説明

カップ状容器用ディスプレイトレイ

【課題】複数のカップ状容器を整列させた状態で簡単に収納出来て展示が可能なトレイであって紙製でリサイクルしやすく多段に重ねても崩落しないフランジ付のカップ状容器用ディスプレイトレイを提供すること。
【解決手段】開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、下面板・前面板・後面板・右側面板・左側面板からなり、下面板が円弧状に形成されたスリットを有していることを特徴とするカップ状容器用ディスプレイトレイ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイに関し、詳しくは、水羊羹やゼリー等の充填物を封入した、開口部にフランジを有するカップ状容器を整列配置させたカップ状容器用ディスプレイトレイに関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、水羊羹やゼリー等の充填物が封入された透明な樹脂製のカップ状容器を使用した食品は15個や30個単位で販売されるのが通常である。その場合、複数のカップ状容器をトレイ上に整列配置した包装箱が多用されている。このために、外箱内にカップ状容器を保持するための凹部を備えた収納仕切具を配装し、該凹部にカップ状容器を挿嵌させて各カップ状容器の位置決めを図る方法がいくつか提案されている。
【0003】
特許文献1では、外箱と商品陳列用のトレイとトレイ固定用の中枠との組み合わせからなる鍔付容器入商品の包装ケースが提案されている。
上記トレイには、上縁部に鍔がある鍔付容器の上面と下面に接触して該容器を所定の傾斜姿勢に保持するための一対の転倒防止縁と、該容器の側面に接触して容器の荷重を受けるための荷重受部とを備えた容器受孔を複数個形成し、上記中枠は、板紙・段ボール又は合成樹脂板のような板状の素材の適所に一対の折線を施して、前記トレイの下面に接するトレイ受板とトレイの両側面に接する一対の側板とを形成すると共に、各側板の両側部に、夫々、垂直方向の折線を施してなるトレイ押え用のヒレを形成してある。
【0004】
この包装容器では、トレイの下部のみに転倒防止縁と容器受孔が設けられているためにカップ状容器の保持が下部にかたより固定が十分ではなく、とくに内容物を収納配列したトレイを二段以上に積み重ねたときに容器上部の保持が不安定になり商品の崩落が起こりやすかった。
【0005】
従来のカップ状容器のトレイとしては特許文献2に紹介されているように、複数の凹部を縦横方向に整列配置して形成した平面矩形状の樹脂成形品であり、各凹部にカップ状容器を嵌め込んで一方向に傾斜させた状態で整列させて包装箱内に収容する構造のトレイが知られている。尚、包装箱は、所定の展開形状を有する段ボール紙を折り曲げ成形して前述のトレイが収容される平面矩形状の内箱と、その内箱に外挿されて内箱の上面開口部を塞ぐ厚紙などからなる筒状の外箱とで構成されている。
【0006】
ところで、前述したトレイでは、カップ状容器を凹部に単に嵌め込んだ状態でトレイ上に載置しているだけであるため、トレイを収容した包装箱の搬送等の取り扱い時、トレイの凹部からカップ状容器が簡単にはずれて商品の整列状態が乱れたり、商品が包装箱からこぼれたりして商品的価値が大幅に低下するという問題があった。
また、トレイを収容する包装箱の内箱は、樹脂成形品のトレイとは別個に所定の展開形状を有する段ボール紙を折り曲げ成形して製作しなければならず、作業に手間がかかると共に材料費なども別個に必要となって製品のコストアップを招来するという問題もあった。
さらに、樹脂成形品のトレイと段ボール紙の内箱を組み合わせて使用するこの方法は、廃棄のときの分別が面倒なだけでなくリサイクルも困難である。
【0007】
簡単な手段により、トレイ上でのカップ状容器の整列状態を確保すると共に、トレイを収容する包装箱のコスト低減を実現するために特許文献2では、カップ部の開口周縁にフランジ部を一体的に形成して前記カップ部内に充填物を封入した多数個のカップ状容器を
、多数の凹部内に個々に前記カップ部を嵌め込んだ状態で一方向に傾斜させて整列配置したトレイが提案されている。
【0008】
このトレイにおいて、前記凹部は、前記容器のカップ部の底面が当接する傾斜面と、その傾斜面の下端縁から立ち上がるように延設されてカップ部の外周面の略半分以上を囲繞する側壁面と、その側壁面の上端縁から外側へ延設されて前記容器のフランジ部の一部が当接する受け面とで構成され、前記凹部周縁における受け面の両側部位に前記フランジ部の一部を押さえ込む嵌合部を形成すると共に、前記側壁面におけるカップ部の外周方向に延びる両端部分にカップ部の外周面の略半分を超えた部分を当接させ、凹部の側壁面へのカップ部の当接に対して前記嵌合部でフランジ部を押さえ込むことにより作用する弾性力でもって容器を整列保持することの出来る構造となっている。
