説明

カップリング剤およびカップリング剤を使用して生成される組成物

本明細書に説明されるある態様は、例えば、ポリマーをフィラーと共有結合させるために使用されてよいシランカップリング剤に関する。また、ある例では、ポリマーシランカップリング剤-フィラー組成物を含むデバイスが説明される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書に開示される例は、一般的にカップリング剤およびカップリング剤を使用して生成される組成物に関する。より具体的には、本明細書に開示されるある態様は、フィラーを、例えば、フルオロポリマーのようなポリマーへ効果的に共有結合させるためのシランカップリング剤に関する。
【背景技術】
【0002】
フィラーはエラストマー化合物および他のポリマーと共に使用され得る。しかしながら、フィラーの大変制限される強化効果は、フィラーとポリマーとの間の弱い相互作用によって得られる。
【発明の概要】
【0003】
ある態様では、シランカップリング剤を介してフィラーと共有結合されたポリマーを含んで成る組成物が提供され、該シランカップリング剤がTAICシラン、TMACシラン、TACシラン、およびその組合せから成る群より選択される。ポリマーの実例としては、以下により説明されるが、限定されないが、高密度のポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリサルフォン、ポリビニルクロライド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドーイミド、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタラート、ポリエポキシド、および他のポリマーを含む。ある例では、カップリング剤は、例えば約150℃以上又は約150℃であるような、特に、高温度用ポリマーとの使用に適したものであってよい。
【0004】
別の態様では、シランカップリング剤を介してフィラーに共有結合したフルオロポリマーを含んで成る組成物が提供され、該シランカップリング剤がTAICシラン、TMACシラン、TACシラン、およびこれらの組合せから成る群より選択される。
【0005】
ある態様では、フルオロポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を含んで成るパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニル(VF)、エチレン(E)、プロピレン(P)等から成る群から選択され得る。典型的なフルオロポリマーおよびパーフルオロポリマー(熱可塑性プラスチックおよびエラストマ)は、2つ又はそれよりも多い上記モノマーを含んで成る共重合体である。ある例では、フィラーは沈殿シリカ、非晶質シリカ、ガラスシリカ、ヒュームド・シリカ、溶融シリカ、石英、ガラス、アルミニウム、アルミーケイ酸塩(例えば、粘土)、銅、スズ、タルク、無機酸化物(例えば、Al、Fe、TiO、Cr)、スチール、鉄、アスベスト、ニッケル、亜鉛、銀、鉛、大理石、チョーク、石膏、バライト、グラファイト、カーボンブラック、処理カーボンブラックから成る群より選択され得る。ある例では、組成物は構造式(XVII)(a)〜(XIX)(p)に示されるような構造式を有する、少なくとも1つのシランカップリング剤をさらに含んでよい。他の例では、組成物は粘土調整剤又は加工助剤の添加剤の少なくとも一方をさらに含んで良い。ある態様では、実質上フィラーの反応点の全ては、シランカップリング剤に共有結合し得る。
【0006】
別の態様では、シランをフィラーと共有結合するために、フィラーと、TAICシラン、TMACシラン、TACシラン、およびその組合せから成る群より選択される少なくとも1つのシランカップリング剤との反応系を含んで成る方法が、開示されている。ある例では、該方法には、ポリマーを共有結合したシラン-フィラーと共有結合させるために、共有結合したシラン-フィラーとポリマーとの反応系をさらに含んでもよい。
【0007】
ある態様では、該方法は、共有結合したシラン-フィラーのシランの不飽和部位で、ポリマーと結合するために共有結合したシラン-フィラーとの反応段階の間、ポリマーの遊離基を形成させることを含んでよい。他の例では、実質上フィラーの全表面部位がシランカップリング剤を含んで成るまで、フィラーと少なくとも1つのシランとの反応を含んで成ってよい。追加例では、該方法は開始剤の存在下で、フィラーと少なくとも1つのカップリング剤との反応を含んでもよい。ある例では、少なくとも1つのシランカップリング剤との反応を防ぐために、フィラーの面上にある官能基をブロックするべくシロキサンの存在下で、少なくとも1つのシランカップリング剤とフィラーとの反応を該方法は含んでよい。他の例では、1つ又はそれよりも多いミキサー、ミル、鋳型、カレンダー加工デバイスおよび押出し機を使用する共有結合したポリマー-シラン-フィラーを処理することを含んでよい。
【0008】
追加態様では、

の構造式を有する化合物が提供され、各Rがヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、塩化物、臭化物、ジメチルアミノ、ジメチルアミノ等から成る群から独立して選択される。化合物は、例えば本明細書に説明されるような、ポリマーおよびフィラーと共に使用されてよい。
【0009】
別の態様では、

の構造式を有する化合物が開示されており、各Rがヒドロキシ、メトキシ、エトキシおよびプロポキシから成る群から独立して選択される。化合物は、例えば本明細書に説明されるような、ポリマーおよびフィラーと共に使用されてよい。
【0010】
追加態様では、

の構造式を有する化合物が説明されており、各Rがヒドロキシ、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、塩化物、臭化物、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ等から成る群から独立して選択される。化合物は、例えば本明細書に説明されるような、ポリマーおよびフィラーと共に使用されてよい。
【0011】
別の態様では、構造式(XVII)(a)〜(XIX)(p)に示されるような構造式を有するシランカップリング剤が開示されている。
【0012】
追加態様では、

の構造式を有するシランカップリング剤が開示され、Qがポリマーに共有結合する1つの又はそれよりも多い群を含み、およびZがフィラーに共有結合する1つの又はそれよりも多い群を含み、並びにmとnとの合計が4である。
【0013】
ある態様では、Zはヒドロキシ、アルコキシ、アシルーオキシル、ハロゲンおよびアミンから選択される。他の態様では、Qは、

の構造式を有する化合物であって、R又はRが構造式のSi部分と結合する群を含み、RおよびRがC1からC6の直鎖又は分岐アルキル、C1からC6の直鎖又は分岐へテロアルキル、C1からC6の直鎖又は分岐アルケニル、エステル基、フェニル、水素および酸素から成る群より独立して選択され、又R2、3、およびRが2から6の炭素原子を含み、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、ならびに任意にヘテロ原子を含む群から独立して選択される。化合物は、例えば本明細書に説明されるような、ポリマーおよびフィラーと共に使用されてよい。
【0014】
別の態様では、QおよびZが

の構造式を有する化合物を供するために各々選択され、Lがヘテロ原子を任意に含む1から6の炭素原子を含んで成る結合基であり、Rが加水分解性基であり、Rが水素、酸素、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびエーテル基から成る群から選択され、およびRおよびRの各々が2から6の炭素原子を含み、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、並びに任意にヘテロ原子を含むアルキル基から成る群から独立して選択される。ある態様ではRおよびRの各々がプロペンおよびイソプロペンから成る群より独立して選択され、およびLがプロピル又はイソプロピルである。
【0015】
他の態様では、QおよびZが

