説明

カップラー

【課題】シール部材を削減でき、組み込みを簡素化することができるカップラーを提供すること。
【解決手段】プラグP10とソケットS10からなる連通可能なカップラー10で、カップラー本体11,31同士の嵌合接続部をシールする接続部シール部材21(22a)と、弁体16,35とカップラー本体との間の開閉される流路に設けられてシールする弁シール部材17(22b)と、カップラー本体と弁ホルダの間をシールするホルダシール部材14(22c)を一体に設けて3箇所兼用シール部材22として構成する。
これにより、接続部のシール21と、弁のシール17と、ホルダシール14とを1つにして3箇所兼用のシール部材22とすることで、シール部材を削減するようにし、シール部材の取り付けもその分だけ減らして組み立てを簡素化するようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はプラグとソケットの一対で構成され着脱可能に接続されるカップラーに関し、液体などをボトルなどカートリッジ側の容器本体からタンクなど機器本体側へ移す場合や容器本体ごと交換する場合に使用され、シール部材の削減と組立の容易化を図るようにするもので、特にメタノール燃料電池のカートリッジ容器と燃料電池本体との間に設けて好適なものである。
【背景技術】
【0002】
液体燃料から直接発電することができる液体型燃料電池が種々開発されつつあり、メタノールを燃料とする直接メタノール型燃料電池(DMFC)では、改質器を必要とせず小型にできることから携帯用電子機器の電源としての利用が注目されている。
【0003】
特に、パッシブ方式とよばれる直接メタノール型燃料電池(DMFC)では、燃料電池本体側に設けた燃料タンクに液体燃料であるメタノールが入れられた燃料カートリッジを連結してメタノールを直接補給することが行われ、燃料供給用のポンプを必要とせず、一層の小型化を図ることができる(特許文献1参照)。
【0004】
このような直接メタノール型燃料電池(DMFC)では、燃料であるメタノールを供給するため、燃料電池本体とメタノールを収容する燃料カートリッジ本体とに、それぞれ弁体とこれを閉方向に付勢する付勢手段を有する弁機構を備えたソケットとプラグとで構成されるカップラーを設けておき、このカップラーを接続してシール状態で互いの弁機構を連通させて液体燃料を供給し、取り外した状態ではそれぞれの弁機構を閉じた密封状態にできるようにしている。
【0005】
このようなカップラーのプラグを、例えば燃料カートリッジ本体に取り付ける場合には、図11中の下側に模式的に示すように、容器本体となる軟質ボトル1の口部Nの上端に弁ホルダ2のフランジ部2aを載せるとともに、弁ホルダ2内に付勢手段3を介して弁体4を収納し、この弁体4で開閉される流路を備えるプラグ本体5で弁ホルダ2および弁体4を覆うように軟質ボトル1に取り付ける。同様に、ソケットを、燃料電池本体側に取り付ける場合には、図11中の上側に模式的に示すように、機器本体内の燃料タンク1,1´の口部Nの下端に弁ホルダ2のフランジ部2aを載せるとともに、弁ホルダ2内に付勢手段3を介して弁体4を収納し、この弁体4で開閉される流路を備えるプラグ本体5で弁ホルダ2および弁体4を覆うように燃料タンク1´に取り付ける。
【0006】
このようなカップラーのプラグでは、プラグおよびソケットにそれぞれ3ヶ所のシール部と接続部の1ヵ所のシール部が存在し、それぞれのシール部にシール部材を装着する必要がある。すなわち、軟質ボトル1の口部Nの上端と弁ホルダ2のフランジ部2aの下面(内側)との間に容器シール部材6を設けるとともに、弁ホルダ2のフランジ部2aの上面(外側)とプラグ本体5との間にホルダシール部材7を設けてカップラーを軟質ボトル1に装着した状態でのシールを確保し、さらに、弁体4とプラグ本体5との間で開閉される流路に弁シール部材8を設けて弁体4の開閉によるシールを確保している。また、ソケットにおいても同様である。さらに、ソケットの接続部に接続部シール部材9を設けてプラグとの接続時のシールを行うようにしてある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−71713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところが、このようなカップラーでは、シール部の数に応じたシール部材が必要でシール部材の使用個数が多く、組込み工程も多いという問題があり、シール構造を改良しシール部材の削減や組込み工程の簡素化が望まれている。
また、特に、カップラーの小型化を図ろうとすると、シール部材自体が微細となり、微細なシール部材の組み込みが煩雑となり、一層改良が望まれている。
【0009】
この発明は、上記従来技術の課題と要望に鑑みてなされたもので、シール部材を削減でき、組み込みを簡素化することができるカップラーを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記従来技術の有する課題を解決するためこの発明の請求項1記載のカップラーは、 容器本体に取り付けられて流路が形成されるカップラー本体と、このカップラー本体の前記流路を開閉する弁体と、この弁体が収納されるとともに容器本体にシール状態で取り付けられる弁ホルダと、この弁ホルダ内に設けられ前記弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備える一対のプラグとソケットで構成され、これらプラグとソケットの前記カップラー本体を互いに着脱可能に嵌合接続して嵌合接続状態で両弁体を開放操作して前記容器本体同士を連通可能なカップラーであって、前記プラグと前記ソケットの少なくともいずれか一方には、前記カップラー本体同士の嵌合接続部をシールする接続部シール部材と、前記弁体と前記カップラー本体との間の開閉される流路に設けられてシールする弁シール部材とを兼用してシールする2箇所兼用シール部材を設けて構成してなることを特徴とするものである。
【0011】
また、この発明の請求項2記載のカップラーは、請求項1記載の構成に加え、前記2箇所兼用シール部材に、前記カップラー本体と前記弁ホルダの間をシールするホルダシール部材を一体に設け3箇所兼用シール部材として構成したことを特徴とするものである。
【0012】
さらに、この発明の請求項3記載のカップラーは、請求項1または2記載の構成に加え、前記弁シール部材を、略環板状の膜で構成してなることを特徴とするものである。
