説明

カチオン電着塗料組成物

本発明は、顔料沈降安定性および再分散性に優れる、樹脂微粒子を含むカチオン電着塗料組成物に関する。本発明のカチオン電着塗料組成物は、平均粒径が0.5μm以上15μm未満である樹脂微粒子を、塗料固形分に対して1〜30重量%の量で含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顔料沈降安定性および再分散性に優れる、樹脂微粒子を含むカチオン電着塗料組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
電着塗装は、電着塗料組成物中に被塗物を浸漬させ、電圧を印加することにより行なわれる塗装方法である。この方法は、複雑な形状を有する被塗物であっても細部にまで塗装を施すことができ、自動的かつ連続的に塗装することができるので、特に自動車車体等の大型で複雑な形状を有する被塗物の下塗り塗装方法として広く実用化されている。
【0003】
一般に電着塗料組成物には、多量の防錆顔料および体質顔料が、防錆効果および塗膜物性の向上を目的として加えられている。これらの顔料は、塗料組成物中において水性媒体中に分散した状態にある。これらの顔料は一般に無機顔料であって比重が高く、そのため電着塗料組成物中において沈降が生じやすい。例えば無機顔料を含む従来の電着塗料組成物は、ほんの数時間の静置によって無機顔料が沈降する。そして沈降した顔料は強固に凝集するため、再び撹拌を行なっても元の分散状態に戻すことは非常に困難である。このような凝集を防ぐため、電着塗料組成物を含む電着槽および補給タンクは常時撹拌が必要となり、これが塗装業者の設備およびエネルギー費用における負担となっている。
【0004】
さらに、比重の高い無機顔料は、電着塗装中においても沈降が生じやすい。電着塗装中に沈降した沈降物は、被塗物の水平上面上に降り積もることがある。これは、肌荒れ、塗装ムラ等を有する塗膜をもたらす原因となる。自動車車体等の大型であり、かつ水平部面積の大きな被塗物の塗装では、これらは特に大きな問題となる。
【0005】
特開平6−73314号公報(特許文献1)には、ラジカル重合性モノマーを共重合して得られる架橋微小樹脂粒子を含有することを特徴とするカチオン電着塗料組成物が記載されている。この塗料組成物は、酸化チタンおよびカオリンなどの無機顔料を30重量%以上含むものである。電着塗料組成物中に無機顔料が多く含まれる場合は、沈降や凝集を避けることができず、また肌荒れなどの塗膜欠陥も回避することができない。
【0006】
また特開平6−340832号公報(特許文献2)には、電着塗料の樹脂固形分100重量部に対して、球状の高純度アモルファスシリカ粉を0.1〜40重量部含有することを特徴とする電着塗料組成物が記載されている。この球状の高純度アモルファスシリカ粉を用いることによって、電着塗料浴中におけるチタン白や防錆性顔料などの沈降を防止できると記載されている。しかしこのような塗料組成物は、放置等により一旦顔料等が沈降した場合に再分散させるのが困難であるという欠点がある。
【0007】
特開2001−205183号公報(特許文献3)には、自動車車体の主たる外面部にプラスチック被覆金属を使用してシェルボデーを形成せしめ、ついでこのシェルボデーにおける金属露出部分を、着色顔料を含まず且つ浴固形分含有率が10重量%以下である、透明塗膜を形成しうる電着塗料を用いて電着塗装することを特徴とする自動車車体の被覆方法が記載されている。そしてこの特許文献3の請求項6および実施例4には、電着塗料がゲル化微粒子を含有する態様が記載されている。しかしながら、このゲル化微粒子と、本発明における樹脂微粒子とは、製造方法が大きく異なるものであり、そしてこれらの粒子の有する粒径もまた大きく異なるものである。また特許文献3に記載される発明は、金属露出部分とプラスチック被覆膜との境界部分に電着塗料を容易に析出させることにより耐食性、防食性を改良することを課題としている点においても、本発明の課題とは異なるものである。
【0008】
【特許文献1】特開平6−73314号公報
【特許文献2】特開平6−340832号公報
【特許文献3】特開2001−205183号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、沈降、凝集および肌荒れの問題を解決するものであり、その目的とするところは、顔料沈降安定性および再分散性に優れる、特定の樹脂微粒子を含む電着塗料組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、平均粒径が0.5μm以上15μm未満である樹脂微粒子を、塗料固形分に対して1〜30重量%の量で含有する、カチオン電着塗料組成物を提供するものであり、これにより上記目的が達成される。
【0011】
上記樹脂微粒子の比重が0.95〜1.30であるのが好ましい。
【0012】
上記カチオン電着塗料組成物は、さらにカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むカチオン電着塗料組成物であるのが好ましい。
【0013】
本発明の1態様として、塗料固形分に対する顔料の濃度が10重量%以下であるカチオン電着塗料組成物が挙げられる。
【0014】
本発明の他の1態様として、顔料を含まないカチオン電着塗料組成物が挙げられる。
【0015】
本発明の他の1態様として、塗料固形分に対する顔料の濃度が0.1〜10重量%であるカチオン電着塗料組成物が挙げられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、平均粒径が0.5μm以上15μm未満である樹脂微粒子を、塗料固形分に対して1〜30重量%含むことを特徴とする。この樹脂微粒子は、通常使用される無機体質顔料などの顔料と比べて比重が軽く、そのため電着塗料組成物中の固形分成分の沈降が低減されている。本発明の電着塗料組成物は、長時間静置させた場合であっても沈殿物が少なく、かつこの生じた沈殿物は再撹拌によって容易に再分散させることができる。そのため、電着塗料組成物の貯蔵における常時撹拌、および電着塗装における電着槽の常時撹拌を必要とせず、撹拌を省略したり断続的に撹拌させたりすることができる。これにより、電着塗装における塗装コストを削減することができる。
