カプセル製造装置、及び、カプセル製造方法、及び、医療用カプセル
【課題】 カプセルのシェルを形成するシェル材の液膜に異物が混入していない状態でカプセルを生成可能なカプセル製造装置を提供する。
【解決手段】 第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる。
【解決手段】 第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル製造装置、及び、カプセル製造方法、及び、医療用カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
芯物質(コア)を皮膜(シェル)で覆うことによって生成されるカプセルが知られている。このようなカプセルのうち、粒径がマイクロメートルオーダーの微小なカプセルはマイクロカプセル(マイクロスフィア、ゲルビーズ)と呼ばれ、近年開発が進んでいる。マイクロカプセルは、コアやシェルの形成材料を適当に選択することで様々な機能を持たせることができる。例えば、コアを外部環境から保護する機能や、外部環境へコアを放出する速度を調節する機能等を持たせることができ、現在では、機能性材料として食品、医薬品等の多岐の分野に渡って応用されている。
【0003】
このようなマイクロカプセルの生成方法として、カプセルのコアを形成するコア材及びシェルを形成するシェル材(ともに液体である)を用いて、シェル材によってコア材を被覆させることでカプセルを生成する方法がある。例えば、コア材によって形成される液面の上に、該コア材よりも比重の小さいシェル材を浮かべるようにしてシェル材を液膜状に形成して保持する。そして、コア材とシェル材との界面付近(コア材液面の下側)で気泡を発生・破裂させる。この気泡が破裂する際に生じる圧力によって、コア材をシェル材の液膜側に吐出させ、シェル材によってコア材を包み込むように被覆してマイクロカプセルを生成する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−224647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法によれば、シェルの厚さが均一なマイクロカプセルを生成しやすくなる。
しかし、特許文献1の方法でカプセルを生成する場合、時間の経過と共にシェル材の液膜の状態が悪化するおそれがある。例えば、カプセル生成動作中に、シェル材の液膜にコア材の断片や小さな気泡等の異物が混入する場合が考えられる。異物が混入した状態のシェル材によってコア材が被覆されると、シェルに異物が含まれたカプセルが生成されることになり、高品質なカプセルを生成することができなくなる。
【0006】
これに対して、特許文献1ではシェル材の液膜に異物が混入する可能性が考慮されていないため、液膜に異物が混入した場合であっても当該異物を液膜から排除することができない。したがって、液膜を正常な状態(異物が混入していない状態)に保つことができず、高品質なカプセルを生成することが困難な場合がある。
【0007】
本発明では、カプセルのシェルを形成するシェル材の液膜に異物が混入していない状態でカプセルを生成可能なカプセル製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、ことを特徴とするカプセル製造装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カプセルの概念図である。
【図2】シェルが形成される際の動作について概略的に説明する図である。
【図3】第1実施形態におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。
【図4】噴射ヘッド11の構造を説明する断面図である。
【図5】第1実施形態においてカプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図である。
【図6】アルギン酸ナトリウムの説明図である。
【図7】アルギン酸ナトリウムからアルギン酸カルシウムゲルへ変化する中間の様子を示す説明図である。
【図8】アルギン酸カルシウムゲルの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。
【図10】第2実施形態におけるカプセル製造装置2の基本的な構成を説明する概略図である。
【図11】第2実施形態においてカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図である。
【図12】第2実施形態において、カプセルが第2の液膜を貫通しない場合のカプセル生成動作について説明する図である。
【図13】第3実施形態におけるカプセル製造装置3の基本的な構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
このようなカプセル製造装置によれば、カプセルのシェルを形成するシェル材の液膜に異物が混入していない状態でカプセルを生成することができる。これにより、シェルに異物が混入されていない高品質なカプセルが生成される。
【0013】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体を流動させる所定の方向は、鉛直下向きの方向であることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、シェル材の液膜には鉛直方向に対して重力が作用する。つまり、シェル材を流動させるための動力(例えばポンプやモーター等による動力)を外部から加えることなく、重力によってシェル材の液膜を流動させることができる。また、鉛直方向に働く重力以外には余計な外力が作用しないため、液膜を安定して支持しやすくなる。
【0014】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体によって形成されるシェルを第3の液体と接触させて化学反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、適切に硬化されたシェルを有するカプセルを生成することができる。
【0015】
かかるカプセル製造装置であって、所定の方向に流動する前記第3の液体を膜状に支持する第2の液膜支持部を備えることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、カプセルのシェルを硬化させるシェル硬化材の液膜に異物が混入していない状態でシェル材とシェル硬化材との化学反応を生じさせることができる。これにより、化学反応を正常に進行させ、シェルを適切な硬さにすることができる。
【0016】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体は多糖類または蛋白質類を含む水溶液であり、前記第3の液体は多価金属塩を含む水溶液であり、前記第2の液体と前記第3の液体とを接触させて架橋反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、人体に無害で医療分野等に対する応用性が高いカプセルを生成することができる。また、親水性のゲルによるシェルを形成することが可能であるため、保水性能が高く、また、外部環境とカプセルとの間でシェルを介しての浸透圧調整が容易なカプセルを生成することができる。
【0017】
かかるカプセル製造装置であって、前記液体噴射部は、前記第1の液体の液滴を噴射するノズルが複数並ぶノズル列を備えることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、ノズル列から一度に複数のコア材を噴出させることができるため、一度に複数のカプセルが生産可能になる。つまり、カプセルを効率よく量産することができる。
【0018】
また、かかるカプセル製造装置で製造された医療用カプセルが明らかなる。
このような医療用カプセルによれば、所望のサイズや硬さの微小カプセルが製造できるため、DDS(ドラックデリバリーシステム)のように、薬剤などのコアとそれを被覆するシェルなどを構成することにより、途中で吸収・分解されることなく患部に到達させ、患部で薬剤を放出することができる。
【0019】
また、所定の方向に流動しながら膜状に支持された第2の液体の液膜に向けて第1の液体を噴射することにより、コアを形成することと、前記コアが前記第2の液体の液膜を貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成することと、を有するカプセル製造方法が明らかとなる。
===概要===
<カプセルとは>
図1に、本実施形態で生成されるカプセルの概念図を示す。本実施形態におけるカプセルは、図のように「コア」(内包物)、及びそれを覆う「シェル」によって構成され、球状の外形を有する。「コア」を形成するコア材は、有効成分(例えば、ハイドロキノン、セラミド、牛血清アルブミン、γ−グロブリン、リピオドール、ビフィズス菌、ビタミン、ヒアルロン酸、IPS細胞等)を含んだ物質である。コア材には当該有効成分が溶解していているもの、有効成分が分散しているもの、また、有効成分が固体もしくは気体状で存在しているものが含まれる。このようなカプセルは、食料、医薬部外品、医薬品等、種々の分野で使用されており、カプセルの大きさ(内包物の容量)や、シェルの厚さはその用途に応じて様々である。
【0020】
<カプセルの生成方法>
上述のようなコアとシェルとを有するカプセルを生成する方法の概要について簡単に説明する。本実施形態では、複数種類の液体を原材料としてカプセルが生成される。コアを形成するコア材として第1の液体が用いられ、シェルを形成するシェル材として第2の液体が用いられるものとする。第1の液体及び第2の液体は、生成されるカプセルの機能や用途に応じてそれぞれ最適な液体材料が選択される。
【0021】
カプセルを生成する際には、薄膜状に支持された状態で所定の方向に流動するシェル材(以下、シェル材による「液膜」とも呼ぶ)に対して、カプセルのコアとなるコア材(第1の液体)の液滴を突入させる。そして、コア材がシェル材の液膜を貫通する際にシェル材がコア材全体を包み込むようにして覆うことによってシェルが形成される。
【0022】
図2は、シェルが形成される際の動作について概略的に説明する図である。図の(A)〜(D)は流動するシェル材の液膜をコア材が貫通する際の様子を時系列順に表したものである。図では、シェル材が鉛直下方向に流動しながら薄膜状に支持されることによって、シェル材の液膜(斜線部)が形成されている。このシェル材の液膜に対して、図の左側から右側へコア材が突入するものとする。
【0023】
(A)はじめに、コア材(第1の液体)の液滴によって形成されたコアが、シェル材(第2の液体)によって形成された液膜に所定の速度(液膜を貫通可能な速度)で突入する。(B)液膜と接触したコアはそのまま直進を続け、液膜を貫通しようとする。これに対して、液膜はコアを包むように変形する。なお、コア材(第1の液体)とシェル材(第2の液体)とは、組成や比重、粘度、表面張力等の性質が異なり、互いに混合しにくい液体が選択される。例えば、水性の液体と油性の液体など界面が形成される液体の組合せを選択することにより、両者が接触した場合でも直ちに混合されることがないようにする。(C)コアは液膜に包まれたまま直進を続ける。コアが当初の液膜の位置を通過した段階では、コアの大部分がシェル材(第2の液体)の液膜によって覆われる。なお、コアが通過した部分では液膜に穴が開いたような状態となるが、その穴の鉛直上方側から下方側へシェル材(第2の液体)が穴を塞ぐように移動(流動)することにより、液膜を穴のない状態に戻そうとする。(D)コアが液膜を完全に貫通すると、コア全体がシェル材によって被覆された状態となり、コアを内包するシェルが形成される。また、コアが貫通することによって液膜に開いた穴は第2の液体によって閉じられる。
【0024】
このような動作を経ることで、シェルによってコアが被覆された構造を有するカプセルが生成される。
【0025】
なお、図2の(D)の状態では、カプセルのシェルが液体(第2の液体)のままである。そのため、当該シェルは外部環境に対して非常に不安定なものもあり、生成されたカプセルに触れるだけでシェルが破壊されてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、形成されたシェル(第2の液体)にシェル硬化材として第3の液体を接触させて化学反応を生じさせることにより、シェルを適切な硬さに硬化させる。シェルを硬化させることよって外部環境に対して強いカプセルを生成する。第2の液体と第3の液体との化学反応についての詳細は後で説明する。なお、硬化するとは、液体の粘度が高くなることや、液体状のものが固体状に性状変化することなどを含み、特に固体特有の強度変化に限定されるものではない。
【0026】
===第1実施形態===
発明を実施するためのカプセル製造装置の形態として、液体噴射装置を用いたカプセル製造装置1を例に挙げて説明する。
【0027】
カプセル製造装置1では、インクジェット方式を用いて液滴を噴射することにより、カプセルの大きさやシェルの厚さを自由に調整しながら、所望のサイズのカプセルを製造(生成)する。また、インクジェット方式により微少量の液滴を噴射することで、カプセル径がナノメートル(nm)オーダーやマイクロメートル(μm)オーダーとなるような、微小サイズのカプセルを生成することが可能である。例えば、0.1〜500pl(ピコリットル)程度の容量の、所謂マイクロカプセル(マイクロスフィア)を生成することができる。
【0028】
<カプセル製造装置1の構成>
図3は、第1実施形態におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。カプセル製造装置1は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50とを備える。
【0029】
説明のため、図3に示されるように、X軸、Y軸、Z軸からなる座標軸を設定する。Z軸は鉛直下向きの方向(図3において下方向)であり、X軸はZ軸に対して垂直な方向であり、Y軸はZ軸及びX軸に垂直な方向であるものとする。図3では、シェル材(第2の液体)の液膜がYZ平面上に形成され、コア材(第1の液体)がX軸方向に噴射される。
【0030】
(液体噴射部10)
液体噴射部10は、第1の液体(コア材)を噴射することによってマイクロカプセルのコアを形成するコア形成部である。液体噴射部10は噴射ヘッド11と第1液体タンク12とを有する。
【0031】