【0013】
また、この発明の請求項4記載のカップラーは、請求項1〜3のいずれかに記載の構成に加え、前記接続部シール部材は、前記2箇所兼用シール部材または3箇所兼用シール部材の天面部および/または先端側壁部をシール面としてシール可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0014】
さらに、この発明の請求項5記載のカップラーは、請求項1〜4のいずれかに記載の構成に加え、前記接続部シール部材で、前記弁体を開放操作する操作部材を支持可能に構成してなることを特徴とするものである。
【0015】
また、この発明の請求項6記載のカップラーは、請求項4記載の構成に加え、前記操作部材の外側に前記接続部シール部材を被せて膨らみ部を形成して接続部シール部とするよう構成したことを特徴とするものである。
【0016】
さらに、この発明の請求項7記載のカップラーは、請求項6記載の構成に加え、前記操作部材にフレア部またはフランジ部を形成して前記接続シール部材を被せるように構成したことを特徴とするものである。
【0017】
また、この発明の請求項8記載のカップラーは、請求項5〜7のいずれかに記載の構成に加え、前記操作部材と前記接続部シール部材とを一体成形または接着した一体構造として構成したことを特徴とするものである。
【0018】
さらに、この発明の請求項9記載のカップラーは、請求項2記載の構成に加え、前記3箇所兼用シール部材を、ソケット側の前記操作部材の外周部に配置され先端部に接続部シール部が設けられた蛇腹状の弾性ホルダ部と、この弾性ホルダ部の基端部に一体に設けられてソケット本体と弁ホルダ部とに先後面が挟み込まれてホルダシール部を構成するフランジ部と、このフランジ部の後面側に略円筒状に突設され弁本体のシール部と接触シール可能な弁シール部とからなることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0019】
この発明の請求項1記載のカップラーによれば、容器本体に取り付けられて流路が形成されるカップラー本体と、このカップラー本体の前記流路を開閉する弁体と、この弁体が収納されるとともに容器本体にシール状態で取り付けられる弁ホルダと、この弁ホルダ内に設けられ前記弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備える一対のプラグとソケットで構成され、これらプラグとソケットの前記カップラー本体を互いに着脱可能に嵌合接続して嵌合接続状態で両弁体を開放操作して前記容器本体同士を連通可能なカップラーで、前記プラグと前記ソケットの少なくともいずれか一方には、前記カップラー本体同士の嵌合接続部をシールする接続部シール部材と、前記弁体と前記カップラー本体との間の開閉される流路に設けられてシールする弁シール部材とを兼用してシールする2箇所兼用シール部材を設けて構成したので、プラグとソケットとの接続部のシールと弁のシールとを兼用する2箇所兼用シール部材とすることで、シール部材を削減することができ、シール部材の取り付けもその分だけ減らして組み立てを簡素化することができる。
【0020】
さらに、この発明の請求項2記載のカップラーによれば、前記2箇所兼用シール部材に、前記カップラー本体と前記弁ホルダの間をシールするホルダシール部材を一体に設けて3箇所兼用シール部材として構成したので、接続部のシールと、弁のシールと、ホルダシールとを1つにして3箇所兼用のシール部材とすることで、一層シール部材を削減することができ、シール部材の取り付けもその分だけ減らして組み立てを簡素化することができる。
【0021】
また、この発明の請求項3記載のカップラーによれば、前記弁シール部材を、略環板状の膜で構成したので、前記プラグを前記ソケットに挿入する動きに2箇所兼用シール部材または3箇所兼用シール部材が追従し、接続部のシールを確実にすることができる。
【0022】
さらに、この発明の請求項4記載のカップラーによれば、前記接続部シール部材は、前記2箇所兼用シール部材または3箇所兼用シール部材の天面部および/または先端側壁部をシール面としてシール可能に構成したので、シール面が天面部、先端側壁部、天面部と先端側壁部、天面部と先端側壁部の間などのいずれであってもシール部材を摺動させることなく接続開始から接続完了までシール状態を安定して保持することができ、接続開放の繰り返しに対しても対応することができる。
【0023】
また、この発明の請求項5記載のカップラーによれば、前記接続部シール部材で、前記弁体を開放操作する操作部材を支持可能に構成したので、弁体の操作部材の支持に接続部シール部材を兼用することで、一層構造を簡素化して組み込みを容易にすることができる。
【0024】
さらに、この発明の請求項6記載のカップラーによれば、前記操作部材の外側に前記接続部シール部材を被せて膨らみ部を形成して接続部シール部とするよう構成したので、製造が簡単になる上に、接続部シール部分の面圧が増大して確実にシール状態にすることができる。
【0025】
また、この発明の請求項7記載のカップラーによれば、前記操作部材にフレア部またはフランジ部を形成して前記接続シール部材を被せるように構成したので、操作部材のフレア部やフランジ部で確実に接続部シール部材で支持することができるとともに、シール部材の形状を簡略化することができる。
【0026】
さらに、この発明の請求項8記載のカップラーによれば、前記操作部材と前記接続部シール部材とを一体成形または接着した一体構造として構成したので、操作部材と接続部シール部材が一体構造となり、より確実に動作させることができる。
【0027】
また、この発明の請求項9記載のカップラーによれば、前記3箇所兼用シール部材を、ソケット側の前記操作部材の外周部に配置され先端部に接続部シール部が設けられた蛇腹状の弾性ホルダ部と、この弾性ホルダ部の基端部に一体に設けられてソケット本体と弁ホルダ部とに先後面が挟み込まれてホルダシール部を構成するフランジ部と、このフランジ部の後面側に略円筒状に突設され弁本体のシール部と接触シール可能な弁シール部としたので、ソケットに必要な3箇所のシールを1つにすることができ、組み込みを容易にして確実にシールすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図である。
