カプセル化されたデバイスおよび製造方法
環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法である。本方法は、基板を提供すること;少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させることを含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該減結合ポリマー層は、以下のうち少なくとも1つ:極性領域の数が少ないこと;充填密度が高いこと;C−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域の数が少ないこと;エステル部分の数が少ないこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種のMwが大きいこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種の鎖長が長いこと;または、C=C結合の変換が少ないことを有する。またカプセル化された環境に敏感なデバイスも説明される。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、概して、カプセル化されたデバイスに関し、より具体的にはカプセル化のための遮断物、および、前記遮断物のための層を作製する方法に関する。
【0002】
多くのデバイスは、大気中の酸素や大気水蒸気のような環境のガスもしくは液体、または、電子製品の加工で用いられる化学物質の透過によって引き起こされる劣化の影響を受けやすい。劣化を予防するために、デバイスをカプセル化することが多い。
【0003】
様々なタイプのカプセル化されたデバイスが知られている。例えば、2001年7月31日に発行された米国特許第6,268,695号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”;2003年2月18日に発行された6,522,067号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”;および、2003年5月27日に発行された6,570,325号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”(これらはいずれも参照により本発明に含める)は、カプセル化された有機発光デバイス(OLED)を説明している。2003年6月3日に発行された米国特許第6,573,652号、名称“Encapsulated Display Devices”(参照により本発明に含める)は、カプセル化された液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)、発光ポリマー(LEP)、電気泳動インクを用いた電子標識、エレクトロルミネセンスデバイス(ED)、および、リン光デバイスを説明している。2003年4月15日に発行された米国特許第6,548,912号、名称“Semiconductor Passivation Using Barrier Coatings”(参照により本発明に含める)は、カプセル化された超小型電子デバイス、例えば集積回路、電荷結合素子、発光ダイオード、発光ポリマー、有機発光デバイス、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、エレクトロクロミック素子、フォトクロミック素子、超小型電子機械式システム、および、太陽電池を説明している。
【0004】
カプセル化されたデバイスを作製する方法の1つは、積重ね遮断物をデバイスの片側または両側に隣接させて付着させることに関する。このような積重ね遮断物は、典型的には、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合層を含む。1つの減結合層、および、1つの遮断層が存在してもよく、1またはそれより多くの遮断層の片側に複数の減結合層が存在してもよく、または、1またはそれより多くの遮断層の両側に1またはそれより多くの減結合層が存在してもよい。重要な特徴は、積重ね遮断物が、少なくとも1つの減結合層、および、少なくとも1つの遮断層を有することである。
【0005】
図1に、カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様を示す。カプセル化されたディスプレイデバイス100は、基板105、ディスプレイデバイス110、および、積重ね遮断物115を含む。積重ね遮断物115は、遮断層120、および、減結合層125を含む。積重ね遮断物115がディスプレイデバイス110をカプセル化して、環境の酸素および水蒸気によってディスプレイデバイスが劣化するのを予防する。
【0006】
積重ね遮断物における遮断層および減結合層は、同じ材料で作製してもよいし、または、異なる材料で作製してもよい。遮断層は、典型的には、約100〜1,000Åの厚さを有し、減結合層は、典型的には、約1,000〜10,000Åの厚さを有する。
【0007】
図1にはたった1つの積重ね遮断物しか示されていないが、積重ね遮断物の数は限定されない。必要な積重ね遮断物の数は、具体的な用途に応じて必要とされる水蒸気および酸素の透過抵抗のレベルに依存する。1または2つの積重ね遮断物によって多くの用途において十分な遮断特性が付与されると予想されるが、3または4つの積重ね遮断物がほとんどの用途において十分と考えられる。最も過酷な用途では、5またはそれより多くの積重ね遮断物を必要とすることもある。それ以外の複数の積重ね遮断物が必要とされる可能性がある状況とは、例えばパッシブマトリックスデバイスを用いた場合のようにポリマーの収縮により誘発された応力を制限するために減結合層の厚さを制限する必要があるような場合である。
【0008】
遮断層は、真空プロセス、例えばスパッタリング、化学蒸着法、プラズマエンハンスト化学蒸着法、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴−プラズマエンハンスト蒸着(ECR−PECVD)、および、それらの組み合わせを用いて付着させることができる。
【0009】
適切な遮断材料としては、これらに限定されないが、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
我々は、カプセル化されるデバイスのいくつかが、遮断層および/または減結合層を付着させる際に用いられるプラズマによって損傷を受けたことを見出した。OLEDのような環境に敏感なデバイスを上に載せた基板を多層積重ね遮断物でカプセル化し、プラズマベースの、および/または、プラズマによって促進されるプロセスを用いて遮断層または減結合層を付着させるような場合に、プラズマによる損傷が発生した。例えば、遮断特性を達成するのに適した条件下でAlOxの遮断層を反応性スパッタリングする場合、環境に敏感なデバイスの上面にAlOxの遮断層をスパッタリングする場合、および/または、真空蒸着させたアクリラートベースのポリマー層にAlOxの遮断層をスパッタリングする場合にプラズマによる損傷が発生した。
【0011】
プラズマによる損傷は、カプセル化によって得られたデバイスの電気的および/または発光に関する特徴への悪影響に関与する。このような作用は、デバイスのタイプ、デバイスの製造元、および、放出された光の波長によって様々であると予想される。重要なことは、プラズマによる損傷は、カプセル化しようとするデバイスの設計に依存するということに留意することである。例えば、ある製造元によって作製されたOLEDは、プラズマによる損傷をわずかしか示さないか皆無であるが、その他の製造元によって作製されたOLEDは、同じ付着条件下でも有意なプラズマによる損傷を示す。これは、デバイス内にそのプラズマ照射への感受性に影響を与える特徴があることを示す。
【0012】
プラズマによる損傷を検出するための方法の1つは、デバイスのI−V−Lの特徴の変化を観察することである。
【0013】
減結合層は、真空プロセス、例えば真空中でのその場重合を用いたフラッシュ蒸発、または、プラズマ蒸着および重合、または、大気中でのプロセス、例えばスピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷または噴霧を用いて付着させることができる。米国特許第4,842,893号、4,954,371号、および、5,032,461号(これらは、参照により本発明に含める)は、フラッシュ蒸発および重合の方法を説明している。減結合層に適した材料としては、これらに限定されないが、有機ポリマー、無機ポリマー、有機金属ポリマー、ハイブリッド有機/無機ポリマー系、および、ケイ酸塩が挙げられる。
【0014】
減結合層が積重ね遮断物の遮断性能へ与える主要な効果は、1つの遮断層中の欠陥がその他のものに広がることを防ぐことであると考えられていた。遮断層と減結合層とを交互にすることによって、1つの層中の欠陥が隔離される傾向が高くなり、次の層に持ち込まれなくなる。これにより、酸素および水蒸気のような汚染物質のより長くねじれた経路が作製される。
【0015】
例えば、米国特許第5,681,666号(Treger)では、無機物質中でのひび割れや欠陥の広がりを回避するために、無機物質層を有機材料で隔てることの重要性が考察されている。Tregerは、無機物質層中のひび割れ、ピンホール、または、その他の欠陥は、隣の無機物質層を、2つの無機物質層間に有機材料層を介在させないで第一の無機物質層上に直接付着させる場合、隣の無機物質層にもたらされる傾向があることを示している。Tregerによれば、間に有機層が設置されないと全ての無機物質層にわたって欠陥が広がることが多いために、この現象は複合材料の防湿遮断層としての有用性を有意に減少させる。
【0016】
有機層に関しても類似の現象が時々起こる。従って、有機層を付着させる際に肉眼で見えるレベルまたは顕微鏡レベルのピンホール、塵粒の封入等が起こる可能性があり、それによって水蒸気が容易に透過する通路が提供される。有機物質層と無機物質層とを交互に付着させることによって、いずれか特定の層中の欠陥が隣の層に広がりにくくなる。それにより、このような欠陥が存在しないかのような最終結果が得られる程度にまで水蒸気が通り抜ける相当に長くねじれた通路が提供される。
【0017】
技術的な観点から、層が薄ければ薄いほど、層が多ければ多いほど、複合材料を通過する水蒸気の透過に対してより高い抵抗がもたらされる。しかしながら、各層を付着させる毎に防湿遮断層のコストが増加する。また層が薄すぎる場合も、層における被覆が不完全なことによる空隙が生じると予想され、それにより複合材料の透過性が高くなると予想される。
【0018】
この考察はまた、“Mechanisms of vapor permeation through multilayer barrier films:Lag time versus equilibrium permeation”,G.L.Graff等,Journal of Applied Physics,第96巻,第4号,1840頁(8/15/2004)(参照により本発明に含める)にも反映されている。Graff等は、単一および多層の蒸気遮断層の透過は、欠陥によって制御されること、さらに、欠陥の大きさと空間密度は、遮断性能を定義する重要なパラメーターであると説明している。欠陥の密度が低い無機物質層とポリマー層とを互いに隔離することによって引き起こされる長い明らかな拡散通路は、ラグタイムを有意に増加させるが、定常状態での流れの減少は、それほど有意でなくなる。このようにして増加したラグタイムは、主として追加の積重ね遮断物が追加される際の遮断性能における改善に関与する。
【0019】
Graff等によれば、ポリマー層の拡散率と溶解性を低くすると、遮断性能が改善され得ることが示唆されている。これは、ポリマーの選択(疎水性部分、または、有機/無機物質のコポリマー)、物理的な改変(例えば、イオン衝撃または架橋)、または、化学修飾(反応性エッチング、または、プラズマ表面処理)によって達成することができる。しかしながら、彼等は、無機物質層の有効な拡散はポリマー層よりも少なくとも4桁のレベルで少ないため、ポリマー層を用いて可能な改善の範囲は無機物質層の改善に比べてわずかな場合があることを示しめしている。
【0020】
遮断物の不良における唯一の要因は、透過性化学種が到達して、直接的にOLEDを劣化させることであるという基礎となる仮説が立てられた。
【0021】
プラズマ処理は、ポリマーの特性を改変できることがわかっている。いくつかの特許では、基板上の多層遮断の特性を改善するためのプラズマ処理の使用を開示している。米国特許第6,083,628号は、特性を改善する手段としての、高分子フィルム基板、および、フラッシュ蒸発プロセスを用いて付着させたアクリラート由来のポリマー層のプラズマ処理を開示している。米国特許第5,440,466号も同様に、特性を改善するための基板およびアクリラート層のプラズマ処理を考察している。一方で、プラズマおよび/または放射線照射によって、場合によってはポリマーの機能特性が劣化することがわかっている。従って、あらゆる利用可能な付着技術によりよく適合する積重ね遮断物のための改善された減結合ポリマー層が必要である。
【0022】
本発明は、環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法を提供することによってこの必要性を満たす。本方法は、基板を用意すること;少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該減結合ポリマー層は、以下のうち少なくとも1つ:極性領域の数が少ないこと;充填密度が高いこと;C−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域の数が少ないこと;エステル部分の数が少ないこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種のMwが大きいこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種の鎖長が長いこと;または、C=C結合の変換が少ないこと;を有する。
【0023】
その他の実施態様において、本方法は、基板を提供すること;少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、を含み、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、炭化水素に結合した反応性官能基を少なくとも1個含む少なくとも1種のポリマー前駆体の反応生成物を含み、ここで、該減結合ポリマー層は、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する。
【0024】
本発明のその他の形態は、カプセル化される環境に敏感なデバイスである。本カプセル化されたディスプレイデバイスは、基板;該基板に隣接する少なくとも1個の環境に敏感なデバイス;および、該環境に敏感なデバイスに隣接する少なくとも1つの積重ね遮断物、を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該ポリマー前駆体の少なくとも1種は、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、該減結合ポリマー層は、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する。
【0025】
図1は、カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様の部分断面である。
【0026】
図2は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【0027】
図3は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの変色および構造を示す写真である。
【0028】
図4は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【0029】
図5は、エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【0030】
図6は、エージング後の様々なポリマー調合物のカルシウム試験を示す写真である。
【0031】
図7は、エージング前後の様々なポリマー調合物のパッシブマトリックスディスプレイを示す写真である。
【0032】
図8は、エージング後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【0033】
図9は、エージング前後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【0034】
図10は、エージング前後のカプセル化された、および、カプセル化されていないデバイスのエレクトロルミネッセンスおよびフォトルミネッセンスを示す写真である。
【0035】
図11は、エージング前後の様々なポリマー調合物の収縮を示す写真である。
【0036】
図12は、付着効率対基板の温度のグラフである。
【0037】
図13は、様々な調合物に関するカプセル化後の、開始時の画素領域を示すグラフである。
【0038】
図14は、様々な調合物に関するポリマー層の収縮をポリマー層の厚さの機能として示すグラフである。
【0039】
図15Aは、パッシブマトリックスデバイスの平面図であり、図15Bおよび15Cは、図15Aのパッシブマトリックスデバイスのライン15B−15Bおよび15C−15Cに沿った断面図である。
【0040】
図16は、図10Fのデバイスに対する機械的な損傷を示す写真である。
【0041】
従来の積重ね遮断物中の減結合層に関する教示によれば、その重要性は、ある層中の欠陥が隣の層に広がらないようにすることに限定されると示唆されている。減結合層は、全体的な遮断性能に重要な作用を与えることができるという認識もなく、また、改善された性能を有する積重ね遮断物を提供するために制御すべき特性に関する考察も全くなかった。加えて、提案されている材料のうちいくつかは、実際には、劣った性能を有する積重ね遮断物、および/または、エレクトロルミネッセンス性能の保持、および、デバイスの外観に適合しない積重ね遮断物が生じる。
【0042】
いくつかの公開された文献、例えばGraffsの“Mechanisms of vapor permeation through multilayer barrier films:Lag time versus equilibrium permeation”は、Ashにより開発された数学モデルを用いて多層の積重ね物にフィックの拡散モデルを適用することによって積重ね遮断物を通過する拡散をモデリングしている。このモデルから得られた全般的な発見、すなわち汚染物質のねじれた通路を形成すれば無機物質層中の欠陥の密度とサイズによって透過が制御されるということは、妥当である。しかしながら、フィックの拡散モデルの仮説は、一般的にポリマー中での拡散には適しておらず、積重ね遮断物の全体的な透過において様々な特徴を有するポリマー層が果たす役割を過小評価してしまう。
【0043】
その上、全体的な遮断性能に対するポリマー安定性の作用が考察されていない。構造的または化学的な変化が全体的な遮断性能に与える作用は認識されていなかった。
【0044】
