説明

カバー付管状体の製造方法

【課題】 表面性状に優れた端面を有するカバーが管状体の外周面の一部に密着性よく形成されたカバー付管状体を生産性良く製造する方法を提供することを目的とするものである。
【解決手段】管状体の外周面の一部が加硫ゴムからなるカバーで覆われているカバー付管状体の製造方法であって、管状体の外周面の少なくとも一部を覆うように未加硫ゴムからなる被覆部材を該管状体に装着する工程と、該被覆部材の外周に拡径した伸縮性リングを装着する工程と、該管状体と該被覆部材とを加熱して該被覆部材を加硫する工程を有し、該被覆部材を加硫するに際して、加熱された該被覆部材が軟化するのに伴って、該伸縮性リングが該管状体表面に近接するまで縮径して該被覆部材を切断して端面を形成し、該管状体を加硫ゴムからなるカバーで覆ことによりカバー付管状体を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、管状体の外周面の一部が加硫ゴムからなるカバーで覆われているカバー付管状体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムホース、樹脂管又は金属管などの管状体には、管状体内を流れる流体の保温;管状体内を流体が流れることなどによって発生する騒音の低減;ゴミ、オイル又は薬品などの付着防止;外部の部品との接触防止;紫外線又は熱からの管状体の保護などの目的で、その外周面に必要に応じてカバーが装着されている。このようなカバーに用いられる材料としては、ゴム又は樹脂の、発泡体又は未発泡体が使用されている。これらは、チューブ状やネット状などの形態に成形されて管状体に装着されている。このようなカバー付管状体は、自動車、バイク、船舶又は航空機などの輸送機器;各種機械;電気製品などに広く用いられている。管状体に装着されたカバーにおいては、使用中に位置ずれや剥離が生じないこと、カバーと管状体との間に隙間が生じないことなどが必要である。特に、管状体が曲管である場合には、曲がり部分においてカバーと管状体との間に隙間が生じたり、カバーが剥離したりし易かったうえに、製造工程も直管の場合と比較して煩雑であり、これらの改善が望まれていた。
【0003】
自動車部品にはカバー付管状体、特に、カバー付ゴムホースが多用されており、そこで用いられるカバーは、外部の部品との接触防止、熱からのゴムホースの保護、ゴムホース内を流れる流体の保温などのために使用されている。これまで、このようなカバーとして、加硫ゴム又は樹脂の発泡体などが用いられてきた。また、当該ゴムホースの形状は曲がっていることが多く、なかでも、エンジンルーム内においては、各部品間の僅かな隙間に設置されるため、複数の曲がり部分を有する複雑な形状のものが多用されている。
【0004】
加硫ゴムの発泡体からなるカバーで覆われたカバー付ゴムホースは、長手方向にスリットの入った管状の被覆部材をゴムホースに装着した後に、テープや結節バンドで固定することにより製造されていた。これらの作業は、手作業で行われていたが、作業が煩雑であるため高コストになっていた。また、カバー付ゴムホースを長期間使用した場合には、テープが剥がれたり、結節バンドが脱落することがあり、耐久性の面でも問題があった。
【0005】
一方、直管状の被覆部材をゴムホースの外周面に手作業によって装着することによってカバー付ゴムホースを製造する場合もあった。しかしながら、曲がり形状のゴムホースに対して管状の被覆部材を装着するのは熟練した技術が必要であるうえに、力作業であることから、作業者への負担が大きかった。さらに、カバーがゴムホースの曲がり部分に形成された場合には、カバーの端部においてカバーとゴムホースの間に隙間が生じていた。それにより、ゴムホースの保護やゴムホース内の流体の保温が不十分になるとともに、カバーの固定も不十分になっていた。また、長期間使用した場合には、ゴミやオイル等が隙間に入り込み、ゴムホースの破損や劣化の原因となっていた。
【0006】
