説明

カメラモジュール

【課題】 生産性が良く、安価なカメラモジュールを提供する。
【解決手段】 本発明のカメラモジュールは、レンズ5を保持した保持部材1と、レンズ5に対向して配置された撮像素子9と、この撮像素子9の裏面を支持した絶縁基板7と、撮像素子9の電極9bと絶縁基板7に設けられた配線パターン8との間を接続するワイヤ10とを備え、保持部材1の下部筒状部3は、コ字状に配置された3つの外壁3aと、外壁3aよりも高さの低い1つの隔壁3bを有し、撮像素子9の一辺側と、この一辺側に設けられたワイヤ10を除く大部分のワイヤ10と撮像素子9が下部筒状部3内に収納された状態となっているため、絶縁樹脂部11は、撮像素子9の一辺側のワイヤ10のみを被覆するだけで良く、従って、絶縁樹脂部11の形成作業が容易で、安価なものが得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は携帯電話機等の電気機器に使用して好適なカメラモジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
図4は従来のカメラモジュールに係る要部断面図を示し、従来のカメラモジュールの構成を図4に基づいて説明すると、筒状の保持部材51は、外形の大きな上部筒状部51aと、この上部筒状部51aに繋がり、上部筒状部51aより外形の小さい下部筒状部51bと、レンズ52が取り付けら、上部筒状部51aにねじ込まれた取付部51cとを有する。
【0003】
平板からなる絶縁基板53には、配線パターン54が設けられると共に、平板状の撮像素子55は、下面が絶縁基板53に支持された状態で、電極56が配線パターン54にワイヤ57によって接続されて、絶縁基板53に取り付けられた撮像素子55は、上面が下部筒状部51bの下端部に当接された状態で、配設される。
【0004】
この時、撮像素子55の外周部と、全てのワイヤ57が下部筒状部51bから外方に露出した状態となり、この下部筒状部51bの全外周部には、絶縁樹脂部58設けられ、ワイヤ57が絶縁樹脂部58によって被覆されて、ワイヤ57の断線が防止されることによって、従来のカメラモジュールが形成されている。(例えば、特許文献1参照)
【0005】
しかし、従来のカメラモジュールは、撮像素子55の外周部と、全てのワイヤ57が下部筒状部51bから外方に露出し、絶縁樹脂部58が下部筒状部51bの全外周部に設けられて、全てのワイヤ57が絶縁樹脂部58によって被覆されるため、絶縁樹脂部58の形成作業が面倒で、生産性が悪く、コスト高になる。
【0006】
【特許文献1】特開2004−242166号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来のカメラモジュールは、撮像素子55の外周部と、全てのワイヤ57が下部筒状部51bから外方に露出し、絶縁樹脂部58が下部筒状部51bの全外周部に設けられて、全てのワイヤ57が絶縁樹脂部58によって被覆されるため、絶縁樹脂部58の形成作業が面倒で、生産性が悪く、コスト高になるという問題がある。
【0008】
そこで、本発明は生産性が良く、安価なカメラモジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための第1の解決手段として、レンズを保持した保持部材と、前記レンズに対向して配置された撮像素子と、この撮像素子の裏面を支持した状態で、前記保持部材の下部に配置された四角形の絶縁基板と、前記撮像素子の電極と前記絶縁基板に設けられた配線パターンとの間を接続するワイヤとを備え、前記保持部材は、四角筒状の下部筒状部を有すると共に、この下部筒状部は、コ字状に配置された3つの外壁と、この外壁の下端部から段差を持って形成され、前記外壁よりも高さの低い1つの隔壁を有し、前記ワイヤを含む前記撮像素子が前記下部筒状部内に収納された状態で、前記絶縁基板は、前記外壁の下端部に載置されると共に、前記撮像素子の一辺側は、一部の前記ワイヤと一部の前記絶縁基板と共に前記隔壁の位置から外方に突出し、前記隔壁外に露出した前記ワイヤが絶縁樹脂部によって被覆された構成とした。
【0010】
また、第2の解決手段として、前記下部筒状部は、対向する一対の前記外壁のそれぞれに繋がり、前記隔壁の両端部から前記絶縁基板の対向する側辺に沿って外方の延びる一対の延設壁を有し、この延設壁と、前記隔壁、及び前記絶縁基板との間に形成された空間部において、前記絶縁樹脂部が設けられた構成とした。
【0011】
また、第3の解決手段として、前記下部筒状部は、前記絶縁基板から間隔を置いて上方に設けられ、一対の前記延設壁間の上部を塞ぐ天板部を有し、この天板部と、前記延設壁と、前記隔壁、及び前記絶縁基板との間に形成された空間部において、前記絶縁樹脂部が設けられた構成とした。
【0012】
また、第4の解決手段として、前記隔壁の下端部は、前記撮像素子の上面から離れた状態で配置された構成とした。
