説明

カチオン電着塗料組成物

【課題】 揮発性有機化合物(VOC)を低減しても、膜厚保持性、塗膜の仕上り性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性などに優れ且つ防食性が良好な塗膜を形成し得るカチオン電着塗料組成物を提供すること。
【解決手段】 特定の変性エポキシ樹脂を、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物と反応させることにより得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水分散性に優れたアミノ基含有変性エポキシ樹脂を樹脂成分として含有するカチオン電着塗料組成物に関し、特に、カチオン電着塗料浴中における揮発性有機化合物の量を低減しても、膜厚保持性や塗膜の仕上り性及び合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性に優れ且つ防食性が良好な塗膜を形成し得るカチオン電着塗料組成物及びそれを用いた塗装物品に関する。
【背景技術】
【0002】
カチオン電着塗料組成物は、塗装作業性に優れ且つ形成される塗膜の防食性が良好なことから、これらの性能が要求される自動車ボディなどの導電性金属製品の下塗り塗料として広く使用されている。
【0003】
カチオン電着塗料組成物に使用される基体樹脂は、通常、有機溶剤を使用して製造され、有機溶剤を含有する樹脂溶液(ワニス)として配合されるので、得られるカチオン電着塗料組成物は有機溶剤を含有した塗料組成物となる。
【0004】
また、カチオン電着塗料組成物には、通常、樹脂成分の水分散性を改善して塗料安定性を高めること、経時での膜厚保持性や塗膜の仕上り性ならびに合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性を向上させることなどを目的として、親水性と疎水性のバランスが良好な、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル(沸点171℃)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(沸点208℃)、プロピレングリコールモノプロピルエーテル(沸点150℃)、シクロヘキサノン(沸点145℃)などの有機溶剤が配合される。
【0005】
一方、近年、環境への配慮などから、揮発性有機化合物(以下、「VOC」と称することがある)規制や有害性大気汚染物質規制(HAPs規制)によって、これら有機溶剤の使用が制限されている。
【0006】
しかし、カチオン電着塗料組成物中の揮発性有機化合物の含有量を低減させると、経時での膜厚保持性や塗膜の仕上り性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性が低下するなどの不具合が生じることがある。
【0007】
特許文献1には、少なくとも1種のポリオールのジグリシジルエーテルと少なくとも1種の2価フェノールのジグリシジルエーテルからなる組成物と、少なくとも1種の2価フェノールとを反応させることにより得られる樹脂に有機酸と水を添加して該オキシラン基をカチオン基に転化することにより製造されるカチオン性エポキシ樹脂を含有する電着塗料が開示されている。しかし、該カチオン性エポキシ樹脂を用いた電着塗料を電着塗装して得られた塗膜は、防食性が不十分である。
【0008】
特許文献2には、エポキシ当量が180〜2,500のエポキシ樹脂に、キシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物を反応させてなるキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂を基体樹脂として含有するカチオン電着塗料が開示されている。しかし、上記のキシレンホルムアルデヒド樹脂変性アミノ基含有エポキシ樹脂を基体樹脂として含有するカチオン電着塗料は、低VOC化のために有機溶剤の含有量を減らすと、膜厚保持性、塗膜の仕上り性及び合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性のいずれかにおいて不具合を生じることがある。
【0009】
特許文献3には、350〜5,000の平均エポキシ当量を有するポリエーテルポリオ
ールのジグリシジルエーテルから製造されるエポキシ樹脂又は一部キャップ(封止)された300〜5,000の平均エポキシ当量を有するポリエーテルポリオールのジグリシジルエーテルから製造されるエポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料が開示されている。しかし、上記のエポキシ樹脂を含有するカチオン電着塗料は、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性を良好とするためには、電着塗料中に多量の有機溶剤を添加しなければならず、揮発性有機化合物の低減(いわゆる低VOC化)の目的を達成することができない。
【0010】
特許文献4には、ポリメチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなどのアルキレン系ポリエーテルポリオールや、ビスフェノール単独もしくはビスフェノールとグリコールとを反応してなる芳香環含有ポリエーテルポリオールなどのポリエーテルポリオールを添加剤として含有する、低VOCで且つ造膜性に優れ、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装性や防食性に優れた塗料が記載されている。また、特許文献5には、分子量が1,000以下の特定のポリエーテル化合物を添加剤として配合することにより揮発性有機溶剤(VOC)の含有量を減らした、防錆鋼板に電着塗装してもピンホールの発生がなく防食性に優れた塗膜を形成し得る、塗料安定性が良好な電着塗料が開示されている。しかし、特許文献4及び特許文献5に記載の添加剤を電着塗料中に多量に添加すると、形成塗膜の防食性が低下したり、電着塗料浴に長期に亘って機械的な負荷が加えられた場合に塗料安定性の低下が生じることがある。
【0011】
【特許文献1】特開昭63−92637号公報
【特許文献2】特開2003−221547号公報
【特許文献3】特開平8−245750号公報
【特許文献4】特開2001−3005号公報
【特許文献5】特開2006−274234号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明の目的は、揮発性有機化合物(VOC)を低減しても、膜厚保持性、塗膜の仕上り性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性などに優れ且つ防食性が良好な塗膜を形成し得るカチオン電着塗料組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明者等は、鋭意検討した結果、今回、特定の変性エポキシ樹脂とフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂及びアミノ基含有化合物とを反応させることにより得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂を樹脂成分として含有するカチオン電着塗料組成物によって、上記の目的を達成することができることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0014】
かくして、本発明によれば、
(A) 一般式(1)
【化1】

[式中、m+n個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ0又は1〜20の整数であり且つm+nは1〜20である]
で示される化合物(a11)及び一般式(2)
【化2】

