説明

カプセルの製造方法、結果として生じるカプセル、及びそのカプセルの使用

本発明は、10%未満の多分散性指数を有する1から100マイクロメートルのカプセルを1段階で製造する方法と、この製造方法によって得られたカプセル懸濁液と、これらのカプセル懸濁液の使用とに関する。このカプセルの製造方法は具体的に、連続的に放出される均一サイズの水性組成物の液滴を回転チャンバーにある媒介相に接触して配置する段階であって、前記チャンバーは水相及び媒介相を備え、これらの二相が界面を形成し、それを通って前記液滴が、前記チャンバーの回転によって発生した遠心力の作用下で力を受ける、段階と、それに続くカプセルの水懸濁液を回収する段階と、を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、対象とするサンプルを封入するために、又は分析する物質を較正するためのツールとして特に有益なカプセルを作る分野に関する。
【背景技術】
【0002】
カプセルを作るための幾つかの方法が、文献に既に記載されている。例えば、その外皮(envelope)が二重層であるタイプのカプセルに対しては水和方法があり、特にエレクトロフォーメーションでは、脂質フィルムを水和し、良好な品質のカプセルを作れるが、収率が非常に悪く、非常に多分散したサイズのカプセルが得られる。二重のエマルションを作り、続いて二つの両親媒性単層の間に含まれる溶媒を蒸発させる方法もまた存在する;又は代わりに、較正されたマイクロ流体のエマルションを作り、次いで作られたエマルションを水及びエタノールの水溶液に分散させる方法がある。
【0003】
しかしながら、前述の方法は全て、制御されたサイズ及び良好な品質を有する大量のカプセル、つまり欠陥のない球体を、短時間内にその方法の良好な再現性を伴って作ることが出来ない。更に、多数の従来技術の方法は有機溶媒を含むが、それらは大抵有害であり、カプセルが使用され得る前に除去される必要がある。
【0004】
出願人は、水相と第1油相を界面活性剤の存在下で混合することによって逆エマルションを調製する、非特許文献1に記載された方法に、特に興味を持った:油に存在する界面活性剤分子は、水滴の表面に吸収され、単層を形成する。水相、界面及び媒介相から形成される二重相は次いで、以下のように調製される:界面活性剤が更に追加された第2油相が水相に注がれ、界面が形成される。油の密度が低いため、それは水の上に残る。初めに調製されたエマルションがこの二重相、及び油相より重く、水相に面する堆積物であるベシクルに注がれる。界面を横切るとき、それらは第2脂質層で覆われる。非特許文献2において、パウトットらは、上述と同じタイプのエマルション及び同じタイプの媒介相から非対称膜を有するベシクルを作り、続いて水滴を油/水界面を横切って低い水相まで移動させるために120×gで10分間遠心力を加えることを記載している。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】パウトットら(Pautot et al.)著、「ラングミュア(Langmuir)」、2003年、第19号、第2870−2879頁
【非特許文献2】パウトットら著、「米国科学アカデミー紀要(PNAS)」、2003年、第19号、第100巻、第10718−10721頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらパウトットらの方法では、遠心を伴っても伴わなくても、十分な多分散性を有するベシクルの懸濁液を作ることが出来ない。更にパウトットらの方法には、工業的に使用できるのに十分な再現性がない。
【0007】
カプセルを作る分野では、方法の生産性が重要な工業的要因であると知られている。カプセルの核及びカプセル自体の形成を制御することができる工業的に効果的で再現可能なプロセスは、製造を制御するために、それらの性質、品質、量、多分散性指数に関して、それ故に依然として探索される。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の1つの主題は故に、カプセルを作る新規なプロセスであり、それは作られるカプセルのサイズの緻密な制御及び高い収率を可能にする着実で経済的な1段階プロセスである。本発明によるプロセスは、欠陥のないカプセルを得ることを可能にする。本発明によるプロセスの使用は、カプセルの任意の合体を避ける。
