説明

カッター装置

【課題】敷設されるシート状床材がカーペットタイルなどのように切断方向に継ぎ目が生じる場合であっても、継ぎ目部分で転動方向前側の型付けローラとカッターとの間で転動方向前側側のシート状床材の継ぎ目側端部が跳ね上がることがなく、切断位置がずれたりすることなくシート状床材を連続的に容易に切断することができるカッター装置を提供する。
【解決手段】シート状床材の、転動方向前側側の型付けローラによって型付け状態にされた部分を、カッターに至るまで型付け状態を保つようにガイド面でガイドするガイド板が少なくとも転動方向前側側の型付け型付けローラとカッターとの間に設けられていることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーペット、樹脂製シート状床材等のシート状床材を端面が壁面の下端に沿う長さに切断するカッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
敷設面である家屋の床面にシート状床材を敷設施工する場合には、一方の壁際より反対側の壁に向かってシート状床材を敷設して行きシート状床材の余った部分を切断し、切断縁を反対側の壁の下端(幅木等)と床面とのコーナーに一致させるようにしている。
ところで、薄肉で折れ曲げやすいシート状床材の場合、図3に示すように、シート状床材100の余った部分を屈曲部が壁の下端200と床面300とのコーナー400に沿うようにL字形に屈曲させて、このL字の屈曲部をカッター500で切断することによって切断縁を反対側の壁の下端と床面とのコーナーに一致させるようにしている(たとえば、特許文献1参照)。
【0003】
しかし、シート状床材には、樹脂製の多層構造になったものや硬質樹脂からなるもの等があるが、このような多層構造や硬質樹脂からなるシート状床材の場合、シート状床材を上記のようにL字形に屈曲させようとすると、屈曲部に層間剥離やひび割れ等が生じてしまい、切断縁がうまく壁の下端と床面とのコーナーに一致しない場合がある。
【0004】
そこで、このような多層構造や硬質樹脂からなるシート状床材を壁の下端と床面とのコーナーに合わせて切断する方法として、図4および図5に示すようなカッター装置600を用いる方法が既に行われている。
【0005】
このカッター装置600は、凸面形状の湾曲面となった2つの型付けローラ610を有し、図5に示すように、これらの型付けローラ610が壁の下端200と床面300との間で床面300から壁の下端200に跨がって敷かれたシート状床材100の余剰部およびその近傍の一部を挟みつつ型付けローラ610の湾曲面にほぼ沿うように型付けしながら壁の下端200に沿って転動することによって、2つの型付けローラ610間に設けられたカッター620によってシート状床材100を切断するようになっている。
【0006】
すなわち、このカッター装置600によれば、型付けローラ610が、シート状材料100の材質に合わせて最適な湾曲形状になっていて、シート状材料100が層間剥離やひび割れ等が生じない湾曲形状にシート状材料100を保ちながら転動し、型付けローラ610によって型付けされた湾曲部(図示せず)と床面300および壁の下端200との間に隙間を形成した状態でカッターでこの湾曲部をその稜線方向に切断するようになっているので、樹脂製の多層構造になったシート状床材や硬質樹脂からなるシート状床材の場合も、層間剥離やひび割れ等が生じることなく切断縁がうまく壁の下端と床面とのコーナーに一致するように切断することができる。
【0007】
しかしながら、上記カッター装置600は、たとえば、シート状床材がタイルカーペットなどのように短寸法で、型付けローラの転動方向に複数枚連接して敷設されるような場合、以下のような問題が生じる恐れがある。
【0008】
すなわち、シート状床材が型付けローラ610の転動方向に複数枚連接されて敷設されるような場合、型付けローラ610を転動させて行き、転動方向前側の型付けローラ(以下、「前側ローラ」と記す)がシート状床材とシート状床材との継ぎ目部分を乗り越えてシート転動方向前側に位置するシート状床材(以下、「前側シート状床材」と記す)に乗り移り、さらに転動してカッターが前側シート状床材の継ぎ目側端面に至るまでの区間においては、前側シート状床材は、前側ローラによる床面および壁の下端との間で挟まれた部分から前側シート状床材の継ぎ目側端縁に部分が、上方から押さえられていないため、シート状床材の材質や層構造によっては、シート状床材の継ぎ目部近傍が壁から跳ね上がったようになる。そして、この跳ね上がり状態のままカッターが前側シート状床材の継ぎ目端部に至ると、切断位置がずれてしまい、シート状床材の切断縁がうまくコーナーに沿わなくなる。したがって、カッターがシート状床材の継ぎ目側端面に至り正確に切断位置にあたるように、シート状床材の端部を押さえる必要があり、作業に熟練を要する。
【0009】