噴射ヘッド11は第1の液体を液滴として噴射する。噴射ヘッド11による液体噴射動作については後で説明する。第1液体タンク12はコアの原料である第1の液体を貯留しておくタンクであり、不図示の液体伝送路を介して噴射ヘッド11に第1の液体を供給する。噴射ヘッド11の動作は不図示の制御部HCによって制御される。制御部HCは、噴射ヘッド11を駆動させるための電圧波形信号である駆動信号を生成し、後述するピエゾ素子PZTに印加することによって、第1の液体を噴射させる。
【0032】
本実施形態で、噴射ヘッド11はシェル材(第2の液体)の液膜に対して垂直な方向にコア材(第1の液体)の液滴を噴射する。液膜に対してコア材を垂直に突入させることにより、コア材を被覆するシェル材の厚さをなるべく均等にするためである。図3の場合、シェル材の液膜がYZ平面上に形成されているため、コア材はX軸方向に噴射される。ただし、コア材の液滴がシェル材によって被覆されるのであれば、液膜に対してコア材が垂直に噴射されなくてもカプセルを生成することは可能である。例えば、液膜に対してコア材を斜め方向に噴射してもよい。
【0033】
図4は、噴射ヘッド11の構造を説明する断面図である。噴射ヘッド11は、ノズル111、ピエゾ素子PZT、液体供給路112、ノズル連通路114(容積室に相当する)、及び、弾性板116(ダイアフラムに相当する)を有する。なお、図4では噴射ヘッド11が下方向に液体を噴射するものとして説明を行なう。
【0034】
第1液体タンク12に貯留された第1の液体は、液体供給路112を介してノズル連通路114に供給される。圧電素子であるピエゾ素子PZTには、制御部HCで生成された複数のパルスを有する電圧信号が駆動信号として印加される。駆動信号が印加されると、該駆動信号に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板116を振動させる。そして、ノズル連通路114の容積を変化させ、駆動信号の振幅に対応するようにノズル連通路114内に供給された第1の液体を移動させる。
【0035】
第1の液体の移動について具体的に説明する。本願実施形態のピエゾ素子PZTは、電圧を印加すると図4の上下方向に収縮する特性を有する。駆動信号としてある電圧からより大きい電圧を印加した場合、ピエゾ素子PZTは図4の上下方向に収縮してノズル連通路114の容積を拡大する方向に弾性板116を変形させる。このとき、ノズル111における液体表面はノズル111の内側(図4の上側)方向に移動する。逆に、ある電圧からより小さい電圧を印加した場合、ピエゾ素子PZTは図4の上下方向に伸長し、ノズル連通路114の容積を縮小する方向に弾性板116を変形させる。このとき、ノズル111の液体表面はノズル111の外側(図4の下側)方向に移動する。このように、ノズル連通路114の容積を変化させるとノズル連通路114における圧力が変動し、ノズル連通路114に充填された液体をノズル111から噴射することができる。噴射された第1の液体は、その表面張力により球形(液滴)となる。つまり、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号の振幅(電圧の大きさ)を変更することによって、噴射される液滴の大きさ(液体の量)を調整することができる。これにより、所望のサイズのカプセルコアを正確に形成することができるようになる。
【0036】
なお、第1の液体に酸素分子が溶け込んでいると、この圧力変動の際、ノズル連通路114において気泡が生じてしまう。よって、本実施形態において使用される第1の液体は予め中空糸などを用いて脱気されていることが望ましい。
【0037】
本実施形態において、ノズル111は、例えば直径20μmであり、噴射周波数10Hz以上で第1の液体を噴射することができる。また、駆動信号の周波数を変更することにより噴射周波数を変更し、カプセル(コア)の生成効率を変化させことができる。
【0038】
(液膜支持部30)
液膜支持部30は、液膜支持部材31及び液膜支持部材32を有する。液膜支持部材31及び32は、シェルを形成する原材料である第2の液体(シェル材)を薄膜状に支持する板状の部材である。液膜支持部材31及び32は、図3に示されるように所定の間隔(h)を保つようにZ軸方向に沿って平行に配置される。そして、この液膜支持部材31及び32の間に生じる隙間(上述の間隔h)に第2の液体(シェル材)を供給すると、Y軸方向の両端側を支持された状態で重力によって鉛直下方向(Z軸方向)に流動する。供給されたシェル材は、液膜支持部材31と32との隙間に広がるが、このとき、表面張力が働くためシェル材は幅hを有する薄い膜状となる。したがって、液膜支持部30の鉛直上方からシェル材を連続的に供給することによって、鉛直下方向に流動するシェル材が膜状に形成され、シェル材の液膜として支持される。
【0039】
上述のように、当該液膜は表面張力によって膜状に支持されているため、膜厚(液膜の厚さ)が非常に薄くなり、液体噴射部10から噴射されたコア材を容易に貫通させやすくなる。これにより、カプセル生成の効率を高くすることができる。
【0040】
なお、液膜支持部30の最下部(鉛直下方向)まで流動したシェル材は、そのまま液膜支持部30の外部へ排出されるが、排出されたシェル材を回収してクリーニング等した後にシェル材として再利用するようにしてもよい。これにより、使用されるシェル材の量を最適化することができる。
【0041】
液膜支持部材31及び32の材質は、液膜を支持できるものであれば自由であり、本実施形態では金属製(例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、金、銀、真鍮、チタン、炭素鋼、洋白等)や樹脂製(例えば、アクリル、ポリウレタン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等)の部材を用いることができる。なお、液膜支持部材31及び32の厚さは、支持するべき液膜の厚さを考慮して決定される。本実施形態において、シェル材の液膜はコア材の液滴が貫通可能なように極めて薄く形成されるため、液膜支持部材31及び32もそのような薄膜を支持することが可能なものが用いられる。
【0042】
なお、図3に示されるシェル材の液膜は、液膜支持部材31及び32によって鉛直方向(Z軸方向)に沿って支持されているが、膜支持部材31及び32が鉛直方向に対して斜めに設置されることにより、シェル材の液膜が鉛直方向に対して斜めに支持されるのであってもよい。言い換えると、シェル材が鉛直下向きの成分を有する方向に流動しつつ水平方向にも流動するようにしてもよい。
【0043】
ただし、図3のように鉛直下方向にシェル材を流動させる場合には、シェル材には鉛直方向成分の力(重力)のみが働き、水平方向成分の力が働かなくなる。これにより、モーターを駆動させる動力等を用いることなくシェル材を重力によって鉛直下方向に流動させることができる。また、重力以外の余計な外力が作用しないため、液膜を安定して支持しやすくなる。
【0044】
(液体接触部50)
液体接触部50は、第3の液体(シェル硬化材)を液体の状態で貯留し、該液体接触部50において第3の液体(シェル硬化材)と第2の液体(シェル材)とを接触させる。シェル材とシェル硬化材との接触によって化学反応が生じてシェルが適切な硬さになる。
【0045】
液体接触部50は、液体貯留槽51を有する。液体貯留槽51は液体を貯留しておくことができる容器であり、図3の斜線部で表されるように第3の液体を液体の状態で貯留して液相を形成する。本実施形態においては、液体貯留槽51の上部が開口部となっていて、液膜支持部30を貫通することにより第2の液体(シェル材)によって被覆されたカプセルが当該開口部より第3の液体中に進入する。そして、第2の液体(シェル材)が第3の液体(シェル硬化材)と接触することによって、液体貯留槽51内において化学反応を生じる。なお、液体貯留槽51を設置する位置はシェル材の液膜を貫通した後のカプセル(シェル材によって被覆されたコア材)の軌道に合わせて調整される。言い換えると、シェル材の液膜を貫通した後のカプセルが落下する位置に合わせて液体貯留槽51が設置される。
【0046】
また、液体貯留槽51は、第3の液体と接触した後のカプセルを回収するための回収機構(不図示)を備えていてもよい。回収機構としては、例えば、生成されたカプセルを第3の液体中から濾し取るためのろ過装置等が備えられる。この場合、液体接触部50はカプセル回収部としての機能も有する。
【0047】
<カプセル生成動作について>
続いて、カプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する際の具体的動作について説明する。図5に、第1実施形態においてカプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図を示す。本実施形態では、コア形成工程(S101)、シェル形成工程(S102)、シェル硬化工程(S103)の3つの工程によりカプセルが生成される。
【0048】
S101:コア形成工程
まず、液体噴射部10から噴射されるコア材(第1の液体)の液滴(ドット)によってカプセルのコアが形成される。コア材としては、有効成分(例えば、ハイドロキノン、セラミド、牛血清アルブミン、γ−グロブリン、リピオドール、ビフィズス菌、ビタミン、ヒアルロン酸、IPS細胞等)を含んだ物質が用いられる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0049】
図3に表されるように、コア材を噴射する際は、液膜支持部30によって支持されるシェル材の液膜に向かって垂直方向に液滴が噴射される。図3の例では、シェル材の液膜がYZ平面に平行に支持され、液体噴射部10は液膜支持部30に対して横方向(X軸方向)に設けられており、コア材(第1の液体)はX軸方向に噴射される。ただし、上述したように、コア材は必ずしもシェル材の液膜に対して垂直な方向に噴射される必要は無く、シェル材の液膜に対して斜めの方向に噴射されるのであってもよい。
【0050】
本実施形態において、コア材を噴射する際の液体噴射量は、生成されるカプセルのコアの大きさ(容量)に応じて決定される。噴射された第1の液体による液滴がそのままコアになるためである。すなわち、コア材を噴射する量を制御することによって、生成されるカプセルのサイズ(コアの大きさ)を自由に設定することができる。液体噴射部10から噴射されるコア材(第1の液体)の量は、上述したように、駆動信号の電圧を変更することによって調整することができる。
【0051】
また、このことは、コア材(第1の液体)の歩留まりが非常に高いということを意味する。すなわち、噴射されたコア材は全てコアを形成するために用いられるため、コア材はほとんど無駄にならない。したがって、カプセルの原料コストを安く抑えることができる。特に、コア材として非常に高価な物質を使用しなければならない場合(例えば、医療用カプセルを生成する際に、医療用材料をコアとする場合)に非常に効果的である。また、使用される液体の量が最適化できるため、廃棄される液体の量が少なく環境保護という観点でも有効である。また、医療用カプセルに限らず、化粧用カプセルや食品用カプセルにおいても、上述したとおり、使用される液体の量が最適化できる。このことは、後述する各実施形態についても言える。
【0052】
コア材を噴射する際の液体噴射速度は、次工程のシェル形成工程(S102)においてシェル材(第2の液体)の液膜を貫通できるような速度に設定される。すなわち、噴射されたコア材の液滴が、該液膜を貫通するのに十分な大きさの運動量を有するように設定される。設定される速度は、貫通するべき液膜の厚さ、液膜の流動速度、液膜材料(シェル材)の粘度や液膜の表面張力、コア(第1の液体)の噴射量や密度等によって条件が異なる。また、液体噴射部10と液体支持部30との位置関係(距離)によっても条件が異なる。したがって、実際にカプセルが生成される条件にてあらかじめ実験を行なって、シェル材の液膜を貫通することができる最小のコア材噴射速度を調べておき、当該速度を閾値として設定しておく。例えば生成されるコアのサイズや使用される液体材料毎に閾値が設定される。制御部HCは、設定された閾値を参照してピエゾ素子PZTを駆動させ、所定の速度以上となるように第1の液体を噴射させる。
【0053】
S102:シェル形成工程
続いて、液膜支持部30に支持されながら流動するシェル材(第2の液体)の液膜に、S101で形成されたコアが突入する。そして、コアが液膜を貫通する際に、シェル材によって当該コアが覆われることによって、シェルが形成される(図2参照)。
【0054】
本実施形態において、シェル材(第2の液体)としては多糖類、もしくは蛋白質類(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、エチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、ジェランガム、キトサン、コラーゲン、フィブリノーゲン等)を含んだ物質(水溶液)が用いられる。アルギン酸塩類等は人体に対してほぼ無害であり、カプセルのシェル材として使用することによりカプセルの応用性の範囲が広くなる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0055】
上述したように、シェル材(第2の液体)とコア材(第1の液体)とは、互いに混合しにくい液体が選択される。言い換えると、第1の液体と第2の液体とが、一定時間の間分離した状態を保つことができるような液体材料を選択すればよい。例えば、コア材が油性の液体であれば、シェル材は水性の液体であればよい。本実施形態のカプセル製造装置では、このように材料選択性が広いので、多くの種類の液体をシェル材(第2の液体)として用いることが可能である。
【0056】
本実施形態では液膜支持部30が鉛直方向(Z軸方向)に沿って設置されているため、シェル材(第2の液体)を重力によって流動させることで、シェル材液膜の流動の状態が一定に保たれやすくなっている。すなわち、液膜が安定的に流動する。そして当該安定的に流動する液膜に対してコアを垂直に突入させることにより、厚みのムラが少ない均一なシェルを形成させやすくなる。ただし、上述したように液膜を支持できるのであれば、液膜支持部30を鉛直方向に対して斜めに設置しても、コアを被覆するシェルを形成させることは可能である。
【0057】
また、シェル材(第2の液体)の液膜が支持される位置と液体噴射部10との間の距離(図3のZ軸方向の距離)は小さい方が望ましい。コア材(第1の液体)が噴射されてから空気中を長距離移動すると、移動する間にコア材が蒸発して形成されるコアの大きさが予定よりも小さくなってしまうおそれがあるからである。特に、上述のような微小サイズのカプセル(例えば、直径が100μm未満のマイクロカプセル)を生成する場合には、移動中にコア材が蒸発しやすいため注意が必要となる。また、本実施形態ではX軸方向に沿って水平にコアが移動されるため、移動距離が長すぎると重力の影響によってコアの軌道が斜めに変化してしまうおそれがある。また、液膜を貫通させるための速度が空気抵抗によって減少してしまうおそれもある。このような問題を防止するためにも、両者の距離は短い方が有利である。したがって、本実施形態では、コア材が噴射されてからシェル材の液膜に着弾するまでの距離が10〜10000μm程度となるように、液膜保持部30が配置される。特に、速度減衰の観点から液滴蒸発に有利であるため、10〜5000μmの距離とすることが望ましい。
