説明

カビ漂白組成物およびカビ漂白方法

【課題】刺激臭を発生することが無く、安全に使用でき、しかも、住居の壁や家具、特に台所流し台、浴室の壁、天井またはタイル目地についたカビに対する漂白力に優れたカビ漂白組成物およびカビ漂白方法を提供する。
【解決手段】カビに接触することによってカビの細胞壁の少なくとも一部を破壊する作用を有する酵素と、該酵素が接触しても該酵素を失活させることのない漂白成分とを含有する組成物をカビ漂白組成物として用いる。酵素として、キチナ−ゼ、キトサナ−ゼ、N−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アクチナーゼ、ザイモリエース、キタラーゼ、ムタノリシン、アクロモペプチターゼ、β−1,3−グルカナ−ゼからなる群から選ばれる少なくとも一種を用いる。また、漂白成分としては酸素系漂白剤を用いる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺激臭が無く、しかも住居の壁や家具、特に台所流し台、洗濯槽、浴室の壁、天井またはタイル目地についたカビに対する漂白力に優れたカビ漂白組成物およびカビ漂白方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
カビ漂白剤は、塩素系漂白剤と酸素系漂白剤との二種に大別される。
塩素系漂白剤としては、一般に次亜塩素酸塩、特にナトリウム塩を漂白成分としたものが使用され、5〜6重量%の水溶液が家庭用漂白剤として広く市販されている。
【0003】
一方、酸素系漂白剤には、6種の過酸化物、すなわち、過酸化水素、過酸化ベンゾイル、過酸化ナトリウム、過ホウ酸ナトリウム、過炭酸ナトリウム、過マンガン酸ナトリウムをそれぞれ主成分とするタイプがある。これらの内、一般には、衣類や台所用品として過炭酸ナトリウムと過酸化水素を用いたものが広く使用されている。過炭酸ナトリウムの場合、水溶液中で炭酸ナトリウムと過酸化水素に解離し、解離した過酸化水素は活性酸素を遊離して、遊離した活性酸素により漂白作用が生じる。
【0004】
塩素系漂白剤は、酸素系漂白剤よりも漂白力が優れていることから、住居の壁や家具、特に台所流し台、洗濯槽、浴室の壁、天井またはタイル目地についたカビを漂白するために、次亜塩素酸ナトリウムを主成分とする塩素系漂白剤が使用されることが主であった。
【0005】
しかし、塩素系漂白剤は、漂白力は優れているものの分子状塩素による特有の臭気が発生して使用者に不快感を与え、また、使用方法によっては塩素ガスによる中毒の危険がある上、強力な漂白力のため住居の壁や家具の材質を変質させてしまうという欠点がある。
【0006】
一方、酸素系漂白剤は、塩素系漂白剤と比べると、住居の家具や壁を変質させにくいという利点があるが、カビの漂白に時間を要する上に効果が不十分である。
【0007】
住居の家具や壁、特に台所流し台、浴室の壁や天井やタイル目地についた汚れを除去するためには、かかる汚れが主にカビで構成されているために、カビに対する強い除去ないし漂白作用が必要となる。
【0008】
カビは一般の漂白剤に対し強い抵抗性を示し、繊維などの漂白に比べ、カビを完全に漂白することは酸素系漂白剤単独では極めて困難である。
【0009】
そのため、酸素系漂白剤による漂白作用の向上については、種々提案されている。例えば、特許文献1(特開昭61−42600号公報)には、グルコースペンタアセテート、テトラアセチルエチレンジアミン、テトラアセチルグリコールウリル、シアナミドなどが活性化剤を、酸素系漂白剤に兼用する構成が開示されている。しかし、この特許文献1に開示された活性化剤を含む漂白組成物は、カビに対してはいずれも漂白力が十分ではなく、また、しばしば過酸化水素と反応して刺激臭のある化合物を副生して実用に適しないという問題を生じる。
【0010】
また、特許文献2(特開昭52−110287号公報)には、過酸化物とシアナミド及び/又は金属シアナミドとからなる繊維用の漂白組成物が開示されている。しかし、この特許文献2に開示の漂白組成物は、カビに対しては漂白力が十分でない。
【0011】
また、特許文献3(特開昭62−1790号公報)には、過酸化物とシリコンオイル及び/又はその乳化物とを含有するカビ取り剤組成物が開示されている。しかし、この特許文献3に開示のカビ取り剤組成物は、カビに対する漂白力は十分でない。
【0012】
特許文献4(特開平1−265224号公報)には、キチナーゼ、キトサナーゼ、又はβ−1,3−グルカナ−ゼのうち少なくとも1つの酵素を含有するコンタクトレンズ用の洗浄剤が開示されている。しかし、この洗浄剤は漂白剤ではなく、カビに対する漂白力は認められない。
【0013】
特許文献5(特開昭62−285998号公報)には、キチナーゼ、β−1,3−グルカナ−ゼ、プロテアーゼ、セルラーゼ、チモリアーゼ等の細胞壁分解酵素を第一塗布剤とし、次亜塩素酸ナトリウムを第二塗布剤とした2剤からなる塗膜上のカビ除去剤が開示されている。しかしながら、2剤式であるために操作が煩雑であり、二剤目の塩素成分により一剤目の酵素成分が失活する虞があるので、第1剤目の酵素成分の作用が充分に発揮される時間を置いてから第二剤目を塗布しなければ充分な効果が得られない。また、生物に有害な次亜塩素酸ナトリウムを使用成分として有するために適用する対象が著しく限定されるという問題点もある。
