説明

カメラの絞り制御機構およびカメラ

【課題】 本発明は、レンズ絞りを駆動するカメラの絞り制御機構に関し、絞りレバーのバウンド動作を低減し、同時に、ラチェットギヤおよび爪部材の耐久性を向上することを目的とする。
【解決手段】 絞りレバーの移動を制御する絞り制御レバーと、前記絞り制御レバーの回動により回転されるラチェットギヤと、前記ラチェットギヤに噛合する爪部を備えた爪部材と、回転状態にある前記ラチェットギヤへの前記爪部の噛合時に前記爪部に作用する衝撃を弾性的に吸収する衝撃吸収手段とを有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レンズ絞りを駆動するカメラの絞り制御機構に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラに使用される絞り制御機構では、レンズに設けられた絞りの絞りレバーの移動をカメラ側の絞り制御レバーにより制御している。具体的には、絞り制御レバーの駆動量をギヤ列により増速・拡大し、ラチェットギヤの回転数としてフォトインタラプタ等により検出し、検出値が所定の値となったとき、ラチェットギヤに対して制動をかけ絞り制御レバーを停止させることで所望の絞り値を得る。
【特許文献1】特開2004−252034号公報
【特許文献2】特開昭60−12533号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、従来の絞り制御機構では、回転状態にあるラチェットギヤに制動をかけるためラチェットギヤに爪部材の爪部を噛合すると、ラチェットギヤの回転が急激に停止し、絞り制御レバーと一体になって走行していたレンズ側の絞りレバーが絞り制御レバーに対してバウンドしてしまい、絞り径が安定化するまでに比較的長い時間が必要になるという問題があった。また、ラチェットギヤの回転を急激に停止しているため、ラチェットギヤおよび爪部材に多大な衝撃が作用し、ラチェットギヤおよび爪部材の耐久性が低下するという問題があった。
【0004】
本発明は、かかる従来の問題を解決するためになされたもので、絞りレバーのバウンド動作を低減し、同時に、ラチェットギヤおよび爪部材の耐久性を向上することができるカメラの絞り制御機構およびカメラを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の発明のカメラの絞り制御機構は、絞りレバーの移動を制御する絞り制御レバーと、前記絞り制御レバーの回動により回転されるラチェットギヤと、前記ラチェットギヤに噛合する爪部を備えた爪部材と、回転状態にある前記ラチェットギヤへの前記爪部の噛合時に前記爪部に作用する衝撃を弾性的に吸収する衝撃吸収手段とを有することを特徴とする。
【0006】
第2の発明のカメラの絞り制御機構は、第1の発明のカメラの絞り制御機構において、前記ラチェットギヤの回転を検出する回転検出手段と、前記回転検出手段からの検出信号に基づいて前記爪部を前記ラチェットギヤに噛合し前記絞り制御レバーの回動位置を規制する位置決め手段とを有することを特徴とする。
第3の発明のカメラの絞り制御機構は、第2の発明のカメラの絞り制御機構において、前記位置決め手段は、前記爪部材が回動可能に固定されラチェットギヤ側に付勢される押圧部材と、前記押圧部材を離脱可能に保持する保持手段とを有し、前記衝撃緩和手段は、前記爪部材の前記爪部を前記ラチェットギヤの回転方向に付勢する付勢手段を有することを特徴とする。
【0007】
第4の発明のカメラの絞り制御機構は、第3の発明のカメラの絞り制御機構において、前記爪部が前記ラチェットギヤに噛合している時の前記爪部材の回動中心を、前記ラチェットギヤの回転中心に位置させてなることを特徴とする。
第5の発明のカメラの絞り制御機構は、第2の発明のカメラの絞り制御機構において、前記位置決め手段は、前記爪部を前記ラチェットギヤ側に付勢される前記爪部材と、前記爪部材を離脱可能に保持する保持手段とを有し、前記衝撃緩和手段は、前記爪部材および前記保持手段を支持する回動部材と、前記回動部材を前記爪部材の前記爪部が前記ラチェットギヤの回転方向に付勢されるように付勢する付勢手段とを有することを特徴とする。
【0008】
第6の発明のカメラの絞り制御機構は、第5の発明のカメラの絞り制御機構において、前記回動部材の回動中心を、前記ラチェットギヤの回転中心に位置させてなることを特徴とする。
第7の発明のカメラの絞り制御機構は、第1または第2の発明のカメラの絞り制御機構において、前記絞り制御レバーと前記ラチェットギヤとの間に、前記絞り制御レバーの回動を前記ラチェットギヤに伝達する伝達ギヤを有し、前記衝撃緩和手段を、前記伝達ギヤを入力側ギヤと出力側ギヤとに分割し、前記入力側ギヤと出力側ギヤとの間に弾性部材を配置して構成してなることを特徴とする。
【0009】
第8の発明のカメラは、第1ないし第7のいずれか1の発明のカメラの絞り制御機構を有することを特徴する。