これらの問題に対して、製造時の作業性やゴムホースとカバーの密着性などを改善するための種々の手段が提案されている。特許文献1には、一対の割型からなり、筒状のホース本体の両端を固定する一対のホース端固定部とホース端固定部間に同軸的に設けた筒状の発泡層形成空洞部とが割型の型割面に沿って両割型に均等に配設されており、さらに、発泡層形成空洞部に、平行及び垂直方向位置決めピンがそれぞれ所定の位置に突設された成形金型を用いて、発泡層形成空洞部に発泡材料を注入することにより、ホース端固定部と位置決めピンとによって固定されたホース本体の外周に発泡層を被覆形成する発泡層付ホースの製造方法が記載されている。このような製造方法によれば、ホース本体の大きな曲がり部分の外周に形成された発泡層の偏肉が防止されるため、発泡層の吸音性及び断熱性が適正に確保されるとされている。しかしながら、このような製造方法に用いる金型は高価であるためコスト高になっていた。特に、ホースが三次元的に曲がった形状であるような場合にはよりコスト高になることが避けられなかった。
【0007】
特許文献2には、直管状の未加硫ゴムホースの外周の一部に未加硫エラストマー又は熱収縮性のプロテクターを挿着し、位置決めしたプロテクターを耐熱性接着剤により少なくとも1箇所で未加硫ゴムホースに固定した後、この未加硫ゴムホースを曲がりマンドレルに挿着し、未加硫ゴムホースを加硫成形すると同時に、加硫された曲管ゴムホースの外周の所定位置にプロテクターを固着させることを特徴とするプロテクター付き曲管ゴムホースの製造方法が記載されている。しかしながら、接着剤を用いてプロテクターを固定するのは、正確に位置決めするのが難しかったうえに、煩雑な作業であった。また、未加硫エラストマーからなるプロテクターを曲がり箇所に装着した場合には、プロテクター端部の開口部が広がって曲管ゴムホースとの間に隙間ができる場合があった。一方、熱収縮性のプロテクターを曲がり箇所に装着した場合には、熱収縮後に曲がり箇所の内周側に皺ができる場合や熱収縮性チューブの収縮によってゴムホースの曲がり形状が変形する場合があった。また、熱収縮性チューブが長手方向に収縮して寸法が変わる場合があった。
【0008】
特許文献3には、少なくとも外面が未加硫または半加硫のゴム材料を含む基体チューブの表面に未加硫または半加硫のゴム材料を含む保護層シートを密着させる工程と、該保護層シートを密着させた基体チューブを曲がり形状部を有するマンドレルに挿入する工程と、挿入された保護層シートを密着させた基体チューブを加硫して一体化する工程とを含む曲がり形状部を有するホースの製造方法が記載されている。このとき、前記マンドレルに挿入する工程において、少なくとも保護層シートの端部両端を樹脂フィルムまたはテープを巻きつけることにより保護層シートの表面側から押さえつけることも記載されている。このような方法によって製造されたホースは、保護層と基体チューブとが強固に接着し、外力に対する耐性に優れた曲がり形状部を有するとされている。しかしながら、曲がり形状部に保護層を形成した場合には、保護層と基体チューブの間に隙間が生じる場合があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−34077号公報
【特許文献2】特開平8−267599号公報
【特許文献3】特開2007−192296号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、表面性状に優れた端面を有するカバーが管状体の外周面の一部に密着性よく形成されたカバー付管状体を生産性良く製造する方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題は、管状体の外周面の一部が加硫ゴムからなるカバーで覆われているカバー付管状体の製造方法であって、管状体の外周面の少なくとも一部を覆うように未加硫ゴムからなる被覆部材を該管状体に装着する工程と、該被覆部材の外周に拡径した伸縮性リングを装着する工程と、該管状体と該被覆部材とを加熱して該被覆部材を加硫する工程を有し、該被覆部材を加硫するに際して、加熱された該被覆部材が軟化するのに伴って、該伸縮性リングが該管状体表面に近接するまで縮径して該被覆部材を切断して端面を形成し、該管状体を加硫ゴムからなるカバーで覆うことを特徴とするカバー付管状体の製造方法を提供することによって解決される。
【0012】
このとき、前記被覆部材が発泡剤を含有する未加硫ゴムからなり、該被覆部材を発泡させながら加硫することが好適である。前記管状体が曲管であることも好適である。予めマンドレルに装着した前記管状体の外周面に前記被覆部材を装着することも好適である。