[式中、y個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、xは1〜9の整数であり、yは1〜50の整数である]
で示される化合物(a12)よりなる群から選ばれるジエポキシ化合物(a1)と、エポキシ当量が170〜500のエポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)とを反応させることにより得られる変性エポキシ樹脂
(B) フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂、及び
(C) アミノ基含有化合物
を反応させることにより得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)を樹脂成分として含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカチオン電着塗料組成物に樹脂成分(基体樹脂)として含有せしめられるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)は、水分散性に優れ、電着塗装時における析出塗膜の融着性や焼付時の熱流動性が良好であり、且つ腐食生成物質(例えば、酸素イオン、塩素イオンなど)の塗膜透過を抑制する能力に優れており、したがって、本発明のカチオン電着塗料組成物は、例えば、限外濾過(UF)膜における濾過適性や精密濾過機における濾過性などの塗料安定性に優れており、さらに、本発明のカチオン電着塗料組成物を用いることにより、該カチオン電着塗料組成物から調製される電着塗料浴中の揮発性有機化合物を低減しても、造膜性及び膜厚保持性に優れ、仕上り性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性、防食性などに優れた塗膜を有する塗装物品を提供することができる。
【0016】
以下、本発明のカチオン電着塗料組成物についてさらに詳細に説明する。
【発明を実施するため形態】
【0017】
変性エポキシ樹脂(A):
本発明のカチオン電着塗料組成物において樹脂成分(基体樹脂)として使用されるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)の製造において、出発材料として用いられる変性エポキシ樹脂(A)は、ジエポキシ化合物(a1)を、エポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)と反応させることにより得られる樹脂である。
【0018】
ジエポキシ化合物(a1)
ジエポキシ化合物(a1)としては、一般式(1)
【化3】

[式中、m+n個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、m及びnはそれぞれ0又は1〜20、好ましくは1〜15の整数であり且つm+nは1〜20、好ましくは1〜18である]
で示される化合物(a11)を用いることができる。式(1)において、Rはメチル基
であることが特に好ましい。
【0019】
化合物(a11)は、例えば、ビスフェノールAに式(3)
【化4】

[式中、Rは上記定義のとおりである]
で示されるアルキレンオキシドを付加させてヒドロキシル末端ポリエーテル化合物を得た後、該ポリエーテル化合物にエピハロヒドリンを反応させてジエポキシ化することにより製造することができる。
【0020】
上記式(3)のアルキレンオキシドとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等が挙げられ、中でも、エチレンオキシド(式(3)のRが水素原子である化合物)及びプロピレンオキシド(式(3)のRがメチルである化合物)が好適である。
【0021】
ジエポキシ化合物(a1)として、また、一般式(2)
【化5】

[式中、y個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくはメチル基を表し、xは1〜9、好ましくは1〜5の整数であり、yは1〜50、好ましくは1〜25の整数である]
で示される化合物(a12)を用いることもできる。式(2)において、Rはメチル基であることが特に好ましい。
【0022】
化合物(a12)は、例えば、アルキレングリコールを開始剤として前記式(3)のアルキレンオキシドを開環重合させることにより得られるヒドロキシル末端ポリアルキレンオキシドにエピハロヒドリンを反応させてジエポキシ化するか;式(4)
【化6】

[式中、Rは及びxは上記定義のとおりである]
で示されるアルキレングリコール又は少なくとも2個の該アルキレングリコール分子を脱水縮合させることにより得られるポリエーテルジオールにエピハロヒドリンを反応させてジエポキシ化することにより製造することができる。
【0023】
上記式(4)のアルキレングリコールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジ
オール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,8−オクタンジオールなどの炭素数2〜10のアルキレングリコールが挙げられる。
【0024】
上記式(1)又は式(2)の化合物(a11)又は(a12)、すなわち、ジエポキシ化合物(a1)としては、具体的には、例えば、デナコールEX−850、デナコールEX−821、デナコールEX−830、デナコールEX−841、デナコールEX−861、デナコールEX−941、デナコールEX−920、デナコールEX−931(以上、ナガセケムテックス株式会社製、商品名)、グリシエールPP−300P、グリシエールBPP−350(以上、三洋化成工業株式会社製、商品名)などが挙げられる。また、ジエポキシ化合物(a1)として、化合物(a11)と化合物(a12)を混合して用いることもできる。
【0025】
エポキシ化合物(a2)
エポキシ化合物(a2)は、1分子中にエポキシ基を少なくとも2個有する化合物であり、一般に340〜1,500、特に340〜1,000の範囲内の数平均分子量、及び一般に170〜500、特に170〜400の範囲内のエポキシ当量を有するものが好適であり、中でも、ポリフェノール化合物をエピハロヒドリンと反応させるによって製造されるものが好ましい。
【0026】
本明細書において、「数平均分子量」は、JIS K 0124−83に記載の方法に準じ、分離カラムとして「TSKgel G4000HXL」、「TSKgel G3000HXL」、「TSKgel G2500HXL」及び「TSKgel G2000HXL」(いずれも東ソー株式会社製、商品名)の4本を用い且つ溶離液としてGPC用テトラヒドロフランを用いて、温度40℃及び流速1.0ml/分において、RI屈折計で得られたクロマトグラムと標準ポリスチレンの検量線から求めたものである。
【0027】
エポキシ化合物(a2)の製造に用いられるポリフェノール化合物としては、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]、ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)メタン[水添ビスフェノールF]、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン[水添ビスフェノールA]、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−エタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−1,1−イソブタン、ビス(4−ヒドロキシ−2もしくは3−tert−ブチル−フェニル)−2,2−プロパン、ビス(2−ヒドロキシナフチル)メタン、テトラ(4−ヒドロキシフェニル)−1,1,2,2−エタン、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン、フェノールノボラック、クレゾールノボラックなどを挙げることができる。
【0028】
また、ポリフェノール化合物とエピハロヒドリンとの反応によって得られるエポキシ化合物としては、中でも、ビスフェノールAから誘導される式(5)
【化7】

[式中、nは0〜2である]
で示されるものが好適である。
【0029】
かかるエポキシ樹脂の市販品としては、例えば、ジャパンエポキシレジン(株)からj
ER828EL、jER1001なる商品名で販売されているものが挙げられる。
【0030】
ビスフェノール類(a3)
ビスフェノール類(a3)には、一般式(6)
【化8】