【0017】
さらに、本発明の電着塗料組成物は沈降安定性に優れるため、電着塗装中においても沈降が生じ難い。そのため、塗装中に沈降した沈殿物の、被塗物の水平上面上への降り積もりが低減されており、外観、特に水平外観が良好な塗膜を得ることができる。
【0018】
加えて、本発明の電着塗料組成物中に含まれる樹脂微粒子の平均粒径、および塗料固形分に対する樹脂微粒子の濃度の選択により、得られる硬化塗膜のグロスを所望の値に制御することができる。さらに、本発明の電着塗料組成物は樹脂微粒子を含むことにより、良好なハジキ防止性(油混入ハジキ性)を有する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
電着塗料組成物
本発明のカチオン電着塗料組成物は、水性媒体、水性媒体中に分散するか又は溶解した、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂、中和酸、有機溶媒および樹脂微粒子を含有する。このカチオン電着塗料組成物はさらに、顔料を含んでもよい。
【0020】
樹脂微粒子
本発明の電着塗料組成物は、樹脂微粒子を含有することを特徴とする。本明細書中の樹脂微粒子は、粒子内に架橋構造を有していてもよく、その架橋は分子内、分子間およびその混合のいずれでもよい。樹脂微粒子として、一般に、アクリル樹脂、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスチレン、塩化ビニルなどの有機高分子系の微粒子、およびシリコーンやフッ素などの無機成分を含有する樹脂微粒子が含まれる。
【0021】
好ましい樹脂微粒子として、アクリル樹脂、塩化ビニル、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリスチレン樹脂、セルロース、ポリエチレン、メラミン、ベンゾグアナミン、ポリアクリロニトリル、ポリプロピレン、ポリアミド、ポリカーボネート等の樹脂微粒子が挙げられる。
【0022】
アクリル樹脂の微粒子を使用する場合、架橋アクリル樹脂の微粒子を使用するのがより好ましい。架橋アクリル樹脂を使用することにより、硬化塗膜の機械的強度、耐熱水性および耐溶剤性が改善され得るからである。
【0023】
本発明で使用される樹脂微粒子の平均粒径は0.5μm以上15μm未満であり、好ましくは0.5〜10μmであり、より好ましくは0.8〜10μmであり、さらに好ましくは1〜8μmである。樹脂微粒子の平均粒径が0.5μm未満である場合、および15μmまたはそれ以上である場合は、良好な水平外観を有する塗膜を得られないことがある。
【0024】
平均粒径とは、一般に粒子の粒度(粒径が粗いか細かいか)を表わすために用いられ、重量50%に相当するメジアン径や算術平均径、表面積平均径、体積面積平均径などが使用される。本発明に用いる樹脂微粒子の平均粒径は、レーザー回折散乱式粒径分布測定装置により測定されるメジアン径を示す。
【0025】
本発明で用いられるこの樹脂微粒子は、従来電着塗料の分野で用いられてきたゲル化微粒子、マイクロゲル微粒子などとは異なるものである。これらのゲル化微粒子、マイクロゲル微粒子は一般に、平均粒径10〜300nm程である。特開2001−205183号公報(特許文献3)で用いられるゲル化微粒子についても、「その粒子の粒径は500nm以下、特に10〜300nm、さらに特に50〜100nmであることが好ましい。」と記載されている(第0054段落)。これらの微粒子は乳化重合によって調製され、それによりこのような平均粒径を有する微粒子が得られることとなる。乳化重合は、モノマーの一部と界面活性剤とを水中に乳化させ、そしてこの乳濁液にモノマーを滴下することによって行われる。乳化重合においては、水性の重合開始剤が用いられる。
【0026】
一方、本発明で用いられる樹脂微粒子は、懸濁重合により調製される。懸濁重合によって調製することによって、樹脂微粒子の平均粒径0.5〜15μm程と、乳化重合により得られる微粒子と比較して、大きな粒径を有する樹脂微粒子が得られることとなる。ここで懸濁重合とは、不飽和化合物であるモノマーが互いに多数付加して高分子となる付加重合反応を、大量の水中にモノマーを分散・懸濁させて行う方法である。重合開始剤は、モノマーに溶解するものが用いられる。重合反応は懸濁したモノマーの液滴(油滴)中で起こり、この液滴がそのまま高分子となり、液滴とほぼ同じ大きさの樹脂微粒子が得られることとなる。
【0027】
なお、懸濁重合においては、適した分散樹脂を用いてもよい。分散樹脂を用いることによって、モノマーの油滴の大きさを制御することができ、そして得られる樹脂微粒子の平均粒径の大きさを制御することができる。用いることができる分散樹脂として、例えばカチオン変性アクリル樹脂、カチオン変性エポキシ樹脂、カチオン変性ポリブタジエン樹脂などが挙げられる。なお、平均粒径0.5〜1μmを有するサブミクロンサイズの樹脂微粒子を懸濁方法により調製する方法は、ミニエマルション調製法と呼ばれることがある。このミニエマルション調製法は、高性能乳化装置を用いて、モノマーの油滴をサブミクロンサイズにまで微粒子化した後、懸濁重合を行う製法である。
【0028】
電着塗料組成物の塗料固形分に対する樹脂微粒子の濃度は、1〜30重量%、好ましくは3〜15重量%である。樹脂微粒子の濃度が30重量%を超えると、得られる塗膜の水平外観が劣ることがある。また、樹脂微粒子の濃度が1重量%を下まわると、良好な油混入ハジキ性が得られないことがある。ハジキは、一般に、塗料組成物に含まれる低分子量の有機化合物や外部から被塗物に付着していた油等が、その後の加熱硬化工程で突沸して生じる塗膜の欠陥である。
【0029】