の構造式を有する化合物を供するために各々選択され、Lがヘテロ原子を任意に含む1から6の炭素原子を含んで成る結合基であり、Rが加水分解性基であり、Rが水素、酸素、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびエーテル基から成る群から選択され、又はRが存在せず、およびRおよびRの各々が2から6の炭素原子を含み、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、並びに任意にヘテロ原子を含むアルキル基から成る群から独立して選択される。ある態様ではRおよびRの各々がオキシプロペンおよびオキシ-イソプロペンから成る群より独立して選択され、およびLがプロピル又はイソプロピルである。
【0016】
別の側面では、ポリマーのフィラーへの共有結合を助力する方法が提供され、該方法が構造式(I)〜(XIX)(p)に示されるような構造式を有するシランカップリング剤の提供を含む。又、ある例では、該方法は、例えば本明細書に説明される例示ポリマーおよびフィラーのような、1つ又はそれよりも多いポリマーおよび/又は1つ又はそれよりも多いフィラーの提供を含んでよい。
【0017】
該技術の追加側面、例、特徴および態様は、即時に明細書の利益を享受する当業者には自明であろう。
【図面の簡単な説明】
【0018】
添付図に関連する、ある特徴、態様および例が以下により詳細に説明される。
【図1A】図1Aは、ある例に従ったシランカップリング剤を介してフィラー共有結合するポリマーの図表である。
【図1B】図1Bは、ある例に従ったシランカップリング剤を介してフィラー共有結合するポリマーの図表である。
【図1C】図1Cは、ある例に従ったシランカップリング剤を介してフィラー共有結合するポリマーの図表である。
【図1D】図1Dは、ある例に従ったシランカップリング剤を介してフィラー共有結合するポリマーの図表である。
【図2A】図2Aは、ある例に従った構造式VII(a)〜VII(d)の例を示す。
【図2B】図2Bは、ある例に従った構造式VII(e)〜VII(h)の例を示す。
【図2C】図2Cは、ある例に従った構造式VII(i)〜VII(l)の例を示す。
【図2D】図2Dは、ある例に従った構造式VII(m)〜VII(p)の例を示す。
【図3A】図3Aは、ある例に従った構造式VIII(a)〜VIII(d)の例を示す。
【図3B】図3Bは、ある例に従った構造式VIII(e)〜VIII(h)の例を示す。
【図3C】図3Cは、ある例に従った構造式VIII(i)〜VIII(l)の例を示す。
【図3D】図3Dは、ある例に従った構造式VIII(m)〜VIII(p)の例を示す。
【図4A】図4Aは、ある例に従った構造式XI(a)〜XI(d)の例を示す。
【図4B】図4Bは、ある例に従った構造式XI(e)〜XI(h)の例を示す。
【図4C】図4Cは、ある例に従った構造式XI(i)〜XI(l)の例を示す。
【図5】図5は、ある例に従った構造式XIII(a)〜XIII(d)の例を示す。
【図6】図6Aは、ある例に従ったシランカップリング剤をフィラー表面に共有結合するためのあるプロセスを示す。図6Bは、ある例に従ったシランカップリング剤をフィラー表面に共有結合するためのあるプロセスを示す。図6Cは、ある例に従ったシランカップリング剤をフィラー表面に共有結合するためのあるプロセスを示す。
【図7】図7は、ある例に従ったTAIC-シランカップリング剤、TMAIC-シランカップリング剤およびTAC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図8A】図8Aは、ある例に従った特定のTAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図8B】図8Bは、ある例に従った特定のTAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図8C】図8Cは、ある例に従った特定のTAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図8D】図8Dは、ある例に従った特定のTAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図9A】図9Aは、ある例に従った特定のTMAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図9B】図9Bは、ある例に従った特定のTMAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図9C】図9Cは、ある例に従った特定のTMAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図9D】図9Dは、ある例に従った特定のTMAIC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図10A】図10Aは、ある例に従った特定のTAC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図10B】図10Bは、ある例に従った特定のTAC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図10C】図10Cは、ある例に従った特定のTAC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図10D】図10Dは、ある例に従った特定のTAC-シランカップリング剤の構造を示す。
【図11】図11は、ある例に従った異なる結合基を有するシランカップリング剤の構造を示す。
【図12】図12は、ある例に従ったシランカップリング剤に共有結合したフィラー粒子の図である。
【図13】図13は、ある例に従ったシランカップリング剤を介してポリマーに共有結合したフィラー粒子の図である。
【図14A】図14Aは、ある例に従った粒子のばらつきおよび位相を示す図である。
【図14B】図14Bは、ある例に従った粒子のばらつきおよび位相を示す図である。
【図14C】図14Cは、ある例に従った粒子のばらつきおよび位相を示す図である。
【図15】図15は、ある例に従った非修飾フィラーおよびシラン修飾フィラーのペイン効果を示すグラフである。
【図16A】図16Aは、シランを介してポリマーをTAIC-シラン修飾フィラーに共有結合するために、TAIC-シラン修飾フィラーがポリマーと反応してよいフリーラジカルメカニズムを示す図である。
【図16B】図16Bは、シランを介してポリマーをTAIC-シラン修飾フィラーに共有結合するために、TAIC-シラン修飾フィラーがポリマーと反応してよいフリーラジカルメカニズムを示す図である。
【図16C】図16Cは、シランを介してポリマーをTAIC-シラン修飾フィラーに共有結合するために、TAIC-シラン修飾フィラーがポリマーと反応してよいフリーラジカルメカニズムを示す図である。
【図17】図17は、ある例に従った赤外線スペクトルである。
【0019】
この開示の利益を享受する当業者は、本明細書にて説明される技術の理解をより深めるために、図に示され、およびテキストを通して使用される化合物は不均衡なボンドの長さ、ボンドの角度等で示されてよいと認識するであろう。他に特定されない限り、本明細書に描かれ、および説明される化学化合物例は、粒子の立体化学を意味しない。
【発明の詳細な説明】
【0020】
本明細書に説明されるある例は、限定されるものではないが、シランカップリング剤で修飾されるフィラーによるペイン効果の低減、および本明細書に開示される材料を使用して生成されるパーツ又は組成物の使用寿命の増大を含む、既存在下のカップリング剤および既存在下のカップリング剤を使用して生成される材料よりも明確な利点を与える。これらの利点および他の利点は、この開示の利益を享受する当業者によって認識されるであろう。
【0021】
本明細書に開示されるカップリング剤を使用して生成されるポリマーのある態様は、多数の工業、医療および機械的利用に使用されてよく、および該ポリマーのある態様は、特に高温、高圧、アグレッシブ化学および機械的負荷が要求され又は直面されてよい環境に適している。例えば、架橋されたポリマーのある態様は、重油市場のような油田事業(OFS)産業の使用に、特に適していてよい。例えば、(1)電気パッドおよび電気ケーブル、フィードスルー、電気および化学デバイスのハウジングおよびパッケージ材料、バルブ、ポンプ等のような構造用部品および絶縁体のアプリケーション;(2)エラストマーのアプリケーション:、オーリングおよびガスケットを含む汎用シール、調査用パッカー、空気注入式のパッカーおよび膨潤性パッカー、マッドモーター、作動デバイス、ケーブル等を含む生産用具である。また、本明細書に開示されるカップリング剤および他の材料を使用して生成されるポリマーのある例は、化学、磨耗、熱耐性パイプ、スリーブ、ワイヤーおよびケーブルの外被、コーティング、コネクタ、ライナー、チューブ並びに同種のデバイスのようなダウンホール内のアプリケーションに使用されてよい。さらに、本明細書に開示されるポリマーは、例えば、スナップフィット部分で、耐荷重性のアプリケーション、熱収縮性モデルパーツ、並びに電気、自動車、航空宇宙、医療産業および油田サービス産業に使用される他のパーツのような追加的使用を有する。
【0022】
ある態様では、本明細書に開示されるカップリング剤を使用して生成されるポリマーは、希望する使用のため構成されるアッセンブリを供するために、ポリマー自身又は、1つ又はそれよりも多い他のポリマー、金属又は非金属、若しくは構造用部品の組合せによって使用されてよい。本明細書に説明される、これらのおよび他のアプリケーション、並びに材料の使用は、この開示の利益を享受する当業者によって、容易に選択され得るであろう。
【0023】
本明細書に説明されるシランカップリング剤を使用して生成される組成物は、ポリマーをフィラーへシランカップリング剤を介して共有結合するために供する。共有結合という用語は、1つの又はそれよりも多い共有結合を通した接続を指すが、該用語は必ずしも、介在原子なしに特定種への直接的な接続を指すものではない。
【0024】
フルオロエラストマー化合物に使用されるフィラーは、標準エラストマーに使用されるフィラーとはかなり異なっている。アクティブフィラーのかなり制限された補強効果がアクティブフィラーおよびフルオロエラストマーとの接点(又はインターフェース)で、かなり弱い相互作用により観察される。非アクティブ又は低アクティブカーボンブラック若しくは50phrへ上げられた装荷のミネラルフィラーがたいてい使用される。MT−black N990が、たいていその大きな粒子および低構造のため、好ましいフィラーである。また、様々なグレードのカーボンブラック、繊維状ケイ酸カルシウム、硫酸塩バリウム、酸化チタン、酸化鉄、シリカ、粉末ポリ(テトラフルオロエチレン)(PTFE)等を含む他のフィラーが使用されてよい。
【0025】
フィラーがポリマーに共有結合するならば、強い相互作用がフィラー-フルオロポリマーの接点で達成され得る。ポリマーに直接共有結合を形成し得る、シランカップリング剤は、ポリマーとケイ酸塩フィラーとの間の接着を高めるために使用され得る。共通のシランカップリング剤は、限定されるものではないが、アミノプロピルトリアルコキシシラン、グリシドキシプロピルトリアルコキシシラン、メルカプトプロピルトリアルコキシシラン、並びにこれらのジアルコキシ、モノアルコキシ、トリクロロ、ジクロロ、およびモノクロロ誘導体を含む。これらの間に、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、スチリルエチルトリアルコキシシラン、およびアクリロキシオプロピルトリアルコキシシランの全てがビニル基を有し、およびこれらビニル基と硬化共剤中のビニル基との間のラジカル開始追加反応によって、フルオロエラストマーと共有結合を形成し得てよい。フルオロエラストマーの過酸化物硬化のためのある共剤は、限定されるものではないが、トリアリルイソシアヌル酸塩(TAIC)、トリメタアリルイソシアヌル酸塩(TMAIC)およびトリアリルシアヌル酸塩(TAC)を含む。
【0026】
本明細書に説明されるある態様は、シリカフィラーと、フルオロエラストマー、パワフルオロエラストマー、フルオロプラスチックおよび他のポリマーとの間の共有結合を供するために効果的な耐熱性シランカップリング剤を対象とする。限定されるものではないが、(1)これらシランカップリング剤のビニル基の反応性が実質的にはTAIC、TMAICおよびTACのような共剤と同じであることによって、シランカップリング剤は補強に有用ではない自己重合の代わりに、補強効果を供する架橋を形成するためのポリマーマトリクスと大変よく反応し得、(2)補強効果が高温時でさえも存在するように、これらシランの耐熱性および生成される架橋は優れており、および/又は(3)標準カップリング剤と同じように、またこれら実用的なシランは、表面極性を変えることによってシリカフィラーのばらつきを改善し得ることを、少なくともある態様に提供される利点として含む。
【0027】
ある態様では、シランカップリング剤は式(I)に示されるような一般的な構造を有する。