【0009】
更に具体的には、本発明は10%未満の多分散性指数を有する1から100マイクロメートルのカプセルを作る1段階プロセスに関し、それは、連続的に放出される均一サイズの水性組成物の液滴を回転チャンバーにある媒介相に接触して配置する段階であって、前記チャンバーは水相及び媒介相を備え、これらの二相が界面を形成し、それを通って前記液滴が、チャンバーの回転によって発生した遠心力の作用下で力を受ける段階と、それに続くカプセルの水懸濁液を回収する段階と、を含む。遠心力の作用下で、界面は垂直である。有利に媒介相は、水より低い密度を有する水非混合溶媒での脂質分子の分散系である。
【0010】
本発明の好ましい一実施形態によると、水相は水性組成物の密度より少なくとも0.5から25g/l低い密度を有する;有利に水相と水性組成物とは、等浸透圧である。特に水性組成物はキャピラリーによって、100から500μl/h、好ましくは150から250μl/hの流速で、又は80から500mbar、好ましくは100から200mbarの一定圧力(キャピラリーのサイズによって決まる)で、回転チャンバーにある媒介相に、界面から一定の且つ決まった距離で注入され、前記注入は回転によって、作られるべき滴のサイズに応じたドロップワイズ(dropwise)機構又はジェット機構を用いて、媒介相に一定の間隔で液滴を結果として作る。作られた液滴の多分散性は本発明のプロセスによると、キャピラリーのサイズ及びキャピラリー末端での流れのキャピラリー数によって決まり、この数は1未満、好ましくは10−4から10−1、最も優先的に略0.5×10−3である。
【0011】
本発明の別の実施形態では、水相は、注入箇所の数、故に収率を増やすことができる穴の開いたシリンダーから注入される。
【0012】
本発明の主題はまた、本発明によるプロセスを実施するデバイスであり、このデバイスは、
−中にカプセルが形成されるチャンバーであって、回転されることができ、水相と媒介相とを備えるチャンバーと、
−前記チャンバーの内容物と接触して前記水性組成物を配置する手段と、
を備える。
【0013】
本発明の主題はまた、本発明のプロセスによって得ることができるカプセル懸濁液である。本発明の1つの特定の実施形態では、カプセルは人工的な織物と似たネットワークを形成するために、基板上に堆積されることができる。好ましくは、この人工的な織物は、くっついて離れないベシクルのローン(lawn)である。これらのカプセルは、アクチン・フィラメントを含むことができる。この織物は、本発明によるプロセスによって直接得られた懸濁液の堆積によって、本発明によるプロセスから得られる。
【0014】
有利に、本発明によるカプセル懸濁液のカプセルは、外皮と、水性組成物の核とを含む。第1の実施形態では、外皮の厚さは1nmから10マイクロメートルの間であり、優先的に分散された両親媒性分子のサイズの2倍から10マイクロメートルの間である。
【0015】
外皮が脂質二重層である第1の実施形態では、外皮の厚さは1から100nmの間であり、最も優先的に5から20nmである;外皮が媒介相から形成される第2の実施形態では、外皮の厚さは核の半径以下であり、好ましくは100nmから10マイクロメートルの間である。この第2の実施形態では、外皮の体積は、核の体積の3から10倍、好ましくは略7倍であり得る。
【0016】
本発明の主題はまた、薬剤有効成分、化粧品活性剤、例えば核酸などの生物学的物質、タンパク質、コロイド溶液、人間若しくは環境生物試料を含むか、又はそれらによって形成された水性組成物を封入するための、又は代わりに血液製剤を封入するための、本発明によるプロセスの使用である。本発明の主題は、本発明のプロセスによって得ることができるカプセル懸濁液であり、前記カプセルは、薬剤有効成分、化粧品活性剤、核酸、タンパク質、人間若しくは環境生物試料、又は代わりに血液製剤(ヘモグロビン若しくは代用血液、又は特に濃厚赤血球、濃厚血小板若しくは血漿タイプの、不安定な若しくは安定な任意の血液製剤;又は代わりに、特に凝固剤タンパク質、免疫グロブリン、アルブミンなどのタイプの血液由来の薬剤、の懸濁液)を封入する。
【0017】
