説明

カメラ用シャッタ装置

【課題】2枚のシャッタ羽根を取り付けている二つの羽根軸のうち、一方の羽根軸の先端が羽根室内に存在していても、その羽根軸に取り付けられているシャッタ羽根が作動中に脱落しないようにしたカメラ用シャッタ装置を提供すること。
【解決手段】地板1とカバー板2との間に羽根室が構成されており、地板1に立設されている羽根軸1f,1gのうち、短い方の羽根軸1fの先端は羽根室内にあり、長い方の羽根軸1gの先端は、カバー板2に設けられた孔2cに挿入されている。また、地板1側に配置されているシャッタ羽根8は、羽根軸1fに回転可能に取り付けられており、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根9は、羽根軸1gに回転可能に取り付けられていて、円弧状の長孔9aには羽根軸1fを挿入させている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にレンズシャッタといわれているカメラ用のシャッタ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用シャッタ装置の中には、地板とカバー板との間に羽根室を構成しており、その羽根室内おいて、地板に立設されている各々の羽根軸に対して回転可能に取り付けられている2枚のシャッタ羽根が、駆動手段によって、同時に相反する方向へ往復回転させられ、撮影光路用の開口部を開閉するようにしたシャッタ装置が知られている。そして、最近では、この種のシャッタ装置に対する薄型化(光軸に沿った方向の寸法を小さくすること)の要求が大きいため、上記のカバー板も可能な限り薄くなっている。また、シャッタ羽根は高速で作動させられると、停止時にストッパに当接したとき、大きく変形して、羽根軸から脱落してしまうことがある。そこで、そのような事態を避けるために、羽根軸の先端を、薄いカバー板の孔に挿入し、羽根室外へ突き出させるように構成することが知られているが、そのような構成例が、下記の特許文献1に記載されている。
【0003】
また、この種のシャッタ装置は、絞り装置と共に一つのユニットとして構成することがあり、そのようなユニットを、古くから絞り付きシャッタ装置などと言っているが、そのような絞り付きシャッタ装置の中には、シャッタ羽根と絞り羽根とが作動中に相手の羽根に衝突しないようにするために、地板とカバー板の間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、地板側の羽根室にシャッタ羽根を配置し、カバー板側の羽根室に絞り羽根を配置するようにしたものが知られている。そして、最近では、その種の装置の場合にも薄型化が要求されている。そのため、中間板とカバー板とを薄くし、シャッタ羽根の羽根軸は、その先端を、薄い中間板の孔に挿入して、カバー板側の羽根室内に突き出させるようにし、地板に立設されている絞り羽根用の羽根軸は、中間板の孔に挿入し、その先端を、カバー板の孔に挿入するように構成することが知られているが、そのような構成例が、下記の特許文献2に記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2005−241866号公報
【特許文献2】特開2000−60088号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、特許文献1に記載されている構成のシャッタ装置は、上記のように、二つの羽根軸の先端が、カバー板(特許文献1では「補助地板」)から羽根室外へ突き出ている。また、そのほかにも、シャッタ羽根に開閉作動を行わせる駆動手段の駆動ピン(特許文献1では「出力ピン」)の先端や複数のストッパの先端が、カバー板から羽根室外へ突き出ている。ところが、シャッタ装置の薄型化が要求されているくらいであるから、カメラ内においては、カメラを構成する他の部品が、カバー板に接近して配置されることになる。そのため、カバー板を薄くしたうえに、それらのうちの一つでもよいから、先端を羽根室外へは突き出させないようにすることが要求されている。そこで、それを可能にする構成としては、羽根軸などの先端が、カバー板に形成された孔の中に常に存在しているようにすればよいことになるが、カバー板が薄いので、生産上、そのように構成することは至難である。
【0006】