多層積重ね遮断物をポリマーフィルムのような基板に付着させるために用いられるプロセスが、それに続いて積重ね物に隣接して据え付けられたデバイスに影響を与えるとは考えられていなかった。しかしながら、我々はまた、積重ね遮断物の付着プロセスにプラズマ照射が含まれる場合、デバイスへの悪影響が生じる可能性があることも見出した。
【0045】
我々は、OLEDを据え付けたり、または、付着させたりする前に、減結合ポリマー層を用いた積重ね遮断物を付着させると損傷が起こることを観察した。この損傷は黒色の斑点からなっており、その周囲の領域は発光の減少を示した。理論にとらわれるつもりはないが、我々は、これらの条件下で損傷が存在するということは、プラズマが減結合ポリマー層と相互作用して生じた改変によって反応化学種が生成され、これらが隣接する層を通って移動してデバイスに到達し、デバイスと有害な相互作用を起こすことを示唆すると考えている。
【0046】
我々は、ポリマー層における設計上の不備によって、例えばプラズマによる損傷や収縮によって誘発された応力などの透過性化学種とは無関係な遮断構造の欠陥が生じる可能性があることを見出した。加えて、ポリマー層と1種またはそれより多くの透過種との有害な相互作用によって、欠陥とラグタイムだけが関与する場合に別の方法で観察されるような劣化/欠陥よりも前に、遮断の欠陥、それに続く初期のデバイス劣化/欠陥が生じる可能性がある。
【0047】
ポリマーフィルムの多数の特性が、積重ね遮断物の性能に全体的に有意な作用を有する。これらの特性としては、ポリマーフィルムの形態、ポリマー組成、プラズマによる損傷、および、重合により誘発された機械的応力が挙げられる。これらの特性のうちいくつかは、単量体の組成への変化、同様に加工パラメーターによって影響される可能性がある。
【0048】
ポリマーの形態は、単量体組成、および、ポリマーの硬化の程度の相関関係である。遮断の不良に対するポリマー組成の作用は、単量体組成、層の厚さ、および、硬化の程度に依存する。プラズマによる損傷は、単量体ブレンドの組成、単量体の構造、硬化の程度、および、単量体の純度(例えば、残留したアルコール、アクリル酸/メタクリル酸、環状エーテルの副産物、および、その他の可能性のある副産物など)の相関関係である。重合により誘発された機械的応力は、単量体組成、単量体の分子量、ポリマーのTg、層の厚さ、および、硬化の程度に依存する。
【0049】
この理解によって、積重ね遮断物中のポリマー層を配合するための一連の設計ルールが導かれた。
【0050】
本ポリマー層は、層内における望ましくない透過性化学種に対して低い溶解性を有すると予想される。環境に敏感なディスプレイデバイスにとって最も重要な透過性化学種は、水である。しかしながら、ある種の環境においては、その他の種が重要な場合もある。層中で可溶性の化学種は、平衡な溶液/層の飽和を達成しようとすると予想されるが、これはすなわち、このような化学種が層に入るための駆動力が存在することを意味する。これにより、ポリマー層構造の弱体化および/または再組成が起こり、接着の失敗を引き起こす可能性があり、さらに深刻なケースにおいて、壊滅的な中間層の分離、または、遮断層の損傷を誘発する膨潤(寸法の変化)が生じる可能性もある。
【0051】
本ポリマー層を通過する望ましくない化学種(ここでもほとんどの場合、望ましくない化学種は水と予想される)の拡散率は、低いと予想される。透過性化学種の極性または非極性、透過性化学種のサイズ、ポリマー層の極性または非極性、および、そのコンフォメーション(三次元)、ポリマー層内での鎖の充填密度、H結合などがいずれも関与するが、これはなぜなら、透過性化学種は媒体と相互作用し、それが透過し、その相互作用によって透過速度に影響を与えることができるためである。オープンネットワークを介した非相互作用によって、最高の拡散速度が生じると予想されることは明らかである。従って、防湿遮断となる層にとって優れた選択となるには、ポリマー層がただ疎水性であるというだけでは不十分である。このようなポリマーは、疎水性で、かつ水分子と相互作用しないものでもよいが、鎖の間隔を広くとったオープン構造を有する場合、水は層を通過して移動できるため、ポリマー鎖の部位と何らかの相互作用を起こしたとしても遅くならない可能性がある。水蒸気/水分子の濃度は高くはないが滞留時間は短いと予想されるため、比較的短期間で大量に層を通過して移動する可能性がある。
【0052】
本ポリマー層は、プラズマ照射される際の損傷に対して抵抗を示すと予想される。このような現象を伴う実際の工程には、遮断特性を有する薄く高密度の層が生産される条件を用いた酸化アルミニウムの反応性スパッタリングの間にプラズマ照射することが含まれる。しかしながら、プラズマ照射によるポリマー層への損傷はより一般的な現象と考えられ、表面処理(接着の促進など)のために用いられるプラズマ照射を含む場合もある。
【0053】
最後に、本ポリマー層は、ポリマー層によって隣接する表面に伝達される機械的応力が低いこと(すなわち収縮が少ないこと)を示すと予想される。重大な問題は前駆体ブレンドの硬化中における収縮/縮小であるが、溶媒溶液からのキャスティング(ポリマーは溶媒に溶解しており、この溶媒を蒸発させるとポリマーの層だけが残る)も様々な種類の応力を生じさせる可能性がある。
【0054】
溶解性および拡散率に関して、上記調合物は、極性領域(例えば、エーテル結合)の数が少なくなるように設計されると予想され、それにより得られたフィルムの水への抵抗が改善される。このような調合物から作製されたポリマーフィルムは、水に晒されても構造的な安定性の有意な増加を示す(すなわち、膨潤したり、または、それらの構造的な形態を有意に変化させたりしない)。これらのタイプの材料の例は、飽和炭化水素の主鎖を有するものである。
【0055】
またこのような調合物は、得られたフィルムに高い充填密度も付与し、ポリマーフィルムを通過する水分の移動を減少させるように選択されると予想される。充填密度は、単量体の構造を変化させることによって制御することができる。高い充填密度のためには、分岐を有さない材料が用いられると予想され、加えて、ポリブタジエンジメタクリラートのような最小の分岐を有する材料でもよい。低い充填密度の単量体の一例としては、主鎖上にメチルの分岐を有するものが挙げられる。その他の例としては、ケージ構造の材料、例えばイソボルニルアクリラート/メタクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、および、ノルボルネンベースのポリマーが挙げられる。
【0056】
また充填密度は、系中の架橋部位の数によって制御することもできる。場合によっては、実際にはより高い反応性を有する部位が存在するとポリマーがより速くゲル点に到達すると予想され、それにより反応性を有する部位のさらなる反応や動きを防ぐことができ、従ってそれにより得られたポリマー中に「空隙」が残る可能性がある。三官能価を有する成分を変化させ、そのなかにフレキシブルな成分があれば、その成分がその他のものよりも多く反応すると予想されるため、上述のような作用を示す可能性がある。
【0057】
また充填密度は、硬化に用いられるUV照射線量を変化させることによっても制御することができる。硬化不足のポリマーは、より多く膨潤すると予想される。これらの問題を以下でより詳細に考察する。
【0058】
プラズマによる損傷に関して、調合物は、典型的なC−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域(例えば、エーテル結合、エステル結合、C−S結合)の数が少なくなるように設計されると予想され、それによって、得られたフィルムのプラズマに対する抵抗を改善することができる。単量体主鎖中でこれらの部分を減少させること以外にも、得られたポリマー中のエステル部分の数を限定することも有利である可能性がある。このような材料一例は、ポリブタジエンジメタクリラートである。
【0059】
場合によっては、N/(NC−NO)の比率(式中、Nは、単量体単位中の原子の総数であり、NOは、単量体単位における酸素原子の数を示し、NCは、炭素原子の数である)を最小化することが有利である。この比率は、文献中では大西(Ohnishi)パラメーターと名付けられている。Ghoken等,Dry Etch Resistance of Organic Materials,J.Electrochem.Soc;SOLID−STATE SCIENCE AND TECHNOLOGY 第130巻,第1号,1983年1月,参照により本発明に含める)。
【0060】
ポリマーの収縮に関して、調合物は、減少した硬化により誘発された収縮の応力が示されるように設計されると予想される。1.調合物中の一、二および三官能価を有する成分におけるMwおよび/または鎖長を高めること。2.反応性オリゴマー、ポリマー、または、高いMwの非反応性ポリマーを溶媒系中に加えて用いること。3.所定のタイプのアクリラート/メタクリラート材料の添加によってポリマーフィルムにおける充填密度を減少させること。例えば、以下が挙げられる:長い鎖長の一官能性のアクリラート/メタクリラート、例えばラウリルアクリラート、および、ステアリルアクリラート;ケージまたは環構造のアクリラート/メタクリラート、例えばイソボルニルアクリラート/メタクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、および、反応性を有する高度に分岐した材料(例えば、反応性を有する高度に分岐したアクリラート)。4.反応部位の妨害によって収縮が減少するようにC=Cの変換を減少させること、または、論理上または実質的に起こり得る程度よりも低い程度に系を硬化させること。5.硬化による収縮を減少させるようなその他の化学物質の使用。例えば、連鎖成長メカニズムとは対照的な段階的な成長を遂げるチオール−エン型の化学物質;ノルボルネン、および、ノルボルネン−チオール型の化学物質;および、エポキシベースの化学物質が挙げられる。
【0061】
約15体積%より大きい収縮を伴う材料は回避されると予想される。望ましくは、このような材料は、ポリマー層が約1,000〜約10,000Åの範囲の厚さを有する場合、多層の積重ね物のためには、約15体積%未満、約10体積%未満、または、約5体積%未満の嵩の収縮を示すと予想される。
【0062】
これらの設計ルールの使用は、デバイスと用途に依存する。例えばある種のタイプのデバイス構造において、収縮は問題にならない場合もあるが、OLEDの材料/構造は、ポリマー層へのプラズマによる損傷によって生じた生成物に極めて高い感受性を示す可能性がある。このような場合において、より優れたプラズマによる損傷に抵抗を示す材料を用いること、および、収縮と同じように焦点を合わせないことに重点が置かれると予想される。その他の場合において、デバイスは水に対して感受性を示さない場合が多いが、収縮とプラズマによる損傷に対して感受性を示す可能性があるため、これらの問題を解決しようとする材料が選択されると予想される。
【0063】
また積重ね物は、様々なデバイスの問題を解決しようとする複数のタイプの調合物を用いて構築してもよい。例えば、デバイス近傍のポリマー層は、デバイス構造を保護するために極めて少ない収縮を示すが水分抵抗は弱いものであってもよく、同時に、積重ね遮断物中のそれ以外のポリマー層は、より大きい収縮を示すが優れた水分抵抗を示すものであってもよい。
【0064】
これらの設計ルールを説明する例は以下の通りである。全てではないがほとんどの例は、真空蒸発によってアクリラートおよびメタクリラートを化学的に付着させることに関するが、この設計ルールによれば、その他のタイプのポリマーを用いた化学物質が使用できることが示される。真空蒸発プロセスで用いることができるその他のポリマーを用いた化学物質の例としては、これらに限定されないが:ウレタン;カチオン性ポリマー;アクリラートオリゴマー;チオール−エン系(段階的な成長による重合メカニズム);チオール−アクリラート系(段階的な成長による重合メカニズム);および、エポキシド(開環)単量体/オリゴマーが挙げられる。米国特許第6,506,461号は、ポリマー前駆体として用いることができるウレタンと様々な反応性基とのフラッシュ蒸発および重合を説明している。米国特許第6,498,595号は、カチオン重合によるアプローチ、および、ポリマー前駆体として用いることができる様々な反応性基を説明している。
【0065】
代替の付着技術を用いてポリマー層を形成することができ、その例としては、これらに限定されないが、インクジェット、スクリーン印刷、スピンコーティング、ブレードコーティングなどが挙げられる。真空蒸発プロセスに適合しない可能性がある化学物質も、代替の付着技術によって使用可能にすることができる。これらのポリマーを用いた化学物質の例としては、これらに限定されないが:アクリラートおよびメタクリラートオリゴマーベースの系;大きい分子量のミスマッチを有するアクリラート単量体、例えば、イソボルニルアクリラート、および、エトキシ化された(3)トリメチロールプロパントリアクリラート;アクリラートオリゴマー、例えばポリブタジエンジアクリラート;チオール−エン系(段階的な成長による重合メカニズム);チオール−アクリラート系(段階的な成長による重合メカニズム);溶媒に溶解させたポリマー、例えばイソボルニルベースのポリマー、ポリブタジエンなど;および、エポキシド(開環)単量体/オリゴマーが挙げられる。
【0066】
ポリマーの選択において考慮すべき要因の一つは、ポリマーフィルムの形態である。これは、サンプルをエージングさせ、フィルムを形態の変化、変色および/またはポリマー層を含む多層積重ね物を通過する透過光のスペクトルシフト(これは、ポリマー層における構造変化の指標である)に関して観察して評価することができる。これらの変化は、積重ね遮断物の性能に対する数種の負の作用を示す可能性がある。構造変化は、薄い遮断層(例えば、100nm未満の遮断層)の無傷な状態に損傷を与える可能性がある。またこれらの変化は、層間の接着を減少させる可能性もある。加えてこれらの変化は、積重ね遮断物の光学特性を変更する可能性もある(例えば、それにより最大透過および最小透過にシフトを引き起こす可能性がある)。これは、光が遮断層通過して放出されるような用途(例えば、フレキシブル基板上のカプセル化された上面発光型または下面発光型デバイス)において特に重要であると予想される。
【0067】
実施例1
アクリラート単量体の様々なブレンドを用いてポリマーフィルムを作製した。表1に、その配合を示す。トリプロピレングリコールジアクリラートを用いて作製したポリマー層は、例えば、“Plasma treatment of PET and acrylic coating surfaces−I.In−situ XPS measurements”,Shi等,J.Adhesion Sci.Technol.,第14巻,第12号,1485〜1498頁(2000)(参照により本発明に含める)で説明されている。調合物1(トリプロピレングリコールジアクリラートを包含する)は、その他の調合物との比較のベースとして用いられた。
【0068】
【表1】
【0069】
400時間、60℃および90%RH後、様々な調合物間での目視できる変化も観察することができた。調合物1は、変色(図3A)、および、表面の形態(図3B)を示したが、調合物2は示さなかった(図3Cおよび3D)。
【0070】
図4Aは、100時間、60℃および90%RHでエージングした後の調合物1で作製された積重ね物表面の画像(倍率50倍)を示し、図4Bは、さらに150時間エージングした後の画像を示す。図4Cは、倍率200倍での図4Bの一部であり、それによれば、ポリマー層内の様々な面に隆起が形成されたことが示される。後半に水分が拡散することによって生じたより深いポリマー層中での隆起の形成により、ポリマーと酸化物層との間の接着が失われたり、および/または、酸化物層中に欠陥が導入されたりする可能性がある。
【0071】
スペクトルシフトとは、200時間より長く、60℃で、90%RHでエージングした後の、多層積重ね物を通過する透過光に関する干渉スペクトルの最大ピーク位置における5nmより大きい変化である。図5Aで示されるように、最大のスペクトルシフト(約20nm)は、調合物6を用いた場合に起こった。調合物6は、エステルジオールジアクリラート(SR606A,サートマー社(Sartomer Co.Inc.,エクストン,ペンシルベニア州)より入手可能)を含む。図5Bで示されるように、調合物3は、スペクトルシフトを示さなかった。
【0072】
図5Cおよび5Dは、400時間エージングした後の調合物1および2に関するスペクトルシフトを示す。調合物1は、15nmのスペクトルシフトを示し、一方で調合物2は、スペクトルシフトを示さなかった。
【0073】
硬化条件は、ポリマーの形態に影響を与える可能性がある。表で説明されているようにポリマーフィルムを様々な照射線量を用いて硬化し、300時間より長く、60℃、および、90%RHでエージングした。表2に結果を示す。
【0074】
【表2】
これらの結果から、硬化が完全になればなるほど、調合物に関係なくスペクトルシフトは小さくなることが実証される。加えて、あらゆる硬化レベルにおいて調合物間に差がみられる。調合物1は、あらゆる硬化レベルで調合物2よりも高いスペクトルシフトを示す。調合物1の主要な成分は、トリプロピレングリコールジアクリラートであり、これは、主鎖に調合物を親水性ポリマーにする2個のエーテル結合、加えて2個のメチル基を有する。この親水性ポリマーは水分と反応する。それに対して、調合物2の主要な成分は、メチル基を有さず、調合物を疎水性ポリマーにする脂肪族炭化水素(エーテル結合なし)である。このような疎水性ポリマーは水分と反応しない。
【0075】
ポリマーの選択において考慮すべきその他の要因は、ポリマーがの不良の一因となる可能性がある様々なメカニズムに対する組成の影響である。の不良を検出することができる方法の一つは、多層の積重ね遮断物でカプセル化されたガラス上で金属カルシウムの切り取り試片を腐食させることによる方法である。遮断を通過して水分が透過することによって透明な酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムが形成されると、フィルムを通過する可視光の透過が増加する。
【0076】
実施例2
多層遮断物でカプセル化されたガラス基板上のCa切り取り試片の透過における変化は、遮断構造の有効性を試験する優れた手段である。図6A〜Cに示される実施例において、酸化物層(厚さ100nm)、および、6対のポリマー/酸化物対[ポリマー(0.5μm)/酸化物(40nm)]による多層構造を構成した。カプセル化されたCa切り取り試片を、400時間、60℃、90%RHでエージングした。図6Aによれば、調合物4(5.5×1020n/mlのエーテル結合)は透過の増加を示さないことがわかり、従って遮断物の不良はない。図6Bによれば、調合物1(3.6×1021n/mlのエーテル結合)は、カルシウム領域の端部において透過の増加を示すことがわかる。図6Cにおいて、カルシウム領域全体がフェージングし、調合物5(3.2×1021n/mlのエーテル結合)の場合は極端な遮断物の不良を示す。図6Dは、酸化物層(厚さ100nm)、および、わずか3対のポリマー/酸化物対[ポリマー(0.7μm)/酸化物(40nm)]によって構成された多層構造を有するCa切り取り試片を示す。このようなポリマー層は、表1に記載の調合物7を用いて作製された。この調合物はポリブタジエンジメタクリラート(PBDM)をベースとしており、スピン・オン・コーティングによって付着させた。サンプルを、500時間、60℃、90%RHでエージングした。図6Dによれば、調合物7(0n/mlのエーテル結合)は、透過の増加を示さないことがわかり、従って遮断物の不良はない。