【0058】
また、マイクロカプセルの直径が100μm以上1000μm以下である場合には、コア材が噴射されてからシェル材の液膜に着弾するまでの距離が1〜1000mm程度となるように、液膜保持部30が配置される。特に、1〜300mm付近の距離が、速度減衰の観点から液滴蒸発に有利であり、大きく関係するため、望ましい非常に重要なパラメータになる。なお、液滴の蒸発は着弾精度の低下を防ぐために、無風環境下が望ましく、蒸発を抑制するために、液滴飛行環境は多湿が望ましい。
【0059】
カプセル製造装置1では、シェル材(第2の液体)を原料としてカプセルのシェルが形成される。カプセル生成動作を繰り返すうちに、シェル材の液膜に異物(例えば、気泡やコア材の残留物)が混入するおそれがある。このような場合、液膜の品質が悪化することから、形成されるシェルの品質も悪化するおそれがある。
【0060】
しかし、本実施形態ではカプセル生成動作中にシェル材の液膜が流動しているため、該液膜には連続的に新しいシェル材が供給され、古いシェル材は排出される。したがって、シェル材の液膜に異物が混入したとしても、その異物はシェル材とともに速やかに排出されるため、シェル材の液膜はカプセル生成動作を通して異物が混入していないクリーンな状態に保たれる。これにより、形成されるシェルに異物が混入することを抑制できる。
【0061】
また、シェル材(第2の液体)を原料としてカプセルのシェルが形成されるため、カプセルを生成する毎にシェル材の液膜からシェル材が消費されていくことになる。シェル材が消費されることにより液膜の厚さが変化すると、形成されるシェルの厚さも変化してしまうことが考えられる。
【0062】
しかし、本実施形態では上述のようにシェル材が連続的に液膜に供給されるため、シェル材の液膜には常に一定量のシェル材が存在する。すなわち、カプセル生成動作を通してシェル材液膜の厚さを一定に保つことができる。これにより、形成されるシェルの厚さも一定に保たれる。
【0063】
S103:シェル硬化工程
S102でコアを被覆するシェルが形成された後、液体接触部50において当該シェルが硬化される。本実施形態では、液体接触部50の液体貯留槽51の設置位置を調整しておくことにより(図3参照)、シェル材(第2の液体)の液膜を貫通した後コア材(第1の液体)は、そのまま液体貯留槽51内に進入(降下)する。そして、液体貯留槽51内に貯留されたシェル硬化材(第3の液体)とシェル材(第2の液体)とが接触することで化学反応を生じ、シェルが硬化する。硬化したカプセルはそのまま第3の液体の液相中に沈降するため、完成後のカプセルを回収することが容易である。
【0064】
なお、コアが液膜支持部30を貫通した後に液体貯留槽51内に降下するまでの距離は、シェルの蒸発を考慮して決定される。液体支持部30を貫通してから液体貯留槽51までのカプセルの移動距離が長すぎて、移動中にシェル材(第2の液体)が蒸発してしまわないように注意する必要がある。液滴降下中は蒸発や着弾精度の低下を防ぐために、無風環境下が望ましい。さらに、蒸発を抑制するために、液滴飛行環境は多湿であることが望ましい。
【0065】
本実施形態において、シェル硬化材(第3の液体)は、ゲル化誘発因子を持つような多価金属塩(例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩を含むものや、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン等のマンガン塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄等の鉄塩等)を含む(物質)水溶液が用いられる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0066】
そして、シェル材(第2の液体)がシェル硬化材(第3の液体)と接触して架橋反応、重合反応、高分子反応といった化学反応を生じることにより、シェル材がゲル化する。なお、ここで言う「ゲル化」とは粘度が高くなる状態も含み、以下、「硬化」とも表現する。
【0067】
<化学反応について>
ここで、第2の液体(シェル材)としてアルギン酸ナトリウム水溶液を用い、第3の液体(シェル硬化材)として塩化カルシウム水溶液を用いた場合に生じる化学反応の例について説明する。図6は、アルギン酸ナトリウムの説明図である。図7は、アルギン酸ナトリウムからアルギン酸カルシウムゲルへ変化する中間の様子を示す説明図である。図8は、アルギン酸カルシウムゲルの説明図である。
【0068】
図6に示されるように、アルギン酸ナトリウム(C6H7O6Na)はアルギン酸に1価のナトリウムイオンが結合している。このアルギン酸ナトリウムが塩化カルシウム(CaCl2)水溶液と接触すると、2価のカルシウムイオン(Ca2+)が、アルギン酸ナトリウムのナトリウムイオン(Na+)と置換されることで、ゲル化が進行する(図7)。このとき、ナトリウムイオン(Na+)は1価であり、カルシウムイオン(Ca2+)は2価であるので、2個のナトリウムイオン(Na+)に対して、1個のカルシウムイオン(Ca2+)が置換される。つまり、2つのアルギン酸ナトリウム間において、2つのナトリウムイオン(Na+)が脱離して、2価の金属イオンである1つのカルシウムイオン(Ca2+)に置換される(図8)。そして、2つのアルギン酸間を橋架けする架橋凝縮が生じ、ゲル化(硬化)する。このような化学反応は架橋反応とも呼ばれる。なお、反応式は次のようであると考えられる。
2C6H7O6Na+CaCl2=(C6H7O6−Ca−C6H7O6)+2NaCl
【0069】
ところで、図8には、破線で囲われた領域が示されている。アルギン酸カルシウムゲルでは、この破線で囲われた領域を通じてゲルの内部から外部へ水分子が移動したり、外部から内部へと水分子が移動したりする。このように破線で囲われた領域に水分子が存在することにより、弾力性のあるゲルが実現されている。そして、ゲルにおける水分子の流入量と流出量は均衡している。本実施形態において、親水性を有するゲル状のシェルが形成されることによって、人体に摂取する場合に生体親和性が高いカプセルを生成することができる。また、親水性のシェルであることから、コアと外部環境との間で該シェルを介した浸透圧の調整が容易になるという利点もある。
【0070】
また、アルギン酸ナトリウムに対してグリセリンが添加されている場合には、水分子の流入量と流出量との均衡が崩れ、より水分子が外部に流出しやすくなる。図8の破線で囲われた領域にグリセリンも存在するのであるが、このグリセリンが外部に流出する際、この破線で囲われた領域の網目が収縮する。そうすると、アルギン酸カルシウムの密度が高まることから、ゲルが硬くなる。また、グリセリンはゲル化の反応速度を速くすることに貢献していると考えられ、このためゲルが硬くなるとも考えられる。
【0071】
尚、グリセリンは人体に与える影響が少ないため薬剤を含むゲルを製造する際の添加剤として有利である。また、グリセリンは密度が高く水の中では沈みやすいという性質をもつ。そのため、グリセリンを含むゲルを製造した場合には、沈降するのに要する時間が短くなり、生成後のカプセルを回収しやすくなる。また、短時間でゲルが沈降するので、連続してカプセルを生成しやすくなるため、生産性が向上する。
【0072】
本実施形態では、このような化学反応(上述の例では架橋反応)の性質を利用して、シェルのゲルの硬さを調整することが可能である。例えば、第2の液体(シェル材)と第3の液体(シェル硬化材)との接触時間を変更することによって硬さを調整する。まず、第2の液体の液膜を貫通することによりシェルが形成されたカプセルが、液体貯留槽51内に貯留された第3の液体に進入した後、すぐにカプセルを回収したとする。この場合、第2の液体と第3の液体との接触時間が短いため、化学反応はシェル(第2の液体)の表面では進行するが、シェルの内側では十分に進行しない。これにより、シェルが薄く、硬度の低いカプセルを生成することができる。逆に、第2の液体の液膜を貫通したカプセルが液体貯留槽51に進入した後、十分な時間が経過した後にカプセルを回収した場合、化学反応はシェル(第2の液体)の内側まで十分に進行し、シェルが厚く、硬度の高いカプセルを生成することができる。また、化学反応の進行速度は液体の濃度などによっても影響されるため、第2の液体及び第3の液体の濃度を調整することによっても、シェルの硬化速度を変えることができる。つまり、所望の時間で硬さを調整できることになる。
【0073】
このようにして、形成されるシェルの厚さやゲルの硬さを自由に調整することによって、様々な用途に対応したカプセルを生成することができる。例えば、カプセルを医療分野に応用する場合、シェルの強さ(硬さ)を調整することによって、人体に摂取されてからシェルが壊れて内部物質(コア)が露出するまでの時間を選択することができるようになる。具体的には、薬剤等によるコアとそれを被覆するシェル等によって構成されるカプセルを生成する。このようなカプセルによれば、人体に摂取された後、途中で吸収・分解されることなく患部まで薬剤(コア)を到達させ、患部に到達した段階で薬剤を放出させる等、DDS(ドラックデリバリーシステム)への応用が可能となる。
【0074】
シェルが硬化されたカプセルは、液体接触部50に備えられた回収機構によって回収される。
【0075】
<変形例>
図3では、シェル材の液膜が液膜支持部30によって鉛直方向に沿って支持されつつ、重力によって鉛直下方向に流動していたが、流動する液膜を支持できるのであればこのような形態には限られない。例えば、変形例として、シェル材の液膜が水平方向に支持されつつ、水平方向に流動する例について説明する。
【0076】
図9は、第1実施形態の変形例におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。本変形例では、液体噴射部10と液膜支持部30と液体接触部50とを備え、それぞれの機器はZ軸方向に沿って直線状に配置される。液体噴射部10及び液体接触部50は第1実施形態で説明したものと略同様である(図3参照)。一方、液膜支持部30の構成の一部が第1実施形態とは異なる。
【0077】
(液膜支持部30)
変形例の液膜支持部30は、液膜支持部材33と、液膜支持部材34と、不図示の送液機構とを有する。液膜支持部材33及び34はXY平面上で水平となるように間隔hを空けてX軸方向に平行となるように配置される。送液機構は一定量の液体を連続的に送り出すことができる機構であり、例えばポンプ等を用いることができる。この送液機構によって液膜支持部材33及び34の間に生じる隙間(上述の間隔h)に所定量の第2の液体(シェル材)が連続的に供給され、図のようにX軸方向に沿って流される。シェル材は流動しながら液膜支持部材33と34との隙間で表面張力によって広がって薄膜状となり、X軸方向の上流側から下流側に川のように流動するシェル材の液膜が形成される。なお、この場合も液膜は表面張力によって膜状に支持されているため、膜厚(液膜の厚さ)は非常に薄くなり、液体噴射部10から噴射されたコア材を容易に貫通させることができる。
【0078】
変形例では、液膜支持部30がシェル材(第2の液体)の液膜を水平方向(XY平面上)に支持しているため、コア材は当該液膜に垂直な方向(Z軸方向)に噴射される。液体噴射部10から噴射されたコア材は流動する液膜を貫通する際にシェル材(第2の液体)によって被覆されることによってシェルが形成される。そして、Z軸方向下方側に設置された液体接触部50に進入して化学反応を生じることによって形成されたシェルが硬化される。これにより、第1実施形態と同様にカプセルを生成することができる。ただし、変形例の場合、液膜が水平に支持されているため重力によって第2の液体(シェル材)を流動させることができない。したがって、液膜を安定的に流動させるためには、送液機構によって第2の液体を正確に供給し続ける必要がある。
【0079】
一方で、第1実施形態では噴射されたコア材が放物線のような軌道を描いて移動していたのに対して(図3参照)、比較例ではコア材の噴射方向と噴射後の移動方向とが基本的に同一線上(Z軸方向)となる。したがって、コア材の移動方向(軌道)が予測しやすく、詳細な軌道制御等が不要となるため、コア材を噴射する際の速度制御が単純になる。
【0080】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態のカプセル製造装置では、所定の方向に流動する第2の液体(シェル材)が膜状に支持されることで、第2の液体(シェル材)の液膜が形成される。
【0081】
カプセルを製造する際には、液膜支持部30に支持されつつ流動する当該第2の液体(シェル材)の液膜に向けて液体噴射部10から第1の液体(コア材)を噴射することによりコアを形成する。そして、コアが液膜を貫通する際に、第2の液体(シェル材)によってコアを被覆させることにより、コアを内包するシェルを形成させる。そして、液体接触部50に貯留された第3の液体(シェル硬化材)と接触させて化学反応を生じさせることによりシェルを硬化させて、カプセルを生成する。
【0082】
本実施形態のカプセル製造装置によれば、シェル材の液膜が流動しているため、カプセル生成動作中に液膜に気泡等の異物が混入したとしても、その異物はシェル材とともに速やかに液膜から排出される。したがって、シェル材の液膜に異物が混入していないクリーンな状態でカプセルを生成することが可能となる。また、シェル材の液膜には常に新しいシェル材が供給されるため、カプセル生成動作を通してシェル材液膜の厚さを一定に保つことができる。これにより、形成されるシェルの厚さを一定に保ちやすくなる。
【0083】
また、第1の液体(コア材)の噴射量や第2の液体(シェル材)の液膜厚さを調整することにより、所望のサイズのカプセルを高精度に生成することができる。そして液体噴射部10(噴射ヘッド11)を駆動させる駆動信号の周波数を変化させることで第1の液体を噴射する際の噴射タイミングを変更することにより、カプセルの生成効率を自由に調整することができる。さらに、噴射された第1の液体がそのままコアを形成するため、コア材の歩留まりが非常に高い。そのため、医療用カプセル等を生成する場合にコスト面で有利である。
【0084】
また、第2の液体(シェル材)と第3の液体(シェル硬化材)との接触時間を調節することにより、カプセルの使用用途や要求される機能に応じてシェルの厚さや硬さを適切に調整しながらカプセルを生成することができる。そして、液相中でカプセルのシェルが硬化されるため、完成後のカプセルを液相中に沈降させて回収することができる。