とりわけ本発明の主題は、人工的な血液製剤、特に代用血液を作るための、本発明によるプロセスの使用である。第1の実施形態では、外皮は好ましくは、ガス透過性でありヘモグロビンを透過しない二重層である。本発明の主題は、本発明のプロセスによって得ることができるカプセル懸濁液であり、前記カプセルは、ヘモグロビンと、ガス透過性でありヘモグロビンを透過しない前記カプセルの外皮とを封入する。
【0018】
本発明の主題はまた、本発明によるカプセル懸濁液の較正ツールとしての使用である。具体的には、本発明によるプロセスはカプセルのサイズ及び内容物の完全な制御を可能にし、故に本発明によるカプセル懸濁液の較正ツールとしての使用を可能にする。
【0019】
本発明の目的に対して、
−「カプセル」との用語は、外皮によって制限され水性組成物を含むことができる球体を示し、この球体は1から100マイクロメートル、好ましくは5から80マイクロメートル、より優先的に10から30マイクロメートルの直径を有する;1つの特定の実施形態では、本発明によるカプセルはベシクル、つまり外皮が両親媒性二重層、好ましくは脂質二重層であるカプセルである。
−「多分散性」との用語は、カプセルの群のサイズ分布を示す。これは画像解析によって、カプセルの輪郭を検知してそれらを円に調整することによって得られる。円の直径のヒストグラムは、平均及び分布の分散、多分散性指数を定義する分散−平均比率を得ることを可能にする。この比率が小さいほど、分散は狭くなり、カプセル溶液は単分散カプセル溶液に更に近づく。
−「媒介相」との用語は、異なる単位体積当たりの質量を有する幾つかの流体から構成され得る液体組成物を示し、前記媒介相は、
−水性組成物及び水相より小さい単位体積当たりの質量を有し、
−水性組成物及び/又は水相と非混合であり、
−特に脂質、ジ−、トリ−、若しくはマルチブロックポリマー、界面活性剤及びタンパク質から選ばれ得る両親媒性分子を含むか、又はそれらから形成される。
【0020】
故に、本発明の主題は、10%未満、好ましくは9%未満、優先的に7%未満、最も優先的に略6%である多分散性指数を有する1から100マイクロメートルのカプセル、又はカプセル懸濁液を作る1段階プロセスである。有利に、プロセスは連続して実施されるが、水性組成物は80mbarから500mbar、優先的に100mbarから200mbarの圧力で、キャピラリーから媒介相に注入され、水性組成物の液滴は、キャピラリーの末端に接触しチャンバー内に配置された液体(媒介相)の回転に関連した力によって、キャピラリーの末端から引き出される。故に、液滴が連続して媒介相内に到達する。
【0021】
媒介相は、キャピラリー周辺の流体の流動形態が低いキャピラリー数(1未満)を有するようなものであり、それは水性組成物のドロップワイズ形態を保証し、この形態は水性組成物と媒介相との間の界面張力で支配され、故に滴サイズの良好な再現性、つまり水性組成物の滴の小さい多分散性指数を有する。
【0022】
キャピラリーから引き出されたそれぞれの滴は遠心力にさらされ、急速にキャピラリーから遠ざかり界面に向かう:故に、合体現象が避けられるか、又は少なくとも非常に最小化される。
【0023】
第1の実施形態によると、媒介相は異なる密度を有する2層の流体を含むか、又はそれらから成る:第2層より低い密度及び低い粘性を有する第1層は、水性組成物のドロップワイズ機構が界面張力で支配されるように、低いキャピラリー数を維持することを可能にし、故に最適化されたサイズ分布を得ることを可能にする;第2層は両親媒性分子の分散系である。
【0024】
第2の実施形態によると、両親媒性分子、好ましくは脂質の分散系である単一層を含む媒介相が使用される。
【0025】
媒介相の厚さ、及びこの単層である媒介相又は二重層である媒介相の第2層の両親媒性分子の濃度は、相互に依存するパラメータである。故に、両親媒性分子の濃度は、両親媒性分子が水性組成物の滴上に飽和するまで吸着される時間を定める。媒介相のこの層の厚さは故に、キャピラリーから形成され媒介相をフライトする滴が界面に到着する前に両親媒性分子で飽和点まで覆われる時間を有するように選ばれる。本発明の好ましい実施形態によると、両親媒性分子の濃度は0.05から5mM、好ましくは0.1から1mM、最も優先的に略0.5mMである。
【0026】
