説明

カソード活物質として有用な金属化合物の合成方法

【課題】活物質として、少なくとも1つのアルカリ金属と遷移金属(周期律表4〜14に規定された)及びまたは錫、ビスマス鉛のような非遷移金属から選択された成分組成からなる電極活物質の固相反応を行う方法を提供する。
【解決手段】固相反応物質として1つ以上の無機金属化合物および還元性炭素源を含み、還元性炭素を含む還元雰囲気中で反応が行われもので、還元性炭素として、元素状炭素、有機物質またはその混合物を供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバッテリーの電気化学セルに使用する電極を構成する電極活物質の製造方法に関する。特に、本発明は活物質を製造する炭素源と金属化合物の反応、または活物質を生成するための遷移金属の還元を含む方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、リチウムバッテリーは有用で、かつ望ましいエネルギー源になっている。一般的に
、リチウムバッテリーは、電気化学的(電気的活性)活物質を含む1つ以上のリチウム電
気化学セルから製造される。そのようなセルは、典型的に負極、正極、および正極および
負極間に挿入された電解質を含む。定義によれば、負極は放電の際アノード(酸化が生じ
る)として機能する電極であり、これに対し、正極は放電の際カソード(還元が生じる)として機能する電極である。
【0003】
金属リチウムアノードおよび金属カルコゲナイドカソード活物質を含むバッテリーは工業
用および市販用として認められている。
【0004】
いわゆるリチウムイオンバッテリーはよく知られている。リチウムイオンバッテリーは、
リチウム金属カルコゲナイド、リチウム金属酸化物、コークスまたはグラファイトなどの
インサーションアノードを有している。この種の電極は、典型的にセルの中で電気活性対
を生成するためのリチウム含有インサーションカソードとして使用される。結果的に得ら
れたセルは、初期条件で充電されていない。この種のセルが電気化学エネルギーを放出す
るためには、充電されなければならない。充電中、リチウムはリチウム含有電極カソード(正極)から、負極へ移動される。放電中、リチウムは負極から正極へ再び移動される。再充電中、リチウムは再び負極へ移動し再挿入される。したがって、各充電/放電サイクルにおいて、リチウムイオン(L+)は電極間で移動される。そのようなフリー金属種を持たない再充電可能なバッテリーは、再充電可能なイオンバッテリーまたはロッキングチェアバッテリーと呼ばれている。
【0005】
知られている正極活物質に、LiCoO2、LiMn24およびLiNiO2が含まれる。コバルトを含有するリチウム化合物は、中間体が必要とされることから、比較的合成する
には費用がかかり、一方で、リチウムニッケル化合物の可能な合成方法は、比較的複雑で
困難を伴っている。LiMn24などのリチウムマンガン化合物は、一般的に、合成するのに前記物質より経済的で、比較的経済的な正極を得ることができる。
【0006】
残念ながら、全て前記物質は、電気化学セルの電気的活性物質としては欠点がある。カソードに前記物質を採用しているセルは、充電/放電サイクルの繰り返しによって充電容量を著しく低下させる(一般的にサイクル変動と言われる)。さらに、物質の有効な初期容量(アンペアー時間/グラム)は、理論上の容量より少ない。なぜなら、電気化学反応中、1原子単位より少ないリチウムが結合するからである。この初期容量値は、第1サイクル中に減少し、引き続いて行われるサイクル中で更に減少する。LiNiO2においては、セル操作中約0.5原子単位のリチウムだけが可逆的にサイクルさせることができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
容量変動をなくす努力は数多く試されており、例えば、米国特許第4、828、834号、Niagara et al.,に記載されている。しかしながら、現在知られていて、よく使用されているアルカリ遷移金属酸化物化合物は、比較的容量が低いという欠点がある。そのため、セルとして使用する場合、重大な容量減少という欠点を回避することなく、許容できる容量を備えたリチウム含有電極物質を確保することが難しいという課題が残る。
【0008】
リチウムイオン仕様の別の活物質は、常に検討されている。さらに、高品質で、かつ良好な収量のそのような物質を、経済的に、かつ再生可能に合成する方法を提供することが必要とされる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
還元条件において、固相反応を行う方法が提供されている。固相反応物質は、1つ以上の無機金属化合物および還元性炭素源を含む。反応は、還元性炭素を含む還元雰囲気中で行われる。還元性炭素は、元素状炭素、有機物質またはその混合物によって供給される。有機物質は、還元剤として使用できるような炭素を含む分解生成物を生成することができるものの1つである。反応は、反応生成物に実質的に有機物質の共有結合がないように行われる。好ましい実施態様は、固相反応物質はアルカリ金属化合物も含む。
【発明の効果】
【0010】
前記方法の生成物は、リチウムイオンバッテリーのカソード活物質として使用されている。好ましい活物質は、リチウム遷移金属リン酸塩およびリチウム遷移金属酸化物を含む。好ましい実施態様では、反応生成物には、前記活物質の結晶間に親密に混在した炭素粒子が含まれる。そのような生成物は、金属化合物を炭素源と加熱することによって生成することができる。
【0011】
好ましい実施態様は、反応は化学量論的過剰な炭素において行われる。その結果の反応生成物は、高原子パーセント炭素含有の炭素状物質と金属化合物との混合物を含む。有機物質あるいは炭素状物質は反応生成物に実質的に共有結合を形成しないが、炭素状物質は還元金属化合物と緻密に混合される。
【0012】
他の様相において、還元性炭素の存在下におけるアルカリ金属化合物および遷移金属化合物の還元反応は、還元雰囲気中で行われる。還元雰囲気は、水素、メタン、アンモニア、または一酸化炭素のような還元性ガスを含むことができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
遷移金属化合物およびその他の化合物を合成するため、還元方法が提供される。ある様相において、反応生成物はバッテリー活物質またはバッテリー活物質の合成の原料として使用することができる。
【0014】
本発明の活物質は、1つ以上のアルカリ金属および1つ以上のより高い酸化状態に酸化することが可能な金属を含有する。好ましい他の金属は、遷移金属(周期律表の4−11族に定義されている)からなる群、および錫、ビスマスおよび鉛など他の非遷移金属から選択される。活物質は、一工程または複数工程反応によって合成することができる。合成反応の少なくとも1つの工程において、還元性炭素が出発物質として使用される。還元工程においては、1つ以上の金属が酸化状態を還元される。
【0015】
好ましい実施態様は、本発明は無機金属化合物、特に遷移金属化合物の合成方法を提供しており、前記合成方法は;1つ以上の粒状金属化合物および1つ以上の有機物質を含む出発物質を供給する工程;混合物を生成するための出発物質を混合する工程;および反応生成物を生成するため、混合物を十分な温度および時間加熱する工程;を含む。好ましい実施態様では、出発物質の1つ以上の金属は、金属化合物を生成するため加熱中、酸化状態が還元される。ある様相において、金属化合物は遷移金属を含み、別の様相においては、金属化合物は錫などの非遷移元素を含む。
【0016】
金属の還元に関わる合成工程の還元剤は、還元性炭素によって供給される。ある様相では、還元性炭素は、好ましくはグラファイト、アモルファスカーボン、カーボンブラックなどの元素状炭素によって、粒子状で供給される。別の様相では、還元性炭素は有機原料物質、または元素状炭素および有機原料物質の混合物によって供給することができる。有機原料物質は、この明細書中、有機物質とされている。有機物質または有機原料物質は、還元剤として作用することが可能な状態の炭素を含有する分解生成物を生成することができるものである。
【0017】
他の様相では、金属化合物および炭素源の反応は、金属の同時還元なしで行われる。この様相において、前記金属化合物は、所望の生成物の酸化状態と同じ酸化状態で供給される。いずれにしても、熱炭化還元による反応は行われ、炭素粒子は反応生成物の結晶のための核生成サイトを提供することが好ましい。このようにして生成された結晶または粒子は、炭素が存在していない場合に比較して、小寸法であるのが好ましい。小さい粒子寸法は、高品質の活物質を形成するため、より密接な結晶になるように導くことが好ましい。炭素粒子は、また反応生成物全体に分散し、粒子間の良好な伝導性をもった生成物に導くことが好ましい。これは、熱炭化条件のもとに生成された、高品質な活物質に寄与していると信じられている。
【0018】
還元反応は、一般的に実質的に非酸化雰囲気において行われる。随意に、雰囲気は、好ましくは水素のような還元性ガスを含有することができる。
【0019】
ある実施態様では、本発明の活物質は混合金属リン酸塩であり、随意にハロゲンまたは水酸基を含む。そのような混合金属リン酸塩はより高い酸化状態で酸化することが可能な1つ以上の金属(好ましくは遷移金属)を含む。
【0020】
別の実施態様では、前記活物質のリン酸基は、部分的または全体的に他のアニオンによって置換される。そのようなアニオンの非限定例には、ケイ酸塩、硫酸塩、ゲルマン酸塩、アンチモン酸塩、モノフルオロモノリン酸およびジフルオロモノリン酸とともに、前記硫黄類似体が含まれる。例えば、リン酸塩の硫黄類似体は、PO33-、PO223-、POS33-およびPS43-イオンを含む。
【0021】
リン酸塩が他のアニオンによって完全または部分的に置換されたリン酸塩活物質または活物質は、基本一般式
ab(XY4cd
で表すことができ、ここで、
(a)AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、0<a≦8
であり;
(b)Mは高原子価状態に酸化することが可能な少なくとも1つの金属を含む、1つ以上
の金属を含み、1≦b≦3であり;
(c)XY4は、X’O4-xY’x、X’O4-yY’2y、X”S4およびそれらの組み合せからなる群より選択され、ここでX’はP、As、Sb、Si、Ge、V、Sおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、X”はP、As、Sb、Si、V、Geおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、Y’はハロゲン、S、Nおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、 0≦x≦3、0<y≦2および0<c≦3であり;
(d)ZはOH、ハロゲンあるいはそれらの組み合せであり、0≦d≦6であり、
M、X、Y、Z、a、b、c、d、xおよびyは前記化合物の電気的中性を保持するよう
に選択される。
【0022】
好ましい実施態様は、Mは周期律表の4から11族から選択された2以上の遷移金属を含む。他の好ましい実施態様は、MはM’M”を含み、M’は周期律表の4から11族の少なくとも1つの遷移金属であり、またM”は周期律表の2、3、12、13または14族の少なくとも1つの元素である。好ましい実施態様は、c=1の場合のもの、c=2の場合のもの、c=3の場合のものを含む。好ましい実施態様は、a≦1およびc=1の場合のもの、a=2およびc=1の場合のもの、a≧3およびc=3の場合のものを含む。好ましい実施態様は、オリバイン鉱物(ここでは「オリバイン」)に類似した構造を持つもの、ナシコン(NASICON;NA Super Ionic CONductor)物質に類似した構造を持つものを含む。
【0023】
前記一般式において、AはLi(リチウム)、Na(ナトリウム)、K(カリウム)およびその組み合せからなる群から選択される。好ましい実施態様は、AはLiまたはLiとNaとの組み合せ、LiとKとの組み合せ、またはLi、NaおよびKとの組み合せである。別の好ましい実施態様は、AはNaまたはNaとKとの組み合せである。好ましくは「a」は約0.1から約6であり、更に好ましくは約0.2から約6である。c=1の場合、約0.1から約3であるのが好ましく、更に好ましくは約0.2から約2である。好ましい実施態様において、c=1の場合、aは約1より小さい。他の実施態様において、c=1の場合、aは約2である。c=2の場合、aは約0.1から約6であるのが好ましく、更に好ましくは約1から約6である。c=3の場合、aは約0.1から約6であるのが好ましく、更に好ましくは約2から約6、好ましくは約3から6である。
【0024】
Mは高原子価状態に酸化することが可能な少なくとも1つの金属を含む1つ以上の金属を含む。好ましい実施態様では、電極活物質からのアルカリ金属の除去は、Mを含む金属の少なくとも1つの酸化状態が変化によって達成される。前記電極活物質で酸化可能な前記金属の量が、除去されるアルカリ金属の量を決定する。そのような概念は、一般的にこの分野でよく知られている。例えば、米国特許第4、477、541号、Fraioli、1984年10月16日発行、および米国特許第6、136、472号、Barker et al.,2000年10月24日発行で公開されており、両公報ともにここに参考として挙げる。
【0025】
基本一般式Aab(XY4cdを参照すると、除去可能なアルカリ金属の量(a’)は(b’)の量および酸化可能な金属(M)の原子価(VM)の関数として、
a’= b’(ΔVM)、
で示される。 ここで、ΔVMは、活物質中の金属の原子価状態と前記金属が容易に取りうる原子価状態の差である。(酸化状態および原子価状態という用語は、この分野で互換的に使用されている。)例えば、+2の酸化状態の鉄(Fe)を含む活物質の場合、ΔVM=1で、この場合、鉄は+3の酸化状態に酸化される(鉄は、場合によって+4の酸化状態に酸化することができるが)。もしb=2の場合(物質の原子単位当りFe2原子単位)、バッテリーのサイクル中に除去できるアルカリ金属(酸化状態+1)の最大量(a’)は2である(アルカリ金属2原子単位)。もし活物質が+2の酸化状態のマンガン(Mn)を含む場合、ΔVM=2で、この場合、マンガンは+4の酸化状態に酸化される(Mnは、場合によってより高い酸化状態に酸化することができる)。したがって、この例では、バッテリーのサイクル中に活物質の一般式で除去できるアルカリ金属の最大量(a’)は、4原子単位であり、a≧4と仮定される。
【0026】
Mは単一の金属、または2つ以上の金属の組み合わせを含む。Mが元素の組み合わせである実施態様において、下記に示すようにMの全原子価は、生成された活物質が電気的中性になるようなものである必要がある。(物質中の全アニオン種の正電荷は、全カチオン種の負電荷と均衡する)。元素の組合せ(M1、M2・・・Mt)のネット原子価M(VM)は、一般式