【発明の効果】
【0010】
本発明では、絞りレバーのバウンド動作を低減し、同時に、ラチェットギヤおよび爪部材の耐久性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を図面を用いて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明のカメラの絞り制御機構の第1の実施形態が搭載される一眼レフレックス型のカメラを示している。
カメラボディ11には、撮影レンズ13が着脱自在に装着可能とされている。カメラボディ11には絞り制御レバー15が配置され、撮影レンズ13にはレンズ側絞りレバー17が配置されている。カメラボディ11に撮影レンズ13を装着した状態でレリーズ釦19を押圧すると、レンズ側絞りレバー17はカメラボディ11側の絞り制御レバー15により所定の位置に制御される。そして、撮影レンズ13内に搭載される絞り18が所定の絞り値に制御される。
【0012】
図2は、カメラボディ11の内部に搭載される絞り制御機構の要部を示している。なお図2は、撮影動作開始前の絞り制御機構の状態を示している。
この絞り制御機構は、レンズ側絞りレバー17の移動を制御する制御部21と、制御部21による制御を開始させるスタート部23を有している。
制御部21は、絞り制御レバー15、増速ギヤ25、ラチェットギヤ27、フォトインタラプタ29を有している。また、絞り停止レバー31、押圧レバー33、絞り制御マグネット35を有している。
【0013】
絞り制御レバー15は、ベース部材37に固定される軸X1に対して回動可能に支持されている。絞り制御レバー15の一端はレンズ側絞りレバー17に当接している。絞り制御レバー15には、コイルバネ39により右旋力が与えられている。
絞り制御レバー15の他端には扇形ギヤ15aが形成されている。扇形ギヤ15aは、増速ギヤ25の小ギヤ部25aと噛合している。増速ギヤ25の大ギヤ部25bはラチェットギヤ27の小ギヤ部27aと噛合している。ラチェットギヤ27には小孔27bが多数設けられ、ラチェットギヤ27を挟み込むようにフォトインタラプタ29が設けられている。
【0014】
絞り停止レバー31は、図3に示すように、押圧レバー33に固定される軸X2に回動可能に支持されている。一端にはラチェットギヤ27に係合する爪部31aが設けられている。この絞り停止レバー31には、線状バネ41により左旋力が与えられている。なお、図3の(a)は図2の状態を、図3の(b)は図4の状態を、図3の(c)は図5の状態をそれぞれ示している。
【0015】
押圧レバー33は、ベース部材37に固定される軸X3に対して回動可能に支持されている。この押圧レバー33には、線状バネ43により左旋力が与えられている。押圧レバー33の絞り停止レバー31と反対側は、絞り制御マグネット35に吸着されるプランジャ45により絞り制御マグネット35側に引き込まれている。
スタート部23は、絞り保持レバー47、絞りスタートレバー49、絞りスタートマグネット51を有している。
【0016】
絞り保持レバー47は、ベース部材37に固定される軸X4に回動可能に支持されている。一端には絞り制御レバー15を係止する係止部47aが設けられている。この絞り保持レバー47には、線状バネ53により左旋力が与えられている。
絞り保持レバー47の他端には、絞りスタートレバー49が配置されている。絞りスタートレバー49は、ベース部材37に固定される軸X5に回動可能に支持されている。この絞りスタートレバー49には、コイルバネ55により左旋力が与えられている。絞りスタートレバー49の絞り保持レバー47と反対側は、絞りスタートマグネット51に吸着されるプランジャ57により絞りスタートマグネット51側に引き込まれている。
【0017】
以下、上述した絞り制御機構の動作を説明する。
撮影開始前の状態では、図2に示すように、絞り保持レバー47により絞り制御レバー15が係止され、絞り制御レバー15はコイルバネ39による右旋力に抗して停止している。このとき、撮影レンズ13の絞りは開放状態である。
押圧レバー33は、プランジャ45が絞り制御マグネット35により吸着されているので、線状バネ43による左旋力に抗して停止している。そして、この状態では、絞り停止レバー31を支持する軸X2は、図3の(a)に示すように、ラチェットギヤ27の回転中心よりずれた位置に位置している。また、絞り停止レバー31の爪部31aとラチェットギヤ27との係合が解除されている。
【0018】
カメラボディ11のレリーズ釦19が押圧されてレリーズ信号が入力されると、絞りスタートマグネット51に電圧が印加され、プランジャ57を開放する。この結果、コイルバネ55による左旋力により絞りスタートレバー49が左旋し、絞り保持レバー47を右旋し、絞り保持レバー47による絞り制御レバー15の係止を解除する。