【図2】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグの接続開始状態の縦断面図である。
【図3】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを接続した状態の縦断面図である。
【図4】この発明のカップラーを燃料電池に適用した一実施の形態にかかり、3箇所兼用シール部材による弁シール部の開閉の説明図である。
【図5】この発明のカップラーを燃料電池に適用した他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図である。
【図6】この発明のカップラーを燃料電池に適用した他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを接続した状態の縦断面図である。
【図7】この発明のカップラーのさらに他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図およびカップラーを構成するソケットとプラグの接続完了状態の縦断面図である。
【図8】この発明のカップラーの他の一実施の形態の接続部シール部を3箇所兼用シール部材の先端側壁部とした場合にかかり、(a)は凹部なしのシール部材とフレア付き操作部材の分解断面図および組立断面図、(b)は凹部付きのシール部材とフランジ付き操作部材の分解断面図および組立断面図である。
【図9】この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかるソケットのみの断面図である。
【図10】この発明のカップラーのさらに他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図およびカップラーを構成するソケットとプラグの接続完了状態の縦断面図である。
【図11】従来のカップラーの流路などの一部を省略してシール部分のみを模式的に示す説明断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づき詳細に説明する。
まず、この発明のカップラーの全体構成について、燃料電池用として燃料電池本体と燃料補充用のカートリッジ本体との間に設ける場合を例に説明する。
この燃料電池用カップラー(以下、単にカップラーとする。)10は、ソケットS10と、このソケットS10と嵌合連結されるプラグP10とで構成され、例えばメタノール燃料電池本体側の容器本体である燃料タンクにソケットS10が設けられ、メタノール容器としてのカートリッジ本体側の容器本体であるボトルにプラグP10が設けられ、互いを連通させて燃料電池本体側にカートリッジ本体から燃料を補充したり、カートリッジごと交換するのに用いられる。すなわち、この発明のカップラーでは、容器本体は、電池本体側のタンクとカートリッジ側のボトルの両方を含むものである。
【0030】
このソケットS10は、主要部は、金属材料で構成されるが、その多くが液体燃料に晒されることになるため、耐腐食性などに優れた材料で構成することが好ましく、例えば不導態化処理や金コーティングなどを施して使用することが好ましい。非金属材料部材には、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)などが用いられるほか、耐メタノール性を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンジニアプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)などの汎用エンジニアプラスチックが好適に用いられる。さらに、ゴムとして、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPT、EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)が好適に用いられる。
【0031】
以下の説明では、図面上での上下を基準に説明するが、実際の嵌合連結方向を何ら制限するものでなく、どのような方向で実施しても良い。
このカップラー10のソケットS10では、燃料電池本体または燃料電池を内蔵する機器の本体の表面などに露出して取り付けられるカップラー本体を構成するソケット本体11を備えており、ソケットS10と対をなすプラグP10が挿入連結されるプラグ接続孔12が表面に開口して形成してある。このプラグ接続孔12は、内径が表面側ほど大径な大径部と小径部との2段の円筒部で構成してある。
このソケット本体11の大径部の外側の段差部に略底付き円筒状の弁ホルダ13が連結され、ソケット本体11の小径部の外周と弁ホルダ13の内周とがホルダシール部14とされ、シール状態にできるようにしてあり、弁ホルダ13の底部には、燃料電池本体内と連通する連通孔13aが形成してある。この弁ホルダ13の連通孔13aと接続シール部21先端孔とがソケットS10での流路15とされ、燃料電池本体の内外間を連通できるようになっている。
【0032】
この弁ホルダ13内には、流路15を開閉するソケット側の弁体を構成するバルブ本体16が摺動自在に装着され、略円柱状の弁本体16aと上端の大径円錐状のシール部16bとを備え、このシール部16bの円錐面が弁シール部17とされるとともに、シール部16bの外周面が弁ホルダ13の内周に沿うガイド部とされ、ソケット側操作部材20の動作により流路15の開閉が行われる。
【0033】
なお、バルブ本体16のシール部16bは円錐面とする場合に限らず、平面で構成するようにしても良い。
【0034】
さらに、このバルブ本体16を閉じる方向に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね18が弁ホルダ13の底部とバルブ本体16の大径円錐状のシール部16bの下側との間に装着してある。
この圧縮コイルばね18によって開閉されるバルブ本体16によって、弁ホルダ13の底部に形成した連通孔13aと接続シール部21先端孔との間の流路15が、連通孔13aから弁本体16aの外周と弁ホルダ13の内周、開閉されるバルブ本体16のシール部16bの弁シール部17を経て接続部シール部21先端孔に至るように形成される。
【0035】