M=VM11+VM22+・・・VMtt
で表すことができる。ここでb1+b2+・・・bt=1、およびVM1はM1の酸化状態、VM2はM2の酸化状態、等である。(電極活物質のMのネット原子価およびその他の成分について、以下でさらに検討する。)
【0027】
Mは一般的に、周期律表の2−14族の元素からなる群から選択された金属またはメタロイドである。ここでいう「族」とは現在のIUPAC周期律表で定義されている周期律表の族番号(欄)を示している。例えば、米国特許第6、136、472号、Barker et al.,2000年10月24日発行参照、をここに参考としてあげる。好ましい実施態様は、Mは少なくとも1つ以上の4から11族の遷移金属を含む。別の好ましい実施態様は、MはM’eM”fである金属の混合を含む。この場合、M’は4から11族から選択された1つ以上の遷移金属であり、M”は2、3、12、13、または14族から選択された1つ以上の元素であり、e+f=bである。好ましい実施態様は、0.8≦a≦1.2および0.8≦b≦1.2である。
【0028】
ここで有用な遷移金属は、Ti(チタン)、V(バナジウム)、Cr(クロム)、Mn(マンガン)、Fe(鉄)、Co(コバルト)、Ni(ニッケル)、Cu(銅)、Zr(ジルコニウム)、Nb(ニオブ)、Mo(モリブデン)、Ru(ルテニウム)、Rh(ロジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Cd(カドミウム)、Hf(ハフニウム)、Ta(タンタル)、W(タングステン)、Re(レニウム)、Os(オスミウム)、Ir(イリジウム)、Pt(プラチナ)、Au(金)、Hg(水銀)およびそれらの組合せよりなる群から選択されたものが含まれる。好ましいものは、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cuおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択された、第1列目の遷移属(周期律表の第4周期)である。特に好ましいここで有用な遷移金属は、Fe、Co、Mn、Cu、V、Crおよびその組み合わせが含まれる。好ましい実施態様は、遷移金属はCoおよびFeを含む。ある実施態様では、遷移金属の組み合せが好ましい。そのような遷移金属は、さまざまな酸化状態が可能であるが、ある実施態様では、遷移金属の酸化状態が+2であることが好ましい。
【0029】
Mは非遷移金属およびメタロイドを含む。そのような元素は2族元素、特にBe(ベリウム)、Mg(マグネシウム)、Ca(カルシウム)、Sr(ストロンチウム)、Ba(バリウム)、3族元素、特にSc(スカンジウム)、Y(イットリウム)、およびランタニド、特にLa(ランタン)、Ce(セリウム)、Pr(プラセオジウム)、Nd(ネオジム)、Sm(サマリウム)、12族元素、特にZn(亜鉛)、およびCd(カドミウム)、13族元素、特にB(ホウ素)、Al(アルミニウム)、Ga(ガリウム)、In(インジウム)、Tl(タリウム)、14族元素、特にSi(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、Sn(錫)、およびPb(鉛)、15族元素、特にAs(ヒ素)、Sb(アンチモン)、およびBi(ビスマス)、16族元素、特にTe(テルル)及びそれらの組み合せよりなる群から選択される。好ましい非遷移金属は、2族元素、12族元素、13族元素および14族元素を含む。好ましい実施態様では、酸化状態が+2または+3の非遷移金属である。別の実施態様では、非遷移金属は少なくとも1つの酸化状態が+2の元素と、少なくとも1つの酸化状態が+3の元素を含む。特に好ましい非遷移金属として、Mg、Ca、Zn、Sr、Pb、Cd、Sn、Ba、Be、Alおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されたものである。特に好ましいのは、Mg、Ca、Zn、Ba、Alおよびそれらの組み合わせよりなる群から選択されたものである。
【0030】
ここで更に議論するように、「b」は前記電極活物質の電気的中性を保持するように選択される。好ましい実施態様では、c=1の場合、bは約1から約2、好ましくは約1である。他の好ましい実施態様では、c=2の場合、bは約2から約3、好ましくは約2である。他の好ましい実施態様は、dはゼロ、cは約1、0.8≦a≦1.2および0.8≦b≦1.2である。
【0031】
XY4は、X’O4-xY’x、X’O4-yY’2y、X”S4およびそれらの組み合わせからなる群より選択され、ここでX’はP(リン)、As(ヒ素)、Sb(アンチモン)、Si(ケイ素)、Ge(ゲルマニウム)、S(硫黄)およびそれらの組み合せ、X”はP、As、Sb、Si、Geおよびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施態様では、X’およびX”はP、Siおよびそれらの組み合わせからなる群よりそれぞれ選択される。特に好ましい実施態様では、X’およびX”はPである。Y’はハロゲンであり、F(フッ素)が好ましい。好ましいXY4基は、リン酸、ケイ酸、硫酸、ゲルマン酸、ヒ酸、アンチモン酸、モノフルオロモノリン酸、ジフルオロモノリン酸およびそれらの組み合わせおよび硫黄含有類似基を含むが、これに限定されるものではない。
【0032】
好ましい実施態様では、0<x<3、0<y<4であり、XY4基の酸素(O)の一部がハロゲンで置換される。他の好ましい実施態様では、xおよびyは0である。特に好ましい実施態様では、XY4はX’O4であり、X’は、PあるいはSiであることが好ましく、更にPであることが好ましい。
【0033】
ZはOH、ハロゲンあるいはそれらの組み合わせである。ある実施態様では、「d」はゼロに等しい。他の好ましい実施態様では、dはゼロではなくまたZはOH(水酸基)、F(フッ素)、Cl(塩素)、Br(臭素)、およびそれらの組み合わせからなる群より選択される。好ましい実施態様では、ZはOHである。他の好ましい実施態様では、ZはFまたはFとOH、ClあるいはBrとの組み合わせである。好ましくは、「d」は約0.1から約6、好ましくは約0.2から約6である。c=1である場合、dは好ましくは約0.1から約3、好ましくは約0.2から約2である。好ましい実施態様では、c=1である場合、dは約1である。c=2である場合、dは好ましくは約0.1から約6、好ましくは約1から約6である。c=3である場合、dは好ましくは約0.1から約6、好ましくは約2から約6、好ましくは約3から約6である。
【0034】
M、X、Y、Zおよびa、b、c、d、xおよびyの値は前記電極活物質の電気的中性を保持するように選択される。ここでいう「電気的中性」は、物質中の正電荷種(例えば、MおよびX)の合計が、物質中の負電荷種(例えば、YとZ)の合計に等しい電極活物質の状態である。好ましくは、XY4基は、Xの選択により、−2、−3あるいは−4の電荷を有するアニオンを単位部分として含む。
【0035】
本発明の方法により製造することができる他の種類のバッテリー活物質は、一般式、
abf
で表されるようなアルカリ金属遷移金属酸化物が含まれ、アルカリ金属は、好ましくはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択され、更に好ましくはリチウムである。Mは遷移金属、遷移金属の組み合わせ、または遷移金属および非遷移金属の組み合わせである。添字a、b、およびfはゼロではなく、一般式の電気的中性を保持するように選択される。好ましい実施態様では、遷移金属Mは鉄、ニッケル、コバルト、マンガン、鉄、チタン、ジルコニウム、モリブデンおよびバナジウムからなる群より選択される。
【0036】
一般式Aab(XY4cdの活物質は、含まれる金属種の同時還元を伴い、または伴わずに、出発物質を固相反応で容易に合成することができる。生成物中のa、b、cおよびdの所望の値によって、出発物質はすべての供給源からアルカリ金属Aの“a”モル、すべての供給源から金属Mの“b”モル、すべての供給源からリン酸塩(またはその他のXY4基)の“c”モル、また同じく、すべての供給源を考慮に入れたハロゲン化物および水酸化物Zの“d”モルを含むものから選択される。以下で検討されるとおり、特定の出発物質は、成分A、M、XY4またはZの1種以上の供給源であることができる。他に、1種以上の過剰量の出発物質で反応を行うことができる。そのような場合、生成物の化学量論は、成分A、M、XY4およびZにおける極少の試薬により決定される。このような場合、少なくとも前記出発物質のいくつかが反応生成混合物中に存在することになるため、通常、全ての前記出発物質が正確なモル量であるのが望ましい。
【0037】
同様に、一般式Aabcの活物質は、少なくともすべての供給源からアルカリ金属Aの“a”モルおよび少なくともすべての供給源から金属(金属群)Mの“b”モルを供給する出発物質によって合成される。
【0038】
アルカリ金属源は、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウムあるいはセシウムの塩あるいはイオン性化合物のいかなるものであってもよい。リチウム、ナトリウムおよびカリウム化合物が好ましい。好ましくは、アルカリ金属源は、粉状あるいは粒状で供給される。多くのこのような物質が無機化学分野でよく知られている。非限定的な例示としては、リチウム、ナトリウムおよび/またはカリウムのフッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素塩、亜硫酸塩、亜硫酸水素塩、炭酸塩、重炭酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、リン酸水素アンモニウム塩、リン酸二水素アンモニウム塩、ケイ酸塩、アンチモン酸塩、砒酸塩、ゲルマン酸塩、酸化物、酢酸塩、シュウ酸塩などを含む。上述の化合物の水和物、同様に組み合せも使用できる。特に、前記組み合せは1以上のアルカリ金属を含む可能性があり、このため前記反応で、混合アルカリ金属活物質を生成する。
【0039】
金属M源には、遷移金属、アルカリ土類金属、またはランタニド金属、同様にアルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、錫、鉛、ビスマスなどの非遷移金属のあらゆる塩あるいは化合物が含まれる。化合物の非限定的なものとして、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物、硝酸塩、亜硝酸塩、硫酸塩、硫酸水素、亜硫酸塩、重亜硫酸、炭酸塩、重炭酸塩、硼酸塩、リン酸塩、リン酸水素アンモニウム、リン酸二水素アンモニウム、ケイ酸塩、アンチモン酸塩、ヒ酸、ゲルマン酸塩、酸化物、水酸化物、酢酸塩、蓚酸塩などが含まれる。水和物および金属の組み合わせも使用することができ、複数のアルカリ金属が含まれるものでは、アルカリ金属混合活物質が製造される。以下において議論するように、出発物質中の金属Mは、所望の生成物および予定の酸化あるいは還元条件で要求される酸化状態によって、いかなる酸化状態もとることができる。金属源は、最終反応生成物中の1種以上の金属が、前記反応生成物中より高い酸化状態が可能なものが選択されている。
【0040】
リン酸塩、ハロゲン化物および水酸化物などの、好ましい出発物質アニオン源は、リン酸塩(またはその他のXY4基)、ハロゲン化物および水酸化物の供給源に加え、陽電荷カチオンを含む多くの塩あるいは化合物から供給される。そのようなカチオンには、非限定的なものとして、アルカリ金属、アルカリン金属、遷移金属または他の非遷移金属、またはアンモニウムまたは第4アンモニウムなどの錯カチオンが含まれる。そのような化合物中のリン酸塩アニオンには、リン酸塩、リン酸水素アンモニウム、またはリン酸二水素アンモニウムが含まれる。前記で検討されたアルカリ金属源および金属源のように、リン酸塩、ハロゲン化物および水酸化物出発物質は、好ましくは粒子状または粉末状で供給される。前記のいかなる水和物も使用でき、またそれらの組み合わせも使用できる。
【0041】
前記列挙されたものから明らかなように、出発物質は1つ以上の成分A、M、XY4およびZを供給することができる。本発明のさまざまな実施態様において、例えば、出発物質はアルカリ金属とハロゲン化物、または金属およびリン酸塩の組み合わせで供給されている。例えば、リチウム、ナトリウムまたはカリウムのフッ化物は、バナジウムリン酸塩またはクロミウムリン酸塩のような金属リン酸塩とあるいは金属リン酸塩と金属水酸化物のような金属化合物の混合物と反応することができる。ある実施態様では、出発物質はアルカリ金属、金属およびリン酸塩を含むものが供給される。入手しやすさに依存するが、アルカリ金属A、金属Mおよびリン酸塩(またはその他のXY4基)、およびハロゲン化物/水酸化物Zのいずれの成分を含有する出発物質の選択は、完全に柔軟に行うことができる。各成分を供給する出発物質の組み合わせも使用することもできる。
【0042】
一般に、前記アルカリ金属源出発物質とするため、アニオンはアルカリ金属カチオンと組み合わされあるいは金属M出発物質とするため、金属Mカチオンと組み合わされる。同じく、出発物質のZ成分源を供給するため、あらゆるカチオンとハロゲン化物または水酸化物アニオンとを組み合わせることができる。またあらゆるカチオンが、リン酸塩またはこれに類似する成分のXY4の対イオンとして使用することができる。しかしながら、揮発性の副生成物を形成する対イオンを含む出発物質を選択するのが好ましい。したがって、できればアンモニウム塩、炭酸塩、酸化物、水酸化物等を選択するのが望ましい。これらの対イオンを有する出発物質は、水、アンモニア、および二酸化炭素などの揮発性の副生成物を生成する傾向があり、それらは反応混合物から容易に取り除くことができる。
【0043】
前記のとおり、本発明の活物質Aab(XY4cdは、アルカリ金属Aの組み合わせ、金属Bの組み合わせ、成分Zの組み合わせ、および一般式XY4基の代表としてリン酸基を含むことができる。本発明の別の様相では、リン酸基をいくつか他のXY4で完全、または部分的に置換することができる。それらを、“置換リン酸基”または“変性リン酸塩”と呼ぶ。このようにして、本発明によると、活物質中のXY4基がリン酸基である場合、硫酸塩(SO42-、モノフルオロモノリン酸(PO3F)2-、ジフルオロモノリン酸(PO2F)2-、ケイ酸塩(SiO44-、ヒ酸塩、アンチモン酸塩、バナジン酸塩およびゲルマン酸塩などの基と、完全にまたは部分的に置換することができる。同様に、一部またはすべての酸素が硫黄に置換された前記酸素化アニオンは、例外として硫酸基が完全に硫黄に置換されていない場合を除いて、本発明の活物質中有益である。例えば、チオモノリン酸は、本発明の活物質中のリン酸基の完全置換または部分置換したものとして使用することができる。そのようなチオモノリン酸は、(PO3S)3-、(PO223-、(POS33-および(PS43-などのアニオンが含まれる。それらは、ナトリウム、リチウムまたはカリウム誘導体として簡単に入手することができる。
