラント(青)は、この比を適正に復元していないので、四頭筋に沿ってより強い緊張を生じさせ、これは、膝の動きを変化させることがあり、膝蓋骨の亜脱臼を引き起こしかねない。図56−図58は、解剖学的インプラントの内側及び外側プロファイルの曲率を、既存の機能的インプラントとの比較で示す。図56は、典型的なインプラントとの直接比較を示し、一方、図57及び図58は、多数の機能的インプラントのプロファイルを示す。
【0072】
図59を参照すると、カラーマップは、アフリカ系アメリカ人集団とコーカソイド集団との間の変動を示す。明るい色は、暗い色よりも大きな差異を示す。外側顆は僅かな差異を示しているが、大腿骨の遠位端にはほとんど変動が存在しない。
【0073】
患者の解剖学的構造に最良適合するテンプレートを選択する例示的なプロセスは、以下のように説明することができる。最初に、患者の膝を画像化し、患者の大腿骨及び脛骨の3D表面を生成する。次いで、大腿骨を分析し、内側及び外側のカム軌道を計算する。次いで、内側及び外側の矢状曲線が計算される。大腿骨の前後寸法及び内外寸法も計算する。矢状曲線に沿ったカム軌道の曲率、AP寸法、及び/又は内外幅を用いて、患者に最良適合するテンプレートを探索することができる。インプラントのテンプレートがその解剖学的構造に適合しない患者については、図11の右の分岐によって示されるようにカスタム・インプラントが生成される。
【0074】
図60を参照すると、患者特異的インプラントをいずれかの画像化様式から生成するための例示的なプロセスは、3次元の患者特異的モデルを生成することを含み、次にこれらのモデルは上記の(DAT)統計学的アトラスに追加され、点対応及び正規化が達成され、このプロセスが完了すると、関連する外科的ランドマークが自動的に計算される(TEA、MA、PCA、…など)。
【0075】
図61−図63を参照すると、次いでTEAの周りを回転する平面を用いて、骨の断面の輪郭が計算され(図61参照)、次いでMAに対して垂直な別の輪郭の集合が計算される(図62参照)。次いで、これら2つの輪郭の集合を用いて、パラメータ化されたインプラント・テンプレートの制約条件を自動的に更新し、これらの制約条件が更新されると、次いで、インプラントの関節面を掃引して、滑らかな連続面が生成される(図63参照)。さらに患者の骨から得られた前後高さ及び内外幅の測定値を用いて、テンプレートのカッティング・ボックスを更新する。次いで、このボックスを滑らかな関節面と組み合わせて、患者特異的インプラントのCADモデルを生成する。次いで、このインプラントの3DのCADモデルを患者特異的な骨の3Dモデルに対して評価して、配置を検証し、3Dインプラント・モデルと3D骨モデルとを用いて可動域のシミュレーションを行う。検証プロセスが完了すると、インプラントを製造するために、3Dインプラント・モデルがコンピュータから製造施設に出力される。例示的な形態において、3Dインプラント・モデルのコンピュータ出力は、CNCマシンのためのGコードの形態とすることができる。
【0076】
図64を参照すると、例示的なフローチャートは、集団に最良適合するクラスターから生成されたインプラント・テンプレートを既存のレガシー・システムの更新にも用いて、患者の解剖学的傾向との適合を保証する方法を概説する。このプロセスは、既存のインプラント・システムのCADモデルをインポートし、これを解剖学的テンプレートと同じパラメータ表示空間に対して変形することを伴う。このプロセスは、インプラントの中央軸の周りに3次元輪郭の集合を生成することを含む。これらの輪郭を用いて、解剖学的テンプレートと同様の方法で制約条件の集合を生成する。テンプレートと同じようにインプラントがパラメータ化されると、テンプレートのパラメータ値を用いて、パラメータ化されたインプラントの特徴を更新する。これらのパラメータ化されたインプラントの特徴は、膝蓋溝の曲率、顆の曲率、AP高さ、及びML幅を含むが、これらに限定されない。
【0077】
図65は、解剖学的に適したテンプレートを用いて既存のインプラント・ファミリーを更新して、解剖学的膝蓋溝を模倣するインプラントを作成することができる方法を示す。
【0078】
図66及び図67を参照すると、例示的なパラメータで表された大腿骨CADモデルは、300個を超えるパラメータから構成される。CADモデルは、TEA軸の周りの増分10度の断面により定められる。パラメータは、各断面における特定の点及び曲率を定める。インプラントの膝蓋−大腿骨区画は、先に考察したように、3つの半径と共に、内側、外側、及び溝の曲率由来の3つの点によって定められる。顆の断面については、内側及び外側が、2つの点と1つの半径とによって定められる。完全なインプラントCADモデルを自動的に作成するために、成形情報は断面内で固有である。
【0079】
図68−図70を参照すると、正常な膝の動きを最も忠実に模倣する機能的インプラントを設計するためには、脛骨に対する大腿骨の全可動域を完全に特徴付けするべきである。この目的を達成するために、解剖学的区域の集合を大腿骨上で局所化し、全可動域にわたって脛骨に投影する。最初に、完全に伸展した場合の大腿骨と脛骨との接触域である大腿骨の内側上の最も遠位の区域を局所化した(A1)(図69参照)。第2の区域は外側顆の最も遠位の区域であり(A2)、一方、第3の区域は内側顆の最も後方の区域であり(A3)、第4の区域は外側顆の最も後方の区域である(A4)(図70参照)。全可動域にわたって、大腿骨上の各々の区域を脛骨上に投影して、脛骨プラトー面に対するこれらの区域の動きを特徴付けた。区域A1が40度屈曲までは前方に移動し、その後、脛骨面との接触から外れる明確な運動パターンが、内側上で観察された。同時に、40度より後では、区域A3が、軸方向回転トラッキングを行いながら前方への移動を開始する。外側においては、区域A2が、40度屈曲まではA1に比べてより小規模に前方に移動し、そこでA1と同様に接触から外れる。同時に、区域A4が、接触するようになり、区域A3に比べて小さい区域内を前方に移動する。