Qはポリマーに共有結合を提供し得る1つの又はそれよりも多い群を含んで成り、およびZはフィラーに共有結合を提供し得る1つの又はそれよりも多い群を含んで成る。この結合は図1A中の図に図質的に示される。ある例では、1以上のポリマー鎖がQに共有結合されてよいように、Qは多重結合域を含んでよい。この結合の図式は図1Bに示される。図1Bでは、2つのポリマー鎖は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。0、1、2、3および4から独立して選択される各mおよびnであ、m+nの合計は一般的には4である。ある例では、nは3およびQは1であり、又はnは2およびQは2であり、若しくはnは1およびQは3である。また、QおよびZに選択される正確な置換基に依存して、nが4およびQが0であること、又はnが0および4であることは可能である。図1Cは、例えば、1つ又はそれよりも多いフッ素、塩素又は臭素置換基を含むポリマーがハロポリマーであることを除いて図1Aと同様である。図1Dは、例えば本明細書に説明されるフルオロポリマーのようなフルオロポリマーとして示される。
【0028】
ある態様では、フィラー面上の1つの又はそれよりも多い群との反応がカップリング剤とフィラーとの間にある共有結合構成物をもたらすように式(I)のZ群が選択されてよい。ある例では、限定されるものではないが、ヒドロキシ、アルコキシ、アシルーオキシル、ハロゲン、アミン又は他の適当な加水分解性基を含む加水分解性基であってよい。ある例では、Z群は不安定でおよび開裂され、又は脱水若しくは他の適当なメカニズムを介して除かれることで、式(I)のSi群がシランをフィラーに共有結合するために、フィラー上の表面部分に共有結合し得る。例えば、フィラーとカップリング剤との間の共有結合の二次形成又は同時形成によって、Zはプロトン化し、および水のままであり得るヒドロキシ基であってよい。ある例では、限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、ブタノキシ、又は飽和状態若しくは不飽和状態であってよいアルキル基を含んで成る他の酸素を含む、ヒドロキシル基を含んで成るアルキル基であってよい。さらに、1つ以上のZ群がある場合、Z群は同じ、又は異なっていてよい。
【0029】
ある例では、Q群又は群(groups)は、ポリマーを有する反応が起こってよいように、不飽和の少なくとも1つの部位を含むために選択されてよい。ある例では、さらに以下に説明されるように、Q群は、ポリマーをシランカップリング剤およびフィラーに結合するためのフリーラジカルメカニズムによってポリマーと反応してよい。図示されたQ群は、以下に説明されおよび示される。ある態様では、1つ以上のポリマー鎖がカップリング剤と反応してよいように、Qは2つ又はそれよりも多い不飽和部位を含んでよい。ある態様では、1つ以上のQ群がある場合、Q群は同じであってもよく、又はQ群は異なっていてもよい。例えば、フルオロポリマーのようなハロポリマーと言ったポリマーを有するフリーラジカルメカニズムによって反応し得る1つの、又はそれよりも多い二重結合をZ群は含むことが望まれる。
【0030】
ある態様では、Q群は以下の

の構造式(II)を有する化合物を供するために選択されてよく、R又はRが構造式(I)のSi部分に結合する群を含んで成る。Rが構造式(I)のSi部分に結合する群を含んで成る例では、RはC1〜C6のアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のヘテロアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のアルケニル(直鎖又は分岐鎖)、エステル基、ケト基、エーテル基、フェニル又は他の適当な群であってよい。Rが構造式(I)のSi部分に結合する群を含んで成る例では、RはC1〜C6のアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のヘテロアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のアルケニル(直鎖又は分岐鎖)、フェニル、エステル基、ケト基、エーテル基、又は他の適当な群であってよい。RおよびRの正確な鎖の長さが、フィラーとポリマーとの間の望ましい間隔を供するために選択されてよい。例えば、ポリマーとフィラーとの間の立体障害が低減されるように、構造式(II)の環と構造式(I)のSi群との間の結合基Lを有することが望ましいであろう。構造式(III)および(IV)はこの結合例を示す。

構造式(III)および(IV)では、結合鎖LはC1〜C6のアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のヘテロアルキル(直鎖又は分岐鎖)、C1〜C6のアルケニル(直鎖又は分岐鎖)、フェニル、エステル基、ケト基、エーテル基、又は他の適当な群であってよい。ある例では、結合鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、又は例えば窒素、酸素、硫黄のような1つ若しくはそれよりも多いヘテロ原子を含んでもよいし、若しくは含まなくてよい他の炭化水素であってよい。ある例では、結合鎖は、酸素部分およびSi部分に分離している1つの又はそれよりも多い他の群を有する構造式(II)の環構造に直接結合された酸素部分を有するエーテル基である。図示された特定のカップリング剤およびリンカーがより以下に詳細に説明されている。構造式(III)および(IV)のRは、アルコキシ、アシルーオキシル、ハロゲン、アミン、又は他の適当な加水分解性基であってよい。様々なR群は同じであってもよく、又は異なっていてもよい。
【0031】
ある例では、構造式(II)、(III)又は(IV)のR2、3、およびRは、互いに2〜6の炭素原子を含んで成り、および例えば少なくとも1つの2重又は3重結合、および例えば任意に硫黄、酸素および窒素のようなヘテロ原子と言った少なくとも1つの不飽和部位を有する、アルキル基であってよい。ある例では、RおよびRは同じであってもよく、一方で他の例では、RおよびRは異なっていてもよい。ある例では、RおよびRは同じであってもよく、一方で他の例では、RおよびRは異なっていてもよい。ある例では、RおよびRは互いに同じであり、およびRおよびRは互いに同じであってもよい。ある例では、RおよびRは同じであってもよく、一方で他の例では、RおよびRは異なっていてもよく、RおよびRはRおよびRとは異なる。例えば、RおよびRの各々は、以下の構造式(V)および(VI)に示されるケト基を供するための酸素であってよい。

ある例では、もしRおよびRが不飽和の部位を含むならば、その際のRおよびRは不飽和の部位がないことを意図されていてもよい。同様に、もしRおよびRが不飽和の部位を含むならば、その際のRおよびRは不飽和の部位がないことを意図されていてもよい。他の例では、不飽和部位は環構造の原子付近に設置されてよく、該不飽和部位はRおよびR又はRおよびR内であってよい。不飽和部位の他の設置部位および配置は、この開示の利益を享受する当業者によって容易に選択されるであろう。
【0032】
構造式(V)および(VI)のある例では、RおよびRの各々は、同じであってもよく又は異なっていてもよいC1〜C6のアルケニルであってよい。図示された化合物が構造式
(VII)(a)〜(VII)(p)として図2A〜2Dに示され、Rは、例えば図2A〜2Dに示される本明細書にリストされる、例えば図2A〜2Dに示されるヒドロキシル、メトキシ、エトキシ等、又は特定の群と言ったこれらの群のいずれかであってよい。さらに、不飽和の部位は末端炭素、又は2つの内部炭素との間であってよい。結合基Lはプロピル基(又はイソプロピル基)として図2A〜2Dに示されるが、他の群は以下に説明されるものとしてあり得る。さらに、図2A〜2Dに示される構造の部分的な、又は完全なフッ素化誘導体は適当な化合物である。構造式(V)および(VI)の他例では、RおよびRの1つはアルケニルであってよい。図示された化合物は、構造式(VIII)(a)〜(VIII)(p)として図3A〜3Dに示される。さらに、また図3A〜3Dに示される構造の部分的な、又は完全なフッ素化誘導体は適当な化合物である。
【0033】
構造式(III)および(IV)のある態様では、RおよびRの各々は以下の構造式(IX)および(X)