【0013】
前記管状体がゴムホースであることが好適である。このとき、前記ゴムホースが未加硫又は半加硫ゴムからなり、該ゴムホースをマンドレルに装着した後に、該ゴムホースを加硫してからその外周面に前記被覆部材を装着することが好適である。前記ゴムホースが未加硫又は半加硫ゴムからなり、前記被覆部材を加硫するのと同時に該ゴムホースも加硫することも好適である。予め加硫した前記ゴムホースの外周面に前記被覆部材を装着することも好適である。
【0014】
前記管状体が樹脂管又は金属管であることも好適である。
【0015】
前記伸縮性リングが、任意の周長に調節できるものであることが好適である。前記被覆部材を加圧下で直接蒸気加硫することも好適である。
【発明の効果】
【0016】
本発明のカバー付管状体の製造方法によれば、表面性状に優れた端面を有するカバーが管状体の外周面の一部に密着性よく形成されたカバー付管状体が提供される。さらに、このような製造方法は、被覆部材の装着及び位置決めが容易であるため生産性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の製造方法によって得られるカバー付管状体の一例を示す断面図である。
【図2】被覆部材の外周の両端部近傍にそれぞれ伸縮性リングを装着した状態の断面図である。
【図3】伸縮性リングを被覆部材の外周に装着したときの伸縮性リング周辺の拡大断面図である。
【図4】被覆部材が切断されたときの伸縮性リング周辺の拡大断面図である。
【図5】任意の周長に調節できる伸縮性リングの一態様を示す外観図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[カバー付管状体10の構成]
以下、本発明の実施の形態を図面を参照して説明する。図1は、本発明の製造方法によって得られるカバー付管状体10の一例を示す断面図である。カバー付管状体10は、管状体11の外周面13の一部が加硫ゴムからなるカバー12で覆われてなる。カバー12は好適には加硫ゴムの発泡体からなる。カバー付管状体10は直管であってもよいし、曲管であってもよい。管状体11の内径及び厚さは特に限定されないが、製造上の観点からは、通常、内径は2〜150mmであり、厚さは1〜15mmである。通常、カバー12は管状であり、管状体11はカバー12によって円周方向全周が覆われている。このとき、カバー12は管状体11の外周面13に隙間なく密接又は加硫接着して形成されている。管状体11は、2つ以上のカバー12で覆われていてもよい。また、加硫接着してカバー12を形成する場合には、カバー12は割管状であってもよい。カバー12の厚さは、通常、1〜10mmである。本発明の製造方法によれば、カバー12が厚肉であっても、管状体11の外周面13とカバー12の内周面14との間に隙間が生じることがない。
【0019】
[管状体11の作製]
本発明のカバー付管状体10に用いる管状体11の材質は特に限定されるものではない。例えば、ゴムホース、樹脂管又は金属管などを用いることができる。本発明の製造方法によれば、管状体11が曲管の場合であっても被覆部材18を容易に装着できる。そのため、本発明の製造方法は、曲管が多用される自動車用のカバー付ゴムホースの製造に好適に用いることできる。また、未加硫ゴムからなる被覆部材18を加硫するのと同時に未加硫又は半加硫ゴムからなるゴムホース11aを加硫した場合には、管状体11とカバー12とを加硫接着できることからも管状体11がゴムホース11aであることの利益が大きい。
【0020】
以下、管状体11がゴムホース11aである場合を例にとってカバー付管状体10の製造方法について説明する。以下の製造方法は、管状体11が樹脂管又は金属管であっても可能な範囲で適用できる。
【0021】