【0014】
【特許文献1】特開昭61−42600号公報
【特許文献2】特開昭52−110287号公報
【特許文献3】特開昭62−1790号公報
【特許文献4】特開平1−265224号公報
【特許文献5】特開昭62−285998号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明は、前記従来の事情に鑑みてなされたもので、その課題は、刺激臭が無く、しかも、住居の壁や家具、特に台所流し台、浴室の壁、天井またはタイル目地についたカビに対する漂白力に優れたカビ漂白組成物およびカビ漂白方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記課題を解決するために、本発明者らは、鋭意研究の結果、カビの着色の原因であるメラニンが強固な層状の細胞壁に囲まれて局在すること、そして酸素系漂白剤の酸化力では内部まで酸化漂白が及ばず、十分な漂白が達せられないことを見出した。その結果、カビ漂白のためには、細胞壁分解とメラニン漂白との両方の操作が不可欠であることが確認された。
【0017】
そこで、カビの細胞壁分解作用を有する成分と、メラニンを漂白する漂白成分とを組み合わせれば、有用なカビ漂白組成物が得られるとの見通しから、さらに研究を続けた。その結果、カビの細胞壁分解作用を有する成分としては、キチナ−ゼ、キトサナ−ゼ、N−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アクチナーゼ、ザイモリエース、キタラーゼ、ムタノリシン、アクロモペプチターゼまたはβ−1,3−グルカナ−ゼからなる群から選ばれる少なくとも一種の酵素が好適であることを突き止めるに至った。そして、細胞壁が破壊されて露出したカビの色素であるメラニンを漂白する成分としては、酸素系漂白剤が好適であることも確認された。この酸素系漂白剤が好適である理由は、生体および環境に対して安全性が高いこと、そして前記酵素が接触してもその酵素を失活させることがないことにある。カビ取り作業をする場合には、一剤式の組成物を使った方が作業効率が高いし、作業時間も短くて済む。前記酵素と酸素系漂白剤とを混合しても酵素の「カビの細胞壁分解作用」を失活させることがない。また、同時使用することによって、酵素によるカビの細胞壁分解作用を進行させ、細胞壁が破壊されたら間髪を入れずに漂白成分が細胞内に浸透して内部のメラニンを漂白することができ、結果として、カビの漂白、除去が迅速且つ強力に行われることになる。
【0018】
すなわち、本発明にかかるカビ漂白組成物は、カビに接触することによってカビの細胞壁の少なくとも一部を破壊する作用を有する酵素と、該酵素が接触しても該酵素を失活させることのない漂白成分とを含有すること特徴とする。
また、本発明にかかるカビ漂白方法は、カビに対して該カビの細胞壁の少なくとも一部を破壊する作用を有する酵素を接触させ、同時もしくはその後に前記酵素を失活させることのない漂白成分を前記カビに接触させることを特徴とする。
以下に、本発明の実施の形態を詳しく説明する。
【0019】
カビの細胞壁を分解するためには、カビの細胞壁を構成する主要成分であるキチン、キトサン、グリカン、ペプチドグリカンに作用する酵素が有効である。このような酵素は、キチナ−ゼ、キトサナ−ゼ、N−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アクチナーゼ、ザイモリエース、キタラーゼ、ムタノリシン、アクロモペプチターゼまたはβ−1,3−グルカナ−ゼからなる群から選択できるもので、これらは1種単独または2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0020】
本発明に用いる該酵素群は、カビの細胞壁分解活性を有する限りその種類が特に制限されるものではない。例えば、キチナーゼ活性を有するものとしては、リゾチームまたはその塩などをあげることができる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0021】
本発明に用いる該酵素の起源は特に限定されないが、動物、植物、細菌、および菌類に広く分布しているものを使用できる。本発明では、これらを起源とする市販酵素を使用することができる。例えば、微生物起源のN−アセチルグルコサミニダーゼを有するリソスタフィン(シグマ社製)、β−1,3−グルカナーゼを主とするキタラーゼ(和光純薬工業社製)、β−1,3−グルカナーゼやキチナーゼを有するファンセラーゼ(ヤクルト社製)、β−1,3−グルカナーゼやキチナーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼを有するナカノザイム−LE01(中埜酢店製)などである。また、本発明では、シグマ社、和光純薬工業社などから販売されている研究試薬レベルの酵素も使用することができるが、これら市販品に限定されるものではなく、不適当な不純物を含有しない限り半精製、または粗製の酵素を使用することもできる。これらの酵素の使用量は、酵素の起源と種類、反応pH、作用時間などによって変化する。通常は、使用状態の水性液体組成物中、0.001〜10重量%となるように使用するのがよい。