これにより、絞り制御レバー15がコイルバネ39の右旋力により右旋されて、絞り込み動作が開始される。すなわち、絞り制御レバー15の右旋に追従して、レンズ側絞りレバー17が移動して、撮影レンズ13の絞り(不図示)を開放状態から絞り込む。
【0019】
絞り制御レバー15の右旋により、扇形ギヤ15aに小ギヤ部25aで噛合する増速ギヤ25が左回転する。そして、増速ギヤ25の大ギヤ部25bに小ギヤ部27aで噛合するラチェットギヤ27が増速されて右回転する。ラチェットギヤ27の回転数は、ラチェットギヤ27に設けられた小孔27bがフォトインタラプタ29を通過することで発生するパルスを不図示の制御回路によって計測して検出する。これにより、絞り制御レバー15の駆動量、すなわちレンズの絞り値は、フォトインタラプタ29で発生するパルス数で計測できる。
【0020】
不図示の制御回路によって計測されたフォトインタラプタ29で発生するパルス数が、所望の絞り値に相当する計数値になると、不図示の制御回路から絞り制御マグネット35に電圧が印加され、プランジャ45を開放する。
この結果、図4に示すように、線状バネ43による左旋力により押圧レバー33が左旋する。そして、図3の(b)に示すように、絞り停止レバー31を支持する軸X2がラチェットギヤ27の回転中心に位置し、絞り停止レバー31の爪部31aがラチェットギヤ27に係合してラチェットギヤ27の回転を停止させようとする。
【0021】
しかしながら、絞り停止レバー31は、線状バネ41により左旋方向に付勢されているため、絞り停止レバー31の爪部31aにラチェットギヤ27からの衝撃が作用すると、図5および図3の(c)に示すように、線状バネ41の弾性力に抗して右旋し、線状バネ41により衝撃が吸収される。これにより、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止することがなくなり、絞り制御レバー15と一体になって走行していたレンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突しバウンドすることを有効に防止することができる。そして、比較的短い時間で、絞り径を安定化することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31に多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31の耐久性を向上することができる。
【0022】
なお、上述の絞り制御機構の動作とは別に、カメラボディ11に内蔵された不図示のミラーが撮影光路から待避するミラーアップの動作が実行される。次いで、周知の装置により不図示のシャッタが作動して撮影動作が行われ、引き続き各部のリセット動作が行われる。この実施形態では、図示しないモータとカムを用いた周知の機構により、絞り制御レバー15、絞りスタートレバー49を駆動することにより、絞り制御マグネット35、絞りスタートマグネット51のリセット動作が行われる。そして、このリセット動作が終了すると、絞り制御機構は、図2に示した撮影動作開始前の状態に復帰する。
【0023】
上述した絞り制御機構では、絞り制御マグネット35に保持される押圧レバー33に絞り停止レバー31を回動可能に配置し、絞り停止レバー31を線状バネ41により付勢するようにしたので、絞り停止レバー31の爪部31aにラチェットギヤ27からの衝撃が作用すると、線状バネ41の弾性力により衝撃が吸収される。従って、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止することがなくなり、レンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突してバウンドすることを有効に防止することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31に多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31の耐久性を向上することができる。
【0024】
そして、上述した絞り制御機構では、絞り停止レバー31の回動中心をラチェットギヤ27の回転中心に位置した状態で、絞り停止レバー31の爪部31aをラチェットギヤ27に係合するようにしたので、爪部31aのラチェットギヤ27への係合後に、ラチェットギヤ27が多少回転した場合にも、係合状態を確実に維持することができる。
(第2の実施形態)
図6は本発明のカメラの絞り制御機構の第2の実施形態を示している。
【0025】
なお、この実施形態において第1の実施形態と同一の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この実施形態では、ベース部材37Aに固定されるラチェットギヤ27の軸X6には、回動部材59が回動可能に支持されている。回動部材59には、穴部59aが形成されている。穴部59aには、ブレーキレバー61が配置されている。ブレーキレバー61は、ベース部材37Aに固定される軸X7に回動可能に支持されている。