【0044】
変性リン酸基を含む活物質を合成するには、上述のように、通常、前記リン酸塩化合物を完全に、または部分的に置換アニオン源によって置換する。前記置換は化学量論を基礎に検討される。置換アニオン源を供給する出発物質は、上述のように他の出発物質とともに供給される。変性リン酸基を含む活物質の合成は、上述のように酸化還元を伴わずに、または酸化あるいは還元条件において行われる。リン酸塩化合物の場合のように、変性または置換リン酸基を含む化合物は、前記活物質の他の成分の供給源であることができる。例えば、アルカリ金属および/または金属Mの混合物は、変性リン酸塩化合物の一部であることができる。
【0045】
限定されないモノフルオロモノリン酸源としては、Na2PO3F、K2PO3F、(NH42PO3F・H2O、LiNaPO3F・H2O、LiKPO3F、LiNH4PO3F、NaNH4PO3F、NaK3(PO3F)2およびCaPO3F・2H2Oが含まれる。限定されないジフルオロモノリン酸化合物源の代表的な例としては、NH4PO22、NaPO22、KPO22、Al(PO223およびFe(PO223が含まれる。
【0046】
前記活物質中のリンの一部あるいは全部をケイ素で置換する場合、種々のケイ酸塩あるいは他のケイ素含有化合物を使用することができる。本発明の活物質における有用なケイ素源は、オルソケイ酸、ピロケイ酸、たとえば(Si396-、(Si61812-などのような環状ケイ酸アニオン、および、たとえばLiAl(SiO32のような一般式[(SiO32-nによって示されるピロセンを含む。シリカあるいはSiO2も使用可能である。
【0047】
本発明の活物質を製造するために使用することができる代表的なヒ酸塩化合物は、H3AsO4および[H2AsO4-、[HAsO42-アニオンの塩が含まれる。活物質中のアンチモン酸塩源は、Sb25、MIが酸化状態+1の金属であるMISbO3、MIIIが酸化状態+3の金属であるMIIISbO4およびMIIが酸化状態+2の金属であるMIISb27などアンチモン酸塩含有物質によって供給することができる。その他のアンチモン酸塩の供給源として、Li3SbO4、NH42SbO4のような化合物および[SbO43-アニオンのその他のアルカリ金属および/またはアンモニウム混合塩などの化合物が含まれる。
【0048】
前記活物質中のリンを部分的または完全に硫黄と置換するために用いることが可能な硫酸塩化合物源としては、アルカリ金属および遷移金属の硫酸塩および重硫酸塩、また(NH42Fe(SO42、NH4Fe(SO42などの混合金属硫酸塩が含まれる。最後に、前記活物質のリンを部分的または完全にゲルマニウムで置換したい場合、GeO2のようなゲルマニウム含有化合物を使用することができる。
【0049】
変性リン酸基を含む活物質を製造する場合、最終生成物の変性リン酸基の所望の化学量論を基準として出発物質の化学量論を定め、前述の手順により前記リン酸塩物質と前記出発物質を反応させればよい。当然、他の前記変性または置換リン酸基で部分的にまたは完全にリン酸基を置換する場合も、所望の出発物質の化学量論の再計算が必要である。
【0050】
反応中使用される成分A、M、任意のリン酸塩(または他のXY4基)およびZ源およびこれらに含まれる炭素または有機物質は、反応生成物を生成するために必要な時間および温度で加熱して、固相において一緒に反応させることができる。前記出発物質は、粉末状または粒子状で供給されることが好ましい。粉末は、ボールミル法、乳鉢と乳棒の混合などさまざまな方法によって混合することができる。その後、混合された粉末状の出発物質は、反応混合物が密着されるように、タブレットに圧縮されおよび/またはバインダー物質が投入される。反応混合物は、一般的に、約400℃またはそれ以上の温度で反応生成物が生成されるまで、オーブンで加熱される。しかしながら、活物質中のZが水酸化物である場合、反応生成物に水酸基が結合せず、水として揮発しないように、低い温度で加熱するのが好ましい。反応の模範的な時間および温度は、下記の実施例で示される。
【0051】
出発物質が、反応生成物の中に結合されるための水酸基が含まれる場合、反応温度は約400℃より低いことが好ましく、約250℃またはそれ以下であることがより好ましい。そのような温度を得る1つの方法は、反応を熱水反応によって行うことである。熱水反応では、出発物質は、例えば少量の水のような液体と混合され、加圧式反応容器に装入される。反応温度は、圧力下で液状の水を加熱することによって、また特殊な反応容器を使用することにより制限される。
【0052】
反応は、酸化還元なしで実施することができる。もし反応が酸化還元なしで実施された場合、反応生成物中の金属または混合金属の酸化状態は、出発物質のものと同じである。好ましい実施態様は、反応中酸化還元がない場合、元素状炭素または有機物質の存在下に行われる。好ましくは、そのような条件は、良好な伝導性を備えた微細粒子反応生成物を生じさせる。このような結果は、少なくとも一部、反応生成物全体に緊密に分散された炭素粒子の存在のためと信じられている。
【0053】
反応は、また還元を伴って実施することができ、加熱中酸化状態において1つ以上の金属が還元される。金属Mの還元反応に寄与する還元剤を、反応混合物に含ませることによって、そのままの状態で還元を実施することができる。しかしながら、前記活物質を電極または電気化学セルに使用した場合、好ましくは、前記活物質に悪影響を及ぼさない副生成物を生成するようにする。
【0054】
反応に還元力を付与する還元剤は、他の粒子状の出発物質とともに元素状炭素源を含ませることにより、還元性炭素の状態で供給することができる。好ましい実施態様では、還元力は一酸化炭素または二酸化炭素への同時に行われる炭素の酸化によって与えられる。
【0055】
出発物質金属化合物または化合物群が、元素状の金属状態になるまで完全に還元することなく、1種以上の金属含有出発物質の金属イオンを還元するのに必要な量の炭素と混合される。生成物の質を高めるため、1種以上の過剰量の出発物質(例えば、約5%から10%過剰量)を使用することができる。反応後に残った過剰な炭素は、最終的な電極の構成要素としての導電性成分として機能する。そのような炭素は、生成された活物質と十分に混合されているため、このことは1つの利点となる。したがって、充分過剰な炭素、100%またはそれ以上のオーダー過剰の炭素を、製造工程で使用することができる。化合物生成中に存在する炭素は、原料および生成物中に十分に分散されると考えられている。出発物質中の炭素粒子の存在は、生成結晶の生成のための核サイトも提供している。反応生成物は、炭素粒子上に小さな粒子または生成結晶を含んでいる。このそれぞれの粒子は塊になっている。生成物の導電性を高めることも含め、このことは多くの利点を提供する。
【0056】
他にまたはそれに加えて、還元力は有機物質によって供給することができる。有機物質は、炭素および1種以上の他の元素、好ましくは水素を含むものとして特徴付けられる。有機物質は、反応条件で加熱する場合、一般的に分解生成物を生成する。これを、この明細書では、炭素状物質と言う。理論にとらわれず、炭素状物質の生成につながる代表的な分解工程は、限定されないものとして、ピロリゼイション、炭化、コーキング、乾留を含む。これらの工程名、同様に熱分解という言葉は、明細書中、有機物質を含有する反応混合物を加熱する際に還元剤として機能可能な分解生成物を生成する工程を示すものとして互換的に使用されている。
【0057】
典型的な分解生成物は、炭素状物質を含有する。反応中、少なくとも一部の生成された炭素状物質が還元剤として作用すると考えられている。還元剤として作用する部分は、以下で検討されるように、揮発性の副生成物を生成することができる。生成された揮発性の副生成物は、反応混合物から飛散する傾向にあり、反応生成物中に取り入れられることはない。
【0058】
本発明は、有機原料物質の作用のメカニズムに限定されるものではないが、有機物質の分解から生成される炭素状物質は、前記元素状炭素によって供給されるのと類似した還元力を供給することができると信じられている。例えば、炭素状物質は、反応の温度によって一酸化炭素または二酸化炭素を生成する。もし、反応が還元なしで行われた場合、反応条件下で有機物質は炭素状物質を生成するため分解し、前記炭素状物質は前記反応生成物中に細かく分散される。これは1つの利点となる。
【0059】
還元力を供給するいくつかの有機物質は、非揮発性成分に酸化される。例えば、限定されないものとして、アルコール、ケトン、アルデヒド、エステル、およびカルボン酸およびその無水物などの酸素含有炭素状物質である。そのような非揮発性副生成物および還元剤として関与しない炭素状物質(例えば、化学量論的過剰なもの、または反応しないもの)は、他の反応生成物とともに反応混合物中に残る傾向がある。しかし、重要な阻害にはならない。
【0060】
有機原料物質を加熱することによって製造される炭素状物質は、有機物質に対し、一般的に炭素が濃縮される。炭素状物質は、好ましくは約50から約100原子パーセントまでの炭素を含有する。好ましい実施態様では、炭素状物質は本質的に元素状炭素であり、炭素100原子%に近い。
【0061】
上述のように、前記有機原料物質は還元剤及び/または核サイトとして作用する炭素状分解生成物を生成すると信じられているが、最初に分解しない前記有機物質の一部が還元剤として機能することもある。本発明は、還元工程の正確なメカニズムに限定されるものではない。
【0062】
有機原料物質の反応は、出発物質と加熱を組み合わせることによって実施するのが好ましい。前記出発物質は、上述のように1種以上の前記金属化合物または遷移金属化合物を含む。有機物質の分解は、便宜上、一工程で行うのが好ましい。この実施態様では、還元剤として機能することが可能な分解生成物を生成するため、有機物質は、遷移金属化合物の存在下に分解される。前記還元剤は、還元遷移金属化合物を生成するため、前記遷移金属化合物と反応する。別の実施態様は、有機物質は、分解生成物を生成するため、別工程で分解される。分解生成物は、その後、混合物を生成するため遷移金属化合物と組み合わされる。前記混合物はその後、反応生成物を生成するため、必要な時間および温度で加熱される。
【0063】
有機原料物質は、炭素が豊富な炭素状物質になるような、熱分解または炭化、または他の分解工程を受けることが可能な有機物質であればいかなるものでもよい。そのような原料は、一般的に、炭素と少なくとも1つの他の元素を含むことによって特徴付けられたあらゆる化合物を含む。有機物質は炭素−水素結合が実質的にないようなパーハロ化合物であることができるが、典型的には炭素や水素を含む。ハロゲン、酸素、チッ素、リン、硫黄(これに限定されるものではない)などの他の元素は、分解工程に著しく干渉することがなければ、また還元の妨げとならなければ、有機物質中に存在してもよい。1つの好ましい有機物質は、大部分炭素および水素のコークスである。他の原料は、有機炭化水素、アルコール、エステル、ケトン、アルデヒド、カルボン酸、スルホン酸塩およびエーテルを含むが、これに限定されるものではない。好ましい原料は、芳香環を含む前述のものを含む。特にタール、ピッチ、およびその他の石油製品または留分などの芳香炭化水素が含まれる。ここで使用されている炭化水素は、炭素および水素からなる有機化合物であり、ほとんど他の元素は含んでいない。炭化水素は、いくらかヘテロ原子を有する不純物を含んでいるかもしれない。そのような不純物は、例えば炭化水素の部分酸化、または反応混合物からの炭化水素の不完全な分離、または石油などの自然供給源からのものである。
【0064】
他の有機原料物質は、砂糖および他の炭水化物およびそれらの誘導体やポリマーを含む。ポリマーとして、澱粉、セルロース、およびそれらのエーテルまたはエステル誘導体が含まれるが、これに限定されるものではない。他の誘導体として、以下で記載のとおり、部分還元または部分酸化炭水化物が含まれるが、これに限定されるものではない。加熱によって、炭水化物は容易に炭素および水に分解される。ここで使用される炭水化物とは、D−、L−およびDL−型およびそれらの組み合わせを含み、自然または合成された供給源からの物質が含まれる。
【0065】
本発明で使用される1つの意味では、炭水化物はmおよびnが整数であるような、分子式(C)m(H2O)nとして書くことができる有機物質である。単糖6炭糖または5炭糖は、mおよびnが互いに等しい。分子式C6126の6炭糖の限定されない例として、アロース、アルトース、ブドウ糖、マンノース、グロース、イノース、ガラクトース、タロース、ソルボース、タガトースおよびフラクトースを含む。分子式C5105の5炭糖は、リボース、アラビノースおよびキシロースで代表されるが、これに限定されるものではない。4炭糖は、エリスロースおよびトレオースが含まれ、グリセリンアルデヒドは3炭糖である。他の炭水化物は、一般式C122211の2環糖(2糖)が含まれる。例えば、スクロース、マルトース、ラクトース、トレハロース、ゲンチオビオース、セロビオースおよびメリビオースが含まれるが、これに限定されるものではない。3環(3糖、例えばラフィノース)および高オリゴマーおよびポリマー炭水化物を使用することができる。例として、澱粉およびセルロースが含まれるが、これに限定されるものではない。前記のとおり、十分高温まで加熱されれば、炭水化物は容易に炭素および水に分解する。分解生成物の水は、反応条件下で蒸気になる傾向があり、揮発する。
【0066】
他の物質も、またH2Oと炭素が豊富な物質に容易に分解することができる。そのような物質も、また本発明で使用する“炭水化物”に含まれる。そのような物質は、少し還元された炭水化物、例えばグリセロール、ソルビトール、マンニトール、イジトール、ダルシトール、タリトール、アラビトール、キシリトールおよびアドニトール、また“少し酸化された”炭水化物、例えばグルコン酸、マンノン酸、グルクロン酸、ガラクツロン酸、マンヌロン酸、サッカリン酸、マノサッカリン酸、イドサッカリン酸、粘液酸、タロ粘液酸、およびアロ粘液酸が含まれるが、これらに限定されるものではない。少し酸化された、および少し還元された炭水化物の一般式は、炭水化物のものと類似している。
【0067】
好ましい炭水化物は、スクロースである。反応条件下では、スクロースは約150℃から180℃で溶解する。液状溶解物は出発物質に拡散する傾向がある。約450℃以上の温度において、スクロースおよび他の炭水化物は、分解され、炭素および水を生成する。分解炭素粉末は、大きな表面積および高い反応性をもった、新鮮なアモルファスの微細粒子である。
【0068】
有機原料物質は、また有機ポリマーであってもよい。有機ポリマーは、ポリエチレンおよびポリプロピレン、ブタジエンポリマー、イソプレンポリマー、ビニルアルコールポリマー、フルフリルアルコールポリマー、ポリスチレンポリマー(ポリスチレン、ポリスチレンポリブタジエンなどを含む)のようなポリオレフィン、ジビニルベンゼンポリマー、ナフタレンポリマー、アルデヒドとの反応によって得られたフェノール縮合生成物、ポリアクリロニトリル、ポリビニルアセテート、さらにはセルロース澱粉およびそれらのエステルおよびエーテルを含むが、これらに限定されるのもではない。
