説明

カムシャフト構造

【課題】潤滑油の漏れを抑制しながら好適に潤滑油を供給することができるカムシャフト構造を提供すること。
【解決手段】カムシャフト1は、軸受部6で軸支されるジャーナル部21a〜21f,31a〜31fと、各ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fに形成される環状の溝部24a〜24f,34a〜34fと、軸本体に内設された軸内油路23,33と、軸内油路23,33と溝部24a〜24f,34a〜34fをつなぐ油孔25a〜25f,35a〜35fとを有する。複数の溝部24a〜24f,34a〜34fは、溝部24a〜24d,34b,34fよりも下流に潤滑油の供給先を有する第1溝部Aと、ジャーナル部21e,21f,31a,31c,31d,34eの潤滑のみに潤滑油が利用される第2溝部Bと、を備え、第1溝部Aは、第2溝部Bよりも断面積S1が大きい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジンに配置されるカムシャフト構造に関し、特に、カムシャフトの軸受部とジャーナル部との間に供給される潤滑油を良好に供給することができるカムシャフト構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンに配置されるカムシャフトを軸支する軸受部と、カムシャフトのジャーナル部との間に潤滑油を供給するカムシャフト構造としては、例えば、特許文献1に開示されたカムシャフトの潤滑構造が知られている。
【0003】
その特許文献1に記載のカムシャフトの潤滑構造は、カムシャフトの軸心部に形成された軸内油路(カムシャフト内通路)と、この軸内油路から外周面に向けて形成された油孔(油供給孔)と、カムアッパジャーナルの軸受面に形成した縦断面視して半円形状の溝部(油溝)と、で油路を形成している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−218836号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1に記載されたカムシャフトの潤滑構造や、従来のカムシャフトは、このカムシャフトの各所に形成される溝部の大きさが全て同一で、溝部の幅、深さ、圧力損失及び内部摩擦によって機械的エネルギーの消耗が起こることについては考慮されていなかった。
このため、カムシャフトと、カムシャフトの軸受との間に最適な油量の潤滑油を供給すことができなかったり、潤滑油の漏れが発生したりすることがあった。
【0006】
そこで、本発明は、前記問題点を解決するために創案されたものであり、潤滑油の漏れを抑制しながら好適に潤滑油を供給することができるカムシャフト構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係るカムシャフト構造は、軸受部で軸支される複数のジャーナル部と、該ジャーナル部にそれぞれ周方向に形成される環状の溝部と、軸本体の中を軸方向に延在する軸内油路と、該軸内油路と前記溝部をつなぐ径方向の油孔とを有するカムシャフト構造において、複数の前記溝部は、当該溝部よりも下流に潤滑油の供給先を有する第1溝部と、当該溝部において前記ジャーナル部の潤滑のみに潤滑油が利用される第2溝部と、を備えて成り、前記第1溝部は、前記第2溝部よりも断面積が大きいことを特徴とする。
【0008】
かかる構成によれば、カムシャフトは、ジャーナル部の溝部のうち、この溝部よりも下流に潤滑油の供給先を有する第1溝部が、ジャーナル部の潤滑のみに潤滑油が利用される第2溝部よりも断面積が大きく形成されている。このため、第1溝部は、第2溝部よりも断面積が大きく形成されている分だけ、潤滑油の流動抵抗が低減されて流れがよくなるので、潤滑油の漏れ量を低減しながら、カムシャフトのジャーナル部と軸受部との間の各所に、好適に潤滑油を供給することができる。
【0009】
また、前記第1溝部は、前記第2溝部と軸方向の幅は等しく、かつ、溝の深さが深く形成されることが好ましい。
【0010】
かかる構成によれば、第1溝部は、第2溝部よりも溝の深さが深く形成されていることによって、溝の深さが深くなった分だけ、流路の断面積が広くなって潤滑油の流動抵抗が低減されるため、潤滑油の流れを良好にすることができる。
また、潤滑油の流動抵抗の減少に伴って潤滑油の漏れを減少させることができる。さらに、カムシャフトに複数ある各ジャーナル面の面圧を均等にすることができるため、各所の潤滑を良好に行うことができる。
【0011】
また、前記ジャーナル部の軸受面は、真円状に形成され、前記第2溝部は、前記軸受面に凹設されており、かつ、断面視で単一の円弧状に形成されていることが好ましい。
【0012】