[式中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは水素原子又はメチル基を表し、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基、好ましくは水素原子を表す]
で示される化合物が包含され、具体的には、例えば、ビス(4−ヒドロキシフェニル)−2,2−プロパン[ビスフェノールA]、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン[ビスフェノールF]などが挙げられる。
【0031】
変性エポキシ樹脂(A)は、通常、以上に述べたジエポキシ化合物(a1)、エポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)を、適宜、反応触媒としての、ジメチルベンジルアミン、トリブチルアミンなどの3級アミン又はテトラエチルアンモニウムブロマイド、テトラブチルアンモニウムブロマイドなどの4級アンモニウム塩などの存在下に、約80〜約200℃、好ましくは約90〜約180℃の温度で1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度反応させることにより製造することができる。
【0032】
より具体的には、ジエポキシ化合物(a1)とエポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)をすべて混合し反応させるか;ジエポキシ化合物(a1)とビスフェノール類(a3)をまず反応させ、次に得られる反応生成物にエポキシ樹脂(a2)を反応させるか;エポキシ樹脂(a2)とビスフェノール類(a3)をまず反応させ、次に得られる反応生成物にジエポキシ化合物(a1)を反応させることにより、変性エポキシ樹脂(A)を得ることができる。なお、反応状態はエポキシ価によって追跡することができる。
【0033】
上記反応において、反応触媒として、例えば、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジエタノールアミン、ジプロパノールアミン、メチルエタノールアミンなどの2級アミンを少量用いることもでき、これらの2級アミンは、エポキシ樹脂(a2)のエポキシ基と反応して3級アミンを生じ、この3級アミンが反応触媒として作用する。
【0034】
上記反応におけるジエポキシ化合物(a1)、エポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)の使用割合は、これら3成分の固形分合計質量を基準にして、ジエポキシ化合物(a1)は一般に1〜35質量%、特に2〜30質量%、さらに特に2〜25質量%の範囲内、エポキシ樹脂(a2)は一般に10〜80質量%、特に15〜75質量%、さらに特に20〜70質量%の範囲内、そしてビスフェノール類(a3)は一般に10〜60質量%、特に15〜50質量%、さらに特に18〜45質量%の範囲内が好ましい。
【0035】
上記反応においては、適宜、溶剤を用いることができる。用い得る溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、i
so−プロパノールなどのアルコール系溶媒;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0036】
かくして得られる変性エポキシ樹脂(A)は、一般に800〜7,000、好ましくは1,000〜6,000、さらに好ましくは1,000〜5,000の範囲内の数平均分子量、及び一般に500〜3,000、好ましくは600〜2,500、さらに好ましくは600〜2,000の範囲内のエポキシ当量を有することができる。
【0037】
フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B):
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)の製造において、出発材料として用いられるフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)は、塗膜の防食性を低下させることなく、変性エポキシ樹脂(A)を内部可塑化(変性)するのに役立つものであり、例えば、キシレン、ホルムアルデヒド及びフェノール類を、酸性触媒の存在下に縮合反応させることにより製造することができる。
【0038】
上記のホルムアルデヒドとしては、例えば、工業的に入手容易なホルマリン、パラホルムアルデヒド、トリオキサンなどのホルムアルデヒドを発生する化合物を使用することができる。なお、本明細書において、ホルムアルデヒドとしてパラホルムアルデヒド、トリオキサンなどの重合体を用いる場合、その使用量の規定は、ホルムアルデヒド1分子を基準に規定するものとする。
【0039】
また、上記のフェノール類には、2個又は3個の反応サイトを持つ1価もしくは2価のフェノール性化合物が包含され、具体的には、例えば、フェノール、クレゾール類、パラ−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ビスフェノールプロパン、ビスフェノールメタン、レゾルシノール、ピロカテコール、ハイドロキノン、パラ−tert−ブチルフェノール、ビスフェノールスルホン、ビスフェノールエーテル、パラ−フェニルフェノールなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で又は2種以上の組合せて用いることができる。中でも特に、フェノール及びクレゾール類が好適である。
【0040】
キシレン、ホルムアルデヒド及びフェノール類の縮合反応に使用される酸性触媒としては、例えば、硫酸、塩酸、パラトルエンスルホン酸、シュウ酸などが挙げられるが、一般的には、硫酸が特に好適である。その使用量は、通常、ホルムアルデヒド水溶液中の水により希釈されるので、水溶液中の濃度として10〜50質量%の範囲内が適当である。
【0041】
縮合反応は、例えば、反応系に存在するキシレン、フェノール類、水、ホルマリンなどが還流する温度、通常、約80〜約100℃の温度に加熱することにより行うことができ、通常、2〜6時間程度で終了させることができ、それによって、液状キシレンホルムアルデヒド樹脂を得ることができる。
【0042】
かくして得られるフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)は、一般に20〜50,000mPa・s(25℃)、好ましくは25〜30,000mPa・s(25℃)、さらに好ましくは30〜15,000mPa・s(25℃)の範囲内の粘度を有することができ、そして一般に100〜50,000、特に150〜30,000、さらに特に200〜10,000の範囲内の水酸基当量を有していることが好ましい。
【0043】
アミノ基含有化合物(C):
変性エポキシ樹脂(A)に反応せしめられるアミノ基含有化合物(C)は、変性エポキ
シ樹脂にアミノ基を導入して、該変性エポキシ樹脂をカチオン化するためのカチオン性付与成分であり、エポキシ基と反応する活性水素を少なくとも1個含有するものが用いられる。
【0044】
そのような目的で使用されるアミノ基含有化合物(C)としては、例えば、モノメチルアミン、ジメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、モノイソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、モノブチルアミン、ジブチルアミンなどのモノ−もしくはジ−アルキルアミン;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、モノ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、ジ(2−ヒドロキシプロピル)アミン、モノメチルアミノエタノール、モノエチルアミノエタノールなどのアルカノールアミン;エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ブチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、ジエチルアミノプロピルアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミンなどのアルキレンポリアミン;エチレンイミン、プロピレンイミンなどのアルキレンイミン;ピペラジン、モルホリン、ピラジンなどの環状アミンなどが挙げられる。また、これら上記のアミンと、1級アミンをケチミン化したアミンとを併せて用いることもできる。
【0045】
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I):
本発明のカチオン電着塗料組成物において樹脂成分として使用されるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)は、変性エポキシ樹脂(A)に、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)及びアミノ基含有化合物(C)をそれ自体既知の方法で付加反応させることにより製造することができる。
【0046】
変性エポキシ樹脂(A)に対するフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)及びアミノ基含有化合物(C)の反応は、任意の順序で行うことができるが、好ましくは、変性エポキシ樹脂(A)に対してフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)及びアミノ基含有化合物(C)を同時に付加反応させるのが好適である。
【0047】
上記の付加反応は溶媒中で行うことができ、使用し得る溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサンなどの炭化水素系溶媒;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルアミルケトンなどのケトン系溶媒;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;メタノール、エタノール、n−プロパノール、iso−プロパノールなどのアルコール系溶媒;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物;あるいはこれらの混合物などが挙げられる。
