説明

カフ付医療具用インジケータ

【課題】カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断できるようにした、カフ付医療具用インジケータを提供する。
【解決手段】カフ付医療具に取り付けられてカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータである。逆止弁4と、カフ付医療具に接続する接続部2と、逆止弁4と接続部2との間に設けられたインジケータ本体3とを備えている。インジケータ本体3内には、逆止弁4を通って注入された流体を接続部2側に案内する案内路8と、案内路8に対して気密に隔てられた指標室9とが形成され、指標室9内には、カフ内に連通する風船状の指標体11が複数、それぞれカフ内の内圧に対応して膨縮可能に設けられ、複数の指標体11は、カフの内圧に対応する膨縮度がそれぞれ異なって構成され、インジケータ本体3には、少なくとも複数の指標体11のそれぞれの膨縮度を視認可能にする窓部が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カフ付医療具に取り付けられて、この医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療分野では、カフ付(バルーン付)医療具を用いて体内経路を閉塞する方法が、よく知られている。例えば、人工呼吸を行なう際に用いられる「気管内チューブ」は、一端が患者の口(経口)若しくは鼻(経鼻)から挿入され、多端が人工呼吸器へ接続される。この状態で「気管内チューブ」のカフを気管にて膨張させると、患者は気管以下(肺)が閉塞され、「気管内チューブ」内部を通じて連通状態である人工呼吸器により強制呼吸させられる。
【0003】
また、他の例として、「肺動脈用バルーンカテーテル」がある。これは頚動脈などの適切な血管を経由してカテーテルを血管に挿入し、その血流に乗せて肺動脈に到達させる。そこで、バルーンを膨張させカテーテル先端に設置されるセンサーにより肺に血液が入り込む、いわゆる「楔入圧」を測定するものである。
【0004】
しかし、このようなカフ(バルーン)付医療具は、どれもカフの膨張によって体内経路を閉塞するので、そのカフの過膨張によって、例えば「気管内チューブ」においては気管粘膜の圧迫による粘膜の損傷、「肺動脈用バルーンカテーテル」においては血管損傷といった問題が生じていた。
【0005】
このような問題に対し、従来では、カフにより体内経路を閉鎖する際に生じる過膨張を防止し、その作業性を簡易化するとともに、様々なカフ(バルーン)付医療器具に使用することのできるカフ(バルーン)の膨張補助用具が提供されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
ところで、カフ(バルーン)付医療具にあっては、過膨張によって前記したような問題が生じるが、一方で、カフの内圧が低下し、予め設定された膨張度が維持できなくなると、気管が塞がれて人工呼吸器による強制呼吸が不十分になったり、カテーテルを血流に乗せて肺動脈に到達させる際の浮きとしての機能が低下するといった問題もある。カフはゴム等によって形成されることから、流体としての空気が分子レベルでわずかずつながら漏れていき、内圧が低下して膨張度が低くなってしまうからである。
【0007】
従来、このような内圧低下に関しては、例えばカフ付医療具の、カフに空気を注入するために注射器を接続する分岐部にパイロットバルーンを設けておき、このパイロットバルーンの膨張度を、外観や触感で確認することにより、検知している。
【特許文献1】特開2003−116999号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、このように外観や触感でパイロットバルーンの膨張度を確認し、カフの内圧低下を検知するのでは、膨張度の確認に手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりすることから、迅速にしかも正確にカフの内圧低下を判断するのは非常に困難であった。
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、カフの内圧低下を迅速にしかも正確に判断できるようにした、カフ付医療具用インジケータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため本発明のカフ付医療具用インジケータは、カフ付医療具に取り付けられて、該医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータであって、