ゴムホース11aに用いられるゴム成分は特に制限されないが、エチレン−プロピレン−ジエン三元共重合ゴム(EPDM)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、クロロプレンゴム(CR)、クロロスルホン化ポリエチレンゴム(CSM)、エチレン−プロピレン共重合ゴム(EPM)、アクリルゴム(ACM)、ヒドリンゴム、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、イソブチレン−イソプレン共重合体ゴム(IIR)、天然ゴム(NR)、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、ウレタン系ゴム、シリコーン系ゴム及びフッ素系ゴムなどが挙げられる。これらは単独で用いてもよく、複数のものを混合して用いてもよい。
【0022】
未加硫ゴムからなるゴムホース11aは、押出し成形など通常使用される成形方法により成形する。ゴムホース11aの寸法は特に限定されないが、通常、内径が2〜150mmであり、厚さは1〜15mmである。
【0023】
未加硫ゴムからなるゴムホース11aは、通常、マンドレル21に装着することが好ましい。これにより、ゴムホース11aのハンドリングが容易になる。マンドレル21は、曲がりマンドレルであってもよいし、ストレートマンドレルであってもよい。ゴムホース11aを装着するに際して、マンドレル21の表面に予め離型剤を塗布しておいてもよい。曲がりマンドレル21を用いれば、複雑な曲がり形状のゴムホース11aでも容易に成形できる。また、マンドレル21は比較的安価であるため、外型を用いる場合に比べて設備費を削減できる。
【0024】
ゴムホース11aをマンドレル21に装着するに際して、未加硫ゴムからなるゴムホース11aをマンドレル21に装着してもよいし、予めゴムホース11aを半加硫又は加硫してからマンドレル21に装着してもよい。これらのうち、未加硫又は半加硫ゴムからなるゴムホース11aをマンドレル21に装着することが好ましい。この場合には、ゴムホース11aをマンドレル21へ容易に装着できる。未加硫又は半加硫のゴムホース11aは、マンドレル21に装着した後に、そのまま被覆部材18の装着に供してもよいし、加硫してから被覆部材18の装着に供してもよい。
【0025】
一方、マンドレル21を使用せずに未加硫、半加硫又は加硫ゴムからなるゴムホース11aを被覆部材18の装着に供してもよい。この場合には、ゴムホース11aに被覆部材18を装着した後に、当該ゴムホース11aをマンドレル21に装着することが好ましい。
【0026】
得られるゴムホース11aは単層のものであってもよいし、多層押出しなどの方法を用いて成形した多層のものであってもよい。多層のゴムホース11aは、ゴムの種類がそれぞれ異なる複数の層を組み合わせたものであってもよいし、ゴム層とゴム以外の層とを組み合わせたものであってもよい。ゴム以外の層としては、例えば、有機繊維又は無機繊維からなる補強層を用いることができる。
【0027】
[被覆部材18の作製]
未加硫ゴムからなる被覆部材18は、押出し成形など通常使用される成形方法により成形する。被覆部材18の形状は、特に限定されないが、管状やシート状などが挙げられる。特に、管状の被覆部材18を好適に用いることができる。本発明の製造方法によれば、このような形状の被覆部材18を管状体11に特に容易に装着できる。また、管状の被覆部材18を用いて製造されるカバー付管状体10は、加硫接着しない場合にも、カバー12がしっかり固定される。被覆部材18の厚さは限定されないが、通常1〜10mmである。被覆部材18に用いられるゴム成分は、ゴムホース11aの製造に用いるゴム成分として上述したものを単独で又は複数混合して用いることができる。このとき、被覆部材18は発泡剤を含有していていることが好適である。このときの発泡剤としては、アゾ化合物、ニトロソ化合物又はスルホニルヒドラジド化合物などの有機発泡剤などが例示され、これらを単独で又は複数混合して用いることができる。被覆部材18は単層のものであってもよいし、複数種類のゴム成分を用いて多層押出しなどの方法により成形した多層のものであってもよい。また、被覆部材18とゴムホース11aとを加硫接着させる場合において、強固に接着させたいときには、被覆部材18の最も内周側の層のゴム成分は、ゴムホース11aの最も外周側の層のゴム成分と同種のものを用いることが好ましい。
【0028】
[被覆部材18の装着]