使用する樹脂微粒子の平均粒径および電着塗料組成物の塗料固形分に対する樹脂微粒子の濃度を、上に規定の範囲内で変化させることによって、硬化塗膜のグロスを5〜100の範囲で調節することができる。一般に、使用する樹脂微粒子の平均粒径が大きい場合、および樹脂微粒子の濃度が高い場合に、グロスは低くなる。
【0030】
本発明で使用される樹脂微粒子の比重は0.95〜1.30であるのが好ましく、0.98〜1.20であるのがより好ましい。樹脂微粒子の比重が0.95未満では、塗料組成物中で樹脂微粒子が浮いてしまう恐れがある。一方、比重が1.30を超えると、塗料組成物中における樹脂微粒子の沈降性が悪化して沈殿が生じ、塗膜の水平外観が悪くなる恐れがある。
【0031】
本発明の塗料組成物は、顔料を含んでもよく、また含まなくてもよい。電着塗料組成物中に顔料を含める場合は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下の濃度、例えば0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%の濃度で含有させるのが好ましい。顔料濃度が10重量%を超える場合は、電着組成物の再分散性および得られる塗膜の水平外観が劣るおそれがある。さらに、本発明の電着塗料組成物は、顔料を全く含まなくてもよい。電着塗料組成物は、電着塗装後の塗膜状態の欠陥の有無を検査するための、必要最小限の着色を施すのに必要とされる、微量の顔料を含むのが好ましい。そしてこれは、通常の電着塗料組成物における顔料含有量と比べると、大きく低減されている。このように顔料の含有量が低いことによって生じ得る不利益として、電着塗膜の隠蔽性および耐食性の低下が挙げられる。
【0032】
本発明において、上記のような特定の樹脂微粒子を用いることによって、このような電着塗膜の隠蔽性、耐食性の低下を伴うことなく、顔料含有量を低減させる、または顔料含有量を0とすることが可能となった。本発明における樹脂微粒子を電着塗料組成物中に含有させる場合、この樹脂微粒子は、電着塗装において塗膜の表面付近に配向する。それにより、塗膜の表面粗度を損なうことなく、言いかえると塗膜の平滑性を保持しつつ、樹脂微粒子とバインダー樹脂との屈折率の差に基づいて、塗膜のグロス値を任意に調整することが可能となる。この調整によって、塗膜の隠蔽性を確保することができる。
【0033】
また、本発明の樹脂微粒子を加えることによって、電着塗装における塗膜析出時および塗膜フロー焼付け時の粘性が適度に上昇するという効果も得ることができる。すなわち、樹脂微粒子が粘性調節剤として作用し、それにより塗膜の膜厚が確保でき、耐食性が向上する。また、上記の樹脂微粒子のTgは一般に、バインダー成分のTgよりも高いため、このような樹脂微粒子を用いることによって耐食性を向上させる効果を得ることもできる。
【0034】
好ましい樹脂微粒子として、積水化成品工業社製、商品名「テクポリマー」シリーズおよび綜研化学社製、商品名「ケミスノー」などが挙げられる。「テクポリマー」は、懸濁重合により得られる架橋アクリル樹脂の微粒子であり、「ケミスノー」は、懸濁重合により得られる架橋アクリル樹脂の微粒子である。
【0035】
樹脂微粒子は、予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(樹脂微粒子分散ペースト)にすることにより、電着塗料組成物に樹脂微粒子を低濃度均一状態に分散させるのが容易となる。さらに、水性媒体中に分散または溶解可能な顔料分散樹脂で樹脂微粒子を分散させることにより、樹脂微粒子の表面が顔料分散樹脂に覆われると考えられる。これにより樹脂微粒子はイオン化され、電着塗料組成物中では安定に分散し、また電着塗装工程においては、電圧の印加により樹脂微粒子が析出し易くなると考えられる。
【0036】
樹脂微粒子分散ペーストは、例えば、樹脂微粒子を顔料分散樹脂ワニスに投入し、攪拌混合機などを用いて1〜30分間混合して調製することができる。顔料分散樹脂ワニスとは、顔料分散樹脂を水性媒体中に分散させたものである。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。一般に、顔料分散樹脂は、樹脂微粒子100質量部に対して固形分比5〜100質量部の量で用いる。但し、用いられる樹脂微粒子が、カチオン性分散樹脂を用いる懸濁重合によって調製された樹脂微粒子である場合には、上記の顔料分散工程を実施する必要はない場合もある。
【0037】
樹脂微粒子は、このようにあらかじめ分散ペーストの形態に調製して使用してよく、又は顔料分散ペーストを調製する際に顔料と共に分散させて使用してよい。さらに、懸濁重合法により調製した樹脂微粒子を、懸濁状態(スラリー状)のまま、直接塗料組成物の調製に使用することもできる。その他、界面活性剤を含む水性媒体中に樹脂粒子を分散させた状態で、塗料組成物の調製に使用することもできる。
【0038】
カチオン性エポキシ樹脂
本発明で用いるカチオン性エポキシ樹脂には、アミンで変性されたエポキシ樹脂が含まれる。カチオン性エポキシ樹脂は、典型的には、ビスフェノール型エポキシ樹脂のエポキシ環の全部をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環するか、または一部のエポキシ環を他の活性水素化合物で開環し、残りのエポキシ環をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物で開環して製造される。
【0039】
ビスフェノール型エポキシ樹脂の典型例はビスフェノールA型またはビスフェノールF型エポキシ樹脂である。前者の市販品としてはエピコート828(油化シェルエポキシ社製、エポキシ当量180〜190)、エピコート1001(同、エポキシ当量450〜500)、エピコート1010(同、エポキシ当量3000〜4000)などがあり、後者の市販品としてはエピコート807(同、エポキシ当量170)などがある。
【0040】
特開平5−306327号公報に記載される、下記式
【0041】
【化1】