前記カフ内に流体を注入する注射器等の注入手段に接続可能な逆止弁と、
前記カフ付医療具に接続して前記カフ内に連通する接続部と、
前記逆止弁と前記接続部との間に設けられたインジケータ本体と、を備えてなり、
前記インジケータ本体内には、前記注入手段により逆止弁を通って注入された流体を前記接続部側に案内する案内路と、該インジケータ本体の外側に連通し、かつ前記案内路に対して気密に隔てられた指標室とが形成され、
前記指標室内には、前記接続部を介して前記カフ内に連通する風船状の指標体が複数、それぞれ前記カフの内圧に対応して膨縮可能に設けられ、
前記複数の指標体は、前記カフ内の内圧に対応する膨縮度がそれぞれ異なって構成され、
前記インジケータ本体には、少なくとも前記複数の指標体のそれぞれの膨縮度を視認可能にする窓部が形成されていることを特徴としている。
【0010】
このカフ付医療具用インジケータによれば、逆止弁に注射器等の注入手段を接続し、空気等の流体を注入することにより、該流体が案内路、接続路を通ってカフ内に入る。したがって、該カフを所定の膨張度に膨張させることができる。そして、この状態で注入手段を逆止弁から外しても、逆止弁が作用することで、カフ内の空気(流体)は案内路を通って外に漏れることはない。
また、このようにカフを膨張させた状態で保持すると、このカフ内に連通する指標室内の複数の指標体は、それぞれカフの内圧に対応して膨張する。その際、これら複数の指標体は、前記カフの内圧に対応する膨縮度がそれぞれ異なって構成されているので、インジケータ本体の窓部からそれぞれの膨張度を視認することで、カフの内圧低下等を迅速にしかも正確に判断することが可能になる。
【0011】
例えば、指標体を二つ設けた場合に、一方の指標体はカフの内圧が適正なときに十分に膨張し、他方の指標体はカフの内圧が過大であるときに十分に膨張するように形成しておく。すると、カフの内圧が適正なときには、一方の指標体は十分に膨張し、他方の指標体はその膨張度が僅かとなる。したがって、このように一方の指標体のみが十分に膨張している状態を視認することにより、カフの内圧が適正であることが分かる。
また、カフの内圧が過大であるときには、両方の指標体が十分に膨張することになり、このような状態を視認することにより、カフの内圧が過大であることが分かる。
また、カフの内圧が低下したときには、両方の指標体の膨張度が共に僅かとなることから、このような状態を視認することにより、カフの内圧が低下していることが分かる。
【0012】
また、前記カフ付医療具用インジケータにおいては、前記複数の指標体はそれぞれ、その口部が前記案内路に開口することでその内部が該案内路を介して前記カフ内に連通していてもよい。
このようにすれば、前記インジケータ本体の構造が簡易になるとともに、指標体の組立性も良好になり、製造が容易になる。
【0013】
また、前記カフ付医療具用インジケータにおいては、前記複数の指標体は、それぞれが識別可能に構成されているのが好ましい。
例えば、前記指標体の色を個々に変えてそれぞれを識別可能に構成しておき、どの色の指標体がカフの内圧とどのように対応しているかを認識しておくことにより、カフの内圧が適正であるか否かを迅速にかつ正確に判断することが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のカフ付医療具用インジケータにあっては、カフを膨張させた状態で保持すると、このカフ内に連通する指標室内の複数の指標体が、それぞれカフの内圧に対応して膨張するように構成されていることから、インジケータ本体の窓部からこれら複数の指標体のそれぞれの膨張度を視認することにより、カフの内圧低下等を迅速にしかも正確に判断することができる。したがって、従来のように内圧低下を検知するのに手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった不都合がなくなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明を詳しく説明する。
まず、本発明のカフ付医療具用インジケータの説明に先立ち、このインジケータが取り付けられるカフ付医療具について説明する。図1(a)は本発明のインジケータ1を取り付けてなるカフ付医療具を示す図であり、図1(b)は従来のカフ付医療具を示す図である。
【0016】