【0080】
図68−図72を参照すると、機能的PSインプラントを用いて正常な運動パターンを達成するためには、より自然な動きを提供するように、大腿骨インプラントの曲率及びポリエチレン部品の両方の設計を修正すべきである。さらに、ポリエチレン部品上のカム位置を修正することで、大腿骨の動きに制約を与え、軸心周りのさらなる回転を可能にする(図71参照)。既存の機能的インプラントでは、正常な膝において観察される軸心周りの回転と同じほどの回転を与えるように作動可能なものはない。PSインプラント(例えば図72参照)を埋め込み、その後、X線蛍光透視法での検討を行って、カムに対する大腿骨部品の位置を観察したところ、カム位置が大腿骨インプラント内に入り込んでいることが観察され、これは、このカム位置が軸心周りでの十分な回転を許容していないことを暗示していた。インプラント接合部の軸心周りでの回転を改善するために、内側上での位置に従って、カム位置を外側に傾くように修正した。この修正により、生来の膝関節の正常な可動域をより忠実に近似する、より良好な軸心周りの回転範囲が可能になった。
【0081】
図69及び図70に見られるように、脛骨の外側は、2つの異なる部位を有する。図71におけるPSポリエチレンの外側曲率は、そのような独特の条件に順応するように設計される。0度から40度までの屈曲中は、ポリエチレン部品の前部は4組の曲率によって定められる。この幾何学的形状はさらに、これらの屈曲角度の間に大腿骨部品が過度に前方に摺動することを防止するような角度とされる。ポリエチレン部品の後部も4組の曲率によって定められ、これは、60度から140度までの屈曲中に外側顆に係合する。この部分は、より滑らかな動きを提供し、かつ衝突を防ぐため、より平坦になるように設計される。内側は、60度から140度までの屈曲中のローリング運動に合わせて深皿の形に成形された1組の曲率を有する。第2の曲率の組は、最初は60度から120度までの屈曲の位置に追従し、それから0度から40度までの屈曲の位置へとつながる、独特のトラックを導入し、これが、2つの位置でのトラック間での滑らかな遷移を可能にする。
【0082】
図73−図74及び表3を参照すると、解剖学的に適した双十字、ACL、及びPCLインプラントを設計するには、膝関節をその可動域を通して動かしたときのPCL及びACLの位置を研究しなければならない。統計学的アトラスを利用して、集団全体にわたって、ACL及びPCLの挿入位置を局所化し、伝播した。可動域にわたる靱帯の形状及び長さの変化をマッピングするために、可動域を通して膝関節を動かすことによってACLとPCLの両方を変形した。表3は、ACLとPCLとの長さの差を、ACL長さに対する百分率として強調する。このデータを用いて、PCL又はACLの一方、又はACL及びPCL両方の保持に順応するインプラントを設計することができる。
【0083】
上記の説明及び発明の概要に従えば、ここで説明された方法及び装置は本発明の例示的な実施形態を構成するが、ここに含まれる発明は、この通りの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって定められる本発明の範囲から逸脱することなくそのような実施形態に対して変更を行うことができることが、当業者には明らかとなるはずである。さらに、本発明は特許請求の範囲によって定められるものであり、ここで示された例示的な実施形態を説明するいかなる限定又は要素も、そのような限定又は要素が明示的に述べられていない限り、いずれの請求項の要素の解釈にも組み入れられることが意図されないことを理解すべきである。同様に、本発明は特許請求の範囲により定められるものであり、ここで明示的に論じられていなかったとしても本発明の潜在的な及び/又は予見されない利点が存在することがあるので、いずれかの請求項の範囲内であるためには、ここで開示された本発明の確認された利点又は目的のいずれか又は全てを満たすことは必ずしも必要ではないことを理解すべきである。
【0084】
【表1】
【0085】
【表2】
【0086】
【表3】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者に独特の解剖学的特徴に基づいてインプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び曲率の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元電子的表現を生成する段階と、
前記独特の患者に特異的な前記人体解剖学的特徴の前記寸法及び曲率の特徴を模造するように、補綴インプラントを設計する段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、前記設計された補綴インプラントを仮想的にテストフィッティングする段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの医学的スキャンを用いる段階が、接触ラインを同定すること、前記接触ラインを複数の区画に分割すること、前記各区画に対応する曲率半径を同定することにより前記接触ラインの前記曲率のモデルを作成すること、及び、前記モデルを前記電子的表現に組み入れることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの医学的スキャンを用いる段階が、前記接触ラインに沿って角度で離間された複数の点を同定すること、前記各点に関連付けられた曲率半径を用いて、前記接触ライン近傍の前記解剖学的特徴の表面を近似すること、及び、前記点に関連付けられた前記曲率半径を前記電子的表現に組み入れることを含み、個々の点に関連付けられた前記曲率半径が、前記接触ラインと概ね直交する方向で前記解剖学的特徴の前記表面を表すことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補綴インプラントを設計する段階が、前記接触ラインの前記モデルを近似するように前記補綴インプラントを設計することを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者特異的補綴インプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び輪郭の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元電子的表現を生成する段階と、