【0042】
[式中、Rはジグリシジルエポキシ化合物のグリシジルオキシ基を除いた残基、R’はジイソシアネート化合物のイソシアネート基を除いた残基、nは正の整数を意味する。]で示されるオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂をカチオン性エポキシ樹脂に用いてもよい。耐熱性及び耐食性に優れた塗膜が得られるからである。
【0043】
エポキシ樹脂にオキサゾリドン環を導入する方法としては、例えば、メタノールのような低級アルコールでブロックされたブロックイソシアネート硬化剤とポリエポキシドを塩基性触媒の存在下で加熱保温し、副生する低級アルコールを系内より留去することで得られる。
【0044】
特に好ましいエポキシ樹脂はオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂である。耐熱性及び耐食性に優れ、更に耐衝撃性にも優れた塗膜が得られるからである。
【0045】
二官能エポキシ樹脂とモノアルコールでブロックしたジイソシアネート(すなわち、ビスウレタン)とを反応させるとオキサゾリドン環を含有するエポキシ樹脂が得られることは公知である。このオキサゾリドン環含有エポキシ樹脂の具体例及び製造方法は、例えば、特開2000−128959号公報第0012〜0047段落に記載されており、公知である。なおこの特開2000−128959号は、優先権主張出願である米国特許第6664345号の基礎出願であり、そしてこの米国特許第6664345号を出典明示により本明細書の一部とする。
【0046】
これらのエポキシ樹脂は、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、および単官能性のアルキルフェノールのような適当な樹脂で変性しても良い。また、エポキシ樹脂はエポキシ基とジオール又はジカルボン酸との反応を利用して鎖延長することができる。
【0047】
これらのエポキシ樹脂は、開環後0.3〜4.0meq/gのアミン当量となるように、より好ましくはそのうちの5〜50%が1級アミノ基が占めるように活性水素化合物で開環するのが望ましい。
【0048】
カチオン性基を導入し得る活性水素化合物としては1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩、スルフィド及び酸混合物がある。1級、2級又は/及び3級アミノ基含有エポキシ樹脂を調製するためには1級アミン、2級アミン、3級アミンの酸塩をカチオン性基を導入し得る活性水素化合物として用いる。
【0049】
具体例としては、ブチルアミン、オクチルアミン、ジエチルアミン、ジブチルアミン、メチルブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、N−メチルエタノールアミン、トリエチルアミン塩酸塩、N,N−ジメチルエタノールアミン酢酸塩、ジエチルジスルフィド・酢酸混合物などのほか、アミノエチルエタノールアミンのケチミン、ジエチレントリアミンのジケチミンなどの1級アミンをブロックした2級アミンがある。アミン類は複数の種類を併用して用いてもよい。
【0050】
ブロックイソシアネート硬化剤
本発明のブロックイソシアネート硬化剤で使用するポリイソシアネートとは、1分子中にイソシアネート基を2個以上有する化合物をいう。ポリイソシアネートとしては、例えば、脂肪族系、脂環式系、芳香族系および芳香族−脂肪族系等のうちのいずれであってもよい。
【0051】
ポリイソシアネートの具体例には、トリレンジイソシアネート(TDI)、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)、p−フェニレンジイソシアネート、及びナフタレンジイソシアネート等のような芳香族ジイソシアネート;ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)、2,2,4−トリメチルヘキサンジイソシアネート、及びリジンジイソシアネート等のような炭素数3〜12の脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキサンジイソシアネート(CDI)、イソホロンジイソシアネート(IPDI)、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート(水添MDI)、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネート、及び1,3−ジイソシアナトメチルシクロヘキサン(水添XDI)、水添TDI、2,5−もしくは2,6−ビス(イソシアナートメチル)−ビシクロ[2.2.1]ヘプタン(ノルボルナンジイソシアネートとも称される。)等のような炭素数5〜18の脂環式ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート(XDI)、及びテトラメチルキシリレンジイソシアネート(TMXDI)等のような芳香環を有する脂肪族ジイソシアネート;これらのジイソシアネートの変性物(ウレタン化物、カーボジイミド、ウレトジオン、ウレトンイミン、ビューレット及び/又はイソシアヌレート変性物);等があげられる。これらは、単独で使用したり、または2種以上を併用することができる。
【0052】
ポリイソシアネートをエチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールなどの多価アルコールとNCO/OH比2以上で反応させて得られる付加体ないしプレポリマーもブロックイソシアネート硬化剤として使用してよい。
【0053】
ブロック剤は、ポリイソシアネート基に付加し、常温では安定であるが解離温度以上に加熱すると遊離のイソシアネート基を再生し得るものである。
【0054】
ブロック剤としては、通常使用されるε−カプロラクタムやブチルセロソルブ等を用いることができる。
【0055】
顔料