また、第5の解決手段として、前記撮像素子は、前記絶縁基板の中心部から前記隔壁側にずれた状態で、前記絶縁基板に取り付けられた構成とした。
また、第6の解決手段として、前記撮像素子は、この撮像素子の中心からずれた位置に受光部を有し、この受光部が光軸の位置に配置された構成とした。
【発明の効果】
【0013】
本発明のカメラモジュールは、レンズを保持した保持部材と、レンズに対向して配置された撮像素子と、この撮像素子の裏面を支持した状態で、保持部材の下部に配置された四角形の絶縁基板と、撮像素子の電極と絶縁基板に設けられた配線パターンとの間を接続するワイヤとを備え、保持部材は、四角筒状の下部筒状部を有すると共に、この下部筒状部は、コ字状に配置された3つの外壁と、この外壁の下端部から段差を持って形成され、外壁よりも高さの低い1つの隔壁を有し、ワイヤを含む撮像素子が下部筒状部内に収納された状態で、絶縁基板は、外壁の下端部に載置されると共に、撮像素子の一辺側は、一部のワイヤと一部の絶縁基板と共に隔壁の位置から外方に突出し、隔壁外に露出したワイヤが絶縁樹脂部によって被覆された構成とした。
即ち、撮像素子の一辺側と、この一辺側に設けられたワイヤを除く大部分のワイヤと撮像素子が下部筒状部内に収納された状態となっているため、絶縁樹脂部は、撮像素子の一辺側のワイヤのみを被覆するだけで良く、従って、従来に比して絶縁樹脂部の形成作業が容易で、生産性が良く、安価なものが得られる。
【0014】
また、下部筒状部は、対向する一対の外壁のそれぞれに繋がり、隔壁の両端部から絶縁基板の対向する側辺に沿って外方の延びる一対の延設壁を有し、この延設壁と、隔壁、及び絶縁基板との間に形成された空間部において、絶縁樹脂部が設けられたため、絶縁樹脂部の横方向の漏れが延設壁で防止され、絶縁樹脂部の留まりの良好なものが得られる。
【0015】
また、下部筒状部は、絶縁基板から間隔を置いて上方に設けられ、一対の延設壁間の上部を塞ぐ天板部を有し、この天板部と、延設壁と、隔壁、及び絶縁基板との間に形成された空間部において、絶縁樹脂部が設けられたため、天板部と、延設壁と、隔壁、及び絶縁基板との間に形成された空間部は、筒状となし、この筒状の開口部側を上にした状態で、絶縁樹脂部を充填することができて、絶縁樹脂部の充填の容易なものが得られる。
【0016】
また、隔壁の下端部は、撮像素子の上面から離れた状態で配置されたため、撮像素子は、組立の際に隔壁に当接することが無く、従って、撮像素子の割れの無いものが得られる。
【0017】
また、撮像素子は、絶縁基板の中心部から隔壁側にずれた状態で、絶縁基板に取り付けられたため、撮像素子が絶縁基板の中心部に左右対称な位置に配置されるもの比して、絶縁基板の小型化が図れて、小型のものが得られる。
【0018】
また、撮像素子は、この撮像素子の中心からずれた位置に受光部を有し、この受光部が光軸の位置に配置されたため、受光部が撮像素子の中心部に配置されているものに比して、撮像素子の小型化が図れて、小型のものが得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明のカメラモジュールの図面を説明すると、図1は本発明のカメラモジュールに係る要部断面図、図2は本発明のカメラモジュールに係る保持部材の下面図、図3は本発明のカメラモジュールに係る保持部材を下部側から見た要部の斜視図である。
【0020】
次に、本発明のカメラモジュールに係る構成を図1〜図3に基づいて説明すると、合成樹脂の成型品等からなる保持部材1は、円筒からなる上部筒状部2と、この上部筒状部2内に設けられ、中央部に孔2aを有する環状の鍔部2bと、上部筒状部2の下部に繋がり、上部筒状部2より外形の大きな四角筒状からなる下部筒状部3と、中央部に孔4aを有し、上部筒状部2の前方に被せられたキャップ4を有する。
【0021】
また、下部筒状部3は、コ字状に配置された3つの外壁3aと、この外壁3aの下端部から段差を持って形成され、外壁3aよりも高さの低い1つの隔壁3bと、対向する一対の外壁3aのそれぞれに繋がり、隔壁3bの両端部から直線状に外方の延びる一対の延設壁3cと、この一対の延設壁3c間の上部を塞ぐ天板部3dを有する。
【0022】
レンズ5は、上部筒状部2内に取り付けられると共に、レンズ5と対向する赤外線除去フィルタ(IRカットフィルタ)6は、上部筒状部2内に取り付けられている。
【0023】
絶縁材からなる平板状の絶縁基板7には、配線パターン8が設けられると共に、この絶縁基板7には、裏面(下部)が接着剤等によって絶縁基板7に支持された状態で、レンズ5に対向する四角形の撮像素子9が取り付けられている。
この撮像素子9は、中心からずれた位置の上面に設けられた受光部9aと、外周縁に沿って上面に設けられた多数の電極9bを有し、この撮像素子9は、電極9bがワイヤ10によってそれぞれ配線パターン8に接続されると共に、撮像素子9は、後述するように、レンズ5の光軸K(絶縁基板7の中心部)からずれた位置に配置されている。
【0024】
