説明

カセット式金型装置

【課題】 製品の冷却効率向上及び製品成形部の十分な占有可能面積確保を図り、製品の成形時間短縮及び設計自由度の向上を図る。
【解決手段】 本発明のカセット式金型装置10は、カセット金型21に所要形状の製品成形部22を有する丸入れ子カセット28が着脱可能に装着されている。この丸入れ子カセット28は、熱伝導性の高い材質で円筒状に形成されており、その外周面には製品冷却用流路11から水等の冷却用流体を流通される冷却用流路29が周方向に沿って環状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、カセット金型及びカセットホルダ金型の固定金型に対する可動金型の移動に伴って、例えばコネクタ等の樹脂製品の射出成形を行うカセット式金型装置に関し、詳しくは製品の成形時間の短縮及び設計自由度の向上を図るためのカセット式金型装置の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】従来のカセット式金型装置50は、図5に示したように、所要形状の製品成形部51aを有するカセット金型51がカセットホルダ金型52に着脱可能に装着される。そして、固定金型(図示しない)に対する可動金型を構成するカセット金型51及びカセットホルダ金型52の接近及び離反方向への移動に伴って、図示しないコネクタ等の樹脂製品の成形及び取り出しを行う。このカセット金型51は、少量生産されるコネクタ等に応じてそれぞれ用意され、異なる形状及び大きさのコネクタ等を成形する毎に適宜交換され、カセットホルダ金型52内に装着される。また、カセット金型51には、製品冷却用流路53が設けられ、水等を循環させることにより製品を冷却する。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した従来のカセット式金型装置50は、カセット金型51の冷却用流路53を充実させると、カセット金型51における製品成形部51aの占有可能面積が小さくなり、成形可能な製品の大きさ及び形状に制約が生じる等の製品の設計自由度が小さくなってしまうという問題があった。また、逆にカセット金型51における製品成形部51aの占有可能面積を大きくすると、冷却用流路53の充実が図れず、製品の冷却効率が低下して成形に要する時間が増大するという問題があった。
【0004】本発明は、製品の冷却効率の向上及び製品成形部の十分な占有可能面積の確保を図ることができ、製品の成形時間短縮及び設計自由度の向上を図ることができるカセット式金型装置を提供することを目的としている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる上記課題は、所要形状の製品成形部を有するカセット金型がカセットホルダ金型に着脱可能に装着され、前記カセット金型及び前記カセットホルダ金型の固定金型に対する可動金型の移動に伴って金型成形を行うカセット式金型装置において、前記カセット金型は、少なくとも1個の入れ子カセットが着脱可能に装着され、該入れ子カセットには、前記製品成形部及び冷却用流路が形成されていることを特徴とするカセット式金型装置によって解決することができる。
【0006】また、上記課題は、前記カセット式金型装置において、好ましくは前記入れ子カセットが円筒状であるとともに、前記冷却用流路が前記入れ子カセットの外周面に周方向に沿って形成されていることを特徴とするカセット式金型装置によって解決できる。
【0007】更に、上記課題は、前記カセット式金型装置において、好ましくは前記入れ子カセットが熱伝導性の高い材質からなることを特徴とするカセット式金型装置によって解決できる。
【0008】上記構成のカセット式金型装置によれば、カセット金型は、少なくとも1個の入れ子カセットが着脱可能に装着され、該入れ子カセットには、製品成形部及び冷却用流路が形成されている。これにより、所望の入れ子カセットを共通のカセット金型に装着してから、このカセット金型をカセットホルダ金型に装着することで、金型装置の固定金型及び可動金型の組み立てを容易に行うことができる。また、入れ子カセットに形成された冷却用流路への冷却用流体の流通により、入れ子カセットに形成された製品成形部が高効率に冷却される。従って、入れ子カセットのみを交換することで、共通のカセット金型を使用することができ、カセット金型の汎用性と共にカセット金型及び入れ子カセットの軽量化を図ることができる。よって、製品の冷却効率の向上、製品成形部の十分な占有可能面積の確保による設計自由度の向上、製品の成形時間短縮による生産性の向上及び作業性の向上を図ることができる。