【0048】
上記付加反応における各成分の使用割合は、厳密に制限されるものではなく、電着塗料組成物の用途等に応じて適宜変えることができるが、変性エポキシ樹脂(A)、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド(B)及びアミノ基含有化合物(C)の合計固形分質量を基準にして、変性エポキシ樹脂(A)は一般に50〜90質量%、特に50〜85質量%、さらに特に53〜80質量%の範囲内、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)は一般に1〜35質量%、特に2〜30質量%、さらに特に2〜25質量%の範囲内、そしてアミノ基含有化合物(C)は一般に5〜25質量%、特に6〜20質量%、さらに特に6〜18質量%の範囲内が好適である。
【0049】
上記の付加反応は、通常、約80〜約170℃、好ましくは約90〜約150℃の温度で、1〜6時間程度、好ましくは1〜5時間程度行うことができる。
【0050】
架橋剤:
アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)は、樹脂成分の一部として、例えば、ブロックポリイソシアネート、メラミン樹脂などの架橋剤、特に、ブロックポリイソシアネート架橋剤と組合せて使用することにより、熱硬化性のカチオン電着塗料組成物を調製することができる。
【0051】
上記のブロックポリイソシアネート架橋剤は、ポリイソシアネート化合物とイソシアネートブロック剤とのほぼ化学理論量での付加反応生成物である。上記ポリイソシアネート化合物としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,2’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDI[ポリメチレンポリフェニルイソシアネート]、ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネートなどの芳香族、脂肪族又は脂環族ポリイソシアネート化合物;これらのポリイソシアネート化合物の環化重合体又はビゥレット体;又はこれらの組合せを挙げることができる。
【0052】
防食性の観点から、特に、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、フェニレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、クルードMDIなどの芳香族ポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0053】
一方、前記イソシアネートブロック剤は、ポリイソシアネート化合物のイソシアネート基に付加してブロックするものであり、そして付加によって生成するブロックポリイソシアネート化合物は常温において安定であるが、塗膜の焼付け温度(通常約100〜約200℃)に加熱した際、ブロック剤が解離して遊離のイソシアネート基を再生しうるものであることが望ましい。
【0054】
ブロック化ポリイソシアネート架橋剤に使用されるブロック剤としては、例えば、メチルエチルケトオキシム、シクロヘキサノンオキシムなどのオキシム系化合物;フェノール、パラ−t−ブチルフェノール、クレゾールなどのフェノール系化合物;n−ブタノール、2−エチルヘキサノールなどの脂肪族アルコール類;フェニルカルビノール、メチルフェニルカルビノールなどの芳香族アルキルアルコール類;エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルなどのエーテルアルコール系化合物;ε−カプロラクタム、γ−ブチロラクタムなどのラクタム系化合物などが挙げられる。
【0055】
樹脂成分におけるアミノ基含有変性エポキシ樹脂とブロックポリイソシアネート架橋剤との配合割合は、これら両成分の合計固形分質量を基準にして、アミノ基含有変性エポキシ樹脂は一般に50〜85質量%、好ましくは55〜80質量%、さらに好ましくは55〜78質量%、そしてブロックポリイソシアネート架橋剤は一般に15〜50質量%、好ましくは20〜45質量%、さらに好ましくは22〜45質量%の範囲内とすることができる。
【0056】
カチオン電着塗料組成物:
本発明のカチオン電着塗料組成物は、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)及び必要に応じて架橋剤、特に、ブロック化ポリイソシアネート架橋剤を、常法に従い塗料化することにより、具体的には、例えば、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)及び必要に応じて架橋剤を、界面活性剤、表面調整剤などの各種塗料用添加剤や有機溶剤などと共に十分に
混合した後、酸、例えば、酢酸、ギ酸、乳酸又はこれらの混合物などの水溶性有機カルボン酸で中和して水溶化又は水分散化し、得られるエマルションに顔料分散ペーストを加え、さらに水を加えて濃度を調整することにより調製することができる。
【0057】
顔料分散ペーストは、着色顔料、防錆顔料及び体質顔料などをあらかじめ微細粒子に分散したものであり、例えば、顔料分散剤、中和剤及び顔料を、ボールミル、サンドミル、ペブルミルなどの分散混合機中で分散処理することによって調製することができる。
【0058】
上記顔料分散剤としては、それ自体既知のものを使用することができ、例えば、水酸基及びカチオン性基を有する基体樹脂;界面活性剤;3級アミン型エポキシ樹脂、4級アンモニウム塩型エポキシ樹脂、3級スルホニウム塩型エポキシ樹脂などの顔料分散用樹脂が挙げられる。該顔料分散剤は、顔料100質量部あたり、通常1〜150質量部、特に10〜100質量部の範囲内で使用することができる。
【0059】
上記顔料としては、例えば、酸化チタン、カーボンブラック、ベンガラなどの着色顔料;クレー、マイカ、バリタ、炭酸カルシウム、シリカなどの体質顔料;リンモリブデン酸アルミニウム、トリポリリン酸アルミニウム、酸化亜鉛(亜鉛華)などの防錆顔料が挙げられる。
【0060】
本発明のカチオン電着塗料組成物には、腐食抑制又は防錆を目的として、必要に応じて、ビスマス化合物を含有させることができる。該ビスマス化合物としては、例えば、酸化ビスマス、水酸化ビスマス、塩基性炭酸ビスマス、硝酸ビスマス、ケイ酸ビスマス、有機酸ビスマスなどが挙げられる。
【0061】
本発明のカチオン電着塗料組成物には、また、塗膜硬化性の向上を目的として、ジブチル錫ジベンゾエート、ジオクチル錫オキサイド、ジブチル錫オキサイドなどの有機錫化合物を配合することができるが、前記の酸化亜鉛(亜鉛華)などの防錆顔料及び/又はビスマス化合物の添加量を増やすか及び/又は微細化することによって、これらの有機錫化合物を配合しなくても、塗膜の硬化性の向上を図ることができる。
【0062】
以上に述べた顔料、ビスマス化合物及び有機錫化合物の合計配合量は、樹脂成分、すなわち、アミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)と架橋剤と顔料分散用樹脂の合計固形分100質量部あたり、通常1〜100質量部、特に10〜50質量部の範囲内が好ましい。
【0063】
本発明のカチオン電着塗料組成物に使用し得る有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール(水溶解度:自由混合)、エチルアルコール(水溶解度:自由混合)、n−ブチルアルコール(水溶解度:7.7質量%)、イソプロピルアルコール(水溶解度:自由混合)、2−エチルヘキサノール(水溶解度:0.07質量%)、ベンジルアルコール(水溶解度:3.8質量%)、エチレングリコール(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコール(水溶解度:自由混合)などのアルコール系溶剤、;エチレングリコールモノエチルエーテル(水溶解度:自由混合)、エチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合)、エチレングリコールモノヘキシルエーテル(水溶解度:0.99質量%)、エチレングリコールモノ2−エチルヘキシルエーテル(水溶解度:0.09質量%)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコールモノメチルエーテル(水溶解度:自由混合)、プロピレングリコールモノフェニルエーテル(水溶解度:不溶)、3−メチル−3−メトキシブタノール(水溶解度:自由混合)、ジエチレングリコールモノエチルエーテル(水溶解度:自由混合)、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(水溶解度:自由混合)などのエーテル系溶剤;アセトン(水溶解度:自由混合)、メチルイソブチルケトン(水溶解度:2.0質量%)、シクロヘキサノン(水溶解度:5.0質量%)、イソホロン(水溶解度:1.2質量%)、アセチルアセ
トン(水溶解度:12.5質量%)などのケトン系溶剤;エチレングルコールモノエチルエーテルアセテート(水溶解度:22.9質量%)、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート(水溶解度:0.9質量%)などのエステル系溶剤;これらの混合物が挙げられる。
【0064】
本発明のカチオン電着塗料組成物から調製されるカチオン電着塗料浴は、揮発性有機化合物を低減しても、膜厚保持性、塗膜の仕上り性、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板上の電着塗装適性などの塗料性能を効果的に発揮させることができるという観点から、溶解性パラメーター8〜10で且つ水溶解度が95質量%以上である有機溶剤(D)の含有量が、該カチオン電着塗料浴の総質量を基準にして、1.0質量%以下、好ましくは0.5質量%以下であり、且つカチオン電着塗料浴の有機溶剤の総合計量が2.0質量%以下、好ましくは1.5質量%以下であることが好ましい。
