説明

カメラ一体型火災検知器およびトンネルにおける火災検知システム

【課題】 トンネル内の映像とトンネル内設置の火災検知器からの火災信号とを得る場合、機器の設置や配線工事が簡素であり、設備が安価であるトンネルのカメラ一体型火災検知器およびトンネルにおける火災検知システムを提供することを目的とするものである。

【解決手段】 トンネルに設置される火災検知器において、火災を検知する火災検知部と、上記火災検知部と一体化されているカメラとを有することを特徴とするトンネルのカメラ一体型火災検知器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネルのカメラ一体型火災検知器およびトンネルにおける火災検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
トンネルの入口に、可変情報板が設置され、トンネル内で火災が発生した場合に、トンネル防災システムの火災警報と連動し、「トンネル内進入禁止」を、上記可変情報板が表示する。
【0003】
非火災報(誤報)での進入禁止指示は、急停車による追突事故の増加原因になり、道路利用者が遅延被害を被るという問題がある。
【0004】
この問題を解決するために、従来は、カメラをトンネル内に設置し、カメラの撮像手段によって、トンネル内の状態を確認し、これによって、火災検知の信頼性を向上させている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2004−152134号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、カメラの撮像システムと火災検知器とは、互いに独立のシステムであるので、上記従来例では、カメラの撮像システムと火災検知器との設置に際して、機器の設置や配線工事を、別々に実施する必要があり、上記機器の設置や配線工事に、非常に労力がかかるという問題があり、また、それぞれの信号のやり取りが複雑であり、設備が非常に高価であるという問題がある。
【0006】
本発明は、トンネル内の映像とトンネル内設置の火災検知器からの火災信号とを得る場合、機器の設置や配線工事が簡素であり、設備が安価であるトンネルのカメラ一体型火災検知器およびトンネルにおける火災検知システムを提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、トンネルに設置される火災検知器において、火災を検知する火災検知部と、上記火災検知部と一体化されているカメラとを有するトンネルのカメラ一体型火災検知器である。
【0008】
また、本発明は、複数の火災検知器と、カメラと火災検知部とが一体化されている複数のカメラ一体型火災検知器とが、上記トンネル内に設置され、また、1つの上記カメラ一体型火災検知器と別の上記カメラ一体型火災検知器との間に、少なくとも1つの上記火災検知器が設置されているトンネルにおける火災検知システムである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、トンネル内の映像とトンネル内設置の火災検知器からの火災信号とを得る場合、機器の設置や配線工事が簡素であり、設備が安価であるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0011】
図1は、本発明の実施例1であるトンネルにおける火災検知システム100を示す図である。
【0012】
図2は、カメラ一体型火災検知器10の正面図である。
【0013】
図3は、カメラ一体型火災検知器10の平面図である。
【0014】
火災検知システム100は、CCDカメラ11を搭載したカメラ一体型火災検知器10と、カメラを搭載しない従来の火災検知器SEと、信号受信装置20と、中央監視装置30とによって構成されている。
【0015】
カメラ一体型火災検知器10は、CCDカメラ11と、火災検知する火災検知部12と、機能試験ランプ13とを有する。火災検知部12は、車両から発生する炎の検知を目的とし、CCDカメラ11は、映像を配信することによって、火災かどうかを目視確認することを目的とする。
【0016】
カメラ一体型火災検知器10と、従来の火災検知器SEとを配置する場合、トンネルTNの長手方向の壁側に、従来の火災検知器SEを所定間隔(たとえば100m間隔)で配置し、カメラ一体型火災検知器10を、従来の火災検知器SEの間に間欠的に配置する。つまり、火災検知器(火災検知器SE、および、カメラ一体型火災検知器10に含まれている火災検知部12)同士の配置距離が、たとえば50mであり、CCDカメラ11同士の配置距離が、たとえば100mである。
【0017】
信号受信装置20は、映像制御装置21を有し、火災検知器SE、火災検知部12からの信号を受信し、カメラ11からの映像信号を処理し、火災時に他設備の連動制御を行う。
【0018】
中央監視装置30は、遠隔地で広域の道路交通監視を行いモニタ制御装置31を有し、火災検知器SEと火災検知部12とからの信号を受信し、火災判定処理を行い、カメラ映像を配信制御し、火災時の他設備の連動制御を行う。
【0019】
また、カメラ一体型火災検知器10の正面中央には、図2に示すように、楕円状の火災検知部12が設置され、その上部にCCDカメラ11が設置されている。
【0020】
