説明

カステラの製造方法

【課題】 煩雑な生地の泡切りをしなくても、芯が無く、表面が均一に焼成され、外観や食感も良好なカステラの製造方法を提供すること。
【解決手段】 生地中の小麦粉100重量部に対して、卵240〜250重量部、砂糖140〜150重量部、水飴30〜35重量部、蜂蜜25〜30重量部、起泡性乳化油脂10〜15重量部を含む生地を、泡切りをせずに焼成することを特徴とするカステラの製造方法に従ってカステラを製造すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カステラの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カステラは、卵、砂糖、水飴、粉より作られる伝統的な菓子であるが、卵量、糖分の多い配合であり、均一な温度のもとで焼成されなければ、芯ができやすいものであった。芯がないカステラを製造するためには、熟練した技術が必要と言われており、生地の泡切り工程などが伴い、作業性としては煩雑なものであった。
【0003】
特許文献1、2には、気泡の安定化を高度に実現することを目的に、化学的或いは物理的要因により生じる消泡作用を抑制することができる起泡性乳化剤を用いたカステラが開示されている。しかし、これらの文献は起泡処理による食感改良と新規なテクスチャーを付与することが目的であり、製法上必要とされてきた泡切り工程に関する記載は特になかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−254611号公報
【特許文献2】特開2004−254612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、煩雑な生地の泡切りをしなくても、芯が無く、表面が均一に焼成され、外観や食感も良好なカステラの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、生地中に、特定量の卵、砂糖、水飴、蜂蜜、起泡性乳化油脂を使用することにより、芯の発生の無い、泡切りを必要とせず、表面を均一に焼成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0007】
即ち、本発明の第一は、生地中の小麦粉100重量部に対して、卵240〜250重量部、砂糖140〜150重量部、水飴30〜35重量部、蜂蜜25〜30重量部、起泡性乳化油脂10〜15重量部を含む生地を、泡切りをせずに焼成することを特徴とするカステラの製造方法に関する。好ましい実施態様は、さらに、生地中の小麦粉100重量部に対して、練り込み用クリーム10〜15重量部を含む上記記載のカステラの製造方法に関する。
【発明の効果】
【0008】
本発明に従えば、煩雑な生地の泡切りをしなくても、芯が無く、表面が均一に焼成され、外観や食感も良好なカステラの製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明につき、さらに詳細に説明する。本発明のカステラの製造方法は、泡切りをしないことが特徴で、生地中には特定量の卵、砂糖、水飴、蜂蜜、起泡性乳化油脂などが含有されている。
【0010】
本発明の卵として使用できるものは、生卵、凍結卵などが挙げられる。卵の含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、240〜250重量部が好ましい。240重量部より少ないと、生地が硬くてぱさついた食感になる場合があり、250重量部より多いと、卵風味が強すぎる場合がある。
【0011】
本発明の砂糖として使用できるものは、上白糖、グラニュー糖などが挙げられる。砂糖の含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、140〜150重量部が好ましい。140重量部より少ないと、甘さが不足しぱさついた食感になる場合があり、150重量部より多いと、味がひつこくなる場合がある。
【0012】
本発明の水飴として使用できるものは、米水飴、還元麦芽糖水飴などが挙げられる。水飴の含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、30〜35重量部が好ましい。30重量部より少ないと、ぱさついた食感になる場合があり、35重量部より多いと、べたついた食感になる場合がある。
【0013】
本発明の蜂蜜として使用できるものは、レンゲ蜂蜜、アカシア蜂蜜などが挙げられる。蜂蜜の含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、25〜30重量部が好ましい。25重量部より少ないと、ぱさついた食感になる場合があり、30重量部より多いと、べたついた食感になる場合がある。
【0014】
本発明の起泡性乳化油脂として使用できるものは、カネカ社製「シルクアップ」、カネカ社製「ハイメル」などが挙げられる。起泡性乳化油脂の含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、10〜15重量部が好ましい。10重量部より少ないと、泡沫生地の安定性が悪くなる場合があり、15重量部より多いと、風味に悪影響の出る場合がある。
【0015】
本発明のカステラの製造に用いられる生地中には、食感の観点から練り込み用クリームを含有していることが好ましい。ここでクリームとは、練り込み用であれば特に限定はないが、カネカ社製「SCC100」を例示できる。該クリームの含有量は、生地中の小麦粉100重量部に対して、10〜15重量部が好ましい。10重量部より少ないと、ぱさついた食感になる場合があり、15重量部より多いと、べたついた食感になる場合がある。
【0016】
本発明のカステラの製造は、以下のようにすればよい。
まず、卵、蜂蜜、水飴、砂糖の各々所定量を加えよく混ぜ合わせる。次に、起泡性乳化油脂、練り込み用クリームを各々所定量加え攪拌する。所定の比重になったら最後に小麦粉を加え均一に混合する。焼成型に生地を流し入れ、予め170〜180℃に昇温しておいたオーブンで45〜50分間焼成する。調製した生地は均一に安定化されており、焼成途中の泡切り工程を必要としないカステラを製造することができる。上記において、焼成前の生地の比重は、0.45〜0.54が好ましい。
【実施例】
【0017】
以下に実施例を示し、本発明をより具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に何ら限定されるものではない。なお、実施例において「部」や「%」は重量基準である。
【0018】
<芯の有無>
実施例・比較例で得られたカステラを食べ、芯の有無を確認した。
【0019】
<外観の評価>
実施例・比較例で得られたカステラを目視で評価した。その際の基準は以下の通りであった。○:表面が均一に焼成されており、穴が無い、△:表面の焼成度合いがやや不均一で僅かに穴が見られる、×:表面が均一に焼成されておらずかなり穴が有る。
【0020】
<食感の評価>
実施例・比較例で得られたカステラを食べ、以下の基準で評価した。○:ソフトでしっとりしている、△:ややぱさついている、×:ぱさついていてソフトさも無い。
【0021】
(実施例1)
全卵225部、蜂蜜15部、水飴20部、上白糖150部をミキサーに入れ低速で混合した。次に、起泡性乳化油脂(カネカ社製、商品名「シルクアップ」)35部、練り込み用クリーム(カネカ社製、商品名「SCC100」)35部を加え、ホイッパーで攪拌した。比重が0.4になったら薄力粉100部を加え均一に混合した。こうして得られた生地を焼成型に充填して、予め昇温しておいたオーブン(170〜180℃)で約50分焼成した。焼成後の表面状態は穴空きも無く良好であった。食感についてもソフトでしっとりとした良好なものであった。それらの結果は、表1にまとめた。
【0022】
【表1】