患者特異的インプラントを構築するために、前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、そのうちの少なくとも5つが輪郭及び寸法のうち少なくとも1つが互いに異なる、複数の補綴インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つを選択する段階と、
前記独特の患者に特異的な前記人体解剖学的特徴の前記寸法及び曲率の特徴を模造するように、前記選択された補綴インプラント・テンプレートをカスタマイズする段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、前記カスタマイズされた補綴インプラントを仮想的にテストフィッティングする段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
一連の補綴インプラント・テンプレートを生成する方法であって、
ヒトの集団全体にわたって、同じ人体解剖学的特徴を表す複数の電子的3次元モデルを生成する段階と、
前記複数のモデルをデータベース内でグループ化する段階と、
前記データベース内の前記複数のモデルの各々に対して、年齢、民族、及び性別のうちの少なくとも1つを関連付ける段階と、
前記3次元モデルが生成された前記ヒトの集団の少なくとも一部にとって各々が一般的である、複数の整形外科用インプラント・テンプレートを設計する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記設計する行為が、前記3次元モデルが生成された前記ヒト集団の少なくとも一部の平均寸法及び平均輪郭のうちの少なくとも1つを近似する寸法及び輪郭のうちの少なくとも1つを組み入れることを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の整形外科用インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つを、前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも1つに対して仮想的にテストフィッティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも2つについて、内側顆カム面の局所解剖学的構造、外側顆カム面の局所解剖学的構造、及び滑車溝の局所解剖学的構造のうちの少なくとも1つを測定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
生来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記生来の人体解剖学的特徴の寸法及び曲率の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の電子的3次元モデルを生成する段階と、
前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも2つについて、内側顆カム面の局所解剖学的構造、外側顆カム面の局所解剖学的構造、及び滑車溝の局所解剖学的構造のうちの少なくとも1つを測定する段階と
をさらに含み、前記電子的3次元モデルを生成する段階が、ヒトの集団全体にわたって、同じ人体解剖学的特徴を表す複数の前記電子的3次元モデルを生成するように繰り返されることを特徴とする、請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者特異的補綴インプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び輪郭の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元の電子的表現を生成する段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現が示す前記寸法及び曲率の特徴を考慮に入れて、複数の補綴インプラント・テンプレートの3次元電子的表現のうちの少なくとも1つを選択する段階と
を含み、前記選択する行為が、前記複数の補綴インプラント・テンプレートのうちのどれが前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現に対して最も低い偏差率を有するか評価することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現が、接触ラインのモデルを含み、前記モデルが、複数の曲率半径を含み、前記曲率半径の各々が、前記接触ラインの一部に関連付けられることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択する行為が、前記接触ラインの前記モデルに関連付けられた前記曲率半径を、前記複数の補綴インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つに関連付けられた対応する曲率半径と比較することを含むことを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