【0022】
本発明においては、酵素の浸透性を促進させるために、浸透助剤を添加することができる。積層して著しく成長したカビには、漂白剤を作用しても内部には浸透しないために、得られる漂白効果が十分でないことがある。また、カビなどの胞子形成した部分は、特に細胞壁に胞子特有の壁素材物質が細胞壁の表面被覆物質として既存の壁層内に取り込まれ酵素が容易に作用しにくい状況を作りだしている。このようなカビに対しては該酵素の作用に加えて界面活性剤を併用することが有効である。界面活性剤の添加により、カビに対するカビ漂白組成物の浸透を助け、カビの漂白および洗浄・除去効果を高めることができる。
【0023】
本発明に配合される界面活性剤としては、従来から知られている物質を使用することができる。たとえば界面活性剤としては、アニオン界面活性剤、ノニオン界面活性剤、カチオン界面活性剤及び両性界面活性剤が挙げられ、これらを1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。
【0024】
アニオン界面活性剤としては、従来より洗剤において使用されるものであれば、特に限定されるものではなく各種のアニオン界面活性剤を使用することができる。例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)炭素数8〜18のアルキル基を有する直鎖又は分岐鎖のアルキルベンゼンスルホン酸塩(LAS)。
(2)炭素数10〜20のアルキル硫酸塩(AS)又はアルケニル硫酸塩。
(3)炭素数10〜20のα−オレフィンスルホン酸塩(AOS)。
(4)炭素数10〜20のアルカンスルホン酸塩。
(5)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はそれらの混合物を付加したアルキルエーテル硫酸塩(AES)又はアルケニルエーテル硫酸塩。
(6)炭素数10〜20の直鎖又は分岐鎖のアルキル基もしくはアルケニル基を有し、平均付加モル数が10モル以下のエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイド又はそれらの混合物を付加したアルキルエーテルカルボン酸塩又はアルケニルエーテルカルボン酸塩。
(7)炭素数10〜20のアルキルグリセリルエーテルスルホン酸等のアルキル多価アルコールエーテル硫酸塩。
(8)炭素数10〜20の高級脂肪酸塩。
(9)炭素数8〜20の飽和又は不飽和α−スルホ脂肪酸(α−SF)塩又はそのメチル、エチルもしくはプロピルエステル等。
【0025】
アニオン界面活性剤は、1種を単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。アニオン界面活性剤としては、直鎖アルキルベンゼンスルホン酸(LAS)のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)、AOS、α−SF、AESのアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)、高級脂肪酸のアルカリ金属塩(例えば、ナトリウム又はカリウム塩等)が好ましい。
【0026】
ノニオン界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
(1)炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪族アルコールに炭素数2〜4のアルキレンオキシドを平均3〜30モル、好ましくは5〜20モル付加したポリオキシアルキレンアルキル(又はアルケニル)エーテル。この中でも、ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(又はアルケニル)エーテルが好適である。ここで使用される脂肪族アルコールとしては、第1級アルコール、第2級アルコールが挙げられる。また、そのアルキル基は、分岐鎖を有していてもよい。脂肪族アルコールとしては、第1級アルコールが好ましい。
(2)ポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)フェニルエーテル。
(3)長鎖脂肪酸アルキルエステルのエステル結合間にアルキレンオキシドが付加した、例えば下記一般式(I)で示される脂肪酸アルキルエステルアルコキシレート。
1CO(OA)nOR2 …(I)
