説明

カチオン性ビニルモノマー

【課題】製造、運搬、保管時の外温、光、衝撃、微量の金属イオン(特に鉄など)等による、増粘やポプコン重合、または重合体製造時のゲル化による変質がなく、経時的に安定であり、かつ、重合性を損なわない、カチオン性ビニルモノマーを提供する。
【解決手段】一般式(1)で示されるカチオン性ビニルモノマーに、安定化剤として、チオール化合物あるいはニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm添加する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重合性を損なうことなく、貯蔵、運搬、製造時の変質を防止できる、安定性を飛躍的に向上させたカチオン性ビニルモノマーに関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン性ビニルモノマーは、単独重合あるいは他のモノマーとの共重合等により、陽イオン性、導電性、水溶性、接着性等の機能を有するポリマーに容易になり得るため、高分子凝集剤、製紙用薬剤、帯電防止剤、繊維改質剤、接着剤、化粧品等の用途で有用性の高いカチオン性ポリマーの原料モノマーとして工業的に広く利用されている。
【0003】
カチオン性ビニルモノマーは、一般に、不飽和第3級アミンに塩酸、硫酸等を加えて中和し酸塩としたり、あるいは四級化剤を加えて四級化反応を行わせることによって製造される。
そして、カチオン性モノマーは、不飽和第3級アミンに比べて不安定で、特に水溶液中において高濃度で存在させた場合は自然重合しやすく、製造、運搬、保管時に外温、光、衝撃、微量の金属イオン (特に鉄など) 等により、増粘やポプコン重合を起こすことがあり、カチオン性ビニルモノマーの製造や保存、重合体製造時の安定性の向上が大きな課題となっている。
【0004】
従来、カチオン性ビニルモノマーの安定剤としては、ハイドロキノン(以下、HQと略称する。)、ハイドロキノンモノメチルエーテル(以下、MEHQと略称する。)、t−ブチルカテコール等の重合防止剤を添加することが行われてきた。しかし、カチオン性ビニルモノマーに対して、このような重合防止剤では必ずしも満足できるものではなかった。
そこで、さらに有利な方法が検討され、種々の安定化法が提案されてきた。例えば、芳香族ニトロソ化合物の添加(特許文献1)、環状アミン化合物の添加(特許文献2)、ニトロソ化合物またはキノン系化合物と、エチレンジアミン四酢酸(以下、EDTAと略称する。)やニトリロ三酢酸などの金属封鎖剤との併用(特許文献3)、重合防止剤と金属封鎖剤との併用において、金属封鎖剤としてジエチレントリアミン五酢酸(以下、DTPAと略称する。)、N−(ヒドロキシエチル)−エチレンジアミン三酢酸およびこれらの塩などのアミノポリカルボン酸型の使用(特許文献4)、あるいは、重合防止剤とアルキレンホスホン酸系金属封鎖剤との併用(特許文献5)等の方法が提案されている。
【0005】
しかしながら、芳香族ニトロソ化合物は、ハイドロキノン等に比べて安定剤としての効果は格段に大きいものの少量の添加でもカチオン性ビニルモノマーを著しく着色させる傾向があり、また、カチオン性ビニルモノマーの重合を阻害し、残存モノマーの多いポリマーが生成しやすくなるという欠点があった。また、環状アミン化合物は、酸性領域あるいは金属イオンに対する安定性は未知数である。
さらに、重合禁止剤と金属封鎖剤との併用では、オキシカルボン酸やポリカルボン酸は鉄イオン等の金属イオンに対する金属封鎖力が弱く、また、アミノポリカルボン酸やアルキレンホスホン酸等の金属封鎖剤は、酸性領域、すなわち局所的高濃度の金属イオンが存在する場合の金属封鎖力は不十分であり、自然重合や重合体製造時のゲル発生、及び着色の要因となる金属イオンを完全に封鎖することは困難であった。
【特許文献1】特開昭53−144519号公報
【特許文献2】特開昭58−15942号公報、同58−99449号公報
【特許文献3】特開昭57−109747号公報、同特開昭57−109749号公報
【特許文献4】特開平10−67720号公報、同10−67721号公報
【特許文献5】特開2001−226334号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、本発明は、重合性を損なわずに製造、運搬、長期にわたる貯蔵時の変質を防止し、さらには、酸性・無酸素領域下においても、金属容器保管中や重合体製造時に金属製重合釜表面のゲル発生を抑制し、重合安定性が飛躍的に向上したカチオン性ビニルモノマー、及びカチオン性ビニルモノマーの安定化法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは鋭意検討した結果、チオール化合物あるいはニトロキシルラジカル化合物を添加することにより、課題を解決できることを見い出し、本発明に到達した。
すなわち本発明は、
(1)チオール化合物及び/又はニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm含有した、一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、Xはハロゲン原子、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基又はP−トルエンスルホニル基を、それぞれ表す。)で表される、カチオン性ビニルモノマー、
(2)チオール化合物が、メルカプト基と、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する化合物である、上記(1)記載のカチオン性ビニルモノマー、
(3)チオール化合物が、チオグリコール酸である、上記(1)又は(2)記載のカチオン性ビニルモノマー、
(4)ニトロキシルラジカル化合物が、室温で安定に存在しうるフリーラジカルを有する化合物である、上記(1)記載のカチオン性ビニルモノマー、
(5)ニトロキシルラジカル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである、上記(1)又は(4)記載のカチオン性ビニルモノマー、
(6)チオール化合物及び/又はニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm添加することを特徴とする、一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、Xはハロゲン原子、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基又はP−トルエンスルホニル基を、それぞれ表す。)で表されるカチオン性ビニルモノマーの安定化法、
を提供するものである。
【0008】
【化3】