【0069】
ある実施態様では、有機原料物質は固体で、粒子状で利用可能である。前記粒子状物質は他の粒子状出発物質と混合され、前記方法により加熱し、反応することができる。
【0070】
他の実施態様では、有機原料物質は液状である。そのような場合、混合物を生成するため、液状原料物質は、他の粒子状出発物質と混合される。前記混合物は加熱され、有機物質は、そこで炭素状物質を生成する。反応は、熱炭化還元により行われる。上述のように、液状原料物質は、有利なことに、前記出発物質のバインダーとして作用し、機能する。
【0071】
還元性炭素は、反応中、化学量論的過剰に使用されることが一般的である。還元性炭素の相対的なモル量を計算するため、重量/炭素原子のグラムモルとして定義された還元性炭素の“当量”重量を使用するのが便利である。カーボンブラック、グラファイトなどの元素状炭素は、当量重量は約12g/当量である。他の有機物質は、当量重量/元素状炭素のグラムモルは高めである。例えば、炭化水素は約14g/当量の当量重量である。炭化水素の例として、脂肪族、脂環族、および芳香族炭化水素、同様にポリマー鎖のほとんどまたは全てが炭素および水素であるポリマーが含まれる。そのようなポリマーは、ポリオレフィン、芳香族ポリマーおよびポリマー(たとえばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリブタジエンなどを含むが、これに限定されるものではない)が含まれる。不飽和の程度によって、当量重量は14より少し高めか低めである。
【0072】
炭素および水素以外の元素をもつ有機物質にとって、反応に使用される化学量論的量の計算を目的とした当量重量は、14より高い。例えば、炭水化物では、30g/当量である。炭水化物の例として、ブドウ糖、フラクトース、およびスクロースなどの糖とともにセルロースや澱粉などのポリマーが含まれる。
【0073】
好ましい実施態様では、前記のとおり還元は還元剤が存在する還元性雰囲気中行われる。ここで使用されている“還元性雰囲気”とは、前記雰囲気中で行われる反応に還元力を供給できるガスまたは混合ガスを意味している。還元性雰囲気は、1種以上のいわゆる還元性ガスを含むのが一般的である。還元性ガスの限定されない例として、水素、一酸化炭素、メタンおよびアンモニアとともにそれらの組み合せが含まれる。還元性雰囲気は、空気や酸素のような酸化性ガスを少量またはまったく含まないことが一般的な特徴である。もし酸化性ガスが還元性雰囲気中に存在する場合、行われる還元工程を著しく阻害しない程度の少量で存在することが好ましい。
【0074】
還元の化学量論は、前記出発成分A、M、PO4(または他のXY4基)およびZの相対的な化学量論量によって選択することができる。前記還元剤を化学量論的に過剰に供給し、もし必要であれば、反応後に過剰分を除去するほうが、容易である。還元性ガスおよび元素状炭素などの還元性炭素を使用する場合、過剰な還元剤は問題を起こすことはない。前者の場合、ガスは揮発性があるため、反応混合物から容易に分離することができ、また後者の場合、反応生成物中の過剰な炭素は、活物質の特性に差し支えない。なぜなら、一般的に本発明の電気化学セルおよびバッテリーに使用する電極物質を生成するために、一般的に活物質に添加されるからである。また都合がよいことに、副生成物である一酸化炭素または二酸化炭素(炭素の場合)または水(水素の場合)は、反応混合物から容易に除去される。
【0075】
本発明は、二工程以上で活物質を製造することを含む。ここで、少なくとも一工程は前記還元条件下において行われる。典型的には、第一工程において、還元金属を含む原料物質は、前記還元方法によって合成される。出発物質は、1種以上の金属および還元性炭素源を含むものによって供給される。出発物質は混合物を生成するため混合され、前記混合物は、反応生成物を生成するため必要な温度および時間、加熱される。出発物質の1種以上の金属は、加熱工程において還元され、反応生成物は還元金属化合物を含む。その後の工程において、アルカリ金属は第一工程の生成物をアルカリ金属化合物と、還元を伴いまたは伴わずに反応させることによって結合することができる。ある実施態様では、第一工程の出発物質はリチウムまたはその他のアルカリ金属を含まず、還元金属化合物にリチウムも他のアルカリ金属も結合されない。他の実施態様は、第一工程の出発物質はリチウムまたはその他のアルカリ金属を含み、リチウムまたはその他のアルカリ金属を原料物質に結合することができる。しかしながら、第一工程において原料に結合されるリチウムまたは他のアルカリ金属の量は、アルカリ金属化合物と原料物質を反応させて結合される次の工程の量よりも少ないことが好ましい。
【0076】
好ましい実施態様は、例えば遷移金属酸化物のような金属酸化物は、第一工程において還元される。非限定的な例として、一般式
MO3+[C]→MO2
に例示されるように、反応中+6金属から+4金属の還元が含まれる。
【0077】
ここでまたは実施例において、記号[C]は還元性炭素源を表している。これは元素状炭素および反応条件下において分解し、還元剤として機能することが可能な分解生成物を生成する有機物質、または元素状炭素と有機物質の組み合わせによって供給することができる。
【0078】
一般式では、Mは+6金属または酸化状態の平均が+6である金属の組み合せを表している。Mは一般的に+6から+4に還元することができる金属であればよい。例として、V、Mo、Mn、W、Ir、Os、およびReが含まれるが、これに限定されるものではない。以下の式は、本発明の還元方法の利点を示している。
MO3+1/2[C]→MoO2+1/2CO2 または
MO3+[C]→MoO2+CO
唯一の副生成物は揮発性のCO2またはCOである。このため化学量論的過剰に還元性炭素を供給することが一般的に望ましい。そのような過剰は、反応を完了させる。反応後に残った過剰還元性炭素は、生成物中に緊密に混合される。バッテリー活物質として使用される物質の場合、一般的に有利である。
【0079】
他の金属酸化物についても、本発明の還元方法において使用することができる。例えば、+5の金属酸化物は、以下の式
25+[C]→M23
によって酸化状態+5から+3に還元することが示されている。Mの例として、VおよびMnが含まれるが、これに限定されるものではない。前記式および以下のいくつかの例において、一酸化炭素または二酸化炭素の副生成物を省き、また還元性炭素の正確な化学量論を省くため、前記式は明らかに不均衡な形式で書かれていることに注意されたい。そのような還元剤化学量論およびその結果生じる副生成物は、選択される反応条件によって変化する。
【0080】
さらに例示すると、非限定例によると、+4金属酸化物は、
2MO2+[C]→M23
によって+3金属酸化物に還元され、
MO2+[C]→MO
の式により、+2金属酸化物に還元される。
【0081】
他の実施態様では、前記酸化物のアニオンの他に、または前記酸化物に加えて原料化合物は製造される。これらの製造は一般的に、金属含有出発物質を還元性炭素源とだけでなく、他のアニオン源を含む少なくとも1種以上の第3の物質とも反応させることを含む。好ましいアニオンは、前記XY4アニオンが含まれる。そのようなアニオンの例として、すでに述べたとおりリン酸塩、ケイ酸塩、硫酸塩、セレン酸塩などを含むが、これに限定されるものではない。例示すると、遷移金属リン酸塩は、同時にリン酸塩源として作用する物質との反応を伴い、遷移金属を還元することによって製造される。例えば、遷移金属リン酸塩は遷移金属酸化物とリン酸塩源を一般式
25+(NH42HPO4+[C]→MPO4
で反応させることによって製造することができる。ここでMは金属または金属の組み合せを表している。ある実施態様では、Mはバナジウムを含む。他のリン酸塩源の例は、リン酸塩、リン酸水素塩、リン酸2水素塩およびリン酸(H3PO4)であるが、これに限定されるものではない。好ましくは、リン酸塩アニオンと結合するカチオンは、反応中揮発性の副生成物(アンモニアまたは水など)を生成するものである。以上で述べたとおり、前記簡略化された不均衡な式では副生成物は与えられていない。
【0082】
金属原料化合物は、本発明の化合物を生成するため、前記活物質の他の成分を含む化合物と次工程で反応する。次工程においては、更に還元条件であってもよいし、還元条件でなくてもよい。好ましい実施態様では、炭素を媒介とした還元は第1工程において行われる。第2工程、または次の工程では、遷移金属含有原料化合物は、前記活物質を生成するため他の出発物質と反応される。好ましい実施態様では、遷移金属含有原料はアルカリ金属化合物(好ましくはリチウム化合物)と、バッテリー活物質として有用なアルカリ金属含有遷移金属化合物を製造するため反応される。
【0083】
原料物質とアルカリ金属化合物の反応の次の工程は、出発物質中の遷移金属の同時還元を伴い、または伴わずに行われる。反応中の還元条件の例示は、アルカリ金属源と還元性炭素の反応による金属酸化物の熱炭化還元であるが、これに限定されるものではない。そのような反応は、例えば、米国出願中の09/974、311で公開されており、ここに参考としてあげる。例えば、リチウムモリブデン化合物は還元における以下の式(不均衡)において、
Li2CO3+MoO2+[C]→LiMoO2
または、還元がない場合、以下の式
Li2CO3+MoO2→Li4Mo38
によって製造することができる。
最初の式では、+4金属(モリブデンに例示されるように)は、+3金属に還元される。第2式では、金属は生成物中で出発物質と同じ酸化状態を保っている。
【0084】
還元を伴うあるいは伴わずにアルカリ金属を遷移金属化合物に結合する他の反応は、米国出願中の10/045、685、2001年11月7日出願、09/969、440、2001年10月2日出願、09/974、311、2001年10月9日出願およびPCT公開公報WO/01/53198、Barker et al.,に記載されており、これらの公報をすべてここに参考としてあげる。例示すると、アルカリ金属化合物は、リン酸塩物質と還元なしで、下記の一般式にしたがい反応することができる。
1.5Li2CO3+M(PO42+(NH43PO4→3LiMPO4
この場合、Mは+2金属または金属の組合せである。Mの例として、Fe、CoおよびNiが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0085】
それにかわるものとして、
1/2Li2CO3+MPO4+[C]→LiMPO4
にしたがい、反応は還元をともない行うことができる。ここでMは金属であり、Mは酸化状態+3から酸化状態+2に還元される。明解にするため、揮発性の副生成物は一般式から省略される。
【0086】
他の実施態様では、アルカリ金属およびフッ化物などのアニオンは、下記の一般式により、還元を伴いまた伴わずに金属化合物に同時に結合される。
還元を伴わない場合;
LiF+MPO4→LiMPO4
還元を伴う場合;
1/2Li2CO3+LiF+MPO4+[C]→Li2MPO4
である。
【0087】
前記反応スキームは、例示のみである。金属化合物にアルカリ金属が結合する他の反応または熱炭化還元により製造された遷移金属化合物は、前記説明および、さらに以下であげられる非限定的な例、および参考としてあげられている公報により当業者にとっては明らかであると思われる。本発明は、還元性炭素または還元雰囲気中の還元性炭素を使用する還元方法を提供している。還元性炭素は、元素状炭素により、反応条件下において還元剤として機能することができる分解生成物を生成するような有機物質により、または元素状炭素と有機物質の組み合わせにより供給される。
【0088】
出発物質の組み合せを反応させる前に、出発物質は混合される。好ましくは、出発物質は粒子状であり、混合の結果として、原料を実質的に均質な粉末混合物にする。ある様相では、原料粉末を例えば、ボールミル法によって乾式混合することができる。その後、混合粉末はペレットに圧縮される。別の様相では、原料粉末はバインダーと混合される。バインダーは、粉末の粒子間の反応を妨げないようなものを選択する。好ましいバインダーは、反応温度より低い温度で分解または蒸発する。非限定的な例は、鉱油、グリセロール、反応が始まる前に炭素残渣を生成するように分解または炭化するポリマー、または反応が始まる前に蒸発するようなものが含まれる。以下に記載されるように、固体粒子を保持するために使用される多くのバインダーは、また炭素原料化合物としても機能する。また別の様相では、混合は揮発性の溶媒を使用して湿式混合物を生成するように行われる。その後、混合された粒子は、粒子間の良好な接触を与えられるようにペレット状に圧縮される。
【0089】
出発物質の混合物は、無機遷移金属化合物反応生成物を、生成するために適した時間および温度で加熱される。出発物質にアルカリ金属化合物が含まれる場合、反応生成物は、アルカリ金属遷移金属化合物である。出発物質に還元剤が含まれる場合、反応生成物は、出発物質の酸化状態に比較して低い酸化状態にある少なくとも1種以上の遷移金属を有する遷移金属化合物である。
【0090】
一般的に、粒子状の出発物質は前記出発物質無機遷移金属化合物の融点より低い温度で加熱される。好ましくは、反応中、少なくとも一部の出発物質が固相状態で残留する。
【0091】
好ましい温度は、約400℃またはそれ以上、または450℃またはそれ以上、または500℃またはそれ以上であり、また一般的に、高めの温度の方がより速く反応が行われる。さまざまな反応が、放出ガスのCOまたはCO2の生成に関与している。高温の反応はCO生成の傾向がある。いくつかの反応は、600℃以上で行われることがより好ましい。650℃以上、または700℃以上、さらには750℃以上であることがより好ましい。多くの反応に適した範囲は、約700から950℃、または約700から800℃である。
【0092】
一般的に、高い温度の反応はCOガスを生成する。そして化学量論は、低い温度でCO2が放出される場合より、より多くの炭素が使用することを要求している。これはCからCO2反応の還元効果が、CからCO反応に比べより大きいからである。CからCO2反応は炭素酸化状態を+4(0から4)に増加させ、またCからCO反応は炭素酸化状態を+2(0から2)に増加させる。ここで高い温度とは一般的に約650℃から約1000℃、また低い温度とは約650℃までを意味する。1200℃より高い温度は、必要と考えられていない。
【0093】