(式中、R1COは、炭素数6〜22、好ましくは8〜18の脂肪酸残基を示し、OAは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド等の炭素数2〜4、好ましくは2〜3のアルキレンオキシドの付加単位を示し、nはアルキレンオキシドの平均付加モル数を示し、一般に3〜30、好ましくは5〜20の数である。R2は炭素数1〜3の置換基を有してもよい低級アルキル基を示す。)
(4)ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル。
(5)ポリオキシエチレンソルビット脂肪酸エステル。
(6)ポリオキシエチレン脂肪酸エステル。
(7)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油。
(8)グリセリン脂肪酸エステル。
【0027】
上記のノニオン界面活性剤の中でも、融点が50℃以下でHLBが2〜16、より好ましくは9〜16のポリオキシエチレンアルキル(又はアルケニル)エーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキル(又はアルケニル)エーテル等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル、脂肪酸メチルエステルにエチレンオキシドが付加した脂肪酸メチルエステルエトキシレート、脂肪酸メチルエステルにエチレンオキシドとプロピレンオキシドが付加した脂肪酸メチルエステルエトキシプロポキシレート等が好適に用いられる。ポリオキシアルキレンアルキルエーテルを用いる場合は、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルは、アルキレンオキサイドの付加モル数がシャープなもの(平均付加モル数±2に80質量%以上)が好ましい。これらのノニオン界面活性剤は1種を単独で又は2種以上の混合物として使用してもよい。
【0028】
なお、本発明におけるノニオン界面活性剤のHLBとは、Griffinの方法により求められた値である(吉田、進藤、大垣、山中共編、「新版界面活性剤ハンドブック」、工業図書株式会社、1991年、第234頁参照)。
また、本発明における融点とは、JIS K8001「試薬試験法通則」に記載されている凝固点測定法によって測定された値である。
【0029】
カチオン界面活性剤としては、従来より洗剤において使用されるものであれば、特に限定されることなく、各種のカチオン界面活性剤を使用することができる。カチオン界面活性剤としては、例えば、以下のものを挙げることができる。
【0030】
(1)ジ長鎖アルキルジ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩
(2)モノ長鎖アルキルトリ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩
(3)トリ長鎖アルキルモノ短鎖アルキル型4級アンモニウム塩
(上記長鎖アルキルは炭素数12〜26、好ましくは14〜18のアルキル基、短鎖アルキルは炭素数1〜4、好ましくは1〜2のアルキル基、ベンジル基炭素数2〜4、好ましくは2〜3のヒドロキシアルキル基、又はポリオキシアルキレン基を示す。)
【0031】
両性界面活性剤としては、従来より洗剤において使用されるものであれば特に限定されることなく、各種の両性界面活性剤を使用することができる。両性界面活性剤としては、イミダゾリン系や、アミドベタイン系等の両性界面活性剤を挙げることができる。特に好ましい両性界面活性剤としては、例えば、2−アルキル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリニウムベタインや、ラウリン酸アミドプロピルベタイン等が挙げられる。
【0032】
本発明において、界面活性剤は、1種もしくは2種以上の混合物にて使用でき、界面活性剤の添加量はカビ漂白組成物全体で0.1〜20重量%、好ましくは0.1〜10重量%、さらに好ましくは0.1〜5重量%となる量である。
【0033】
本発明に用いる酸素系漂白成分としては、特に限定されないが、過酸化物として市販されている過酸化水素水溶液が好適に使用できる。本発明のカビ漂白組成物中の過酸化水素水溶液の配合量は、一般に0.5〜60重量%であり、好ましくは0.5〜30重量%、さらに好ましくは0.5〜10重量%である。実用上からは、1〜6重量%が最も好ましい。
【0034】
本発明のカビ漂白組成物の形態を粉末状とする場合は、過酸化物として過酸化水素と付加物を形成している化合物を使用して、水溶液中で過酸化水素を生じさせてもよい。過酸化水素と付加物を形成している化合物としては、炭酸ナトリウムと過酸化水素がモル比2:3で付加した炭酸ナトリウム過酸化水素付加物、ホウ酸ナトリウムと過酸化水素がモル比1:1で付加したホウ酸ナトリウム過酸化水素付加物一水和物およびホウ酸ナトリウム過酸化水素付加物四水和物等が例示される。これらの過酸化水素と付加物を形成している化合物を使用する場合は、付加物が水溶液中で解離して生成する過酸化水素が前記範囲に含まれる量になる量を使用する。
【0035】