また、特許文献2に記載されている構成の絞り付きシャッタ装置は、上記のように、二つの羽根軸の先端が、中間板からカバー板(特許文献2では「補助地板」)側の羽根室内に突き出ている。そのほかにも、カバー板側の羽根室内には、シャッタ羽根に開閉作動を行わせる駆動手段の駆動ピン(特許文献2では「出力ピン」)が存在するし、図示されていない複数のストッパも存在していることになる。そのため、その羽根室内に絞り羽根を配置するには、その形状や配置位置に制約を受け、設計の自由度が損なわれることになる。そこで、それを可能にする構成としては、シャッタ羽根の羽根軸の先端と、シャッタ羽根のストッパの先端と、シャッタ羽根を回転させる駆動ピンの先端とのうちの少なくとも一つを、常に中間板の孔の中に存在しているようにすればよいことになるが、カバー板の場合と同様に、中間板が薄いので、生産上、そのように構成することは至難である。
【0007】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、2枚のシャッタ羽根が、駆動手段の駆動ピンによって、同時に相反する方向へ往復回転させられ、撮影光路用の開口部を開閉するようにしたシャッタ装置において、地板に立設されていて2枚のシャッタ羽根を回転可能に取り付けている二つの羽根軸のうち、一方の羽根軸の先端がシャッタ羽根の羽根室外に突き出すことなく、その羽根室内に存在していても、その羽根軸に取り付けられているシャッタ羽根が作動中に脱落してしまうことがなく、しかも、それによって、その羽根室外のスペース効果が好適となるようにしたカメラ用シャッタ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用シャッタ装置は、撮影光路用の開口部を有していて羽根室側の面には短くて先端が羽根室内にある第1羽根軸と長い第2羽根軸とを立設している地板と、撮影光路用の開口部と前記第2羽根軸の先端を挿入する孔を有していて前記地板との間に前記羽根室を構成しているカバー板と、長孔を有しており前記羽根室内で前記第1羽根軸に回転可能に取り付けられている第1シャッタ羽根と、長孔を有しており前記羽根室内で前記第1シャッタ羽根よりも前記カバー板側に配置されていて前記第2羽根軸に回転可能に取り付けられている第2シャッタ羽根と、前記2枚のシャッタ羽根の前記長孔の両方に嵌合させた駆動ピンを有しており該駆動ピンを往復作動させることによって前記2枚のシャッタ羽根を同時に相反する方向へ回転させ前記開口部の開閉作動を行わせる駆動手段と、を備えているようにする。その場合、前記第2シャッタ羽根が、前記第2羽根軸を中心にした円弧状の長孔を有していて、該長孔に前記第1羽根軸が挿入されているようにすると、より好ましい構成になる。
【0009】
また、上記の構成において、さらに、撮影光路用の開口部と前記第2羽根軸の先端を挿入する第1の孔のほか第2の孔を有していて前記地板と前記カバー板との間を仕切ることによって前記地板側には前記2枚のシャッタ羽根を配置した第1羽根室を構成し前記カバー板側には第2羽根室を構成している中間板と、前記地板に立設されていて前記中間板の前記第2の孔から挿入されている第3羽根軸に前記第2羽根室内において回転可能に取り付けられている光量制御羽根と、駆動ピンを有しており該駆動ピンを往復作動させることによって前記光量制御羽根を往復回転させ前記撮影光路に進退させる第2駆動手段と、を備えており、前記第1羽根軸の先端は前記第1羽根室内にあり、前記カバー板には、前記第2羽根軸と前記第3羽根軸のうち少なくとも前記第3羽根軸の先端を挿入させる孔が形成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、地板に立設されている二つの羽根軸のうち、一方のシャッタ羽根を取り付けている羽根軸の先端が、従来のようにシャッタ羽根の羽根室外に突き出すことなく、その羽根室内に存在していても、そのシャッタ羽根が、他方のシャッタ羽根よりも地板側に配置されているため、作動中に、その羽根軸から脱落してしまうようなことがない。