骨マッピングから大腿骨のシェルを生成し、次いで、前記骨の周りを10度ごとに掃引することによって前記シェルから生成されるプロファイル/点を生成し、次いで、前記プロファイル/点から曲線を生成し、次いで、前記曲線に対して少なくとも4つの半径をマッチングすることを特徴とする方法。
【請求項15】
骨をモデル化する方法であって、
骨の接触面に関連付けられた複数の点を同定する段階と、
前記接触面に関連付けられた前記複数の点を、各々が前記複数の点のうちの幾つかを含む複数のゾーンに分割する段階と、
曲率半径により定められる第1の曲線を用いて、前記各ゾーン内の前記複数の点を近似する段階と、
前記第1の曲線の各々を組み合わせて、前記接触面のモデルを作成する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記接触面の前記モデルに沿って複数の離間された位置を同定する段階と、
曲率半径により定められる、前記接触面の前記モデルと概ね直交するように配置される第2の曲線を用いて、前記離間された位置近傍の前記骨の形状を近似する段階と
をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の離間された位置を同定する段階が、前記接触面の前記モデルを実質的に角度が等しい複数の部分に角度で分割することによって、前記複数の離間された位置を同定することを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に角度が等しい部分が、約5度と約15度との間であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に角度が等しい部分が、約10度であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者の骨の少なくとも一部の現在の状態を表す、患者特異的な骨シェルを生成する方法であって、
患者の解剖学的構造の少なくとも一部を画像化して、各々が前記患者の骨の外側に対応する閉じられた境界を含む骨セグメントを含む、前記患者の解剖学的構造を通って延びる軸線に直交して取得される前記患者の解剖学的構造の複数の2D画像スライスを作成する段階と、
前記患者の骨の前記複数の2D画像スライスが取得された、該患者の骨の少なくとも一部の3D画像骨シェルを構築する段階と
を含み、前記3D画像骨シェルを構築する段階が、患者特異的ではないテンプレート3D画像骨シェルを用いることによって前記各骨セグメントの前記閉じられた境界を認識するソフトウェアを用いることを含み、前記3D画像骨シェルが、前記患者の骨の現在の状態を示すことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記画像化する段階が、磁気共鳴画像法及びコンピュータ断層撮影のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の骨が、大腿骨、脛骨、及び上腕骨のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ソフトウェア・コンポーネントによって、前記3D画像骨シェルと嵌合するような3D画像外科的ジグを生成する段階をさらに含み、前記3D画像外科的ジグが、前記3D画像骨シェルの外側の特徴に合わせてカスタマイズされた局所解剖学的特徴を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ソフトウェア・コンポーネントが、前記3D画像外科的ジグの有形の局所解剖学的特徴を有する外科的ジグを製作するための命令ファイルを出力するように動作可能であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者の解剖学的構造の前記複数の2D画像スライスを用いて、該患者の軟骨の少なくとも一部を表す3D画像軟骨シェルを構築する段階をさらに含み、前記3D画像軟骨シェルを構築する段階が、2D画像スライス内に現れた軟骨の外形を認識するソフトウェアを用いることを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項1】
患者に独特の解剖学的特徴に基づいてインプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び曲率の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元電子的表現を生成する段階と、
前記独特の患者に特異的な前記人体解剖学的特徴の前記寸法及び曲率の特徴を模造するように、補綴インプラントを設計する段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、前記設計された補綴インプラントを仮想的にテストフィッティングする段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記少なくとも1つの医学的スキャンを用いる段階が、接触ラインを同定すること、前記接触ラインを複数の区画に分割すること、前記各区画に対応する曲率半径を同定することにより前記接触ラインの前記曲率のモデルを作成すること、及び、前記モデルを前記電子的表現に組み入れることを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記少なくとも1つの医学的スキャンを用いる段階が、前記接触ラインに沿って角度で離間された複数の点を同定すること、前記各点に関連付けられた曲率半径を用いて、前記接触ライン近傍の前記解剖学的特徴の表面を近似すること、及び、前記点に関連付けられた前記曲率半径を前記電子的表現に組み入れることを含み、個々の点に関連付けられた前記曲率半径が、前記接触ラインと概ね直交する方向で前記解剖学的特徴の前記表面を表すことを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記補綴インプラントを設計する段階が、前記接触ラインの前記モデルを近似するように前記補綴インプラントを設計することを含むことを特徴とする、請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