【0077】
遮断物の不良により、OLEDディスプレイの劣化が起こる。ディスプレイ上に大きい非放出領域が出現する。図7Aは、エージング前のパッシブマトリックスディスプレイを示す。図7Bは、650時間、60℃、90%RH後の調合物1を用いたディスプレイを示す。図7Cは、650時間、60℃、90%RH後の調合物2を用いたディスプレイを示す。調合物2は、調合物1よりも少ない劣化を示した。
【0078】
ポリマーの選択において考慮すべきその他の要因は、プラズマによるポリマー層への損傷である。
【0079】
プラズマによる損傷を評価する方法の一つは、予めプラズマ照射した積重ね遮断物に、UV/オゾンを照射することである。図8Aは、調合物1で作製された積重ね遮断物(3.6×1021n/mlのエーテル結合;4.7の大西パラメーター)にUV/オゾンを15分間照射した後に激しい泡立ちを示したが、一方で、図8Bで示されるように、調合物2で作製された積重ね遮断物(0n/mlのエーテル結合;3.6の大西パラメーター)ではたった2個の気泡しかなかった。図8Cおよび8Dによれば、PBDMをベースとする調合物7で作製された積重ね遮断物(0n/mlのエーテル結合;2.6の大西パラメーター)の場合、上述の同じ条件でUV/オゾン照射した後でも気泡は出現しなかったことがわかる。この場合において、ポリマー層はスピン・オンプロセスで付着させた。
【0080】
またプラズマによる損傷は、OLED試験用画素を用いて評価することもできる。黒色の斑点は顕微鏡で見えるレベルの非放出領域であるが、これらはプラズマによる損傷によって生産された反応化学種の拡散によって形成される。
【0081】
実施例3
OLEDの試験用画素上に様々なポリマー調合物を用いて積重ね遮断物を形成した。これらサンプルを500時間貯蔵し、水分への曝露を回避するために乾燥ボックス中で試験した。24時間にわたり差を目視で観察した。
【0082】
図9Aは、コーティング後の調合物1(3.6×1021n/mlのエーテル結合;4.7の大西パラメーター)を示し、図9Bは、貯蔵後の黒色の斑点の出現を示す。図9Cは、コーティング後の調合物4(5.×1020のエーテル結合;4.2の大西パラメーター)を示したが、図9Dによれば、貯蔵後に黒色の斑点が出現しなかったことがわかる。
【0083】
減結合ポリマー層は、1種またはそれより多くの反応性前駆体のブレンドから形成することができる。これらは、結合/架橋反応を受ける単位(分子)1つあたり1種またはそれより多くの反応性基を有すると予想される。ブレンドの全構成要素によって生じる反応性基は同じであってもよく(例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびビニル)、これらはそれ自身が反応するか、および/または、付加反応を受けて鎖(例えば、ポリメタクリル酸メチル、または、ポリ酢酸ビニル)を形成する。このアプローチの特色は、一官能価の前駆体(すなわち1個の反応性基を有する前駆体)は、付加によって伸び切り鎖を形成すると予想されるが、鎖と分岐との間の架橋は少数か皆無と予想されることである。また反応性基も様々であってもよく(ヒドロキシと混合されたイソシアネート、アミノと混合されたイソシアネート、または、アミノと混合されたエポキシ)、これらが共に反応して前駆体間で架橋を形成する。ここでの特色は、ポリマーの形成には、それぞれの反応物化学種が少なくとも2個の官能基を有することが必要である点である;一官能価の形態はいずれも、ブロック/連鎖停止剤として作用すると予想される。
【0084】
前駆体ブレンドの選択における考察は、前駆体の官能基または基以外の構造である。1種またはそれより多くの前駆体が、全体的に直鎖状または環状の炭化水素であることが好ましい。これらはさらに、飽和の特徴を示す場合もあり、例えば、官能基を有する直鎖状ドデカンまたはトリシクロデカンである。ここで飽和とは、このような炭化水素が二重または三重結合をまったく含まないことを意味する。あるいは、これらは、1個またはそれより多くの二重(または三重)結合を含む不飽和の形態であってもよく、例えば官能基を有するポリブタジエンであり、または、これらは芳香族をベースとするものでもよく、例えば官能基を有するジフェニルメタンである。さらに炭化水素は、側鎖、および、ペンダント、活性化メチル基が限定的に存在することを特徴とする。最後に、架橋が一官能価の前駆体の付加反応に基づく場合、炭化水素の構造について考察する必要があり、なぜなら、これらは、鎖が並行して間隔を有するペンダント部分になると予想され、その間隔が過剰に大きい場合はオープンの(鎖間の間隔が広い)ポリマー層が生じる可能性があるためである。
【0085】
前駆体ブレンドの選択におけるその他の考察は、実質的には、反応性基が結合している構造として、または、より大きい構造のうち炭化水素を含み得る部分として、ポリエーテル(炭素−酸素−炭素結合、例えば、ポリエチレングリコール、および、ポリプロピレングリコール)に基づく構造、または、それを含む構造を回避することである。後者の形態は、一般的に、親の炭化水素のエトキシ化またはプロポキシル化された形態と呼ばれる。“Plasma treatment of PET and acrylic coating surfaces−I.In−situ XPS measurements”,Shi等,J.Adhesion Sci.Technol.,第14巻,第12号,1485〜1498頁(2000)(参照により本発明に含める)において、PET(芳香族構造)およびアクリル系ポリマーへの窒素およびアルゴンプラズマ照射により誘発された構造的な改変および組成の改変が、接着を改善するための処理に関して考察されている。ポリマーと、芳香族構造(PET)およびトリプロピレングリコールジアクリラート(調合物1の主成分)との比較によれば、後者のポリマーに関して構造変化がどれだけ強く放射線照射の際のエーテルおよびエステル基の破壊と強く相関しているかが示される。また、エステル基と比較してより高いエーテル基の破壊速度も考察される。PETおよびアクリル系ポリマーにおけるエステル基の破壊を比較すると、後者がより速いことから、エーテル基が損傷をどれだけ促進するかの仮説を立てることができる。この実験データおよび類似の実験データは文献で広く利用されているが、我々の知見に対して、それらと遮断構造に捕獲された形成されたラジカル副産物(例えば、COやCO2)の分解によってカプセル化されたOLEDデバイス中で起こり得る損傷とを、未だ誰も相関させていない。
【0086】
ポリマーの選択において考慮すべきさらにその他の要因は、重合により誘発された機械的応力である。所定のタイプのOLEDデバイスを用いた場合、単量体を硬化する間に共有結合の形成によって起こる収縮により、機械的および/または構造的な損傷が生じる可能性がある。これは、パッシブマトリックスOLEDデバイスのフォトルミネッセンスの研究において実証されている。
【0087】
発光ポリマーは、光(フォトルミネッセンス(PL))、または、電気(エレクトロルミネッセンス(EL))で刺激されると光を放出する。ELによって光を放出する構造は、OLEDデバイスの基礎的な土台である。所定のOLEDデバイスのPL画像とEL画像を比較することによって、ポリマーのどの領域が劣化して、電気的な接触を失ったものに対して、それらに光を放出させる特徴を失っているのかが示される。
【0088】
図10A〜10Cは、高度な収縮を発生させるプロセスおよび材料(調合物1)でカプセル化されたデバイスのEL、PLおよびEL+PL画像を示す。図15A〜Cに、パッシブマトリックス(PM)デバイスの略図を示す。ガラス基板205は、酸化インジウムスズ(ITO)210の層で覆われる。ITO層210をデバイスの部分から除去する。ITO層210の上に、ポリマーの発光ダイオード/ポリエチレンジオキシチオフェン(PLED/PDOT)層215がある。アルミニウム陰極層220は、PLED/PDOT層215より上にある。アルミニウム陰極層220を分離するために、陰極のセパレーター225がある。
【0089】
このようなサンプルは、カプセル化後、または、試験前に水分に晒さなかった(コーティング前の移送の間に水分への暴露を行った)。いわゆる「黒色の斑点」(接触部が反応化学種(大部分が水、酸素、または、酸素を含むその他の化学種、例えばCO2)との化学反応によって変質した局所的な領域)がコーティング前に存在するが、これは、移送中の水分への曝露によって生じたものである。EL発光の画像10Aによれば、電流で刺激すると、ほぼ四角形の画素の薄い中央領域だけが光を放出していることがわかる。薄いストリップに、移送中に形成された黒色の斑点を付着させる。図10Bは、同じ領域のPL画像を示す。この写真では、画素の全領域から光が放出されている。画素領域の全面に渡って、「黒色の斑点」を形成する化学的に変質した接触域に相当する比較的明るい斑点がはっきりとわかる。図10Cは、2種同時の刺激(電流および光)を与えた際に撮られた画像であり、様々な特徴の比較をより簡単にする。
【0090】
図10Dは、寿命末期(EOL)における、金属で密封したデバイスの均一な劣化のPL画像を示す。この劣化は、発光ポリマーの効率が損失したためである。
【0091】
図10E〜10Hは、カプセル化されていないデバイスを示す。このデバイスを意図的に周囲大気に晒し、化学的損傷を生じさせ、その損傷を短い時間尺度で測定した(図10Eは、t=0、図10Fは、t=5分、および、図10Gおよび10Hは、t=10分)。Al陰極の端部における比較的明るい縦方向のバンドが時間が経つにつれて広がっていることから判断すると、図10A〜Cにおける黒色の斑点で観察された作用と同様に、染み込んだ大気によって生産された接触域の化学的な変質の作用を観察することが可能である。図10Bおよび10Fを比較すると、調合物1でコーティングされた画素における変質は、純粋な化学的性質に基づくものではないことも明白である。陰極への機械的な損傷の証拠を、図16AおよびBにおいて一例として示した観察のようなデバイスの顕微鏡観察によって集めた。陰極のたわみ/割れを示すラインが肉眼で観察できるが、これはこの画素からなるEL画像における発光領域と暗い領域との間の境界線を定めている。その他の原因を排除することができないが、我々は、これによれば、ポリマー(これは、近傍の陰極のセパレーターより有意に厚い)の収縮は、陰極とOLEDデバイスとの間の接触部を機械的に減少させることが示され、それによって、その領域を流れ得る電流を制限すると考える。
【0092】
ポリマーの収縮、および、その結果として、OLEDデバイスの陰極上で誘発された応力は硬化条件とポリマー層の厚さに応じて様々であり、これらは、調合物のバルクの材料特性と互いに関係がある。図13にこれを示すが、ここでは、同一なPM OLEDデバイスの発光した画素の領域が報告されている。このディスプレイを、同じ多層構造(100nmの酸化物/6対のポリマー/酸化物対(0.5μmのポリマー/40nmの酸化物)で、ポリマー層を硬化するために同じUV条件(30%のUV設定(30mW/cm2、30cm/分のトラック速度)(H−タイプのバルブを有する融合システムの10インチの照射器))を用いてカプセル化した。一組のディスプレイを調合物2でコーティングし、その他の組を、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を、同じ量のより高い反応性を有するトリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートに変更した調合物2の改変型でコーティングした。カプセル化の直後とあらゆるエージング試験の前に、発光した画素の領域が15%減少した(コーティング前に測定した値に関しては、図13の1.0mW/cm2の同等の照射線量、トラック速度におけるデータポイントを参照)。
【0093】
ポリマーの収縮により誘発された応力は、収縮が減少するように単量体単位の変換を減少させるために適切な硬化条件を選択することによって制御される場合がある。図13に、これを調合物2でコーティングされたディスプレイに関して示す。コーティング直後に測定された画素の標準化した発光領域は、条件30%のUV設定(30mW/cm2、30cm/分トラック速度)で硬化した場合は1に近く、60%のUV設定(100mW/cm2、75cm/分のトラック速度)で硬化した場合は約0.85であり、90%のUV設定(200mW/cm2、75cm/分のトラック速度)で硬化した場合は0.8であった。全てのディスプレイについて、多層構造は、100nmの酸化物/6対のポリマー/酸化物対(0.5μmのポリマー/40nmの酸化物)であった。硬化を減少させることによって応力を制御する場合、水分透過を増加させる逆効果について考察すべきである。図13に示す場合において、比較的低いUV照射線量であったとしても、変換は、通信用ディスプレイに一般的に必要とされる試験プロトコール(500時間、60℃、および、90%RH)に適合する遮断性能を維持するのに十分であった。
【0094】
単量体の重合により誘発された応力はまた、その構造中で用いられるポリマー層の厚さにも依存する。図14にこれを示すが、ここで、85℃で250時間エージングした後の収縮は、多層構造で用いられるポリマーの厚さの関数として示される。調合物2でカプセル化されたディスプレイ(バルクの収縮は13.8)、および、厚さ1μm未満のポリマー層について、残留した発光領域は、最初の値の約70%であった。ポリマーの厚さを1層あたり2.2μmに増加させた場合(この場合において、多層構造で用いられたポリマー層は4つのみであった)、残留した発光領域は40%に減少した。比較のために、調合物1(バルクの収縮は16.0)でコーティングされたディスプレイ(その他全ての変数は一定のまま)に関して残留した領域も示した。この場合において、発光領域は、厚さ0.5μmのポリマー層でわずか35% であった。
【0095】
OLEDデバイスの多層カプセル化で用いられるポリマー層により誘発された応力は、より高温を用いるその後の加工工程によって、または、加速試験の条件または操作でエージングする間に増加しないと予想される。このような状況において、高温とは、80℃<T<100℃と定義され、条件はOLEDデバイス製造に用いられる材料に適合するものである。例えば、応力は、多層カプセル化で用いられる調合物のTgが85℃(加速寿命試験に用いられる典型的な温度)よりも低い場合、より高い温度で増加する可能性がある。Tgよりも高い、またはそれに近い温度では、完全に硬化していない調合物の鎖の移動性が高いために、さらなる変換反応が起こる可能性がある。結果として、誘発された応力は増加するため、発光領域は減少する可能性がある。
【0096】
図11Aおよび11Bは、コーティング後の調合物1を示す。不均一な光の分布が肉眼で観察することができる。図11Bは、窒素中で85℃で100時間エージングした後の実質的な収縮を示す。図11Cおよび11Dは、コーティング後の調合物2を示す。図11Dによれば、調合物2は、調合物1と比べて、85℃で100時間エージングした後に収縮を有意に減少させたことが示される。このサンプルは窒素中でエージングしたために、収縮は、水分によるものではない。収縮における大きい差は、ポリマーの連続的な反応によるものである。調合物1を85℃でエージングした場合、調合物1はポリマーのTg(62℃)に近くなる。ポリマーは連続的に架橋を起こし、結果としてより多くの収縮が生じる。調合物2(Tgは107℃)を用いたところ、ある程度の反応は起こったが、調合物1の反応量のほぼ半分であった。
【0097】
ポリマー層は、真空プロセスや大気中でのプロセスなどの様々なアプローチを用いて付着させることができる。真空ベースのアプローチは、水分、酸素およびその他の環境の汚染物質を実質的に含まない環境中でプロセスを行うという利点を提供し、都合のよい形態としては、同様の理由で用いられるOLED付着のための真空ベースのアプローチと組み合わせた形態である。大気中でのプロセスは、大気圧での付着を含むが、このプロセスは、周囲大気ではなく非反応性の無水ガス(または混合ガス)を用いることもできる。
【0098】
真空ベースのアプローチは、米国特許第4,842,893号、4,954,371号、および、5,032,461号で開示されており、これらは、具体的にはアクリラート官能基を有する前駆体ブレンドの適用に適している。このアプローチは、前駆体の付着ステーション(アクリラートブレンドを供給するため)、その下流に組み合わされた付着させたブレンドを硬化するための硬化ステーション、および、基板(その上で付着させたブレンドを縮合する)の熱の制御(冷却)が可能な中央の加工ドラムを利用する。付着ステーション、および、硬化単位は、無機物質層(例えば金属、酸化物、窒化物、またはその他の様々な無機化合物のいずれか)が付着するように設計されたステーションに隣接して設置される。このような無機物質層は、熱蒸発、スパッタリング、またはその他の適切なプロセスを用いて付着させることができる。このようなプロセスは、その上に積層する無機物質層を付着させる前にアクリラートブレンドを付着させ硬化すること、または、無機物質層を付着し、それに続いてアクリラート層を付着させ硬化することを可能にする。一対の複数の前駆体の付着ステーションおよび硬化ステーション、および、無機物質の付着ステーションを用いれば、ワンパスでの多層積重ね物を可能にする。教示されているように、このアプローチは、真空環境中でウェブ基板(ロール型で供給された基板)上にアクリラート官能基を有するブレンドを付着させることによく適している。このアプローチは、UVまたはEB照射で硬化されたアクリラート官能基を有する前駆体ブレンド用に詳細に開発されているが、その他の化学物質にも適用可能である。米国特許第6,498,595号は、カチオン重合アプローチ、および、前駆体としてのアクリラートに加えて反応性基の使用を説明している。
【0099】
前駆体付着ステーションのすぐ下流に硬化ステーションを必要としない、類似の立体配置および中央の加工ドラムを用いたアプローチがある。アプローチの一つの群は、前駆体ブレンドのプラズマ重合、付着と同時に前駆体ブレンドにプラズマ照射するプロセスに基づき、この照射によってブレンドは高度に反応性になり、従ってそれらが付着されると同時に重合される。米国特許第5,902,641号、および、6,224,948号は、フラッシュ蒸発させた前駆体ブレンドのプラズマ重合を教示する。米国特許第4,301,765号は、前駆体ブレンドのフラッシュ蒸発に頼らないプラズマ重合用に設計された装置を開示しており、さらに、付着をどこに起こすかの制御を可能にするマスキング手段を提供する。これら3種はいずれも、それに続いて無機物質層をその上に付着すること(インラインの付着)を可能にするために、輸送ロールと接触させるために、または、問題の層(重合後の)が、ウェブ基板に塗布された多層積重ね物の最終的な一番上の層となる場合は、下層に存在する層または層を保護するために重要である可能性がある前駆体ブレンドの付着および硬化を起こす。その他のアプローチが、米国特許第6,506,461号で開示されており、ここでは、ウレタンを形成するための、イソシアネート(複数の−NCO)およびポリオール官能基を有する基(複数の−OH基)、さらに、二重の硬化アプローチを可能にするイソシアネート官能基とアクリラート官能基との組み合わせを含む前駆体ブレンドのフラッシュ蒸発および重合が教示されている。
【0100】