【0009】
この方法においても、カップ状容器の包装は、平面矩形状の樹脂成形品であるトレイとそのトレイと略同一平面形状を有する矩形筒状の厚紙製の外箱とで構成されるために、トレイを収容する外箱は、樹脂成形品であるトレイとは別個に厚紙で製作しなければならず、作業に手間がかかると共に材料費なども別個に必要となって製品のコストアップを招来するという問題があった。
さらに、樹脂成形品のトレイと厚紙製の外箱を組み合わせて使用するこの方法は、廃棄のときの分別が面倒なだけでなくリサイクルも困難である。
【0010】
また、特許文献3では、形状が異なるカップ状容器の上面を揃えて収納することができ、しかも構造が簡単なカップ状容器の収納仕切具および包装箱として、高さの高い容器の底面が該容器よりも高さの低い容器の底面に囲繞される大きさの異なる数種類のカップ状容器を収容するための凹部を有するカップ状容器の収納仕切具であって、前記凹部の側面部において、最も高さの高いカップ状容器の底面支持部よりも上方の位置に高さの最も高いカップ状容器以外のカップ状容器の底面を支持するための支持手段が設けられている収納仕切具が提案されている。
【0011】
しかしながら、この方法では、収納仕切具に段差付の凹部を任意に設けるためにはプラスチック成形品等の紙以外の材料を使う必要があり、通常、板紙や段ボールを材料として用いる包装箱に使用すると廃棄のときの分別のための解体が面倒なだけでなくリサイクルも困難である。
さらに、収納するカップ状容器の上面が水平状態であるために上面に印刷してある絵柄等の情報が店頭展示状態で視認しにくい。
【0012】
以上のように複数のカップ状容器を整列させた状態で簡単に収納出来て展示が可能なトレイであって紙製でリサイクルしやすく多段に重ねても崩落しないフランジ付のカップ状容器用ディスプレイトレイは従来の技術では実現が困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】特開昭60−123319号公報
【特許文献2】特開平10−129674号公報
【特許文献3】特開2000−53138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
複数のカップ状容器を整列させた状態で簡単に収納出来て展示が可能なトレイであって紙製でリサイクルしやすく多段に重ねても崩落しないフランジ付のカップ状容器用ディスプレイトレイを提供すること。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記の課題に鑑み、本発明者は、カップ状の容器を複数個展示販売するための集積パッケージ兼用ディスプレイ用トレイの構造を検討した。
【0016】
その結果、主に店頭で段積み販売することが予想されるペットフード等のカップ状容器を想定して、トレイ底部にスリット部を設けることによって、下部トレイに入ったカップ状容器のフランジ部がこのスリット部に嵌合し、ディスプレイ時の安定性向上、具体的にはディスプレイ時の崩落防止効果に寄与することを見いだし本発明を完成するに至った。
【0017】
本発明の請求項1の発明は、開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、下面板・前面板・後面板・右側面板・左側面板からなり、下面板がスリットを有していることを特徴とするカップ状容器用ディスプレイトレイである。
【0018】
本発明の請求項2の発明は、トレイ形状が平行6面体であることを特徴とする請求項1に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイである。
【0019】
本発明の請求項3の発明は、前面板にPOP表示部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイである。
【0020】
本発明の請求項4の発明は、スリットの形状を円弧状に形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイである。
【発明の効果】
【0021】
本発明の請求項1の発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、下面板・前面板・後面板・右側面板・左側面板からなり、下面板がスリットを有していることから、カップ状容器の配列されたトレイを上下に重ねて店頭に配置した場合、下段に配置されたトレイに配列されたカップ状容器のフランジの上端が上段のカップ状容器を配列したトレイの下面板に形成されたスリットに嵌合することで、上段と下段に積み重ねたトレイが崩落することを防止できる。