しかも、それによって、その羽根室外のスペースを有利に活用することが可能になるので、カメラ内の配置設計が好適に行えるようになるし、隣接してもう一つの羽根室を構成する場合には、その羽根室内に配置される光量制御羽根(絞り羽根,フィルタ羽根)の形状や配置設計の自由度が大きくなるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明は、地板とカバー板の間に羽根室を一つだけ構成し、そこに、2枚のシャッタ羽根を配置したシャッタ装置とすることも可能であるし、地板とカバー板との間を中間板で仕切って二つの羽根室を構成し、地板側の羽根室には、2枚のシャッタ羽根を配置し、カバー板側の羽根室には、露光制御羽根(絞り羽根又はフィルタ羽根)を配置したシャッタ装置とすることも可能なものである。そして、実施例1は、前者のように構成したものであり、実施例2は、後者のうち絞り羽根を備えたものとして構成したものである。また、それらの実施例のシャッタ装置も、いずれも、デジタルカメラにだけではなく、銀塩フィルムを使用するカメラにも採用することが可能であるが、それらの作動については、デジタルカメラに採用された場合で説明することにする。尚、図1〜図3は、実施例1を説明するためのものであり、図4〜図8は、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0012】
図1〜図3を用いて実施例1を説明する。尚、図1は、本実施例の撮影待機状態を示した平面図であり、図2は、本実施例の構成部材の重なり関係を示した断面図であり、図3は、撮影終了状態を示した平面図である。そこで先ず、本実施例の構成から説明する。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、図2から分かるように比較的厚く、複雑な形状をしており、図1に示されているように、円形をした撮影光路用の開口部1aを形成している。また、この地板1には、所定の間隔を空けて、図示してない手段によってカバー板2が取り付けられ、両者の間に一つの羽根室を構成している。このカバー板2は、図1においては、その一部を破断して示されているが、図3に示されているように、地板1と略同じ平面形状をしており、上記の開口部1aと対向するところに、開口部1aよりも若干直径の大きな撮影光路用の開口部2aを有している。
【0013】
図2に示されているように、地板1の羽根室外の面には、二つの取付軸1b,1cと回転子軸1dが一体成形によって立設されている。それらのうち、取付軸1b,1cは、地板1の製作段階では円柱形をしていたが、モータ枠3を取り付けるに際して、モータ枠3に設けた孔に挿入し、それらの先端を熱溶解によってフランジ状に変形させられている。そして、地板1とモータ枠3との間に構成されたアクチュエータ室には、後述するシャッタ羽根の駆動手段である電磁アクチュエータが配置されている。
【0014】
本実施例の電磁アクチュエータは、構成部材の平面形状が示されていないが、特開2003−186079号公報に示されている周知の電磁アクチュエータと、類似の構成をしている。即ち、本実施例の回転子4は、略円筒形をしていてその径方向に2極に着磁された永久磁石製の本体部4aと、その本体部4aに一体化された合成樹脂製の腕部4bと、その腕部4bの先端に形成された駆動ピン4cからなっていて、上記の回転子軸1dに回転可能に取り付けられている。そして、駆動ピン4cは、地板1に円弧状に形成された周知の長孔1eから羽根室内に挿入され、その先端を、カバー板2に形成されていて長孔1eと類似の形状をした長孔2bに挿入している。尚、本実施例では、腕部4bと駆動ピン4cが合成樹脂製になっているが、それらを永久磁石製にすることも知られている。
【0015】
次に、固定子の構成を説明する。上記の特開2003−186079号公報に記載されている電磁アクチュエータの場合は、二つの脚部を有していて略U字形をしているヨークを二つ重ねて配置しているが、本実施例の場合には、それらを一つの部品にし、ヨーク5として配置している。そして、ヨーク5は、一方の脚部に、コイル6を巻回したボビン7を嵌装しており、両方の脚部の先端を磁極部とし、回転子4の本体部4aを挟むようにしてその周面に対向させている。尚、本実施例の場合には、モータ枠3とボビン7を別部材としているが、それらを、合成樹脂による一体成形で、一つの部品とすることも知られている。
【0016】
図1に示されているように、地板1の羽根室側の面には、二つの羽根軸1f,1gと四つのストッパ軸1h,1i,1j,1kとが一体成形で立設されている。それらのうち、二つの羽根軸1f,1gは、互いに長さが異なっており、短い方の羽根軸1fの先端は、羽根室内に存在しているが、長い方の羽根軸1gは、その先端を、カバー板2に設けた孔2cに挿入している。そして、ストッパ軸1h,1i,1j,1kは、それらの先端を、カバー板2に設けた孔2d,2e,2f,2g,に挿入している。