【0065】
有機溶剤(D)として、具体的には、例えば、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルなどが挙げられる。
【0066】
また、本発明のカチオン電着塗料組成物が目的とする有機溶剤量の低減(低VOC化)を達成するためには、該カチオン電着塗料組成物の調製段階で得られるエマルションを脱溶剤することが好適である。かかる脱溶剤をすることにより、カチオン電着塗料浴における有機溶剤(D)の含有量及び有機溶剤の総合計量を上記の範囲内に抑制することができる。
【0067】
本発明のカチオン電着塗料組成物を適用することができる被塗物としては、例えば、冷延鋼板、合金化溶融亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛めっき鋼板、電気亜鉛−鉄二層めっき鋼板、有機複合めっき鋼板、Al材、Mg材などの金属素材、さらにこれらの金属素材に必要に応じてアルカリ脱脂などの処理を施した後、リン酸塩化成処理、クロメート処理などの表面処理を行ったもの;これらの金属素材から成形された自動車ボディ、2輪車部品、家庭用機器、その他の機器などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。特に、合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を含む被塗物が好適である。
【0068】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、電着塗装によって上記の如き被塗物の表面に塗装することができる。カチオン電着塗装は、一般に、脱イオン水などで希釈して固形分濃度を約5〜約40重量%とし、さらにpHを5.5〜9.0の範囲内に調整した本発明のカチオン電着塗料組成物からなる電着塗料浴を、通常、浴温約15〜約35℃に調整し、負荷電圧100〜400Vの条件で被塗物を陰極として通電することによって行うことができる。電着塗装後、通常、余分に付着したカチオン電着塗料を落とすために、限外濾過液(UF濾液)、逆浸透透過水(RO水)、工業用水、純水等で十分に水洗することができる。
【0069】
電着塗膜の厚さは、特に制限されるものではないが、硬化塗膜に基づいて一般に5〜40μm、好ましくは12〜30μmの範囲内とすることができる。また、塗膜の焼付けは、電着塗膜を、例えば、電気熱風乾燥機、ガス熱風乾燥機などの乾燥設備を用いて、塗装物表面の温度で通常110〜200℃、好ましくは140〜180℃にて、通常10〜180分間、好ましくは20〜50分間加熱することにより行うことができる。上記焼付けにより塗膜を硬化させることができる。
【0070】
かくして、防食性が良好な電着塗膜を有する塗装物品を得ることができる。
【実施例】
【0071】
以下、製造例、実施例及び比較例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明
はこれらのみに限定されるものではない。各例中の「部」は質量部、「%」は質量%を示す。
【0072】
製造例1 フェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂No.1の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのセパラブルフラスコに、50%ホルマリン480部、フェノール110部、98%工業用硫酸202部及びメタキシレン424部を仕込み、84〜88℃で4時間反応させた。反応終了後、静置して樹脂相を溶解しているキシレン溶液と硫酸水相とを分離した後、樹脂相を3回水洗し、20〜30mmHg/120〜130℃の条件で20分間処理して未反応メタキシレンを留去して、粘度1050mPa・s(25℃)のフェノール変性キシレンホルムアルデヒド樹脂No.1を480部得た。
【0073】
製造例2 基体樹脂No.1の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−920(注1)352部、jER828EL(注5)750部、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量が780になるまで反応させた。
【0074】
次に、メチルイソブチルケトン412部を加え、キシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.1溶液を得た。基体樹脂No.1は、アミン価が56mgKOH/gそして数平均分子量が2,000であった。
【0075】
製造例3 基体樹脂No.2の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−931(注3)352部、jER828EL(注5)938部、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量930になるまで反応させた。
【0076】
次いで、メチルイソブチルケトン489部を加えた後、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.2溶液を得た。基体樹脂No.2は、アミン価が48mgKOH/gそして数平均分子量が2,400であった。
【0077】
製造例4 基体樹脂No.3の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、グリシエールBPP−350(注4)340部、jER828EL(注5)938部、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量870になるまで反応させた。
【0078】
次いで、メチルイソブチルケトン456部を加え、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.3溶液を得た。基体樹脂No.3は、アミン価が51mgKOH/gそして数平均分子量が2,200であった。
【0079】
製造例5 基体樹脂No.4の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−821(注2)185部、jER828EL(注5)938部、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量790になるまで反応させた。
【0080】
次いで、メチルイソブチルケトン418部を加え、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.4溶液を得た。基体樹脂No.4は、アミン価が55mgKOH/gそして数平均分子量が2,000であった。
【0081】
製造例6 基体樹脂No.5の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−931(注3)56部、jER828EL(注5)938部、ビスフェノールA 356部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量680になるまで反応させた。
【0082】
次いで、メチルイソブチルケトン350部を加え、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 150部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.5溶液を得た。基体樹脂No.5は、アミン価が64mgKOH/gそして数平均分子量が1,700であった
【0083】
製造例7 基体樹脂No.6の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−931(注3)942部、jER828EL(注5)375部、ビスフェノールA 228部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量780になるまで反応させた。
【0084】
次いで、メチルイソブチルケトン409部を加え、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.6溶液を得た。基体樹脂No.6は、アミン価が57mgKOH/gそして数平均分子量が2000であった。
【0085】
比較製造例1 基体樹脂No.7の製造
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、デナコールEX−931(注3)352部、jER828EL(注5)938部、ビスフェノールA 456部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.8部を加え、160℃でエポキシ当量930になるまで反応させた。
【0086】
次いで、メチルイソブチルケトン450部を加え、ジエタノールアミン158部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.7溶液を得た。基体樹脂No.7は、ア
ミン価が57mgKOH/gそして数平均分子量が2,200であった。
【0087】
比較製造例2 基体樹脂No.8の製造(特開2003−221547号公報に準じる)
温度計、還流冷却器及び攪拌機を備えた内容積2リットルのフラスコに、jER828EL(注5)1050部、ビスフェノールA410部及びテトラブチルアンモニウムブロマイド0.6部を加え、160℃でエポキシ当量730になるまで反応させた。
【0088】
次いで、メチルイソブチルケトン388部を加え、製造例1で得たキシレンホルムアルデヒド樹脂No.1 180部、ジエタノールアミン136部及びジエチレントリアミンのメチルイソブチルケトンのケチミン化物95部(純度84%、メチルイソブチルケトン溶液)を加えて120℃で4時間反応させ、樹脂固形分80%のアミノ基含有変性エポキシ樹脂である基体樹脂No.8溶液を得た。基体樹脂No.8は、アミン価が59mgKOH/gそして数平均分子量が1,800であった。
【0089】
製造例2〜7、比較製造例1及び2の基体樹脂No.1〜No.8の配合内容及び特数を下記表1に示す。
【0090】
【表1】