ある様相では、本発明の方法は、ユニークな炭素の還元能力を利用している。そして、電極活物質として使用するに適した構造およびアルカリ金属含量の所望の生成物の生成するように制御する。ある様相では、本発明の方法は、リチウム、金属および酸素を含む生成物を経済的かつ容易に製造することができる。前記利点の少なくとも一部分は、温度の上昇によって生成自由エネルギーが、より減少する酸化物を有する還元剤の炭素によってもたらされる。そのような炭素の酸化物は、高い温度の方が低い温度に比べより安定している。この特徴は、原料金属イオン酸化状態に対し、還元された酸化状態にある1種以上の金属イオンを有する生成物の生成に利用されている。前記方法は、新しい生成物の生成およびすでに知られている生成物を新しい方法で生成するため、炭素の量、時間および温度の効果的な組み合わせを利用している。
【0094】
温度の検討に戻れば、約700℃において炭素から一酸化炭素および炭素から二酸化炭素の両方の反応が生じている。600℃に近いと、CからCO2反応が優勢な反応である。800℃に近いと、CからCO反応が優勢である。CからCO2反応の還元効果の方がより大きいため、結果的に、金属の原子単位の還元に必要な炭素は、少ないといえる。炭素から一酸化炭素の場合、各原子単位の炭素は、基底状態から+2に酸化される。したがって、各金属イオン(M)の原子単位の酸化状態が1還元されることは、炭素の1/2の原子単位が必要とされる。炭素から二酸化炭素反応の場合、各金属イオン(M)の原子単位から酸化状態が1還元されるためには、炭素の1/4の原子単位が化学量論的に必要となる。なぜなら、炭素は基底状態から+4酸化状態になるためである。そのような金属イオンの還元および所望の酸化状態への各単位還元について、同じような関係が適用される。
【0095】
出発物質は、低い温度から毎分約10℃までの上昇比で加熱される。高いまたは低い上昇比を、利用可能な装置、所望の所要時間および他の要素によって選択することもできる。出発物質を、直接、あらかじめ加熱されたオーブンに設置することも可能である。一旦好ましい反応温度にすれば、反応物質(出発物質)を、反応が起こるのに適した反応温度および時間に保持する。典型的には、反応は最終的な反応温度において、数時間行われる。加熱は、好ましくは非酸化性、アルゴンのような不活性ガス中または真空状態、または還元性雰囲気中で実施される。
【0096】
有利なことに、還元雰囲気は必要ないが、もし必要であれば使用することができる。反応後、生成物は好ましくは上昇温度から周囲温度(室温)(例えば、約10℃から約40℃)に冷却される。冷却速度は、すでに論じた加熱速度を含む多くの要因により変化する。例えば、冷却は先の上昇比に似たような速さで行われる。そのような冷却速度は、最終生成物の望ましい構造を得るために適当であることがわかってきた。また、例えば、約100℃/分のオーダーの高い冷却速度を得るために、生成物を水冷することができる。
【0097】
反応は酸素や空気中で行われるが、加熱については、本質的に非酸化性雰囲気中で行われることが好ましい。本質的に非酸化雰囲気であるのは、還元反応を妨げることのないようにするためである。本質的に非酸化雰囲気は、真空状態またはアルゴン、窒素などの不活性ガスの使用により得ることができる。酸化性ガス(酸素または空気)が存在するかもしれないが、それが熱炭化還元を妨げ、または反応生成物の質を低下させるようなことはないので、それほど気にする必要はない。存在するいかなる酸化性ガスも、還元性炭素と反応する傾向があり、反応にかかわる有効な炭素を減らしてしまう傾向がある。ある程度まで、そのような偶発性は予想できるため、出発物質として適当な過剰の還元性炭素を供給するようにする。それにもかかわらず、一般的に熱炭化還元は、極めて少量の酸素ガスを含む雰囲気で行われることが実用上好ましい。
【0098】
有利なことに、還元雰囲気は必要ないが、もし必要であれば使用することができる。例えば、反応は還元性ガスの存在下で行うことができる。還元性ガスの非限定的な例として、水素、メタン、アンモニアおよび一酸化炭素があげられる。都合がよいことに、還元性ガス、好ましくは水素が、化学量論的過剰に供給される。これは、前記加熱工程を水素雰囲気下で行うことによって達成される。還元雰囲気は、純粋な還元性ガス、または他のガスと還元性ガスの組み合わせによって供給することができる。還元雰囲気の非限定的な例として、水素、水素−アルゴン、水素−チッ素、一酸化炭素、一酸化炭素−水素、一酸化炭素−アルゴンなどが含まれる。還元性ガスは、モル過剰で供給される必要はない。試料の大きさ、加熱室の容積、およびガスの過剰など、もし反応に必要な要素があれば、還元性ガスは約0.01雰囲気からスーパー雰囲気の部分的圧力において使用される。
【0099】
本発明によると、前記熱炭化還元は実質的に固相反応であり、反応において生成される生成物の特性は、粒子の大きさおよび粒子と粒子の接触特性に依存する。出発物質の細かい粉末が供給され、また粉末状または粒子状の出発物質は、タブレット化の工程における圧力、またはバインダーをもった組み合わせの方法によって混合物として生成されることが好ましい。そのような混合物は、粒子状の出発物質を密接させるかたちで用いることが好ましい。出発物質が不均質である場合、または粒子が互いにうまく接触しない場合、不均質な生成物、生産量の減少、または生成物の低品質化につながる。熱炭化反応中還元性ガスを含む雰囲気の使用は、より均一の反応を確実にし、より均一な生成物、生産量の増加、および生成物の高品質化につながる。
【0100】
本発明はバッテリーに使用する電極活物質を提供する。ここで使用される“バッテリー”は電気を発生する1以上の電気化学セルを含む装置を指す。それぞれの電気化学セルは、アノード、カソードおよび電解質を含む。2以上の電気化学セルを組み合わせることあるいは“スタック化”することも可能であり、その場合、個々のセルの電圧の合計の電圧を有する多セルバッテリーができる。
【0101】
本発明の電極活物質はアノードまたはカソードあるいはその両方に使用することができる。ここで使用される“カソード”および“アノード”は、バッテリーの放電中に、それぞれ還元および酸化が起こる電極を指す。バッテリーの充電中、酸化および還元のサイトは反対になる。好ましくは、本発明の前記活物質は、カソードとして用いられる。ここで使用される“好ましい”という語は、ある状況下にある利益を示す本発明の実施態様を指す。しかしながら、他の実施態様も、同じあるいは他の状況下で好ましいこともある。加えて、1以上の好ましい実施態様の列挙は他の実施態様が有用でないことを暗示するものではなく、本発明の範囲より他の実施態様を排除することを暗示するものではない。
【0102】
本発明による新規な電極物質、電極およびバッテリーは、当業界に知られているこのような物質および装置に比較し利益があることが見いだされた。このような利益は1以上の下記のことを含む:容量の増加、サイクル容量の増加、可逆性の増加およびコストの低減である。本発明の特定の利益および実施態様はここの詳細な記載により明らかになる。しかしながら、詳細な記載および特定の実施例は、好ましいものの実施態様を示すが、単に例示を目的とするものであり、また本発明の範囲を限定するものではないことを理解しなければならない。
【0103】
上述のように、本発明は、リチウムあるいは他のアルカリ金属、少なくとも1つの繊維金属、リン酸塩あるいは類似の基およびハロゲンあるいは水酸基を含む活物質(ここでは“電極活物質”)を提供する。このような電極活物質は一般式Aab(XY4)cdのものを含む。(ここで、“含む”およびそれと同様な語は、リストに列挙された事項を限定するものではなく、本発明の物質、組成物、装置および方法に有用な他の同様な事項を排除するものではない。)
【0104】
「電極」 本発明は本発明の電極活物質を含む電極も提供する。好ましい実施態様では、本発明の電極は本発明の電極活物質、バインダーおよび電気導電性炭素状物質を含む。
【0105】
好ましい実施態様では、本発明の電極は、
(a)約25%から約95%、更に好ましくは、約50%から約90%の活物質;
(b)約2%から約95%の電気導電性物質(例えばカーボンブラック);および
(c)約3%から約20%の、イオン伝導性を損なうことなく粒状物質を相互に接触状態に保持するように選択されたバインダー;
を含む。(断りがなければ、パーセントは重量パーセントを示す)本発明のカソードは、好ましくは約50%から約90%の活物質、約5%から約30%の電気導電性物質および残部バインダーを含む。本発明のアノードは、好ましくは約50重量%から約95重量%の電気導電性物質(好ましくはグラファイト)を、残部バインダーとともに含む。
【0106】
電気導電性物質で有用なものは、カーボンブラック、グラファイト、粉状ニッケル、金属粒子、導電性ポリマー(例えば、ポリピロールあるいはポリアセチレンのように二重結合の共役ネットワークに特徴付けられるもの)およびそれらの組み合せを含む。ここで有用なバインダーは、好ましくは、ポリマー性物質および結合した多孔性の合成物を形成するために適当な抽出可能な可塑剤を含む。好ましいバインダーは、ハロゲン化炭化水素ポリマー(例えばポリビニリデンクロライドおよびポリ(ジクロロ−1、4−フェニレン)エチレン)、フッ素化ウレタン、フッ素化エポキシド、フッ素化アクリル、ハロゲン化炭化水素ポリマーのコーポリマー、エポキシド、エチレンプロピレンジアミンターモノマー(EPDM)、エチレンプロピレンジアミンターモノマー(EPDM)、ポリビニリデンジフルオライド(PVDF)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、エチレンアクリル酸コーポリマー(EAA)、エチレンビニルアセテートコーポリマー(EVA)、EAA/EVAコーポリマー、PVDF/HFPコーポリマーおよびそれらの組み合せを含む。
【0107】
電極を製造する好ましい方法においては、電極活物質はポリマー性バインダー化合物、溶媒、可塑剤および任意に電気導電性物質とスラリーに混合される。前記活物質スラリーは適切に混合され、次いで、ドクターブレードで基体に薄く塗布される。前記基体は除去可能な基体あるいは電極フィルムの一方の側に取り付けられた集電体(例えば金属製グリッドあるいはメッシュ層)のような機能性基体であることができる。1つの実施態様では、加熱あるいは放射が、前記電極フィルムより固体残渣を残して溶媒を蒸発させるために使用される。前記フィルムを焼結し、カレンダーするため加熱加圧し、前記電極フィルムを更に固くする。他の実施態様では、コーポリマー組成物の自己支持フィルムを形成するため適度の温度で前記フィルムを空気乾燥することもできる。前記基体が除去可能なタイプの場合、電極フィルムより取り除かれ、集電体と積層される。基体がどちらのタイプであっても、バッテリーセルに組み込む前に残留可塑剤を抽出する必要があるかもしれない。
「バッテリー」 本発明のバッテリーは、
(a)本発明の活物質を含む第1の電極;
(b)前記第1の電極の対向電極である第2の電極;
(c)前記電極間の電解質;
を含む。
本発明の電極活物質は前記アノード、カソードおよびその両方に含むことができる。好ましくは、前記電極活物質はカソードに含まれる。
【0108】
第2の対向電極の活物質は本発明の電極活物質と両立可能ないかなる物質も使用することができる。電極活物質がカソードに含まれる場合の1つの実施態様では、この分野でよく知られている種々の両立可能なアノード性物質および炭素、酸化タングステンおよびそれらの組み合せのようなインターカレーションベースのアノードを含むことができる。前記アノード性物質は、例えば、リチウムとアルミニウムの合金、水銀、マンガン、鉄、亜鉛および物質を含む。好ましい実施態様では、前記アノードは、
(a)約0%から約95%、好ましくは約25%から約95%、更に好ましくは約50%から約90%のインサーション物質;
(b)約2%から約95%の電気導電性物質(例えばカーボンブラック);
(c)イオン伝導性を損なうことなく相互に接触状態で粒状物質を保持するように選択された約3%から約20%のバインダー;
を含む。
特に好ましい実施態様では、アノードは、金属酸化物(特に遷移金属酸化物)、金属カルコゲナイドおよびそれらの組み合せよりなる群からの活物質群から選択されたインサーション物質を約50%から約90%含む。他の好ましい実施態様では、前記アノードはインサーション活物質を含まないが、前記電気導電性物質が炭素、グラファイト、コークス、メソカーボンおよびそれらの組み合せを含むインサーションマトリックスを含む。1つの好ましいアノードインサーション物質はコークスあるいはグラファイトのような炭素である。これらは化合物LixCを生成することができる。有用なインサーションアノードは、米国特許第5、700、298号(Shi et al.,1997年12月23日発行);米国特許第5、712、059号、Barker et al.,1998年1月27日発行;米国特許第5、830、602号、Barker et al.,1998年11月3日発行;および、米国特許第6、103、419号、Saidi et al.,2000年8月15日発行;に記載されており、参考としてここに挙げる。
【0109】
前記アノードが電極活物質を含む1つの実施態様では、前記カソードは、好ましくは:
(a)約25%から約95%、更に好ましくは約50%から約90%の活物質;
(b)約2%から約95%の電気導電性物質(例えばカーボンブラック);
(c)イオン伝導性を損なうことなく相互に接触状態で粒状物質を保持するように選択された約3%から約20%のバインダー;
を含む。
このようなカソードに有用な活物質は、本発明の電極活物質、同様に金属酸化物(特に遷移金属酸化物)、金属カルコゲナイドおよびそれらの組み合せを含む。他の活物質は、例えばLiCoO2、LiNiO2のようなリチウム化遷移金属酸化物およびLiCo1-mNim2(ここで0<m<1)のような混合遷移金属酸化物を含む。他の好ましい活物質は、LiMn24の構造に例示されるリチウム化スピネル活物質および米国特許第6、183、718号、Barker et al.,2001年2月6日発行;に記載された表面処理スピネルを含む。前記活物質の2以上のいかなる組み合せも使用することができる。前記カソードは、任意に更に、米国特許第5、869、207号、1999年2月9日発行;(参考としてここに挙げる。)に記載された電極劣化を防止するための基礎化合物を含むことができる。
【0110】
本発明のバッテリーは適当な電解質を含む。この電解質は前記カソードとアノード間のイオンの移動を提供する。前記電解質は、好ましくは、高いイオン伝導性を示し、同様に貯蔵中に自己放電を生じないように絶縁性を有している。前記電解質は液体あるいは固体のいずれでもよい。好ましい固体電解質はイオン伝導性媒体を含むポリマー性マトリックスを含む。好ましい液体電解質は、イオン性伝導液体を生成するアルカリ金属と溶媒を含む。
【0111】
1つの好ましい実施態様では固体ポリマー性電解質である。この電解質は有機あるいは無機モノマー(あるいはその一部がポリマー)を重合して生成された電極融和性物質のポリマー性マトリックスを含み、電解質の他の成分と組み合わされて使用する場合、固体電解質になる。適当な固体ポリマー性マトリックスは、この分野で知られているものを含む。また、有機ポリマーより生成された固体マトリックス、無機ポリマーあるいはモノマーおよび固体マトリックス形成モノマーの部分ポリマーから形成された固体マトリックスを含む。