かかる構成によれば、第2溝部は、軸受面に凹設されており、かつ、断面視で単一の円弧状に形成されていることによって、溝の深さを浅く形成することができるため、加工工数を削減することができると共に、その第2溝部を容易に正確に形成することができる。また、カムシャフトは、軸受部に対して回動しても、常に、第2溝部からカムシャフトの軸受面に潤滑油を良好に送り流すことが可能となる。
【発明の効果】
【0013】
本発明は、潤滑油の漏れを抑制しながら好適に潤滑油を供給することができるカムシャフト構造を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の実施形態に係るカムシャフト構造の設置状態を示す要部概略斜視図である。
【図2】カムシャフトの斜視図である。
【図3】第1溝部を示す要部拡大縦断面図である。
【図4】第2溝部を示す要部拡大縦断面図である。
【図5】(a)は第1溝部を示す要部拡大縦断面図、(b)は第2溝部を示す要部拡大縦断面図である。
【図6】カムシャフトに供給される潤滑油の流れを示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1〜図6を参照して、本発明の実施形態に係るカムシャフト構造を説明する。実施形態の説明において、上下方向は、シリンダ軸線方向に一致するものとする。本発明のカムシャフト構造は、縦置きのエンジン及び横置きのエンジンEに対して利用可能であるが、その一例として横置きのエンジンEの場合を例に挙げて説明する。
【0016】
≪エンジンの構成≫
図1に示すように、エンジンEは、多気筒(直列4気筒)の4サイクルエンジンからなる。エンジンEは、エンジン本体E1と、このエンジン本体E1の長手方向に沿って設けられた前後一対のカムシャフト1,1と、カムシャフト1,1に沿って平行に設けられた前後一対のロッカシャフト41,42と、を備えている。なお、縦置きのエンジンの場合は、図1等に示す前後方向と左右方向とが逆の方向になる。
エンジン本体E1は、例えば、シリンダヘッドであり、上部に前後のカムシャフト1,1(吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3)をそれぞれ軸支する軸受部6(6a〜6k)が軸方向に並設されている。エンジン本体E1は、不図示の燃焼室の上部を形成して、エンジンEの吸排気システム(図示省略)が取り付けられる。エンジン本体E1の上部には、前後方向に所定間隔で気筒11a〜11dが設けられている。
【0017】
≪軸受部の構成≫
図1に示すように、軸受部6(6a〜6k)は、互いに平行に配置されたカムシャフト1をエンジン本体E1に対して軸支するための軸受部材である。軸受部6は、エンジン本体E1の上部に一体形成されたホルダ基台部61と、このホルダ基台部61上にカムシャフト1を介在させて載置され、ホルダ固定ボルト63によってボルト締めされたホルダキャップ62と、から主に構成されている。軸受部6は、エンジン本体E1の上部において、吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3の軸方向に沿って適宜な間隔で二列に配置されている。図3及び図4参照に示すように、ホルダ基台部61及びホルダキャップ62の軸受面には、凹溝61a,62aが環状に形成されている。凹溝61a,62aは、後記するジャーナル部21a〜21f,31a〜31fの溝部24a〜24f,34a〜34fと協働して環状の油路を形成する。
【0018】
図1に示すように、5つの軸受部6g〜6kは、吸気用カムシャフト2の6箇所を適宜な間隔で軸支している。また、6つの軸受部6a〜6fは、排気用カムシャフト3の6箇所を適宜な間隔で軸支している。
軸受部6は、エンジン本体E1とカムシャフト1との間で潤滑油の受け渡しを行なう機能を有する軸受部6a,6b,6f,6g,6h,6iと、エンジン本体E1とカムシャフト1との間で潤滑油の受け渡しを行なわない(カムシャフト1を軸支するだけの)軸受部6c,6d,6e,6j,6kと、の2種類に大別される。
【0019】
≪ロッカシャフトの構成≫
図1に示すように、ロッカシャフト41,42は、ロッカシャフト41,42の軸心を支点として揺動して不図示のバルブを開閉させるロッカアーム(図示省略)の支点となる軸であり、吸気用のロッカシャフト41と排気用のロッカシャフト42からなる。ロッカシャフト41,42は、不図示のロッカアームのホルダ部(図示省略)にボルト締めされている。
【0020】
≪カムシャフトの構成≫
カムシャフト1,1は、吸気用カムシャフト2と、排気用カムシャフト3と、からなる。カムシャフト1は、このカムシャフト1の軸方向に沿って予め設定された間隔で配置された複数のジャーナル部21b〜21f,31a〜31fによってエンジン本体E1に回動自在に軸支されている。カムシャフト1の下方には、それぞれロッカシャフト41,42が配置されている。