【0085】
===第2実施形態===
第2実施形態では、シェル硬化材(第3の液体)の液膜を形成して、シェル材(第2の液体)の液膜と並べて配置する。そして、コア材(第1の液体)の液滴によって該2つの液膜を順番に貫通させ、シェルの形成・硬化を行うことでカプセルを生成する。本実施形態では、カプセル製造装置1とは液体接触部50の構成が異なるカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する。
【0086】
<カプセル製造装置2の構成>
図10に、第2実施形態におけるカプセル製造装置2の基本的な構成を説明する概略図を示す。カプセル製造装置2は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50と、カプセル回収部70とを備える。液体噴射部10及び液膜支持部30についてはカプセル製造装置1とほぼ同様であるが(図3参照)、液体接触部50の構成とカプセル回収部70を備える点がカプセル製造装置1と異なる。以下、異なる点を中心に説明する。
【0087】
(液体接触部50)
カプセル製造装置2の液体接触部50は、液膜支持部30と同様に、液膜を流動させながら支持することができる。液体接触部50は液体支持部材55及び液体支持部材56を有する。液膜支持部材55及び56は、シェルを硬化させるシェル硬化材(第3の液体)を薄膜状に支持する板状の部材であり、所定の間隔(h´)を保つようにZ軸方向に沿って平行に配置される(図10)。この液膜支持部材55及び56の間に生じる隙間(上述の間隔h)にシェル硬化材(第3の液体)を供給すると、Y軸方向の両端側を支持された状態で重力によって鉛直下方向(Z軸方向)に流動する。供給されたシェル硬化材は、液膜支持部材55と56との隙間に広がり、表面張力によって幅h´を有する薄い膜状となる。したがって、液体接触部50の鉛直上方から所定量のシェル硬化材(第3の液体)を連続的に供給することによって、鉛直下方向に流れるシェル硬化材の液膜が形成される。
【0088】
つまり、本実施形態において液膜支持部30は「第1の液膜支持部」であり、液体接触部50は、「第2の液膜支持部」であるともいえる。
【0089】
(カプセル回収部70)
カプセル回収部70は、コアを被覆するシェルが硬化された後の状態のカプセルを回収する回収用トラップ71を有する。回収用トラップ71は図10に示されるような容器であって、噴射されたコア(カプセル)の移動方向に設置される。そして、生成されたカプセルを当該容器内に進入させることによって完成後のカプセルを回収する。なお、カプセルを回収できるのであれば回収用トラップ71の形状は任意であり、図10に示されるような形状には限られない。また、カプセルが回収用トラップ71に着弾する際の衝撃を緩和するために、回収用トラップ71に蒸留水等の液体を貯留してプールのような状態にしてもよい。
【0090】
<カプセル生成動作について>
図11に、第2実施形態においてカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図を示す。第2実施形態では、コア形成工程(S201)、シェル形成工程(S202)、シェル硬化工程(S203)の3つの工程によりカプセルが生成される。このうち、コア形成工程(S201)及びシェル形成工程(S202)は第1実施形態において説明した動作(S101及びS102)と基本的に同様であるが、シェル硬化工程(S203)における動作が異なる。
【0091】
S203:シェル硬化工程
図10に示されるように、本実施形態では、液膜支持部30に支持されるシェル材の液膜(以下、第1の液膜とも言う)と、液体接触部50に支持されるシェル硬化材の液膜(以下、第2の液膜とも言う)とが平行に並んで配置されている。液体噴射部10から噴射されたコア材の液滴は、第1の液膜を貫通する際にシェル材に被覆され、そのまま第2の液膜に突入する。そして、第1の液膜を貫通するときと同様にして第2の液膜に突入する。これにより、コア材(第1の液体)を覆うシェル材(第2の液体)と、第2の液膜を形成するシェル硬化材(第3の液体)とが接触し、化学反応を生じることによってシェル材が硬化する。
【0092】
本実施形態の液体接触部50では、シェル硬化材が液膜(第2の液膜)として支持され、流動している。したがって、カプセル生成動作中にシェル硬化材の液膜に気泡等の異物が混入した場合でも、当該異物はシェル硬化材とともに速やかには外部へ排出される。これにより、カプセル生成動作を通してシェル硬化材の液膜(第2の液膜)を異物等が含まれないクリーンな状態に保つことができる。したがって、シェル材とシェル硬化材との化学反応を正常に進行させやすくなる。
【0093】
また、図10においてコア材は2つの液膜(第1及び第2の液膜)を貫通しているが、必ずしも第2の液膜を貫通させる必要はない。図12に第2実施形態において、カプセルが第2の液膜を貫通しない場合のカプセル生成動作について説明する図を示す。図12では、コア材が第1の液膜を貫通して第2の液膜に着弾した後、第2の液膜を貫通することなく、そのままシェル硬化材(第3の液体)の流れに乗って鉛直下流側(Z軸方向)に移動する。そして、液体接触部50の下部に配置されたカプセル回収部70によってシェル硬化材(第3の液体)とともに回収される。シェル硬化材の液膜(第2の液膜)と一緒にカプセルを移動させることにより、カプセルの移動方向をシェル硬化材液膜の流動方向に合わせることができる。すなわち、カプセルの移動方向をコントロールすることができるので、完成後のカプセルをより回収しやすくなる。
【0094】
また、このようにすることで、コア材に第2の液膜を貫通させる必要がなくなるため、コア材の運動量もその分だけ小さくすることができる。すなわち、液体噴射部10からコア材の液滴を噴射する際の噴射速度を小さくすることができる。
【0095】
<第2実施形態のまとめ>
第2実施形態では、第3の液体(シェル硬化材)の液膜(第2の液膜)が形成され、液体接触部50によって支持されながら流動している。液体噴射部10から噴射されたコア材の液滴は、シェル材の液膜(第1の液膜)を貫通することによってシェル材に被覆される。続いて、シェル硬化材の液膜(第2の液膜)に突入して第3の液体と接触することによって化学反応を生じ、シェルが硬化される。
【0096】
カプセル生成動作中にシェル硬化材の液膜に異物が混入したとしても、その異物はシェル硬化材とともに速やかに液膜から排出されるため、シェル硬化材の液膜は異物が混入していないクリーンな状態に保たれる。これにより、シェル材とシェル硬化材との化学反応が正常に進行しやすくなり、シェルを硬化させやすくなる。また、完成後のカプセルをシェル硬化材の液膜の流れに乗せてシェル硬化材と共に移動させることにより、カプセルを回収しやすくすることもできる。
【0097】
===第3実施形態===
第3実施形態では、液体噴射部10の噴射ヘッド11が複数のノズル111を有するカプセル製造装置3を用いてカプセルの製造を行なう。複数ノズルによってコア材の液滴を1度に複数噴射することで、より効率的にカプセルを生成することができるようになる。
【0098】
<カプセル製造装置3の構成>
図13に、第3実施形態におけるカプセル製造装置3の基本的な構成を説明する概略図を示す。カプセル製造装置3は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50と、カプセル回収部70とを備える。液体噴射部10以外の構成は第2実施形態で説明したカプセル製造装置2とほぼ同様である。以下、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0099】
(液体噴射部10)
カプセル製造装置3では、液体噴射部10の噴射ヘッド11にノズル111が4つ設けられる。この4つのノズルはZ軸方向に直列に並ぶことによりノズル列を構成し、Z軸方向に沿って同時に4つのコア材液滴を噴射することが可能である。なお、1つのノズル列に設けられるノズルの数は4つには限られず、5つ以上のノズルが設けられていてもよいし、3つ以下のノズルが設けられていてもよい。また、1つの噴射ヘッド11に複数のノズル列が設けられるようにすることもできる。1つの噴射ヘッド11に対してノズル111が複数設けられる場合には、ピエゾ素子PZTも各ノズルに対応して設けられるようにする。そして、ピエゾ素子PZTを駆動するための駆動信号も各ノズルについて生成されるようにする。これにより、ノズル毎に液滴噴射量や噴射速度を制御しやすくなる。各ノズルの構成及び液滴噴射時の動作については第1実施形態で説明したものと同様である(図4参照)。
【0100】
<カプセル生成動作について>
噴射ヘッド11のノズル列から噴射された複数(図13においては4つ)のコア材液滴は液膜支持部30に支持されたシェル材の液膜(第1の液膜)を貫通する際に、それぞれシェル材によって被覆される。その後、シェル硬化材の液膜(第2の液膜)に着弾してシェルとシェル硬化材とが接触することによって化学反応を生じ、シェルが硬化される。したがって、液体噴射部10から噴射される液滴(コア)を増やすことにより、より多くのカプセルを同時に生成することができるようになり、カプセル生成効率を高くすることができる。
【0101】
なお、本実施形態のように複数のコア材液滴を同時に噴射する方法は、第1実施形態で説明したカプセル製造装置1(図3参照)についても適用可能である。その場合、噴射されたコア材がシェル材によって被覆された後、シェルが硬化する前にカプセル同士が接触しないように十分に注意する必要がある。シェルが未硬化の状態で2以上のカプセルが接触すると、互いのシェルが破壊、または合体してしまい、カプセル生成効率が悪化するからである。
【0102】
これに対して、図13のようにシェル硬化材によって流動する液膜(第2の液膜)を形成し、シェル材の液膜(第1の液膜)に隣り合うようにして配置することで、カプセルを安全に生成しやすくなる。図13の場合、噴射されたコア材がシェル材によって被覆された後、第2の液膜に突入した時点でカプセルのシェルが硬化される。したがって、第2の液膜に突入した後であれば、その後に2つのカプセルが接触して重なったとしても、互いのシェルが破壊されることはない。さらに、上述の図12で説明したように、第2の液膜の流れに乗せてシェル硬化材と共にカプセルを回収するようにすれば、カプセルを確実に回収しやすくなる。
【0103】
なお、図13の例では液体噴射部10のノズル列がZ軸方向に沿って配置されているが、ノズル列の配置はこれには限られない。例えば、図のY軸方向に沿ってノズル列を配置してもよいし、斜め方向に配置されるのであってもよい。ノズル列の配置は、流動する液膜(第1の液膜及び第2の液膜)の状態などに応じて決定される。
【0104】
<第3実施形態のまとめ>
第3実施形態では、複数のノズルが直列に並ぶノズル列を備えた液体噴射部を用いて、シェル材の液膜及びシェル硬化材の液膜に対して複数のコア材を噴射させる。
これにより、同時に複数のカプセルが生成され、高効率なカプセル製造を実現することができる。
【0105】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのカプセル製造装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0106】
<カプセル生成材料について>
前述の各実施形態では、第1の液体〜第3の液体についてそれぞれ具体例が例示されていたが、例示された以外のカプセル生成材料を用いてカプセルを生成することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,2,3 カプセル製造装置、
10 液体噴射部、11 噴射ヘッド、12 第1液体タンク、
30 液膜支持部、31〜34 液膜支持部材、
50 液体接触部、51 液体貯留槽、55 液膜支持部材、56 液膜支持部材、
70 カプセル回収部、71 回収用トラップ、
111 ノズル、112 液体供給路、114 ノズル連通路、116 弾性板、
PZT ピエゾ素子
【技術分野】
【0001】
本発明は、カプセル製造装置、及び、カプセル製造方法、及び、医療用カプセルに関する。
【背景技術】
【0002】
芯物質(コア)を皮膜(シェル)で覆うことによって生成されるカプセルが知られている。このようなカプセルのうち、粒径がマイクロメートルオーダーの微小なカプセルはマイクロカプセル(マイクロスフィア、ゲルビーズ)と呼ばれ、近年開発が進んでいる。マイクロカプセルは、コアやシェルの形成材料を適当に選択することで様々な機能を持たせることができる。例えば、コアを外部環境から保護する機能や、外部環境へコアを放出する速度を調節する機能等を持たせることができ、現在では、機能性材料として食品、医薬品等の多岐の分野に渡って応用されている。
【0003】
このようなマイクロカプセルの生成方法として、カプセルのコアを形成するコア材及びシェルを形成するシェル材(ともに液体である)を用いて、シェル材によってコア材を被覆させることでカプセルを生成する方法がある。例えば、コア材によって形成される液面の上に、該コア材よりも比重の小さいシェル材を浮かべるようにしてシェル材を液膜状に形成して保持する。そして、コア材とシェル材との界面付近(コア材液面の下側)で気泡を発生・破裂させる。この気泡が破裂する際に生じる圧力によって、コア材をシェル材の液膜側に吐出させ、シェル材によってコア材を包み込むように被覆してマイクロカプセルを生成する方法が提案されている(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−224647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1の方法によれば、シェルの厚さが均一なマイクロカプセルを生成しやすくなる。
しかし、特許文献1の方法でカプセルを生成する場合、時間の経過と共にシェル材の液膜の状態が悪化するおそれがある。例えば、カプセル生成動作中に、シェル材の液膜にコア材の断片や小さな気泡等の異物が混入する場合が考えられる。異物が混入した状態のシェル材によってコア材が被覆されると、シェルに異物が含まれたカプセルが生成されることになり、高品質なカプセルを生成することができなくなる。
【0006】
これに対して、特許文献1ではシェル材の液膜に異物が混入する可能性が考慮されていないため、液膜に異物が混入した場合であっても当該異物を液膜から排除することができない。したがって、液膜を正常な状態(異物が混入していない状態)に保つことができず、高品質なカプセルを生成することが困難な場合がある。
【0007】