別個のシート状の基板上への真空蒸着、具体的にはこれらのシートも硬質である場合の真空蒸着は、代替的アプローチを必要とする。2003年4月11日付けで出願された米国出願番号10/412,133、名称“Apparatus for Depositing a Multilayer Coating on Discrete Sheets”(VIT−0018PA)、および、2005年4月22日付けで出願された11/112,880号、名称“Apparatus for Depositing a Multilayer Coating on Discrete Sheets”(VIT−0018IA)は、クラスター状および直鎖状の構成要素を組み合わせた直線型およびハイブリッド型の装置を用いた真空ベースのアプローチを開示している。これらのプロセスの重要な特徴は、中央の加工ドラムが、シート基板を輸送し位置を定めるための運搬手段および/またはロボット式アームで交換されていることである。中央の加工ドラムと、それを容易にする加工温度の制御(熱の管理)が無いことは、重要な考察となる。
【0101】
別個のシートのコーティングは、連続的なウェブをコーティングするためには用いられない条件を必要とする。第一に、別個のシートのコーティングは、コーティングチャンバーへの前駆体フィードの複数の開始および停止を必要とする開始/停止プロセスである。また、運搬装置も必要であり、さらにコーティングの塗布が望ましい領域へのコーティングの付着を制限するためのマスキング装置も必要なことが多い。結果として、温度制御された加工ドラムと接触させてウェブを設置することによってウェブをコーティング処理するのと同じように、コーティングしようとする基板をうまく吸熱器またはその他の熱を調節する器具と接触させて設置することができない。従って、別個のシート基板上での縮合は、連続的なウェブ上よりも高い温度で起こり、それに続くコーティングの連続的な付着によって、一般的には基板の温度上昇が起こる。
【0102】
連続的なウェブではなく別個のシートのコーティングによって、付着効率の重要性を認識するに至った。付着効率は、所定の一連の条件下で行われる基板上での前駆体(単量体)ブレンドの縮合速度を特徴付けるものであり、縮合速度の程度は、条件の変更に応じて様々であると予想される。付着効率は以下の式によって決定される:
【0103】
【数1】
ポリマー層の厚さを測定した(カリフォルニア州サンタクララのn&kテクノロジー社(n&k Technology,Inc.)より入手可能なn&kアナライザー1512RT反射率計を用い、測定はオングストローム単位とした)。温度の関数として効率曲線を作成するのに用いられた各サンプルにおいて、加工チャンバーを通過する別個のシートの速度、および、単量体の流速を測定し、測定した基板温度における付着効率を計算した。
【0104】
単量体を付着させる前に、この基板をUV硬化源の上を通過させて予備加熱した。基板の温度を、基板として用いられるガラスプレート上の付着表面に取り付けた熱電対で測定した。付着中の基板の温度は、熱電対が単量体のスリット上を通過した際のプロファイルにおける工程の一番低い温度とした。
【0105】
付着させるポリマーの厚さは、基板の温度、および、基板表面上の単量体の流れによって最も大きく変化する。基板の温度が高くなると、付着させる厚さは減少する。これは、付着係数の減少、および、再蒸発の速度の増加に起因すると考えられる。エバポレーターへの単量体のフローが増加すると、表面上での単量体の蒸気圧は増加し、それにより基板に作用する流れが増加する。
【0106】
表3において、図12で示されるように調合物2(類似しているが同一ではない設計の3種のツールを用いて付着させる)に関する温度の関数として付着効率を評価した。付着効率は、基板の温度の減少に伴って増加することがわかった。従って、付着効率を改善する方法の一つは、基板の温度を低くすることである。
【0107】
付着効率は、別個のシート上への蒸気の縮合を含むプロセス(例えば真空フラッシュ蒸発プロセス)にとって重要である。そのため、別個のシート上に蒸気を縮合するプロセスを用いてポリマー層を付着させる場合に、前駆体ブレンドを選択する際にさらなる考察を必要とする。
【0108】
前駆体ブレンドの付着効率は、部分的にブレンドの平均分子量に依存する。前駆体ブレンドは、一般的に、少なくとも約275、または、少なくとも約300、または、約275〜約350、または、約275〜約325の平均分子量を有すると予想される。(本明細書で用いられる平均分子量は、重量平均分子量を意味する)。それより低い平均分子量を有するブレンドを用いることができるが、このようなブレンドで作製された減結合ポリマー層は、1種またはそれより多くの望ましくない特徴を有する可能性がある。
【0109】
前駆体ブレンドは、少なくとも約250、または、少なくとも約275、または、少なくとも約300、または、少なくとも約325、または、少なくとも約350、または、少なくとも約375、または、少なくとも約400の付着効率を有する可能性がある。付着効率は、ブレンドの成分の分子量と、程度は低いが揮発性に影響を与える構造的な考察との相関関係である。少なくとも約250の付着効率を有する前駆体ブレンドを選択すれば、開始時の前駆体ブレンドの化学量論を有する減結合ポリマー層が提供され、前駆体ブレンドが縮合して、利用可能なカプセル化装置を用いて得られるプロセス条件によって液状のコーティングが形成されると予想される。
【0110】
より低い付着効率で実施し、機能性ポリマーの減結合層を得ることが可能である。しかしながら、減結合ポリマー層は、1またはそれより多くの望ましくない特徴を有する可能性がある。しかしながら、減結合ポリマー層のその他の特性が特に望ましい場合、このようなブレンドの使用を決定してもよい。あまり効率的ではないブレンドを適応させるために、全体的なプロセスパラメーター、例えば速度、コーティングステーションでの停滞時間、および、クリーニングの必要条件を調節すれば、妥協点が見出されると予想される。
【0111】
前駆体ブレンドを適切に選択することによって、必要な特性を有するカプセル化された環境に敏感なデバイスを得ることができる。
【0112】
実施例4
表3に示される配合に従って減結合ポリマー層を作製した。前駆体ブレンドの付着効率を測定し、平均分子量を計算した。
【0113】
【表3】
調合物1は、316の平均分子量、370の付着効率を有しており、これは、少ない収縮とプラズマによる損傷に対する抵抗を示した。TMPTAは、炭化水素の主鎖をベースとする望ましい三官能価を有するアクリラートであるが、硬化の間に収縮が生じることがわかっている低分子物質である。それゆえに、これは低いレベルで用いられると予想される。
【0114】
調合物2は、300の平均分子量、209の付着効率を有しており、これは薄膜用途に十分に用いることができるが、(少なくとも数種のタイプのOLEDと共に)カプセル化に用いたところ望ましくない収縮、および、プラズマによる損傷を示した。これは、極性主鎖を有する前駆体を避けて、より高いMwを有することが望ましいことを示す。
【0115】
調合物3は、類似の分子量を有する化合物のTPGDAの代わりにポリ環状炭化水素の主鎖を有するジアクリラートの使用を示す。その前駆体ブレンドは、類似の付着効率を有していた(232に対して209)。この調合物によれば、極性主鎖を有する前駆体の代わりに、環状またはポリ環状炭化水素の主鎖を有する前駆体を用いれば、得られた平均分子量が類似している場合、類似の付着効率を有するブレンドが提供できることが示される。
【0116】
調合物4は、HDODA(より低い分子量の炭化水素の主鎖を有するジアクリラート)をベースとする。減結合ポリマー層はプラズマによる損傷に対して抵抗を示したが、そのより低い平均分子量に対応して付着効率は不十分だった。さらに遮断性能も不十分だった。トリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートを用いると収縮が減少したが、これを使用したことによって水の透湿性を高める極性エチレンオキシド単位の導入も生じた。これは、極性主鎖を有する前駆体を避けることが望ましいことを示す。
【0117】
調合物5は、トリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートをベースとし、338の付着効率、413の平均分子量を有する。これは、付着効率とより高い分子量を有する前駆体ブレンドとの間の関係に対する見識を得るために導入した。これは、光開始剤と組み合わされた実質的に単一の単量体であるが、これは、高い平均分子量が、かなり高い分子量の前駆体を含むがより低い分子量の前駆体が主成分のブレンドに起因するような状況を直接扱うものではないため、その他の調合物との理想的な比較対象ではない。しかしながら、いずれの差も有意とは考えられない。
【0118】
少ない収縮、および、プラズマによる損傷に対して十分な抵抗を示すカプセル化のための適切なポリマー前駆体ブレンドの例としては、約60〜約90重量%のジメタクリラートが挙げられ、例えば、典型的には約65〜約75重量%のドデカンジオールジメタクリラートである。さらに、0〜約20重量%のモノアクリラートも挙げられ、例えば典型的には約10〜約20重量%のラウリルアクリラートである。さらに、0〜約20重量%のトリアクリラートも挙げられ、例えば、典型的には約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラートである。また、約1〜約10重量%の光開始剤も挙げられ、典型的には約1〜約3重量%の光開始剤である。適切な光開始剤は当業者には既知であり、例えば、これらに限定されないが、サートマー(Sartomer)より入手可能なジエトキシアセトフェノン(DEAP)、または、イサキュア(Esacure)TZT(トリメチルベンゾフェノンベースの光開始剤)が挙げられる。
【0119】
本発明を説明するために所定の代表的な実施態様および詳細を示したが、当業者であれば当然ながら、添付の請求項で定義される本発明の範囲から逸脱することなく本明細書において開示された様々な組成や方法の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様の部分断面である。
【図2】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【図3】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの変色および構造を示す写真である。
【図4】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【図5A】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5B】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5C】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5D】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図6】エージング後の様々なポリマー調合物のカルシウム試験を示す写真である。
【図7】エージング前後の様々なポリマー調合物のパッシブマトリックスディスプレイを示す写真である。
【図8】エージング後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【図9】エージング前後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【図10】エージング前後のカプセル化された、および、カプセル化されていないデバイスのエレクトロルミネッセンスおよびフォトルミネッセンスを示す写真である。
【図11】エージング前後の様々なポリマー調合物の収縮を示す写真である。
【図12】付着効率対基板の温度のグラフである。
【図13】様々な調合物に関するカプセル化後の、開始時の画素領域を示すグラフである。
【図14】様々な調合物に関するポリマー層の収縮をポリマー層の厚さの機能として示すグラフである。
【図15】図15Aは、パッシブマトリックスデバイスの平面図であり、図15Bおよび15Cは、図15Aのパッシブマトリックスデバイスのライン15B−15Bおよび15C−15Cに沿った断面図である。
【図16】図10Fのデバイスに対する機械的な損傷を示す写真である。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、概して、カプセル化されたデバイスに関し、より具体的にはカプセル化のための遮断物、および、前記遮断物のための層を作製する方法に関する。
【0002】
多くのデバイスは、大気中の酸素や大気水蒸気のような環境のガスもしくは液体、または、電子製品の加工で用いられる化学物質の透過によって引き起こされる劣化の影響を受けやすい。劣化を予防するために、デバイスをカプセル化することが多い。
【0003】
様々なタイプのカプセル化されたデバイスが知られている。例えば、2001年7月31日に発行された米国特許第6,268,695号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”;2003年2月18日に発行された6,522,067号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”;および、2003年5月27日に発行された6,570,325号、名称“Environmental Barrier Material For Organic Light Emitting Device And method of Making”(これらはいずれも参照により本発明に含める)は、カプセル化された有機発光デバイス(OLED)を説明している。2003年6月3日に発行された米国特許第6,573,652号、名称“Encapsulated Display Devices”(参照により本発明に含める)は、カプセル化された液晶ディスプレイ(LCD)、発光ダイオード(LED)、発光ポリマー(LEP)、電気泳動インクを用いた電子標識、エレクトロルミネセンスデバイス(ED)、および、リン光デバイスを説明している。2003年4月15日に発行された米国特許第6,548,912号、名称“Semiconductor Passivation Using Barrier Coatings”(参照により本発明に含める)は、カプセル化された超小型電子デバイス、例えば集積回路、電荷結合素子、発光ダイオード、発光ポリマー、有機発光デバイス、金属センサーパッド、マイクロディスクレーザー、エレクトロクロミック素子、フォトクロミック素子、超小型電子機械式システム、および、太陽電池を説明している。
【0004】
カプセル化されたデバイスを作製する方法の1つは、積重ね遮断物をデバイスの片側または両側に隣接させて付着させることに関する。このような積重ね遮断物は、典型的には、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合層を含む。1つの減結合層、および、1つの遮断層が存在してもよく、1またはそれより多くの遮断層の片側に複数の減結合層が存在してもよく、または、1またはそれより多くの遮断層の両側に1またはそれより多くの減結合層が存在してもよい。重要な特徴は、積重ね遮断物が、少なくとも1つの減結合層、および、少なくとも1つの遮断層を有することである。
【0005】
図1に、カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様を示す。カプセル化されたディスプレイデバイス100は、基板105、ディスプレイデバイス110、および、積重ね遮断物115を含む。積重ね遮断物115は、遮断層120、および、減結合層125を含む。積重ね遮断物115がディスプレイデバイス110をカプセル化して、環境の酸素および水蒸気によってディスプレイデバイスが劣化するのを予防する。
【0006】
積重ね遮断物における遮断層および減結合層は、同じ材料で作製してもよいし、または、異なる材料で作製してもよい。遮断層は、典型的には、約100〜1,000Åの厚さを有し、減結合層は、典型的には、約1,000〜10,000Åの厚さを有する。
【0007】
図1にはたった1つの積重ね遮断物しか示されていないが、積重ね遮断物の数は限定されない。必要な積重ね遮断物の数は、具体的な用途に応じて必要とされる水蒸気および酸素の透過抵抗のレベルに依存する。1または2つの積重ね遮断物によって多くの用途において十分な遮断特性が付与されると予想されるが、3または4つの積重ね遮断物がほとんどの用途において十分と考えられる。最も過酷な用途では、5またはそれより多くの積重ね遮断物を必要とすることもある。それ以外の複数の積重ね遮断物が必要とされる可能性がある状況とは、例えばパッシブマトリックスデバイスを用いた場合のようにポリマーの収縮により誘発された応力を制限するために減結合層の厚さを制限する必要があるような場合である。
【0008】
遮断層は、真空プロセス、例えばスパッタリング、化学蒸着法、プラズマエンハンスト化学蒸着法、蒸発、昇華、電子サイクロトロン共鳴−プラズマエンハンスト蒸着(ECR−PECVD)、および、それらの組み合わせを用いて付着させることができる。
【0009】
適切な遮断材料としては、これらに限定されないが、金属、金属酸化物、金属窒化物、金属炭化物、金属酸窒化物、金属酸炭化物、および、それらの組み合わせが挙げられる。
【0010】
我々は、カプセル化されるデバイスのいくつかが、遮断層および/または減結合層を付着させる際に用いられるプラズマによって損傷を受けたことを見出した。OLEDのような環境に敏感なデバイスを上に載せた基板を多層積重ね遮断物でカプセル化し、プラズマベースの、および/または、プラズマによって促進されるプロセスを用いて遮断層または減結合層を付着させるような場合に、プラズマによる損傷が発生した。例えば、遮断特性を達成するのに適した条件下でAlOxの遮断層を反応性スパッタリングする場合、環境に敏感なデバイスの上面にAlOxの遮断層をスパッタリングする場合、および/または、真空蒸着させたアクリラートベースのポリマー層にAlOxの遮断層をスパッタリングする場合にプラズマによる損傷が発生した。
【0011】
プラズマによる損傷は、カプセル化によって得られたデバイスの電気的および/または発光に関する特徴への悪影響に関与する。このような作用は、デバイスのタイプ、デバイスの製造元、および、放出された光の波長によって様々であると予想される。重要なことは、プラズマによる損傷は、カプセル化しようとするデバイスの設計に依存するということに留意することである。例えば、ある製造元によって作製されたOLEDは、プラズマによる損傷をわずかしか示さないか皆無であるが、その他の製造元によって作製されたOLEDは、同じ付着条件下でも有意なプラズマによる損傷を示す。これは、デバイス内にそのプラズマ照射への感受性に影響を与える特徴があることを示す。
【0012】
プラズマによる損傷を検出するための方法の1つは、デバイスのI−V−Lの特徴の変化を観察することである。
【0013】
減結合層は、真空プロセス、例えば真空中でのその場重合を用いたフラッシュ蒸発、または、プラズマ蒸着および重合、または、大気中でのプロセス、例えばスピンコーティング、インクジェット印刷、スクリーン印刷または噴霧を用いて付着させることができる。米国特許第4,842,893号、4,954,371号、および、5,032,461号(これらは、参照により本発明に含める)は、フラッシュ蒸発および重合の方法を説明している。減結合層に適した材料としては、これらに限定されないが、有機ポリマー、無機ポリマー、有機金属ポリマー、ハイブリッド有機/無機ポリマー系、および、ケイ酸塩が挙げられる。