【0021】
図2〜図4に示すように、各カムシャフト1は、それぞれ後記する複数のカム駒2a,3aと、複数のジャーナル部21a〜21f,31a〜31fと、各ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fの周方向に形成された溝部24a〜24f,34a〜34fと、軸内油路23,33と、油孔25a〜25f,35a〜35fと、を有している。
【0022】
<カム駒の構成>
図2に示すように、カム駒2a,3aは、燃焼室内の吸気と排気をさせる不図示の吸気バルブ及び排気バルブを開閉させるカムであり、吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3にそれぞれ一体形成されている。
【0023】
<ジャーナル部の構成>
ジャーナル部21b〜21f,31a〜31fは、軸受部6(図1参照)で軸支される吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3の軸支部位であり、本実施形態では、吸気用カムシャフト2に5箇所及び排気用カムシャフト3に6箇所に形成されている。なお、ジャーナル部21aは、可変バルブタイミング機構VTC(図示省略)が取り付けられる部位である。ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fの外周面の軸線方向の中央部には、溝部24a〜24f,34a〜34fが形成されている。また、この溝部24a〜24f,34a〜34f内には、油孔25a〜25f,35a〜35fが形成されている。油孔25a〜25f,35a〜35fは、図3及び図4に示すように、カムシャフト1,1内に形成された軸内油路23,33と溝部24a〜24f,34a〜34fとを連通している。これにより、軸内油路23,33と溝部24a〜24f,34a〜34fとの間で潤滑油の授受が行なわれるようになっている。
【0024】
<軸内油路の構成>
図3及び図4に示すように、軸内油路23,33は、吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3の軸の内部に軸方向に延在する円筒状に形成され、油路22,32を一部を形成している。
【0025】
<油孔の構成>
図2〜図4に示すように、油孔25a〜25f,35a〜35fは、軸内油路23,33と溝部24a〜24f,34a〜34fをつなぐ径方向に向けて形成された流路である。
【0026】
<油路の構成>
図3〜図5(a)、(b)に示すように、油路22,32は、吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3において、カムシャフト1のジャーナル部21a〜21f,31a〜31fに供給する潤滑油が流れる流路である。この油路22,32は、後記する溝部24a〜24f,34a〜34fと、ホルダ基台部61の凹溝61aと、ホルダキャップ62の凹溝62aと、軸内油路23,33と、油孔25a〜25f,35a〜35fとを連通して形成されている。油路22,23は、エンジン本体E1に形成されるオイル通路と連通している。
【0027】
<溝部の構成>
図2に示す吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3の溝部24a〜24f,34a〜34fは、ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fにそれぞれ周方向に形成された環状溝からなる。
図3に示す断面積S1は、その溝部24a〜24d,34b,34f自身よりも下流に潤滑油の供給先がある溝部24a,24b,24c,24d,34b,34f(第1溝部A(以下、全部の第1溝部Aをいうときは適宜「第1溝部A」という。))を軸線方向に縦断面したときの面積である。
図4に示す断面積S2は、溝部24e,24f,34a,34c,34d,34eにおいてジャーナル部21e,21f,31a,31c,31dの潤滑のみに潤滑油が利用される溝部24e,24f,34a,34c,34d(第2溝部B(以下、全部の第2溝部Bをいうときは適宜「第2溝部B」という。))を軸線方向に縦断面したときの面積である。第1溝部Aの断面積S1は、第2溝部Bの断面積S2よりも大きく形成されている。
【0028】
図3に示す第1溝部Aは、溝の深さH1(例えば、約3mm)、溝の幅L1(例えば、約3〜4mm)の断面凹部形状に形成され、図4に示す第2溝部Bの溝の最大深さH2(約1mm)、溝の幅L2(例えば、4mm)の前後方向に縦断した断面が円弧形状の第2溝部Bよりも大きく形成されている。