【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、製造、運搬、保管時の外温、光、衝撃、微量の金属イオン(特に鉄など)等による自然重合、または重合体製造時のゲル化による変質を防止し、かつ、重合体製造時にはその重合性を損なわずに、求める重合体を得ることが可能な、安定性の高い一般式(1)で表されるカチオン性ビニルモノマーが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明のカチオン性ビニルモノマーは、チオール化合物及び/又はニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm含有した、上記一般式(1)で表される化合物である。
一般式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、Xはハロゲン原子、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基又はP−トルエンスルホニル基を、それぞれ表す。
具体的には、下記一般式(2)で表されるジアルキルアミノアルキル (メタ) アクリルアミドに、四級化剤としてのハロゲン化アルキル、ジアルキル硫酸あるいはアルキルトルエンスルフォネートを公知の方法により反応させた反応生成物が挙げられる。
【0011】
【化4】

【0012】
一般式(2)中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を表し、具体的には、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジプロピルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等が例示される。
また、四級化剤としては、メチルクロライド、エチルクロライド、メチルブロマイド、エチルブロマイド等のアルキルハライド、ベンジルクロライド、及びベンジルブロマイド等のアラルキルハライド、ジメチル硫酸、ジエチル硫酸等のアルキル硫酸、パラトルエンスルホン酸メチル、パラトルエンスルホン酸エチル等のアルキルトルエンスルフォネートが挙げられる。
【0013】
本発明で用いられるチオール化合物は、その化学構造式中にメルカプト基を有し安定化剤として機能する化合物をいい、メルカプト基とヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する化合物がより好ましく、具体的には、メルカプトエタノール、メルカプトプロパノール、チオグリセロール、チオジグリコールなどのアルコール類、チオグリコール酸、チオグリコール酸アンモニウム、ジチオグリコール酸アンモニウム、チオグリコール酸2−エチルヘキシル、チオグリコール酸メトキシブチル、チオグリコール酸モノエタノールアミン、3,3’−チオジプロピオン酸、メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸などのカルボン酸類が例示される。
このようなチオール化合物の中でも、特に炭素数2〜7個、好ましくは2〜4個のものが優れた効果を示すため、望ましい。
チオール化合物は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0014】
本発明で用いられるニトロキシルラジカル化合物は、室温で安定に存在し得るフリーラジカルを有する化合物であり、ジ−tert−ブチルニトロキサイド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルおよびその誘導体、2,2,5,5−テトラメチルピロリジン−1−オキサイドおよびその誘導体が挙げられる。具体的には、ジ−tert−ブチルニトロキサイド、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−オキソ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アミノ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−メトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−アセトキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル、4−ベンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが例示される。これらの中では、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルが特に好ましい。
これらニトロキシルラジカル化合物は、1種あるいは2種以上を組み合わせて用いても良い。
【0015】
これら化合物は、カチオン性ビニルモノマーに対し0.1〜5000ppm、好ましくはチオール化合物の場合5〜500ppm、ニトロキシルラジカル化合物の場合1〜50ppm添加される。
【0016】
チオール化合物及びニトロキシルラジカル化合物の添加方法としては、カチオン性ビニルモノマーに対してそのまま添加する方法あるいは水溶液として添加する方法が挙げられるが、カチオン性ビニルモノマーの製造時に添加することもできる。
【0017】
本発明において、必要に応じて、HQ、MEHQ、t−ブチルカテコール、パラフェニレンジアミン、フェノチアジン等の不飽和化合物のラジカル重合反応を禁止する公知の重合防止剤を併用することもできる。
【0018】