【0009】また、前記入れ子カセットが円筒状であるとともに、前記冷却用流路が前記入れ子カセットの外周面の周方向に沿って形成されているので、流路への冷却用流体の流通に伴って、入れ子カセットの製品成形部が効率良く冷却される。従って、ハイサイクルな生産性の向上を図ることができる。
【0010】更に、前記入れ子カセットが熱伝導性の高い材質からなるので、流路への冷却用流体の流通に伴って、入れ子カセットの製品成形部が一層効率良く冷却される。従って、一層ハイサイクルな生産性の向上を図ることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】以下、本発明のカセット式金型装置の一実施形態を図1乃至図4に基づいて詳細に説明する。図1は本発明のカセット式金型装置の一実施形態を示す概略側面図、図2は図1における可動金型側のカセット金型及びカセットホルダ金型を示す概略平面図、図3R>3は図2における丸入れ子カセットの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図、図4は図2における丸入れ子カセットの別の構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【0012】図1乃至図3に示すように、本実施形態のカセット式金型装置10は、カセット金型20、21をカセットホルダ金型30、31に着脱可能に装着する構成である。このカセットホルダ金型30、31へのカセット金型20、21の装着方向は、可動金型(図1中下側の金型)の移動方向(図1中上下方向)と直交する方向(図2中上下方向)である。前記カセット式金型装置10は、カセット金型20、21をカセットホルダ金型30、31に装着した状態で、カセット金型20、21及びカセットホルダ金型30、31の固定金型(図1中上側の金型)に対して可動金型21、31を接近及び離反させることで、コネクタ等の樹脂製品を射出成形する。
【0013】前記カセット金型20、21には、所要形状の製品成形部22を有する丸入れ子カセット28が、着脱可能(図2中紙面に垂直な方向)に装着される。この丸入れ子カセット28は、例えば、アルミ合金、銅合金等の熱伝導性の高い材質で円筒状に形成されている。図3に示すように丸入れ子カセット28の外周面には、水等の冷却用流体の流路29(以下、冷却用流路29という。)が、図3(b)中上下方向の略中央に周方向に沿って環状に形成されている。この冷却用流路29には、図2に示すようにカセットホルダ金型31からカセット金型21を介して冷却用流体を供給して図中矢印のように循環させる製品冷却用流路11が連結されている。また、丸入れ子カセット28の外周面における冷却用流路29の図3(b)中上部及び下部には、一対のOリング28aが設けられる。各Oリング28aはそれぞれ冷却用流路29のシール材として機能する。
【0014】なお、例えば、丸入れ子カセット28を1組のカセット金型20、21に複数装着し、1組のカセット金型20、21から複数の成形品を取り出すことができるように構成してもよい。また、例えば、1組のカセット金型20、21に、図3に示す丸入れ子カセット28に加えて、図4に示す後述の丸入れ子カセット40を各1個ずつ計2個装着することにより、1組のカセット金型20、21から2個の異なる形状及び大きさの成形品を取り出すこともできる。前記丸入れ子カセット40は、製品成形部22の形状及び大きさが丸入れ子カセット28と異なっており、且つ製品成形部22を形成する部分40aが他の部分40bとは別部材で形成されている。
【0015】前記カセット金型21には、図1に示すようにスライドコア23及び製品押し出し部24が設けられている。このスライドコア23は、製品にアンダーカット部を形成するためのものであり、カセット金型21の図1中上面を摺動可能である。また、前記製品押し出し部24は、可動金型側のカセット金型21の図1中下部に配置されており、製品押し出し用ピン25を押し出し板26の作動に伴って図1中上方に突出させて、製品を丸入れ子カセット28の製品成形部22から外部に押し出す。