【0026】
ラチェットギヤ27の軸X6には、図7に示すように、線状バネ63が巻回されている。そして、線状バネ63の一端により、回動部材59に左旋力が与えられている。また、線状バネ63の他端により、ブレーキレバー61に左旋力が与えられている。この左旋力により、ブレーキレバー61のブレーキ部61aが穴部59aの内周に当接されている。なお、図7の(a)は図6の状態を、図7の(b)は図8の状態を、図7の(c)は図9の状態をそれぞれ示している。
【0027】
回動部材59には、絞り停止レバー31Aおよび絞り制御マグネット35が配置されている。絞り停止レバー31Aは、回動部材59に固定される軸X8に回動可能に支持されている。一端にはラチェットギヤ27に係合する爪部31aが設けられている。この絞り停止レバー31Aには、線状バネ65により左旋力が与えられている。絞り停止レバー31Aの爪部31aと反対側は、絞り制御マグネット35に吸着されるプランジャ45により絞り制御マグネット35側に引き込まれている。
【0028】
以下、この実施形態の絞り制御機構の動作を説明する。
撮影開始前の状態では、図6に示すように、絞り保持レバー47により絞り制御レバー15が係止され、絞り制御レバー15はコイルバネ39による右旋力に抗して停止している。このとき、撮影レンズ13の絞りは開放状態である。
絞り停止レバー31Aは、プランジャ45が絞り制御マグネット35により吸着されているので、線状バネ65による左旋力に抗して停止している。そして、この状態では、絞り停止レバー31Aの爪部31aとラチェットギヤ27との係合が解除されている。
【0029】
カメラボディ11のレリーズ釦19が押圧されてレリーズ信号が入力されると、絞りスタートマグネット51に電圧が印加され、プランジャ57を開放する。この結果、コイルバネ55による左旋力により絞りスタートレバー49が左旋し、絞り保持レバー47を右旋し、絞り保持レバー47による絞り制御レバー15の係止を解除する。
これにより、絞り制御レバー15がコイルバネ39の右旋力により右旋されて、絞り込み動作が開始される。すなわち、絞り制御レバー15の右旋に追従して、レンズ側絞りレバー17が移動して、撮影レンズ13の絞り(不図示)を開放状態から絞り込む。
【0030】
絞り制御レバー15の右旋により、小ギヤ部25aで扇形ギヤ15aに噛合する増速ギヤ25が左回転し、小ギヤ部27aで増速ギヤ25の大ギヤ部25bに噛合するラチェットギヤ27が増速されて右回転する。ラチェットギヤ27の回転数は、ラチェットギヤ27に設けられた小孔27bがフォトインタラプタ29を通過することで発生するパルスを不図示の制御回路によって計測して検出する。これにより、絞り制御レバー15の駆動量、すなわちレンズの絞り値は、フォトインタラプタ29で発生するパルス数で計測できる。
【0031】
不図示の制御回路によって計測されたフォトインタラプタ29で発生するパルス数が、所望の絞り値に相当する計数値になると、不図示の制御回路から絞り制御マグネット35に電圧が印加され、プランジャ45を開放する。
この結果、図8に示すように、線状バネ65による左旋力により絞り停止レバー31Aが左旋し、絞り停止レバー31Aの爪部31aがラチェットギヤ27に係合してラチェットギヤ27の回転を停止させようとする。
【0032】
しかしながら、絞り停止レバー31Aを支持する回動部材59は、線状バネ63により左旋方向に付勢されているため、絞り停止レバー31Aの爪部31aにラチェットギヤ27からの衝撃が作用すると、図9に示すように、線状バネ63の弾性力に抗して右旋し、線状バネ63により衝撃が吸収される。これにより、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止することがなくなり、絞り制御レバー15と一体になって走行していたレンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突しバウンドすることを有効に防止することができる。そして、比較的短い時間で、絞り径を安定化することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Aに多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Aの耐久性を向上することができる。
【0033】
また、線状バネ63によりブレーキレバー61に左旋力が与えられ、この左旋力によりブレーキレバー61のブレーキ部61aが穴部59aの内周に当接している。従って、摩擦抵抗により回動部材59の回動動作にブレーキをかけることが可能になり、回動部材59が初期位置に戻る時に、レンズ側絞りレバー17を強く押圧してしまうことを防止することができる。
【0034】