【0112】
ポリマー性電解質マトリックスは、塩、典型的には無機塩を含む。前記無機塩は溶媒によって前記マトリックス中に均一に分散する。前記溶媒は、好ましくは、電解質に無機イオン塩を溶解する目的で添加された低分子量有機溶媒である。前記溶媒は、相対的に非揮発性で、非プロトン性で、割合に極性溶媒であるいかなるものも使用できる。たとえば、炭酸ジメチル(DMC)、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸ジプロピル(DPC)、炭酸エチルメチル(EMC)、炭酸ブチレン、γ−ブチロラクトン、トリグリム、テトラグリム、ラクトン、エステル、ジメチルスルホキシド、ジオキソラン、スルホランおよびそれらの組み合せを使用することができる。好ましい溶媒は、EC/DMC、EC/DEC、EC/DPCおよびEC/EMCを含む。好ましくは、無機イオン塩はリチウムあるいはナトリウム塩であり、たとえばLiAsF6、LiPF6、LiClO4、LiB(C65)4、LiAlCl4、LiBrおよびこれらの組み合せであり、毒性の低いものが好ましい。塩含量は、好ましくは約5%から約65%である、好ましくは約8%から約35%である。好ましい実施態様は、EC:DMC:LiPF6の重量比60:30:10の混合物である。有用な電解質組成物は、米国特許第5、418、091号(Gozdz et al.,1995年5月23日発行);米国特許第5、508、130号(Golovin、1996年4月16日発行);米国特許第5、541、020、号(Golovin et al.,1996年7月30日発行);米国特許第5、620、810号(Golovin et al.,1997年4月15日発行);米国特許第5、643、695号(Barker et al.,1997年7月1日発行);米国特許第5、712、059号(Barker et al.,1997年1月27日発行);米国特許第5、851、504号(Barker et al.,1998年12月22日発行);米国特許第6、020、087号(Gao、2001年2月1日発行);および米国特許第6、103、419号(Saidi et al.,2000年8月15日発行)に記載されており、参考としてここに挙げる。
【0113】
加えて、電解質はセパレータを含み、あるいはセパレータ膜で囲まれている。前記セパレータは、短絡を防ぐため電極間の電荷の物理的分離を行うと同時に前記膜を介してイオンの移動を可能にする。好ましくは、前記セパレータは、制御できない反応のため生じるバッテリー内の昇温を防止可能なものであるのが好ましい。好ましくは、更に、制御できない反応を防止する大きな抵抗力を提供し、前記高温を低下させるものがよい。好ましい実施態様では、電解質のポリマー性マトリックスは、付随的なポリマー(セパレータ)を含みあるいはそれ自体が前記アノードとカソード間に必要な物理的な分離を行うセパレータの作用を行う独特なポリマー性マトリックスを含む。
【0114】
好ましい電解質セパレータフィルムは、好ましいヒュームドシリカ各1部に対し約2部のポリマーを含む。導電性溶媒は多くの適当な溶媒および塩を含む。望ましい溶媒および塩は、米国特許5、643、695号(Barker et al.,1997年7月1日発行)、米国特許5、418、091号(Gozdz et al.,1995年5月23日発行)に記載され、参考にここに示す。1つの例はEC:DMC:LiPF6の重量比60:30:10の混合物である。
【0115】
セパレータ膜成分は、一般にポリマー性であり、コーポリマーを含む組成物から製造される。好ましい組成物は75から92%のフッ化ビニリデンと8から25%のヘキサフルオロプロピレンコーポリマー(商業的にAtochem North AmericaよりKynar FLEXとして入手可能)および有機溶媒可塑剤との組成物である。このようなコーポリマー組成物はまた、電極膜成分を製造にとっても、好ましい。次工程の積層界面適合性を向上させるからである。可塑性溶媒は、たとえば炭酸プロピレンあるいは炭酸エチレン、同様にこれらの化合物の組み合せのような電解質塩用の溶媒として使用される種々の有機化合物の1つであることができる。高沸点可塑剤化合物、たとえばジブチルフタレート、ジメチルフタレート、ジエチルフタレートおよびtrisブトキシホスフェートが好ましい。無機充填剤付加物、たとえばヒュームドアルミナ、シラン化ヒュームドシリカを物理的強度およびセパレータ膜の融解粘度を向上させるために使用することができる。また、いくつかの組成物においては、電解質溶液の吸収レベルを増加させるために使用することができる。
【0116】
好ましいバッテリーは、アノード層、カソード層および前記アノード層とカソード層との間の電解質/セパレータを含む積層セル構造を含む。前記アノードおよびカソード層は集電体を含む。好ましい集電体は、好ましくはオープンメッシュ形状の銅集電体ホイルである。タブおよび集電体の1種では、前記集電体は外部集電体タブに接続している。このような構造は、たとえば米国特許第4、925、752号(Fauteux et al.,1990年5月15日発行)、米国特許第5、011、501号(Shackle et al.,1991年4月30日発行)および米国特許第5、326、653号(Chang、1994年7月5日発行)に記載されており、参考としてここに挙げる。多電気化学セルを含むバッテリーの実施態様においては、好ましくは複数の前記アノードタブが一緒に溶接されており、ニッケルリードに接続されている。前記カソードタブは同様に溶接されており、溶接リードに接続されている。これによってそれぞれのリードは外部負荷用の分極アクセスポイントを形成している。
【0117】
集合セル構造の積層は慣用的方法で、すなわち金属プレート間で約120℃から160℃の温度で圧縮することにより行われる。積層に続き、前記バッテリーセル物質は可塑剤を保持したまま、あるいは選択的に低沸点溶媒で可塑剤を抽出した乾燥シートとして保存される。可塑剤抽出溶媒は限定されるものではなく、メタノールあるいはエーテルがしばしば使用される。
【0118】
好ましい実施態様において、電極膜はポリマー性バインダーマトリックスに分散された電極活物質(たとえば、炭素あるいはグラファイトあるいはインサーション化合物のようなインサーション物質)を含む。前記電解質/セパレータフィルム膜は、好ましくは可塑化コーポリマーであり、それはポリマー性セパレータおよび適当なイオン移動用の電解質を含む。電解質/セパレータは電極成分上に設けられ、ポリマー性バインダーマトリックス中の微細なリチウムインサーション化合物を含む正極膜で被われている。前記アルミニウム集電体ホイルあるいはグリッドが設けられ、前記集合セルを完成する。保護包装用物質で前記セルを被い、空気および湿気の浸入を防止する。
【0119】
他の実施態様において、多セルバッテリー構造は、銅集電体、負極、電解質/セパレータ、正極およびアルミニウム集電体で製造できる。集電体成分のタブはバッテリー構造用のそれぞれの端子を形成する。
【0120】
リチウムイオンバッテリーの好ましい実施態様では、アルミニウムホイルあるいはグリッドの集電体層は、インサーション電極組成物の分散した被覆層として別個に製造された正極フィルムあるいは膜で被われている。これには、コーポリマーマトリックス溶液中の粉体状の本発明による活物質のようなインサーション化合物が好ましい。前記コーポリマーマトリックス溶液は正極を形成するため乾燥される。電解質/セパレータ膜は、VdF:HFPコーポリマーを含む溶液および可塑剤溶媒を含む組成物の乾燥被覆として形成され、次いで正極フィルム上に被覆される。粉体状炭素あるいは他の負極物質をVdF:HFPコーポリマーマトリックス溶液に分散させたものの乾燥被覆である負極膜は、同様に前記セパレータ膜層に被覆される。銅集電体ホイルあるいはグリッドを負極層上に設け、セル構造を完成させる。したがって、VdF:HFPコーポリマー組成物は、全ての主なセル成分の、すなわち正極フィルム、負極フィルムおよび電解質/セパレータのバインダーとして使用される。構造成分は可塑化コーポリマーマトリックス電極および電極成分間、集電体グリッドに熱融着結合を形成するように、圧力下に加熱され、これによって、セル成分の効果的な積層が形成される。これにより、基本的に均一で柔軟なバッテリーセル構造を形成する。
【0121】
有用な電極、電解質および他の物質は、米国特許第4、668、595号、Yoshino et al.,1987年5月26日発行;米国特許第4、792、504号、Schwab et al.,1998年12月20日発行;米国特許第4、830、939号、Lee et al.,1989年5月16日発行;米国特許第4、935、317号、Fauteaux et al.,1980年6月19日発行;米国特許第4、990、413号、Lee et al.,1991年2月5日発行;米国特許第5、037、712号、Shackle et al.,1991年8月6日発行;米国特許第5、262、253号、Golovin、1993年11月16日発行;米国特許第5、300、373号、Shackle、1994年4月5日発行;米国特許第5、399、447号、Chaloner−Gill、et al.,1995年3月21日発行;米国特許第5、411、820号、Chaloner−Gill、1995年5月2日発行;米国特許第5、435、054号、Tonder et al.,1995年7月25日発行;米国特許第5、463、179号、Chaloner−Gill et al.,1995年10月31日発行;米国特許第5、482、795号、Chaloner−Gill、1996年1月9日発行;米国特許第5、660、948号、Barker、1995年9月16日発行;および米国特許第6、306、215号、Larkin、2001年10月23日発行に記載されており、ここに参考として挙げる。好ましい電解質マトリックスはVdF:HFPを含む有機ポリマーを含む。VdF:HFPを使用したセルのキャスティング、積層、作製の例は米国特許第5、418、091号、Gozdz et al.,1995年5月23日発行;米国特許第5、460、904号、Gozdz et al.,1995年10月24日発行;米国特許第5、456、000号、Gozdz et al.,1995年10月10日発行;および米国特許第5、540、741号、Gozdz et al.,1996年7月30日発行;に記載されており、参考としてここに挙げる。
【0122】
電気化学セル構造は、典型的には電解質相によって支配される。一般的に液体電解質バッテリーは、内部液体が漏洩しないように薄い保護カバーを備えた円筒状である。液体電解質バッテリーは固体電解質バッテリーに比較して、液相および大きなシールカバーのため、大型になる傾向がある。固体電解質バッテリーは小さくすることが可能であり、薄いフィルムに形成することが可能である。この特性は、前記バッテリーを形作る場合、組み込む装置構造を形成する場合、大きな柔軟性を可能にする。固相ポリマー電解質セルは平坦なシートに形成でき、あるいは準角柱状(prismatic)(長方形状)包装に形成でき、デザインを行う場合、電気的装置に残存する空間に装着できるように変形可能である。
【0123】
本発明の様相は、上述の好ましい実施態様について記載されている。以下に実施例を記載するが、これに限定されるものではない。一般に、還元性炭素は、実施例の反応スキーム中では符号[C]で示されている。それぞれの実施例で、使用された粒状還元性炭素は工程中の工程についての記載によって明示される。
【実施例1】
【0124】
リチウム源としてLi2CO3を使用し、水素中でMoO3を熱炭化還元し、LiMoO2を製造する。
反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)
全体の反応スキームは下記の通りである。
0.5Li2CO3+1.0MoO3+1.5[C]→
LiMoO2+0.5CO2+1.5CO
物質:
ここで、[C]は元素状炭素あるいは有機原料物質の当量を示す。
0.5g−モルLi2CO3は36.95gと等価である。
1.0g−モルMoO3は143.94gと等価である。
1.5g−モル[C]は18.00gの元素状炭素と等価である。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。
方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素雰囲気中、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例2】
【0125】
リチウム源としてLiOH・H2Oを使用し、MoO3を直接熱炭化還元する。
反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)
全体の反応スキームは下記の通りである。
1.0LiOH・H2O+1.0MoO3+1.5[C]→
LiMoO2+1.5H2O+1.5CO
1.0g−モルLiOH・H2Oは41.96gと等価である。
1.0g−モルMoO3は143.94gと等価である。
1.5g−モル[C]は約21gのポリスチレン−ポリブタジエンによって供給された。過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。
方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)不活性雰囲気中(N2、Arあるいは真空)、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例3】
【0126】
リチウム源としてLi2CO3を使用し、MoO3を直接熱炭化還元し、LixMoO2(0<x<2)(たとえばLi0.74MoO2あるいはLi0.85MoO2など)を製造する。
反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)
一般的反応:
x/2Li2CO3+1.0MoO3+3x/2[C]→
LixMoO2+3x/2CO+x/2CO2
x/2g−モルLi2CO3は(x/2に73.89を掛けた)gと等価である。
1.0g−モルMoO3は143.94gと等価である。
3x/2g−モルCは炭化水素(例えばコールタール)14gに3x/2を掛けて供給した。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。
方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)不活性雰囲気中(N2、Arあるいは真空)、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例4】
【0127】
酸化モリブデン(VI)から酸化モリブデンリチウム(III)の二段階合成。
1段階:酸化モリブデン(VI)からMoO2を製造。