本発明の効果である保存安定性は、一般式(1)で表されるカチオン性ビニルモノマーが、固体状、溶液状、エマルジョン状、スラリー状などいずれの形態であっても発揮される。水溶液として保存される場合、添加される水の量は、該カチオン性ビニルモノマーに対して、通常、0.01〜10倍(重量)、好ましくは0.1〜5倍(重量)である。
【0019】
本発明のカチオン性ビニルモノマーは、公知の方法によって重合体または共重合体とすることができる。共重合体を製造する際、使用できる他のビニルモノマーとしては、アクリルアミド、α−メチルアクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミドなどの親水性の非イオン性ビニル単量体、アクリルニトリル、スチレン、メチルメタアクリレートなどの油溶性のビニル単量体が挙げられる。
重合は公知の方法、例えば水溶液重合、水と有機溶剤を用いた乳化重合、懸濁重合、沈殿重合などの方法により行うことができる。これら重合は、ラジカル重合開始剤を用いる方法が好ましく、ラジカル重合開始剤としては、アゾ化合物系触媒(アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩)、過酸化物系触媒(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなど)、レドックス系触媒(過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウムなどの過酸化物と第1鉄硫酸アンモニウム、重亜硫酸ソーダなどの還元剤からなるもの)などが挙げられる。
一例として水溶液重合を例示すれば、カチオン性ビニルモノマーを水溶液(モノマー濃度:20〜80重量%)とし、系内を不活性ガスで置換したのち、ラジカル重合開始剤を加え、通常、0〜95℃程度の重合温度で数時間重合することにより行うことができる。
【0020】
本発明の特徴は、カチオン性ビニルモノマーの安定化剤としてチオール化合物あるいはニトロキシル化合物を用いる点にある。従来提案されてきた芳香族ニトロソ化合物安定化剤は、ハイドロキノン等に比べて安定剤としての効果は格段に大きいが、数十ppmの添加でもカチオン性ビニルモノマーを著しく着色させ、一方、ラジカル重合に対して極めて大きな禁止効果を有するため、多量の添加では重合体製造時の重合性を阻害するという欠点があり、単独で安定性に有効な量を用いることは困難であった。
また、カチオン性ビニルモノマーは、その特徴として、特に水溶液とした場合、アニオン性対イオンX が水溶液中の水素イオンと結合することにより強酸を生じることがあり、経時的にpHが低下し、例えば、金属容器保存中や重合体製造時に金属製重合釜の表面を腐食するというおそれがあった。そのため、特に重合体製造時のように、脱気や窒素置換により重合防止効果のある溶存酸素が取り除かれる過酷な条件となる為、この腐食によって溶出した局所的高濃度の金属イオンが、例えばカチオン性ビニルモノマー中に存在する微量のゲル化要因物質等に影響を与え、金属容器や金属製重合釜表面にゲルが発生し、合成収率の低下や、装置の使用を不可能にするなど、円滑な重合体の製造が困難となる場合があった。
このため、カチオン性ビニルモノマーの安定化に各種金属封鎖剤も提案されてきたが、これら金属封鎖剤は、元々金属封鎖力が弱いか、あるいは強くても酸性領域では著しく弱く、局所的高濃度の金属イオンに対する金属封鎖力は不十分であり、自然重合や重合体製造時のゲル化、及び着色を完全に防ぐことは困難であった。これに対し、本発明で用いられるチオール化合物あるいはニトロキシルラジカル化合物は、酸性・無酸素領域下においても、局所的高濃度の金属イオンが存在する場合であっても、長期にわたり、安定であり、かつ、重合体製造時にもその重合性を損なわない、という優れた作用効果を奏する。
【実施例】
【0021】
以下、実施例によって本発明をさらに説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
実施例1
N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩を75%水溶液にし、安定化剤としてチオグリコール酸50ppm均一に溶解し、本発明のカチオン性ビニルモノマー水溶液を得た。このモノマー水溶液20質量部をステンレス製金属容器に入れ、蒸留水25質量部に溶解したのち、硫酸にて強制的に系内のpHを5とした。次いで、室温で窒素ガスを吹込み、系内を窒素置換し、ステンレス金属容器缶壁付着ゲル生成の有無及び水溶液の着色(いずれも目視)を調べた。結果を表1に示す。
【0022】
実施例2
実施例1において、安定化剤をチオグリコール酸50ppmにかえて、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル10ppmとした以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0023】
比較例1〜5
実施例1において、安定化剤を添加しないもの、チオグリコール酸にかえてt−ブチルカテコール、フェノチアジン、ニトロソR塩、ニトロソ−N−メチルアニリンをそれぞれ100ppm添加したものとした以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0024】
比較例6〜7
実施例1において、チオグリコール酸にかえて、MEHQ3000ppm、及びエチレンジアミン四酢酸2Na塩(EDTA−2Na)又は1−ヒドロキシエチリデン−1,1−ジホスホン酸(HEDP)それぞれ100ppmを添加したものとした以外は、実施例1と同様に実施した。結果を表1に示す。
【0025】
【表1】