また、バルブ本体16には、大径円錐状のシール部16bの中心部に操作部材用の装着穴19が形成され、この装着穴19の底部に段付きリブ19aが形成してあり、装着穴19より小径の中空パイプ状のソケット側操作部材20が段付きリブ上に載置されてソケット本体11のプラグ接続孔12内に先端部20aが位置するように装着してある。
これにより、流路が装着穴19、段付きリブ19aで形成される隙間を経て操作部材20の中空穴を通じて接続シール部21先端孔に至るように形成される。
このソケット側操作部材20の先端部20aは、後述するプラグP10の先端部との間で接続部シール部21が構成され、ソケットS10とプラグP10とを接続する場合のシール状態を確保する。
【0036】
この接続部シール部21のシール部材は、ソケットS10側あるいはプラグP10側の両方、あるいはいずれかに設ければ良く、ここでは、ソケットS10側に設けるようにしてある。
【0037】
なお、ソケット側操作部材20の先端部20aは、図示例では、直管状として先端面でシールするようにしてあるが、フレア加工を施したり、フランジを形成して接続部シール部材を膨らませてシールするようにしても良い。先端面でシールする場合には、接続部シール部材21がバルブ本体16の移動に伴って摺動したり、摩擦が生じることが無く、外周面でシールする場合には、接続部シール部材21の摺動が生じることになる。
【0038】
このように構成したソケットS10では、ホルダシール部14、弁シール部17、接続部シール部21の3箇所のシール部が設けられ、通常、それぞれに弾性シール材が取り付けられるが、ここでは、3箇所のシール部をシールするシール部材が1つで兼用され、3箇所兼用シール部材22が装着される。この3箇所兼用シール部材22は、中心部の内円筒部22aの下端部に外側に突き出すフランジ状の略円板部22bを備え、略円板部22bの外周端に内円筒部22aと同心状に外円筒部22cが一体とされた縦半分の断面形状が略J字状としてある。
【0039】
この3箇所兼用シール部材22の内円筒部22aの内側にソケット側操作部材20の先端部20aが取り付けられ、上端部外周が接続部シール部21をシールする接続部シール部材(22a)となるとともに、ソケット側操作部材20を保持する機能をなしている。
また、3箇所兼用シール部材22のフランジ状の略円板部22bが弁シール部17に配置されて弁シール部材(22b)となり、図4に示すように、バルブ本体16がソケット側操作部材20で開弁方向に移動することにより略円板部22bが弾性変形して弁シール部16aとの間に形成される隙間が形成されることで開弁状態となり、弁シール部16aと密着することで閉弁状態となる。
【0040】
さらに、3箇所兼用シール部材22の外円筒部22cがホルダシール部14に配置され、ソケット本体11の小径部の外周と弁ホルダ13の内周との連結部分に挟むように取り付けられてシール状態とされるホルダシール部材(22c)となるとともに、これによって3箇所兼用シール部材22の一端が固定されることになる。
【0041】
なお、3箇所兼用シール部材22は、ホルダシール部材となる外円筒部22cの成形を省略して弁シール部材とする略円板部22bの先端縁部を、ホルダシール部14をシールするホルダシール部材とするようにしても良く、必ずしも予め成形しておかなくても良い。
【0042】
この3箇所兼用シール部材22を用いることで、3箇所のシール部材の取り付けが1回で済み、ソケット側操作部材20の先端部20aに被せるように接続部シール部材となる内円筒部22a部分を取り付けた後、バルブ本体16の操作部材用の装着穴19にソケット側操作部材20を差し込むようにし、このバルブ本体16の外側に圧縮コイルばね18を配置して弁ホルダ13を取り付けてホルダシール部材となる外円筒部22cをソケット本体11との間に挟むようにすることで、弁シール部材となる略円板部22bも同時にセット状態で取り付けることができる。特に、カップラー10を小径・小型化する場合には、Oリング等でシール部材を構成するとその直径が数mm程度となることもあり、組み込みが大変となるが、この3箇所兼用シール部材22により簡単かつ取付工程を削減することができ、一層有効となる。
【0043】
なお、3箇所兼用シール部材22に替え、内円筒部22aによる接続部シール部21をシールする接続部シール部材と、略円板部22bによるバルブ本体16のシール部16bに接触することでシールする弁シール部17の弁シール部材との2箇所のシール部材を一体とした2箇所兼用シール部材とすることもでき、ホルダシール部材を別体として取り付けるようにしても良く、組み込み箇所が1箇所増えるものの、簡単に組み込みができる。
【0044】
また、弁シール部17をシールする3箇所兼用シール部材22や2箇所兼用シール部材の略円板部22bは、バルブ本体16の移動により開閉される形状であれば良く、弾性変形して移動しながら開閉されるものであったり、シール部分のみが弾性変形して開閉されるもののいずれであっても良い。
【0045】
このように構成したソケットS10では、プラグP10との連結にともなって接続部シール部21のシールがなされた後、バルブ本体16の装着穴19に装着されたソケット側操作部材20が押圧操作されることで、自動的に弁体を構成するバルブ本体16が開弁されたり、プラグP10の取り外しにより閉弁されることになる。
【0046】
次に、このようなソケットS10に嵌合連結されるカップラー10のプラグP10は、操作部材やばね等の一部を除き主要部は、非金属材料、例えばポリプロピレン(PP)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、高密度ポリエチレン(HDPE)、ポリスチレン(PS)などが用いられるほか、耐メタノール性を有するポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、液晶ポリマー(LCP)などのスーパーエンジニアプラスチックや、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリアセタール(POM)などの汎用エンジニアプラスチックが好適に用いられる。さらに、ゴムとして、例えばニトリルゴム(NBR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、フッ素ゴム(FKM)、クロロプレンゴム(CR)、エチレンプロピレンゴム(EPT、EPDM)、シリコーンゴム(VMQ)が好適に用いられる。また、金属材料の部品は、液体燃料に晒されることになるため、耐腐食性などに優れた材料で構成することが好ましく、例えば不導態化処理や金コーティングなどを施して使用することが好ましい。