【0014】
減結合層が積重ね遮断物の遮断性能へ与える主要な効果は、1つの遮断層中の欠陥がその他のものに広がることを防ぐことであると考えられていた。遮断層と減結合層とを交互にすることによって、1つの層中の欠陥が隔離される傾向が高くなり、次の層に持ち込まれなくなる。これにより、酸素および水蒸気のような汚染物質のより長くねじれた経路が作製される。
【0015】
例えば、米国特許第5,681,666号(Treger)では、無機物質中でのひび割れや欠陥の広がりを回避するために、無機物質層を有機材料で隔てることの重要性が考察されている。Tregerは、無機物質層中のひび割れ、ピンホール、または、その他の欠陥は、隣の無機物質層を、2つの無機物質層間に有機材料層を介在させないで第一の無機物質層上に直接付着させる場合、隣の無機物質層にもたらされる傾向があることを示している。Tregerによれば、間に有機層が設置されないと全ての無機物質層にわたって欠陥が広がることが多いために、この現象は複合材料の防湿遮断層としての有用性を有意に減少させる。
【0016】
有機層に関しても類似の現象が時々起こる。従って、有機層を付着させる際に肉眼で見えるレベルまたは顕微鏡レベルのピンホール、塵粒の封入等が起こる可能性があり、それによって水蒸気が容易に透過する通路が提供される。有機物質層と無機物質層とを交互に付着させることによって、いずれか特定の層中の欠陥が隣の層に広がりにくくなる。それにより、このような欠陥が存在しないかのような最終結果が得られる程度にまで水蒸気が通り抜ける相当に長くねじれた通路が提供される。
【0017】
技術的な観点から、層が薄ければ薄いほど、層が多ければ多いほど、複合材料を通過する水蒸気の透過に対してより高い抵抗がもたらされる。しかしながら、各層を付着させる毎に防湿遮断層のコストが増加する。また層が薄すぎる場合も、層における被覆が不完全なことによる空隙が生じると予想され、それにより複合材料の透過性が高くなると予想される。
【0018】
この考察はまた、“Mechanisms of vapor permeation through multilayer barrier films:Lag time versus equilibrium permeation”,G.L.Graff等,Journal of Applied Physics,第96巻,第4号,1840頁(8/15/2004)(参照により本発明に含める)にも反映されている。Graff等は、単一および多層の蒸気遮断層の透過は、欠陥によって制御されること、さらに、欠陥の大きさと空間密度は、遮断性能を定義する重要なパラメーターであると説明している。欠陥の密度が低い無機物質層とポリマー層とを互いに隔離することによって引き起こされる長い明らかな拡散通路は、ラグタイムを有意に増加させるが、定常状態での流れの減少は、それほど有意でなくなる。このようにして増加したラグタイムは、主として追加の積重ね遮断物が追加される際の遮断性能における改善に関与する。
【0019】
Graff等によれば、ポリマー層の拡散率と溶解性を低くすると、遮断性能が改善され得ることが示唆されている。これは、ポリマーの選択(疎水性部分、または、有機/無機物質のコポリマー)、物理的な改変(例えば、イオン衝撃または架橋)、または、化学修飾(反応性エッチング、または、プラズマ表面処理)によって達成することができる。しかしながら、彼等は、無機物質層の有効な拡散はポリマー層よりも少なくとも4桁のレベルで少ないため、ポリマー層を用いて可能な改善の範囲は無機物質層の改善に比べてわずかな場合があることを示しめしている。
【0020】
遮断物の不良における唯一の要因は、透過性化学種が到達して、直接的にOLEDを劣化させることであるという基礎となる仮説が立てられた。
【0021】
プラズマ処理は、ポリマーの特性を改変できることがわかっている。いくつかの特許では、基板上の多層遮断の特性を改善するためのプラズマ処理の使用を開示している。米国特許第6,083,628号は、特性を改善する手段としての、高分子フィルム基板、および、フラッシュ蒸発プロセスを用いて付着させたアクリラート由来のポリマー層のプラズマ処理を開示している。米国特許第5,440,466号も同様に、特性を改善するための基板およびアクリラート層のプラズマ処理を考察している。一方で、プラズマおよび/または放射線照射によって、場合によってはポリマーの機能特性が劣化することがわかっている。従って、あらゆる利用可能な付着技術によりよく適合する積重ね遮断物のための改善された減結合ポリマー層が必要である。
【0022】
本発明は、環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法を提供することによってこの必要性を満たす。本方法は、基板を用意すること;少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該減結合ポリマー層は、以下のうち少なくとも1つ:極性領域の数が少ないこと;充填密度が高いこと;C−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域の数が少ないこと;エステル部分の数が少ないこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種のMwが大きいこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種の鎖長が長いこと;または、C=C結合の変換が少ないこと;を有する。
【0023】
その他の実施態様において、本方法は、基板を提供すること;少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、を含み、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、炭化水素に結合した反応性官能基を少なくとも1個含む少なくとも1種のポリマー前駆体の反応生成物を含み、ここで、該減結合ポリマー層は、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する。
【0024】
本発明のその他の形態は、カプセル化される環境に敏感なデバイスである。本カプセル化されたディスプレイデバイスは、基板;該基板に隣接する少なくとも1個の環境に敏感なデバイス;および、該環境に敏感なデバイスに隣接する少なくとも1つの積重ね遮断物、を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該ポリマー前駆体の少なくとも1種は、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、該減結合ポリマー層は、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する。
【0025】
図1は、カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様の部分断面である。
【0026】
図2は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【0027】
図3は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの変色および構造を示す写真である。
【0028】
図4は、エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【0029】
図5は、エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【0030】
図6は、エージング後の様々なポリマー調合物のカルシウム試験を示す写真である。
【0031】
図7は、エージング前後の様々なポリマー調合物のパッシブマトリックスディスプレイを示す写真である。
【0032】
図8は、エージング後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【0033】
図9は、エージング前後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【0034】
図10は、エージング前後のカプセル化された、および、カプセル化されていないデバイスのエレクトロルミネッセンスおよびフォトルミネッセンスを示す写真である。
【0035】
図11は、エージング前後の様々なポリマー調合物の収縮を示す写真である。
【0036】
図12は、付着効率対基板の温度のグラフである。
【0037】
図13は、様々な調合物に関するカプセル化後の、開始時の画素領域を示すグラフである。
【0038】
図14は、様々な調合物に関するポリマー層の収縮をポリマー層の厚さの機能として示すグラフである。
【0039】
図15Aは、パッシブマトリックスデバイスの平面図であり、図15Bおよび15Cは、図15Aのパッシブマトリックスデバイスのライン15B−15Bおよび15C−15Cに沿った断面図である。
【0040】
図16は、図10Fのデバイスに対する機械的な損傷を示す写真である。
【0041】
従来の積重ね遮断物中の減結合層に関する教示によれば、その重要性は、ある層中の欠陥が隣の層に広がらないようにすることに限定されると示唆されている。減結合層は、全体的な遮断性能に重要な作用を与えることができるという認識もなく、また、改善された性能を有する積重ね遮断物を提供するために制御すべき特性に関する考察も全くなかった。加えて、提案されている材料のうちいくつかは、実際には、劣った性能を有する積重ね遮断物、および/または、エレクトロルミネッセンス性能の保持、および、デバイスの外観に適合しない積重ね遮断物が生じる。
【0042】
いくつかの公開された文献、例えばGraffsの“Mechanisms of vapor permeation through multilayer barrier films:Lag time versus equilibrium permeation”は、Ashにより開発された数学モデルを用いて多層の積重ね物にフィックの拡散モデルを適用することによって積重ね遮断物を通過する拡散をモデリングしている。このモデルから得られた全般的な発見、すなわち汚染物質のねじれた通路を形成すれば無機物質層中の欠陥の密度とサイズによって透過が制御されるということは、妥当である。しかしながら、フィックの拡散モデルの仮説は、一般的にポリマー中での拡散には適しておらず、積重ね遮断物の全体的な透過において様々な特徴を有するポリマー層が果たす役割を過小評価してしまう。
【0043】
その上、全体的な遮断性能に対するポリマー安定性の作用が考察されていない。構造的または化学的な変化が全体的な遮断性能に与える作用は認識されていなかった。
【0044】
多層積重ね遮断物をポリマーフィルムのような基板に付着させるために用いられるプロセスが、それに続いて積重ね物に隣接して据え付けられたデバイスに影響を与えるとは考えられていなかった。しかしながら、我々はまた、積重ね遮断物の付着プロセスにプラズマ照射が含まれる場合、デバイスへの悪影響が生じる可能性があることも見出した。
【0045】
我々は、OLEDを据え付けたり、または、付着させたりする前に、減結合ポリマー層を用いた積重ね遮断物を付着させると損傷が起こることを観察した。この損傷は黒色の斑点からなっており、その周囲の領域は発光の減少を示した。理論にとらわれるつもりはないが、我々は、これらの条件下で損傷が存在するということは、プラズマが減結合ポリマー層と相互作用して生じた改変によって反応化学種が生成され、これらが隣接する層を通って移動してデバイスに到達し、デバイスと有害な相互作用を起こすことを示唆すると考えている。
【0046】
我々は、ポリマー層における設計上の不備によって、例えばプラズマによる損傷や収縮によって誘発された応力などの透過性化学種とは無関係な遮断構造の欠陥が生じる可能性があることを見出した。加えて、ポリマー層と1種またはそれより多くの透過種との有害な相互作用によって、欠陥とラグタイムだけが関与する場合に別の方法で観察されるような劣化/欠陥よりも前に、遮断の欠陥、それに続く初期のデバイス劣化/欠陥が生じる可能性がある。
【0047】
ポリマーフィルムの多数の特性が、積重ね遮断物の性能に全体的に有意な作用を有する。これらの特性としては、ポリマーフィルムの形態、ポリマー組成、プラズマによる損傷、および、重合により誘発された機械的応力が挙げられる。これらの特性のうちいくつかは、単量体の組成への変化、同様に加工パラメーターによって影響される可能性がある。
【0048】
ポリマーの形態は、単量体組成、および、ポリマーの硬化の程度の相関関係である。遮断の不良に対するポリマー組成の作用は、単量体組成、層の厚さ、および、硬化の程度に依存する。プラズマによる損傷は、単量体ブレンドの組成、単量体の構造、硬化の程度、および、単量体の純度(例えば、残留したアルコール、アクリル酸/メタクリル酸、環状エーテルの副産物、および、その他の可能性のある副産物など)の相関関係である。重合により誘発された機械的応力は、単量体組成、単量体の分子量、ポリマーのTg、層の厚さ、および、硬化の程度に依存する。
【0049】
この理解によって、積重ね遮断物中のポリマー層を配合するための一連の設計ルールが導かれた。
【0050】
本ポリマー層は、層内における望ましくない透過性化学種に対して低い溶解性を有すると予想される。環境に敏感なディスプレイデバイスにとって最も重要な透過性化学種は、水である。しかしながら、ある種の環境においては、その他の種が重要な場合もある。層中で可溶性の化学種は、平衡な溶液/層の飽和を達成しようとすると予想されるが、これはすなわち、このような化学種が層に入るための駆動力が存在することを意味する。これにより、ポリマー層構造の弱体化および/または再組成が起こり、接着の失敗を引き起こす可能性があり、さらに深刻なケースにおいて、壊滅的な中間層の分離、または、遮断層の損傷を誘発する膨潤(寸法の変化)が生じる可能性もある。
【0051】
本ポリマー層を通過する望ましくない化学種(ここでもほとんどの場合、望ましくない化学種は水と予想される)の拡散率は、低いと予想される。透過性化学種の極性または非極性、透過性化学種のサイズ、ポリマー層の極性または非極性、および、そのコンフォメーション(三次元)、ポリマー層内での鎖の充填密度、H結合などがいずれも関与するが、これはなぜなら、透過性化学種は媒体と相互作用し、それが透過し、その相互作用によって透過速度に影響を与えることができるためである。オープンネットワークを介した非相互作用によって、最高の拡散速度が生じると予想されることは明らかである。従って、防湿遮断となる層にとって優れた選択となるには、ポリマー層がただ疎水性であるというだけでは不十分である。このようなポリマーは、疎水性で、かつ水分子と相互作用しないものでもよいが、鎖の間隔を広くとったオープン構造を有する場合、水は層を通過して移動できるため、ポリマー鎖の部位と何らかの相互作用を起こしたとしても遅くならない可能性がある。水蒸気/水分子の濃度は高くはないが滞留時間は短いと予想されるため、比較的短期間で大量に層を通過して移動する可能性がある。
【0052】
本ポリマー層は、プラズマ照射される際の損傷に対して抵抗を示すと予想される。このような現象を伴う実際の工程には、遮断特性を有する薄く高密度の層が生産される条件を用いた酸化アルミニウムの反応性スパッタリングの間にプラズマ照射することが含まれる。しかしながら、プラズマ照射によるポリマー層への損傷はより一般的な現象と考えられ、表面処理(接着の促進など)のために用いられるプラズマ照射を含む場合もある。
【0053】
最後に、本ポリマー層は、ポリマー層によって隣接する表面に伝達される機械的応力が低いこと(すなわち収縮が少ないこと)を示すと予想される。重大な問題は前駆体ブレンドの硬化中における収縮/縮小であるが、溶媒溶液からのキャスティング(ポリマーは溶媒に溶解しており、この溶媒を蒸発させるとポリマーの層だけが残る)も様々な種類の応力を生じさせる可能性がある。
【0054】
溶解性および拡散率に関して、上記調合物は、極性領域(例えば、エーテル結合)の数が少なくなるように設計されると予想され、それにより得られたフィルムの水への抵抗が改善される。このような調合物から作製されたポリマーフィルムは、水に晒されても構造的な安定性の有意な増加を示す(すなわち、膨潤したり、または、それらの構造的な形態を有意に変化させたりしない)。これらのタイプの材料の例は、飽和炭化水素の主鎖を有するものである。
【0055】
またこのような調合物は、得られたフィルムに高い充填密度も付与し、ポリマーフィルムを通過する水分の移動を減少させるように選択されると予想される。充填密度は、単量体の構造を変化させることによって制御することができる。高い充填密度のためには、分岐を有さない材料が用いられると予想され、加えて、ポリブタジエンジメタクリラートのような最小の分岐を有する材料でもよい。低い充填密度の単量体の一例としては、主鎖上にメチルの分岐を有するものが挙げられる。その他の例としては、ケージ構造の材料、例えばイソボルニルアクリラート/メタクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、および、ノルボルネンベースのポリマーが挙げられる。
【0056】
また充填密度は、系中の架橋部位の数によって制御することもできる。場合によっては、実際にはより高い反応性を有する部位が存在するとポリマーがより速くゲル点に到達すると予想され、それにより反応性を有する部位のさらなる反応や動きを防ぐことができ、従ってそれにより得られたポリマー中に「空隙」が残る可能性がある。三官能価を有する成分を変化させ、そのなかにフレキシブルな成分があれば、その成分がその他のものよりも多く反応すると予想されるため、上述のような作用を示す可能性がある。
【0057】
また充填密度は、硬化に用いられるUV照射線量を変化させることによっても制御することができる。硬化不足のポリマーは、より多く膨潤すると予想される。これらの問題を以下でより詳細に考察する。
【0058】
プラズマによる損傷に関して、調合物は、典型的なC−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域(例えば、エーテル結合、エステル結合、C−S結合)の数が少なくなるように設計されると予想され、それによって、得られたフィルムのプラズマに対する抵抗を改善することができる。単量体主鎖中でこれらの部分を減少させること以外にも、得られたポリマー中のエステル部分の数を限定することも有利である可能性がある。このような材料一例は、ポリブタジエンジメタクリラートである。
【0059】
場合によっては、N/(NC−NO)の比率(式中、Nは、単量体単位中の原子の総数であり、NOは、単量体単位における酸素原子の数を示し、NCは、炭素原子の数である)を最小化することが有利である。この比率は、文献中では大西(Ohnishi)パラメーターと名付けられている。Ghoken等,Dry Etch Resistance of Organic Materials,J.Electrochem.Soc;SOLID−STATE SCIENCE AND TECHNOLOGY 第130巻,第1号,1983年1月,参照により本発明に含める)。
【0060】