に示されるような化合物を供するために存在しない。RおよびRは互いに2〜6の炭素原子を含んで成り、例えば少なくとも1つの二重又は三重結合のような少なくとも1つの不飽和部位を有するアルキル基であってよい。Lは本明細書に説明されるように結合基であってよく、およびRは例えば本明細書に説明されるような加水分解性基であってよい。構造式(IX)および(X)の図示された種は、構造式(XI)(a)〜(XI)(l)として図4A〜4Cに示される。ある例では、RおよびRの各々は同じであってもよく、一方他の例では、RおよびRは異なっていてもよい。さらに、また図4A〜4Cに示される構造の部分的な、又は完全なフッ素化誘導体は適当な化合物である。
【0034】
他の態様では、Rが以下の構造式(XII)

に示されるような化合物を供するために存在しなくてよい。構造式(XII)では、RおよびRは互いにアルキル基であってよく、RおよびRは同じであってもよく、又は異なっていてもよく、2〜6の炭素原子を含んで成り、および例えば少なくとも1つの二重又は三重結合である、少なくとも1つの不飽和部位を有する。Lは本明細書に説明されるように結合基であってよく、およびRは例えば本明細書に説明されるように、加水分解性基であってよい。構造式(XII)の図示された種は、構造式(XIII)(a)〜(XIII)(d)として図5に示される。さらに、また図5に示される構造の部分的な、又は完全なフッ素化誘導体は適当な化合物である。
【0035】
本明細書に説明されるシランカップリング剤の図示された例は、シラン化合物の既知の生成方法を使用して合成されてよい。例えば、ハロ又はアルコキシシランはグリニャール試薬(Rが有機基であり、およびXがハロゲンであるRMgX)、又は例えばRが以下の反応スキームに示されるような有機基であるRLiのようなアルカリ金属有機物と反応してよい。

シランカップリング剤を合成する別の方法は、例えば、クロロプラスック酸、過酸化t−ブチル、およびアミン錯体のような触媒存在下でオレフィンの合成を通したものである。シリコンは一般的には最小置換炭素になる。

ヒドロシリル化は、例えば以下の反応スキームに示されるように不飽和側鎖をシリル化するためにカールシュテット触媒(Pt{[(CH=CH)MeSi]O})の存在下で起きる。