【0047】
このプラグP10は、図1に示すように、燃料電池の燃料であるメタノールがいれられる容器本体を構成する容器のノズルNの先端部外周に装着され、容器にねじ込まれるカップラー本体を構成する略4段円筒状のプラグ本体31を備えており、先端部(下端部)31aが最小径で、中間小径部31bおよび中間大径部31cに続く基端部(上端部)31dが最大径となっている。
【0048】
このプラグ側でのカップラー本体を構成するプラグ本体31には、先端部に突き出してソケットS10のプラグ接続孔12内に装着される最小径の略円筒状の突出連結部32が形成してあり、この突出連結部32の先端にソケットS10のソケット側操作部材20の先端部20aに装着された3箇所兼用シール部材22の内円筒部(接続部シ−ル部材)22aの先端面と接触してシールするシール凹部32aが形成されるとともに、中心部にプラグ側操作部材用の装着孔32bが形成してある。
【0049】
このシール凹部32aは、先端開口部側が大径で基端底部側が小径のテーパ状凹部とされ、このテーパ面によってソケットS10の3箇所兼用シール部材22の挿入をガイドするとともに底部で確実にシールすることができるようにしてある。また、このシール凹部32aがプラグP10の先端面をへこませるように設けてあるので、プラグP10をソケットs10から取り外した際に、例え付着残留する液体燃料があってもこのシール凹部32aに収容することができ、これにより、付着残留する液体燃料に接触することを防止するようにしてある。
【0050】
なお、このシール凹部32aは、テーパ状凹部とするほか、円筒状凹部として底面でシールするのに替え、内周面でシールするようにし(後述する図7など参照)、付着残留する液体燃料を収容できるようにするなど、他の凹部形状としても良い。
【0051】
このプラグ本体31の中間大径部31cの内周側の中間小径部31bの端面が平坦面で構成されたバルブシート33としてある。
そして、プラグ本体31の中間大径部31cの端面と基端部(上端部)31dの最大径の円筒部の内周がホルダシール部34とされ、容器のノズルNがホルダシール部材40となるOリングを介して挿入されるようになっており、容器のノズルにねじ込まれてプラグ本体31が容器に取り付けられる。
【0052】
このプラグ本体31の内側には、プラグ側の弁体を構成するバルブ本体35が装着され、中間部の略大径円板部がバルブヘッド35aとされ、このバルブヘッド35aに先端中心部(下端中心部)に突き出す細径で先端面を横断する流路溝35eが形成されたバルブステム35bと、基端中心部(上端中心部)に突き出す太径のガイド部35cとが一体に形成してあり、先端中心部(下端中心部)に突き出すバルブステム35bの流路溝35eに当てて設けられるプラグ側操作部材41が突出連結部32内に位置し、バルブ本体35と一体に往復移動するようになっている。
【0053】
このプラグ側操作部材41は、金属製の細径のパイプで構成され、基端部(上端部)がフレア加工されて、バルブステム35bの流路溝35eに当てられ、プラグ本体31の最小径の下端部の上面で押えられており、バイプ内と両側面および先端面が開口する流路溝35eを介して連通して流路が構成されるようになっている。これにより、細径のパイプの側面に孔や軸方向の溝などを加工することなく、パイプ内とパイプ外とを連通する流路を形成することができる。
【0054】
そして、このバルブ本体35のバルブヘッド35aの先端部(下端部)に、バルブシート33と対向してOリング装着部35fが設けられ、弁シール部36の弁シール部材を構成するOリング37が装着してある。
【0055】
このバルブ本体35の往復動をガイドするため、ガイド部35cの外側を囲むように底付きの略円筒状のバルブホルダ38が設けられ、中間のフランジ部がプラグ本体31の中間大径部31cの上方の端面に当てられるとともに、フランジ部の上面にホルダシール部材としてのOリング40が当てられてノズルNの外周のねじ部にねじ込むプラグ本体31で挟まれて取り付けられている。
【0056】
また、バルブ本体35のガイド部35cの外周に圧縮コイルばね39が装着され、下端がバルブヘッド35aに当てられ、上端がバルブホルダ38の中間突出部で押えられている。
【0057】
これにより、バルブ本体35は常時下方に付勢され、バルブヘッド35aのOリング装着部35fに取り付けたOリング37をバルブシート33に押し当ててシールすることで、閉弁状態にしたり、圧縮コイルばね39に抗して離間させることで、開弁状態にできるようになっている。
【0058】
なお、圧縮コイルばね39の上端が支持されるバルブホルダ38がプラグ本体31に弾性体などを介在することなく取り付けてあるので、従来のような弾性体の介在による付勢力の変化がなく、常に一定に保つことができ、安定した状態で開弁や閉弁することができる。
【0059】
さらに、バルブホルダ38の上端部側壁には、流路孔38aが形成され、容器内と連通するようになっている。
【0060】
このように構成したプラグP10では、バルブ本体35のバルブステム35bをソケットS10との連結にともなってプラグ側操作部材41を介して押圧操作することで、自動的に弁体であるバルブ本体35が開弁されたり、連結を解除することで閉弁されることになる。
【0061】
このようなカップラー10でのソケットS10とプラグP10との連結接続は、図4に示すように、3箇所シール部材22の接続部シール部21のシール材22aが接触して接続部のシールがなされた後、接続部シール部21のシールが保持された状態でソケット側操作部材20が操作されて圧縮コイルばね18の強さの設定で先にソケットS10のバルブ本体16が開いた後、さらに押されることでプラグP10のバルブ本体35が移動されて開弁状態となり、カップラー10を構成するソケットS10およびプラグP10の連結接続が完了する。
【0062】