このため、第1溝部Aは、第2溝部Bと比較して、溝の幅L1,L2が略同一で、深さH1が大きく形成されて、断面積S1が大きくなっている分だけ、潤滑油の流動抵抗が小さくて流れ易く、加工する際も形成し易い。
【0029】
図3に示す溝部24aは、締結部品であるVTCへの潤滑油が供給される部位であり、溝の深さH1で深く形成されている。
第1溝部Aのうち溝部24b,24c,34bは、軸受部6から供給された潤滑油を、さらに、軸内油路23,33に潤滑油を供給する部位であり、溝の深さH1(図3参照)で、深く形成されている。
第1溝部Aのうち溝部24d,34fは、軸受部6へ潤滑油を供給する部位であり、溝の深さH1で、深く形成されている。
第2溝部Bの溝部24e,24f,34a,34c,34dは、ジャーナル部21,31への潤滑油の供給のみに利用される部位であり、真円状のジャーナル部21e,21f,31a,31c,31d,31eに形成されると共に、前記軸受面に凹設されており、かつ、断面視で単一の円弧状に形成されている。
【0030】
このようにカムシャフト1の溝部24a〜24f,34a〜34fは、潤滑油が流動する所望量に基づいて、図3及び図4に示すように、潤滑油の所望量に合わせて溝の断面積S1,S2(深さH1,H2及び幅L1,L2)の大きさが設定されている。
【0031】
≪作用≫
次に、図6を主に参照しながら本発明の実施形態に係るカムシャフト構造の作用を潤滑油の流れと共に説明する。
【0032】
図6に示すように、潤滑油は、まず、潤滑油供給源であるオイルパンE2からオイルコントロールバルブOCVに供給され、その後、吸気用のジャーナル部21b側と軸受部6a側とに分かれて流れる。吸気用のジャーナル部21bに流れた潤滑油は、次にバルブタイミングコントロール装置VTCが配置されたジャーナル部21aに流れる。吸気用のジャーナル部21a,21bは、このように潤滑油の受け渡しが行われることから、流路の断面積S1の大きい溝部24a,24b(第1溝部A)が形成されて、潤滑油が流れる流動抵抗を低減させて流れ易くしている。このため、潤滑が良好に行われる。
【0033】
前記軸受部6aに供給された潤滑油は、排気用のジャーナル部31aと軸受部6bとに分かれて流れる。その排気用のジャーナル部31aに流れた潤滑油は、ジャーナル部31aにのみ潤滑油が供給されて、その後、他の部位に供給されていないため、ジャーナル部31aには流路の断面積S2の小さい溝部34a(第2溝部B)で形成されている。
【0034】
軸受部6bに流れた潤滑油は、排気用のジャーナル部31bと、排気用のロッカシャフト42と、軸受部6hとの3つに分かれて供給される。
そのうちの排気用のジャーナル部31bに流れた潤滑油は、排気用カムシャフト3内の軸内油路33を通って、溝部34c〜34eが形成された排気用のジャーナル部31c〜31eにそれぞれ流れ、さらに、排気用のジャーナル部31fまで流れる。このため、排気用のジャーナル部31bは、潤滑油が供給されて、下流の潤滑油の供給先へ送り出されるので、流路の断面積S1の大きい溝部34b(第1溝部A)が形成されている。
【0035】
前記溝部34c〜34eは、ここに供給される潤滑油がジャーナル部31c,31dの潤滑にのみ使用されるため、流路の断面積S2の小さい第2溝部Bが形成されている。
【0036】
前記排気用のジャーナル部31fに流れた潤滑油は、排気用のジャーナル部31fからポンプベース12を介してリフタ13に流れる。このため、排気用のジャーナル部31fに形成された溝部34fは、流路の断面積S1の大きい第1溝部Aで形成されている。前記排気用のロッカシャフト42に流れた潤滑油は、排気用のロッカシャフト42を介してさらに排気用ロッカアーム44に流れる。
【0037】
また、前記軸受部6bから軸受部6hに流れた潤滑油は、吸気用のジャーナル部21cから吸気用カムシャフト2の軸内油路23を通って吸気用のジャーナル部21dに流れた後、さらに、軸受部6iと吸気用のジャーナル部21e,21fとに分かれて流れる。このため、吸気用のジャーナル部21c,21dに形成された溝部34cは、流路の断面積S1の大きい第1溝部Aで形成されている。
【0038】
吸気用のジャーナル部21e,21fに形成された溝部24e,24fは、このジャーナル部21e,21fにのみ潤滑油が供給されて、その潤滑油がその後、他の部位に供給されていないため、流路の断面積S2の小さい第2溝部Bで形成されている。
前記軸受部6iに流れた潤滑油は、吸気用のロッカシャフト41を介して吸気用ロッカアーム43に流れる。
【0039】
このように吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3は、図3及び図5(a)に示すように、潤滑油の受け渡しが行われる第1溝部Aの流路の断面積S1が、第2溝部Bの流路の断面積S2よりも大きく形成している。このため、流動抵抗が減少して、潤滑油を流れ易くし、潤滑が要求されるジャーナル部21a,21b,21c,21d,31b,31e,31fに潤滑油を良好に供給することができる。その結果、潤滑油の漏れを抑制しながら好適に潤滑油を供給先に供給することができる。