他の例では、またオルガノシランは、有機ハロゲン化物と熱および銅触媒を使用するシリコンとの直接合成によって生成される。

【0036】
ある態様では、シランカップリング剤は様々なメカニズムを介してフィラーと反応してよい。ある手段では、ポリシロキシリンケージを有する縮合生成物を供給するために、シランは追加的シランカップリング剤とまず反応してよい。次に、シランの有機基のフィラーの表面への水素結合がまず起こる。表面からのプロトンがカップリング剤の有機基へ寄付され、続いて水のロス(脱水)があってもよく、および次いでフィラー面とシランとの間の後のリンケージが水のロスを起こしてもよい。全体プロセスの図は、ジェネリックシランを使用する図6に示される。
【0037】
シランカップリング剤に使用されてよい図示された有機基は、限定されるものではないが、Meがメチル、Etがエチル、nPrがn−プロプリ、nBuがn−ブチル、およびAcがアセチルである、−SiCl、−SiBr、−SiF、−Si(OMe)、−Si(OEt)、−Si(OnPr)、−Si(OnBu) 、−Si(OEtBu)、−Si(OAc)を含む。シラン群の置換基は同じである必要はない。ある例では、置換基のうち3つは同じであってよく、置換基のうち2つは同じであってよく、又は置換基の3つ全てが異なっていてもよい。いずれにしろ全ての置換基が同じであろうとなかろうとも、シランの全ての置換基が加水分解性基であることが望まれる。
【0038】
ある態様では、シランカップリング剤は図7にある構造式(XIV)、(XV)又は(XVI)に示されるように化合物の形をとってよく、ある例では本明細書に各々TAIC-シラン、TMAIC-シランおよびTAC-シランと呼ばれている。TAIC-シランの特定の例は、構造式(XVII)(a)〜(XVII)(p)として図8A〜8Dに示され、TMAIC-シランの特定の例は、構造式(XVIII)(a)〜(XVII)(p)として図9A〜9Dに示され、およびTAC-シランの特定の例は、構造式(XVIIII)(a)〜(XVIII)(p)として図10A〜10Dに示される。図8〜10の結合基がプロピル基又はイソプロピル基である一方、他の結合基は本明細書に説明されるものとしてあり得る。構造式(XIV)〜(XVIII)(p)で示される化合物内にある2つのビニル基の反応性は同一であり、またTAIC-シラン、TMAIC-シランおよびTAC-シランの良好な耐熱性によって、TAIC-シラン、TMAIC-シランおよびTAC-シランは一般的にフルオロエラストマーと共に使用される高温用途に利用し得る。特に、TAIC-シランは硬化率、硬化状態および熱安定性の良好なバランスにより改善された特性を提供し得る。さらに、さらに図7〜10に示される構造物の部分的又は完全なフッ素化誘導体は適当な化合物である。
【0039】
ある態様では、構造式(XIII)〜XVIII(p)の化合物を合成するために、ベース構造はヒドロシリル化されてよく、例えばTAIC、TMAIC、又はTACベース構造はヒドロシリル化され得る。例えば、TAIC、TMAIC、およびTACと、カールシュテット触媒の存在下で適切なトリ官能(トリエトキシ、トリメトキシ、又はトリクロロ)シランとのヒドロシリル化はシランカップリング剤を提供し得る。例として、TAIC-シランのある合成ルートは、トリエトキシシリル基およびカールシュテット触媒を使用する上記テキストに示される。
【0040】
ある例では、シランカップリング剤の熱安定性をさらに改善するために、構造の変性は
(1)1つ又はそれよりも多いハロゲン化物を含むためのリンカー構造を変えることを含む。例えば、プロピルリンカーは全フッ素化されたプロピルリンカー(-CH-CH-CH-to-CF-CF-CF-)に変えられてよく、(2)リンカーをフェニルおよびビフェニル構造のような熱安定的な芳香族に変えることを含み、(3)カップリング剤をdipodalシラン結合することを含む。さらに、またリンカーの長さは熱安定性に過度な犠牲をはらうことなく、反応性ビニル基のベストな流動性を得るために変え得る。一般的に、より良い安定性は、より長いリンカーを使用するよりも、例えばエチル又はプロピルリンカーのようなより短いリンカーを使用する場合に見られる。このような変化例は、シランカップリング剤の他の部位への結合部位を表す波線のある図11に図示された結合基種に示される。図示されたリンカーは、1〜6の炭素原子(直鎖又は分岐鎖)、フェニル基、ビフェニル基、フルオロ基又は本明細書に説明される他の置換基を有するリンカーを含む。
【0041】
ある態様では、フィラー面を修飾することによって異なる特性が得られる。まず、シリカフィラーの表面極性は著しく変えられる。例えばシラン処理の前に、シリカフィラー(ヒュームド又は析出)は大変高い表面エネルギーを有する。シリカフィラーは、しばしば割れ発生部位になり、それ故に合成物の機械的特性を低下させるポリマーマトリクスに大きな凝集物を形成する傾向がある。シリカフィラーがシランカップリング剤で取り扱われる際、シリカフィラーの表面エネルギーは著しく低下し、およびフルオロエラストマーの表面エネルギーと同様になる。もし、完全なるシランの保護(又はカバレージ,coverage)が得られたならば、これら修飾フィラーはそれ程多く水分を吸収しないか、又は水蒸気でさえ全く吸収しないであろう。結果として、フィラーはフルオロエラストマーに混ぜ合わせられる際、フルオロエラストマーにとてもよく分散するであろう。次に、シランは反応する。フルオロエラストマー等の硬化条件では、これらシランのビニル基はポリマーの官能基と(フィラー表面で架橋へとつながる)反応し、それ故にフィラーをポリマーへ共有結合させるであろう。例えば、フィラー表面上に共有結合したゴム(rubber)であってよい。結合ゴムは、ゴムの機械的特性を決定し得る。
【0042】
ある特有のポリマー-フィラーシステムと異なるシステム又は異なる条件でのゴムのコンテンツおよび特性を比べる際、結合ゴムはポリマーおよびフィラーの化学的および物理的性質に敏感であると同時に結合ゴムが単離され、および測定される実験的条件(温度、溶媒等)にも敏感であると言ったいくつかの要因が考えられる。本明細書に説明されるシランカップリング剤を使用して得られる共有結合したゴムは、物理的引力がフィラー表面近くにあるポリマー層につながるポリオレフィン-カーボンブラックシステムで得られる共有結合したゴムと大変異なる。シリコン-酸素、シリコン-炭素、および炭素-炭素(一重)結合の結合解離エネルギーであって、シリカ表面が修飾されるTAIC-シランシリーズでの化学結合の主な種類である結合解離エネルギーは約370〜570kJ/molである。それに比べて、カーボンブラック上のポリオレフィンの吸収エネルギーは、一般的に約10〜35kJ/mol(少なくともマグニチュード・ウェーカーのあるオーダー)である。共有結合したゴムにある非常に強い結合は、ポリマー化合物の非常に高い耐熱性を供する際に助力し得る。
【0043】
ある態様では、これらのシランカップリング剤を使用するケイ酸表面の表面修飾は、標準的な手順によって実行され得る。カップリング剤は、水性アルコールからの沈殿物、水性溶液からの沈殿物、スプレーオン方法による粉末上にあるバルク沈殿物、全体ブレンド方法、無水液相沈殿物、気相沈殿物、スピンオン沈殿物およびスプレーアプリケーションによって基体に適用され得る。クロロシランにとって、クロロシランはアルコール溶液から沈殿され得る。特徴的なアプリケーション手順が選択されてよいにもかかわらず、シランカップリング剤の反応は便利な目的のため4つのステップに分類され得る。まず、3つの加水分解性基の加水分解が起こる(水は溶媒に存在し、又大気から表面で吸収される)。オリゴマーへの縮合は次のとおりである。次いで、オリゴマーは水素結合を表面上のヒドロキシル基に形成する。最後に、乾燥又は硬化の間、共有結合が水の同時ロスで基体に形成される。シランの加水分解性の沈殿のある例は図6に示される。シリカ粒子の表面へ共有結合されるTAIC-シランを示している図は、図12に示される。使用する際、シリカフィラーは図11に示されるように単一の球状粒子としてめったに存在しない。多くの例では、シリカフィラーは真珠のひもと同様にシリカフィラー自身を配置する。
【0044】
ある態様では、実質的にはフィラー表面上にある全ての接触しやすいヒドロキシル部位(又は他の反応性部位)が、シランカップリング剤で修飾され得るように過剰なシランカップリング剤が使用されてよい。他の例では、シランカップリング剤と一体となった完全な被覆は必要ではない。フェニルトリエトキシシラン、ペンタフルオロフェニルトリエトキシシラン、p−トリルトリメトキシシラン、p−トリフルオロメチルテトラフルオロフェニルートリエトキシシラン等のような高温シランは、カップリングシランの表面濃度を希薄化するためにシランカップリング剤と共に混合され得る。これら高温シランは、フィラーの表面極性を修飾する場合のみ被覆剤として役立つが、共有結合を実質的な程度へ形成しない。
【0045】
ある例では、シランカップリング剤に使用される正確なフィラーは決定されない。特に多くの異なるタイプのフィラーが使用されてよく、およびある例では1つ以上のタイプのフィラーが使用されてよい。限定されるものではないがシリカ、析出シリカ、非晶質シリカ、ガラスシリカ、ヒュームド・シリカ、溶融シリカ、石英、ガラス、アルミニウム、アルミーケイ酸塩(例えば、粘土)、銅、スズ、タルク、無機酸化物(例えば、Al、Fe、TiO、Cr)、スチール、鉄、アスベスト、ニッケル、亜鉛、銀、鉛、大理石、チョーク、石膏、バライト、グラファイト、カーボンブラック、例えばカーボンブラック処理されたシリコンのような処理カーボンブラック、および1つの又はそれよりも多い表面反応群を含み、又は1つの若しくはそれよりも多い表面反応群を含むために化学的に修飾され得る他の粒子、粉末および材料を、使用され得るフィラーの図示されたタイプは含む。
【0046】
フィラーと同様に、シランカップリング剤と共に使用される正確なポリマーは変わってよい。ある態様では、1つの又はそれよりも多い2重結合、ハロゲン、脱離基を含むポリマー又はフリーラジカルメカニズムによって反応し得るポリマーは、本明細書に説明されるシランカップリング剤と共に使用されてよい。限定されるものではないが、高密度ポリエチレン、ナイロン、ポリカーボネート、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリサルフォン、ポリビニルクロライド、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミドーイミド、ポリブチレン、ポリブチレンテレフタラート、ポリエポキシド、および他のポリマーを図示されたポリマーは含む。ある例では、シングルタイプのポリマー、異なるポリマー、混合ポリマー等が使用されてよい。それ故に、フルオロポリマーをカップリング剤と組み合わせて使用する本明細書に説明される例では、フルオロポリマーは1つの又はそれよりも多い他のポリマーに置換されてもよく、又は1つの又はそれよりも多い他のポリマーと組み合わせて使用されてもよい。
【0047】
ある態様では、フルオロポリマー、クロロポリマーおよびブロモポリマーのようなハロポリマーが使用されてよい。また、例えばクロロフルオロポリマーおよびブロモフルオロポリマーのような2つの又はそれよりも多い異なるハロ置換基を含む混合ハロポリマーが使用されてよい。また、限定されるものではないが、窒素、酸素、硫黄および窒素、酸素および硫黄から形成されるヘテロ群を含んで成るヘテロ原子を、ハロポリマーは含んでよい。本明細書に開示される架橋剤との使用における特別な興味はフルオロポリマーであり、該フルオロポリマーは、炭素-フッ素結合の不活性によって架橋することは難しい。フルオロエラストマーは、一般的にフルオロアルケンのラジカル共重合、三重合又はテトラ重合によって合成される。フルオロエラストマーの例は、フッ化ビニリデン(VDF又はVF)のユニット、およびテトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、フッ化ビニル(VF)、エチレン(E)、プロピレン(P)およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)のような
主たるモノマーを含む少なくとも1つの他の共重合可能なフッ素のユニットを含んで成る共重合を含む。PAVEの特定の例は、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)、およびパーフルオロ(プロピルビニルエーテル)を含む。
【0048】
また、ある態様では、フルオロエラストマーは水溶性重合開始剤および界面活性剤の超過した分量を使用するエマルジョン重合プロセスで生成される。生じたフルオロエラストマーは脱気され(例えば、非反応モノマーから除去される)、凝固され、ろ過され、および洗浄されるべきラテックス状のリアクターから出てよい。また、フルオロエラストマーは懸濁液重合プロセスで生成され得、重合は1つの若しくはそれよりも多いモノマー又は水に溶解したモノマーを有した有機溶媒を分散し、および油溶性の有機過酸化物を使用することによって実行される。界面活性剤又は緩衝材は、一般的には使用されず、およびフルオロエラストマーは、例えば凝固の必要なく直接ろ過され、および次いで洗浄されてよいポリマー粒子の形状で生成され、それ故エマルジョンプロセスから生じるフルオロエラストマーよりもクリーンなポリマーが生成される。また、フルオロエラストマーポリマー鎖が実質的にはイオン末端基がないことによって、ムーニー粘度は相対的に低く、およびポリマーはエマルジョンプロセスによって生成されるポリマーと比べてプロセス可能性を改善している。
【0049】