本発明では、カプセルのシェルを形成するシェル材の液膜に異物が混入していない状態でカプセルを生成可能なカプセル製造装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための主たる発明は、第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、ことを特徴とするカプセル製造装置である。
【0009】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】カプセルの概念図である。
【図2】シェルが形成される際の動作について概略的に説明する図である。
【図3】第1実施形態におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。
【図4】噴射ヘッド11の構造を説明する断面図である。
【図5】第1実施形態においてカプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図である。
【図6】アルギン酸ナトリウムの説明図である。
【図7】アルギン酸ナトリウムからアルギン酸カルシウムゲルへ変化する中間の様子を示す説明図である。
【図8】アルギン酸カルシウムゲルの説明図である。
【図9】第1実施形態の変形例におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。
【図10】第2実施形態におけるカプセル製造装置2の基本的な構成を説明する概略図である。
【図11】第2実施形態においてカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図である。
【図12】第2実施形態において、カプセルが第2の液膜を貫通しない場合のカプセル生成動作について説明する図である。
【図13】第3実施形態におけるカプセル製造装置3の基本的な構成を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも、以下の事項が明らかとなる。
【0012】
第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、を備え、前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
このようなカプセル製造装置によれば、カプセルのシェルを形成するシェル材の液膜に異物が混入していない状態でカプセルを生成することができる。これにより、シェルに異物が混入されていない高品質なカプセルが生成される。
【0013】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体を流動させる所定の方向は、鉛直下向きの方向であることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、シェル材の液膜には鉛直方向に対して重力が作用する。つまり、シェル材を流動させるための動力(例えばポンプやモーター等による動力)を外部から加えることなく、重力によってシェル材の液膜を流動させることができる。また、鉛直方向に働く重力以外には余計な外力が作用しないため、液膜を安定して支持しやすくなる。
【0014】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体によって形成されるシェルを第3の液体と接触させて化学反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、適切に硬化されたシェルを有するカプセルを生成することができる。
【0015】
かかるカプセル製造装置であって、所定の方向に流動する前記第3の液体を膜状に支持する第2の液膜支持部を備えることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、カプセルのシェルを硬化させるシェル硬化材の液膜に異物が混入していない状態でシェル材とシェル硬化材との化学反応を生じさせることができる。これにより、化学反応を正常に進行させ、シェルを適切な硬さにすることができる。
【0016】
かかるカプセル製造装置であって、前記第2の液体は多糖類または蛋白質類を含む水溶液であり、前記第3の液体は多価金属塩を含む水溶液であり、前記第2の液体と前記第3の液体とを接触させて架橋反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、人体に無害で医療分野等に対する応用性が高いカプセルを生成することができる。また、親水性のゲルによるシェルを形成することが可能であるため、保水性能が高く、また、外部環境とカプセルとの間でシェルを介しての浸透圧調整が容易なカプセルを生成することができる。
【0017】
かかるカプセル製造装置であって、前記液体噴射部は、前記第1の液体の液滴を噴射するノズルが複数並ぶノズル列を備えることが望ましい。
このようなカプセル製造装置によれば、ノズル列から一度に複数のコア材を噴出させることができるため、一度に複数のカプセルが生産可能になる。つまり、カプセルを効率よく量産することができる。
【0018】
また、かかるカプセル製造装置で製造された医療用カプセルが明らかなる。
このような医療用カプセルによれば、所望のサイズや硬さの微小カプセルが製造できるため、DDS(ドラックデリバリーシステム)のように、薬剤などのコアとそれを被覆するシェルなどを構成することにより、途中で吸収・分解されることなく患部に到達させ、患部で薬剤を放出することができる。
【0019】
また、所定の方向に流動しながら膜状に支持された第2の液体の液膜に向けて第1の液体を噴射することにより、コアを形成することと、前記コアが前記第2の液体の液膜を貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成することと、を有するカプセル製造方法が明らかとなる。
===概要===
<カプセルとは>
図1に、本実施形態で生成されるカプセルの概念図を示す。本実施形態におけるカプセルは、図のように「コア」(内包物)、及びそれを覆う「シェル」によって構成され、球状の外形を有する。「コア」を形成するコア材は、有効成分(例えば、ハイドロキノン、セラミド、牛血清アルブミン、γ−グロブリン、リピオドール、ビフィズス菌、ビタミン、ヒアルロン酸、IPS細胞等)を含んだ物質である。コア材には当該有効成分が溶解していているもの、有効成分が分散しているもの、また、有効成分が固体もしくは気体状で存在しているものが含まれる。このようなカプセルは、食料、医薬部外品、医薬品等、種々の分野で使用されており、カプセルの大きさ(内包物の容量)や、シェルの厚さはその用途に応じて様々である。
【0020】
<カプセルの生成方法>
上述のようなコアとシェルとを有するカプセルを生成する方法の概要について簡単に説明する。本実施形態では、複数種類の液体を原材料としてカプセルが生成される。コアを形成するコア材として第1の液体が用いられ、シェルを形成するシェル材として第2の液体が用いられるものとする。第1の液体及び第2の液体は、生成されるカプセルの機能や用途に応じてそれぞれ最適な液体材料が選択される。
【0021】
カプセルを生成する際には、薄膜状に支持された状態で所定の方向に流動するシェル材(以下、シェル材による「液膜」とも呼ぶ)に対して、カプセルのコアとなるコア材(第1の液体)の液滴を突入させる。そして、コア材がシェル材の液膜を貫通する際にシェル材がコア材全体を包み込むようにして覆うことによってシェルが形成される。
【0022】
図2は、シェルが形成される際の動作について概略的に説明する図である。図の(A)〜(D)は流動するシェル材の液膜をコア材が貫通する際の様子を時系列順に表したものである。図では、シェル材が鉛直下方向に流動しながら薄膜状に支持されることによって、シェル材の液膜(斜線部)が形成されている。このシェル材の液膜に対して、図の左側から右側へコア材が突入するものとする。
【0023】
(A)はじめに、コア材(第1の液体)の液滴によって形成されたコアが、シェル材(第2の液体)によって形成された液膜に所定の速度(液膜を貫通可能な速度)で突入する。(B)液膜と接触したコアはそのまま直進を続け、液膜を貫通しようとする。これに対して、液膜はコアを包むように変形する。なお、コア材(第1の液体)とシェル材(第2の液体)とは、組成や比重、粘度、表面張力等の性質が異なり、互いに混合しにくい液体が選択される。例えば、水性の液体と油性の液体など界面が形成される液体の組合せを選択することにより、両者が接触した場合でも直ちに混合されることがないようにする。(C)コアは液膜に包まれたまま直進を続ける。コアが当初の液膜の位置を通過した段階では、コアの大部分がシェル材(第2の液体)の液膜によって覆われる。なお、コアが通過した部分では液膜に穴が開いたような状態となるが、その穴の鉛直上方側から下方側へシェル材(第2の液体)が穴を塞ぐように移動(流動)することにより、液膜を穴のない状態に戻そうとする。(D)コアが液膜を完全に貫通すると、コア全体がシェル材によって被覆された状態となり、コアを内包するシェルが形成される。また、コアが貫通することによって液膜に開いた穴は第2の液体によって閉じられる。
【0024】
このような動作を経ることで、シェルによってコアが被覆された構造を有するカプセルが生成される。
【0025】
なお、図2の(D)の状態では、カプセルのシェルが液体(第2の液体)のままである。そのため、当該シェルは外部環境に対して非常に不安定なものもあり、生成されたカプセルに触れるだけでシェルが破壊されてしまうおそれがある。そこで、本実施形態では、形成されたシェル(第2の液体)にシェル硬化材として第3の液体を接触させて化学反応を生じさせることにより、シェルを適切な硬さに硬化させる。シェルを硬化させることよって外部環境に対して強いカプセルを生成する。第2の液体と第3の液体との化学反応についての詳細は後で説明する。なお、硬化するとは、液体の粘度が高くなることや、液体状のものが固体状に性状変化することなどを含み、特に固体特有の強度変化に限定されるものではない。
【0026】
===第1実施形態===
発明を実施するためのカプセル製造装置の形態として、液体噴射装置を用いたカプセル製造装置1を例に挙げて説明する。
【0027】
カプセル製造装置1では、インクジェット方式を用いて液滴を噴射することにより、カプセルの大きさやシェルの厚さを自由に調整しながら、所望のサイズのカプセルを製造(生成)する。また、インクジェット方式により微少量の液滴を噴射することで、カプセル径がナノメートル(nm)オーダーやマイクロメートル(μm)オーダーとなるような、微小サイズのカプセルを生成することが可能である。例えば、0.1〜500pl(ピコリットル)程度の容量の、所謂マイクロカプセル(マイクロスフィア)を生成することができる。
【0028】
<カプセル製造装置1の構成>
図3は、第1実施形態におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。カプセル製造装置1は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50とを備える。
【0029】
説明のため、図3に示されるように、X軸、Y軸、Z軸からなる座標軸を設定する。Z軸は鉛直下向きの方向(図3において下方向)であり、X軸はZ軸に対して垂直な方向であり、Y軸はZ軸及びX軸に垂直な方向であるものとする。図3では、シェル材(第2の液体)の液膜がYZ平面上に形成され、コア材(第1の液体)がX軸方向に噴射される。
【0030】
(液体噴射部10)
液体噴射部10は、第1の液体(コア材)を噴射することによってマイクロカプセルのコアを形成するコア形成部である。液体噴射部10は噴射ヘッド11と第1液体タンク12とを有する。
【0031】
噴射ヘッド11は第1の液体を液滴として噴射する。噴射ヘッド11による液体噴射動作については後で説明する。第1液体タンク12はコアの原料である第1の液体を貯留しておくタンクであり、不図示の液体伝送路を介して噴射ヘッド11に第1の液体を供給する。噴射ヘッド11の動作は不図示の制御部HCによって制御される。制御部HCは、噴射ヘッド11を駆動させるための電圧波形信号である駆動信号を生成し、後述するピエゾ素子PZTに印加することによって、第1の液体を噴射させる。
【0032】
本実施形態で、噴射ヘッド11はシェル材(第2の液体)の液膜に対して垂直な方向にコア材(第1の液体)の液滴を噴射する。液膜に対してコア材を垂直に突入させることにより、コア材を被覆するシェル材の厚さをなるべく均等にするためである。図3の場合、シェル材の液膜がYZ平面上に形成されているため、コア材はX軸方向に噴射される。ただし、コア材の液滴がシェル材によって被覆されるのであれば、液膜に対してコア材が垂直に噴射されなくてもカプセルを生成することは可能である。例えば、液膜に対してコア材を斜め方向に噴射してもよい。
【0033】
図4は、噴射ヘッド11の構造を説明する断面図である。噴射ヘッド11は、ノズル111、ピエゾ素子PZT、液体供給路112、ノズル連通路114(容積室に相当する)、及び、弾性板116(ダイアフラムに相当する)を有する。なお、図4では噴射ヘッド11が下方向に液体を噴射するものとして説明を行なう。
【0034】
第1液体タンク12に貯留された第1の液体は、液体供給路112を介してノズル連通路114に供給される。圧電素子であるピエゾ素子PZTには、制御部HCで生成された複数のパルスを有する電圧信号が駆動信号として印加される。駆動信号が印加されると、該駆動信号に従ってピエゾ素子PZTが伸縮し、弾性板116を振動させる。そして、ノズル連通路114の容積を変化させ、駆動信号の振幅に対応するようにノズル連通路114内に供給された第1の液体を移動させる。
【0035】
第1の液体の移動について具体的に説明する。本願実施形態のピエゾ素子PZTは、電圧を印加すると図4の上下方向に収縮する特性を有する。駆動信号としてある電圧からより大きい電圧を印加した場合、ピエゾ素子PZTは図4の上下方向に収縮してノズル連通路114の容積を拡大する方向に弾性板116を変形させる。このとき、ノズル111における液体表面はノズル111の内側(図4の上側)方向に移動する。逆に、ある電圧からより小さい電圧を印加した場合、ピエゾ素子PZTは図4の上下方向に伸長し、ノズル連通路114の容積を縮小する方向に弾性板116を変形させる。このとき、ノズル111の液体表面はノズル111の外側(図4の下側)方向に移動する。このように、ノズル連通路114の容積を変化させるとノズル連通路114における圧力が変動し、ノズル連通路114に充填された液体をノズル111から噴射することができる。噴射された第1の液体は、その表面張力により球形(液滴)となる。つまり、ピエゾ素子PZTに印加される駆動信号の振幅(電圧の大きさ)を変更することによって、噴射される液滴の大きさ(液体の量)を調整することができる。これにより、所望のサイズのカプセルコアを正確に形成することができるようになる。