図1(a)、(b)中において符号50はカフ付医療具としての一般的な気管内チューブであり、このカフ付医療具(気管内チューブ)50は、人口呼吸器と接続可能なコネクタ60と、カフを膨張させるための注入部70と、患者の気管に挿入されるチューブ80と、気管を閉塞するためのカフ(バルーン)90とから構成されている。
コネクタ60は、全体が円筒状のもので、人工呼吸器に接続するための第1接続筒61と、後述するチューブ本体81に気密に嵌合させられている第2接続筒62と、から構成されている。
【0017】
注入部70は、図1(b)に示すように従来のものでは、チューブ80に接続された接続チューブ71と、パイロットバルーン72と、逆止弁73とから構成されている。パイロットバルーン72は、両側に開口部を有する風船状のもので、前述したようにその膨張状態を外観や触感で確認することにより、これに連通するカフ90の内圧を確認するためのものである。逆止弁73は、前記パイロットバルーン72と反対の側からのみ空気(流体)の流入を可能にし、パイロットバルーン72側からは空気が抜け出ないように構成されたもので、注射器に接続されて空気を流入するための流入口となるものである。
このような構成の注入部70では、特にカフ90の内圧をパイロットバルーン72の外観やその触感で調べる(確認する)ため、前述したように外観からの膨張度の確認に手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった問題があった。
【0018】
そこで、本発明では、図1(a)に示したように、接続チューブ71にインジケータ1を接続している。このインジケータ1は、接続チューブ71に接続するカフ側接続部2と、円筒状のインジケータ本体3と、逆止弁(図示せず)を有してなる注射器側接続部5とを備えて構成されたものである。このような構成からなるインジケータ1は、そのインジケータ本体3内の指標体(図示せず)を視認することにより、カフ90の内圧を容易に確認できるようになっている。なお、このインジケータ1の詳細については後述する。
【0019】
チューブ80は、チューブ本体81と、チューブ本体81内をその全長に亘って貫通する第1孔82と、チューブ本体81内の一部を貫通する第2孔83と、チューブ本体81の先端側(患者側)で第2孔83と外部とを連通させる第1開口84と、チューブ本体81の他端側で第2孔83と外部とを連通させる第2開口85とから構成されている。なお、この第2開口85には、前記接続チューブ71がチューブ本体81に対して気密に接着固定されている。
【0020】
カフ90は、前記第一開口84を覆って設けられた風船状のもので、その両端部がチューブ本体81の外面に気密に接着され固定されたことにより、その内部が前記第一開口84を介してのみ外部に通じたものとなっている。すなわち、カフ90は、第1開口84を介して第2孔83、接続チューブ71に連通したものとなっているのである。
【0021】
次に、前記インジケータ1の詳細について説明する。このインジケータ1は、本発明のカフ付医療具用インジケータの一実施形態となるもので、図2に示すように、前記接続チューブ71に接続するカフ側接続部2と、円筒状のインジケータ本体3と、逆止弁4を有してなる注射器側接続部5とを備えて構成されたものである。
【0022】
カフ側接続部2は、図2、図3に示すように接続チューブ71を内挿し(あるいは外挿し)てこれに接続する円筒部2aと、この円筒部2aの一端側に接続する円板部2bと、この円板部2bの外周縁部に形成されて、前記インジケータ本体3に接続するための大径円筒状の接続筒2cとからなる樹脂製のものである。円板部2bの内面側、すなわち接続筒2c側には、図3に示すように、前記円筒部2aの内部孔(図示せず)の開口2dの周囲に、筒状部6が突出した状態に形成されている。この筒状部6は、後述する案内路の一部を形成するもので、前記開口2dを中心として略三角形状に形成されたものであり、その各辺部にそれぞれ、後述する指標体を係合させるための切欠6aを形成したものである。
【0023】
インジケータ本体3は、ポリプロピレン(PP)等の透明樹脂からなり、したがってその内部が視認可能に形成されて、全体が本発明における窓部として機能するものであり、図2、図3、図4(a)〜(d)に示すように、内部に空間部を形成してなる略円筒状のものである。このインジケータ本体3には、その一方の側の周縁部に、前記カフ側接続部2の接続筒2cに内挿して接続する接続端3aが形成され、他方の側には、その中央部に、前記注射器側接続部5に接続する接続筒3bが形成されている。
【0024】