患者特異的補綴インプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び輪郭の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元電子的表現を生成する段階と、
患者特異的インプラントを構築するために、前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、そのうちの少なくとも5つが輪郭及び寸法のうち少なくとも1つが互いに異なる、複数の補綴インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つを選択する段階と、
前記独特の患者に特異的な前記人体解剖学的特徴の前記寸法及び曲率の特徴を模造するように、前記選択された補綴インプラント・テンプレートをカスタマイズする段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現を用いて、前記カスタマイズされた補綴インプラントを仮想的にテストフィッティングする段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項6】
一連の補綴インプラント・テンプレートを生成する方法であって、
ヒトの集団全体にわたって、同じ人体解剖学的特徴を表す複数の電子的3次元モデルを生成する段階と、
前記複数のモデルをデータベース内でグループ化する段階と、
前記データベース内の前記複数のモデルの各々に対して、年齢、民族、及び性別のうちの少なくとも1つを関連付ける段階と、
前記3次元モデルが生成された前記ヒトの集団の少なくとも一部にとって各々が一般的である、複数の整形外科用インプラント・テンプレートを設計する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記設計する行為が、前記3次元モデルが生成された前記ヒト集団の少なくとも一部の平均寸法及び平均輪郭のうちの少なくとも1つを近似する寸法及び輪郭のうちの少なくとも1つを組み入れることを含むことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の整形外科用インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つを、前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも1つに対して仮想的にテストフィッティングする段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6又は請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも2つについて、内側顆カム面の局所解剖学的構造、外側顆カム面の局所解剖学的構造、及び滑車溝の局所解剖学的構造のうちの少なくとも1つを測定する段階をさらに含むことを特徴とする、請求項6乃至請求項8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
生来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記生来の人体解剖学的特徴の寸法及び曲率の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の電子的3次元モデルを生成する段階と、
前記複数の電子的3次元モデルのうちの少なくとも2つについて、内側顆カム面の局所解剖学的構造、外側顆カム面の局所解剖学的構造、及び滑車溝の局所解剖学的構造のうちの少なくとも1つを測定する段階と
をさらに含み、前記電子的3次元モデルを生成する段階が、ヒトの集団全体にわたって、同じ人体解剖学的特徴を表す複数の前記電子的3次元モデルを生成するように繰り返されることを特徴とする、請求項6乃至請求項9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
患者特異的補綴インプラントを生成する方法であって、
独特の患者由来の人体解剖学的特徴の少なくとも1つの医学的スキャンを用いて、前記人体解剖学的特徴の寸法及び輪郭の特徴を模倣する寸法及び曲率の特徴を組み入れた、前記人体解剖学的特徴の3次元の電子的表現を生成する段階と、
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現が示す前記寸法及び曲率の特徴を考慮に入れて、複数の補綴インプラント・テンプレートの3次元電子的表現のうちの少なくとも1つを選択する段階と
を含み、前記選択する行為が、前記複数の補綴インプラント・テンプレートのうちのどれが前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現に対して最も低い偏差率を有するか評価することを含むことを特徴とする方法。
【請求項12】
前記人体解剖学的特徴の前記3次元電子的表現が、接触ラインのモデルを含み、前記モデルが、複数の曲率半径を含み、前記曲率半径の各々が、前記接触ラインの一部に関連付けられることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記選択する行為が、前記接触ラインの前記モデルに関連付けられた前記曲率半径を、前記複数の補綴インプラント・テンプレートのうちの少なくとも1つに関連付けられた対応する曲率半径と比較することを含むことを特徴とする、請求項11又は請求項12に記載の方法。