【0023】
(実施例2)
練り込み用クリーム(カネカ社製、商品名「SCC100」)を除いた以外は、実施例1と同様にして焼成をおこなった。焼成後の表面状態は穴空きも無く良好であった。食感についてはややぱさついたものであった。それらの結果は、表1にまとめた。
【0024】
(比較例1)
起泡性乳化油脂(カネカ社製、商品名「シルクアップ」)を除いた以外は、実施例1と同様にして焼成をおこなった。焼成後の表面状態は穴空きが見られた。食感についてはソフト性はやや劣ったが、しっとり性はあった。それらの結果は、表1にまとめた。
【0025】
(比較例2)
実施例1で起泡性乳化油脂(カネカ社製、商品名「シルクアップ」)及び練り込み用クリーム(カネカ社製、商品名「SCC100」)を除いた以外は、実施例1と同様にして焼成をおこなった。焼成後の表面状態は穴空きが見られ、食感もソフト性、しとり性の劣るものであった。それらの結果は、表1にまとめた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生地中の小麦粉100重量部に対して、卵240〜250重量部、砂糖140〜150重量部、水飴30〜35重量部、蜂蜜25〜30重量部、起泡性乳化油脂10〜15重量部を含む生地を、泡切りをせずに焼成することを特徴とするカステラの製造方法。
【請求項2】
さらに、生地中の小麦粉100重量部に対して、練り込み用クリーム10〜15重量部を含む請求項1に記載のカステラの製造方法。

【公開番号】特開2012−135260(P2012−135260A)
【公開日】平成24年7月19日(2012.7.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−289969(P2010−289969)
【出願日】平成22年12月27日(2010.12.27)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】