ある態様では、パーフルオロエラストマーは本明細書に説明されるシラン修飾フィラーと共に使用され得る。パーフルオロエラストマーは一般的には、少なくとも2つの主たる全フッ素置換されたモノマーの共重合されたユニットを有する一定の形を持たないポリマー組成物である。一般的には、主たるモノマーの一つはパーフルオロレフィンであり、その一方で他のモノマーはパーフルオロビニルエーテルである。代表的な全フッ素置換されたオレフィンはテトラフルオロエチレンおよびヘキサフルオロプロピレンを含む。適当な全フッ素置換されたビニルエーテルは、構造式CF=CFO(RO)(RO)を含む。RおよびRは2〜6の炭素原子の異なる直線又は分岐パーフルオロアルキレン基であり、m、nおよびjは独立して0〜10であり、およびRは1〜6の炭素原子を有するパーフルオロアルキル基である。パーフルオロエラストマーは優れた商業的成功を得ており、および厳しい環境に直面する多種多様なアプリケーションで使用されており、特に、高温への暴露およびアグレッシブな化学が起きるパーフルオロエラストマーの最終用途において使用されている。例えば、これらポリマーは航空機エンジンの密封に、石油採掘デバイスに、および高温で使用される産業デバイスの密封部品にしばしば使用される。パーフルオロエラストマーの優れた特性は、これら組成物でポリマーの骨格の主たる部分を作り上げる共重合された全フッ素置換されたモノマーユニットの安定性および不活性に寄与し得る。このようなモノマーはテトラフルオロエチレンおよび全フッ素置換されたビニルエーテルを含む。完全にエラストマーの特性を発展させるために、パーフルオロエラストマーは一般的には架橋されており、例えば加硫されている。そのために、硬化部位モノマーの小さな量が全フッ素置換されたモノマーユニットと共重合され得る。
【0050】
他の態様では、重合可能な官能基を末端に有するポリ(パーフルオロアルキレン酸化物)はあるポリマー、例えば低ガラス遷移温度および低温度柔軟性を有するポリウレタンを準備するために重合され得る。例えば、ポリ(パーフルオロアルキレン酸化物)過酸化物が、良好な低温度柔軟性を有するブロック共重合体を作る際に、エチレン化された不飽和モノマーと共に使用され得る。官能基のない末端部分を有する全フッ素置換されたエーテルは、真空ポンプ流体としての使用に商標“クライトックス”および“フォンブリン”で販売される。例えば、G.Caporiccioらの21 IND.ENG.CHEM.PROD.RES.DEV.515〜19(1982)参照のこと。
【0051】
ある例では、ジヒドロキシポリフルオロエーテルで架橋されたフルオロエラストマーの組成物が使用されてよい。ジヒドロキシポリフルオロエーテルは分岐部分を含んでよく、繰り返しユニット--CFO--を含むランダムな共重合体であり、又は部分的にフッ素置換された繰り返しユニットを含む。他の例では、パーフルオロポリエーテルポリマーは例えば、米国特許第5,026,786号に説明されるように準備されてよい。これらパーフルオロポリエーテルはランダムに分配されたパーフルオロキシアルキレンユニットを含んで成る。また、ヨーロッパ特許公報第222,201号は、本明細書に説明されるカップリング剤と共に使用され得るあるパーフルオロポリエーテルを含んで成る加硫可能なゴム混合物を記載している。これらパーフルオロポリエーテルは、臭素化又はフッ化末端基を有する。ヨーロッパ特許公報ナンバー310,966は、あるパーフルオロポリエーテルを含んで成るゴム混合物を記載している。これらパーフルオロポリエーテルは、パーフルオロアルキル末端基を含んで成る。
【0052】
ある態様では、官能基を持つフルオロ脂肪族化合物モノーおよびポリエーテルを含んで成るあるフッ化エーテル組成物類は、例えば米国特許第5,384,374号および米国特許第5,266,650号で説明されているように使用されてよい。
【0053】
限定されるものではないが、フルオロエラストマー、パーフルオロエラストマー等を含むシラン修飾フィラーとの使用に適当なポリマーは、限定されるものではないが、デュポンパフォーマンスエラストマーエラストマーLLC(ウィルミントン,DE)、デュポンー三井フロロケミカル会社(日本)、AGCケミカルアメリカ(エクストン,PA)、ソルベイソレクシス(イタリア)、ダイキン工業(日本)、ゼオンコーポレーション(日本)、エクスフルアーリサーチコーポレーション(オースティン,TX)および他のケミカルサプライヤーを含む商業的な多数のソースから得られる。
【0054】
組成物の作成段階では、シランカップリング剤は、第1の段階でフィラー面に結合されてよく、および結果として生じた生成物は第2の段階でポリマーと反応し得る。他の例では、シランカップリング剤は第1の段階でポリマーと反応させてよく、また次いで第2の段階でフィラー面と反応させてよい。しかし、他の例では、ポリマー、フィラー、およびシランカップリング剤は、シランカップリング剤を介してフィラーに結合されるポリマーを含む組成物を供するために全て一緒にミックスされてもよく、又はブレンドされてもよい。正確な一連の事象が使用されるにもかかわらず、結果として生じる組成物はシランカップリング剤を介してポリマーに共有結合されるフィラーを含む。結果として生じる組成物の図は、図13に示される。ある例では、フリーラジカルはまず例えば、酸素、窒素又は硫黄のような1つ又はそれよりも多いヘテロ原子を含む例えば、分岐アルキル分子のような適当な種を使用して作り出される。この開始段階では、フリーラジカルはアルキル分子をライト、熱、過酸化物のような開始剤、塩素ガス、臭素又は他の共通に使用されるフリーラジカル開始剤にさらすことによって作り出されてよい。形成されるフリーラジカルは、フリーラジカルを含むシラン-修飾フィラーを形成するために、シラン-修飾フィラーと共に反応してよい。フリーラジカルフィラーはポリマーを、シラン修飾フィラーへ共有結合させるためおよび/又はよりフリーラジカルを作り出すための1つの又は一連の伝播システムでポリマーと共に反応し得る。1つの又はそれよりも多い最後のステップでは、フリーラジカルフィラーは多数のポリマー分子と反応し、およびシランカップリング剤を介してフィラーに共有結合されるポリマーを生じさせてよい。そのようなフリーラジカル反応およびフリーラジカル反応を行うための適当な状態は、この開示の利益を享受する当業者によって容易に選択されるであろう。
【0055】
追加構成材はポリマー-シランカップリング剤-フィラー組成物に又はポリマー-シランカップリング剤-フィラー組成物と共に使用されてよい。例えば、添加剤、粘度調整剤、加工助剤等が使用される。そのような追加構成材の例は、限定されるものではないが、オゾン劣化防止剤、酸化防止剤、可塑剤、樹脂剤、難燃剤、潤滑剤、例えば硫黄、硫黄供与体、活性剤、促進剤、過酸化物、シックナー、シンナー、溶剤、塩のような1つの又はそれよりも多い硬化剤、および他の材料を含む。
【0056】
材料の加工において、ミル、ミキサー、鋳型、カレンダーデバイス、押出機等のような様々なデバイスが使用されてよい。例えば、材料はブレンドされ、オープン粉砕され、(スコーチを避けるために温度制御を含んでよい)内部ミキサーと共に混合され、又はその他適当なデバイスと組み合わせられてよい。1つのパス又は多数のパスの混合が使用されてよい。高いせん断混合が良好なばらつきを得るために使用されてよい。材料はさらに混合に役立てるために1つの又はそれよりも多い追加段階で再加工させてよい。材料と共に使用されてよい図解の成形過程は、限定されるものではないが圧縮、移送および射出成形、押出成形並びにカレンダー加工を含む。圧縮成形では、予備成形品は結果として生じた材料に望ましい形状又は大きさを供するために使用されてよい。射出成形では、材料は鋳型に高圧で注入されてよい。カレンダー加工は、材料のシーツを生成するために使用されてよい。カレンダー加工のための化合物は、カレンダー加工を助力するために中位の又は低位の粘度材料を供するために、粘度調整剤と共に使用されてよい。また、材料は押出成形によって形づくられてよい。例えば、材料は望ましい形状を与えるための硬化温度の下で成形型を通ってよい。離型剤は、予備成形品、鋳型およびこれらデバイスから圧縮され、又は生成される材料の除去を助力するための他の部品に使用されてよい。
【0057】
フィラーの表面上にあるシランの存在によって、フィラーのばらつきおよび結果として生じる組成物の機械的特性により効果を与え得る。図14A、BおよびCは、異なるフィラー濃度で熱安定性のあるシランカップリング剤修飾シリカで満たされるポリマーの概略図である。図14Aは、主たるシリカ凝集物によって形成されるあるクラスターの局所構造を示す。図14Bは、ゲル点Φ上に集まったフィラークラスターを示す。シランでフィラーの表面を修飾し、およびそれに続きシランを介してポリマーへ結合させることによって、ペイン効果(また、フレッチャー-ゲント効果)の低減が得られてよい。ペイン効果は、フィラーの3次元ネットワーク(非処理のシリカフィラーおよびシリカフィラーに処理されるシランによるペイン効果を示す図15参照)の破損による小さな歪み()で現れる非直線性である。貯蔵弾性率G,は動的歪みの機能としてプロットされる。歪みが除かれ、又は元のレベルへ引き下げられると、ネットワークは改善し、およびこの過程がヒステリシスを作り出す。ヒステリシスは構成部品の耐用期間に弊害をもたらし得る熱を作り出す。シランカップリング剤をフィラー面へ加え、および変性されるフィラーをポリマーへ共有結合することによって、このヒステリシスを低減しおよびエネルギー消失を低減し得、該エネルギー消失は材料から生成されるパーツ又は組成物の全体的な使用耐用期間を順に増し得る。
【0058】
ある例では、本明細書に開示される組成物は、裸孔を通して燃料の抽出に使用されるパッカーのようなダウンホールのツールおよびデバイスに使用されてよい。例えば、構造に係合するための調査に用いるモジュール式のワイヤーラインツール又はドリルツールのようなダウンホールツールは、圧力測定し、および流体サンプルを得るために使用されてよい。流体は、一般的には調査で入口を通してダウンホールツール中に引き込まれる。ある例では、タイト、低浸透性、フォーメーションのような、サンプル調査はしばしば二重の可膨張式パッカーアッセンブリによって置換される。そのような調査例およびパッカーシステムの例は、例えば米国特許第7,392,851号、第7,363,970号、第7,331,581号、第6,186,227号、第4,936,139号、第4,860,581号および第4,660,637号で表され、並びにシュランベルジェに与えられ、全体のコンテンツは全ての目的のための参照として本明細書に組み込まれる。ある形態では、パッカーは例えば弾力性のある構成部品、ハウジングおよび破裂板を有して成る。圧縮される際、弾力性のある構成部品はウェルの環を封じ込めるために用いられ、およびハウジングは、環の流体によってハウジングのピストンヘッドにかけられる圧力に応じて、弾力性のある構成部品を圧縮するために用いられてよい。ハウジングは環との流体連結を確立するための一部を含む。流体によってもたらされる圧力が所定の閾値を超え、破裂板を破裂させるまで、破裂板は、ポートから入りピストンヘッドと接触する環内の流体を保護するために用いられる。別の形態では、二重パッカー構成部品は、本明細書に説明される1つ又はそれよりも多い材料を含んで成るパッカー構成部品の一方又は両方と共に使用されてよい。例えば、パッカー構成部品は、表面下のフォーメーションを貫通する掘削孔中のワイヤーラインによって伝えられるダウンホールツールに沿って相隔てられてよい。ワイヤーラインツールは例証されているが、また、ドリルストリング、コイル状チューブ等によって伝えられる他のダウンホールツールは、そのような課題のために適している。膨張した際、パッカー構成部品は掘削孔壁の一部を密封又は分離するために協同し、それによって周囲のフォーメーションから流体流れを起こす流域を与える。パッカーアッセンブリの他のパッカーおよび構成部品は、本明細書に説明される1つ又はそれよりも多い組成物を使用して生成されてよい。ある態様では、組成物は開放孔帯状分離のための膨潤性パッカーに使用されてよい。例えば、本明細書に説明されるフルオロエラストマー組成物は、膨潤性材料が膨潤率を落とすためのバリアコーティングとして使用され得る。
【0059】
ある態様では、本明細書に開示される組成物は、例えばマッドモーターのステーター又はローター上のコーティングのような、1つの又はそれよりも多いデバイスを被覆するために使用されてよい。例えば、組成物は回転性の駆動を掘削アッセンブリへ与えるモーターに使用されてよい。それらを使用する実例となるマッドモーターおよびアッセンブリは、例えば共通に与えられる米国特許第7,289,285号、第6,419,014号、第5,727,641号、第5,617,926号、第5,311,952号に説明される。これによる各々の全体の開示は全ての目的のための参照として本明細書に組み込まれている。ある例では、本明細書に説明される組成物は、シュランベルジェによるMDT(モジュール式フォーメーション動的テスター)のようなフォーメーションテスター、浸透性プルーブ、パワードライブパッド、並びに油田およびガス調査のためダウンホールに共通に使用される他の構成部品およびツールに使用される。
【0060】
ある特定の例は、本明細書に説明される材料および組成物のさらなるいくつかの側面、特徴および例を例証するためにより詳細に以下に説明される。
【実施例1】
【0061】
TAIC-シランは、以下の構造式(XIX)を有するシランカップリング剤を供するためのカールシュテット触媒の存在下でトリアリルイソシアヌル酸塩をトリメトキシシラン(MeO)SiH)と反応させることによって生成され得る。