【請求項14】
骨マッピングから大腿骨のシェルを生成し、次いで、前記骨の周りを10度ごとに掃引することによって前記シェルから生成されるプロファイル/点を生成し、次いで、前記プロファイル/点から曲線を生成し、次いで、前記曲線に対して少なくとも4つの半径をマッチングすることを特徴とする方法。
【請求項15】
骨をモデル化する方法であって、
骨の接触面に関連付けられた複数の点を同定する段階と、
前記接触面に関連付けられた前記複数の点を、各々が前記複数の点のうちの幾つかを含む複数のゾーンに分割する段階と、
曲率半径により定められる第1の曲線を用いて、前記各ゾーン内の前記複数の点を近似する段階と、
前記第1の曲線の各々を組み合わせて、前記接触面のモデルを作成する段階と
を含むことを特徴とする方法。
【請求項16】
前記接触面の前記モデルに沿って複数の離間された位置を同定する段階と、
曲率半径により定められる、前記接触面の前記モデルと概ね直交するように配置される第2の曲線を用いて、前記離間された位置近傍の前記骨の形状を近似する段階と
をさらに含むことを特徴とする、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の離間された位置を同定する段階が、前記接触面の前記モデルを実質的に角度が等しい複数の部分に角度で分割することによって、前記複数の離間された位置を同定することを含むことを特徴とする、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に角度が等しい部分が、約5度と約15度との間であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項18】
前記実質的に角度が等しい部分が、約10度であることを特徴とする、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
患者の骨の少なくとも一部の現在の状態を表す、患者特異的な骨シェルを生成する方法であって、
患者の解剖学的構造の少なくとも一部を画像化して、各々が前記患者の骨の外側に対応する閉じられた境界を含む骨セグメントを含む、前記患者の解剖学的構造を通って延びる軸線に直交して取得される前記患者の解剖学的構造の複数の2D画像スライスを作成する段階と、
前記患者の骨の前記複数の2D画像スライスが取得された、該患者の骨の少なくとも一部の3D画像骨シェルを構築する段階と
を含み、前記3D画像骨シェルを構築する段階が、患者特異的ではないテンプレート3D画像骨シェルを用いることによって前記各骨セグメントの前記閉じられた境界を認識するソフトウェアを用いることを含み、前記3D画像骨シェルが、前記患者の骨の現在の状態を示すことを特徴とする、方法。
【請求項20】
前記画像化する段階が、磁気共鳴画像法及びコンピュータ断層撮影のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記患者の骨が、大腿骨、脛骨、及び上腕骨のうちの少なくとも1つを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
ソフトウェア・コンポーネントによって、前記3D画像骨シェルと嵌合するような3D画像外科的ジグを生成する段階をさらに含み、前記3D画像外科的ジグが、前記3D画像骨シェルの外側の特徴に合わせてカスタマイズされた局所解剖学的特徴を含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
前記ソフトウェア・コンポーネントが、前記3D画像外科的ジグの有形の局所解剖学的特徴を有する外科的ジグを製作するための命令ファイルを出力するように動作可能であることを特徴とする、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記患者の解剖学的構造の前記複数の2D画像スライスを用いて、該患者の軟骨の少なくとも一部を表す3D画像軟骨シェルを構築する段階をさらに含み、前記3D画像軟骨シェルを構築する段階が、2D画像スライス内に現れた軟骨の外形を認識するソフトウェアを用いることを含むことを特徴とする、請求項19に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図32D】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32A】
【図32B】
【図32C】
【図32D】
【図33】
【図34A】
【図34B】
【図34C】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【公表番号】特表2012−518519(P2012−518519A)
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−552163(P2011−552163)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025466
【国際公開番号】WO2010/099359
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511207707)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際出願番号】PCT/US2010/025466
【国際公開番号】WO2010/099359
【国際公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【出願人】(511207707)
【Fターム(参考)】
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