ポリマーの収縮に関して、調合物は、減少した硬化により誘発された収縮の応力が示されるように設計されると予想される。1.調合物中の一、二および三官能価を有する成分におけるMwおよび/または鎖長を高めること。2.反応性オリゴマー、ポリマー、または、高いMwの非反応性ポリマーを溶媒系中に加えて用いること。3.所定のタイプのアクリラート/メタクリラート材料の添加によってポリマーフィルムにおける充填密度を減少させること。例えば、以下が挙げられる:長い鎖長の一官能性のアクリラート/メタクリラート、例えばラウリルアクリラート、および、ステアリルアクリラート;ケージまたは環構造のアクリラート/メタクリラート、例えばイソボルニルアクリラート/メタクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、トリシクロデカンジメタノールジアクリラート、および、反応性を有する高度に分岐した材料(例えば、反応性を有する高度に分岐したアクリラート)。4.反応部位の妨害によって収縮が減少するようにC=Cの変換を減少させること、または、論理上または実質的に起こり得る程度よりも低い程度に系を硬化させること。5.硬化による収縮を減少させるようなその他の化学物質の使用。例えば、連鎖成長メカニズムとは対照的な段階的な成長を遂げるチオール−エン型の化学物質;ノルボルネン、および、ノルボルネン−チオール型の化学物質;および、エポキシベースの化学物質が挙げられる。
【0061】
約15体積%より大きい収縮を伴う材料は回避されると予想される。望ましくは、このような材料は、ポリマー層が約1,000〜約10,000Åの範囲の厚さを有する場合、多層の積重ね物のためには、約15体積%未満、約10体積%未満、または、約5体積%未満の嵩の収縮を示すと予想される。
【0062】
これらの設計ルールの使用は、デバイスと用途に依存する。例えばある種のタイプのデバイス構造において、収縮は問題にならない場合もあるが、OLEDの材料/構造は、ポリマー層へのプラズマによる損傷によって生じた生成物に極めて高い感受性を示す可能性がある。このような場合において、より優れたプラズマによる損傷に抵抗を示す材料を用いること、および、収縮と同じように焦点を合わせないことに重点が置かれると予想される。その他の場合において、デバイスは水に対して感受性を示さない場合が多いが、収縮とプラズマによる損傷に対して感受性を示す可能性があるため、これらの問題を解決しようとする材料が選択されると予想される。
【0063】
また積重ね物は、様々なデバイスの問題を解決しようとする複数のタイプの調合物を用いて構築してもよい。例えば、デバイス近傍のポリマー層は、デバイス構造を保護するために極めて少ない収縮を示すが水分抵抗は弱いものであってもよく、同時に、積重ね遮断物中のそれ以外のポリマー層は、より大きい収縮を示すが優れた水分抵抗を示すものであってもよい。
【0064】
これらの設計ルールを説明する例は以下の通りである。全てではないがほとんどの例は、真空蒸発によってアクリラートおよびメタクリラートを化学的に付着させることに関するが、この設計ルールによれば、その他のタイプのポリマーを用いた化学物質が使用できることが示される。真空蒸発プロセスで用いることができるその他のポリマーを用いた化学物質の例としては、これらに限定されないが:ウレタン;カチオン性ポリマー;アクリラートオリゴマー;チオール−エン系(段階的な成長による重合メカニズム);チオール−アクリラート系(段階的な成長による重合メカニズム);および、エポキシド(開環)単量体/オリゴマーが挙げられる。米国特許第6,506,461号は、ポリマー前駆体として用いることができるウレタンと様々な反応性基とのフラッシュ蒸発および重合を説明している。米国特許第6,498,595号は、カチオン重合によるアプローチ、および、ポリマー前駆体として用いることができる様々な反応性基を説明している。
【0065】
代替の付着技術を用いてポリマー層を形成することができ、その例としては、これらに限定されないが、インクジェット、スクリーン印刷、スピンコーティング、ブレードコーティングなどが挙げられる。真空蒸発プロセスに適合しない可能性がある化学物質も、代替の付着技術によって使用可能にすることができる。これらのポリマーを用いた化学物質の例としては、これらに限定されないが:アクリラートおよびメタクリラートオリゴマーベースの系;大きい分子量のミスマッチを有するアクリラート単量体、例えば、イソボルニルアクリラート、および、エトキシ化された(3)トリメチロールプロパントリアクリラート;アクリラートオリゴマー、例えばポリブタジエンジアクリラート;チオール−エン系(段階的な成長による重合メカニズム);チオール−アクリラート系(段階的な成長による重合メカニズム);溶媒に溶解させたポリマー、例えばイソボルニルベースのポリマー、ポリブタジエンなど;および、エポキシド(開環)単量体/オリゴマーが挙げられる。
【0066】
ポリマーの選択において考慮すべき要因の一つは、ポリマーフィルムの形態である。これは、サンプルをエージングさせ、フィルムを形態の変化、変色および/またはポリマー層を含む多層積重ね物を通過する透過光のスペクトルシフト(これは、ポリマー層における構造変化の指標である)に関して観察して評価することができる。これらの変化は、積重ね遮断物の性能に対する数種の負の作用を示す可能性がある。構造変化は、薄い遮断層(例えば、100nm未満の遮断層)の無傷な状態に損傷を与える可能性がある。またこれらの変化は、層間の接着を減少させる可能性もある。加えてこれらの変化は、積重ね遮断物の光学特性を変更する可能性もある(例えば、それにより最大透過および最小透過にシフトを引き起こす可能性がある)。これは、光が遮断層通過して放出されるような用途(例えば、フレキシブル基板上のカプセル化された上面発光型または下面発光型デバイス)において特に重要であると予想される。
【0067】
実施例1
アクリラート単量体の様々なブレンドを用いてポリマーフィルムを作製した。表1に、その配合を示す。トリプロピレングリコールジアクリラートを用いて作製したポリマー層は、例えば、“Plasma treatment of PET and acrylic coating surfaces−I.In−situ XPS measurements”,Shi等,J.Adhesion Sci.Technol.,第14巻,第12号,1485〜1498頁(2000)(参照により本発明に含める)で説明されている。調合物1(トリプロピレングリコールジアクリラートを包含する)は、その他の調合物との比較のベースとして用いられた。
【0068】
【表1】
【0069】
400時間、60℃および90%RH後、様々な調合物間での目視できる変化も観察することができた。調合物1は、変色(図3A)、および、表面の形態(図3B)を示したが、調合物2は示さなかった(図3Cおよび3D)。
【0070】
図4Aは、100時間、60℃および90%RHでエージングした後の調合物1で作製された積重ね物表面の画像(倍率50倍)を示し、図4Bは、さらに150時間エージングした後の画像を示す。図4Cは、倍率200倍での図4Bの一部であり、それによれば、ポリマー層内の様々な面に隆起が形成されたことが示される。後半に水分が拡散することによって生じたより深いポリマー層中での隆起の形成により、ポリマーと酸化物層との間の接着が失われたり、および/または、酸化物層中に欠陥が導入されたりする可能性がある。
【0071】
スペクトルシフトとは、200時間より長く、60℃で、90%RHでエージングした後の、多層積重ね物を通過する透過光に関する干渉スペクトルの最大ピーク位置における5nmより大きい変化である。図5Aで示されるように、最大のスペクトルシフト(約20nm)は、調合物6を用いた場合に起こった。調合物6は、エステルジオールジアクリラート(SR606A,サートマー社(Sartomer Co.Inc.,エクストン,ペンシルベニア州)より入手可能)を含む。図5Bで示されるように、調合物3は、スペクトルシフトを示さなかった。
【0072】
図5Cおよび5Dは、400時間エージングした後の調合物1および2に関するスペクトルシフトを示す。調合物1は、15nmのスペクトルシフトを示し、一方で調合物2は、スペクトルシフトを示さなかった。
【0073】
硬化条件は、ポリマーの形態に影響を与える可能性がある。表で説明されているようにポリマーフィルムを様々な照射線量を用いて硬化し、300時間より長く、60℃、および、90%RHでエージングした。表2に結果を示す。
【0074】
【表2】
これらの結果から、硬化が完全になればなるほど、調合物に関係なくスペクトルシフトは小さくなることが実証される。加えて、あらゆる硬化レベルにおいて調合物間に差がみられる。調合物1は、あらゆる硬化レベルで調合物2よりも高いスペクトルシフトを示す。調合物1の主要な成分は、トリプロピレングリコールジアクリラートであり、これは、主鎖に調合物を親水性ポリマーにする2個のエーテル結合、加えて2個のメチル基を有する。この親水性ポリマーは水分と反応する。それに対して、調合物2の主要な成分は、メチル基を有さず、調合物を疎水性ポリマーにする脂肪族炭化水素(エーテル結合なし)である。このような疎水性ポリマーは水分と反応しない。
【0075】
ポリマーの選択において考慮すべきその他の要因は、ポリマーがの不良の一因となる可能性がある様々なメカニズムに対する組成の影響である。の不良を検出することができる方法の一つは、多層の積重ね遮断物でカプセル化されたガラス上で金属カルシウムの切り取り試片を腐食させることによる方法である。遮断を通過して水分が透過することによって透明な酸化カルシウムおよび水酸化カルシウムが形成されると、フィルムを通過する可視光の透過が増加する。
【0076】
実施例2
多層遮断物でカプセル化されたガラス基板上のCa切り取り試片の透過における変化は、遮断構造の有効性を試験する優れた手段である。図6A〜Cに示される実施例において、酸化物層(厚さ100nm)、および、6対のポリマー/酸化物対[ポリマー(0.5μm)/酸化物(40nm)]による多層構造を構成した。カプセル化されたCa切り取り試片を、400時間、60℃、90%RHでエージングした。図6Aによれば、調合物4(5.5×1020n/mlのエーテル結合)は透過の増加を示さないことがわかり、従って遮断物の不良はない。図6Bによれば、調合物1(3.6×1021n/mlのエーテル結合)は、カルシウム領域の端部において透過の増加を示すことがわかる。図6Cにおいて、カルシウム領域全体がフェージングし、調合物5(3.2×1021n/mlのエーテル結合)の場合は極端な遮断物の不良を示す。図6Dは、酸化物層(厚さ100nm)、および、わずか3対のポリマー/酸化物対[ポリマー(0.7μm)/酸化物(40nm)]によって構成された多層構造を有するCa切り取り試片を示す。このようなポリマー層は、表1に記載の調合物7を用いて作製された。この調合物はポリブタジエンジメタクリラート(PBDM)をベースとしており、スピン・オン・コーティングによって付着させた。サンプルを、500時間、60℃、90%RHでエージングした。図6Dによれば、調合物7(0n/mlのエーテル結合)は、透過の増加を示さないことがわかり、従って遮断物の不良はない。
【0077】
遮断物の不良により、OLEDディスプレイの劣化が起こる。ディスプレイ上に大きい非放出領域が出現する。図7Aは、エージング前のパッシブマトリックスディスプレイを示す。図7Bは、650時間、60℃、90%RH後の調合物1を用いたディスプレイを示す。図7Cは、650時間、60℃、90%RH後の調合物2を用いたディスプレイを示す。調合物2は、調合物1よりも少ない劣化を示した。
【0078】
ポリマーの選択において考慮すべきその他の要因は、プラズマによるポリマー層への損傷である。
【0079】
プラズマによる損傷を評価する方法の一つは、予めプラズマ照射した積重ね遮断物に、UV/オゾンを照射することである。図8Aは、調合物1で作製された積重ね遮断物(3.6×1021n/mlのエーテル結合;4.7の大西パラメーター)にUV/オゾンを15分間照射した後に激しい泡立ちを示したが、一方で、図8Bで示されるように、調合物2で作製された積重ね遮断物(0n/mlのエーテル結合;3.6の大西パラメーター)ではたった2個の気泡しかなかった。図8Cおよび8Dによれば、PBDMをベースとする調合物7で作製された積重ね遮断物(0n/mlのエーテル結合;2.6の大西パラメーター)の場合、上述の同じ条件でUV/オゾン照射した後でも気泡は出現しなかったことがわかる。この場合において、ポリマー層はスピン・オンプロセスで付着させた。
【0080】
またプラズマによる損傷は、OLED試験用画素を用いて評価することもできる。黒色の斑点は顕微鏡で見えるレベルの非放出領域であるが、これらはプラズマによる損傷によって生産された反応化学種の拡散によって形成される。
【0081】
実施例3
OLEDの試験用画素上に様々なポリマー調合物を用いて積重ね遮断物を形成した。これらサンプルを500時間貯蔵し、水分への曝露を回避するために乾燥ボックス中で試験した。24時間にわたり差を目視で観察した。
【0082】
図9Aは、コーティング後の調合物1(3.6×1021n/mlのエーテル結合;4.7の大西パラメーター)を示し、図9Bは、貯蔵後の黒色の斑点の出現を示す。図9Cは、コーティング後の調合物4(5.×1020のエーテル結合;4.2の大西パラメーター)を示したが、図9Dによれば、貯蔵後に黒色の斑点が出現しなかったことがわかる。
【0083】
減結合ポリマー層は、1種またはそれより多くの反応性前駆体のブレンドから形成することができる。これらは、結合/架橋反応を受ける単位(分子)1つあたり1種またはそれより多くの反応性基を有すると予想される。ブレンドの全構成要素によって生じる反応性基は同じであってもよく(例えば、アクリル酸、メタクリル酸およびビニル)、これらはそれ自身が反応するか、および/または、付加反応を受けて鎖(例えば、ポリメタクリル酸メチル、または、ポリ酢酸ビニル)を形成する。このアプローチの特色は、一官能価の前駆体(すなわち1個の反応性基を有する前駆体)は、付加によって伸び切り鎖を形成すると予想されるが、鎖と分岐との間の架橋は少数か皆無と予想されることである。また反応性基も様々であってもよく(ヒドロキシと混合されたイソシアネート、アミノと混合されたイソシアネート、または、アミノと混合されたエポキシ)、これらが共に反応して前駆体間で架橋を形成する。ここでの特色は、ポリマーの形成には、それぞれの反応物化学種が少なくとも2個の官能基を有することが必要である点である;一官能価の形態はいずれも、ブロック/連鎖停止剤として作用すると予想される。
【0084】
前駆体ブレンドの選択における考察は、前駆体の官能基または基以外の構造である。1種またはそれより多くの前駆体が、全体的に直鎖状または環状の炭化水素であることが好ましい。これらはさらに、飽和の特徴を示す場合もあり、例えば、官能基を有する直鎖状ドデカンまたはトリシクロデカンである。ここで飽和とは、このような炭化水素が二重または三重結合をまったく含まないことを意味する。あるいは、これらは、1個またはそれより多くの二重(または三重)結合を含む不飽和の形態であってもよく、例えば官能基を有するポリブタジエンであり、または、これらは芳香族をベースとするものでもよく、例えば官能基を有するジフェニルメタンである。さらに炭化水素は、側鎖、および、ペンダント、活性化メチル基が限定的に存在することを特徴とする。最後に、架橋が一官能価の前駆体の付加反応に基づく場合、炭化水素の構造について考察する必要があり、なぜなら、これらは、鎖が並行して間隔を有するペンダント部分になると予想され、その間隔が過剰に大きい場合はオープンの(鎖間の間隔が広い)ポリマー層が生じる可能性があるためである。
【0085】
前駆体ブレンドの選択におけるその他の考察は、実質的には、反応性基が結合している構造として、または、より大きい構造のうち炭化水素を含み得る部分として、ポリエーテル(炭素−酸素−炭素結合、例えば、ポリエチレングリコール、および、ポリプロピレングリコール)に基づく構造、または、それを含む構造を回避することである。後者の形態は、一般的に、親の炭化水素のエトキシ化またはプロポキシル化された形態と呼ばれる。“Plasma treatment of PET and acrylic coating surfaces−I.In−situ XPS measurements”,Shi等,J.Adhesion Sci.Technol.,第14巻,第12号,1485〜1498頁(2000)(参照により本発明に含める)において、PET(芳香族構造)およびアクリル系ポリマーへの窒素およびアルゴンプラズマ照射により誘発された構造的な改変および組成の改変が、接着を改善するための処理に関して考察されている。ポリマーと、芳香族構造(PET)およびトリプロピレングリコールジアクリラート(調合物1の主成分)との比較によれば、後者のポリマーに関して構造変化がどれだけ強く放射線照射の際のエーテルおよびエステル基の破壊と強く相関しているかが示される。また、エステル基と比較してより高いエーテル基の破壊速度も考察される。PETおよびアクリル系ポリマーにおけるエステル基の破壊を比較すると、後者がより速いことから、エーテル基が損傷をどれだけ促進するかの仮説を立てることができる。この実験データおよび類似の実験データは文献で広く利用されているが、我々の知見に対して、それらと遮断構造に捕獲された形成されたラジカル副産物(例えば、COやCO2)の分解によってカプセル化されたOLEDデバイス中で起こり得る損傷とを、未だ誰も相関させていない。
【0086】
ポリマーの選択において考慮すべきさらにその他の要因は、重合により誘発された機械的応力である。所定のタイプのOLEDデバイスを用いた場合、単量体を硬化する間に共有結合の形成によって起こる収縮により、機械的および/または構造的な損傷が生じる可能性がある。これは、パッシブマトリックスOLEDデバイスのフォトルミネッセンスの研究において実証されている。
【0087】
発光ポリマーは、光(フォトルミネッセンス(PL))、または、電気(エレクトロルミネッセンス(EL))で刺激されると光を放出する。ELによって光を放出する構造は、OLEDデバイスの基礎的な土台である。所定のOLEDデバイスのPL画像とEL画像を比較することによって、ポリマーのどの領域が劣化して、電気的な接触を失ったものに対して、それらに光を放出させる特徴を失っているのかが示される。
【0088】
図10A〜10Cは、高度な収縮を発生させるプロセスおよび材料(調合物1)でカプセル化されたデバイスのEL、PLおよびEL+PL画像を示す。図15A〜Cに、パッシブマトリックス(PM)デバイスの略図を示す。ガラス基板205は、酸化インジウムスズ(ITO)210の層で覆われる。ITO層210をデバイスの部分から除去する。ITO層210の上に、ポリマーの発光ダイオード/ポリエチレンジオキシチオフェン(PLED/PDOT)層215がある。アルミニウム陰極層220は、PLED/PDOT層215より上にある。アルミニウム陰極層220を分離するために、陰極のセパレーター225がある。
【0089】
このようなサンプルは、カプセル化後、または、試験前に水分に晒さなかった(コーティング前の移送の間に水分への暴露を行った)。いわゆる「黒色の斑点」(接触部が反応化学種(大部分が水、酸素、または、酸素を含むその他の化学種、例えばCO2)との化学反応によって変質した局所的な領域)がコーティング前に存在するが、これは、移送中の水分への曝露によって生じたものである。EL発光の画像10Aによれば、電流で刺激すると、ほぼ四角形の画素の薄い中央領域だけが光を放出していることがわかる。薄いストリップに、移送中に形成された黒色の斑点を付着させる。図10Bは、同じ領域のPL画像を示す。この写真では、画素の全領域から光が放出されている。画素領域の全面に渡って、「黒色の斑点」を形成する化学的に変質した接触域に相当する比較的明るい斑点がはっきりとわかる。図10Cは、2種同時の刺激(電流および光)を与えた際に撮られた画像であり、様々な特徴の比較をより簡単にする。