また、本発明のカビ漂白組成物の形態を粉末状とする場合は、ビルダーが必要となるが、そのビルダーとしては、A型ゼオライト等の結晶性アルミノ珪酸塩、トリポリリン酸塩等のリン酸塩、エチレンジアミン四酢酸塩、ニトリロ三酢酸塩等のアミノポリ酢酸塩、アスパラギン酸、グルタミン酸、グリシン等のアミノ酸、スルホン化カルボン酸などの塩類、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸等のジカルボン酸の塩、グルコール酸、リンゴ酸、酒石酸、酢酸、クエン酸、グルコン酸等のオキシカルボン酸や有機酸の塩及びその誘導体、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、アコニット酸等のピロメット酸、亜硫酸ナトリウム等の還元性アルカリ金属塩、ケイ酸塩、炭酸塩、トリエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン等のアルカリ剤及び無機電解質から選んで使用することができる。
【0036】
本発明のカビ漂白組成物のpH値設定は、高い漂白力を得るために重要であり、通常7.0〜13.0、好ましくは8.0〜12.0、更に好ましくは9.0〜11.5である。
【0037】
前記pH値を制御し調整するための緩衝剤は、有効成分である酵素の活性を阻害せず、酵素活性の最適pH値を維持するものであれば特に制限はない。このような緩衝剤には、リン酸、グリシン、ホウ酸またはそれらのナトリウム塩が挙げられる。これらは1種で使用しても2種以上併用してもよい。また、その使用量は、使用状態の水性液体組成物中、0.01重量%〜10重量%、特に0.1〜5重量%となるような割合であるのが好ましい。
【0038】
本発明には、必要に応じて、金属キレート剤、等張調整剤、界面活性剤、親水性高分子等のその他の成分を含有することができる。このような作用を得るには、エチレンジアミン四酢酸の四ナトリウム塩および二ナトリウム塩などを、使用状態の水性液体組成物中、0.01〜0.5重量%となる割合で使用するのが好ましい。
【0039】
本発明のカビ漂白組成物は、1剤またはそれ以上の剤式の粉末剤や均一な水溶液であってもスラリー状の水溶液であってもよい。
【0040】
本発明のカビ漂白組成物は、好ましくは溶液状態またはスラリー状態として使用され、カビの付着した住居の壁や家具の表面にスプレー等で散布するか、あるいは刷毛等で塗布することにより、効果的にカビを漂白し、除去することができる。
【0041】
前述のように、本発明の組成物は、そのまま使用可能な水性の液体組成物として提供されてもよいが、水で希釈または溶解して使用できる濃厚な液体組成物、あるいは錠剤、顆粒、粉末または凍結乾燥物等の固体組成物で提供されてもよい。
【0042】
これにより細胞壁が分解され、酸素系漂白剤がカビ内部に充分に浸透し漂白力を高めることができる。しかも、活性剤を併用する場合には、浸透性が一層高まり大きなカビの塊内部までの漂白効果が達せられる。
【発明の効果】
【0043】
本発明のカビ漂白組成物およびカビ漂白方法によれば、安全且つ迅速に、しかも住居の壁や家具を変質させずに、かつ刺激臭を発生させずにカビ漂白を達成することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0044】
以下に実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0045】
以下の実施例および比較例において、漂白対象のカビとして、クラドスポリウム属カビ(cladosporium cladosporioides IF06348)という黒カビを用いた。この黒カビの培養としては、蒸気滅菌した寒天培地を滅菌シャーレーに移し、その寒天培地にクラドスポリウム属カビ(cladosporium cladosporioides IF06348)を移植し、28℃のインキュベーター中に20日間入れることにより行った。
【実施例】
【0046】
(実施例1〜4)
下記表1に記載の組成および組成比でカビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記黒カビの漂白試験を行った。なお、表中の%は重量%を表す。
【0047】
漂白試験としては、前記黒カビをその生育した寒天から剥離し、直径1cmの円形に型抜きしたものを表1に示す実施例1〜4のカビ漂白組成物溶液に入れ25℃で反応させた後、一定の漂白率が達せられるまでに要する時間を測定した。この漂白の程度は、黒カビの色差ΔE*abの値を分光測色計(ミノルタ社製 CM2002)で測定し、漂白率を下記式(1)に従って算出した。なお、漂白率は黒カビシート5枚の平均値で示した。測定結果は同じく表1に示した。
【0048】
ここで、色差ΔE*abは、国際照明委員会(Commission internationale de l’Eclairage;CIE)で規格化されるL***表色系の色差であり、下記式(1)によって算出される値である。無処理の黒カビのΔE*ab値は80程度を示し、完全に漂白されると、ΔE*ab値は0を示す。この表色系によって漂白率を算出した。
【0049】