また、このインジケータ本体3には、その内部に、前記一方の側から他方の側にかけて貫通する内部孔7が形成されている。この内部孔7は、本発明における案内路の一部を形成するもので、図4(b)、(c)に示すように前記接続端3a側の開口形状が、前記の円板部2bに形成された筒状部6の内部孔の形状(図3参照)にほぼ一致する略三角形状に形成され、図4(a)、(d)に示すようにその前記接続筒3b側の開口形状が、円形状に形成されたものである。
このような構成のもとにこの内部孔7と前記カフ側接続部2の筒状部6の内部孔とは、図2に示したようにインジケータ本体3にカフ側接続部2が接続されたことによって連通し、後述するように注入手段によって注入された流体を前記カフ側接続部2側に案内する案内路8を構成している。
【0025】
また、このインジケータ本体3には、その内部に複数の指標室9、本実施形態では三つの指標室9が形成されている。これら指標室9は、図4(b)、(c)に示すように前記案内路8を中心にして、その外側に周方向に沿って等間隔で配設された空間であり、前記カフ側接続部2の円板部2b側に開口した円柱状の空間である。そして、前記の円板部2b側の開口が該円板部2bによって封止されることにより、各指標室はそれぞれ独立した空間となっているのである。また、このインジケータ本体3の、前記接続筒3b側の壁面には、空間からなる指標室9を該インジケータ本体の外側に連通させる連通孔9aが、各指標室9毎に形成されている。
【0026】
また、前記の各指標室9と前記案内路8(内部孔7)との間には、これらの間を連通させるスリット10が形成されている。そして、これらスリット10にはそれぞれ、図2に示すように指標体11が取り付けられている。ここで、スリット10は、図4(c)、(d)に示すようにインジケータ本体3に形成された切欠10aと、図3に示した前記カフ側接続部2の筒状部6の切欠6aとが連続したことによって形成されたものである。
【0027】
指標体11は、図5(a)、(b)に示したように口部11aと袋部11bとを備えてなる風船状のもので、軟質の樹脂(エラストマー)やゴム等の伸縮自在の材料、例えばシリコンゴムからなり、これによって袋部11bが膨縮可能に形成されたものである。指標体11の口部11aは、開口部11cとこれの周囲を構成する厚肉の取付部11dとからなり、該取付部11dが前記スリット10に係止させられたことにより、指標体11はインジケータ本体3内に取り付けられている。
【0028】
すなわち、指標体11は、その取付部11dが案内路8(内部孔7)内に配置され、袋部11bが前記スリット10を通って前記指標室9内に配置され、その状態で取付部11dと案内路8の内壁面との間が接着や溶着等によって気密にシールされたことにより、インジケータ本体3内に取り付けられたものとなっている。
【0029】
そして、このような構成のもとに指標体11は、後述するように案内路8を介して前記カフ90内に連通したものとなっている。また、取付部11dと案内路8の内壁面との間が気密にシールされたことにより、該案内路8と前記各指標室9との間を連通させるスリット10が指標体11によって気密に塞がれ、これにより該案内路8と前記各指標室9とは、互いに気密に隔てられたものとなっている。
また、これら指標体11は、案内路8を介して連通する前記カフ90の内圧に対応する膨縮度が、それぞれ異なって構成されている。すなわち、本実施形態において三つの指標体11は、その袋部11bの厚さがそれぞれ異なって形成されており、これによってその内圧に応じて膨張する度合い、つまり膨縮度が異なっているのである。
【0030】
具体的には、第1の指標体11は、前記カフ90の内圧が適正である範囲ではほとんど膨らまず、カフ90の内圧が適正である範囲を越えたとき、すなわちカフ90が過膨張となったときに膨らむように、その膜厚が設定され形成されている。第2の指標体11は、カフ90の内圧が適正な範囲において十分に膨らみ、適正な範囲を下回っているときには、十分な膨張度で膨らまないように、その膜厚が設定され形成されている。第3の指標体11は、カフ90の内圧が適正な範囲の下限値近傍において十分に膨らみ、この下限値の例えば半分程度以下ではほとんど膨らまないように、その膜厚が設定され形成されている。
【0031】
このような構成のもとに三つの指標体11は、カフ90の内圧に応じて異なった膨縮度で膨らむ。すなわち、カフの内圧が適正なときには、第2の指標体11と第3の指標体11とが十分な膨張度で膨らみ、第1の指標体11はほとんど膨らまない状態となる。したがって、このように一方の指標体のみが十分に膨張している状態を視認することにより、カフの内圧が適正であることが分かる。