【0090】
図10Dは、寿命末期(EOL)における、金属で密封したデバイスの均一な劣化のPL画像を示す。この劣化は、発光ポリマーの効率が損失したためである。
【0091】
図10E〜10Hは、カプセル化されていないデバイスを示す。このデバイスを意図的に周囲大気に晒し、化学的損傷を生じさせ、その損傷を短い時間尺度で測定した(図10Eは、t=0、図10Fは、t=5分、および、図10Gおよび10Hは、t=10分)。Al陰極の端部における比較的明るい縦方向のバンドが時間が経つにつれて広がっていることから判断すると、図10A〜Cにおける黒色の斑点で観察された作用と同様に、染み込んだ大気によって生産された接触域の化学的な変質の作用を観察することが可能である。図10Bおよび10Fを比較すると、調合物1でコーティングされた画素における変質は、純粋な化学的性質に基づくものではないことも明白である。陰極への機械的な損傷の証拠を、図16AおよびBにおいて一例として示した観察のようなデバイスの顕微鏡観察によって集めた。陰極のたわみ/割れを示すラインが肉眼で観察できるが、これはこの画素からなるEL画像における発光領域と暗い領域との間の境界線を定めている。その他の原因を排除することができないが、我々は、これによれば、ポリマー(これは、近傍の陰極のセパレーターより有意に厚い)の収縮は、陰極とOLEDデバイスとの間の接触部を機械的に減少させることが示され、それによって、その領域を流れ得る電流を制限すると考える。
【0092】
ポリマーの収縮、および、その結果として、OLEDデバイスの陰極上で誘発された応力は硬化条件とポリマー層の厚さに応じて様々であり、これらは、調合物のバルクの材料特性と互いに関係がある。図13にこれを示すが、ここでは、同一なPM OLEDデバイスの発光した画素の領域が報告されている。このディスプレイを、同じ多層構造(100nmの酸化物/6対のポリマー/酸化物対(0.5μmのポリマー/40nmの酸化物)で、ポリマー層を硬化するために同じUV条件(30%のUV設定(30mW/cm2、30cm/分のトラック速度)(H−タイプのバルブを有する融合システムの10インチの照射器))を用いてカプセル化した。一組のディスプレイを調合物2でコーティングし、その他の組を、トリメチロールプロパントリアクリラート(TMPTA)を、同じ量のより高い反応性を有するトリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートに変更した調合物2の改変型でコーティングした。カプセル化の直後とあらゆるエージング試験の前に、発光した画素の領域が15%減少した(コーティング前に測定した値に関しては、図13の1.0mW/cm2の同等の照射線量、トラック速度におけるデータポイントを参照)。
【0093】
ポリマーの収縮により誘発された応力は、収縮が減少するように単量体単位の変換を減少させるために適切な硬化条件を選択することによって制御される場合がある。図13に、これを調合物2でコーティングされたディスプレイに関して示す。コーティング直後に測定された画素の標準化した発光領域は、条件30%のUV設定(30mW/cm2、30cm/分トラック速度)で硬化した場合は1に近く、60%のUV設定(100mW/cm2、75cm/分のトラック速度)で硬化した場合は約0.85であり、90%のUV設定(200mW/cm2、75cm/分のトラック速度)で硬化した場合は0.8であった。全てのディスプレイについて、多層構造は、100nmの酸化物/6対のポリマー/酸化物対(0.5μmのポリマー/40nmの酸化物)であった。硬化を減少させることによって応力を制御する場合、水分透過を増加させる逆効果について考察すべきである。図13に示す場合において、比較的低いUV照射線量であったとしても、変換は、通信用ディスプレイに一般的に必要とされる試験プロトコール(500時間、60℃、および、90%RH)に適合する遮断性能を維持するのに十分であった。
【0094】
単量体の重合により誘発された応力はまた、その構造中で用いられるポリマー層の厚さにも依存する。図14にこれを示すが、ここで、85℃で250時間エージングした後の収縮は、多層構造で用いられるポリマーの厚さの関数として示される。調合物2でカプセル化されたディスプレイ(バルクの収縮は13.8)、および、厚さ1μm未満のポリマー層について、残留した発光領域は、最初の値の約70%であった。ポリマーの厚さを1層あたり2.2μmに増加させた場合(この場合において、多層構造で用いられたポリマー層は4つのみであった)、残留した発光領域は40%に減少した。比較のために、調合物1(バルクの収縮は16.0)でコーティングされたディスプレイ(その他全ての変数は一定のまま)に関して残留した領域も示した。この場合において、発光領域は、厚さ0.5μmのポリマー層でわずか35% であった。
【0095】
OLEDデバイスの多層カプセル化で用いられるポリマー層により誘発された応力は、より高温を用いるその後の加工工程によって、または、加速試験の条件または操作でエージングする間に増加しないと予想される。このような状況において、高温とは、80℃<T<100℃と定義され、条件はOLEDデバイス製造に用いられる材料に適合するものである。例えば、応力は、多層カプセル化で用いられる調合物のTgが85℃(加速寿命試験に用いられる典型的な温度)よりも低い場合、より高い温度で増加する可能性がある。Tgよりも高い、またはそれに近い温度では、完全に硬化していない調合物の鎖の移動性が高いために、さらなる変換反応が起こる可能性がある。結果として、誘発された応力は増加するため、発光領域は減少する可能性がある。
【0096】
図11Aおよび11Bは、コーティング後の調合物1を示す。不均一な光の分布が肉眼で観察することができる。図11Bは、窒素中で85℃で100時間エージングした後の実質的な収縮を示す。図11Cおよび11Dは、コーティング後の調合物2を示す。図11Dによれば、調合物2は、調合物1と比べて、85℃で100時間エージングした後に収縮を有意に減少させたことが示される。このサンプルは窒素中でエージングしたために、収縮は、水分によるものではない。収縮における大きい差は、ポリマーの連続的な反応によるものである。調合物1を85℃でエージングした場合、調合物1はポリマーのTg(62℃)に近くなる。ポリマーは連続的に架橋を起こし、結果としてより多くの収縮が生じる。調合物2(Tgは107℃)を用いたところ、ある程度の反応は起こったが、調合物1の反応量のほぼ半分であった。
【0097】
ポリマー層は、真空プロセスや大気中でのプロセスなどの様々なアプローチを用いて付着させることができる。真空ベースのアプローチは、水分、酸素およびその他の環境の汚染物質を実質的に含まない環境中でプロセスを行うという利点を提供し、都合のよい形態としては、同様の理由で用いられるOLED付着のための真空ベースのアプローチと組み合わせた形態である。大気中でのプロセスは、大気圧での付着を含むが、このプロセスは、周囲大気ではなく非反応性の無水ガス(または混合ガス)を用いることもできる。
【0098】
真空ベースのアプローチは、米国特許第4,842,893号、4,954,371号、および、5,032,461号で開示されており、これらは、具体的にはアクリラート官能基を有する前駆体ブレンドの適用に適している。このアプローチは、前駆体の付着ステーション(アクリラートブレンドを供給するため)、その下流に組み合わされた付着させたブレンドを硬化するための硬化ステーション、および、基板(その上で付着させたブレンドを縮合する)の熱の制御(冷却)が可能な中央の加工ドラムを利用する。付着ステーション、および、硬化単位は、無機物質層(例えば金属、酸化物、窒化物、またはその他の様々な無機化合物のいずれか)が付着するように設計されたステーションに隣接して設置される。このような無機物質層は、熱蒸発、スパッタリング、またはその他の適切なプロセスを用いて付着させることができる。このようなプロセスは、その上に積層する無機物質層を付着させる前にアクリラートブレンドを付着させ硬化すること、または、無機物質層を付着し、それに続いてアクリラート層を付着させ硬化することを可能にする。一対の複数の前駆体の付着ステーションおよび硬化ステーション、および、無機物質の付着ステーションを用いれば、ワンパスでの多層積重ね物を可能にする。教示されているように、このアプローチは、真空環境中でウェブ基板(ロール型で供給された基板)上にアクリラート官能基を有するブレンドを付着させることによく適している。このアプローチは、UVまたはEB照射で硬化されたアクリラート官能基を有する前駆体ブレンド用に詳細に開発されているが、その他の化学物質にも適用可能である。米国特許第6,498,595号は、カチオン重合アプローチ、および、前駆体としてのアクリラートに加えて反応性基の使用を説明している。
【0099】
前駆体付着ステーションのすぐ下流に硬化ステーションを必要としない、類似の立体配置および中央の加工ドラムを用いたアプローチがある。アプローチの一つの群は、前駆体ブレンドのプラズマ重合、付着と同時に前駆体ブレンドにプラズマ照射するプロセスに基づき、この照射によってブレンドは高度に反応性になり、従ってそれらが付着されると同時に重合される。米国特許第5,902,641号、および、6,224,948号は、フラッシュ蒸発させた前駆体ブレンドのプラズマ重合を教示する。米国特許第4,301,765号は、前駆体ブレンドのフラッシュ蒸発に頼らないプラズマ重合用に設計された装置を開示しており、さらに、付着をどこに起こすかの制御を可能にするマスキング手段を提供する。これら3種はいずれも、それに続いて無機物質層をその上に付着すること(インラインの付着)を可能にするために、輸送ロールと接触させるために、または、問題の層(重合後の)が、ウェブ基板に塗布された多層積重ね物の最終的な一番上の層となる場合は、下層に存在する層または層を保護するために重要である可能性がある前駆体ブレンドの付着および硬化を起こす。その他のアプローチが、米国特許第6,506,461号で開示されており、ここでは、ウレタンを形成するための、イソシアネート(複数の−NCO)およびポリオール官能基を有する基(複数の−OH基)、さらに、二重の硬化アプローチを可能にするイソシアネート官能基とアクリラート官能基との組み合わせを含む前駆体ブレンドのフラッシュ蒸発および重合が教示されている。
【0100】
別個のシート状の基板上への真空蒸着、具体的にはこれらのシートも硬質である場合の真空蒸着は、代替的アプローチを必要とする。2003年4月11日付けで出願された米国出願番号10/412,133、名称“Apparatus for Depositing a Multilayer Coating on Discrete Sheets”(VIT−0018PA)、および、2005年4月22日付けで出願された11/112,880号、名称“Apparatus for Depositing a Multilayer Coating on Discrete Sheets”(VIT−0018IA)は、クラスター状および直鎖状の構成要素を組み合わせた直線型およびハイブリッド型の装置を用いた真空ベースのアプローチを開示している。これらのプロセスの重要な特徴は、中央の加工ドラムが、シート基板を輸送し位置を定めるための運搬手段および/またはロボット式アームで交換されていることである。中央の加工ドラムと、それを容易にする加工温度の制御(熱の管理)が無いことは、重要な考察となる。
【0101】
別個のシートのコーティングは、連続的なウェブをコーティングするためには用いられない条件を必要とする。第一に、別個のシートのコーティングは、コーティングチャンバーへの前駆体フィードの複数の開始および停止を必要とする開始/停止プロセスである。また、運搬装置も必要であり、さらにコーティングの塗布が望ましい領域へのコーティングの付着を制限するためのマスキング装置も必要なことが多い。結果として、温度制御された加工ドラムと接触させてウェブを設置することによってウェブをコーティング処理するのと同じように、コーティングしようとする基板をうまく吸熱器またはその他の熱を調節する器具と接触させて設置することができない。従って、別個のシート基板上での縮合は、連続的なウェブ上よりも高い温度で起こり、それに続くコーティングの連続的な付着によって、一般的には基板の温度上昇が起こる。
【0102】
連続的なウェブではなく別個のシートのコーティングによって、付着効率の重要性を認識するに至った。付着効率は、所定の一連の条件下で行われる基板上での前駆体(単量体)ブレンドの縮合速度を特徴付けるものであり、縮合速度の程度は、条件の変更に応じて様々であると予想される。付着効率は以下の式によって決定される:
【0103】
【数1】
ポリマー層の厚さを測定した(カリフォルニア州サンタクララのn&kテクノロジー社(n&k Technology,Inc.)より入手可能なn&kアナライザー1512RT反射率計を用い、測定はオングストローム単位とした)。温度の関数として効率曲線を作成するのに用いられた各サンプルにおいて、加工チャンバーを通過する別個のシートの速度、および、単量体の流速を測定し、測定した基板温度における付着効率を計算した。
【0104】
単量体を付着させる前に、この基板をUV硬化源の上を通過させて予備加熱した。基板の温度を、基板として用いられるガラスプレート上の付着表面に取り付けた熱電対で測定した。付着中の基板の温度は、熱電対が単量体のスリット上を通過した際のプロファイルにおける工程の一番低い温度とした。
【0105】
付着させるポリマーの厚さは、基板の温度、および、基板表面上の単量体の流れによって最も大きく変化する。基板の温度が高くなると、付着させる厚さは減少する。これは、付着係数の減少、および、再蒸発の速度の増加に起因すると考えられる。エバポレーターへの単量体のフローが増加すると、表面上での単量体の蒸気圧は増加し、それにより基板に作用する流れが増加する。
【0106】
表3において、図12で示されるように調合物2(類似しているが同一ではない設計の3種のツールを用いて付着させる)に関する温度の関数として付着効率を評価した。付着効率は、基板の温度の減少に伴って増加することがわかった。従って、付着効率を改善する方法の一つは、基板の温度を低くすることである。
【0107】
付着効率は、別個のシート上への蒸気の縮合を含むプロセス(例えば真空フラッシュ蒸発プロセス)にとって重要である。そのため、別個のシート上に蒸気を縮合するプロセスを用いてポリマー層を付着させる場合に、前駆体ブレンドを選択する際にさらなる考察を必要とする。
【0108】
前駆体ブレンドの付着効率は、部分的にブレンドの平均分子量に依存する。前駆体ブレンドは、一般的に、少なくとも約275、または、少なくとも約300、または、約275〜約350、または、約275〜約325の平均分子量を有すると予想される。(本明細書で用いられる平均分子量は、重量平均分子量を意味する)。それより低い平均分子量を有するブレンドを用いることができるが、このようなブレンドで作製された減結合ポリマー層は、1種またはそれより多くの望ましくない特徴を有する可能性がある。
【0109】
前駆体ブレンドは、少なくとも約250、または、少なくとも約275、または、少なくとも約300、または、少なくとも約325、または、少なくとも約350、または、少なくとも約375、または、少なくとも約400の付着効率を有する可能性がある。付着効率は、ブレンドの成分の分子量と、程度は低いが揮発性に影響を与える構造的な考察との相関関係である。少なくとも約250の付着効率を有する前駆体ブレンドを選択すれば、開始時の前駆体ブレンドの化学量論を有する減結合ポリマー層が提供され、前駆体ブレンドが縮合して、利用可能なカプセル化装置を用いて得られるプロセス条件によって液状のコーティングが形成されると予想される。
【0110】
より低い付着効率で実施し、機能性ポリマーの減結合層を得ることが可能である。しかしながら、減結合ポリマー層は、1またはそれより多くの望ましくない特徴を有する可能性がある。しかしながら、減結合ポリマー層のその他の特性が特に望ましい場合、このようなブレンドの使用を決定してもよい。あまり効率的ではないブレンドを適応させるために、全体的なプロセスパラメーター、例えば速度、コーティングステーションでの停滞時間、および、クリーニングの必要条件を調節すれば、妥協点が見出されると予想される。
【0111】
前駆体ブレンドを適切に選択することによって、必要な特性を有するカプセル化された環境に敏感なデバイスを得ることができる。
【0112】
実施例4
表3に示される配合に従って減結合ポリマー層を作製した。前駆体ブレンドの付着効率を測定し、平均分子量を計算した。
【0113】
【表3】
調合物1は、316の平均分子量、370の付着効率を有しており、これは、少ない収縮とプラズマによる損傷に対する抵抗を示した。TMPTAは、炭化水素の主鎖をベースとする望ましい三官能価を有するアクリラートであるが、硬化の間に収縮が生じることがわかっている低分子物質である。それゆえに、これは低いレベルで用いられると予想される。
【0114】
調合物2は、300の平均分子量、209の付着効率を有しており、これは薄膜用途に十分に用いることができるが、(少なくとも数種のタイプのOLEDと共に)カプセル化に用いたところ望ましくない収縮、および、プラズマによる損傷を示した。これは、極性主鎖を有する前駆体を避けて、より高いMwを有することが望ましいことを示す。
【0115】
調合物3は、類似の分子量を有する化合物のTPGDAの代わりにポリ環状炭化水素の主鎖を有するジアクリラートの使用を示す。その前駆体ブレンドは、類似の付着効率を有していた(232に対して209)。この調合物によれば、極性主鎖を有する前駆体の代わりに、環状またはポリ環状炭化水素の主鎖を有する前駆体を用いれば、得られた平均分子量が類似している場合、類似の付着効率を有するブレンドが提供できることが示される。
【0116】
調合物4は、HDODA(より低い分子量の炭化水素の主鎖を有するジアクリラート)をベースとする。減結合ポリマー層はプラズマによる損傷に対して抵抗を示したが、そのより低い平均分子量に対応して付着効率は不十分だった。さらに遮断性能も不十分だった。トリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートを用いると収縮が減少したが、これを使用したことによって水の透湿性を高める極性エチレンオキシド単位の導入も生じた。これは、極性主鎖を有する前駆体を避けることが望ましいことを示す。
【0117】
調合物5は、トリエトキシトリメチロールプロパントリアクリラートをベースとし、338の付着効率、413の平均分子量を有する。これは、付着効率とより高い分子量を有する前駆体ブレンドとの間の関係に対する見識を得るために導入した。これは、光開始剤と組み合わされた実質的に単一の単量体であるが、これは、高い平均分子量が、かなり高い分子量の前駆体を含むがより低い分子量の前駆体が主成分のブレンドに起因するような状況を直接扱うものではないため、その他の調合物との理想的な比較対象ではない。しかしながら、いずれの差も有意とは考えられない。
【0118】