【0091】
(注1)デナコールEX−920: ナガセケムテックス社製、商品名、エポキシ樹脂(ジエポキシ化合物(a1))、エポキシ当量176。
(注2)デナコールEX−821: ナガセケムテックス社製、商品名、エポキシ樹脂(ジエポキシ化合物(a1))、エポキシ当量185。
(注3)デナコールEX−931: ナガセケムテックス社製、商品名、エポキシ樹脂(ジエポキシ化合物(a1))、エポキシ当量471。
(注4)グリシエールBPP−350: 三洋化成工業社製、商品名、エポキシ樹脂 (ジエポキシ化合物(a1))、エポキシ当量340。
(注5)jER828EL: ジャパンエポキシレジン社製、商品名、エポキシ樹脂(a2)、エポキシ当量190、数平均分子量380。
【0092】
製造例8 硬化剤の製造
反応容器中に、コスモネートM−200(三井化学社製、商品名、クルードMDI)270部及びメチルイソブチルケトン127部を加え70℃に昇温した。この中にエチレン
グリコールモノブチルエーテル236部を1時間かけて滴下し、その後、100℃に昇温し、この温度を保ちながら、経時でサンプリングし、赤外線吸収スペクトル測定にて未反応のイソシアナト基の吸収がなくなったことを確認し、樹脂固形分が80%の硬化剤を得た。
【0093】
エマルションの製造
製造例9 エマルションNo.1の製造
製造例2で得られた基体樹脂No.1 87.5部(固形分70部)と製造例8で得られた硬化剤No.1 37.5部(固形分30部)を混合し、さらに10%酢酸13部を配合して均一に攪拌した後、脱イオン水156部を強く攪拌しながら約15分間を要して滴下してエマルションを得た。
【0094】
次いで、得られたエマルションを35℃、減圧下(50mmHg以下)にて、有機溶剤の抜き取り(いわゆる、脱ソルベント)を行って、エマルション中のメチルイソブチルケトンの含有量を1質量%以下とした。次に、該エマルション中にエチレングリコールモノブチルエーテル3部を加え、脱イオン水にて固形分を調整し、固形分34%のエマルションNo.1を得た。
【0095】
製造例10〜19 エマルションNo.2〜No.11の製造
下記表2に示す配合内容とする以外は、製造例9と同様にして、エマルションNo.2〜No.11を得た。
【0096】
【表2】