【0026】
試験例1
還流冷却器、温度計、窒素ガス導入管及び撹拌装置を備えた反応器に蒸留水200質量部を仕込み、反応器を窒素置換したのち50℃まで加熱した。反応器に2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]二塩酸塩0.6質量部を添加した後、実施例1で得た本発明のカチオン性ビニルモノマー水溶液(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩75%水溶液にチオグリコール酸50ppmを均一に溶解した水溶液)を47重量部、N,N−ジメチルアクリルアミド53重量部、及び蒸留水80重量部を加え、3時間反応させ、共重合体を得た。
得られた共重合体の20%水溶液粘度を測定し、重量平均分子量を測定した。結果を表2に示す。
なお、重量平均分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィーにて、ポリエチレングリコールを標準物質として重量平均分子量を求めた。また、粘度の測定は、B型粘度計を用い25℃で実施した。
【0027】
試験例2
試験例1において、実施例1で得られたカチオン性ビニルモノマー水溶液にかえて、実施例2で得た本発明のカチオン性ビニルモノマー水溶液(N,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩75%水溶液に2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシル10ppmを均一に溶解した水溶液)を用いた以外は試験例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0028】
比較試験例1
試験例1において、実施例1で得られたカチオン性ビニルモノマー水溶液に変えて、安定化剤が添加されていないN,N−ジメチルアミノプロピルアクリルアミド塩化メチル4級塩75%水溶液を用いた以外は試験例1と同様に実施した。結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0030】
以上説明してきたように、本発明のカチオン性ビニルモノマーは、製造、運搬、保管時の外温、光、衝撃、微量の金属イオン(特に鉄など)等による、増粘やポプコン重合、または重合体製造時のゲル化による変質がなく、経時的に安定なものである。したがって、高分子凝集剤、製紙用薬剤、帯電防止剤、遷移改質剤、接着剤、化粧品等のカチオン性ポリマーの原料として好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオール化合物及び/又はニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm含有した、一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、Xはハロゲン原子、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基又はP−トルエンスルホニル基を、それぞれ表す。)で表される、カチオン性ビニルモノマー。
【化1】

【請求項2】
チオール化合物が、メルカプト基と、ヒドロキシル基又はカルボキシル基を有する化合物である、請求項1記載のカチオン性ビニルモノマー。
【請求項3】
チオール化合物がチオグリコール酸である、請求項1又は2記載のカチオン性ビニルモノマー。
【請求項4】
ニトロキシルラジカル化合物が、室温で安定に存在しうるフリーラジカルを有する化合物である、請求項1記載のカチオン性ビニルモノマー。
【請求項5】
ニトロキシルラジカル化合物が、2,2,6,6−テトラメチルピペリジン−1−オキシルである、請求項1又は請求項4記載のカチオン性ビニルモノマー。
【請求項6】
チオール化合物及び/又はニトロキシルラジカル化合物を0.1〜5000ppm添加することを特徴とする、一般式(1)(式中、Rは水素原子またはメチル基を、R及びRは各々独立に炭素数1〜3のアルキル基で、互いに同一であっても異なっていてもよく、Rは炭素数1〜3のアルキル基またはベンジル基を、Aは炭素数1〜3のアルキレン基を、Xはハロゲン原子、メチルスルホニル基、エチルスルホニル基又はP−トルエンスルホニル基を、それぞれ表す。)で表されるカチオン性ビニルモノマーの安定化法。
【化2】


【公開番号】特開2009−51767(P2009−51767A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−219682(P2007−219682)
【出願日】平成19年8月27日(2007.8.27)
【出願人】(000142252)株式会社興人 (182)
【Fターム(参考)】