本発明の電着塗料組成物には通常用いられる顔料を含有させてもよい。但し、本明細書でいう「顔料」には、前述の樹脂微粒子は含まれない。使用し得る顔料の例としては、通常使用される無機顔料、例えば、チタンホワイト、カーボンブラック及びベンガラのような着色顔料;カオリン、タルク、ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、マイカおよびクレーのような体質顔料;リン酸亜鉛、リン酸鉄、リン酸アルミニウム、リン酸カルシウム、亜リン酸亜鉛、シアン化亜鉛、酸化亜鉛、トリポリリン酸アルミニウム、モリブデン酸亜鉛、モリブデン酸アルミニウム、モリブデン酸カルシウム及びリンモリブデン酸アルミニウム、リンモリブデン酸アルミニウム亜鉛のような防錆顔料等、が挙げられる。
【0056】
これらの顔料は電着塗料組成物中に含めてもよく、また含めなくてもよい。電着塗料組成物中に顔料を含める場合は、電着塗料組成物の塗料固形分に対して10重量%以下の濃度、例えば0.1〜10重量%、より好ましくは0.2〜8重量%、さらに好ましくは0.2〜5重量%の濃度で含有させるのが好ましい。また本発明の電着塗料組成物は、上記の通り顔料を含まなくても良好な隠蔽性、粘性などを有するものである。顔料濃度が10重量%を超える場合は、電着組成物の再分散性および得られる塗膜の水平外観が劣るおそれがある。
【0057】
顔料を電着塗料の成分として用いる場合、一般に顔料を予め高濃度で水性媒体に分散させてペースト状(顔料分散ペースト)にする。顔料は粉体状であるため、電着塗料組成物で用いる低濃度均一状態に一工程で分散させるのは困難だからである。一般にこのようなペーストを顔料分散ペーストという。
【0058】
顔料分散ペーストは、顔料を顔料分散樹脂ワニスと共に水性媒体中に分散させて調製する。顔料分散樹脂としては、一般に、カチオン性又はノニオン性の低分子量界面活性剤や4級アンモニウム基及び/又は3級スルホニウム基を有する変性エポキシ樹脂等のようなカチオン性重合体を用いる。水性媒体としてはイオン交換水や少量のアルコール類を含む水等を用いる。
【0059】
一般に、顔料分散樹脂は、顔料100質量部に対して固形分比20〜100質量部の量で用いる。顔料分散樹脂ワニスと顔料とを混合した後、その混合物中の顔料の粒径が所定の均一な粒径となるまで、ボールミルやサンドグラインドミル等の通常の分散装置を用いて分散させて、顔料分散ペーストを得る。
【0060】
本発明の電着塗料組成物は、上記成分の他に、ジブチル錫ラウレート、ジブチル錫オキシド、ジオクチル錫オキシドなどの有機錫化合物、N−メチルモルホリンなどのアミン類、ストロンチウム、コバルト、銅などの金属塩を触媒として含んでもよい。これらは、硬化剤のブロック剤解離のための触媒として作用し得る。触媒の濃度は、電着塗料組成物中のカチオン性エポキシ樹脂と硬化剤合計の100固形分質量部に対して0.1〜6質量部であるのが好ましい。
【0061】
電着塗料組成物の調製
本発明の電着塗料組成物は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、樹脂微粒子分散ペースト、及び必要に応じた顔料分散ペーストおよび触媒を水性媒体中に分散することによって調製できる。また、通常、水性媒体にはカチオン性エポキシ樹脂を中和して、バインダー樹脂エマルションの分散性を向上させるために中和酸を含有させる。中和酸は塩酸、硝酸、リン酸、ギ酸、酢酸、乳酸のような無機酸または有機酸である。
【0062】
使用される中和酸の量は、カチオン性エポキシ樹脂及びブロックイソシアネート硬化剤を含むバインダー樹脂固形分100gに対して10〜25mg当量、好ましくは15〜20mg当量である。中和酸の量が10mg当量未満であると水への親和性が十分でなく水への分散ができないか、著しく安定性に欠ける状態となり、25mg当量を越えると析出に要する電気量が増加し、塗料固形分の析出性が低下し、つきまわり性が劣る状態となる。
【0063】
カチオン性エポキシ樹脂、及び硬化剤としてブロックイソシアネートを配合し、水性媒体にこれらを分散させる方法として、カチオン性エポキシ樹脂にブロックイソシアネートを溶液状態で混合してエマルションとする方法がある。
【0064】
ブロックイソシアネート硬化剤の量は、硬化時にカチオン性エポキシ樹脂中の1級、2級アミノ基、水酸基、等の活性水素含有官能基と反応して良好な硬化塗膜を与えるのに十分でなければならず、一般にカチオン性エポキシ樹脂と、ブロックイソシアネート硬化剤との固形分質量比(エポキシ樹脂/硬化剤)で表して一般に90/10〜50/50、好ましくは80/20〜65/35の範囲である。
【0065】
有機溶媒は、カチオン性エポキシ樹脂、ブロックイソシアネート硬化剤、顔料分散樹脂等の樹脂成分を合成する際に溶剤として必要であり、完全に除去するには煩雑な操作を必要とする。また、バインダー樹脂に有機溶媒が含まれていると造膜時の塗膜の流動性が改良され、塗膜の平滑性が向上する。
【0066】
塗料組成物に通常含まれる有機溶媒としては、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノエチルヘキシルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノフェニルエーテル等が挙げられる。
【0067】
塗料組成物は、上記のほかに、可塑剤、界面活性剤、酸化防止剤、及び紫外線吸収剤などの常用の塗料用添加剤を含むことができる。
【0068】
本発明のカチオン電着塗料組成物は、塗料組成物中に含まれる固形分は1〜30重量%であるのが好ましく、2〜20重量%であるのがさらに好ましい。そして本発明のカチオン電着塗料組成物は、このような固形分を有する電着塗料組成物であっても、沈降安定性および再分散性に優れるという、優れた効果を有する。本発明の電着塗料組成物によって、十分な膜厚を有し、そして塗膜外観に優れる電着塗膜を得ることができる。
【0069】