【0097】
製造例20 顔料分散用樹脂の製造
jER828EL(ジャパンエポキシレジン株式会社製、商品名、エポキシ樹脂)1010部に、ビスフェノールA 390部、プラクセル212(ダイセル化学工業株式会社、商品名、ポリカプロラクトンジオール、重量平均分子量約1,250)240部及びジメチルベンジルアミン0.2部を加え、130℃でエポキシ当量が約1090になるまで反応させた。
【0098】
次に、ジメチルエタノールアミン134部及び90%の乳酸水溶液150部を加え、120℃で4時間反応させた。さらに、メチルイソブチルケトンを加えて固形分を調整し、固形分60%のアンモニウム塩型樹脂系の顔料分散用樹脂を得た。上記分散用樹脂のアンモニウム塩濃度は0.78mmol/gであった。
【0099】
製造例21 顔料分散ペーストNo.1の製造
製造例20で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー7.0部、カーボンブラック0.3部、ジオクチル錫オキサイド1部、水酸化ビスマス1部及び脱イオン水20.2部を混合し、ボールミルにて20時間分散処理し、固形分55%の顔料分散ペーストNo.1を得た。
【0100】
製造例22 顔料分散ペーストNo.2の製造
製造例20で得た固形分60%の顔料分散用樹脂8.3部(固形分5部)、酸化チタン14.5部、精製クレー6.0部、カーボンブラック0.3部、酸化亜鉛3.0部及び脱イオン水20.2部を混合し、ボールミルにて20時間分散処理し、固形分55%の顔料分散ペーストNo.2を得た。
【0101】
カチオン電着塗料の製造
実施例1
製造例9で得られたエマルションNo.1 294部(固形分100部)に55%の顔料分散ペーストNo.1 52.4部(固形分28.8部)及び脱イオン水297.6部を加え、固形分20%のカチオン電着塗料No.1を製造した。
【0102】
実施例2〜9
実施例1と同様にして、下記表3に示す配合内容にてカチオン電着塗料No.2〜No.9を製造した。
【0103】
【表3】