【0016】また、可動金型側の前記カセットホルダ金型31には、コア駆動シリンダ32が設けられている。このコア駆動シリンダ32は、カセット金型21がカセットホルダ金型31に装着されるのに伴って、シリンダロッド33を連結機構34を介してスライドコア23の端部に固定された連結ロッド27と連結され、シリンダロッド33の移動によってスライドコア23を図中左右方向に摺動させる。
【0017】また、前記連結機構34は、コア駆動シリンダ32のシリンダロッド33先端(図2中左端)に形成された凹部33a及び凸部33bと、スライドコア23の連結ロッド27先端(図2中右端)に形成された凹部27a及び凸部27bとからなる。この連結機構34の各凹部27a、33aは、カセットホルダ金型31へのカセット金型21の図2中上方向に沿う装着に伴って、各凸部27b、33bを相互に噛み合うように嵌合させる。これにより、連結機構34は、カセットホルダ金型31へのカセット金型21の装着完了状態(図2に示す状態)において、コア駆動シリンダ32とスライドコア23とを連結する。
【0018】また、固定金型側のカセットホルダ金型30には、カセット金型21の製品成形部22に製品成形用の樹脂材を充填するスプルー35が設けられている。カセットホルダ金型30におけるスプルー35の位置は、カセット金型21の製品成形部22を挟んでコア駆動シリンダ32の反対側(図2中左側)であり、コア駆動シリンダ32のシリンダロッド33の軸線上に配置されている。
【0019】次に、本実施形態のカセット式金型装置10の作用について説明する。カセット式金型装置10は、丸入れ子カセット28を着脱可能に装着されたカセット金型21を、カセットホルダ金型31に図2中上方向に沿って装着した状態で、可動金型であるカセット金型21及びカセットホルダ金型31を図1中上方に移動させ、固定金型側のカセット金型20及びカセットホルダ金型30の所定位置まで接近させる。この状態で、図2R>2に示すようにカセット式金型装置10は、スプルー35及びランナー36を介して樹脂材を丸入れ子カセット28内の製品成形部22に充填させる。これにより、製品成形部22内に製品を形成させるとともに、スライドコア23により製品のアンダーカット部が形成される。
【0020】そして、カセット式金型装置10は、製品冷却用流路11から丸入れ子カセット28の冷却用流路29への冷却用流体の流通により、丸入れ子カセット28の製品成形部22を高効率に冷却させる。その後、可動金型側のカセット金型21及びカセットホルダ金型31を図1中下方に再び移動させ、固定金型側のカセット金型20及びカセットホルダ金型30から離反させる。そして、製品押し出し部24を作動させることにより、製品を丸入れ子カセット28の製品成形部22から取り出す。以後、上述と同様の工程を繰り返して、樹脂製品の金型成形を行う。
【0021】従って、前記カセット式金型装置10においては、例えば異なる形状及び大きさの製品を成形する場合、カセット金型20、21を交換することなく、丸入れ子カセット28のみの交換で対応可能である。即ち、製品に対応する形状及び大きさの製品成形部22を有する丸入れ子カセット28に交換することにより、カセット金型20、21を交換する必要がなく、交換作業が短時間で容易に行える。
【0022】上述したように上記実施形態のカセット式金型装置10によれば、カセット金型20、21には、熱伝導性の高い材質で円筒状に形成された丸入れ子カセット28が、着脱可能に装着されており、丸入れ子カセット28の外周面には、周方向に沿って環状の冷却用流路29が形成されている。従って、丸入れ子カセット28に形成された製品成形部22に対して、均一で高効率な冷却を行うことができ、製品の冷却効率を向上させることができるとともに、製品成形部22の占有可能面積を十分に確保することができる。よって、成形に要する時間を短縮することができるとともに、成形可能な製品の大きさ及び形状等に制約が生じることを回避でき、製品の設計自由度を向上させることができる。
【0023】また、製品成形部22を丸入れ子カセット28に設けたので、大きさ及び形状等の異なる製品でも、丸入れ子カセット28のみを交換するだけで所望形状の製品を成形することができ、カセット金型21を共用化することができる。更に、軽量かつ小型に形成できる丸入れ子カセット28の交換のみで済むことにより、交換に要する労力の低減及び所要時間を短縮することができ、異なる製品の成形に効率良く対応することができる。