【数1】

式(1)中のΔE*ab値は、以下の式(2)によって定義される値である。
【0050】
【数2】

式(2)中のL*は明度、a*、b*は色度をあらわす。
【0051】
(比較例1〜5)
下記表1に記載の組成および組成比で、前記実施例と同様に、カビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記黒カビの漂白試験を行った。比較例1は酵素を用いない酸素系漂白剤を単独で使用した場合の例であり、比較例2は塩素系漂白剤単独で使用した場合の例であり、比較例3,4,5は酵素を含んでなる塩素系漂白組成物(1剤式)の例である。漂白試験の結果は、同じく表1に示した。
【0052】
【表1】

【0053】
表1の結果から次のことが明らかとなる。
すなわち、実施例1は、比較例1(酸素系漂白剤単独)に酵素(キチナーゼ)を配合した発明組成物であり、酵素の添加により黒カビの漂白時間が大幅に短縮されていることが確認できる。また、実施例2は、実施例1に助剤として界面活性剤(リンゴ酸モノラウリルアミド)を配合した発明組成物であり、これにより黒カビの漂白時間が更に短縮されることが確認できる。実施例3、4は、それぞれ実施例1、2の酵素濃度を高めた発明組成物であり、これにより黒カビ漂白時間が更に短縮されることが確認できる。
【0054】
つまり、実施例1〜4は、キチナーゼや、更に界面活性剤を配合することにより、酸素系漂白剤を単独で用いた場合の黒カビ漂白時間を明らかに短縮させることを示すものである。
【0055】
一方、比較例2は、黒カビ漂白を次亜塩素酸ナトリウムで行うと実施例1〜4の発明組成物よりも漂白時間の短縮が認められるが、塩素発生を伴うために塩素臭が非常に強い。この場合、塩素による環境および使用者への悪影響も心配されるので、その使用環境および使用方法に限定が必要となる。
【0056】
比較例3〜5は、それぞれ実施例1、3、4の漂白成分を次亜塩素酸ナトリウムに換えた組成物であり、いずれも黒カビ漂白時間の短縮が認められるものの、その漂白時間は、比較例2と同一であり、塩素臭も非常に強い。この漂白時間が塩素系漂白剤単独で使用した場合と変わらないとの結果は、酵素(キチナーゼ)や助剤を配合する効果が認められないということを意味しており、塩素系漂白剤と酵素を混合した状態、すなわち一液タイプとして調製すると、酵素の作用が失活してしまうことを示している。そのため、従来の酵素を使用するカビ取り剤では、酵素成分と塩素系漂白剤成分とを別液にして、二剤式にて用いていたわけである。つまり、比較例2〜4によって、キチナーゼや界面活性剤の配合により期待できる漂白増強作用は、漂白力の強い塩素系漂白剤組成物との組み合わせでは得られないことが確認される。
【0057】
一方、本発明の実施例1〜4は、酸素系漂白剤を単独で用いる場合よりも増強された漂白作用を示し、しかも、塩素系漂白剤のような使用に伴う塩素臭の発生がなく使用者に不快感および中毒の危険を与えることがない。
【0058】
(実施例5〜8)
下記表2に記載の組成および組成比でカビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記実施例1〜4と同様にして黒カビの漂白試験を行った。なお、表中の%は重量%を表す。また、漂白試験、漂白率の測定および算出は、実施例1〜4と同様にした。
【0059】
(比較例6〜10)
下記表2に記載の組成および組成比で、前記実施例と同様に、カビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記黒カビの漂白試験を行った。比較例6は酵素を用いない酸素系漂白剤を単独で使用した場合の例であり、比較例7は塩素系漂白剤単独で使用した場合の例であり、比較例8,9,10は酵素を含んでなる塩素系漂白組成物(1剤式)の例である。漂白試験の結果は、同じく表2に示した。
【0060】
なお、表2の界面活性剤1は、α−メチルエステルスルホ脂肪酸ナトリウム(α−SF−Na):炭素数14:炭素数1=18:82のα−スルホ脂肪酸メチルエステルのナトリウム塩(ライオン(株)製、AI=70%、残部は未反応脂肪酸メチルエステル、硫酸ナトリウム、メチルサルフェート、過酸化水素、水等)である。その表2中の配合量は、α−SF−Naとしての質量%を示す。
【0061】
【表2】

【0062】
表2の結果から次のことが明らかとなる。
すなわち、実施例5は、比較例6(酸素系漂白剤単独)に酵素(キトサナーゼ)を配合した発明組成物であり、酵素の添加により黒カビの漂白時間が大幅に短縮されていることが確認できる。実施例6は、実施例5に助剤として界面活性剤(α−メチルエステルスルホ脂肪酸ナトリウム)を配合した発明組成物であり、これにより黒カビの漂白時間が更に短縮されることが確認できる。実施例7、8は、それぞれ実施例5、6の酵素濃度を高めた発明組成物であり、これにより黒カビ漂白時間が更に短縮されることが確認できる。
【0063】
つまり、実施例5〜8は、キトサナーゼや、更に界面活性剤を配合することにより、酸素系漂白剤を単独で用いた場合の黒カビ漂白時間を明らかに短縮させることを示すものである。