本発明の電着塗料組成物は被塗物に電着塗装され、電着塗膜を形成する。被塗物としては導電性のあるものであれば特に限定されず、例えば、鉄板、鋼板、アルミニウム板及びこれらを表面処理したもの、これらの成型物等を挙げることができる。
【0070】
電着塗装は、被塗物を陰極として陽極との間に、通常、50〜450Vの電圧を印加して行う。印加電圧が50V未満であると電着が不充分となり、450Vを超えると、塗膜が破壊され異常外観となる。電着塗装時、塗料組成物の浴液温度は、通常10〜45℃に調節される。
【0071】
カチオン電着塗料組成物の電着過程は、カチオン電着塗料組成物に被塗物を浸漬する過程、及び、上記被塗物を陰極として陽極との間に電圧を印加し、被膜を析出させる過程、から構成される。また、電圧を印加する時間は、電着条件によって異なるが、一般には、2〜4分とすることができる。
【0072】
電着塗膜の膜厚は、好ましくは5〜25μm、より好ましくは20μmとする。膜厚が5μm未満であると、防錆性が不充分であり、25μmを超えると、塗料の浪費につながる。
【0073】
上述のようにして得られる電着塗膜を、電着過程の終了後、そのまま又は水洗した後、120〜260℃、好ましくは140〜220℃で、10〜30分間焼き付けることにより硬化させる。
【実施例】
【0074】
以下の実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されない。実施例中、「部」および「%」は、ことわりのない限り、重量基準による。
【0075】
製造例1 ブロックイソシアネート硬化剤の製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコにヘキサメチレンジイソシアネートの3量体(コロネートHX:日本ポリウレタン(株)製)199部とメチルイソブチルケトン32部、およびジブチルスズジラウレート0.03部を秤りとり、攪拌、窒素をバブリングしながら、メチルエチルケトオキシム87.0部を滴下ロートより1時間かけて滴下した。温度は50℃からはじめ70℃まで昇温した。そのあと1時間反応を継続し、赤外線分光計によりNCO基の吸収が消失するまで反応させた。その後n−ブタノール0.74部、メチルイソブチルケトン39.93部を加え、不揮発分80%とした。
【0076】
製造例2 アミン変性エポキシ樹脂エマルションの製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管および滴下ロートを取り付けたフラスコに、2,4/2,6−トリレンジイソシアネート(80/20wt%)71.34部と、メチルイソブチルケトン111.98部と、ジブチルスズジラウレート0.02部を秤り取り、攪拌、窒素バブリングしながらメタノール14.24部を滴下ロートより30分かけて滴下した。温度は室温から発熱により60℃まで昇温した。その後30分間反応を継続した後、エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル46.98部を滴下ロートより30分かけて滴下した。発熱により70〜75℃へ昇温した。30分間反応を継続した後、ビスフェノールAプロピレンオキシド(5モル)付加体(三洋化成工業(株)製BP−5P)41.25部を加え、90℃まで昇温し、IRスペクトルを測定しながらNCO基が消失するまで反応を継続した。
【0077】
続いてエポキシ当量475のビスフェノールA型エポキシ樹脂(東都化成(株)製YD−7011R)475.0部を加え、均一に溶解した後、130℃から142℃まで昇温し、MIBKとの共沸により反応系から水を除去した。125℃まで冷却した後、ベンジルジメチルアミン1.107部を加え、脱メタノール反応によるオキサゾリドン環形成反応を行った。反応はエポキシ当量1140になるまで継続した。
【0078】
その後100℃まで冷却し、N−メチルエタノールアミン24.56部,ジエタノールアミン11.46部およびアミノエチルエタノールアミンケチミン(78.8%メチルイソブチルケトン溶液)26.08部を加え、110℃で2時間反応させた。その後エチレングリコールモノ−2−エチルヘキシルエーテル20.74部とメチルイソブチルケトン12.85部を加えて希釈し、不揮発物82%に調節した。数平均分子量(GPC法)1380、アミン当量94.5meq/100gであった。
【0079】
別の容器にイオン交換水145.11部と酢酸5.04部を秤り取り、70℃まで加温した上記アミン変性エポキシ樹脂320.11部(固形分として75.0部)および製造例1のブロックイソシアネート硬化剤190.38部(固形分として25.0部)の混合物を徐々に滴下し、攪拌して均一に分散させた。そのあとイオン交換水を加え固形分36%に調整した。
【0080】
製造例3 顔料分散樹脂ワニスの製造
攪拌機、冷却器、窒素注入管、温度計および滴下ロートを取り付けたフラスコに、エポキシ当量188のビスフェノールA型エポキシ樹脂(商品名DER−331J)382.20部と、ビスフェノールA111.98部を秤り取り、80℃まで昇温し、均一に溶解した後、2−エチル−4−メチルイミダゾール1%溶液1.53部を加え、170℃で2時間反応させた。140℃まで冷却した後、これに2−エチルヘキサノールハーフブロック化イソホロンジイソシアネート(不揮発分90%)196.50部を加え、NCO基が消失するまで反応させた。これにジプロピレングリコールモノブチルエーテル205.00部を加え、続いて1−(2−ヒドロキシエチルチオ)−2−プロパノール408.00部、ジメチロールプロピオン酸134.00部を添加し、イオン交換水144.00部を加え、70℃で反応させた。反応は酸価が5以下になるまで継続した。得られた樹脂ワニスはイオン交換1150.50部で不揮発分35%に希釈した。
【0081】
製造例4 顔料分散ペーストの製造
サンドグラインドミルに製造例3で得た顔料分散樹脂ワニスを120部、カーボンブラック2.0部、カオリン100.0部、二酸化チタン72.0部、ジブチルスズオキシド8.0部、リンモリブデン酸アルミニウム18.0部およびイオン交換水184部を入れ、粒度10μm以下になるまで分散して、顔料分散ペーストを得た(固形分48%)。