【0024】
【発明の効果】以上説明したように発明のカセット式金型装置によれば、カセット金型は、少なくとも1個の入れ子カセットが着脱可能に装着され、該入れ子カセットには、製品成形部及び冷却用流路が形成されている。これにより、所望の入れ子カセットを共通のカセット金型に装着してから、このカセット金型をカセットホルダ金型に装着することで、金型装置の固定金型及び可動金型の組み立てを容易に行うことができる。また、入れ子カセットに形成された冷却用流路への冷却用流体の流通により、入れ子カセットに形成された製品成形部が高効率に冷却される。従って、入れ子カセットのみを交換することで、共通のカセット金型を使用することができ、カセット金型の汎用性と共にカセット金型及び入れ子カセットの軽量化を図ることができる。よって、製品の冷却効率の向上、製品成形部の十分な占有可能面積の確保による設計自由度の向上、製品の成形時間短縮による生産性の向上及び作業性の向上を図ることができる。
【0025】また、前記カセット式金型装置において、前記入れ子カセットが円筒状であるとともに、前記冷却用流路が前記入れ子カセットの外周面の周方向に沿って形成されているので、流路への冷却用流体の流通に伴って、入れ子カセットの製品成形部が効率良く冷却される。従って、ハイサイクルな生産性の向上を図ることができる。
【0026】更に、前記カセット式金型装置において、前記入れ子カセットが熱伝導性の高い材質からなるので、流路への冷却用流体の流通に伴って、入れ子カセットの製品成形部が一層効率良く冷却される。従って、一層ハイサイクルな生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のカセット式金型装置の一実施形態を示す概略側面図である。
【図2】図1におけるカセット式金型装置の可動金型側のカセット金型及びカセットホルダ金型を示す概略平面図である。
【図3】図2における丸入れ子カセットの構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面図である。
【図4】図2における丸入れ子カセットの他の構成を示し、(a)は平面図、(b)は断面である。
【図5】従来のカセット式金型装置の可動金型側のカセット金型及びカセットホルダ金型を示す概略平面図である。
【符号の説明】
10 カセット式金型装置
20 カセット金型(固定金型)
21 カセット金型(可動金型)
22 製品成形部
23 スライドコア
24 製品押し出し部
28 丸入れ子カセット(入れ子カセット)
29 冷却用流路
29a Oリング
30 カセットホルダ金型(固定金型)
31 カセットホルダ金型(可動金型)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 所要形状の製品成形部を有するカセット金型がカセットホルダ金型に着脱可能に装着され、前記カセット金型及び前記カセットホルダ金型の固定金型に対する可動金型の移動に伴って金型成形を行うカセット式金型装置において、前記カセット金型は、少なくとも1個の入れ子カセットが着脱可能に装着され、該入れ子カセットには、前記製品成形部及び冷却用流路が形成されていることを特徴とするカセット式金型装置。
【請求項2】 前記入れ子カセットは円筒状であるとともに、前記冷却用流路は前記入れ子カセットの外周面に周方向に沿って形成されていることを特徴とする請求項1記載のカセット式金型装置。
【請求項3】 前記入れ子カセットは熱伝導性の高い材質からなることを特徴とする請求項1又は2記載のカセット式金型装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2002−52573(P2002−52573A)
【公開日】平成14年2月19日(2002.2.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2000−238716(P2000−238716)
【出願日】平成12年8月7日(2000.8.7)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】