【0064】
一方、比較例7は、黒カビ漂白を次亜塩素酸ナトリウムで行うと、実施例5〜8の発明組成物よりも漂白時間の短縮が認められるが、塩素発生を伴うために塩素臭が非常に強い。この場合、塩素による環境および使用者への悪影響も心配されるので、その使用環境および使用方法に限定が必要となる。
【0065】
比較例8〜10は、それぞれ実施例5、7、8の漂白成分を次亜塩素酸ナトリウムに換えた組成物であり、いずれも黒カビ漂白時間の短縮が認められるものの、その漂白時間は、比較例7と同一であり、塩素臭も非常に強い。この漂白時間が塩素系漂白剤単独で使用した場合と変わらないとの結果は、酵素(キトサナーゼ)や助剤を配合する効果が認められないということを意味しており、塩素系漂白剤と酵素を混合した状態、すなわち一液タイプとして調製すると、酵素の作用が失活してしまうことを示している。つまり、比較例7〜10によって、キトサナーゼや界面活性剤の配合により期待できる漂白増強作用は、漂白力の強い塩素系漂白剤組成物との組み合わせでは得られないことが確認される。
【0066】
一方、本発明の実施例5〜8は、酸素系漂白剤を単独で用いる場合よりも増強された漂白作用を示し、しかも、塩素系漂白剤のような使用に伴う塩素臭の発生がなく使用者に不快感および中毒の危険を与えることがない。
【0067】
(実施例9〜12)
下記表3に記載の組成および組成比でカビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記実施例1〜4と同様にして黒カビの漂白試験を行った。なお、表中の%は重量%を表す。また、漂白試験、漂白率の測定および算出は、実施例1〜4と同様にした。
【0068】
(比較例11〜15)
下記表3に記載の組成および組成比で、前記実施例と同様に、カビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記黒カビの漂白試験を行った。比較例11は酵素を用いない酸素系漂白剤を単独で使用した場合の例であり、比較例12は塩素系漂白剤単独で使用した場合の例であり、比較例13,14,15は酵素を含んでなる塩素系漂白組成物(1剤式)の例である。漂白試験の結果は、同じく表3に示した。
【0069】
なお、表3の界面活性剤2は、LAS−K:直鎖アルキル(炭素数10〜14)ベンゼンスルホン酸(ライポンLH−200(ライオン(株)製)LAS−H純分96%)を界面活性剤組成物調製時に48%水酸化カリウム水溶液で中和する)である。その表3中の配合量は、LAS−Kとしての質量%を示す。
【0070】
【表3】

【0071】
表3の結果から次のことが明らかとなる。
すなわち、実施例9は、比較例11(酸素系漂白剤単独)に酵素(キタラーゼ)を配合した発明組成物であり、酵素の添加により黒カビの漂白時間が大幅に短縮されていることが確認できる。また、実施例10は、実施例9に助剤として界面活性剤(アルキルベンゼンスルホン酸)を配合した発明組成物であり、これにより黒カビの漂白時間が更に短縮されることが確認できる。実施例11、12は、それぞれ実施例9、10の酵素濃度を高めた発明組成物であり、これにより黒カビ漂白時間が更に短縮されることが確認できる。
【0072】
つまり、実施例9〜12は、キタラーゼや、更に界面活性剤を配合することにより、酸素系漂白剤を単独で用いた場合の黒カビ漂白時間を明らかに短縮させることを示すものである。
【0073】
一方、比較例12は、黒カビ漂白を次亜塩素酸ナトリウムで行うと、実施例9〜12の発明組成物よりも漂白時間の短縮が認められるが、塩素発生を伴うために塩素臭が非常に強い。この場合、塩素による環境および使用者への悪影響も心配されるので、その使用環境および使用方法に限定が必要となる。
【0074】
比較例13〜15は、それぞれ実施例9、11、12の漂白成分を次亜塩素酸ナトリウムに換えた組成物であり、いずれも黒カビ漂白時間の短縮が認められるものの、その漂白時間は、比較例12と同一であり、塩素臭も非常に強い。この漂白時間が塩素系漂白剤単独で使用した場合と変わらないとの結果は、酵素(キタラーゼ)や助剤を配合する効果が認められないということを意味しており、塩素系漂白剤と酵素を混合した状態、すなわち一液タイプとして調製すると、酵素の作用が失活してしまうことを示している。つまり、比較例12〜15によって、キタラーゼや界面活性剤の配合により期待できる漂白増強作用は、漂白力の強い塩素系漂白剤組成物との組み合わせでは得られないことが確認される。
【0075】
一方、本発明の実施例9〜12は、酸素系漂白剤を単独で用いる場合よりも増強された漂白作用を示し、しかも、塩素系漂白剤のような使用に伴う塩素臭の発生がなく使用者に不快感および中毒の危険を与えることがない。
【0076】
(実施例13〜16)
下記表4に記載の組成および組成比でカビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記実施例1〜4と同様にして黒カビの漂白試験を行った。なお、表中の%は重量%を表す。また、漂白試験、漂白率の測定および算出は、実施例1〜4と同様にした。