【0022】
さらに、上記下面板のスリットは該トレイ内部のカップ状容器のフランジ下端を嵌合することによってカップ状容器の配列を規制し、規則的な配列とすることによって該トレイの上部に配置されるカップ状容器用ディスプレイトレイの下面板のスリットにトレイ内部のカップ状容器のフランジ上端を差し込みやすくして両者の嵌合を容易にする役割も果たしている。
【0023】
また、上段と下段に配置するトレイが同一の構造であるために、カップ状容器のディスプレイトレイとして単に2段積みだけではなく、店頭展示等での必要に応じて3〜4段の多段積みにも対応することが可能である。
【0024】
本発明の請求項2の発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、トレイ形状が平行6面体であることによって、内部に配列されたカップ状容器の天面が斜め上方を向くので、販売陳列時の展示性をアップすることが可能になる。たとえば、トレイ形状が前面から見て後方へやや傾いた平行6面体とした場合は、天面を前面側に向けて並べられたカップ状容器の天面(デザインを施した部分)が斜め上方を向き、販売陳列時に見やすい角度となりより効果を発揮することが出来る。
【0025】
本発明の請求項3の発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、前面板にPOP表示
部を形成したことにより、店頭等でトレイを多段に重ねて陳列した場合に内容物であるカップ状容器の天面の表示が見にくい場合でもトレイの正面の表示によって内容物等の情報を容易に視認することが出来る。さらに個別のカップ状容器には適しない情報をみやすく掲示する事も可能になる。
【0026】
本発明の請求項4の発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、スリット形状を円弧状に形成したことによって、展示効果とフランジの嵌合効果を最も発揮することが出来る。
すなわち、カップ状容器の天面がトレイの前面から見やすいようにスリットをカップ状容器のフランジに沿ってカーブした円弧状とすることによってカップ状容器の天面に施されたデザインが下面板から立ち上がったスリット前側の部分に妨げられることなく展示効果が阻害されないで陳列できる。この効果は、天面を前面側に向けて並べられたカップ状容器の天面(デザインを施した部分)が斜め上方を向いている場合にはより大きなものとなる。
【0027】
さらに、スリットをカップ状容器のフランジに沿ってカーブした円弧状とすることによってスリットの前側の部分と後側の部分で挟まれるカップ状容器のフランジ部分の長さを多くとることが出来るのでトレイとフランジの嵌合をより確実なものとすることが出来、店頭での商品積み重ね陳列時の崩落の防止効果も向上する。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイのブランク例。
【図2】本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイの一例の組み立て模式図。(A)上方から見た平面図。(B)(A)のX−X’線での右側から見た断面模式図。
【図3】図2の(B)にカップ状容器を配列した場合の一例の断面模式図。
【図4】本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイにカップ状容器を配列して重ねた場合の一例の断面模式図。
【図5】本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイにカップ状容器を配列して正面から見たスリット前部とフランジの重なりを正面から見た例。(A)はスリット前部が円弧状の場合で(B)はスリット前部が円弧状でない場合。
【図6】本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイに収納されるカップ状容器の例。(A)は上方から見た概略図で(B)は側面から見た概略図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に図面を参照して本発明の実施形態の一例を説明する。
最初に本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイに収納される開口部にフランジを有するカップ状容器の例について図6(A)の上方から見た概略図と図6(B)の側面から見た概略図を参照して説明する。
【0030】