以上のようにして得られた被覆部材18をゴムホース11aの外周面13aの少なくとも一部を覆うように装着する。作業性の観点からは、マンドレル21に装着したゴムホース11aの外周面13aに被覆部材18を装着することが好ましい。通常、管状の被覆部材18にゴムホース11aを嵌め込んで装着する。このとき、ゴムホース11aの外周面13aに予め離型剤を塗布しておいてもよい。管状の被覆部材18の内径はゴムホース11aの外径とほぼ同じであることが好ましい。被覆部材18が未加硫ゴムからなるため、ゴムホース11aが曲管であっても被覆部材18の装着が容易である。未加硫ゴムからなる被覆部材18が発泡剤を含有する場合には、被覆部材18の内径はゴムホース11aの外径よりも若干広くても構わない。この場合には、被覆部材18を加硫する際に、被覆部材18が発泡して膨張することにより、被覆部材18の内周面19とゴムホース11aの外周面13aの間の隙間が埋められるため、当該内周面19と当該外周面13aとは隙間なく密着する。また、シート状の被覆部材18をゴムホース11aの外周面13aに巻き付けて装着してもよい。
【0029】
被覆部材18が装着される際のゴムホース11aは、未加硫ゴム、半加硫ゴム又は加硫ゴムのいずれからなるものであっても構わない。このとき、予め加硫したゴムホース11aの外周面13aに被覆部材18を装着することが好ましい。加硫ゴムからなるゴムホース11aに被覆部材18を装着する場合には、管状の被覆部材18を装着し易いうえに、作業時にゴムホース11aの外周面13aが傷ついたりするおそれも少ない。一方、未加硫又は半加硫ゴムからなるゴムホース11aに被覆部材18を装着する場合には、未加硫ゴムからなる被覆部材18を加硫するのと同時にゴムホース11aも加硫することにより、被覆部材18とゴムホース11aとを加硫接着させることができる。
【0030】
[伸縮性リング31の装着]
未加硫ゴムからなる被覆部材18をゴムホース11aに装着した後、被覆部材18の外周15に拡径した伸縮性リング31を装着して被覆部材18を固定する。図2は、被覆部材18の外周15の両端部近傍にそれぞれ伸縮性リング31を装着した状態の断面図である。伸縮性リング31は、未加硫ゴムからなる被覆部材18を加硫する際に、被覆部材18を切断する機能とともに、被覆部材18の内周面19とゴムホース11aの外周面13aとの間に隙間が生じるのを防止する機能を有する。被覆部材18を切断して得られる端面16は表面性状に優れるため、得られるカバー付管状体10のカバー12の端面16へのゴミや油の付着が低減される。
【0031】
伸縮性リング31の材質は、被覆部材18を加硫する際の高温で変質しないものである必要がある。材質としては、特に限定されず、通常の加硫ゴム、例えば、シリコーンゴム、ACMゴム、フッ素ゴムなどが挙げられる。また、表面をゴムなどにより被覆したリング状の金属製引張りコイルバネなどを用いることもできる。伸縮性リング31の内径は、少なくとも装着後の被覆部材18の外径以下である必要があり、ゴムホース11aの概ね外径以下であることが好ましい。伸縮性リング31の内径は、伸縮性リング31の収縮力やゴムホース11aの硬さなどを考慮して設定する。伸縮性リング31の断面形状は特に限定されないが、角がなく丸みを帯びたものであることが好ましい。例えば、円又は楕円などが挙げられる。一般的なOリングなどを好適に用いることができる。このような断面形状の伸縮性リング31を用いることにより、被覆部材18が切断されることにより形成される端面16の表面性状がより優れたものとなる。伸縮性リング31の径方向の厚みは、特に限定されないが、通常、約1〜10mmである。
【0032】
伸縮性リング31は、被覆部材18の外周15の切断したい位置に装着する。伸縮性リング31を被覆部材18の外周15に装着したときの伸縮性リング31周辺の拡大断面図を図3に示す。伸縮性リング31は、室温下で被覆部材18の外周15に装着した際には被覆部材18がほとんど変形することがなく、しかも被覆部材18が加熱されて軟化したときには、縮径して被覆部材18を切断できる程度の収縮力を有するものであることが必要である。
【0033】