本発明によるプロセスに従って、水性組成物は、特に例えば核酸などの生物学的物質、タンパク質、人間の生体試料(赤血球、白血球、血小板など)若しくは環境生物試料、薬剤有効成分、化粧品活性剤、コロイド溶液などを含むタイプなどの、対象とする任意の組成物であることができる。本発明の特定の一実施形態によると、水性組成物は血液製剤、好ましくはヘモグロビン若しくは代用血液の懸濁液、又は特に濃厚赤血球、濃厚血小板若しくは血漿タイプの、不安定な若しくは安定な任意の血液製剤;又は代わりに、特に凝固剤タンパク質、免疫グロブリン、アルブミンなどのタイプの血液由来の薬剤である。
【0027】
本発明の一実施形態によると、水性組成物は脂質を含む;この実施形態は、使用される脂質が媒介相より水性組成物において溶解性が高い場合に好ましい。
【0028】
第1の実施形態では、媒介相は水より低い密度を有する組成物での両親媒性分子、好ましくは脂質の分散系であり、その組成物は特に、鉱油若しくは鉱油の混合物、アルカン若しくはアルカンの混合物、アルケン若しくはアルケンの混合物、テルペン若しくはテルペンの混合物、又はクロロフォルム、トルエン若しくはアルコール(メタノール又はエタノール)などの他の溶媒であり得る。有利に、その組成物は、デカン、ヘキサデカン、ドデカン又はスクアレンである。本発明の好ましい一実施形態によると、脂質は、出来る限り水を含まないように、油に分散される前に乾燥される。好ましくは、両親媒性分子は超音波処理によって油に分散される。
【0029】
特定の実施形態によると、媒介相は、水より低い密度を有する油での脂質の分散系であり、前記脂質は油混和性溶媒に配置され次いで全体が油と混合され、次いで前記分散系はその溶媒及び如何なる微量の水も除去するために蒸発される。
【0030】
本発明の特定の一実施形態によると、水相は食塩水若しくは生理的食塩水、又は少なくとも1つの糖を含む溶液である。有利に、水相はグルコース溶液である。好ましい実施形態によると、水相は水性組成物と等浸透圧である。
【0031】
本発明の好ましい実施形態によると、カプセルの核となる水性組成物は、この組成物の液滴の注入によって媒介相に接触して配置され、これらの滴は界面から規定の且つ決められた距離で、制御された均一のサイズを有する。
【0032】
本発明の特定の実施形態によると、制御されたサイズの水性組成物の滴を媒介相に注入する手段は、2から50マイクロメートルの1つ又は複数のキャピラリーである。有利に、これらのキャピラリーはマイクロピペットの引き込み(draw)を用いて形成され、キャピラリーの外部は次いで任意の適切な手段によって疎水性にされる。本発明の特定の一実施形態によると、キャピラリーの末端は空気−媒介相界面付近の媒介相に導入され、キャピラリーに含まれた水性組成物は、100から500μl/h、好ましくは250μl/hの速度で注入される。
【0033】
注入された液滴は、チャンバーの回転による遠心力にさらされ、この遠心力の作用下でチャンバーにおけるパスをたどるが、それは「フライト(flight)」として知られる。本発明の一実施形態によると、フライトの間、液滴は媒介相に分散された両親媒性分子で覆われる。フライト時間、つまりそれがキャピラリーから引き出された瞬間から界面に接触する瞬間までの間の、液滴が媒介相を通過する時間は、遠心力によって制御される。フライト時間はまた、液滴の半径、媒介相の粘性、及び媒介相の厚さによって決まる。フライト時間の制御は、良好なカプセル品質、つまり外皮に欠陥のない球体カプセルを得ることを可能にする。
【0034】
故に、本発明によると、プロセスはチャンバーのサイズに応じて、且つ液滴の良好な被覆に必要なフライト時間に応じて最適化される。故に、チャンバーの最適な回転速度の決定は、当業者にとっては実施するのが非常に簡単な一連のテストによって決定される。
【0035】
カプセルは、界面と接触するときにフライトを終え、次いでそれらは界面を横切る:第1の実施形態ではこの横断の間、それらは両親媒性分子の第2層で覆われ、両親媒性二重層カプセルを形成する。
【0036】
第2の実施形態では、界面を横断する間にカプセルは媒介相を取り込み、厚いカプセルを形成する。
【0037】
一旦界面を横切ると、カプセルは水相に存在することなり、それから任意の適切な手段によってそれらは回収される。
【0038】
有利に、本発明によるプロセスは高収率のプロセスであり、つまり1から1000Hz、好ましくは500から1000Hzの製造頻度を可能にする。より高い頻度は、プロセスの単純な適合によって得ることができる。