開口部にフランジを有するカップ状容器(20)は、図6(A)(B)に示すように充填物が封入される円形のカップ部(24)の開口周縁にフランジ部(21)を一体的に形成し、そのフランジ部(21)にシール状蓋体(25)を圧着することによりカップ部(24)の開口部を気密的に閉塞したものである。尚、円形のカップ部(24)の開口周縁には段差を設けて拡径部(図示せず)が形成され、その拡径部から前述のフランジ部(21)が延設された構造が普通である。但し、本発明は、図示形状のカップ状容器(20)に限らず、開口部にフランジを有するものであればカップ部が楕円形や角形などの他の形状の容器についても適用可能である。
【0031】
次に本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイの作成方法の例について図1のブランク図を参照して説明する。
本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、図1の下面板(2)・前面板(3)・後面板(4)・右側面板(6)・左側面板(7)からなり、下面板(2)がスリット(5)を有する、通常紙製の基材から打ち抜かれたブランクから組み立てられる。
【0032】
下面板(2)には前側から見て下方に円弧状に膨らんだ形状を有するスリットが前後方向に複数設けられており、罫線を介して後方に後掴み片(8)を延設された後面板(4)とそれぞれ罫線を介して前方に前掴み片(15)、外前面板(3a)、内前面板(3b)、前面板繋止片(14)の切込みを有する繋止板、の順で延設された前面板(3)とが設けられ、下面板(2)の前面板(3)との境界の位置には前記前面板繋止片(14)を差込んで下面板(2)に折り曲げた前面板(3)を繋止するための前面板繋止切込が設けられている。
【0033】
下面板(2)の左右に連接された側面板のうちで右側に位置する右側面板(6)は下面板(2)から罫線を介して右外側面板(6a)と同じく罫線を介して右内側面板(6b)とからなり、右外側面板(6a)の後部には後面板(4)に接着して右側面板(6)を立ち上げた状態で固定するための右接着片(9)が、前部には前面板(3)の折返し空隙に差込んで同じく右側面板(6)を立ち上げた状態で固定するための右前差込片(11)が連設されている。
【0034】
下面板(2)の左右に連接された側面板のうちで左側に位置する左側面板(7)は下面板(2)から罫線を介して左外側面板(7a)と同じく罫線を介して左内側面板(7b)とからなり、左外側面板(7a)の後部には後面板(4)に接着して左側面板(7)を立ち上げた状態で固定するための左接着片(10)が、前部には前面板(3)の折返し空隙に差込んで同じく左側面板(7)を立ち上げた状態で固定するための左前差込片(12)が連設されている。
【0035】
右側面板(6)の前後端は右外側面板(6a)の内側に右内側面板(6b)を罫線を介して折り返して右側面の壁を形成した場合に後面板(4)と前面板(3)が後方に傾斜するように右接着片との間の罫線および右前差込片(11)との間の罫線が前後方向に直角ではなくやや角度をもって連設されている。左側面板(7)の前後端も同様でありその結果このカップ状容器用ディスプレイトレイの組み立て後の全体の形状は直方体よりもやや後方に傾斜した平行6面体となるように構成されている。
【0036】
図1に示したブランクから下面板(2)の四辺の罫線を折り曲げて前面板(3)と後面板(4)および右側面板(6)と左側面板(7)を立ち上げ、内前面板(3b)を外前面板(3a)の内側に折り込んで前面繋止片(14)を前面繋止切込(13)に差込んで前面板(3)を下面板(2)に繋止して固定させる。その後前面板(3)の内前面板(3b)と外前面板(3a)の重なりの間に右外側面板(6a)と左外側面板(7a)の前方に連設された右前差込片(11)および左前差込片(12)を罫線で折ってから差込んで右側面板(6)および左側面板(7)と前面板(3)を繋止固定させる。
【0037】
さらに右外側面板(6a)の内側に右内側面板(6b)を罫線を介して折り返して右側面の壁を形成してから罫線で折り曲げた右接着片(9)を後面板(4)に熱融着もしくは接着剤で接着固定し、左外側面板(7a)の内側に左内側面板(7b)を罫線を介して折り返して右側面の壁を形成してから罫線で折り曲げた左接着片(10)を後面板(4)に熱融着もしくは接着剤で接着固定することでカップ状容器用ディスプレイトレイの組み立てを行う。
【0038】
このときに前面板(3)の上方に突出するように設けられた前掴み片(15)はトレイ
を持ち上げるための役割を果たすだけではなく、店頭での陳列時に前方からトレイを見たときに、格好のPOPディスプレイとして商品紹介を行う目的でも利用することが出来る。
【0039】