【0040】
また、吸気用カムシャフト2及び排気用カムシャフト3は、図4及び図5(b)に示すように、潤滑油の受け渡しが行われず、潤滑油が供給されるのみの第2溝部Bを、溝の最大深さH2が第1溝部Aよりも浅く、流路の断面積S2が第1溝部Aよりも小さく形成している。このため、潤滑油をその部位で必要な量だけ供給して、ジャーナル部21e,21f,31a,31c,31dに潤滑油で良好に潤滑させることができる。また、第2溝部Bは、第1溝部Aよりも浅く、流路の断面積S2が小さい分だけ、加工量が少ないので、加工時間を削減して容易に形成することができる。
【0041】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その技術的思想の範囲内で種々の改造及び変更が可能であり、本発明はこれら改造及び変更された発明にも及ぶことは勿論である。
【0042】
[変形例]
前記実施形態では、潤滑油の受け渡しが行われる第1溝部Aの大きさを、第2溝部Bよりも大きくすることを説明したが、大きくする場所は適宜変更しても構わない。
【0043】
例えば、図1に示す気筒11a〜11dは、気筒11a、気筒11c、気筒11d、気筒11b、11aの順で爆発する。爆発順が隣り合う気筒11aと気筒11bとの間、及び、気筒11cと気筒11dとの間は、爆発が連続して発生するときに、その近傍に配置されたジャーナル部21a〜21f,31a〜31fにも反力がかかる。このため、気筒11a〜11dにかかる荷重も高くなった分だけ、ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fの幅を広くすると共に、潤滑油の供給量を多くするために溝部24,34の断面積S1,S2を大きくしても構わない。
【0044】
このため、ジャーナル部21a〜21f,31a〜31fは、図1に示すように、前後の二列にそれぞれ6つあるジャーナル部21a〜21f,31a〜31fのうちで、気筒11aと気筒11bとの間に配置されたジャーナル部21e,31dと、気筒11cと気筒11dとの間に配置されたたジャーナル部21c,31bと、に高い荷重がかかるため、大きくしても構わない。
【0045】
このようにすれば、比較的大きな荷重がかかるジャーナル部21e,31d,21c,31bの強度を強くすることができるため、荷重に対する変形を抑制して潤滑油の漏れを防止することができる。
【符号の説明】
【0046】
1 カムシャフト
6,6a〜6k 軸受部
21a〜21f,31a〜31f ジャーナル部
22,32 油路
23,33 軸内油路
24a〜24d,34b,34f 溝部(第1溝部)
24e,24f,34a,34c,34d,34e 溝部(第2溝部)
A 第1溝部
B 第2溝部
E エンジン
E1 エンジン本体
H1 第1溝部の溝の深さ
H2 第2溝部の溝の深さ
L1 第1溝部の軸方向の幅
L2 第2溝部の軸方向の幅
S1 第1溝部の断面積
S2 第2溝部の断面積

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受部で軸支される複数のジャーナル部と、該ジャーナル部にそれぞれ周方向に形成される環状の溝部と、軸本体の中を軸方向に延在する軸内油路と、該軸内油路と前記溝部をつなぐ径方向の油孔とを有するカムシャフト構造において、
複数の前記溝部は、当該溝部よりも下流に潤滑油の供給先を有する第1溝部と、当該溝部において前記ジャーナル部の潤滑のみに潤滑油が利用される第2溝部と、を備えて成り、
前記第1溝部は、前記第2溝部よりも断面積が大きいことを特徴とするカムシャフト構造。
【請求項2】
前記第1溝部は、前記第2溝部と軸方向の幅は等しく、かつ、溝の深さが深く形成されることを特徴とする請求項1に記載のカムシャフト構造。
【請求項3】
前記ジャーナル部の軸受面は、真円状に形成され、
前記第2溝部は、前記軸受面に凹設されており、かつ、断面視で単一の円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のカムシャフト構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113171(P2013−113171A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258347(P2011−258347)
【出願日】平成23年11月25日(2011.11.25)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】