【0082】
製造例5 樹脂微粒子分散ペーストの製造
樹脂微粒子(綜研化学社製、商品名「ケミスノーMR−2G」)100.0部と製造例3のカチオン性顔料分散樹脂ワニス85.7部と脱イオン水464.3部との混合物を20分攪拌し、樹脂微粒子分散ペーストを得た(固形分20%)。
【0083】
製造例6 アクリル樹脂微粒子(ミクロゲル)の製造
反応容器に、脱イオン水200部を加え、75℃で加熱攪拌した。ここに2,2’−アゾビス(2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン)1部の酢酸100%中和水溶液を5分かけて滴下した。5分間エージングした後、メチルメタクリレート10部を5分かけて滴下した。さらに5分間エージングした後、ノニオン性乳化剤アクアロンRN-20(第一工業製薬社製ノニオン型乳化剤)1部と脱イオン水200部とを混合した水溶液にメタクリル酸メチル(MMA)40部、アクリル酸n-ブチル(NBA)40部、エチレングリコールジメタクリレート(EGDM)10部からなるα,β−エチレン性不飽和モノマー混合物を加え攪拌して得られたプレエマルションを40分かけて滴下した。60分間エージングした後、冷却し、架橋アクリル樹脂微粒子の分散液を得た。得られた架橋樹脂微粒子の分散液の不揮発分は20%、pHは5.2、平均粒径は100nmであった。
【0084】
実施例1
表1に記載の塗料固形分に対する樹脂微粒子濃度になるように製造例2の樹脂エマルションと製造例5の樹脂微粒子分散ペーストを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。尚、各成分の重量比率および使用する樹脂微粒子の平均粒径は、以下の各実施例および比較例において表1に示すように変化させた。
【0085】
実施例2
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、「ケミスノーSX−350H」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0086】
実施例3
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーSBX−6」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0087】
実施例4
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーBM30X−8」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0088】
実施例5
表1に記載の塗料固形分に対する顔料濃度および樹脂微粒子濃度になるように製造例2の樹脂エマルションと製造例4の顔料分散ペーストおよび製造例5の樹脂微粒子分散ペーストを混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。尚、各成分の重量比率および使用する樹脂微粒子の平均粒径は、以下の各実施例および比較例において表1に示すように変化させた。実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」を用いて、実施例1と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0089】
実施例6
実施例5における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、「ケミスノーMR−2HG」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例5と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0090】
実施例7
実施例5における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーSBX−6」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例5と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0091】
実施例8
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、「ケミスノーMR−10HG」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表1に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0092】
比較例1
実施例5と同様に、表2に記載の塗料固形分に対する顔料濃度およびアクリル樹脂微粒子濃度になるように製造例2の樹脂エマルションと製造例4の顔料分散ペーストおよび製造例6のアクリル樹脂微粒子を混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0093】
比較例2
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーARX−15」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表2に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0094】
比較例3
表2に記載の塗料固形分に対する顔料濃度およびアクリル樹脂微粒子濃度になるように製造例2の樹脂エマルションと製造例4の顔料分散ペーストおよび製造例6のアクリル樹脂微粒子を混合し、カチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料の全固形分の顔料濃度は10%で、樹脂微粒子濃度は30%であった。
【0095】