また、カフ90の内圧が過大であるときには、三つの指標体11がいずれも十分に膨張することになり、このような状態を視認することにより、カフの内圧が過大であることが分かる。
【0032】
また、カフ90の内圧が低下し、その適正な範囲の下限値を下回ると、少なくとも第1の指標体11と第2の指標体11とはその膨張度が共に非常に小さくなり、また第3の指標体11もその膨張度が不十分となる。したがって、このように三つの指標体11全てが十分に膨らんでいないのを視認することにより、カフの内圧が低すぎることが分かる。
なお、特にカフ90の内圧が過大であるとき、第3の指標体11が膨らみ過ぎて破裂するように形成しておくことにより、これを安全弁として機能させることができる。
【0033】
また、これら三つの指標体11は、それぞれが識別可能に構成されているのが好ましく、本実施形態では、各指標体11の色を個々に変えてそれぞれを識別可能に構成している。具体的には、第1の指標体11の色を「赤」、第2の指標体11の色を「青」、第3の指標体の色を「緑」に着色しておく。このように、三つの指標体11をそれぞれ識別可能にしておけば、どの色の指標体11がカフ90の内圧とどのように対応しているかを予め認識しておくことにより、カフ90の内圧が適正であるか否かをより迅速にかつ正確に判断することができるようになる。
【0034】
注射器側接続部5は、図2、図3に示すように全体が円筒状のもので、その一端側に小径部5aを有し、この小径部5aが前記インジケータ本体3の接続筒3bに内挿してここに接続され、接着や溶着等によって気密にシールされたことにより、インジケータ本体3に固定されたものとなっている。そして、このような構成のもとに注射器側接続部5は、その内部孔5bが、前記インジケータ本体3の内部孔7に連通したものとなっている。なお、この注射器側接続部5は、後述するようにその他端側において、内部孔5bに注射器等の注入手段(図示せず)が接続されるようになっている。本実施形態では、その内部孔5bが、他端側から中央部に行くに連れて漸次縮径するよう、テーパ状に形成されている。
【0035】
また、この注射器側接続部5の内部孔5b内には、その中央部に、該内部孔5bの内径を狭める狭窄部5cが形成されており、この狭窄部5cに、前記逆止弁4が設けられている。
逆止弁4は、弁本体12、コイルバネ13と、固定軸14とから構成されたものである。弁本体12は、頭部12aと円筒状の軸部12bとからなるもので、頭部12aが、前記狭窄部5cの前記小径部5a側に配置され、軸部12bが、狭窄部5cを通って前記小径部5aと反対の側に延びて配置されたものである。
頭部12aの内面(狭窄部5cに対向する面)は、軸部12b側に行くに連れて漸次縮径するテーパ状になっており、この内面に対向する狭窄部5cの面も、該内面のテーパ形状に対応する逆テーパ形状となっている。このような構成によって弁本体12の頭部12aは、狭窄部5cに当接した際、これに気密に密着するようになっている。
【0036】
コイルバネ13は、狭窄部5cを通り抜けた部分の軸部12bに外挿して設けられたものである。
固定軸14は、頭部14aと軸部14bとからなるもので、軸部14bが前記弁本体12の軸部12bの内部孔に圧入されて連結されたことにより、その頭部14aと前記狭窄部5cとの間に前記コイルバネ13を圧縮させた状態に保持したものである。このような構成によって逆止弁4は、固定軸14の頭部14a側が加圧されない通常時においては、コイルバネ13の付勢力によって弁本体12の頭部12aが狭窄部5c側に引っ張られ、該頭部12aの内面と狭窄部5cとが気密に密着して閉じた状態となる。一方、注射器等により、コイルバネ13の付勢力より大きな力で頭部14a側を加圧(押圧)すると、弁本体12の頭部12aが狭窄部5cから離間し、開いた状態となる。
【0037】
また、この固定軸14の頭部14bには、溝14cが形成されている。この溝部14cは、後述するように頭部14bに注射器の注入口が当接した際、この注入口を頭部14bによって塞ぐことなく、少なくともこの溝部14cを介して注入口の内部を注射器側接続部5の内部孔に連通させるためのものである。
【0038】
このような構成からなるインジケータ1を組み立てるには、図2、図3に示したように、まず、インジケータ本体3の、指標室9を開口した側(筒状部6を形成した側と反対の側)から指標体11をそれぞれの指標室11に挿し入れる。すなわち、その取付部11dを内部孔7(案内路8)内に挿入するとともに、袋部11bを、スリット10となる切欠(図示せず)に挿し込み、その状態で取付部11dと前記切欠を形成する注入孔7(案内路8)の内壁面との間を気密にシールする。
【0039】