反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)
反応スキームは下記の通りである。

1.0MoO3+1.0C→MoO2+1.0CO

1.0g−モルMoO3は143.94gと等価である。
1.0g−モルCは12gの元素状炭素と等価である。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。
方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素雰囲気中、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)ベンチトップに移す。MoO2は空気感応性ではない。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
2段階:1段階で製造されたMoO2とLi2CO3を使用し、LiMoO2を製造する。

反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)
全体の反応スキームは下記の通りである。

5Li2CO3+1.0MoO2+0.5C→
LiMoO2+0.5CO2+0.5CO

0.5g−モルLi2CO3は36.95gと等価である。
1.0g−モルMoO2は127.94gと等価である。
0.5g−モルCは6.00gと等価である。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。
方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)不活性雰囲気中(N2、Arあるいは真空)、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例5】
【0128】
リチウム源としてLi2CO3を使用し、MoO2の熱炭化還元により、MoO3からMoO2への熱炭化還元を行い、LixMoO2を製造する。
1段階:MoO2の製造
MoO2は、実施例4の1段階目によってMoO3の熱炭化還元によって製造される。
2段階:Li2CO3を使用するLixMoO2の製造
例えば、Li0.74MoO2およびLi0.85MoO2がこの方法により合成される。
反応仮想C → CO反応(たとえば>650℃)

反応:
x/2Li2CO3+1.0MoO2+x/2[C]→
LixMoO2+x/2CO2+x/2CO

x/2g−モルLi2CO3は(x/2に73.89を掛けた)gと等価である。
1.0g−モルMoO2は127.94gと等価である。
x/2g−モルCは元素状炭素の(x/2に12を掛けた)gと等価である。
元素状炭素の代わりに、他の有機原料を使用することができる。この場合、原料の炭素原子に対し僅かに高い当量重量を考慮する。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。

方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素雰囲気中、650〜950℃の温度で、速度1〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例6】
【0129】
酸化モリブデン(VI)から酸化モリブデンテトラリチウム(IV)の生成。
反応仮想[C]→CO反応(たとえば>650℃)
全体の反応スキームは下記の通りである。

2.0Li2CO3+3.0MoO3+3.0[C]→
Li4Mo38+2.0CO2+3.0CO

2.0g−モルLi2CO3は221.67gと等価である。
3.0g−モルMoO3は431.82gと等価である。
3.0g−モルCは約42gの炭化水素原料、例えばポリイソプレンゴムによって供給される。
過剰の炭素、典型的には0から100%質量過剰が用いられる。

方法:
(a)上記のモル比で粉体を予備混合する。
(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)不活性雰囲気中(N2、Arあるいは真空)、650〜950℃の温度で、速度1
〜5℃/分でペレットを加熱する。
(d)所望の温度で2〜8時間保持する。
(e)速度1〜5℃/分で室温に冷却する。
(f)炉の温度が<25℃になったときに、炉から取り出す。
(g)不活性雰囲気(例えばArグローブボックス)に移す。これらの物質は、一般的に空気感応性である。
(h)粉末化する。
(i)典型的には、再ペレット化し、上記の工程(c)から(h)を繰り返す。
【実施例7】
【0130】
リン酸鉄(III)からリン酸鉄リチウム(II)
全体の反応は下記の通りである。

FePO4+0.5Li2CO3+0.5[C]→
LiFePO4+0.5CO2+0.5CO

下記の工程が行われる。
(a)所定モル比で反応剤をボールミルを使用し予備混合する。例示として:

1モルFePO4 150.82g
0.5モルLi2CO3 36.95g
1.0モル(100%過剰)元素状炭素 12g

(b)(a)の粉状混合物をペレット化する。
(c)水素含有雰囲気中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。水素雰囲気中で、750℃で8時間保持する。
(d)室温に冷却する。
(e)ペレットを粉状化する。
【実施例8】
【0131】
実施例1の反応を、12gの元素状炭素の代わりに14gのポリブタジエンゴムを使用して行う。
【実施例9】
【0132】
酸化鉄(III)からリン酸鉄リチウム(II)を製造する。
一般的スキームは下記の通りである。

0.5Fe23+0.5Li2CO3+(NH42HPO4+0.5[C]→
LiFePO4+0.5CO2+2NH3+3/2H2O+0.5CO

(a)下記のモル比で粉体を予備混合する。

0.5モルFe23 79.85g
0.5モルLi2CO3 36.95g
1モル(NH42HPO4 132.06g
1当量(100%過剰)ポリスチレン 14g

(b)混合物をペレット化する。
(c)不活性ガス流雰囲気(例えばアルゴン)中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。アルゴン中で、750℃で8時間保持する。
(d)アルゴン中で2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)粉体化する。
【実施例10】
【0133】
実施例3の反応を、不活性ガス流雰囲気を水素雰囲気に変えて行い、リン酸鉄リチウム(II)を製造する。
【実施例11】
【0134】
酸化鉄(III)からリン酸鉄リチウム(II)を2段階で製造する。

段階1 リン酸鉄(II)の炭素熱反応による製造。
全体の反応スキームは下記の通りである。

3/2Fe23+2(NH42HPO4+3/2[C]→
Fe3(PO42+3/2CO+4NH3+5/2H2

(a)下記の割合で反応剤を予備混合する。

3/2モルFe23 239.54g
2モル(NH42HPO4 264.12g
3モル炭素(100%過剰) 36g

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素含有雰囲気中で、前記ペレットを2℃/分の速度で800℃に加熱する。水素雰囲気中で、750℃で8時間保持する。
(d)室温に冷却する。
(e)ペレットを粉状化する。

段階2 リン酸鉄(III)からリン酸鉄リチウム(II)を製造する。
全体の反応スキームは下記の通りである。

Li3PO4+Fe3(PO42→3LiFePO4

(a)下記の割合で反応剤を予備混合する。

1モルLi3PO4 115.79g
1モルFe3(PO42 357.48g

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)不活性ガス流雰囲気(例えばアルゴン)中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。アルゴン中で、750℃で8時間保持する。
(d)アルゴン中で2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)粉体化する。
【実施例12】
【0135】
リン酸鉄(III)よりリン酸マグネシウム鉄リチウム(II)を製造する。
全体の反応スキームは下記のように記載できる。

0.50Li2CO3+0.9FePO4+0.1Mg(OH)2
0.1(NH42HPO4+0.45[C]→
LiFe0.9Mg0.1PO4+0.5CO2+0.45CO+0.2NH3
0.25H2

(a)下記の割合で反応剤を予備混合する。

0.50モルLi2CO3 36.95g
0.90モルFePO4 135.74g
0.10モルMg(OH)2 5.83g
0.10モル(NH42HPO4 1.32g
0.90モル炭素(100%過剰) 10.8g

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素含有雰囲気中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。水素雰囲気中で、750℃で8時間保持する。
(d)2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)ペレットを粉状化する。
【実施例13】
【0136】
酸化鉄(III)よりリン酸マグネシウム鉄リチウム(II)を製造する。
全体の反応スキームは下記のように記載できる。

0.50Li2CO3+0.45Fe23+0.10Mg(OH)2
(NH42HPO4+0.45[C]→
LiFe0.9Mg0.1PO4+0.5CO2+0.45CO+2NH3
1.6H2

(a)下記の割合で反応剤を予備混合する。

0.50モルLi2CO3 36.95g
0.45モルFe23 71.86g
0.10モルMg(OH)2 5.83g
1.00モル(NH42HPO4 132.06g
0.90モル炭素(100%過剰) 10.8g

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素含有雰囲気中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。水素雰囲気中で、750℃で8時間保持する。
(d)2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)ペレットを粉状化する。
【実施例14】
【0137】
酸化鉄(III)からリン酸カルシウム鉄リチウム(II)を製造する。

全体の反応スキームは下記の通りである。

0.50Li2CO3+0.45Fe23+0.1Ca(OH)2
(NH42HPO4+0.45[C]→
LiFe0.9Ca0.1PO4+0.5CO2+0.45CO+2NH3
1.6H2

(a)下記の割合で反応剤を予備混合する。

0.50モルLi2CO3 36.95g
0.45モルFe23 71.86g
0.10モルCa(OH)2 132.06g
0.9当量のポリエチレン12.6g(100%過剰)

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)アルゴン雰囲気中で、前記ペレットを2℃/分の速度で750℃に加熱する。アルゴン雰囲気中で、750℃で8時間保持する。
(d)2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)ペレットを粉状化する。
【実施例15】
【0138】
γ−LiV25の生成。

25+0.5Li2CO3+0.25C→LiV25+CO2

(a)適当な媒体を備えたボールミルで、V25、Li2CO3およびシャウイニガンブラック(Shawinigan Black)(炭素)と予備混合する。上述の反応量より25重量%過剰の炭素を使用する。

必要量:
1モルV25 181.88g
0.5モルLi2CO3 36.95g
0.25モル炭素 3.00g
(しかしながら、25%過剰の炭素を使用した→3.75g)

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)水素含有雰囲気中で、前記ペレットを約2℃/分の加熱速度で600℃に加熱する。600℃で約60分保持する。
(d)アルゴン中で約2℃/分の速度で室温に冷却する。
(e)乳鉢と乳棒を使用してペレットを粉状化する。
【実施例16】
【0139】
酸化バナジウム(V)からのリン酸バナジウムトリリチウム(III)の生成。
全体の反応スキームは下記の通りである。

25+3/2Li2CO3+3(NH42HPO4+[C]→
Li32(PO43+2CO+3/2CO2+6NH3+9/2H2

(a)適当な媒体を備えたボールミルで予備混合する。

1モルV25 181.88g
3/2モルLi2CO3 110.84g
3モル(NH42HPO4 396.18g
2当量(100%過剰)のポリブタジエン 28g

(b)粉状混合物をペレット化する。
(c)CO2をLi2CO3から除去するため、およびNH3、H2Oを除去するため、前記ペレットを2℃/分の速度で300℃に加熱する。加熱は不活性雰囲気(たとえばアルゴン)中で行われる。室温に冷却する。
(d)粉体化および再ペレット化する。
(e)ペレットを不活性雰囲気中で2℃/分の速度で850℃に加熱する。8時間、850℃に保持する。
(f)アルゴン中で2℃/分の速度で室温に冷却する。
(g)粉体化する。
【実施例17】
【0140】
還元性炭素源としてのサッカロースで酸化鉄(III)をその場で還元する。

反応スキームは(仮想C→CO2反応)である。

122211+Fe23+2LiH2PO4
2LiFePO4+10.5C+11H2O+1.5CO2

出発物質を所定のモル比で乾燥粉体混合(ボールミルのような)あるいは湿式混合(スプレイ乾燥のような)する。前記出発物質混合物を450℃以上で4時間加熱する。分解物よりの過剰炭素が反応生成物中に微細に分散している。
【実施例18】
【0141】
酸化鉄(II)からのリン酸マグネシウム鉄リチウム(II)の製造。
反応スキームは下記のように記載することができる。

0.5Li2CO3+0.9FeO+0.1Mg(OH)2
(NH42HPO4
LiFe0.9Mg0.1PO4+0.5CO2+2NH3+1.6H2

予備混合反応剤:

0.5モルLi2CO3 37g
0.9モルFeO 64.6g
0.1モルMg(OH)2 5.83g
1.0モル(NH42HPO4 13.2g
カーボンブラック 20g