【0104】
比較例1〜4
実施例1と同様にして、下記表4に示す配合内容にてカチオン電着塗料No.10〜No.13を製造した。
【0105】
【表4】

【0106】
試験板の作製
実施例及び比較例で得た各カチオン電着塗料を用い、パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛化成処理剤)を施した冷延鋼板(0.8mm×150mm×70mm)又は同様の化成処理を施した合金化溶融亜鉛メッキ鋼板(0.8mm×150mm×70mm)を被塗物として電着塗装し、試験板を作製し、得られた試験板を用いて後述の性能試験を行った。その結果を下記表5及び表6に示す。
【0107】
【表5】

【0108】
【表6】

【0109】
(注6)浴中の有機溶剤量の含有量: 各カチオン電着塗料をマイクロシリンジで10μlを採取し、GC−15A(島津製作所製、商品名、ガスクロマトグラフィー)に注入して、下記の条件で測定した。
条件:カラム WAX−10(スペルコ社製、商品名)、
カラム温度 5℃/minで200℃まで昇温、
キャリアガス He。
【0110】
(注7)有機溶剤A: エチレングリコールモノブチルエーテル、SP値8.87、水溶解度100質量%。
【0111】
(注8)有機溶剤B: ジエチレングリコールモノブチルエーテル、SP値9.78、水溶解度100質量%。
【0112】
(注9)合金化溶融亜鉛メッキ鋼板の電着塗装適性:
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの合金化溶融亜鉛メッキ鋼板を電着塗料浴(30℃)の陰極として浸漬し、210Vにて通電時間を調整して電着塗装し、20μmの塗膜を得た。得られた塗膜を170℃で20分間焼付け硬化を行い、得られたテストピースについて、10cm×10cmの領域中のピンホールの数を数え、次の基準で評価する。
◎:ピンホールの発生なし、
○:小さいピンホールが1個発生が認められるが、中塗り塗膜にて隠蔽できる程度で
問題なし。
△:ピンホールが2〜5個発生、
×:ピンホールが10個以上発生。
【0113】
(注10)防食性:
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延鋼板を各カチオン電着塗料浴中に浸漬して電着塗装を行った。
次いで、熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付けて硬化膜厚20μmの試験板
を得た。試験板の素地に達するように塗膜にカッターナイフでクロスカット傷を入れ、これをJIS Z−2371に準じて、35℃ソルトスプレー試験を840時間行い、カット部からの錆、フクレ幅及び一般部の塗面状態(ブリスター)によって以下の基準で評価した。
◎:錆又はフクレの最大幅がカット部より2.0mm以下(片側)、
○:錆又はフクレの最大幅がカット部より2.0mmを超え、かつ3.0mm以下(
片側)、
△:錆又はフクレの最大幅がカット部より3.0mmを超え、かつ3.5mm以下(
片側)、
×:錆又はフクレの最大幅がカット部より3.5mmを超える。
【0114】
(注11)耐暴露性:
上記防食性試験と同様の条件で作製した試験板に、WP−300(関西ペイント株式会社製、商品名、水性中塗り塗料)を、硬化膜厚が25μmとなるようにスプレー塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃で30分焼き付けを行なった。
さらに、上記中塗塗膜上に、ネオアミラック6000(関西ペイント株式会社製、商品名、上塗り塗料)を、硬化膜厚が35μmとなるようにスプレー塗装した後、電気熱風乾燥器で140℃で30分間焼き付け、暴露試験板を作製した。
得られた暴露試験板上の塗膜に、素地に達するようにナイフでクロスカットキズを入れ、千葉県千倉町(海岸部)で水平にて1年間暴露した後、ナイフ傷からの錆、フクレ幅によって以下の基準で評価した。
各評価については、錆又はフクレの最大幅が、
◎はカット部から片側2mm未満、
○はカット部から片側2mm以上、3mm未満、
△はカット部から片側3mm以上、4mm未満、
×はカット部から片側4mm以上、
を表す。
【0115】
(注12)仕上り性:
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延鋼板を、各カチオン電着塗料浴中に浸漬し、電着塗装を行って得た塗膜を熱風乾燥機によって170℃で20分間焼き付け、得られる電着塗膜の表面粗度Ra値を、サーフテスト301(株式会社 ミツトヨ社製、商品名、表面粗さ測定機)で測定し、次の基準で評価した。
○:Ra値が0.25未満、
△:Ra値が0.25以上で、かつ0.35未満、
×:Ra値が0.35を越える。
【0116】
(注13)塗料安定性(水分散性):
各々のカチオン電着塗料を30℃にて30日間容器を密閉して攪拌した。その後、カチオン電着塗料を400メッシュ濾過網にて全量濾過し、濾過網上の残さ量(mg/L)を測定し、カチオン電着塗料の水分散性の判断基準とした。
◎:5mg/L未満、
○:5mg/L以上で、かつ10mg/L未満、
△:10mg/L以上で、かつ15mg/L未満、
×:15mg/L以上。
【0117】
(注14)膜厚保持性:
パルボンド#3020(日本パーカライジング社製、商品名、リン酸亜鉛処理剤)で化成処理した0.8×150×70mmの冷延鋼板を、各カチオン電着塗料浴中に浸漬し、
250V−3分間電着塗装を行い塗膜(1)を測定した。各々のカチオン電着塗料を30℃にて10日間容器を開放して攪拌した。その後、該冷延鋼板を各カチオン電着塗料浴中に浸漬し、250V−3分間電着塗装を行って塗膜(2)を測定し、次の基準で評価した。
◎:塗膜(1)と塗膜(2)の厚さの差が1μm未満である、
○:塗膜(1)と塗膜(2)の厚さの差が1μm以上で、かつ4μm未満である、
△:塗膜(1)と塗膜(2)の厚さの差が4μm以上で、かつ7μm未満である、
×:塗膜(1)と塗膜(2)の厚さの差が7μmを超える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A) 一般式(1)
【化1】

[式中、m+n個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、m及びnはそれぞれ0又は1〜20の整数であり且つm+nは1〜20である]
で示される化合物(a11)及び一般式(2)
【化2】

[式中、y個のRは同一又は相異なり、それぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、xは1〜9の整数であり、yは1〜50の整数である]
で示される化合物(a12)よりなる群から選ばれるジエポキシ化合物(a1)と、エポキシ当量が170〜500のエポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)とを反応させることにより得られる変性エポキシ樹脂
(B) フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂、及び
(C) アミノ基含有化合物
を反応させることにより得られるアミノ基含有変性エポキシ樹脂(I)を樹脂成分として含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
及びRがそれぞれ水素原子又はメチル基を表す請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
及びRがそれぞれメチル基である請求項1に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
エポキシ樹脂(a2)が340〜1,500の数平均分子量を有するものである請求項1〜3のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
エポキシ樹脂(a2)が式(5)
【化3】

[式中、nは0〜2である]
で示されるものである請求項1〜4のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
ビスフェノール類(a3)が一般式(6)
【化4】

[式中、R及びRはそれぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表し、R、R、R、R10、R11、R12、R13及びR14はそれぞれ水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基を表す]
で示される化合物である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項7】
変性エポキシ樹脂(A)が、ジエポキシ化合物(a1)、エポキシ樹脂(a2)及びビスフェノール類(a3)の固形分合計質量を基準にして、1〜35質量%のジエポキシ化合物(a1)、10〜80質量%のエポキシ樹脂(a2)及び10〜60質量%のビスフェノール類(a3)を反応させることにより得られる請求項1〜6のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項8】
変性エポキシ樹脂(A)が500〜3,000のエポキシ当量を有するものである請求項1〜7のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項9】
フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)が20〜50,000mPa・s(25℃)の粘度及び100〜50,000の水酸基当量を有するものである請求項1〜8のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項10】
変性エポキシ樹脂(A)、フェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド(B)及びアミノ基含有化合物(C)の合計固形分質量を基準にして、50〜90質量%の変性エポキシ樹脂(A)、1〜35質量%のフェノール性水酸基を有するキシレンホルムアルデヒド樹脂(B)及び5〜25質量%のアミノ基含有化合物(C)を含有する請求項1〜9のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項11】
樹脂成分としてブロック化ポリイソシアネート硬化剤をさらに含有する請求項1〜10のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物を含有する電着塗料浴であって、溶解性パラメーターが8〜10で且つ水溶解度が95質量%以上である有機溶剤(D)の含有量が、電着塗料浴の総質量を基準にして、1.0質量%以下であり且つ有機溶剤の合計含有量が2.0質量%以下であるカチオン電着塗料浴。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれか1項に記載のカチオン電着塗料組成物又は請求項12に記載のカチオン電着塗料浴を用いて電着塗装することにより得られる塗装物品。

【公開番号】特開2009−1781(P2009−1781A)
【公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−126202(P2008−126202)
【出願日】平成20年5月13日(2008.5.13)
【出願人】(000001409)関西ペイント株式会社 (815)
【Fターム(参考)】