次いで、指標体11を取り付けたインジケータ本体3に対し、指標室9を開口した側にカフ側接続部2を接合する。その際、前記円板部2bの筒状部6の切欠6aを、前記指標体11の袋部11bに挿し入れ、そのまま筒状部6を前記インジケータ本体3の内部孔7の周辺部に当接させるとともに、その状態でカフ側接続部2をインジケータ本体3に気密にシールする。
その後、シンジケータ本体3の接続筒3bに、予め逆止弁4を組み込んだ注射器側接続部5の小径部5aを内挿し、気密にシールすることにより、インジケータ1を得る。
【0040】
次に、このような構成のインジケータ1を備えたカフ付き医療具(気管内チューブ)50の使用方法を説明する。
図6に示すように、まず、カフ付き医療具50を、通常の使用方法通りに患者に対して用いる。すなわち、患者の口100からチューブ80の先端側を挿入し、カフ90を気管101にまで到達させる。
【0041】
次に、インジケータ1の注射器側接続部5に注射器(図示せず)を接続する。すなわち、注射器の先端側をその内部孔内に入れ、その先端部で逆止弁4の固定軸14の頭部14aを押圧する。すると、コイルバネ13の付勢力に抗して頭部14aが押し込まれ、これにより弁本体12の頭部12aが狭窄部5cから離間し、狭窄部5cの両側が連通して逆止弁4が開いた状態となる。
【0042】
このような状態のもとで注射器を操作し、予め設定した所定量の空気を注入する。すると、注入された空気は、狭窄部5cを通過して内部孔を通り、前記インジケータ本体3の案内路8(内部孔7)に流入する。そして、この案内路8を通過した空気は、カフ側接続部2の内部孔内に至り、さらにこのカフ側接続部2に接続した前記接続チューブ71内、チューブ80の第2孔83内を通って第1開口84からカフ90内に流入する。このようにして空気が注入されることにより、カフ90はその内圧に対応した膨張度に膨張する。なお、このようにして案内路8に空気を通過させると、その一部は指標体11の取付部11dに形成された開口部11cを通ってその袋部11bに流入する。
【0043】
このようにして空気を注入したら、注射器を前記注射器側接続部5から取り外す。すると、逆止弁4の固定軸14は、押圧力が解除されたことによってコイルバネ13に付勢され、移動する。これにより、弁本体12も狭窄部5c側に引っ張られ、該頭部12aの内面と狭窄部5cとが気密に密着することにより、逆止弁4は閉じる。
【0044】
このようにして逆止弁4が閉じると、カフ90は、その接続チューブ71側がインジケータ1によって気密に塞がれることにより、大気側に対して閉じられた空間となる。そして、指標室9内の指標体11はその開口部11cが案内路8を介してカフ90内に通じているので、カフ90の内圧が指標体11にかかるようになる。このとき、指標室9は連通孔9aによって大気中(外側)に通じているため、カフ90の内圧と大気圧との圧力差によって、すなわちカフ90の内圧に対応して、各指標体11はその袋部11bを膨らませる。
【0045】
その際、複数の指標体11は、前記したようにカフ90の内圧に対応する膨縮度がそれぞれ異なって構成されているので、インジケータ本体3の外側からそれぞれの膨張度を視認することにより、前述したようにカフ90の内圧低下等を迅速にしかも正確に判断することができる。
【0046】
このようにしてカフ90の内圧(膨張度)を確認した際、その内圧が許容される範囲での最小値を下回っているような場合には、再度注射器を接続して空気を注入することにより、カフ90を所定の内圧で膨張させることができる。なお、このように注射器で空気を注入する際にも、各指標体11の膨縮度を見ながら行うことにより、過不足なくカフ90を膨張させることができる。
その後、カフ付医療具(気管内チューブ)50のコネクタ60に接続された人工呼吸器(図示せず)により、人工呼吸を行わせる。
【0047】
以上述べたようにこのインジケータ1にあっては、カフ90内に連通する指標室9内の複数の指標体11が、カフ90の内圧に対応してそれぞれ異なる膨縮度で膨張するように構成されていることから、これら複数の指標体11のそれぞれの膨縮度を視認することにより、カフの内圧低下等を迅速にしかも正確に判断することができる。したがって、従来のように内圧低下を検知するのに手間がかかったり、ある程度の経験が必要になったりするといった不都合がなくなり、不測の事故を招くといったことも確実に防止される。
【0048】