比較例4
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、大日精化工業社製「ラブコロール215(M)ホワイト」(比重1.36)を用い、実施例1と同様の手法で表2に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0096】
比較例5
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、住友精化社製「フロービーズLE−1080」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表2に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の固形分は20.0%であった。
【0097】
比較例6
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーSBX−6」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表2に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の樹脂微粒子濃度は全固形分の0.5%であった。
【0098】
比較例7
実施例1における製造例5で用いた「ケミスノーMR−2G」の代わりに、積水化成品工業社製「テクポリマーMB−4C」を用いて製造例5と同様にして樹脂微粒子分散ペーストを製造し、実施例1と同様の手法で表2に従ってカチオン電着塗料組成物を得た。得られたカチオン電着塗料組成物の樹脂微粒子濃度は全固形分の40.0%であった。
【0099】
上記実施例および比較例で得られたカチオン電着塗料組成物およびそれらを電着塗装して得られた電着塗膜について、以下の方法により評価を行なった。
【0100】
沈降性試験
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物を、直径20mmの試験管に、100mmの高さまで流し入れた。この試験管を72時間静置し、沈殿を生成させた。生じた沈殿の厚さ(mm)を測定し、沈降量とした。
【0101】
再分散性試験
上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物85gを、100ml試験管に入れて72時間静置し、沈殿を生成させた。次いで、沈殿物が完全に分散するまで、試験管を上下方向に180度回転させた。この回転させた回数を記録した。
【0102】
水平外観
未処理リン酸亜鉛鋼板に、上記実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料を乾燥膜厚20μmになるように電着し、水洗後、160℃で10分間焼付けし、得られた塗膜の表面を表面粗さ計Surftest−211(Mitutoyo社製)で、カットオフ2.5mmとして、JIS B 0601−2001(ISO 4287)に従い、算術平均粗さRa(μm)を測定した。このRa値は、値が低いほど外観が良好であることを示している。
【0103】
ハジキ防止性評価(油混入ハジキ性)
実施例および比較例により得られたカチオン電着塗料組成物に、防錆用機械油30ppmを混入して48時間連続撹拌した。これを塗料浴に入れ、深さ10cmの位置に、7×15cm寸法のテストピースを水平に配置し、5分間静置した。次いで、塗料浴温度30℃において、乾燥膜厚20μmとなるように電着塗装した後、水洗し、30分間放置した後で160×10分間焼き付けた。焼付け後の塗膜表面を目視観察し、ハジキの数をカウントして、以下の評価基準に従って評価した。
【0104】
評価基準○:ハジキ数0〜4個
△:ハジキ数5〜10個
×:ハジキ数11個以上
【0105】
下記表1および表2に示されるとおり、本発明の電着塗料組成物は、比較例の電着塗料組成物と比較して、沈降安定性、再分散性に優れる電着塗料組成物であって、かつ水平外観に優れた塗膜を得ることができるものであることが確認された。














































【0106】
【表1】

【0107】
【表2】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.5μm以上15μm未満である樹脂微粒子を、塗料固形分に対して1〜30重量%の量で含有する、カチオン電着塗料組成物。
【請求項2】
前記樹脂微粒子の比重が0.95〜1.30である、請求項1記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項3】
さらにカチオン性エポキシ樹脂およびブロックイソシアネート硬化剤を含むカチオン電着塗料組成物である、請求項1または2記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項4】
塗料固形分に対する顔料の濃度が10重量%以下である、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項5】
顔料を含まない、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。
【請求項6】
塗料固形分に対する顔料の濃度が0.1〜10重量%である、請求項1〜3いずれかに記載のカチオン電着塗料組成物。


【国際公開番号】WO2005/068570
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【発行日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−517054(P2005−517054)
【国際出願番号】PCT/JP2005/000303
【国際出願日】平成17年1月13日(2005.1.13)
【出願人】(000230054)日本ペイント株式会社 (626)
【Fターム(参考)】