本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイの組み立てに用いるブランクは板紙を基材として必要な積層や印刷を周知の方法で施した後通常の打ち抜き方法により作成され、上記の組み立て工程も通常の製函装置で行うことが出来る。
【0040】
本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイに用いる板紙としては、特に限定されないが、例えばカップ原紙、コートガード、コートボール、コートマニラ、アイボリー等の板紙が好ましく用いられる。
【0041】
本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイに用いる板紙に積層されるプラスチックフィルムの素材としては、ポリエチレン(LDPE、LLDPE等)、ポリプロピレン(ホモPP、ブロック、ランダムPP等)、ポリエチレンテレフタレートフィルム(非結晶PET等)、エチレンビニルアルコール共重合体フィルム等が使用できる。
積層の方法としては周知の溶融押出しによる方法のほかにも接着剤や熱溶融性樹脂を用いたラミネーション等の方法も好ましく使用出来る。
【0042】
図2に、上記のように作成された本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイの一例の組み立て模式図を示した。図2の(A)は上方から見た平面図であり、図2の(B)は(A)のX−X’線での右側から見た断面模式図である。ここでは収納物は省略してあるが、スリット(5)は収納物を装入した場合の状態を想定してカップ状容器のフランジの上面が当たるスリット前部(5a)とスリットをはさんだ後部に残るスリット後部(5b)とで表現してある。
【0043】
本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイは、図2に示すように、開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、下面板(2)・前面板(3)・後面板(4)・右側面板(6)・左側面板(7)からなり、下面板(2)がスリット(5)を有している。
【0044】
図3には、図2の(B)のトレイを積み重ねる前の一段に前述した、図6に例示したようなカップ状容器を配列した場合の一例の断面模式図を示した。
図6の(A)に上方から見た概略図を(B)に側面から見た概略図を示したカップ状容器(20)は、カップ状容器底面(23)を有するカップ状容器(24)とその上端周縁部に延設されたフランジ(21)およびフランジ上面に接着されたシール状蓋体(25)によって形成されるカップ状容器天面(22)によって構成されており、カップ状容器天面には通常絵柄や文字等の印刷が施されている。
【0045】
ここでは、文字と数字でカップ状容器天面に印刷を施した例を示したがこの印刷は通常のグラビア印刷法あるいはオフセット印刷法等により行うことが出来、シール状蓋体(25)の表面に印刷してもよく、図示していないがカップ状容器(20)を包装するたとえばシュリンク袋に印刷してもよい。通常の絵柄印刷以外にロットナンバー等の個別情報を印刷する場合にはインクジェット等の手段を用いるのが便利である。
【0046】
このようなカップ状容器は、本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイに図3に示したような形で、まず一段に収納される。
カップ状容器の天面(22)をカップ状容器用ディスプレイトレイの前面に向けた状態でトレイ内部にカップ状容器(20)を並べてゆく。
【0047】
トレイの下面板(2)に設けられたスリット(5)のスリット前部(5a)とスリット後部(5b)の間にカップ状容器のフランジ(21)を差し込み、フランジ天面に沿って立ち上がったスリット前部(5a)によってカップ状容器(20)の前方位置が規制されて、スリット後部(5b)によってカップ状容器の後方位置が規制されて(図示せず)その結果、自然には外れない状態で複数個のカップ状容器(20)がトレイ内部に規則的に配列される。
【0048】
図3に示した一段の本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイを二段に重ねた場合の一例の断面を図4に示した。
図4に示したように上段に重ねたカップ状容器用ディスプレイトレイの下面板(2)に設けられたスリット(5)のスリット前部(5a)とスリット後部(5b)の間に下段に配置されたカップ状容器(20)のフランジ(21)の上部を差込むことによって、複数のカップ状容器によって上段のトレイが自然には外れない状態になり、上段のトレイが下段のトレイから外れて展示中に崩落することを防止できるようになる。
【0049】