【0036】
なお、第1の液体に酸素分子が溶け込んでいると、この圧力変動の際、ノズル連通路114において気泡が生じてしまう。よって、本実施形態において使用される第1の液体は予め中空糸などを用いて脱気されていることが望ましい。
【0037】
本実施形態において、ノズル111は、例えば直径20μmであり、噴射周波数10Hz以上で第1の液体を噴射することができる。また、駆動信号の周波数を変更することにより噴射周波数を変更し、カプセル(コア)の生成効率を変化させことができる。
【0038】
(液膜支持部30)
液膜支持部30は、液膜支持部材31及び液膜支持部材32を有する。液膜支持部材31及び32は、シェルを形成する原材料である第2の液体(シェル材)を薄膜状に支持する板状の部材である。液膜支持部材31及び32は、図3に示されるように所定の間隔(h)を保つようにZ軸方向に沿って平行に配置される。そして、この液膜支持部材31及び32の間に生じる隙間(上述の間隔h)に第2の液体(シェル材)を供給すると、Y軸方向の両端側を支持された状態で重力によって鉛直下方向(Z軸方向)に流動する。供給されたシェル材は、液膜支持部材31と32との隙間に広がるが、このとき、表面張力が働くためシェル材は幅hを有する薄い膜状となる。したがって、液膜支持部30の鉛直上方からシェル材を連続的に供給することによって、鉛直下方向に流動するシェル材が膜状に形成され、シェル材の液膜として支持される。
【0039】
上述のように、当該液膜は表面張力によって膜状に支持されているため、膜厚(液膜の厚さ)が非常に薄くなり、液体噴射部10から噴射されたコア材を容易に貫通させやすくなる。これにより、カプセル生成の効率を高くすることができる。
【0040】
なお、液膜支持部30の最下部(鉛直下方向)まで流動したシェル材は、そのまま液膜支持部30の外部へ排出されるが、排出されたシェル材を回収してクリーニング等した後にシェル材として再利用するようにしてもよい。これにより、使用されるシェル材の量を最適化することができる。
【0041】
液膜支持部材31及び32の材質は、液膜を支持できるものであれば自由であり、本実施形態では金属製(例えば、ステンレス、アルミニウム、銅、金、銀、真鍮、チタン、炭素鋼、洋白等)や樹脂製(例えば、アクリル、ポリウレタン、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン等)の部材を用いることができる。なお、液膜支持部材31及び32の厚さは、支持するべき液膜の厚さを考慮して決定される。本実施形態において、シェル材の液膜はコア材の液滴が貫通可能なように極めて薄く形成されるため、液膜支持部材31及び32もそのような薄膜を支持することが可能なものが用いられる。
【0042】
なお、図3に示されるシェル材の液膜は、液膜支持部材31及び32によって鉛直方向(Z軸方向)に沿って支持されているが、膜支持部材31及び32が鉛直方向に対して斜めに設置されることにより、シェル材の液膜が鉛直方向に対して斜めに支持されるのであってもよい。言い換えると、シェル材が鉛直下向きの成分を有する方向に流動しつつ水平方向にも流動するようにしてもよい。
【0043】
ただし、図3のように鉛直下方向にシェル材を流動させる場合には、シェル材には鉛直方向成分の力(重力)のみが働き、水平方向成分の力が働かなくなる。これにより、モーターを駆動させる動力等を用いることなくシェル材を重力によって鉛直下方向に流動させることができる。また、重力以外の余計な外力が作用しないため、液膜を安定して支持しやすくなる。
【0044】
(液体接触部50)
液体接触部50は、第3の液体(シェル硬化材)を液体の状態で貯留し、該液体接触部50において第3の液体(シェル硬化材)と第2の液体(シェル材)とを接触させる。シェル材とシェル硬化材との接触によって化学反応が生じてシェルが適切な硬さになる。
【0045】
液体接触部50は、液体貯留槽51を有する。液体貯留槽51は液体を貯留しておくことができる容器であり、図3の斜線部で表されるように第3の液体を液体の状態で貯留して液相を形成する。本実施形態においては、液体貯留槽51の上部が開口部となっていて、液膜支持部30を貫通することにより第2の液体(シェル材)によって被覆されたカプセルが当該開口部より第3の液体中に進入する。そして、第2の液体(シェル材)が第3の液体(シェル硬化材)と接触することによって、液体貯留槽51内において化学反応を生じる。なお、液体貯留槽51を設置する位置はシェル材の液膜を貫通した後のカプセル(シェル材によって被覆されたコア材)の軌道に合わせて調整される。言い換えると、シェル材の液膜を貫通した後のカプセルが落下する位置に合わせて液体貯留槽51が設置される。
【0046】
また、液体貯留槽51は、第3の液体と接触した後のカプセルを回収するための回収機構(不図示)を備えていてもよい。回収機構としては、例えば、生成されたカプセルを第3の液体中から濾し取るためのろ過装置等が備えられる。この場合、液体接触部50はカプセル回収部としての機能も有する。
【0047】
<カプセル生成動作について>
続いて、カプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する際の具体的動作について説明する。図5に、第1実施形態においてカプセル製造装置1を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図を示す。本実施形態では、コア形成工程(S101)、シェル形成工程(S102)、シェル硬化工程(S103)の3つの工程によりカプセルが生成される。
【0048】
S101:コア形成工程
まず、液体噴射部10から噴射されるコア材(第1の液体)の液滴(ドット)によってカプセルのコアが形成される。コア材としては、有効成分(例えば、ハイドロキノン、セラミド、牛血清アルブミン、γ−グロブリン、リピオドール、ビフィズス菌、ビタミン、ヒアルロン酸、IPS細胞等)を含んだ物質が用いられる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0049】
図3に表されるように、コア材を噴射する際は、液膜支持部30によって支持されるシェル材の液膜に向かって垂直方向に液滴が噴射される。図3の例では、シェル材の液膜がYZ平面に平行に支持され、液体噴射部10は液膜支持部30に対して横方向(X軸方向)に設けられており、コア材(第1の液体)はX軸方向に噴射される。ただし、上述したように、コア材は必ずしもシェル材の液膜に対して垂直な方向に噴射される必要は無く、シェル材の液膜に対して斜めの方向に噴射されるのであってもよい。
【0050】
本実施形態において、コア材を噴射する際の液体噴射量は、生成されるカプセルのコアの大きさ(容量)に応じて決定される。噴射された第1の液体による液滴がそのままコアになるためである。すなわち、コア材を噴射する量を制御することによって、生成されるカプセルのサイズ(コアの大きさ)を自由に設定することができる。液体噴射部10から噴射されるコア材(第1の液体)の量は、上述したように、駆動信号の電圧を変更することによって調整することができる。
【0051】
また、このことは、コア材(第1の液体)の歩留まりが非常に高いということを意味する。すなわち、噴射されたコア材は全てコアを形成するために用いられるため、コア材はほとんど無駄にならない。したがって、カプセルの原料コストを安く抑えることができる。特に、コア材として非常に高価な物質を使用しなければならない場合(例えば、医療用カプセルを生成する際に、医療用材料をコアとする場合)に非常に効果的である。また、使用される液体の量が最適化できるため、廃棄される液体の量が少なく環境保護という観点でも有効である。また、医療用カプセルに限らず、化粧用カプセルや食品用カプセルにおいても、上述したとおり、使用される液体の量が最適化できる。このことは、後述する各実施形態についても言える。
【0052】
コア材を噴射する際の液体噴射速度は、次工程のシェル形成工程(S102)においてシェル材(第2の液体)の液膜を貫通できるような速度に設定される。すなわち、噴射されたコア材の液滴が、該液膜を貫通するのに十分な大きさの運動量を有するように設定される。設定される速度は、貫通するべき液膜の厚さ、液膜の流動速度、液膜材料(シェル材)の粘度や液膜の表面張力、コア(第1の液体)の噴射量や密度等によって条件が異なる。また、液体噴射部10と液体支持部30との位置関係(距離)によっても条件が異なる。したがって、実際にカプセルが生成される条件にてあらかじめ実験を行なって、シェル材の液膜を貫通することができる最小のコア材噴射速度を調べておき、当該速度を閾値として設定しておく。例えば生成されるコアのサイズや使用される液体材料毎に閾値が設定される。制御部HCは、設定された閾値を参照してピエゾ素子PZTを駆動させ、所定の速度以上となるように第1の液体を噴射させる。
【0053】
S102:シェル形成工程
続いて、液膜支持部30に支持されながら流動するシェル材(第2の液体)の液膜に、S101で形成されたコアが突入する。そして、コアが液膜を貫通する際に、シェル材によって当該コアが覆われることによって、シェルが形成される(図2参照)。
【0054】
本実施形態において、シェル材(第2の液体)としては多糖類、もしくは蛋白質類(例えば、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸カルシウム、アルギン酸カリウム、アルギン酸アンモニウム、エチルセルロース、メチルセルロース、ペクチン、ジェランガム、キトサン、コラーゲン、フィブリノーゲン等)を含んだ物質(水溶液)が用いられる。アルギン酸塩類等は人体に対してほぼ無害であり、カプセルのシェル材として使用することによりカプセルの応用性の範囲が広くなる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0055】
上述したように、シェル材(第2の液体)とコア材(第1の液体)とは、互いに混合しにくい液体が選択される。言い換えると、第1の液体と第2の液体とが、一定時間の間分離した状態を保つことができるような液体材料を選択すればよい。例えば、コア材が油性の液体であれば、シェル材は水性の液体であればよい。本実施形態のカプセル製造装置では、このように材料選択性が広いので、多くの種類の液体をシェル材(第2の液体)として用いることが可能である。
【0056】
本実施形態では液膜支持部30が鉛直方向(Z軸方向)に沿って設置されているため、シェル材(第2の液体)を重力によって流動させることで、シェル材液膜の流動の状態が一定に保たれやすくなっている。すなわち、液膜が安定的に流動する。そして当該安定的に流動する液膜に対してコアを垂直に突入させることにより、厚みのムラが少ない均一なシェルを形成させやすくなる。ただし、上述したように液膜を支持できるのであれば、液膜支持部30を鉛直方向に対して斜めに設置しても、コアを被覆するシェルを形成させることは可能である。
【0057】
また、シェル材(第2の液体)の液膜が支持される位置と液体噴射部10との間の距離(図3のZ軸方向の距離)は小さい方が望ましい。コア材(第1の液体)が噴射されてから空気中を長距離移動すると、移動する間にコア材が蒸発して形成されるコアの大きさが予定よりも小さくなってしまうおそれがあるからである。特に、上述のような微小サイズのカプセル(例えば、直径が100μm未満のマイクロカプセル)を生成する場合には、移動中にコア材が蒸発しやすいため注意が必要となる。また、本実施形態ではX軸方向に沿って水平にコアが移動されるため、移動距離が長すぎると重力の影響によってコアの軌道が斜めに変化してしまうおそれがある。また、液膜を貫通させるための速度が空気抵抗によって減少してしまうおそれもある。このような問題を防止するためにも、両者の距離は短い方が有利である。したがって、本実施形態では、コア材が噴射されてからシェル材の液膜に着弾するまでの距離が10〜10000μm程度となるように、液膜保持部30が配置される。特に、速度減衰の観点から液滴蒸発に有利であるため、10〜5000μmの距離とすることが望ましい。
【0058】
また、マイクロカプセルの直径が100μm以上1000μm以下である場合には、コア材が噴射されてからシェル材の液膜に着弾するまでの距離が1〜1000mm程度となるように、液膜保持部30が配置される。特に、1〜300mm付近の距離が、速度減衰の観点から液滴蒸発に有利であり、大きく関係するため、望ましい非常に重要なパラメータになる。なお、液滴の蒸発は着弾精度の低下を防ぐために、無風環境下が望ましく、蒸発を抑制するために、液滴飛行環境は多湿が望ましい。
【0059】
カプセル製造装置1では、シェル材(第2の液体)を原料としてカプセルのシェルが形成される。カプセル生成動作を繰り返すうちに、シェル材の液膜に異物(例えば、気泡やコア材の残留物)が混入するおそれがある。このような場合、液膜の品質が悪化することから、形成されるシェルの品質も悪化するおそれがある。
【0060】
しかし、本実施形態ではカプセル生成動作中にシェル材の液膜が流動しているため、該液膜には連続的に新しいシェル材が供給され、古いシェル材は排出される。したがって、シェル材の液膜に異物が混入したとしても、その異物はシェル材とともに速やかに排出されるため、シェル材の液膜はカプセル生成動作を通して異物が混入していないクリーンな状態に保たれる。これにより、形成されるシェルに異物が混入することを抑制できる。
【0061】
また、シェル材(第2の液体)を原料としてカプセルのシェルが形成されるため、カプセルを生成する毎にシェル材の液膜からシェル材が消費されていくことになる。シェル材が消費されることにより液膜の厚さが変化すると、形成されるシェルの厚さも変化してしまうことが考えられる。
【0062】
しかし、本実施形態では上述のようにシェル材が連続的に液膜に供給されるため、シェル材の液膜には常に一定量のシェル材が存在する。すなわち、カプセル生成動作を通してシェル材液膜の厚さを一定に保つことができる。これにより、形成されるシェルの厚さも一定に保たれる。
【0063】
S103:シェル硬化工程
S102でコアを被覆するシェルが形成された後、液体接触部50において当該シェルが硬化される。本実施形態では、液体接触部50の液体貯留槽51の設置位置を調整しておくことにより(図3参照)、シェル材(第2の液体)の液膜を貫通した後コア材(第1の液体)は、そのまま液体貯留槽51内に進入(降下)する。そして、液体貯留槽51内に貯留されたシェル硬化材(第3の液体)とシェル材(第2の液体)とが接触することで化学反応を生じ、シェルが硬化する。硬化したカプセルはそのまま第3の液体の液相中に沈降するため、完成後のカプセルを回収することが容易である。