【特許文献1】特開平5−138586号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みて、敷設されるシート状床材がカーペットタイルなどのように切断方向に継ぎ目が生じる場合であっても、継ぎ目部分で転動方向前側の型付けローラとカッターとの間で転動方向前側側のシート状床材の継ぎ目側端部が跳ね上がることがなく、切断位置がずれたりすることなくシート状床材を連続的に容易に切断することができるカッター装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために、本発明の請求項1に記載のカッター装置(以下、「請求項1のカッター装置」と記す)は、凸面形状の湾曲面となった2つの型付けローラを有し、床面から壁面に跨がって敷かれたシート状床材をほぼ型付けローラの湾曲面に沿った型付け状態にするとともに、これらの型付けローラが床面および壁面との間でシート状床材の一部を挟みつつ、壁面に沿って転動し、この転動に伴って2つの型付けローラ間に設けられたカッターによってシート状床材を切断するシート状床材のカッター装置であって、
前記シート状床材の、転動方向前側側の型付けローラによって型付け状態にされた部分を、カッターに至るまで型付け状態を保つようにガイド面でガイドするガイド板が少なくとも転動方向前側側の型付け型付けローラとカッターとの間に設けられていることを特徴としている。
【0012】
本発明の請求項2に記載のカッター装置(以下、「請求項2のカッター装置」と記す)は、請求項1のカッター装置において、ガイド板の押さえ面が、型付けローラの湾曲面にほぼ沿った湾曲形状を形成されていることを特徴としている。
【0013】
本発明にかかるカッター装置は、長尺のシート状床材の切断やタイルカーペット等の短尺のシート状床材の切断に用いることができ、その用途は特に限定されないが、特にタイルカーペットを床面と壁面(幅木)とのコーナー部に合わせて切断するのに好適に用いられる。
カッターとしては、特に限定されないが、たとえば、市販の厚物切り用NTカッター(エヌティ社の商標)等の替え刃が好適である。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、請求項1のカッター装置は、シート状床材の、転動方向前側側の型付けローラによって型付け状態にされた部分を、カッターに至るまで型付け状態を保つようにガイド面でガイドするガイド板が少なくとも転動方向前側側の型付け型付けローラとカッターとの間に設けられているので、一旦型付けローラで型付けされたシート状床材は、カッターによって切断されるまで、ガイド板によって型付け状態が保たれる。したがって、敷設されるシート状床材がカーペットタイルなどのように切断方向に継ぎ目が生じる場合であっても、継ぎ目部分で転動方向前側の型付けローラとカッターとの間で転動方向前側側のシート状床材の端部が跳ね上がることがなく、切断位置がずれたりすることなくシート状床材を連続的に切断することができる。
【0015】
請求項2のカッター装置は、ガイド板のガイド面が、型付けローラの湾曲面にほぼ沿った湾曲形状を形成されている
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下に、本発明を、その実施の形態をあらわす図面を参照しつつ詳しく説明する。
図1および図2は、本発明にかかるカッター装置の1つの実施の形態をあらわしている。
【0017】
図1および図2に示すように、このカッター装置1は、装置本体2と、2つの型付けローラ3と、2つのガイドローラ4と、ガイド板5とを備えている。
装置本体2は、ローラ支持部21と、ハンドル部22と、カッター支持部23とを備えている。
【0018】
ローラ支持部21は、矩形をしていて中央に後述するカッター支持部23の角度調整ナット24が装着される長孔25aを備えた本体部25と、この本体部25の長手方向両端部で両側に延出する軸受け部26と、本体部25の中央部から一側に延出するカッター支持部23の下端受け部27とを備えている。
下端受け部27は、後述するカッター支持部23の下端が遊嵌され上下方向にカッター支持部23の傾斜角度で傾く切欠溝27aがその水平方向先端部に設けられている。
【0019】
下端受け部27の切欠溝27aの一方の側壁には、切欠溝27aに向かって貫通しカッター支持部23の固定ねじ28が螺合するねじ孔が穿設されている。
切欠溝27aの底には、長孔25aに連通し、後述するカッター支持部23の角度調整アーム(図示せず)が進退自在に挿通される貫通孔(図示せず)が穿設されている。
【0020】
ハンドル部22は、ローラ支持部21の上面にアーチ状に設けられていて、一側に厚肉の握り部22aが設けられ、他側上端に上記下端受け部27と同一方向に延出するカッター支持部23の枢支部22bを備えている。
【0021】
枢支部22bは、下端受け部27の切欠溝27aと同じ角度で傾き、カッター支持部23の上端部が嵌まり込む切欠溝22cがその水平方向先端部に設けられている。
枢支部22bの切欠溝22cの両側壁には、切欠溝22cに向かって貫通するカッター支持部23の枢支ねじ22dが螺合するねじ孔が穿設されている。
【0022】
カッター支持部23は、一側面にカッターCがスライド自在に嵌まり込む断面略コ字形のカッター支持溝23aが穿設されていて、その上端部が枢支部22bの切欠溝22cに嵌まり込み、枢支部22bのねじ孔にねじ込まれた枢支ねじ22dの先端部に回動自在に枢支されている。
【0023】
また、カッター支持部23の下端部には、カッター支持溝23aを覆うようにカッターCの固定ねじ支持部23bが設けられていて、固定ねじ支持部23bと反対側の面に角度調整ナット24が螺合するねじ部を先端に備え、下端受け部27に設けられた貫通孔に挿通される角度調整アームの一端が固定されている。