【0039】
液滴放出頻度は、特にフライト中及び界面の表面における合体を避けるために、フライト時間及び界面通過時間に応じて最適化される。
【0040】
キャピラリーを用いる本発明の実施形態では、滴は一定の間隔でキャピラリーから引き出される。
【0041】
遠心力は外皮の厚さを変える効果を有する;それはまたフライト時間及び界面を通過する時間を決定し、最終的に界面自体の通過に影響を及ぼす。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】カプセルを作るチャンバーの上面図及び側面図であり、実施例1と関連して理解される。
【図2】カプセルを作るチャンバーの上面図及び側面図であり、実施例2と関連して理解される。
【図3】本発明によるプロセスによって得ることができるカプセル懸濁液の多分散性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0043】
本発明は以下に続く説明を読むことでより明確に理解され得るが、それは本発明を制限しない方法で示し、図1、2及び3と関連して理解される。
【0044】
(実施例1)
[脂質の溶解及び微量の水の蒸発]
脂質(卵のフォスファチジル・コリン)は2mlのメタノールに溶解され、次いで40℃の温度、200mbarの圧力下で5から10分間、蒸発される。一旦フラスコが均一な脂質フィルムで覆われると、蒸発は100mbarの圧力下(及び40℃の温度)で1時間続けられる。鉱油(シグマ(登録商標) M3516)が次いで0.5mMの濃度で、脂質(卵のフォスファチジル・コリン)に加えられる。脂質を分散させるために、溶液は40℃の温度の槽内で超音波にかけられる。
【0045】
[キャピラリーの準備]
2から50マイクロメートルの間のキャピラリーはマイクロピペットの引き込みを用いて形成され、次いで、シラン溶液(0.1%の[3−(トリメトキシシリル)プロピル]オクタデシルジメチルアンモニウムクロライドが90%メタノール、10%水の混合液に添加される)に2分間キャピラリーチップを浸すことによってシラン化されるが、その内部はシラン化されないように、キャピラリーを通った窒素の流体を用いる。このシラン化は、キャピラリーの外部を疎水性にする機能を有する。
【0046】
[チャンバーの説明]
中にカプセルが形成されるチャンバーは、ボンディングによって密封してシールされた直径4cmのペトリ皿で構成され、その上部には、キャピラリーを導入するための1cmのオリフィスが備えられる。
【0047】
[カプセルの製造]
チャンバーは回転モーター(この場合は5から70rpsの回転のためのモーター)に取り付けられる。チャンバーは10rpsで回転され、次いで1、5mlのグルコース溶液、5mlの脂質溶液で連続的に充填されるが、それは遠心力により瞬時に垂直界面を形成する。キャピラリーがそして、空気−油界面付近の油での脂質の溶液に導入され、スクロース溶液が次いで80mbarから500mbarの範囲の圧力でキャピラリーを用いて注入されるか、又は等価な方法で250μl/hの速度で注入される。
【0048】
図1は、2層の流体(水溶液、油)を含むチャンバーを示す。チャンバーは、5から70rpsで変動し得る回転数で、回転の軸のまわりを回る。流体は故に、密度が最も高い(最も偏心の)ところから密度が最も低いところまでの、重ねられた垂直層の形状である。図1はまた、本発明によるカプセル形成に対する原理を示す:滴がまず回転運動中における媒介相への水性組成物の注入によって作られ、その滴が次いで媒介相−水相界面を横切る遠心力から力を受け、カプセルになる。
【0049】
(実施例2)
図2は本発明の特定の一実施形態を示すが、それは他の油層より低い密度及び低い粘性を有する追加の油層を使用し、それは界面張力(キャピラリー形態)で支配されたドロップワイズの製造を提供する。
【0050】