構造式(XIX)のTAIC-シランは、TAIC-シラン修飾フィラーを供するためにフィラーへ共有結合され得る。TAIC修飾フィラーは、フリーラジカルメカニズム(図16A〜C参照)を介してポリマーとの反応によって、例えばフルオロポリマーのようなポリマーに共有結合され得る。図16Aを参照すると、第1ステップでフリーラジカルは、フリーラジカルフォーメーションへ影響を受けやすい1つの又はそれよりも多い分子を使用して作り出され得る。そのようなフリーラジカルは、熱、ライト、過酸化物、塩素ガス、臭素又は他の材料のような開始剤の存在下で形成されてよい。一旦、ラジカルが形成されると、シラン修飾フィラーは反応混合物に加えられてよく、およびフリーラジカルはラジカルシラン修飾フィラーを形成するための不飽和部位又はシランカップリング剤の部位と共に反応し得る。伝播ステップ(図16B参照)では、ポリマー分子はラジカルシラン修飾フィラーに結合されてよい。最後のステップでは、末端鎖(図16C)が供するために生じてよい。
【実施例2】
【0062】
実施例1と同様のある態様では、Cab−o−Sil M−5シリカを扱うTAICーシランは以下のプロトコルに従って生成された。:250mLのフラスコへ、Cab−o−Sil M−5シリカおよび100mLのアセトンを加える。攪拌ホットプレート上にフラスコを置き、および混合物が均一な懸濁液を形成するまで攪拌する。攪拌中、TAIC-シラン((VII)(a)、R=エトキシ基)を1.9g加える。45℃まで懸濁液を加熱し、および維持し、そして、少なくとも2時間攪拌する。懸濁液を室温へ冷却する。TAIC−処理されたシリカと適当なポリマーとの混合の2つの方法が望ましい。湿式混合手順において、適当なポリマーのアセトン溶液の中にシリカフィラー懸濁液に処理されるTAIC-シランを加え、および均一な混合物が形成されるまでウェルをかき混ぜる。内部ミキサーを使用して他の添加物を混ぜ合わす前に混合物を乾燥させる。乾式混合手順において、シリカフィラーに処理されるTAIC-シランは遠心分離を通して溶媒から分離され、およびポリマーおよび全添加物と共に混合させる前に乾燥される。実験条件では、湿式混合手順はより好ましい混合結果を生み出す。赤外線スペクトルが得られ(図17参照)、TAIC-シランカップリング剤がシリカと反応することを裏付けた。
【実施例3】
【0063】
TMAIC-シランカップリング剤は、以下に示される構造式(XX)を有するシランカップリング剤を供するためにカールシュテット触媒の存在下でトリメタリルイソシアヌル酸塩をトリメトキシシラン(MeO)SiH)と反応させることによって生成され得る。