このカップラー10によれば、容器本体に取り付けられて流路が形成されるカップラー本体11,31と、このカップラー本体11,31の前記流路を開閉する弁体16,35と、この弁体16,35が収納されるとともに容器本体にシール状態で取り付けられる弁ホルダ13,38と、この弁ホルダ13,38内に設けられ前記弁体16,35を閉方向に付勢する付勢手段18,39とを備える一対のプラグP10とソケットS10で構成され、これらプラグとソケットの前記カップラー本体を互いに着脱可能に嵌合接続して嵌合接続状態で両弁体を開放操作して前記容器本体同士を連通可能なカップラーで、前記プラグと前記ソケットの少なくともいずれか一方には、前記カップラー本体同士の嵌合接続部をシールする接続部シール部材21(22a)と、前記弁体と前記カップラー本体との間の開閉される流路に設けられてシールする弁シール部材17(22b)と前記カップラー本体と前記弁ホルダの間をシールするホルダシール部材14(22c)を一体に設けて3箇所兼用シール部材22として構成したので、接続部のシール21と、弁のシール17と、ホルダシール14とを1つにして3箇所兼用のシール部材22とすることで、シール部材を削減することができ、シール部材の取り付けもその分だけ減らして組み立てを簡素化することができる。
【0063】
さらに、このカップラー10によれば、前記2箇所兼用シール部材に、前記カップラー本体と前記弁ホルダの間をシールするホルダシール部材14(22c)を一体に設けて3箇所兼用シール部材22として構成したので、接続部のシール21と、弁のシール17と、ホルダシール14とを1つにして3箇所兼用のシール部材22とすることで、一層シール部材を削減することができ、シール部材の取り付けもその分だけ減らして組み立てを簡素化することができる。
【0064】
また、このカップラー10によれば、前記弁シール部材17(22b)を、略環板状の膜で構成したので、前記プラグを前記ソケットに挿入する動きに3箇所兼用シール部材が追従し、接続部のシールを確実にすることができる。
【0065】
さらに、このカップラー10によれば、前記接続部シール部材21を、先端面をシール面としてシール可能に構成したので、シール部材17(22b)を摺動させることなく接続開始から接続完了までシール状態を保持することができ、接続開放の繰り返しに対しても対応することができる。
【0066】
また、このカップラー10によれば、前記接続部シール部材21で、前記弁体を開放操作する操作部材20を支持可能に構成したので、弁体の操作部材の支持に接続部シール部材を兼用することで、一層構造を簡素化して組み込みを容易にすることができる。
【0067】
次に、この発明の他の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図5および図6は、この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかり、図5はカップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図、図6はカップラーを構成するソケットとプラグの接続完了状態の縦断面図である。
このカップラー10Aでは、プラグP10に3箇所兼用シール部材42を用いるようにしたものであり、既に説明したプラグP10と同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0068】
このカップラー10Aでは、プラグP10のホルダシール部34をシールするホルダシール部材としてのOリング40と弁シール部36をシールする弁シール部材としてのOリング37とを一体に形成するとともに、プラグ側操作部材41の先端部をシールする接続部シール部43の接続部シール部材を上記実施の形態のソケットS10のみに設けるのとは異なり、プラグ側にも設け、しかも一体に形成して3箇所を兼用してシールできるようにしてある。
この3箇所兼用シール部材42は、接続部シール部43、弁シール部36、ホルダシール部34の3箇所をシールするシール部材42a,42b,42cを一体に成形して、縦半分の断面形状が略逆J字状に成形してあり、ソケットS10のものとは、図面上、上下が反転しているものの同一構造である。
なお、他の構成は、既に説明した上記の実施の形態と同一であるので、説明は省略する。
【0069】
このような3箇所兼用シール部材42を用いることによってもソケットS10の場合と同一の作用効果を奏し、簡単に組み立てることができ、特にカップラーを小型化する場合には、一層有効である。
【0070】
また、3箇所兼用シール部材42をプラグP10側に設けるのに加え、ソケットS10側にも3箇所兼用シール部材22を設けるようにした場合を例に説明したが、プラグ側のみを3箇所兼用シール部材としても良く、接続部シール部材を一方に設け、他方は接続部シール部材のない2箇所兼用シール部材で構成したり、これまでの各シール部材をそれぞれ別に設けるように構成しても良い。
【0071】
次に、この発明のさらに他の実施の形態について、図面に基づき詳細に説明する。
図7は、この発明のカップラーのさらに他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図およびカップラーを構成するソケットとプラグの接続完了状態の縦断面図である。
なお、既に説明したカップラー10、10Aと同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0072】
このカップラー10Bでは、プラグとの接続部シール部のシール面を先端側壁部としたものであり、プラグ本体31の先端部31aのシール凹部32aの内周面と接触させることでシールし、既に説明したソケット側操作部材20の外側に3箇所兼用シール部材22の接続部シール部21を位置させ、その内円筒部22aの先端面をシール面としてプラグ本体31の先端部31aのシール凹部32aの底部に接触させてシールするのとは異なるものである。
すなわち、このカップラー10BのソケットS10では、ソケット側操作部材20の先端部20aの先端にフレア加工によるフレア部20bが形成され、その外側に3箇所兼用シール部材22を被せて接続部シール部21の先端側壁部21aをシール面とするよう構成してあり、ソケット側操作部材20のフレア部20bに接続部シール部21を被せることで、外周に膨らみ部を形成してプラグP10との連結接続の際にシール材に摺動は生じるものの接続部シール部材22の膨らみ部でシール面積を増大して確実にシール状態にすることができる。
なお、他の構成は、既に説明した上記の各実施の形態と同一であるので、説明は省略する。
【0073】