上述した絞り制御機構では、図示しないモータとカムを用いた周知の機構により、絞り制御レバー15、絞りスタートレバー49を駆動することにより、絞り制御マグネット35、絞りスタートマグネット51のリセット動作が行われる。そして、このリセット動作が終了すると、絞り制御機構は、図6に示した撮影動作開始前の状態に復帰する。
上述した絞り制御機構では、回動部材59に絞り停止レバー31Aおよび絞り制御マグネット35を配置し、回動部材59を線状バネ63により付勢するようにしたので、絞り停止レバー31Aの爪部31aにラチェットギヤ27からの衝撃が作用すると、線状バネ63の弾性力により衝撃が吸収される。従って、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止することがなくなり、レンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突してバウンドすることを有効に防止することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Aに多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Aの耐久性を向上することができる。
【0035】
そして、上述した絞り制御機構では、回動部材59の回動中心をラチェットギヤ27の回転中心に位置させたので、爪部31aのラチェットギヤ27への係合後に、回動部材59が多少回転した場合にも、係合状態を確実に維持することができる。
(第3の実施形態)
図10は本発明のカメラの絞り制御機構の第3の実施形態を示している。
【0036】
なお、この実施形態において第1の実施形態と同一の要素には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
この実施形態では、絞り停止レバー31Bは、ベース部材37Bに固定される軸X9に回動可能に支持されている。一端にはラチェットギヤ27に係合する爪部31aが設けられている。この絞り停止レバー31Bには、線状バネ67により左旋力が与えられている。絞り停止レバー31Bの爪部31aと反対側は、絞り制御マグネット35に吸着されるプランジャ45により絞り制御マグネット35側に引き込まれている。絞り制御マグネット35は、ベース部材37Bに固定されている。
【0037】
そして、図11に示すように、増速ギヤ25Bが入力側ギヤ71と出力側ギヤ73とに2分割されている。入力側ギヤ71には、絞り制御レバー15の扇形ギヤ15aが噛合される小ギヤ部71aが一体形成されている。また、出力側ギヤ73には、ラチェットギヤ27の小ギヤ部27aと噛合する大ギヤ部73aが形成されている。
入力側ギヤ71の本体部71bには、中心から所定角度をおいて3箇所の突出部71cが円弧状に一体形成されている。出力側ギヤ73には、3箇所の突出部71cがそれぞれ間隙を置いて挿入される穴部73a,73bが円弧状に形成されている。1つの穴部73aは、他の2つの穴部73bより長い円弧状とされている。この穴部73aには、コイルバネ75が挿入されている。そして、コイルバネ75の一端は、突出部71cの側面71dに当接され、他端は、穴部73aの内面73dに当接されている。
【0038】
以下、この実施形態の絞り制御機構の動作を説明する。
撮影開始前の状態では、図10に示すように、絞り保持レバー47により絞り制御レバー15が係止され、絞り制御レバー15はコイルバネ39による右旋力に抗して停止している。このとき、撮影レンズ13の絞りは開放状態である。
絞り停止レバー31Bは、プランジャ45が絞り制御マグネット35により吸着されているので、線状バネ67による左旋力に抗して停止している。そして、この状態では、絞り停止レバー31Bの爪部31aとラチェットギヤ27との係合が解除されている。
【0039】
カメラボディ11のレリーズ釦19が押圧されてレリーズ信号が入力されると、絞りスタートマグネット51に電圧が印加され、プランジャ57を開放する。この結果、コイルバネ55による左旋力により絞りスタートレバー49が左旋し、絞り保持レバー47を右旋し、絞り保持レバー47による絞り制御レバー15の係止を解除する。
これにより、絞り制御レバー15がコイルバネ39の右旋力により右旋されて、絞り込み動作が開始される。すなわち、絞り制御レバー15の右旋に追従して、レンズ側絞りレバー17が移動して、撮影レンズ13の絞り(不図示)を開放状態から絞り込む。
【0040】
絞り制御レバー15の右旋により、小ギヤ部71aで扇形ギヤ15aに噛合する入力側ギヤ71が左回転する。入力側ギヤ71の左回転により、コイルバネ75を介して、出力側ギヤ73が左回転する。そして、小ギヤ部27aで出力側ギヤ73の大ギヤ部73aに噛合するラチェットギヤ27が増速されて右回転する。
ラチェットギヤ27の回転数は、ラチェットギヤ27に設けられた小孔27bがフォトインタラプタ29を通過することで発生するパルスを不図示の制御回路によって計測して検出する。これにより、絞り制御レバー15の駆動量、すなわちレンズの絞り値は、フォトインタラプタ29で発生するパルス数で計測できる。