火災検知部12は、水平方向に180度の範囲で監視する。CCDカメラ11は、レンズ汚れ防止のために、道路と直角の方向に向けるのではなく、道路と直角の方向からやや車両の進行方向に向いた方向、すなわち風下に向ける方向に設定されている。つまり、火災検知部12の中心軸とカメラ11の光軸との交角は、0度〜90度である。
【0021】
また、CCDカメラ11は、水平方向に90度〜100度の範囲で監視する。ただし、CCDカメラ11による視界が機能試験ランプ13によって遮られないようにする(死角エリアの発生を少なくする)ために、火災検知部12の機能試験ランプ13の上部に、CCDカメラ11が搭載されている。
【0022】
[構成を利用する手順]
カメラ一体型火災検知器10の動作について説明する。
【0023】
図4は、カメラ一体型火災検知器10の動作を示すフローチャートである。
【0024】
まず、カメラ一体型火災検知器10に設けられているCCDカメラ11は、トンネルTNの撮影/画像処理を開始し(S11)、火災検知部12は、トンネルTNの監視を開始する(S21)。
【0025】
CCDカメラ11または火災検知部12のいずれかが火災を検出すると(S12、S22)、火災検出した旨を、信号受信装置20に送信し、信号受信装置20は、プレアラーム信号を、遠隔の中央監視装置30に通知し(S13、S23)、また、検出位置のカメラ映像を、モニタ31に表示させる(S30)。
【0026】
CCDカメラ11と火災検知部12とが火災を検出すると(S14、S24)、火災検知した旨の検出信号を、信号受信装置20に通知する。ここで、信号受信装置20は、「火災」と判断し、火災信号を遠隔の中央監視装置30に通知し、火災警報を発生させる(S40)。
【0027】
なお、火災検知部12の代わりに、火災検知器SEが火災監視し、作動信号を出力した場合も、上記と同様である。
【0028】
つまり、火災検知部12が1回作動し、信号受信装置20が、その信号を受信した場合、信号受信装置20は、中央監視装置30にプレアラームを通知し、また、その火災検知部12の周辺に設置されている複数台のカメラ一体型火災検知器10によるカメラ映像を、モニタ制御装置31に配信する。この場合、全てのカメラ一体型火災検知器10からの映像信号を、常時、信号受信装置20に配信するようにしてもよく、また、信号受信装置20は、常時は、全てのカメラ一体型火災検知器10からの映像信号を受信するのではなく、所定のCCDカメラ11を選択し、電源供給し、この選択されたCCDカメラ11からの映像信号のみを、信号受信装置20に配信するようにしてもよい。
【0029】
火災検知部12が、連続して作動信号を出力し、所定時間が経過すると、信号受信装置20は、火災が発生したと判断し、火災警報の信号を、中央監視装置30に出力し、火災警報する前に、モニタ31に表示されている映像に基づいて、火災を確認することができれば、中央監視装置30において、手動によって火災警報を入力することができる。
【0030】
しかし、火災を確認できなければ(S14、S24)、非火災報と判断し、火災警報を出さず中央監視装置30において、直ちに復旧操作し、信号受信装置20のプレアラームを復旧させることができる。非火災報の確認が遅れ火災警報が発生したとしても、上記と同様に早期に復旧(警報の停止)させることができる。
【0031】
なお、図示しないがトンネルTN内消火栓の手動通報装置や消火栓起動レバーが押された場合も、その信号を信号受信装置21が受け、その消火栓周辺のカメラ映像のみを選択し、中央監視装置30に配信するようにしてもよい。また、モニタ制御装置31による信号受信装置20へのアクセスによって、トンネルTN内の全カメラ映像を見ることもできる。
【0032】
実施例1によれば、トンネルTN内の映像を撮影するCCDカメラ11と、トンネルTN内の火災を検知する火災検知部12とが一体化されているので、火災検知部12のプレアラームで、CCDカメラ11が該当区画の映像を配信し、または、CCDカメラ11のプレアラームで火災検知部12が該当区画の火災を確認すれば、遠隔からトンネルTN内の情報を確実に把握することができ、火災時の対応と非火災報時の復旧処理とを迅速に行うことができる。
【0033】
また、実施例1によれば、CCDカメラ11と火災検知部12とが一体化されているので、機器のサイズがコンパクトで無駄にスペースを取らず、従来の火災検知器SEを所定間隔で配置するとともに、上記カメラ一体型火災検知器10を間欠的に配置すれば、従来例のように火災検知器SEの配線とは別系統で従来のカメラを配線する場合よりも、機器費や配線費が安く、火災検知システム設備の全体のコストを低減することができる。
【0034】
さらに、実施例1によれば、CCDカメラ11は、火災検知部12の上部に取り付け、風下側に向けることによって、CCDカメラ11のレンズが汚れにくくなり、CCDカメラ11の死角がなくなる。
【実施例2】
【0035】
図5は、本発明の実施例2である火災検知システム200を示す図である。
【0036】
火災検知システム200は、基本的には、火災検知システム100と同じであるが、カメラ一体型火災検知器10の代わりに、カメラ一体型火災検知器14が設けられている点と、信号受信装置20の代わりに、信号受信装置40が設けられている点と、中央監視装置30の代わりに、中央監視装置50が設けられている点とが、火災検知システム100とは異なる。
【0037】