このような3箇所兼用シール部材22の接続部シール部21のシール面を先端側壁部21aとしたカップラー10Bによってもカップラー10,10Aの場合と同一の作用効果を奏し、簡単に組み立てることができ、特にカップラーを小型化する場合には、一層有効である。
【0074】
なお、このカップラー10Bでは、図8に示すように、ソケット側操作部材20の先端部20aにフレア加工によるフレア部20bを形成し、その外側に3箇所兼用シール部材22の接続部シール部21を被せるようにし、接続部シール部21の先端側壁部21aをシール面とするようにしたが、ソケット側操作部材20の先端部20aにフランジ部20cを形成し、その外側に3箇所兼用シール部材22を被せるようにし、接続部シール部21の外側に膨らんだ先端側壁部21aをシール面としてシールするようにしても良く、確実に膨らみ部を形成することができる。
また、このようなソケット側操作部材20の先端部20aのフレア部20bやフランジ部20cに3箇所兼用シール部材22を被せる場合には、接続部シール部21の内側にフレア部20bやフランジ部20cに対応する凹部21bを形成したり、凹部を省略しても良く、連結接続の際にシール材に摺動は生じるものの接続部シール部材22の膨らみ部でシール部分の面圧を増大して確実にシール状態にすることができる。
【0075】
なお、上記各実施の形態では、操作部材と接続部シール部材とを別体として装着するようにしたが、操作部材と接続部シール部材とを一体成形または接着した一体構造として構成することもでき、このようにすれば、操作部材と接続部シール部材が一体構造となり、より確実に動作させることができる。
【0076】
次に、カップラーにおいて、ソケットのソケット側操作部材と弁体とを一体構造とした実施の形態について、図9により説明する。
図9は、この発明のカップラーの他の一実施の形態にかかるソケットのみの断面図である。
このソケットS10では、カップラー本体を構成するソケット本体11を備えており、ソケットS10と対をなす図示しないプラグP10が挿入連結されるプラグ接続孔12が表面に開口して先端(上端)側に形成してある。ソケット本体11の後端(下端)側に略円筒状の弁ホルダ13が連結され、連結部となる弁ホルダ13の先端(上)面がホルダシール部14とされ、後述する3箇所兼用シール部材によってシール状態にできるようにしてあり、弁ホルダ13の後端底部には、容器本体内と連通する連通孔13aが形成してある。この弁ホルダ13の連通孔13aと接続部シール部21先端孔とがソケットS10での流路15とされ、燃料電池本体の内外間を連通できるようになっている。
【0077】
この弁ホルダ13内には、流路15を開閉するソケット側の弁体を構成するバルブ本体16が摺動自在に装着され、このバルブ本体16の先端(上端)に一体にプラグの弁体を操作するソケット側操作部20が設けられてソケット本体11のプラグ接続孔12内に先端部20aが位置するようになっている。そして、弁本体16の大径円柱部が弁本体16aとされ、その先端面がシール部16bとされて弁シール部17を構成しており、弁シール部17での接触によるシールと離反による開放とによって流路15の開閉が行われる。
【0078】
このバルブ本体16には、閉じる方向に付勢する付勢手段として圧縮コイルばね18が弁ホルダ13の底部とバルブ本体16の大径円柱状の弁本体16aとの間に装着してある。
また、バルブ本体16と一体に設けられたソケット側操作部20には、外周に縦溝が形成されて溝状流路を構成するようにしてあり、このソケット側操作部20の溝状流路と接続されるプラグとの間の接続状態のシールおよびこの溝状流路の外周を仕切るため3箇所兼用シール部材50を構成する蛇腹状の弾性ホルダ部50aがソケット側操作部20と間隔をあけて配設され、弾性ホルダ部50aの先端部が接続部シール部21とされ、図示しないプラグP10の先端部との間でソケットS10とプラグP10とを接続する場合のシール状態を確保する。
【0079】
この接続部シール部21となる蛇腹状の弾性ホルダ部50aを備える3箇所兼用シール部材50では、1箇所目のシール部材である弾性ホルダ部50aの後端(下端)部に円板状に突き出してフランジ部50bが形成されて2箇所目のシール部材とされ、ホルダシール部14のシールに用いられ、ソケット本体11の後端(下)面と弁ホルダ13の先端(上)面との間に挟むように取り付けられてシール状態にできるようにしてある。
さらに、3箇所兼用シール部材50には、ホルダシール部14となるフランジ部50bの後面(下面)側に突き出して略円筒部50cが形成されて、3箇所目のシール部材とされ、弁体16の弁本体16aの表面と接触または離反することで弁シール部17とされ、弁の開閉を行うようにしてある。
【0080】
このように構成したソケットS10では、ホルダシール部14、弁シール部17、接続部シール部21の3箇所のシール部が1つで兼用された3箇所兼用シール部材50でシールされ、蛇腹状の弾性ホルダ部50aが接続部シール部21に、フランジ部50bがホルダシール部14に、略円筒部50cが弁シール部17にそれぞれ配置されて装着される。これにより、製造が容易となるとともに、簡単に組み込みができる。
【0081】
次に、カップラーにおいて、接続部シール部材で弁体を開放操作する操作部材を支持することなくシール部材と独立させた構造を、ソケットのソケット側操作部材と3箇所兼用シール部材とに適用した実施の形態について、図10により説明する。
図10は、この発明のカップラーのさらに他の一実施の形態にかかり、カップラーを構成するソケットとプラグを分離した状態の縦断面図およびカップラーを構成するソケットとプラグの接続完了状態の縦断面図である。
なお、既に説明したカップラー10、10A、10Bと同一部分については、同一記号を記し、重複する説明は省略する。
【0082】
このカップラー10CのソケットS10では、ソケット側操作部材20が一定の小径パイプで構成され、たとえばステンレスパイプとしてある。そして、このソケット側操作部材20の外側に配置される3箇所兼用シール部材22の内円筒部22aとの間には、隙間が形成され、3箇所兼用シール部材22でソケット側操作部材20を支持することなく独立させた構造としてあり、ソケット側操作部材20はバルブ本体16の装着穴19に装着することで支持されている。また、3箇所兼用シール部材22はソケット本体11と弁ホルダ13との間にホルダシール部14である外円筒部22cを挟むことで取り付けられて固定されている。