【0041】
不図示の制御回路によって計測されたフォトインタラプタ29で発生するパルス数が、所望の絞り値に相当する計数値になると、不図示の制御回路から絞り制御マグネット35に電圧が印加され、プランジャ45を開放する。
この結果、図12に示すように、線状バネ67による左旋力により絞り停止レバー31Bが左旋し、絞り停止レバー31Bの爪部31aがラチェットギヤ27に係合してラチェットギヤ27の回転を停止させる。そして、この停止時に、絞り制御レバー15、および、絞り制御レバー15の扇形ギヤ15aに噛合する入力側ギヤ71が、慣性力によりさらに回転しようとするが、図13に示すようにコイルバネ75の変形により回転力が吸収される。これにより、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止した場合にも、絞り制御レバー15が急激に停止することがなくなり、絞り制御レバー15と一体になって走行していたレンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突しバウンドすることを有効に防止することができる。そして、比較的短い時間で、絞り径を安定化することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止した場合にも、ラチェットギヤ27に出力側ギヤ73からの大きな回転力が作用しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Bに多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Bの耐久性を向上することができる。
【0042】
上述した絞り制御機構では、図示しないモータとカムを用いた周知の機構により、絞り制御レバー15、絞りスタートレバー49を駆動することにより、絞り制御マグネット35、絞りスタートマグネット51のリセット動作が行われる。そして、このリセット動作が終了すると、絞り制御機構は、図10に示した撮影動作開始前の状態に復帰する。
上述した絞り制御機構では、増速ギヤ25Bを入力側ギヤ71と出力側ギヤ73とに分割し、入力側ギヤ71と出力側ギヤ73との間にコイルバネ75配置したので、絞り停止レバー31Bによりラチェットギヤ27の回転を停止すると、入力側ギヤ71および絞り制御レバー15の回転力がコイルバネ75の変形により吸収される。従って、ラチェットギヤ27の回転が急激に停止した場合にも、絞り制御レバー15が急激に停止することがなくなり、絞り制御レバー15と一体になって走行していたレンズ側絞りレバー17が絞り制御レバー15に衝突しバウンドすることを有効に防止することができる。また、ラチェットギヤ27の回転を急激に停止した場合にも、ラチェットギヤ27に出力側ギヤ73からの大きな回転力が作用しないため、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Bに多大な衝撃が作用することがなくなり、ラチェットギヤ27および絞り停止レバー31Bの耐久性を向上することができる。
(実施形態の補足事項)
以上、本発明を上述した実施形態によって説明してきたが、本発明の技術的範囲は上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、以下のような形態でも良い。
【0043】
(1)上述した実施形態では、一眼レフレックス型のカメラに本発明を適用した例について説明したが、絞りレバー17の移動を絞り制御レバー15により制御する形態のカメラに広く適用することができる。
(2)上述した第1の実施形態では、絞り停止レバー31を線状バネ41により付勢した例について説明したが、コイルバネ等の種々の弾性部材を用いることができる。
【0044】
(3)上述した第2の実施形態では、回動部材59を線状バネ63により付勢した例について説明したが、コイルバネ等の種々の弾性部材を用いることができる。
(4)上述した第3の実施形態では、入力側ギヤ71と出力側ギヤ73との間にコイルバネ75を配置した例について説明したが、線状バネ、ゴム等の種々の弾性部材を用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明のカメラの絞り制御機構を搭載した一眼レフレックス型のカメラを示す説明図である。
【図2】本発明のカメラの絞り制御機構の第1の実施形態の要部を示す説明図である。
【図3】図2の絞り停止レバーおよび押圧レバーを示す説明図である。
【図4】図2の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した状態を示す説明図である。
【図5】図2の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した後の状態を示す説明図である。