このように、撮像素子9を取り付けた絶縁基板7は、ワイヤ10を含む撮像素子9の大部分が下部筒状部3内に収納された状態で、外壁3aの下端部に載置されると共に、撮像素子9の一辺側は、一部のワイヤ10と一部の絶縁基板7と共に隔壁3bの位置から外方に突出して露出した状態となっている。
【0025】
この時、隔壁3bの下端部は、撮像素子9の上面に当接せず、且つ、絶縁基板7の対向する側辺の一部は、それぞれ延設壁3cに沿って外方に延びて(突出して)、天板部3dと絶縁基板7の突出部は、互いに間隔を置いて対向した状態になると共に、隔壁3bと、延設壁3cと、天板部3d、及び絶縁基板7とで形成され、保持部材1外に露出された空間部は、筒状をなしている。
【0026】
即ち、下部筒状部3の下部に配置された絶縁基板7の中心部は、光軸Kと位置するが、絶縁基板7に取り付けられた撮像素子9は、絶縁基板7の中心部(光軸K)から隔壁3b側にずれた位置に配置されると共に、撮像素子9に設けられた受光部9aは、撮像素子9の中心部から隔壁3cと対向する外壁3a側にずれた位置に配置されて、光軸Kの位置となっている。
そして、絶縁樹脂が筒状をなした空間部の開放部側から空間部内に充填されて、ワイヤ10を覆う絶縁樹脂部11が形成されて、この絶縁樹脂部11によってワイヤ10の断線を防止することによって、本発明のカメラモジュールが形成されている。
【0027】
なお、この実施例では、延設壁3cと天板部3dを設けたもので説明したが、延設壁3cと天板部3dの何れか一方、或いは双方を削除したものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明のカメラモジュールに係る要部断面図。
【図2】本発明のカメラモジュールに係る保持部材の下面図。
【図3】本発明のカメラモジュールに係る保持部材を下部側から見た要部の斜視図。
【図4】従来のカメラモジュールに係る要部断面図。
【符号の説明】
【0029】
1:保持部材
2:上部筒状部
2a:孔
2b:鍔部
3:下部筒状部
3a:外壁
3b:隔壁
3c:延設壁
3d:天板部
4:キャップ
4a:孔
5:レンズ
6:赤外線除去フィルタ
7:絶縁基板
8:配線パターン
9:撮像素子
9a:受光部
9b:電極
10:ワイヤ
11:絶縁樹脂部
K:光軸(絶縁基板の中心部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レンズを保持した保持部材と、前記レンズに対向して配置された撮像素子と、この撮像素子の裏面を支持した状態で、前記保持部材の下部に配置された四角形の絶縁基板と、前記撮像素子の電極と前記絶縁基板に設けられた配線パターンとの間を接続するワイヤとを備え、前記保持部材は、四角筒状の下部筒状部を有すると共に、この下部筒状部は、コ字状に配置された3つの外壁と、この外壁の下端部から段差を持って形成され、前記外壁よりも高さの低い1つの隔壁を有し、前記ワイヤを含む前記撮像素子が前記下部筒状部内に収納された状態で、前記絶縁基板は、前記外壁の下端部に載置されると共に、前記撮像素子の一辺側は、一部の前記ワイヤと一部の前記絶縁基板と共に前記隔壁の位置から外方に突出し、前記隔壁外に露出した前記ワイヤが絶縁樹脂部によって被覆されたことを特徴とするカメラモジュール。
【請求項2】
前記下部筒状部は、対向する一対の前記外壁のそれぞれに繋がり、前記隔壁の両端部から前記絶縁基板の対向する側辺に沿って外方の延びる一対の延設壁を有し、この延設壁と、前記隔壁、及び前記絶縁基板との間に形成された空間部において、前記絶縁樹脂部が設けられたことを特徴とする請求項1記載のカメラモジュール。
【請求項3】
前記下部筒状部は、前記絶縁基板から間隔を置いて上方に設けられ、一対の前記延設壁間の上部を塞ぐ天板部を有し、この天板部と、前記延設壁と、前記隔壁、及び前記絶縁基板との間に形成された空間部において、前記絶縁樹脂部が設けられたことを特徴とする請求項2記載のカメラモジュール。
【請求項4】
前記隔壁の下端部は、前記撮像素子の上面から離れた状態で配置されたことを特徴とする請求項1から3の何れかに記載のカメラモジュール。
【請求項5】
前記撮像素子は、前記絶縁基板の中心部から前記隔壁側にずれた状態で、前記絶縁基板に取り付けられたことを特徴とする請求項1から4の何れかに記載のカメラモジュール。
【請求項6】
前記撮像素子は、この撮像素子の中心からずれた位置に受光部を有し、この受光部が光軸の位置に配置されたことを特徴とする請求項1から5の何れかに記載のカメラモジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−270569(P2006−270569A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−86311(P2005−86311)
【出願日】平成17年3月24日(2005.3.24)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】