図4には本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイを二段に重ねた場合の一例の断面を示したがこのカップ状容器用ディスプレイトレイは二段重ねだけでなくさらに三段以上の多段に重ねることも可能である。
【0050】
このように、トレイの多段重ねによって店頭での積み重ね陳列が簡単に出来るようになり、重ねた商品の崩落等のトラブルの心配がなく安心して展示販売が行えるようになった。
さらに、本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイでは店頭での積み重ね陳列に要求される陳列商品の見やすさについても形状的な工夫がなされている。
【0051】
図4に示したように本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイの組み立て後の全体の形状は直方体よりもやや後方に傾斜した平行6面体となるように構成されている。このことによって前面やや上方から見たときにカップ状容器(20)の天面の印刷絵柄が見やすくなる。
【0052】
また、カップ状容器用ディスプレイトレイの前面板(3)の外前面板(3a)及び前掴み板(15)にはPOP表示部を設けることが出来るが、その訴求効果も板が前面からやや後方に傾斜していることによって強調される。
【0053】
図5には本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイにカップ状容器を配列して正面から見たスリット前部とフランジの重なり例を示した。
【0054】
トレイ下面板(2)のスリット前部(5a)がカップ状容器(20)の天面(22)に施された絵柄や文字等の印刷の視認を遮ることがないようにスリット(5)の形状を円弧状に形成してフランジ部分のみを隠す例が図5(A)に示してあり、スリット前部(5a)がカップ状容器(20)の天面(22)に施された数字の印刷の視認を遮ってしまう場合が図5(B)に示されている。
【0055】
以上のように本発明のカップ状容器用ディスプレイトレイによれば、カップ状容器の配列されたトレイを上下に重ねて店頭に配置した場合、下段に配置されたトレイに配列されたカップ状容器のフランジの上端が上段のカップ状容器を配列したトレイの下面板に形成されたスリットに嵌合することで、上段と下段に積み重ねたトレイが崩落することを防止できる。さらに、上段と下段に配置するトレイが同一の構造であるために、カップ状容器のディスプレイトレイとして単に2段積みだけではなく、店頭展示等での必要に応じて3〜4段の多段積みにも対応することが可能である。
【符号の説明】
【0056】
1…ディスプレイトレイ
2…下面板
3…前面板
3a…外前面板
3b…内前面板
4…後面板
5…スリット
5a…スリット前部
5b…スリット後部
6…右側面板
6a…右外側面板
6b…右内側面板
7…左側面板
7a…左外側面板
7b…左内側面板
8…後掴み片
9…右接着片
10…左接着片
11…右前差込片
12…左前差込片
13…前面板繋止切込
14…前面板繋止片
15…前掴み片
20…カップ状容器
21…フランジ
22…カップ状容器天面
23…カップ状容器底面
24…カップ部
25…シール状蓋体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口部にフランジを有するカップ状容器を複数個立体的に配列するトレイであって、下面板・前面板・後面板・右側面板・左側面板からなり、下面板がスリットを有していることを特徴とするカップ状容器用ディスプレイトレイ。
【請求項2】
トレイ形状が平行6面体であることを特徴とする請求項1に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイ。
【請求項3】
前面板にPOP表示部を形成したことを特徴とする請求項1または2に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイ。
【請求項4】
スリット形状を円弧状に形成したことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカップ状容器用ディスプレイトレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−269801(P2010−269801A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−120673(P2009−120673)
【出願日】平成21年5月19日(2009.5.19)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】