構造式(XX)のTMAIC-シランはTMAIC-シラン修飾フィラーを供するためにフィラーに共有結合され得る。TMAIC修飾フィラーは、フリーラジカルメカニズムを通したポリマーとの反応によって、例えばフルオロポリマーのようなポリマーに共有結合され得る。
【実施例4】
【0064】
TAC-シランカップリング剤は、以下に示される構造式(XXI)を有するシランカップリング剤を供するためにカールシュテット触媒の存在下でトリアリルシアヌル酸塩をトリメトキシシラン(MeO)SiH)と反応させることによって生成され得る。

構造式(XXI)のTAC-シランはTAC−シラン修飾フィラーを供するためにフィラーに共有結合され得る。TAC修飾フィラーは、フリーラジカルメカニズムを通したポリマーとの反応によって、例えばフルオロポリマーのようなポリマーに共有結合され得る。
【実施例5】
【0065】
特定のポリマー、フィラーおよびカップリング剤は、フィラーをポリマーへ共有結合するために一緒に混合されてよい。ある例では、特定のポリマーは、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)(PMVE)を含んで成るパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)、フッ化ビニル(VF)、エチレン(E)、プロピレン(P)等から成る群から選択され得る1つ又はそれよりも多いフルオロポリマーであってよい。単独で又はフルオロポリマーと組み合わせて使用されてよい他の適当なポリマーは、限定されるものではないが、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、エチレンプロピレンジエンモノマー(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、水素化ニトリルブタジエンゴム(HNBR)、シリコン、フルオロシリコン、およびその組合せを含む。例えば、VDF、TFEおよびHFPの共重合体であるテクノフロンP757(ソルベイソレクシス)が使用されてよい。
【0066】
特定のフィラーとして、沈殿シリカ、非晶質シリカ、ガラスシリカ、ヒュームド・シリカ、溶融シリカ、石英、ガラス、アルミニウム、アルミーケイ酸塩(例えば、粘土)、銅、スズ、タルク、無機酸化物(例えば、Al、Fe、TiO、Cr)、スチール、鉄、アスベスト、ニッケル、亜鉛、銀、鉛、大理石、チョーク、石膏、バライト、グラファイト、カーボンブラック、シリコン処理カーボンブラックのような処理カーボンブラック、並びに1つの又はそれよりも多い表面反応基を含み、又は含むために化学的に修飾され得る他の粒子、パウダーおよび材料の1つ又はそれよりも多いものが使用されてよい。ヒュームド・シリカCab−o−SilM5(キャボット)は使用され得るフィラーのある例である。
【0067】
本明細書に説明される1つ又はそれよりも多いシランカップリング剤が使用されてよい。例えば、TAIC-シラン((VII)(a)、R=エトキシ基)はある例として使用され得る。
【0068】
本明細書に開示される例の要素を導く際、冠詞“a”、“an”、“the”および“said”は1つの又はそれよりも多い要素があることを意味する。用語“comprising”、“including”および“having”は変更可能であることを意図し、および記載された要素以外に追加要素があってよいことを意味する。例の様々な構成部品が他の例にある様々な構成部品が相互交換され、又は置換され得ることをこの開示の利益を享受する当業者によって認識されるであろう。
【0069】
ある側面、例および態様が上記で説明されているが、開示される図解の側面、例および態様の追加、置換、修飾および変性が可能であることをこの開示の利益を享受する当業者によって認識されるであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シランカップリング剤を介してフィラーへ共有結合されるフルオロポリマーを含んで成る組成物であって、
該シランカップリング剤がTAIC-シラン、TMAC-シラン、TAC-シランおよびそれらの組合せから成る群から選択される、
組成物。
【請求項2】
フルオロポリマーが、フッ化ビニリデン(VDF)、テトラフルオロエチレン(TFE)、ヘキサフルオロプロピレン(HFP)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)およびパーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)から成る群から選択される、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
フィラーが、沈殿シリカ、非晶質シリカ、ガラス質シリカ、ヒュームド・シリカ、溶融シリカ、石英、ガラス、アルミニウム、アルミニウムーケイ酸塩(例えば、粘土)、銅、スズ、タルク、無機酸化物(例えば、Al、Fe、TiO、Cr)、スチール、鉄、アスベスト、ニッケル、亜鉛、銀、鉛、大理石、チョーク、石膏、バライト、グラファイト、カーボンブラック、処理カーボンブラックから成る群から選択される、請求項2に記載の組成物。
【請求項4】
構造式(XVII)(a)〜(XIX)(p)に示されるような構造式を有する少なくとも1つのシランカップリング剤をさらに含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
添加剤、粘度調整剤又は加工助剤の少なくとも1つをさらに含んで成る、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
フィラーの実質的全ての反応部位がシランカップリング剤と共有結合されている、請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
フィラーをTAIC-シラン、TMAC-シラン、TAC-シランおよびその組合せから成る群より選択される少なくとも1つのシランカップリング剤と反応させ、それによって、シランをフィラーへ共有結合させること、
共有結合したシラン-フィラーをポリマーと反応させ、それによって、ポリマーを共有結合したシランーフィラーと共有結合させること
を含んで成る方法。
【請求項8】
共有結合したシラン-フィラーとポリマーとの反応ステップの間、ポリマーにフリーラジカルを形成させ、それによって、共有結合したシラン-フィラーのシラン不飽和部位でポリマーを結合させること
をさらに含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
フィラーの実質的全表面部位がシランカップリング剤を含んで成ることになるまで、フィラーと少なくとも1つのシランとを反応させることをさらに含んで成る、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
開始剤の存在下で、フィラーと少なくとも1つのシランカップリング剤とを反応させることをさらに含んで成る、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
シロキサンの存在下で、少なくとも1つのシランカップリング剤とフィラーとを反応させて、フィラー表面上にある官能基をブロックし、それによって、少なくとも1つのシランカップリング剤との反応を防ぐことをさらに含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
1つ又はそれよりも多いミキサー、ミル、鋳型、カレンダー加工デバイスおよび押出し機を使用して共有結合したポリマー-シラン-フィラーを処理することをさらに含んで成る、請求項7に記載の方法。
【請求項13】

の構造式を有する化合物であって、
各Rがヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基から成る群から独立的に選択される、
化合物。
【請求項14】

の構造式を有する化合物であって、
各Rがヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基から成る群から独立的に選択される、
化合物。
【請求項15】

の構造式を有する化合物であって、
各Rがヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基およびプロポキシ基から成る群から独立的に選択される、
化合物。
【請求項16】
構造式(XVII)(a)〜(XIX)(p)に示される構造式を有するシランカップリング剤。
【請求項17】

の式を有するシランカップリング剤であって、
Qはポリマーに共有結合を供する1つ又はそれよりも多い群を含んで成り、およびZはフィラーに共有結合を供する1つ又はそれよりも多い群を含んで成り、並びにmとnとの合計が4である、
シランカップリング剤。
【請求項18】
Zがヒドロキシル基、アルコキシ基、アシルーオキシル基、ハロゲン基およびアミン基から選択される、請求項17に記載のシランカップリング剤。
【請求項19】
Qが

の構造式を有する化合物である、請求項18に記載のシランカップリング剤であって、
又はRの一方が構造式(I)のSi部分に結合する群を含んで成り、および
およびRがC1〜C6の直鎖又は分岐アルキル、C1〜C6の直鎖又は分岐へテロアルキル、C1〜C6の直鎖又は分岐アルケニル、エステル基、ケト基、エーテル基、フェニル基、水素および酸素から成る群から独立的に選択され、並びに
、R、RおよびRの各々が2〜6の炭素原子を含んで成り、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、並びに任意にヘテロ原子を含むアルキル基から成る群から独立的に選択される、
請求項18に記載のシランカップリング剤。
【請求項20】
QおよびZが

の構造式を有する化合物を供するために各々選択される、請求項17に記載のシランカップリング剤であって、
Lがヘテロ原子を任意に含む1〜6の炭素原子を含んで成る結合基であり、
が加水分解性基であり、
が水素、酸素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、エーテル基から成る群から選択され、又はRが存在せず、および
およびRの各々が2〜6の炭素原子を含んで成り、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、並びに任意にヘテロ原子を含むアルキル基から成る群から独立的に選択される、
請求項17に記載のシランカップリング剤。
【請求項21】
およびRの各々が、プロペンおよびイソプロペンから成る群から独立的に選択され、およびLがプロピル基又はイソプロピル基である、請求項20に記載のシランカップリング剤。
【請求項22】
QおよびZが

の構造式を有する化合物を供するために各々選択される、請求項17に記載のシランカップリング剤であって、
Lがヘテロ原子を任意に含む1〜6の炭素原子を含んで成る結合基であり、
が加水分解性基であり、
が水素、酸素、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、エーテル基から成る群から選択され、および
およびRの各々が2〜6の炭素原子を含んで成り、および少なくとも1つの不飽和部位を有し、並びに任意にヘテロ原子を含むアルキル基から成る群から独立的に選択される、
請求項17に記載のシランカップリング剤。
【請求項23】
およびRの各々が、オキシプロペンおよびオキシ-イソプロペンから成る群から独立的に選択され、およびLがプロピル又はイソプロピルである、請求項22に記載のシランカップリング剤。
【請求項24】
ポリマーのフィラーへの共有結合を助力する方法であって、該方法が構造式(I)〜(XIX)(p)に示される構造式を有するシランカップリング剤を供することを含んで成る方法。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図2C】
image rotate

【図2D】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図3C】
image rotate

【図3D】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate

【図8D】
image rotate

【図9A】
image rotate

【図9B】
image rotate

【図9C】
image rotate

【図9D】
image rotate

【図10A】
image rotate

【図10B】
image rotate

【図10C】
image rotate

【図10D】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14A】
image rotate

【図14B】
image rotate

【図14C】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16A】
image rotate

【図16B】
image rotate

【図16C】
image rotate

【図17】
image rotate


【公表番号】特表2012−509979(P2012−509979A)
【公表日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−538607(P2011−538607)
【出願日】平成21年7月27日(2009.7.27)
【国際出願番号】PCT/US2009/051818
【国際公開番号】WO2010/062416
【国際公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【出願人】(509082178)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (16)
【Fターム(参考)】