【0064】
なお、コアが液膜支持部30を貫通した後に液体貯留槽51内に降下するまでの距離は、シェルの蒸発を考慮して決定される。液体支持部30を貫通してから液体貯留槽51までのカプセルの移動距離が長すぎて、移動中にシェル材(第2の液体)が蒸発してしまわないように注意する必要がある。液滴降下中は蒸発や着弾精度の低下を防ぐために、無風環境下が望ましい。さらに、蒸発を抑制するために、液滴飛行環境は多湿であることが望ましい。
【0065】
本実施形態において、シェル硬化材(第3の液体)は、ゲル化誘発因子を持つような多価金属塩(例えば、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硝酸カルシウム、クエン酸カルシウム、乳酸カルシウム、炭酸カルシウム等のカルシウム塩を含むものや、塩化アルミニウム、硝酸アルミニウム、硫酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、リン酸アルミニウム等のアルミニウム塩、塩化マンガン、硝酸マンガン、酢酸マンガン、硫酸マンガン等のマンガン塩、塩化マグネシウム、硝酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム等のマグネシウム塩、リン酸第一鉄、リン酸第二鉄等の鉄塩等)を含む(物質)水溶液が用いられる。後述の各実施形態についても同様とする。
【0066】
そして、シェル材(第2の液体)がシェル硬化材(第3の液体)と接触して架橋反応、重合反応、高分子反応といった化学反応を生じることにより、シェル材がゲル化する。なお、ここで言う「ゲル化」とは粘度が高くなる状態も含み、以下、「硬化」とも表現する。
【0067】
<化学反応について>
ここで、第2の液体(シェル材)としてアルギン酸ナトリウム水溶液を用い、第3の液体(シェル硬化材)として塩化カルシウム水溶液を用いた場合に生じる化学反応の例について説明する。図6は、アルギン酸ナトリウムの説明図である。図7は、アルギン酸ナトリウムからアルギン酸カルシウムゲルへ変化する中間の様子を示す説明図である。図8は、アルギン酸カルシウムゲルの説明図である。
【0068】
図6に示されるように、アルギン酸ナトリウム(C6H7O6Na)はアルギン酸に1価のナトリウムイオンが結合している。このアルギン酸ナトリウムが塩化カルシウム(CaCl2)水溶液と接触すると、2価のカルシウムイオン(Ca2+)が、アルギン酸ナトリウムのナトリウムイオン(Na+)と置換されることで、ゲル化が進行する(図7)。このとき、ナトリウムイオン(Na+)は1価であり、カルシウムイオン(Ca2+)は2価であるので、2個のナトリウムイオン(Na+)に対して、1個のカルシウムイオン(Ca2+)が置換される。つまり、2つのアルギン酸ナトリウム間において、2つのナトリウムイオン(Na+)が脱離して、2価の金属イオンである1つのカルシウムイオン(Ca2+)に置換される(図8)。そして、2つのアルギン酸間を橋架けする架橋凝縮が生じ、ゲル化(硬化)する。このような化学反応は架橋反応とも呼ばれる。なお、反応式は次のようであると考えられる。
2C6H7O6Na+CaCl2=(C6H7O6−Ca−C6H7O6)+2NaCl
【0069】
ところで、図8には、破線で囲われた領域が示されている。アルギン酸カルシウムゲルでは、この破線で囲われた領域を通じてゲルの内部から外部へ水分子が移動したり、外部から内部へと水分子が移動したりする。このように破線で囲われた領域に水分子が存在することにより、弾力性のあるゲルが実現されている。そして、ゲルにおける水分子の流入量と流出量は均衡している。本実施形態において、親水性を有するゲル状のシェルが形成されることによって、人体に摂取する場合に生体親和性が高いカプセルを生成することができる。また、親水性のシェルであることから、コアと外部環境との間で該シェルを介した浸透圧の調整が容易になるという利点もある。
【0070】
また、アルギン酸ナトリウムに対してグリセリンが添加されている場合には、水分子の流入量と流出量との均衡が崩れ、より水分子が外部に流出しやすくなる。図8の破線で囲われた領域にグリセリンも存在するのであるが、このグリセリンが外部に流出する際、この破線で囲われた領域の網目が収縮する。そうすると、アルギン酸カルシウムの密度が高まることから、ゲルが硬くなる。また、グリセリンはゲル化の反応速度を速くすることに貢献していると考えられ、このためゲルが硬くなるとも考えられる。
【0071】
尚、グリセリンは人体に与える影響が少ないため薬剤を含むゲルを製造する際の添加剤として有利である。また、グリセリンは密度が高く水の中では沈みやすいという性質をもつ。そのため、グリセリンを含むゲルを製造した場合には、沈降するのに要する時間が短くなり、生成後のカプセルを回収しやすくなる。また、短時間でゲルが沈降するので、連続してカプセルを生成しやすくなるため、生産性が向上する。
【0072】
本実施形態では、このような化学反応(上述の例では架橋反応)の性質を利用して、シェルのゲルの硬さを調整することが可能である。例えば、第2の液体(シェル材)と第3の液体(シェル硬化材)との接触時間を変更することによって硬さを調整する。まず、第2の液体の液膜を貫通することによりシェルが形成されたカプセルが、液体貯留槽51内に貯留された第3の液体に進入した後、すぐにカプセルを回収したとする。この場合、第2の液体と第3の液体との接触時間が短いため、化学反応はシェル(第2の液体)の表面では進行するが、シェルの内側では十分に進行しない。これにより、シェルが薄く、硬度の低いカプセルを生成することができる。逆に、第2の液体の液膜を貫通したカプセルが液体貯留槽51に進入した後、十分な時間が経過した後にカプセルを回収した場合、化学反応はシェル(第2の液体)の内側まで十分に進行し、シェルが厚く、硬度の高いカプセルを生成することができる。また、化学反応の進行速度は液体の濃度などによっても影響されるため、第2の液体及び第3の液体の濃度を調整することによっても、シェルの硬化速度を変えることができる。つまり、所望の時間で硬さを調整できることになる。
【0073】
このようにして、形成されるシェルの厚さやゲルの硬さを自由に調整することによって、様々な用途に対応したカプセルを生成することができる。例えば、カプセルを医療分野に応用する場合、シェルの強さ(硬さ)を調整することによって、人体に摂取されてからシェルが壊れて内部物質(コア)が露出するまでの時間を選択することができるようになる。具体的には、薬剤等によるコアとそれを被覆するシェル等によって構成されるカプセルを生成する。このようなカプセルによれば、人体に摂取された後、途中で吸収・分解されることなく患部まで薬剤(コア)を到達させ、患部に到達した段階で薬剤を放出させる等、DDS(ドラックデリバリーシステム)への応用が可能となる。
【0074】
シェルが硬化されたカプセルは、液体接触部50に備えられた回収機構によって回収される。
【0075】
<変形例>
図3では、シェル材の液膜が液膜支持部30によって鉛直方向に沿って支持されつつ、重力によって鉛直下方向に流動していたが、流動する液膜を支持できるのであればこのような形態には限られない。例えば、変形例として、シェル材の液膜が水平方向に支持されつつ、水平方向に流動する例について説明する。
【0076】
図9は、第1実施形態の変形例におけるカプセル製造装置1の基本的な構成を説明する概略図である。本変形例では、液体噴射部10と液膜支持部30と液体接触部50とを備え、それぞれの機器はZ軸方向に沿って直線状に配置される。液体噴射部10及び液体接触部50は第1実施形態で説明したものと略同様である(図3参照)。一方、液膜支持部30の構成の一部が第1実施形態とは異なる。
【0077】
(液膜支持部30)
変形例の液膜支持部30は、液膜支持部材33と、液膜支持部材34と、不図示の送液機構とを有する。液膜支持部材33及び34はXY平面上で水平となるように間隔hを空けてX軸方向に平行となるように配置される。送液機構は一定量の液体を連続的に送り出すことができる機構であり、例えばポンプ等を用いることができる。この送液機構によって液膜支持部材33及び34の間に生じる隙間(上述の間隔h)に所定量の第2の液体(シェル材)が連続的に供給され、図のようにX軸方向に沿って流される。シェル材は流動しながら液膜支持部材33と34との隙間で表面張力によって広がって薄膜状となり、X軸方向の上流側から下流側に川のように流動するシェル材の液膜が形成される。なお、この場合も液膜は表面張力によって膜状に支持されているため、膜厚(液膜の厚さ)は非常に薄くなり、液体噴射部10から噴射されたコア材を容易に貫通させることができる。
【0078】
変形例では、液膜支持部30がシェル材(第2の液体)の液膜を水平方向(XY平面上)に支持しているため、コア材は当該液膜に垂直な方向(Z軸方向)に噴射される。液体噴射部10から噴射されたコア材は流動する液膜を貫通する際にシェル材(第2の液体)によって被覆されることによってシェルが形成される。そして、Z軸方向下方側に設置された液体接触部50に進入して化学反応を生じることによって形成されたシェルが硬化される。これにより、第1実施形態と同様にカプセルを生成することができる。ただし、変形例の場合、液膜が水平に支持されているため重力によって第2の液体(シェル材)を流動させることができない。したがって、液膜を安定的に流動させるためには、送液機構によって第2の液体を正確に供給し続ける必要がある。
【0079】
一方で、第1実施形態では噴射されたコア材が放物線のような軌道を描いて移動していたのに対して(図3参照)、比較例ではコア材の噴射方向と噴射後の移動方向とが基本的に同一線上(Z軸方向)となる。したがって、コア材の移動方向(軌道)が予測しやすく、詳細な軌道制御等が不要となるため、コア材を噴射する際の速度制御が単純になる。
【0080】
<第1実施形態のまとめ>
本実施形態のカプセル製造装置では、所定の方向に流動する第2の液体(シェル材)が膜状に支持されることで、第2の液体(シェル材)の液膜が形成される。
【0081】
カプセルを製造する際には、液膜支持部30に支持されつつ流動する当該第2の液体(シェル材)の液膜に向けて液体噴射部10から第1の液体(コア材)を噴射することによりコアを形成する。そして、コアが液膜を貫通する際に、第2の液体(シェル材)によってコアを被覆させることにより、コアを内包するシェルを形成させる。そして、液体接触部50に貯留された第3の液体(シェル硬化材)と接触させて化学反応を生じさせることによりシェルを硬化させて、カプセルを生成する。
【0082】
本実施形態のカプセル製造装置によれば、シェル材の液膜が流動しているため、カプセル生成動作中に液膜に気泡等の異物が混入したとしても、その異物はシェル材とともに速やかに液膜から排出される。したがって、シェル材の液膜に異物が混入していないクリーンな状態でカプセルを生成することが可能となる。また、シェル材の液膜には常に新しいシェル材が供給されるため、カプセル生成動作を通してシェル材液膜の厚さを一定に保つことができる。これにより、形成されるシェルの厚さを一定に保ちやすくなる。
【0083】
また、第1の液体(コア材)の噴射量や第2の液体(シェル材)の液膜厚さを調整することにより、所望のサイズのカプセルを高精度に生成することができる。そして液体噴射部10(噴射ヘッド11)を駆動させる駆動信号の周波数を変化させることで第1の液体を噴射する際の噴射タイミングを変更することにより、カプセルの生成効率を自由に調整することができる。さらに、噴射された第1の液体がそのままコアを形成するため、コア材の歩留まりが非常に高い。そのため、医療用カプセル等を生成する場合にコスト面で有利である。
【0084】
また、第2の液体(シェル材)と第3の液体(シェル硬化材)との接触時間を調節することにより、カプセルの使用用途や要求される機能に応じてシェルの厚さや硬さを適切に調整しながらカプセルを生成することができる。そして、液相中でカプセルのシェルが硬化されるため、完成後のカプセルを液相中に沈降させて回収することができる。
【0085】
===第2実施形態===
第2実施形態では、シェル硬化材(第3の液体)の液膜を形成して、シェル材(第2の液体)の液膜と並べて配置する。そして、コア材(第1の液体)の液滴によって該2つの液膜を順番に貫通させ、シェルの形成・硬化を行うことでカプセルを生成する。本実施形態では、カプセル製造装置1とは液体接触部50の構成が異なるカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する。
【0086】
<カプセル製造装置2の構成>
図10に、第2実施形態におけるカプセル製造装置2の基本的な構成を説明する概略図を示す。カプセル製造装置2は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50と、カプセル回収部70とを備える。液体噴射部10及び液膜支持部30についてはカプセル製造装置1とほぼ同様であるが(図3参照)、液体接触部50の構成とカプセル回収部70を備える点がカプセル製造装置1と異なる。以下、異なる点を中心に説明する。
【0087】
(液体接触部50)
カプセル製造装置2の液体接触部50は、液膜支持部30と同様に、液膜を流動させながら支持することができる。液体接触部50は液体支持部材55及び液体支持部材56を有する。液膜支持部材55及び56は、シェルを硬化させるシェル硬化材(第3の液体)を薄膜状に支持する板状の部材であり、所定の間隔(h´)を保つようにZ軸方向に沿って平行に配置される(図10)。この液膜支持部材55及び56の間に生じる隙間(上述の間隔h)にシェル硬化材(第3の液体)を供給すると、Y軸方向の両端側を支持された状態で重力によって鉛直下方向(Z軸方向)に流動する。供給されたシェル硬化材は、液膜支持部材55と56との隙間に広がり、表面張力によって幅h´を有する薄い膜状となる。したがって、液体接触部50の鉛直上方から所定量のシェル硬化材(第3の液体)を連続的に供給することによって、鉛直下方向に流れるシェル硬化材の液膜が形成される。
【0088】
つまり、本実施形態において液膜支持部30は「第1の液膜支持部」であり、液体接触部50は、「第2の液膜支持部」であるともいえる。
【0089】
(カプセル回収部70)
カプセル回収部70は、コアを被覆するシェルが硬化された後の状態のカプセルを回収する回収用トラップ71を有する。回収用トラップ71は図10に示されるような容器であって、噴射されたコア(カプセル)の移動方向に設置される。そして、生成されたカプセルを当該容器内に進入させることによって完成後のカプセルを回収する。なお、カプセルを回収できるのであれば回収用トラップ71の形状は任意であり、図10に示されるような形状には限られない。また、カプセルが回収用トラップ71に着弾する際の衝撃を緩和するために、回収用トラップ71に蒸留水等の液体を貯留してプールのような状態にしてもよい。