固定ねじ支持部23bには、固定ねじ23dが螺合するねじ孔が穿設されている。
【0024】
2つの型付けローラ3は、凸面形状の湾曲面31を備え、下端受け部27を挟んで両側に配置された軸受け部26に回転自在に軸支されている。
【0025】
2つのガイドローラ4は、円錐台形状をしていて、小径側が本体部25側を向くとともに、その下端が水平となるように、本体部25を挟んで型付けローラ3と反対側の軸受け部26に回転自在に支持されている。
【0026】
ガイド板5は、ガイド本体部51と固定される固定部52とを備えている。
ガイド本体部51は、ガイド面が型付けローラ3の湾曲面31にほぼ沿った湾曲形状を形成され、2つの型付けローラ3間の距離より少し短い幅をしていて、その中央部にカッターCの刃先が出没自在な長孔53が穿設されている。
【0027】
固定部52は、ガイド本体部51の中央部下端から下端受け部27側に延出するように設けられていて、2つの固定ねじ挿通孔ごしに固定ねじ54を下端受け部27の下面に設けられたねじ孔にねじ込むことによって下端受け部27にガイド板5を固定するようになっている。
なお、この固定状態でガイド本体部51のガイド面がカッターCと両側の型付けローラ3との間に設けられたようなる。また、図示していないが、固定部52に設けられた固定ねじ挿通孔は、長孔になっていて、ガイド本体部51の位置を調整できるようになっている。
【0028】
つぎに、このカッター装置1は、たとえば、以下のようにして使用することができる。
(1)型付けローラ3の回転軸より上側にシート状床材の端部がくるようにシート状床材を設置する。
(2)固定ねじ28を緩め、角度調整ナット24を回転させて角度調整アームをその軸方向に進退させてカッター支持部23と下端受け部27の切欠溝27aの底との隙間を切断しようとするシート状床材の厚みに合わせたのち、固定ねじ28を締め込んでカッター支持部23を固定する。
【0029】
(3)型付けローラ3を床面と壁の下端とで形成される90°のコーナー部に押し当てた状態で、固定ねじ23dを緩め、カッターCをカッター支持溝23aの上下方向にスライドさせ、敷設されるシート状床材の厚みに合わせて刃先の下方への出幅を調整したのち、固定ねじ23dを締め込み、カッターCを上下方向にスライドしないように固定する。
(4)従来のカッター装置600と同様にしてシート状床材を切断する。
【0030】
すなわち、このカッター装置1によれば、ガイド板5を備えているので、一旦、型付けローラ3で型付けされたシート状床材は、カッターCによって切断されるまで、ガイド板5によって型付け状態が保たれる。したがって、敷設されるシート状床材がカーペットタイルなどのように切断方向に継ぎ目が生じる場合であっても、継ぎ目部分で転動方向前側の型付けローラ3とカッターCとの間で転動方向前側側のシート状床材の端部が跳ね上がることがなく、切断位置がずれたりすることなくシート状床材を連続的に切断することができる。
【0031】
本発明にかかるカッター装置は、上記の実施の形態に限定されない。たとえば、上記の実施の形態では、ガイド本体部51がカッターの前後に跨がるように設けられていたが、型付けローラの転動方向前側のみに設けられていても構わない。
上記の実施の形態では、ガイドローラを2つ備えていたが、1つでも構わない。また、3つ以上でも構わない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明にかかるカッター装置の1つの実施の形態をあらわし、その上側から見た斜視図である。
【図2】図1のカッター装置を下側から見た斜視図である
【図3】従来のシート状床材の敷設方法を説明する斜視図である。
【図4】従来のカッター装置の斜視図である。
【図5】図4のカッター装置を用いたシート状床材の敷設方法を説明する斜視図である。
【符号の説明】
【0033】
1 カッター装置
2 装置本体
3 型付けローラ
31 湾曲面
5 ガイド板
51 ガイド本体部
C カッター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凸面形状の湾曲面となった2つの型付けローラを有し、床面から壁面に跨がって敷かれたシート状床材をほぼ型付けローラの湾曲面に沿った型付け状態にするとともに、これらの型付けローラが床面および壁面との間でシート状床材の一部を挟みつつ、壁面に沿って転動し、この転動に伴って2つの型付けローラ間に設けられたカッターによってシート状床材を切断するシート状床材のカッター装置であって、
前記シート状床材の、転動方向前方側の型付けローラによって型付け状態にされた部分を、カッターに至るまで型付け状態を保つようにガイド面でガイドするガイド板が少なくとも転動方向前方側の型付け型付けローラとカッターとの間に設けられていることを特徴とするカッター装置。
【請求項2】
ガイド板のガイド面が、型付けローラの湾曲面にほぼ沿った湾曲形状を形成されている請求項1に記載のカッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−158558(P2006−158558A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−352266(P2004−352266)
【出願日】平成16年12月6日(2004.12.6)
【出願人】(599095023)株式会社広島 (2)
【Fターム(参考)】