【0077】
(比較例16〜20)
下記表4に記載の組成および組成比で、前記実施例と同様に、カビ漂白組成物溶液を調製した。それらの溶液を用いて前記黒カビの漂白試験を行った。比較例16は酵素を用いない酸素系漂白剤を単独で使用した場合の例であり、比較例17は塩素系漂白剤単独で使用した場合の例であり、比較例18,19,20は酵素を含んでなる塩素系漂白組成物(1剤式)の例である。漂白試験の結果は、同じく表4に示した。
【0078】
なお、表4の界面活性剤3は、ノニオン界面活性剤(ラウリルミリスチルアルコール):ECOROL26(ECOGREEN社製炭素数12〜16のアルキル基をもつアルコール)の酸化エチレン平均15モル付加体(純分90%)である。その表4中の配合量は、ECOROL26としての質量%を示す。
【0079】
【表4】

【0080】
表4の結果から次のことが明らかとなる。
すなわち、実施例13は、比較例16(酸素系漂白剤単独)に酵素(リゾスタフィン)を配合した発明組成物であり、酵素の添加により黒カビの漂白時間が大幅に短縮されていることが確認できる。また、実施例14は、実施例13に助剤として界面活性剤(ラウリルミリスチルアルコール)を配合した発明組成物であり、これにより黒カビの漂白時間が更に短縮されることが確認できる。実施例15、16は、それぞれ実施例13、14の酵素濃度を高めた発明組成物であり、これにより黒カビ漂白時間が更に短縮されることが確認できる。
【0081】
つまり、実施例13〜16は、リゾスタフィンや、更に界面活性剤を配合することにより、酸素系漂白剤を単独で用いた場合の黒カビ漂白時間を明らかに短縮させることを示すものである。
【0082】
一方、比較例17は、黒カビ漂白を次亜塩素酸ナトリウムで行うと実施例13〜16の発明組成物よりも漂白時間の短縮が認められるが、塩素発生を伴うために塩素臭が非常に強い。この場合、塩素による環境および使用者への悪影響も心配されるので、その使用環境および使用方法に限定が必要となる。
【0083】
比較例18〜20は、それぞれ実施例13、15、16の漂白成分を次亜塩素酸ナトリウムに換えた組成物であり、いずれも黒カビ漂白時間の短縮が認められるものの、その漂白時間は、比較例17と同一であり、塩素臭も非常に強い。この漂白時間が塩素系漂白剤単独で使用した場合と変わらないとの結果は、酵素(リゾスタフィン)や助剤を配合する効果が認められないということを意味しており、塩素系漂白剤と酵素を混合した状態、すなわち一液タイプとして調製すると、酵素の作用が失活してしまうことを示している。つまり、比較例17〜20によって、リゾスタフィンや界面活性剤の配合により期待できる漂白増強作用は、漂白力の強塩素系漂白剤組成物との組み合わせでは得られないことが確認される。
【0084】
一方、本発明の実施例13〜16は、酸素系漂白剤を単独で用いる場合よりも増強された漂白作用を示し、しかも、塩素系漂白剤のような使用に伴う塩素臭の発生がなく使用者に不快感および中毒の危険を与えることがない。
【産業上の利用可能性】
【0085】
以上のように、本発明にかかるカビ漂白組成物およびカビ漂白方法は、刺激臭を発生させることも無く、安全に使用することができ、しかも、住居の壁や家具、特に台所流し台、浴室の壁、天井またはタイル目地についたカビに対する優れた漂白力を発揮することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カビに接触することによってカビの細胞壁の少なくとも一部を破壊する作用を有する酵素と、該酵素が接触しても該酵素を失活させることのない漂白成分とを含有すること特徴とするカビ漂白組成物。
【請求項2】
前記酵素がキチナ−ゼ、キトサナ−ゼ、N−アセチルムラミダーゼ、N−アセチルグルコサミニダーゼ、アクチナーゼ、ザイモリエース、キタラーゼ 、ムタノリシン、アクロモペプチターゼ、β−1,3−グルカナ−ゼからなる群から選ばれる少なくとも一種であることを特徴とする請求項1に記載のカビ漂白組成物。
【請求項3】
前記漂白成分が酸素系漂白剤であることを特徴とする請求項1または2に記載のカビ漂白組成物。
【請求項4】
前記酵素のカビ内部への浸透性を高める助剤を含むことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のカビ漂白組成物。
【請求項5】
カビに対して該カビの細胞壁の少なくとも一部を破壊する作用を有する酵素を接触させ、同時もしくはその後に前記酵素を失活させることのない漂白成分を前記カビに接触させることを特徴とするカビ漂白方法。

【公開番号】特開2007−131785(P2007−131785A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−328023(P2005−328023)
【出願日】平成17年11月11日(2005.11.11)
【出願人】(000006769)ライオン株式会社 (1,816)
【Fターム(参考)】