【0090】
<カプセル生成動作について>
図11に、第2実施形態においてカプセル製造装置2を用いてカプセルを生成する工程のフローを表す図を示す。第2実施形態では、コア形成工程(S201)、シェル形成工程(S202)、シェル硬化工程(S203)の3つの工程によりカプセルが生成される。このうち、コア形成工程(S201)及びシェル形成工程(S202)は第1実施形態において説明した動作(S101及びS102)と基本的に同様であるが、シェル硬化工程(S203)における動作が異なる。
【0091】
S203:シェル硬化工程
図10に示されるように、本実施形態では、液膜支持部30に支持されるシェル材の液膜(以下、第1の液膜とも言う)と、液体接触部50に支持されるシェル硬化材の液膜(以下、第2の液膜とも言う)とが平行に並んで配置されている。液体噴射部10から噴射されたコア材の液滴は、第1の液膜を貫通する際にシェル材に被覆され、そのまま第2の液膜に突入する。そして、第1の液膜を貫通するときと同様にして第2の液膜に突入する。これにより、コア材(第1の液体)を覆うシェル材(第2の液体)と、第2の液膜を形成するシェル硬化材(第3の液体)とが接触し、化学反応を生じることによってシェル材が硬化する。
【0092】
本実施形態の液体接触部50では、シェル硬化材が液膜(第2の液膜)として支持され、流動している。したがって、カプセル生成動作中にシェル硬化材の液膜に気泡等の異物が混入した場合でも、当該異物はシェル硬化材とともに速やかには外部へ排出される。これにより、カプセル生成動作を通してシェル硬化材の液膜(第2の液膜)を異物等が含まれないクリーンな状態に保つことができる。したがって、シェル材とシェル硬化材との化学反応を正常に進行させやすくなる。
【0093】
また、図10においてコア材は2つの液膜(第1及び第2の液膜)を貫通しているが、必ずしも第2の液膜を貫通させる必要はない。図12に第2実施形態において、カプセルが第2の液膜を貫通しない場合のカプセル生成動作について説明する図を示す。図12では、コア材が第1の液膜を貫通して第2の液膜に着弾した後、第2の液膜を貫通することなく、そのままシェル硬化材(第3の液体)の流れに乗って鉛直下流側(Z軸方向)に移動する。そして、液体接触部50の下部に配置されたカプセル回収部70によってシェル硬化材(第3の液体)とともに回収される。シェル硬化材の液膜(第2の液膜)と一緒にカプセルを移動させることにより、カプセルの移動方向をシェル硬化材液膜の流動方向に合わせることができる。すなわち、カプセルの移動方向をコントロールすることができるので、完成後のカプセルをより回収しやすくなる。
【0094】
また、このようにすることで、コア材に第2の液膜を貫通させる必要がなくなるため、コア材の運動量もその分だけ小さくすることができる。すなわち、液体噴射部10からコア材の液滴を噴射する際の噴射速度を小さくすることができる。
【0095】
<第2実施形態のまとめ>
第2実施形態では、第3の液体(シェル硬化材)の液膜(第2の液膜)が形成され、液体接触部50によって支持されながら流動している。液体噴射部10から噴射されたコア材の液滴は、シェル材の液膜(第1の液膜)を貫通することによってシェル材に被覆される。続いて、シェル硬化材の液膜(第2の液膜)に突入して第3の液体と接触することによって化学反応を生じ、シェルが硬化される。
【0096】
カプセル生成動作中にシェル硬化材の液膜に異物が混入したとしても、その異物はシェル硬化材とともに速やかに液膜から排出されるため、シェル硬化材の液膜は異物が混入していないクリーンな状態に保たれる。これにより、シェル材とシェル硬化材との化学反応が正常に進行しやすくなり、シェルを硬化させやすくなる。また、完成後のカプセルをシェル硬化材の液膜の流れに乗せてシェル硬化材と共に移動させることにより、カプセルを回収しやすくすることもできる。
【0097】
===第3実施形態===
第3実施形態では、液体噴射部10の噴射ヘッド11が複数のノズル111を有するカプセル製造装置3を用いてカプセルの製造を行なう。複数ノズルによってコア材の液滴を1度に複数噴射することで、より効率的にカプセルを生成することができるようになる。
【0098】
<カプセル製造装置3の構成>
図13に、第3実施形態におけるカプセル製造装置3の基本的な構成を説明する概略図を示す。カプセル製造装置3は、液体噴射部10と、液膜支持部30と、液体接触部50と、カプセル回収部70とを備える。液体噴射部10以外の構成は第2実施形態で説明したカプセル製造装置2とほぼ同様である。以下、第2実施形態と異なる点を中心に説明する。
【0099】
(液体噴射部10)
カプセル製造装置3では、液体噴射部10の噴射ヘッド11にノズル111が4つ設けられる。この4つのノズルはZ軸方向に直列に並ぶことによりノズル列を構成し、Z軸方向に沿って同時に4つのコア材液滴を噴射することが可能である。なお、1つのノズル列に設けられるノズルの数は4つには限られず、5つ以上のノズルが設けられていてもよいし、3つ以下のノズルが設けられていてもよい。また、1つの噴射ヘッド11に複数のノズル列が設けられるようにすることもできる。1つの噴射ヘッド11に対してノズル111が複数設けられる場合には、ピエゾ素子PZTも各ノズルに対応して設けられるようにする。そして、ピエゾ素子PZTを駆動するための駆動信号も各ノズルについて生成されるようにする。これにより、ノズル毎に液滴噴射量や噴射速度を制御しやすくなる。各ノズルの構成及び液滴噴射時の動作については第1実施形態で説明したものと同様である(図4参照)。
【0100】
<カプセル生成動作について>
噴射ヘッド11のノズル列から噴射された複数(図13においては4つ)のコア材液滴は液膜支持部30に支持されたシェル材の液膜(第1の液膜)を貫通する際に、それぞれシェル材によって被覆される。その後、シェル硬化材の液膜(第2の液膜)に着弾してシェルとシェル硬化材とが接触することによって化学反応を生じ、シェルが硬化される。したがって、液体噴射部10から噴射される液滴(コア)を増やすことにより、より多くのカプセルを同時に生成することができるようになり、カプセル生成効率を高くすることができる。
【0101】
なお、本実施形態のように複数のコア材液滴を同時に噴射する方法は、第1実施形態で説明したカプセル製造装置1(図3参照)についても適用可能である。その場合、噴射されたコア材がシェル材によって被覆された後、シェルが硬化する前にカプセル同士が接触しないように十分に注意する必要がある。シェルが未硬化の状態で2以上のカプセルが接触すると、互いのシェルが破壊、または合体してしまい、カプセル生成効率が悪化するからである。
【0102】
これに対して、図13のようにシェル硬化材によって流動する液膜(第2の液膜)を形成し、シェル材の液膜(第1の液膜)に隣り合うようにして配置することで、カプセルを安全に生成しやすくなる。図13の場合、噴射されたコア材がシェル材によって被覆された後、第2の液膜に突入した時点でカプセルのシェルが硬化される。したがって、第2の液膜に突入した後であれば、その後に2つのカプセルが接触して重なったとしても、互いのシェルが破壊されることはない。さらに、上述の図12で説明したように、第2の液膜の流れに乗せてシェル硬化材と共にカプセルを回収するようにすれば、カプセルを確実に回収しやすくなる。
【0103】
なお、図13の例では液体噴射部10のノズル列がZ軸方向に沿って配置されているが、ノズル列の配置はこれには限られない。例えば、図のY軸方向に沿ってノズル列を配置してもよいし、斜め方向に配置されるのであってもよい。ノズル列の配置は、流動する液膜(第1の液膜及び第2の液膜)の状態などに応じて決定される。
【0104】
<第3実施形態のまとめ>
第3実施形態では、複数のノズルが直列に並ぶノズル列を備えた液体噴射部を用いて、シェル材の液膜及びシェル硬化材の液膜に対して複数のコア材を噴射させる。
これにより、同時に複数のカプセルが生成され、高効率なカプセル製造を実現することができる。
【0105】
===その他の実施形態===
一実施形態としてのカプセル製造装置を説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは言うまでもない。以下に述べる実施形態であっても、本発明に含まれるものである。
【0106】
<カプセル生成材料について>
前述の各実施形態では、第1の液体〜第3の液体についてそれぞれ具体例が例示されていたが、例示された以外のカプセル生成材料を用いてカプセルを生成することも可能である。
【符号の説明】
【0107】
1,2,3 カプセル製造装置、
10 液体噴射部、11 噴射ヘッド、12 第1液体タンク、
30 液膜支持部、31〜34 液膜支持部材、
50 液体接触部、51 液体貯留槽、55 液膜支持部材、56 液膜支持部材、
70 カプセル回収部、71 回収用トラップ、
111 ノズル、112 液体供給路、114 ノズル連通路、116 弾性板、
PZT ピエゾ素子
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、
所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、
を備え、
前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、
前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、
ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体を流動させる所定の方向は、鉛直下向きの方向である、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体によって形成されるシェルを第3の液体と接触させて化学反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカプセル製造装置であって、
所定の方向に流動する前記第3の液体を膜状に支持する第2の液膜支持部を備える、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体は多糖類または蛋白質類を含む水溶液であり、
前記第3の液体は多価金属塩を含む水溶液であり、
前記第2の液体と前記第3の液体とを接触させて架橋反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカプセル製造装置であって、
前記液体噴射部は、前記第1の液体の液滴を噴射するノズルが複数並ぶノズル列を備える、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のカプセル製造装置で製造された医療用カプセル。
【請求項8】
所定の方向に流動しながら膜状に支持された第2の液体の液膜に向けて第1の液体を噴射することにより、コアを形成することと、
前記コアが前記第2の液体の液膜を貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成することと、
を有するカプセル製造方法。
【請求項1】
第1の液体の液滴を噴射する液体噴射部と、
所定の方向に流動する第2の液体を膜状に支持する液膜支持部と、
を備え、
前記液膜支持部に支持されながら流動する前記第2の液体の液膜に向けて前記第1の液体の液滴を噴射することにより、コアを形成し、
前記第2の液体の液膜を前記コアが貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成させる、
ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項2】
請求項1に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体を流動させる所定の方向は、鉛直下向きの方向である、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体によって形成されるシェルを第3の液体と接触させて化学反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項4】
請求項3に記載のカプセル製造装置であって、
所定の方向に流動する前記第3の液体を膜状に支持する第2の液膜支持部を備える、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項5】
請求項3または4に記載のカプセル製造装置であって、
前記第2の液体は多糖類または蛋白質類を含む水溶液であり、
前記第3の液体は多価金属塩を含む水溶液であり、
前記第2の液体と前記第3の液体とを接触させて架橋反応を生じさせることにより、前記シェルを硬化させる、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載のカプセル製造装置であって、
前記液体噴射部は、前記第1の液体の液滴を噴射するノズルが複数並ぶノズル列を備える、ことを特徴とするカプセル製造装置。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載のカプセル製造装置で製造された医療用カプセル。
【請求項8】
所定の方向に流動しながら膜状に支持された第2の液体の液膜に向けて第1の液体を噴射することにより、コアを形成することと、
前記コアが前記第2の液体の液膜を貫通する際に、前記第2の液体によって前記コアを被覆させることにより、前記コアを内包するシェルを形成することと、
を有するカプセル製造方法。
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図3】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図11】
【図1】
【図3】
【図9】
【図10】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2013−71080(P2013−71080A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−213193(P2011−213193)
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月28日(2011.9.28)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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