説明

カニパウダーとその製造方法

【課題】カニを生のまま、もしくは茹でた後、乾燥し粉砕してパウダーにしても、短期間で酸化劣敗が進み異臭を発生するようになるなど品質の安定性に問題があった。
又、出来上がったパウダーも、カニ独特の赤味が退色したり、カニの部位によっては乾燥により黒変するため、パウダーの色合いに影響を与える等の課題があった。
【解決手段】酸化劣敗が進み異臭を発生する原因は中腸腺(カニミソ)と呼ばれる部位と、エラである事を突き止めこれらを取り除くことで解決した。
又、生のカニが乾燥により黒変する部位は甲羅の裏にある皮膜であるので、取り除くか茹でてから乾燥する事で、色合いへの影響が低減した。
更に、カニ独特の赤身が退色する問題は乾燥温度の調整で解決した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カニ風味豊かで品質安定なカニパウダーとその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
通常、その物をパウダー化する場合、乾燥し粉砕器で粉砕するのが一般的である。
しかしその物に適した乾燥方法や粉砕方法があり、それを逸脱すると目的とするパウダーが得られない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
特許出願にあたり先行技術等調査した結果、カニパウダーの製造に関わる技術文献は特に見あたらなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カニに含まれる成分を分析すると、ベニズワイガニの場合、キチン・キトサンが11.7%、タンパク質が48.3%、カルシウムが10.6%と健康的に有効な成分が多く含まれていることが分かった。更にカニ独特の赤い色素はアスタキサンチンで、これも抗酸化物質として注目されている物質である。微量元素としてセレン,亜鉛などの存在も特徴的である。
一口サイズの小さなカニは茹でたり油で揚げたりして丸ごと食することが出来るがズワイガニ等の大きなカニを食する場合、殻は除き中身のみ食するのが一般的である。つまり殻に含まれる有用成分は、加工しない限り食用にすることは出来ない。
【0005】
そこでズワイガニ等の大きなカニでも成分丸ごと摂取出来るようパウダー化の研究に取り組んだ。
通常、パウダーを製造する場合はカニを茹でて、あるいはそのまま生を丸ごと乾燥し粉砕してパウダーにすると云うのが一般的な方法である。しかし実際に試作してみると、両方の方法では短期間(数週間)で異臭が発生したり、カニ独特の赤味(アスタキサンチン)が薄れたパウダーしか出来なかった。
【0006】
まず、ベニズワイガニを水洗いし、茹でたカニと生のカニとを100℃で12時間から15時間かけて乾燥した。それを微粉砕器でパウダー化したが、得られたパウダーは、時間の経過と共に異臭を発するようになるし、カニ独特の赤味が薄れた物しか出来なかった。
そこで原因を究明すべく、実験を繰り返した結果、異臭を発する原因は中腸腺(カニミソ)にある事を突き止めた。又、甲羅の裏に密着している皮膜が黒変しパウダーの色合いに影響を与えている事も分かった。エラも海底の泥を含んでいる為、風味に悪影響を及ぼす事も分かって来た。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの課題を解決するためには、中腸腺(カニミソ)、エラ、甲羅の裏にある皮膜を取り除く事で解決した。甲羅の裏の皮膜は茹でてから乾燥すると黒変しないのでその選択肢もある。
中腸腺(カニミソ)は、カニの風味を助長すると思っていたが、中腸腺(カニミソ)のみを乾燥してみると乾燥物は殆ど無味無臭で、カニパウダーに風味を助長する物であるとは認められなかった。
【0008】
100℃の乾燥温度では、若干、赤味が色褪せする事も分かり、80℃前後で乾燥するとかなり赤味が残ったままでパウダーにすることが出来た。
【発明の効果】
【0009】
中腸腺(カニミソ)とエラを取り除くことでパウダー化した時の経時による酸化劣敗と異臭の発生が押さえられ、甲羅の裏の皮膜は取り除くか茹でた後、乾燥する事で黒変を防止でき品質安定で風味と色合いの良いカニパウダーが得られるようになった。保存して1年経過しているパウダーに特に変化は見られない。
【発明を実施するための形態】
【0010】
ズワイガニ等から風味や色合いの良い品質安定なパウダーを製造する場合、まず水洗いした後、甲羅を開き中腸腺(カニミソ)とエラを取り除く。
そして甲羅の裏は皮膜を取り除くか、そのまま茹でる。そしてそれらを恒温乾燥器で乾燥する。温度は、赤味を残すためには80℃前後が最良である。
【実施例】
【0011】
80℃で12時間から15時間乾燥した後、市販の微粉砕器でパウダー化すると、ズワイガニ独特の薄いピンク色のパウダーが出来た。
1年以上経過した後でも、風味、色合い共、変化する事なく保存できている。
【産業上の利用可能性】
【0012】
試作したカニパウダーは、健康食品としてそのまま摂取しても良いが、食品に練り込むなどしてカニ風味を楽しむことが出来る。
例えば、ソフトクリームに入れてカニソフト、ウドンに練り込みカニウドン、更にモチに入れてカニモチの他、カニパウダーを入れたチョコケーキ等は、意外性と美味しさが受け商品化が進んでいる。
【0013】
調味料としても、食塩とブレンドしたカニ塩は、焼き鳥などに使用すると香ばしさが増すし、干しホタテ貝等と共にダシを取ると、初めて味わう美味なダシになる。
又、耳かき一杯程度のカニパウダーを日本酒に入れるとカニ風味豊かなカニ酒になるなど、用途は限りない。
【0014】
含まれるカルシウム等も多いので、幼犬、幼猫のペット食品にも利用可能である。
又、農業において実際にカニの殻が肥料として使われる例も多く、このカニパウダーと活性炭などとの併用により無農薬で安心安全かつ収穫増・旨味増の付加価値のついた農産物の生産が可能である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ズワイガニ本体から中腸腺(カニミソ)及びエラを取り除くと共に、甲羅は裏にある皮膜を取り除くかそのまま茹でた後、それらを乾燥し粉砕して得られるズワイガニパウダーとその製造方法。