伸縮性リング31は、被覆部材18の端部近傍に加えてそれ以外の位置に装着してもよい。例えば、伸縮性リング31を被覆部材18の両端部近傍とともに、その間の2箇所にも装着して、被覆部材18が3分割されるように切断した後、真ん中の被覆部材18を除去することで、離れた2箇所に被覆部材18を形成することもできる。このときは、予めゴムホース11aを加硫した後に被覆部材18を加硫して、ゴムホース11aと被覆部材18との加硫接着を防止することが好ましい。
【0034】
伸縮性リングとして任意の周長に調節できるものを使用することもできる。その一態様の側面図を図5に示す。伸縮性リング32はゴムリング33と結束具34からなり、ゴムリング33は結束具34によって一か所が結束されており、結束具34はゴムリング33に対して滑動できるように結束具34の保持力が調整されている。結束具34によりゴムリング33に形成される2つの環のうちの一方にゴムホース11aを挿入して伸縮性リング32を被覆部材18の外周15の装着位置まで移動させた後、結束具34を滑動させて伸縮性リング32の周長を調整する。このとき、該伸縮性リング32に形成された他方の環の内側に押圧ばねなどを配置するなどして、当該他方の環を拡径させるための付勢手段35を設けることにより、被覆部材18を固定することができる。このように周長を調整できる伸縮性リング32を用いることによって、伸縮性リング32をより簡単に装着できるようになる。
【0035】
[被覆部材18の加硫]
被覆部材18の外周15に伸縮性リング31を装着した後に、ゴムホース11aと被覆部材18とを加熱して被覆部材18を加硫する。通常、未加硫ゴムを加熱して加硫する場合には、加熱された未加硫ゴムは一旦軟化してから、その後加硫が進行して加硫ゴムとなる。本発明の製造方法においては、未加硫ゴムからなる被覆部材18が加熱されて軟化したときに、被覆部材18の外周15に装着された伸縮性リング31がゴムホース11aの表面に近接するまで縮径して被覆部材18を切断する。加硫する温度は特に限定されない。被覆部材18のゴム成分などを考慮して設定されるが、通常、140〜180℃である。また、加硫時間はゴム成分や加硫温度などを考慮して適宜調整される。
【0036】
図4に被覆部材18が切断されたときの伸縮性リング31周辺の拡大断面図を示す。このとき、被覆部材18が徐々に軟化していくのに伴って、伸縮性リング31がその収縮力によって徐々に縮径していくことで被覆部材18が切断される。そのため、被覆部材18が切断されることにより形成される端面16は、角がR面取りされた形状を有し丸みを帯びているうえに、凹凸のない表面を有するものとなる。また、被覆部材18が軟化することにより切断されて端面16が形成された後に加硫が進行するため、端面16は滑らかになる。さらに、被覆部材18が軟化していく際に、被覆部材18は伸縮性リング31によってゴムホース表面13aに密着した状態で保持されており、密着状態のまま加硫が進行するため、被覆部材18の内周面14とゴムホース11aの外周面13aの間に隙間が生じない。
【0037】
未加硫又は半加硫ゴムからなるゴムホース11aを未加硫ゴムからなる被覆部材18と同時に加硫する場合には、加熱された被覆部材18が軟化する際に、ゴムホース11aは被覆部材18よりも高い硬度を有する必要がある。
【0038】
また、被覆部材18が発泡剤を含有することが好適である。被覆部材18が加熱されて発泡することにより、被覆部材18が切断される際に被覆部材18がさらに軟らかくなるため、被覆部材18がより切断されやすくなる。また、被覆部材18が軟化することにより切断されて端面16が形成された後に加硫が進行するため、端面16の表面は滑らかなスキン層となる。これにより、端面16からカバー12内部への水などの侵入を防ぐことができる。また、発泡して被覆部材18が膨張することによって、被覆部材18の内周面19とゴムホース11aの外周面13aとの間の隙間の発生がさらに抑制される。発泡倍率は特に限定されないが、1.2〜2.5倍が好ましい。
【0039】