また、インジケータ本体3が透明樹脂で形成されており、その全体が内部を透かして見ることのできる窓部として機能するので、各指標体11の膨縮度を容易にかつ迅速に確認することができる。さらに、各指標体11を、それぞれ色を変えて識別可能に構成しているので、どの色の指標体11がカフ90の内圧とどのように対応しているかを予め認識しておくことにより、カフ90の内圧が適正であるか否かをより迅速にかつ正確に判断することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、指標体の形状や構造についても、カフ90の内圧に対応して膨縮可能であり、その膨縮度が外から容易に視認できるものであれば、前記実施形態のもの以外にも採用可能である。
また、前記実施形態では、カフの内圧に対応する各指標体の膨縮度を、各指標体の袋部の厚さを変えることで互いに異ならせているが、例えば各指標体の材質を変えることにより、膨縮度を互いに異ならせるようにしてもよい。
【0050】
さらに、前記実施形態では、指標体を三つ備えて構成したが、二つでも、また四つ以上であってもよい。
また、各指標体を識別可能に構成する方法としては、それぞれ色を変える方法以外にも、例えば模様や数字(文字)等を袋部等の表面に設けておくといった方法を採用することができる。
【0051】
また、逆止弁4の構造や、この逆止弁4側とカフ90側とを連通させる案内路8の構造等についても、前記実施形態の構造に限定されることなく種々の形態が採用可能である。
さらに、本発明が用いられるカフ付医療具としても、前記の気管内チューブ以外にも、例えば肺動脈用バルーンカテーテルなど、種々のものに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】カフ付医療具の概略構成を示す図であり、(a)は本発明のインジケータを取り付けてなるカフ付医療具を示す図、(b)は従来のカフ付医療具を示す図である。
【図2】本発明のカフ付医療具用インジケータの一実施形態の、概略構成を示す側断面図である。
【図3】図2に示したカフ付医療具用インジケータの分解斜視図である。
【図4】(a)、(b)はインジケータ本体の斜視図、(c)はインジケータ本体の一方の側の正面図、(d)は(c)のA−A線矢視断面図である。
【図5】(a)は指標体の斜視図、(b)は指標体の側断面図である。
【図6】カフ付医療具の使用方法を説明するための図である。
【符号の説明】
【0053】
1…インジケータ(カフ付医療具インジケータ)、2…カフ側接続部(接続部)、3…インジケータ本体、4…逆止弁、5…注射器側接続部、8…案内路、9…指標室、9a…連通孔、11…指標体、50…カフ付医療具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフ付医療具に取り付けられて、該医療具のカフの内圧を示すカフ付医療具用インジケータであって、
前記カフ内に流体を注入する注射器等の注入手段に接続可能な逆止弁と、
前記カフ付医療具に接続して前記カフ内に連通する接続部と、
前記逆止弁と前記接続部との間に設けられたインジケータ本体と、を備えてなり、
前記インジケータ本体内には、前記注入手段により逆止弁を通って注入された流体を前記接続部側に案内する案内路と、該インジケータ本体の外側に連通し、かつ前記案内路に対して気密に隔てられた指標室とが形成され、
前記指標室内には、前記接続部を介して前記カフ内に連通する風船状の指標体が複数、それぞれ前記カフ内の内圧に対応して膨縮可能に設けられ、
前記複数の指標体は、前記カフの内圧に対応する膨縮度がそれぞれ異なって構成され、
前記インジケータ本体には、少なくとも前記複数の指標体のそれぞれの膨縮度を視認可能にする窓部が形成されていることを特徴とするカフ付医療具用インジケータ。
【請求項2】
前記複数の指標体はそれぞれ、その口部が前記案内路に開口することでその内部が該案内路を介して前記カフ内に連通していることを特徴とする請求項1記載のカフ付医療具用インジケータ。
【請求項3】
前記複数の指標体は、それぞれが識別可能に構成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカフ付医療具用インジケータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−79704(P2008−79704A)
【公開日】平成20年4月10日(2008.4.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−260895(P2006−260895)
【出願日】平成18年9月26日(2006.9.26)
【出願人】(391007024)株式会社アドバネクス (45)
【Fターム(参考)】