前記反応剤をペレット化し、前記ペレットを750℃に加熱する。750℃に8時間保持し、2℃/分の速度で冷却し、前記ペレットを粉体化する。反応生成物は、炭素が親密に分散した微細な粒状化LiFe0.9Mg0.1PO4を含んでいる。
【0142】
本発明の記載は、その性質上、主に例示的なものであり、したがって、本発明の要旨から外れていない変形例も本発明の範囲内である。このような変形例は本発明の精神および範囲からの新発展とは見做されない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式;
ab(XY4cd
(ここで、
(a)AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、0<a≦8であり;
(b)Mは高原子価状態に酸化することが可能な少なくとも1つの金属を含む、1つ以上の金属を含み、1≦b≦3であり;
(c)XY4は、X’O4-xY’x、X’O4-yY’2y、X”S4およびそれらの組み合せからなる群より選択され、ここでX’はP、As、Sb、Si、Ge、V、Sおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、X”はP、As、Sb、Si、V、Geおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、Y’はハロゲン、S、Nおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、0≦x<3、0<y≦2および0<c≦3であり;
(d)ZはOH、ハロゲンあるいはそれらの組み合せであり、0≦d≦6であり、
M、X、Y、Z、a、b、c、d、xおよびyは前記化合物の電気的中性を保持するように選択される)
の活物質を含み、前記活物質は、
少なくとも1つの粒状金属化合物と少なくとも1つの有機物質を混合して混合物を生成する工程;
前記混合物を、反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱し、前記出発物質の少なくとも1つの金属の酸化状態が加熱中に還元されて前記無機金属化合物を生成する工程を含む方法で製造された組成物。
【請求項2】
前記出発物質は、更にアルカリ金属化合物を含む請求項1記載の組成物。
【請求項3】
前記方法は、更に、アルカリ金属化合物を前記反応生成物と反応させる工程を含む請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記Aはリチウムを含む請求項1記載の組成物。
【請求項5】
前記XY4はリン酸基を含む請求項1記載の組成物。
【請求項6】
前記Aはリチウムを含み、前記XY4はリン酸基を含み、前記Zはフッ素を含む請求項1記載の活物質。
【請求項7】
前記XY4はリン酸基を含み、AはLiを含み、MはM’eM”f(ここで、e+f=b、M’は1以上の周期律表4から11族からの遷移金属を含み、M”は周期律表の2、3、12、13または14族からの1以上の元素を含む)を含む請求項1記載の活物質。
【請求項8】
0.8≦a≦1.2および0.8≦b≦1.2である請求項7記載の活物質。
【請求項9】
M’はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群より選択された1以上の元素であり、M”は+2の酸化状態の元素および+3の酸化状態の非遷移金属からなる群より選択された1以上の元素である請求項8記載の活物質。
【請求項10】
M’はFeおよびCoを含む請求項9記載の活物質。
【請求項11】
M’はFeおよびCoを含み、M”はMg、Al、Ca、ZnおよびBaからなる群より選択された1以上の元素を含む請求項8記載の活物質。
【請求項12】
更に、前記活物質と親密に混合された炭素粒子を含む請求項1記載の組成物。
【請求項13】
炭素粒子を核とした活物質の結晶を含む請求項3記載の組成物。
【請求項14】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項1記載の活物質を含むバッテリー。
【請求項15】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項6記載の活物質を含むバッテリー。
【請求項16】
一般式;
abc
(ここで、a、b、およびcはゼロではなく、化合物の電気的中性を保持するように選択され、Aはリチウム、ナトリウム、カリウムからなる群より選択されたアルカリ金属であり、Mは遷移金属を含む)
の活物質を含み、前記活物質は、
少なくとも1つの遷移金属化合物および少なくとも1つの有機物質を含む出発物質を混合して混合物を形成する工程;
前記混合物を、反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱し、前記出発物質の少なくとも1つの遷移金属の酸化状態が加熱中に還元される工程を含む方法で製造された組成物。
【請求項17】
前記有機物質は化学量論的に過剰に供給される請求項16記載の組成物。
【請求項18】
前記出発物質は、更にアルカリ金属化合物を含む請求項16記載の組成物。
【請求項19】
前記方法は、更にアルカリ金属化合物を反応生成物と反応させる工程を含む請求項16記載の組成物。
【請求項20】
前記Mはマンガン、鉄、コバルト、ニッケル、バナジウム、モリブデン、チタン、ジルコニウムおよびそれらの組み合せからなる群より選択された請求項16記載の組成物。
【請求項21】
前記活物質はリチウム化モリブデン酸化物、リチウム化バナジウム酸化物、リチウム化チタン酸化物あるいはリチウム化マンガン酸化物を含む請求項16記載の組成物。
【請求項22】
炭素粒子を核とした活物質の結晶を含む請求項16記載の組成物。
【請求項23】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項16記載の活物質を含むバッテリー。
【請求項24】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項21記載の活物質を含むバッテリー。
【請求項25】
無機金属化合物の固相合成方法であって、
少なくとも1つの粒状金属化合物と少なくとも1つの還元性炭素源を含む出発物質を混合して混合物を生成する工程;
還元性ガスを含む雰囲気に前記混合物を供給する工程;および
反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱する工程;
を含み、前記出発物質の少なくとも1つは加熱中に酸化状態を還元されて、前記無機金属化合物を生成する固相合成方法。
【請求項26】
前記還元性ガスは水素あるいは元素状炭素を含む請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記還元性炭素は炭水化物を含む請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記還元性炭素は有機物質を含む請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記反応生成物はリチウム化混合金属リン酸塩活物質を含む請求項25記載の方法。
【請求項30】
前記反応生成物はリチウム化金属酸化物を含む請求項25記載の方法。
【請求項31】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項25記載の方法によって製造された活物質を含むバッテリー。
【請求項32】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項29記載の方法によって製造された活物質を含むバッテリー。
【請求項33】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項30記載の方法によって製造された活物質を含むバッテリー。
【請求項34】
還元無機金属化合物の固相合成方法であって、
少なくとも1つの粒状金属化合物と少なくとも1つの還元性炭素源を含み、かつリチウムを含まない出発物質を混合して混合物を生成する工程;
還元無機金属化合物を含む反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱する工程;
を含み、前記出発物質の少なくとも1つは、加熱中に、酸化状態を還元される固相合成方法。
【請求項35】
前記金属化合物は遷移金属化合物を含む請求項34記載の方法。
【請求項36】
前記金属化合物は錫化合物を含む請求項34記載の方法。
【請求項37】
前記還元性炭素は元素状炭素を含む請求項34記載の方法。
【請求項38】
前記還元性炭素は有機物質を含む請求項34記載の方法。
【請求項39】
前記有機物質は前記加熱工程で、還元剤として作用可能な形態の炭素を含む分解生成物を形成するため分解する請求項38記載の方法。
【請求項40】
前記還元性炭素は炭水化物を含む請求項38記載の方法。
【請求項41】
前記還元性炭素はスクロースを含む請求項38記載の方法。
【請求項42】
加熱は400℃から1200℃の温度で行われる請求項38記載の方法。
【請求項43】
前記1以上の金属化合物はチタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、銅、モリブデン、錫およびそれらの組み合せから選択された金属の化合物を含む請求項38記載の方法。
【請求項44】
更に、前記反応生成物とアルカリ金属化合物の反応する工程を含む請求項38記載の方法。
【請求項45】
前記アルカリ金属化合物はリチウム化合物を含む請求項38記載の方法。
【請求項46】
前記反応生成物は遷移金属酸化物を含む請求項38記載の方法。
【請求項47】
前記反応生成物は遷移金属リン酸塩を含む請求項38記載の方法。
【請求項48】
アルカリ金属化合物と遷移金属化合物の反応生成物を含み、前記遷移金属化合物は請求項38記載の方法で製造された活物質。
【請求項49】
アルカリ金属化合物と遷移金属化合物の反応生成物を含み、前記遷移金属化合物は請求項46記載の方法で製造された活物質。
【請求項50】
アルカリ金属化合物と遷移金属化合物の反応生成物を含み、前記遷移金属化合物は請求項47記載の方法で製造された活物質。
【請求項51】
正極、負極および電解質を含み、少なくとも1つの電極に請求項1による活物質を含むバッテリー。
【請求項52】
一般式;
ab(XY4cd
(ここで、
(a)AはLi、Na、Kおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、0<a≦8
であり;
(b)Mは高原子価状態に酸化することが可能な少なくとも1つの金属を含む、1つ以上
の金属を含み、1≦b≦3であり;
(c)XY4は、X’O4-xY’x、X’O4-yY’2y、X”S4およびそれらの組み合せからなる群より選択され、ここでX’はP、As、Sb、Si、Ge、V、Sおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、X”はP、As、Sb、Si、V、Geおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、Y’はハロゲン、S、Nおよびそれらの組み合せよりなる群から選択され、0≦x<3、0<y≦2および0<c≦3であり;
(d)ZはOH、ハロゲンあるいはそれらの組み合せであり、0≦d≦6である)
を有する活物質であって、
少なくとも1つの金属と少なくとも1つの還元性炭素源を含む第1の出発物質を混合し、第1の混合物を生成する工程;
前記第1の混合物を、反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱し、前記出発物質の少なくとも1つの金属の酸化状態が加熱中に還元されて前記無機金属化合物を生成する工程;
少なくとも1つのアルカリ金属化合物と前記工程で製造された無機金属化合物を含む第2の出発物質を混合し、第2の混合物を生成する工程;
次いで、前記第2の混合物を、前記活物質を含む反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱する工程;
(ここで、第1および第2の出発物質は、少なくとも1つのアルカリ金属A源と、少なくとも1つの金属M源と、少なくとも1つのXY4源と、d>0の場合、少なくとも1つのハロゲン源あるいは水酸化物源Zを含む)
を含む方法で製造された活物質。
【請求項53】
前記還元性炭素は元素状炭素を含む請求項52記載の活物質。
【請求項54】
前記還元性炭素は有機物質を含む請求項52記載の活物質。
【請求項55】
前記還元性炭素は炭水化物を含む請求項52記載の活物質。
【請求項56】
前記還元性炭素はスクロースを含む請求項52記載の活物質。
【請求項57】
前記XY4はリン酸基を含む請求項52記載の活物質。
【請求項58】
前記XY4はリン酸基を含み、AはLiを含み、MはM’ eM”f(ここで、e+f=b、M’は1以上の周期律表4から11族の遷移金属を含み、M”は周期律表の2、3、12、13または14族からの1以上の元素を含む)を含む請求項52記載の活物質。
【請求項59】
0.8≦a≦1.2および0.8≦b≦1.2である請求項58記載の活物質。
【請求項60】
M’はTi、V、Cr、Mn、Fe、Co、NiおよびCuからなる群より選択された1以上の元素であり、M”は+2の酸化状態の非遷移元素および+3の酸化状態の非遷移元素からなる群より選択された1以上の元素である請求項59記載の活物質。
【請求項61】
M’はFeおよびCoを含む請求項60記載の活物質。
【請求項62】
M’はFeおよびCoを含み、M”はMg、Al、Ca、ZnおよびBaからなる群より選択された1以上の元素を含む請求項60記載の活物質。
【請求項63】
一般式;
abc
(ここで、Aはアルカリ金属を含み、Mは高い酸化状態に酸化可能な遷移金属あるいは他の金属を含み、a、b、およびcはゼロではなく、化合物の電気的中性を保持するように選択される)
の活物質を含み、前記活物質は、
少なくとも1つの遷移金属化合物および少なくとも1つの還元性炭素源を含む出発物質を混合して混合物を形成する工程;
前記混合物を、反応生成物を生成するために十分な温度および時間加熱し、前記出発物質の少なくとも1つの遷移金属の酸化状態が加熱中に還元され、還元金属化合物を生成する工程;
前記還元金属化合物をアルカリ金属化合物と反応させる工程を含む方法で製造された組成物。
【請求項64】
前記還元性炭素は元素状炭素を含む請求項63記載の組成物。
【請求項65】
前記還元性炭素は有機物質を含む請求項63記載の組成物。
【請求項66】
前記還元性炭素は炭水化物を含む請求項63記載の組成物。
【請求項67】
前記還元性炭素はスクロースを含む請求項63記載の組成物。
【請求項68】
前記Mはバナジウム、クロム、マンガン、鉄、コバルト、ニッケル、モリブデン、チタンおよびそれらの組み合せからなる群より選択された請求項63記載の組成物。
【請求項69】
前記アルカリ金属化合物は、リチウム化合物を含む請求項63記載の組成物。
【請求項70】
少なくとも1つのアルカリ金属化合物、少なくとも1つの金属化合物および元素状炭素および有機物質からなる群より選択された炭素含有組成物を含む混合物を製造する工程;および
反応生成物を生成するために十分な温度および時間前記混合物を加熱する工程を含む電気化学活物質と導電性炭素が微細に分散した混合物を製造する方法。
【請求項71】
前記加熱工程で、少なくとも1つの金属が酸化状態を還元される請求項70記載の方法。
【請求項72】
前記反応は還元なしに行われる請求項70記載の方法。
【請求項73】
前記加熱工程は還元性雰囲気で行われる請求項70記載の方法。
【請求項74】
前記還元性雰囲気は水素を含む請求項73記載の方法。
【請求項75】
前記炭素含有組成物は粉状の元素状炭素を含む請求項70記載の方法。

【公開番号】特開2010−47471(P2010−47471A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211873(P2009−211873)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2004−507379(P2004−507379)の分割
【原出願日】平成15年5月6日(2003.5.6)
【出願人】(503191472)ヴァレンス テクノロジー インコーポレーテッド (11)
【氏名又は名称原語表記】VALENCE TECHNOLOGY, INC.
【住所又は居所原語表記】301 Conestoga Way, Henderson, NV 89015,US
【Fターム(参考)】