被覆部材18を加圧下で直接蒸気加硫することが好ましい。例えば、加硫缶内で加圧水蒸気により被覆部材18を加熱して加硫することができる。加圧下で被覆部材18を加硫することで、曲がり部分における被覆部材18とゴムホース11aとの間の隙間の発生をより確実に抑制することができる。また、外型を使用しないため、被覆部材18の表面が滑らかなものとなる。また、被覆部材18が発泡剤を含有する場合には、加圧により被覆部材18の表面の発泡が抑制されるため、得られるカバー12の表面に滑らかなスキン層が形成される。これにより、カバー12内部への水などの浸入を防ぐことができる。被覆部材18を加硫した後、高温のうちにゴムホース11aをマンドレル21から引き抜く。ゴムホース11aから縮径した伸縮性リング31を取り外した後、被覆部材18の端面16に付着している切断された被覆部材18の切れ端17を除去して、カバー付ゴムホースが完成する。
【0040】
こうして得られたカバー付管状体10は、カバー12の内周面14と管状体11の外周面13との間に隙間がない。特に、曲管の管状体11においてカバー12の端部が管状体11の曲がり部分に位置する場合でも、カバー12端部の内周面14と管状体11の外周面13との密着性が非常によい。また、本発明の製造方法は、被覆部材18の装着が容易であるとともに、伸縮性リング31の装着位置を調節するだけの簡単な操作により被覆部材18を正確に位置決めできる。本発明の製造方法によって得られるカバー付管状体10は、自動車用のカバー付ゴムホース、特に、エンジンルーム内で用いられるヒーターホース、オートマチックトランスミッションホース、ブローバイガス用ホース、サクションホース、インタークーラーホース又はラジエーターホースなどとして好適に用いることができる。また、本発明の製造方法によれば、管状体11が樹脂管や金属管である場合にも、管状体11表面に隙間なく密着したカバー12が形成されるため、様々な管状体11に対して応用が可能である。
【0041】
以下、実施例により本発明をより具体的に説明する。
【実施例】
【0042】
実施例1
押出し機を用いて、アゾ化合物の発泡剤を含有するEPDMからなる厚さ3.0mm、外径38mm、内径32mmの直管状の未加硫ゴムからなる被覆部材18を成形した。長さ300mmに切断した被覆部材18をカバー付ゴムホースの作製に供した。
【0043】
多層用押出し機を用いて、NBRからなる厚さ3mmの内層とCSMからなる厚さ0.5mmの外層からなる2層構造の直管状の未加硫ゴムからなるゴムホース11a(外径32.4mm、内径25.4mm)を成形した。得られたゴムホース11aを360mmに切断した後、表面に離型剤が塗布された外径25.4mm、長さ380mmの曲がり形状のマンドレル21に装着した。マンドレル21に装着されたゴムホースを加硫用の釜に入れ、約160℃に加熱して加硫を行った。
【0044】
加硫後に釜から取り出して室温になったゴムホース11aの表面に離型剤を塗布した。次いで、前記被覆部材18をゴムホース11aの所定の位置に装着し、その両端の端から約10mmの位置において、該被覆部材18の外周15に、内径32mm、線径3mmのシリコーン製のOリングからなる伸縮性リング31をそれぞれ装着して、ゴムホース11aに被覆部材18を固定した。被覆部材18が装着されたゴムホース11aを加硫用の釜に入れ、約160℃に加熱して該被覆部材18の加硫を行った。加硫した後、伸縮性リング31は、被覆部材18に食い込んでゴムホース11aの表面に近接するまで縮径していた。加硫後に釜からゴムホース11aを取り出し、高温のうちにマンドレル21からゴムホース11aを引き抜いた。その後、伸縮性リング31を取り外してから、伸縮性リング31により切断された被覆部材18の切れ端17を除去して、管状体11がゴムホース11aであるカバー付管状体10を得た。得られたカバー付管状体10は管状体11の内径が25.4mm、外径が32.4mm、厚さが3.5mmであり、カバー12の内径が32.4mm、外径が42.4mm、厚さが5mmであった。カバー12の端面16は、角がR面取りされた形状を有しており、その表面は凹凸がないなめらかなスキン層を形成していた。そのため、端面16の仕上げ工程は不要であった。また、カバー12の両端部の内周面14はゴムホース11の外周面13に隙間なく密接していた。さらに、カバー12は正確な位置にしっかり固定されていた。
【0045】
実施例2