したがって、ソケット側操作部材20と3箇所兼用シール部材22を接合する必要がないので、一体成形や接着等を実施しなくともソケット側操作部材20を小径にする事が可能に成り、ソケットS10の小型化が可能に成る。カップラー10Cの連結にともなって、プラグ先端のシール凹部32aにより3箇所兼用シール部材22の天面が変形して接続シールが形成され、更にプラグを押圧操作すると、3箇所兼用シール部材22はシール凹部32aにより変形しながら移動し、ソケット側操作部材20はプラグ側操作部材41に押されて移動する。この時、3箇所兼用シール部材22とソケット側操作部材20はあたかも接合されているように変形して、上記の各実施の形態と同様にシール部17が開弁されることになる。
これにより、ソケット側操作部材20に単純な直管を採用でき、3箇所兼用シール部材22とソケット側操作部材20の接合も不要に成るので、設計・組立も容易にできる。
なお、他の構成は、既に説明した上記の各実施の形態と同一であるので、説明は省略する。
【0083】
このような3箇所兼用シール部材22の接続部シール部21で操作部材を支持することなく、互いを独立させた構造のカップラー10Cによってもカップラー10,10A、10Bの場合と同一の作用効果を奏するものとなる。
【符号の説明】
【0084】
10 カップラー
S10 ソケット
P10 プラグ
11 ソケット本体(カップラー本体)
12 プラグ接続孔
13 弁ホルダ
13a 連通孔
14 ホルダシール部
15 流路
16 バルブ本体
16a 弁本体
16b シール部
17 弁シール部
18 圧縮コイルばね(付勢手段)
19 装着穴(操作部材用)
19a 段付リブ
20 ソケット側操作部材
20a 先端部
20b フレア部
20c フランジ部
21 接続部シール部
21a 先端側壁部
21b 凹部
22 3箇所兼用シール部材
22a 内円筒部(接続部シール部材)
22b 略円板部(弁シール部材)
22c 外円筒部(ホルダシール部材)
31 プラグ本体
31a 先端部
31b 中間小径部
31c 中間大径部
31d 基端部
32 突出連結部
32a シール凹部
32b 装着穴
33 バルブシート
34 ホルダシール部
35 バルブ本体
35a バルブヘッド
35b バルブステム
35c ガイド部
35e 流路溝
35f Oリング装着部
36 弁シール部
37 Oリング(弁シール部材)
38 バルブホルダ
38a 流路孔
39 圧縮コイルばね
40 Oリング(ホルダシール部材)
41 プラグ側操作部材
42 3箇所兼用シール部材
42a 内円筒部(接続部シール部材)
42b 略円板部(弁シール部材)
42c 外円筒部(ホルダシール部材)
43 接続部シール部
50 3箇所兼用シール部材
50a 蛇腹状の弾性ホルダ部(接続部シール部材)
50b フランジ部(ホルダシール部材)
50c 略円筒部(弁シール部材)
51 Oリング
N ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器本体および機器本体に取り付けられて流路が形成されるカップラー本体と、このカップラー本体の前記流路を開閉する弁体と、この弁体が収納されるとともに容器本体にシール状態で取り付けられる弁ホルダと、この弁ホルダ内に設けられ前記弁体を閉方向に付勢する付勢手段とを備える一対のプラグとソケットで構成され、これらプラグとソケットの前記カップラー本体を互いに着脱可能に嵌合接続して嵌合接続状態で両弁体を開放操作して前記容器本体同士を連通可能なカップラーであって、
前記プラグと前記ソケットの少なくともいずれか一方には、
前記カップラー本体同士の嵌合接続部をシールする接続部シール部材と、前記弁体と前記カップラー本体との間の開閉される流路に設けられてシールする弁シール部材とを兼用してシールする2箇所兼用シール部材を設けて構成してなることを特徴とするカップラー。
【請求項2】
前記2箇所兼用シール部材に、前記カップラー本体と前記弁ホルダの間をシールするホルダシール部材を一体に設けて3箇所兼用シール部材として構成したことを特徴とする請求項1記載のカップラー。
【請求項3】
前記弁シール部材を、略環板状の膜で構成してなることを特徴とする請求項1または2記載のカップラー。
【請求項4】
前記接続部シール部材は、前記2箇所兼用シール部材または3箇所兼用シール部材の天面部および/または先端側壁部をシール面としてシール可能に構成してなることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のカップラー。
【請求項5】
前記接続部シール部材で、前記弁体を開放操作する操作部材を支持可能に構成してなることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のカップラー。
【請求項6】
前記操作部材の外側に前記接続部シール部材を被せて膨らみ部を形成して接続部シール部とするよう構成したことを特徴とする請求項4記載のカップラー。
【請求項7】
前記操作部材にフレア部またはフランジ部を形成して前記接続シール部材を被せるように構成したことを特徴とする請求項6記載のカップラー。
【請求項8】
前記操作部材と前記接続部シール部材とを一体成形または接着した一体構造として構成したことを特徴とする請求項5〜7のいずれかに記載のカップラー。
【請求項9】
前記3箇所兼用シール部材を、ソケット側の弁本体の操作部分の外周部に配置され先端部に接続部シール部が設けられた蛇腹状の弾性ホルダ部と、この弾性ホルダ部の基端部に一体に設けられてソケット本体と弁ホルダ部とに先後面が挟み込まれてホルダシール部を構成するフランジ部と、このフランジ部の後面側に略円筒状に突設され前記弁本体のシール部と接触シール可能な弁シール部とからなることを特徴とする請求項2記載のカップラー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−80531(P2011−80531A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233049(P2009−233049)
【出願日】平成21年10月7日(2009.10.7)
【出願人】(000003768)東洋製罐株式会社 (1,150)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】