【図6】本発明のカメラの絞り制御機構の第2の実施形態の要部を示す説明図である。
【図7】図6の回動部材および絞り停止レバーを示す説明図である。
【図8】図6の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した状態を示す説明図である。
【図9】図6の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した後の状態を示す説明図である。
【図10】本発明のカメラの絞り制御機構の第3の実施形態の要部を示す説明図である。
【図11】図10の増速ギヤの詳細を示す説明図である。
【図12】図10の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した状態を示す説明図である。
【図13】図10の絞り制御機構においてラチェットギヤに爪部が係合した後の状態を示す説明図である。
【符号の説明】
【0046】
15…絞り制御レバー、17…レンズ側絞りレバー、25,25B…増速ギヤ、27…ラチェットギヤ、29…フォトインタラプタ、31,31A,31B…絞り停止レバー、31a…爪部、33…押圧レバー、35…絞り制御マグネット、71…入力側ギヤ、73…出力側ギヤ、75…コイルバネ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
絞りレバーの移動を制御する絞り制御レバーと、
前記絞り制御レバーの回動により回転されるラチェットギヤと、
前記ラチェットギヤに噛合する爪部を備えた爪部材と、
回転状態にある前記ラチェットギヤへの前記爪部の噛合時に前記爪部に作用する衝撃を弾性的に吸収する衝撃吸収手段と、
を有することを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項2】
請求項1記載のカメラの絞り制御機構において、
前記ラチェットギヤの回転を検出する回転検出手段と、
前記回転検出手段からの検出信号に基づいて前記爪部を前記ラチェットギヤに噛合し前記絞り制御レバーの回動位置を規制する位置決め手段と、
を有することを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項3】
請求項2記載のカメラの絞り制御機構において、
前記位置決め手段は、
前記爪部材が回動可能に固定されラチェットギヤ側に付勢される押圧部材と、
前記押圧部材を離脱可能に保持する保持手段とを有し、
前記衝撃緩和手段は、前記爪部材の前記爪部を前記ラチェットギヤの回転方向に付勢する付勢手段を有することを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項4】
請求項3記載のカメラの絞り制御機構において、
前記爪部が前記ラチェットギヤに噛合している時の前記爪部材の回動中心を、前記ラチェットギヤの回転中心に位置させてなることを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項5】
請求項2記載のカメラの絞り制御機構において、
前記位置決め手段は、
前記爪部を前記ラチェットギヤ側に付勢される前記爪部材と、
前記爪部材を離脱可能に保持する保持手段とを有し、
前記衝撃緩和手段は、
前記爪部材および前記保持手段を支持する回動部材と、
前記回動部材を前記爪部材の前記爪部が前記ラチェットギヤの回転方向に付勢されるように付勢する付勢手段とを有することを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項6】
請求項5記載のカメラの絞り制御機構において、
前記回動部材の回動中心を、前記ラチェットギヤの回転中心に位置させてなることを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項7】
請求項1または請求項2記載のカメラの絞り制御機構において、
前記絞り制御レバーと前記ラチェットギヤとの間に、前記絞り制御レバーの回動を前記ラチェットギヤに伝達する伝達ギヤを有し、
前記衝撃緩和手段を、前記伝達ギヤを入力側ギヤと出力側ギヤとに分割し、前記入力側ギヤと出力側ギヤとの間に弾性部材を配置して構成してなることを特徴とするカメラの絞り制御機構。
【請求項8】
請求項1ないし請求項7のいずれか1項記載のカメラの絞り制御機構を有することを特徴するカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−65075(P2008−65075A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−243257(P2006−243257)
【出願日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】