少ない収縮、および、プラズマによる損傷に対して十分な抵抗を示すカプセル化のための適切なポリマー前駆体ブレンドの例としては、約60〜約90重量%のジメタクリラートが挙げられ、例えば、典型的には約65〜約75重量%のドデカンジオールジメタクリラートである。さらに、0〜約20重量%のモノアクリラートも挙げられ、例えば典型的には約10〜約20重量%のラウリルアクリラートである。さらに、0〜約20重量%のトリアクリラートも挙げられ、例えば、典型的には約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラートである。また、約1〜約10重量%の光開始剤も挙げられ、典型的には約1〜約3重量%の光開始剤である。適切な光開始剤は当業者には既知であり、例えば、これらに限定されないが、サートマー(Sartomer)より入手可能なジエトキシアセトフェノン(DEAP)、または、イサキュア(Esacure)TZT(トリメチルベンゾフェノンベースの光開始剤)が挙げられる。
【0119】
本発明を説明するために所定の代表的な実施態様および詳細を示したが、当業者であれば当然ながら、添付の請求項で定義される本発明の範囲から逸脱することなく本明細書において開示された様々な組成や方法の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0120】
【図1】カプセル化されたディスプレイデバイスの一実施態様の部分断面である。
【図2】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【図3】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの変色および構造を示す写真である。
【図4】エージング後の様々なポリマー調合物のポリマーフィルムの形態を示す写真である。
【図5A】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5B】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5C】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図5D】エージング前後の様々なポリマー調合物の干渉のスペクトルを示すグラフである。
【図6】エージング後の様々なポリマー調合物のカルシウム試験を示す写真である。
【図7】エージング前後の様々なポリマー調合物のパッシブマトリックスディスプレイを示す写真である。
【図8】エージング後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【図9】エージング前後の様々なポリマー調合物のプラズマによる損傷を示す写真である。
【図10】エージング前後のカプセル化された、および、カプセル化されていないデバイスのエレクトロルミネッセンスおよびフォトルミネッセンスを示す写真である。
【図11】エージング前後の様々なポリマー調合物の収縮を示す写真である。
【図12】付着効率対基板の温度のグラフである。
【図13】様々な調合物に関するカプセル化後の、開始時の画素領域を示すグラフである。
【図14】様々な調合物に関するポリマー層の収縮をポリマー層の厚さの機能として示すグラフである。
【図15】図15Aは、パッシブマトリックスデバイスの平面図であり、図15Bおよび15Cは、図15Aのパッシブマトリックスデバイスのライン15B−15Bおよび15C−15Cに沿った断面図である。
【図16】図10Fのデバイスに対する機械的な損傷を示す写真である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法であって:
基板を用意すること;
少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、
少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、
を含み、
ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、そして、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該減結合ポリマー層は、以下のうち少なくとも1つ:極性領域の数が少ないこと;充填密度が高いこと;C−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域の数が少ないこと;エステル部分の数が少ないこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種のMwが大きいこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種の鎖長が長いこと;または、C=C結合の変換が少ないこと;を示す、上記方法。
【請求項2】
前記減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー前駆体のブレンドが存在し、ここで、該ポリマー前駆体のブレンドは、少なくとも約275の平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が、官能基を有する炭化水素の主鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記主鎖が、飽和している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記主鎖が、不飽和である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記減結合ポリマー層が、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、前記減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素の主鎖が、飽和している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素の主鎖が、不飽和である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記減結合ポリマー層が、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー前駆体のブレンドが存在し、ここで、該ポリマー前駆体のブレンドは、少なくとも約275の平均分子量を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約60〜約90重量%のジメタクリラート;
0〜約20重量%のモノアクリラート;
0〜約20重量%のトリアクリラート;
約1〜約10%の光開始剤、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ジメタクリラートが、約65〜約75重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モノアクリラートが、約10〜約20重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記トリアクリラートが、約5〜約15重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記光開始剤が、約1〜約3重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約65〜約75重量%のドデカンジメタクリラート;
約10〜約20重量%のラウリルアクリラート;
約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラート;
約1〜約3重量%の光開始剤、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
カプセル化された環境に敏感なデバイスであって:
基板;
該基板に隣接する少なくとも1個の環境に敏感なデバイス;および、
該環境に敏感なデバイスに隣接する少なくとも1つの積重ね遮断物、
を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該ポリマー前駆体の少なくとも1種は、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、該減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、上記デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約60〜約90重量%のジメタクリラート;
0〜約20重量%のモノアクリラート;
0〜約20重量%のトリアクリラート;
約1〜約10%の光開始剤、
を含む、請求項21に記載のカプセル化された環境に敏感なデバイス。
【請求項21】
前記ジメタクリラートが、約65〜約75重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モノアクリラートが、約10〜約20重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記トリアクリラートが、約5〜約15重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記光開始剤が、約1〜約3重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約65〜約75重量%のドデカンジメタクリラート;
約10〜約20重量%のラウリルアクリラート;
約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラート;
約1〜約3重量%の光開始剤、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法であって:
基板を用意すること;
少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、
少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、
を含み、ここで該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、炭化水素に結合した反応性官能基を少なくとも1個含む少なくとも1種のポリマー前駆体の反応生成物を含み、そして該減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、上記方法。
【請求項1】
環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法であって:
基板を用意すること;
少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、
少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、
を含み、
ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、そして、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該減結合ポリマー層は、以下のうち少なくとも1つ:極性領域の数が少ないこと;充填密度が高いこと;C−C共有結合よりも弱い結合エネルギーを有する領域の数が少ないこと;エステル部分の数が少ないこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種のMwが大きいこと;該ポリマー前駆体の少なくとも1種の鎖長が長いこと;または、C=C結合の変換が少ないこと;を示す、上記方法。
【請求項2】
前記減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ポリマー前駆体のブレンドが存在し、ここで、該ポリマー前駆体のブレンドは、少なくとも約275の平均分子量を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が、官能基を有する炭化水素の主鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記主鎖が、飽和している、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記主鎖が、不飽和である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記減結合ポリマー層が、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、前記減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記炭化水素の主鎖が、飽和している、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記炭化水素の主鎖が、不飽和である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記減結合ポリマー層が、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
ポリマー前駆体のブレンドが存在し、ここで、該ポリマー前駆体のブレンドは、少なくとも約275の平均分子量を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約60〜約90重量%のジメタクリラート;
0〜約20重量%のモノアクリラート;
0〜約20重量%のトリアクリラート;
約1〜約10%の光開始剤、
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記ジメタクリラートが、約65〜約75重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記モノアクリラートが、約10〜約20重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記トリアクリラートが、約5〜約15重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記光開始剤が、約1〜約3重量%の量で存在する、請求項13に記載の方法。
【請求項18】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約65〜約75重量%のドデカンジメタクリラート;
約10〜約20重量%のラウリルアクリラート;
約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラート;
約1〜約3重量%の光開始剤、
を含む、請求項13に記載の方法。
【請求項19】
カプセル化された環境に敏感なデバイスであって:
基板;
該基板に隣接する少なくとも1個の環境に敏感なデバイス;および、
該環境に敏感なデバイスに隣接する少なくとも1つの積重ね遮断物、
を含み、ここで、該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、ここで、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、少なくとも1種のポリマー前駆体から作製され、ここで、該ポリマー前駆体の少なくとも1種は、官能基を有する炭化水素の主鎖を有し、ここで、該減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、上記デバイス。
【請求項20】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約60〜約90重量%のジメタクリラート;
0〜約20重量%のモノアクリラート;
0〜約20重量%のトリアクリラート;
約1〜約10%の光開始剤、
を含む、請求項21に記載のカプセル化された環境に敏感なデバイス。
【請求項21】
前記ジメタクリラートが、約65〜約75重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
前記モノアクリラートが、約10〜約20重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項23】
前記トリアクリラートが、約5〜約15重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項24】
前記光開始剤が、約1〜約3重量%の量で存在する、請求項20に記載の方法。
【請求項25】
前記少なくとも1種のポリマー前駆体が:
約65〜約75重量%のドデカンジメタクリラート;
約10〜約20重量%のラウリルアクリラート;
約5〜約15重量%のトリメチロールプロパントリアクリラート;
約1〜約3重量%の光開始剤、
を含む、請求項20に記載の方法。
【請求項26】
環境に敏感なデバイスをカプセル化する方法であって:
基板を用意すること;
少なくとも1個の環境に敏感なデバイスを該基板に隣接させて配置すること;および、
少なくとも1つの積重ね遮断物を該環境に敏感なデバイスに隣接させて付着させること、
を含み、ここで該積重ね遮断物の少なくとも1つは、少なくとも1つの遮断層、および、少なくとも1つの減結合ポリマー層を含み、該減結合ポリマー層の少なくとも1つは、炭化水素に結合した反応性官能基を少なくとも1個含む少なくとも1種のポリマー前駆体の反応生成物を含み、そして該減結合ポリマー層が、約8×1020n/ml以下のエーテル結合、および、約4.0×1021n/ml以下の側鎖を有する、上記方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【図2A】
【図2B】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図5A】
【図5B】
【図5C】
【図5D】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図9D】
【図10A】
【図10B】
【図10C】
【図10D】
【図10E】
【図10F】
【図10G】
【図10H】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図11D】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15A】
【図15B】
【図15C】
【図16A】
【図16B】
【公表番号】特表2009−506171(P2009−506171A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−528195(P2008−528195)
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033244
【国際公開番号】WO2007/025140
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(504122295)ヴィテックス・システムズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年8月25日(2006.8.25)
【国際出願番号】PCT/US2006/033244
【国際公開番号】WO2007/025140
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(504122295)ヴィテックス・システムズ・インコーポレーテッド (5)
【Fターム(参考)】
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