こうして、非常に狭いサイズ分散性のために、1、5mlの別の油(デカン)の追加層が使用されたが、それは鉱油より低い粘度及び低い密度を有し、その中にスクロース溶液が注入された。低い粘度は、液滴のドロップワイズ製造が界面張力によって制御されることを保証する。例えば、30rpsで鉱油に放出された水滴に対するキャピラリー数は0.14に等しく、一方、滴がデカンに注入される場合はたったの0.004である。液滴は連続して形成され、それらが追加の脂質層で覆われる油溶液−グルコース界面を横切る前である脂質溶液の層を通過するそれらの移動(フライト)の間に脂質で覆われ、次いで我々の場合は、スクロースで充填されグルコースに分散されたカプセルになる。図3は10マイクロメートルのキャピラリーを用い、30rpsのスピード(×40g)で、400mbarでのデカンへのキャピラリーからの注入で得られたカプセルのサイズ分散を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続的に放出される均一サイズの水性組成物の液滴を回転チャンバーにある媒介相に接触して配置する段階であって、前記チャンバーは水相及び媒介相を備え、これらの二相が界面を形成し、それを通って前記液滴が、前記チャンバーの回転によって発生した遠心力の作用下で力を受ける、段階と、
それに続くカプセルの水懸濁液を回収する段階と、
を含む、10%未満の多分散性指数を有する1から100マイクロメートルのカプセルを1段階で製造する方法。
【請求項2】
前記媒介相が、水より低い密度を有する水非混合溶媒での両親媒性分子の分散系である、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記水相が前記水性組成物より低い密度を有し、前記水相及び前記水性組成物が等浸透圧である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記水性組成物がキャピラリーによって、100から500μl/hの流速で、又は80から500mbarの一定圧力で、前記回転チャンバーにある前記媒介相に、前記界面から一定の且つ決まった距離で注入され、前記注入は前記媒介相において一定間隔での液滴の製造をもたらす、請求項1から3の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項5】
作られた前記液滴の多分散性は、前記キャピラリー末端での流れのキャピラリー数によって決まる、請求項1から4の何れか1項に記載の製造方法。
【請求項6】
−中にカプセルが形成されるチャンバーであって、回転されることができ、水相と媒介相とを備えるチャンバーと、
−前記チャンバーの内容物と接触して前記水性組成物を配置する手段と、
を備える、請求項1から5の何れか1項に記載の製造方法を実施するデバイス。
【請求項7】
請求項1から5の何れか1項に記載の製造方法によって得ることができるカプセル懸濁液。
【請求項8】
前記カプセルが外皮と水性組成物の核とを含み、前記外皮の厚さが1nmから10マイクロメートルの間であることを特徴とする、請求項7に記載のカプセル懸濁液。
【請求項9】
前記外皮が脂質二重層である、請求項8に記載のカプセル懸濁液。
【請求項10】
前記外皮が媒介相から形成される、請求項8に記載のカプセル懸濁液。
【請求項11】
前記カプセルがヘモグロビンを封入し、前記カプセルの前記外皮がガス透過性でありヘモグロビンを透過しない、請求項8に記載のカプセル懸濁液。
【請求項12】
前記カプセルが、薬剤有効成分、化粧品活性剤、核酸、タンパク質、人間若しくは環境生物試料、又は代わりに血液製剤を封入する、請求項8に記載のカプセル懸濁液。
【請求項13】
較正ツールとしての、請求項7から10の何れか1項に記載のカプセル懸濁液の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−533421(P2012−533421A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−521066(P2012−521066)
【出願日】平成22年7月20日(2010.7.20)
【国際出願番号】PCT/FR2010/000523
【国際公開番号】WO2011/010017
【国際公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【出願人】(507033059)サントル・ナショナル・ドゥ・ラ・レシェルシュ・サイエンティフィーク・(セ・エン・エール・エス) (17)
【出願人】(510226749)ユニヴェルシテ・モンペリエ・2・シアンス・エ・テクニーク (1)
【Fターム(参考)】