実施例1において、被覆部材18を作製する際に、発泡剤を含有しないEPDMを用いたことと、成形した被覆部材18の厚みを2mmとしたこと以外は実施例1と同様にしてカバー付ゴムホースを作製した。得られたカバー付管状体10は管状体11の内径が25.4mm、外径が32.4mm、厚さが3.5mmであり、カバー12の内径が32.4mm、外径が36.4mm、厚さが2mmであった。カバー12の端面16は、角がR面取りされた形状を有しており、その表面は凹凸がなくなめらかであった。そのため、端面16の仕上げ工程は不要であった。また、カバー12の両端部の内周面14はゴムホース11の外周面13に隙間なく密接していた。さらに、カバー12は正確な位置にしっかり固定されていた。
【符号の説明】
【0046】
10 カバー付管状体
11 管状体
11a ゴムホース
12 カバー
13 管状体の外周面
13a ゴムホースの外周面
14 カバーの内周面
15 被覆部材の外周
16 被覆部材の端面
17 被覆部材の切れ端
18 被覆部材
19 被覆部材の内周面
21 マンドレル
31 伸縮性リング
32 任意の周長に調節できる伸縮性リング
33 ゴムリング
34 結束具
35 付勢手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管状体の外周面の一部が加硫ゴムからなるカバーで覆われているカバー付管状体の製造方法であって、
管状体の外周面の少なくとも一部を覆うように未加硫ゴムからなる被覆部材を該管状体に装着する工程と、該被覆部材の外周に拡径した伸縮性リングを装着する工程と、該管状体と該被覆部材とを加熱して該被覆部材を加硫する工程を有し、
該被覆部材を加硫するに際して、加熱された該被覆部材が軟化するのに伴って、該伸縮性リングが該管状体表面に近接するまで縮径して該被覆部材を切断して端面を形成し、該管状体を加硫ゴムからなるカバーで覆うことを特徴とするカバー付管状体の製造方法。
【請求項2】
前記被覆部材が発泡剤を含有する未加硫ゴムからなり、該被覆部材を発泡させながら加硫する請求項1に記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項3】
前記管状体が曲管である請求項1又は2に記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項4】
予めマンドレルに装着した前記管状体の外周面に前記被覆部材を装着する請求項1〜3のいずれかに記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項5】
前記管状体がゴムホースである請求項1〜4のいずれかに記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項6】
前記ゴムホースが未加硫又は半加硫ゴムからなり、該ゴムホースをマンドレルに装着した後に、該ゴムホースを加硫してからその外周面に前記被覆部材を装着する請求項5に記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項7】
前記ゴムホースが未加硫又は半加硫ゴムからなり、前記被覆部材を加硫するのと同時に該ゴムホースも加硫する請求項5に記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項8】
予め加硫した前記ゴムホースの外周面に前記被覆部材を装着する請求項5に記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項9】
前記管状体が樹脂管又は金属管である請求項1〜3のいずれかに記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項10】
前記伸縮性リングが、任意の周長に調節できるものである請求項1〜9のいずれかに記載のカバー付管状体の製造方法。
【請求項11】
前記被覆部材を加圧下で直接蒸気加硫する請求項1〜10のいずれかに記載のカバー付管状体の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−231888(P2011−231888A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−104037(P2010−104037)
【出願日】平成22年4月28日(2010.4.28)
【出願人】(000157278)丸五ゴム工業株式会社 (25)
【Fターム(参考)】