カメラ一体型火災検知器14は、実施例1におけるカメラ一体型火災検知器10とは異なり、映像配信機能のみを有し、火災検出用の画像処理機能は有していない。また、信号受信装置40は、映像制御装置41を有し、画像処理機能を持たず、カメラ一体型火災検知器14の映像を配信する。中央監視装置50は、モニタ制御装置51を有し、配信されたトンネル内の様子を画像表示する。
【0038】
したがって、火災検知器システム200は、火災検知システム100よりも、さらに簡素化され、設備がより安価である。
【0039】
図6は、火災検知システム200の動作を示すフローチャートである。
【0040】
火災検知器SEがトンネルTN内を監視し(S51)、火災検知器SEが作動信号を出力すると(S52)、信号受信装置40が作動信号を受信し、プレアラームを発生する(S53)。なお、火災検知器SEの代わりに、火災検知部12が火災監視し、作動信号を出力した場合も、上記と同様である。
【0041】
そして、信号受信装置40が、所定カメラの映像配信を制御し(S61)、モニタ制御装置51にプレアラームと所定カメラの映像とを配信し(S62)、人間の目視によって火災を確認できるかどうかを判断し(S63)、目視によって火災を確認できれば、中央監視装置50において、手動で火災警報を入力し(S64)、中央監視装置50において、火災警報を発する(S80)。復旧の場合、信号受信装置40を復旧操作し(S65)、S51に戻る。
【0042】
プレアラームを発生した(S53)後に、信号受信装置40が継続して作動信号を受信し(S71)、信号受信装置40が火災判定したかどうかを判断し(S72)、信号受信装置40が火災判定すれば、信号受信装置40が火災警報を発生し、火災信号を出力し(S73)、中央監視装置50が火災信号を受信し(S74)、中央監視装置50において火災警報し(S80)、終了する。
【0043】
なお、S72の判断でNOである場合、S63において、目視で再度確認し、火災でなければ、S65に進む。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明の実施例1であるトンネルTNにおける火災検知システム100を示す図である。
【図2】カメラ一体型火災検知器10の正面図である。
【図3】カメラ一体型火災検知器10の平面図である。
【図4】カメラ一体型火災検知器10の動作を示すフローチャートである。
【図5】本発明の実施例2である火災検知システム200を示す図である。
【図6】火災検知システム200の動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0045】
100…火災検知システム、
10、14…カメラ一体型火災検知器、
11…CCDカメラ、
12…火災検知部、
13…機能試験ランプ、
SE…従来の火災検知器、
20…信号受信装置、
21、41…映像制御装置、
30…中央監視装置、
31、51…モニタ制御装置、
40…信号受信装置、
50…中央監視装置、
TN…トンネル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トンネルに設置される火災検知器において、
火災を検知する火災検知部と;
上記火災検知部と一体化されているカメラと;
を有することを特徴とするカメラ一体型火災検知器。
【請求項2】
請求項1において、
上記火災検知部は、機能試験ランプを有し、
上記カメラは、上記機能試験ランプから見て、上記火災検知部の中心と反対側に設けられていることを特徴とするカメラ一体型火災検知器。
【請求項3】
請求項2において、
上記カメラの光軸は、上記カメラ一体型火災検知器を設置したときに、風下を向くように設定されていることを特徴とするカメラ一体型火災検知器。
【請求項4】
複数の火災検知器と;
カメラと火災検知部とが一体化されている複数のカメラ一体型火災検知器と;
が上記トンネル内に設置され、また、1つの上記カメラ一体型火災検知器と別の上記カメラ一体型火災検知器との間に、少なくとも1つの上記火災検知器が設置されていることを特徴とするトンネルにおける火災検知システム。
【請求項5】
請求項4において、
上記火災検知器が作動すると、この作動した火災検知器のプレアラームによって、上記作動した火災検知器の近傍に設置されている上記カメラが撮影し、上記カメラが出力した画像信号に基づく画像を中央監視装置に送信する送信手段を、上記カメラ一体型火災検知器が有することを特徴とするトンネルにおける火災検知システム。
【請求項6】
請求項4において、
上記カメラ一体型火災検知器における上記火災検知部が作動すると、この作動した火災検知部のプレアラームによって、上記作動した火災検知部と一体の上記カメラが撮影し、このカメラが出力した画像信号に基づく画像を中央監視装置に送信する送信手段を、上記カメラ一体型火災検知器が有することを特徴とするトンネルにおける火災検知システム。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2006−285679(P2006−285679A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−105219(P2005−105219)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】