【0017】
羽根室内には、2枚のシャッタ羽根8,9が配置されている。それらのうち、地板1側に配置されているシャッタ羽根8は、上記の羽根軸1fに回転可能に取り付けられていて、周知の長孔を、上記の回転子4の駆動ピン4cに嵌合させている。また、カバー板2側に配置されているシャッタ羽根9は、上記の羽根軸1gに回転可能に取り付けられていて、周知の長孔を、上記の回転子4の駆動ピン4cに嵌合させていると共に、羽根軸1gを中心にして円弧状に形成した長孔9aには、短い方の羽根軸1fを挿入させている。尚、図1及び図3においては、回転子4の本体部4aが示されていないが、上記の回転子軸1dは、羽根軸1fの近傍位置で羽根室外に立設されている。そのため、図1において、その図示されていない回転子4が反時計方向へ回転すると、駆動ピン4cは、重なって形成されている円弧状の長孔1e,2b内を略右下方向へ移動し、その後、時計方向へ回転すると、略左上方向へ移動するようになっている。
【0018】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根8,9は、開口部1aを全開にしている。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、電磁アクチュエータのコイル6には通電されていない。しかしながら、周知のように、このとき、回転子4は、その本体部4aとヨーク5との間に作用する磁気吸引力によって、時計方向へ回転するように付勢されており、それによって、駆動ピン4cには、図1において略左上方向へ移動して、シャッタ羽根8を時計方向へ回転させ、シャッタ羽根9を反時計方向へ回転させる力が与えられている。しかしながら、シャッタ羽根8,9は、ストッパ軸1h,1iに接触して、その回転を阻止され、この状態が維持されている。
【0019】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、コイル6に対して順方向の電流が供給される。そのため、回転子4は、反時計方向へ回転させられ、駆動ピン4cを、図1において略右下方向へ移動させていくので、シャッタ羽根8は反時計方向へ回転させられ、シャッタ羽根9は時計方向へ回転させられる。それによって、2枚のシャッタ羽根8,9は、開口部1aを閉じてゆき、開口部1aを閉じ終わると、その直後に、シャッタ羽根8がストッパ軸1jに当接し、シャッタ羽根9がストッパ軸1kに当接する。
【0020】
このようにして、ストッパ軸1j,1kに当接したとき、シャッタ羽根8,9は、その衝撃で大きく撓まされ、それにより、僅かではあるが、薄いカバー板2を瞬間的に撓ませてしまうことがある。そのため、従来は、本実施例の羽根軸1fのように、その先端が羽根室内にあると、まれにではあるが、シャッタ羽根8が羽根軸1fから脱落してしまうことがあるため、二つの羽根軸1f,1gとも、それらの先端を、カバー板2に設けた孔に挿入させ、先端とカバー板との間に隙間が生じないようにしていた。しかしながら、本実施例の場合には、そのような事態の発生する心配が全くない。何故ならば、シャッタ羽根8は地板1側に配置されていて、カバー板2との間には、シャッタ羽根9が配置されているからである。つまり、取付軸1fの先端とカバー板2の間にシャッタ羽根の1枚分以上の隙間ができてしまうのがまれな上に、そのときに限って、相手のシャッタ羽根9を押してまでも、取付軸1fの先端まで移動するような大きな力が働くことは、皆無に等しいからである。従って、本実施例の場合には、シャッタ羽根8,9がストッパ軸1j,1kに当接したとき、そのような事態が発生せず、回転子4の回転が停止させられる。図3は、その停止状態を示したものである。
【0021】
このようにして、図3に示された状態になると、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送される。そして、その転送が終わると、コイル6に対して上記とは異なる逆方向の電流が供給されるため、回転子4は時計方向へ回転させられ、その駆動ピン4cを、図3において左上方向へ移動させていく。そのため、シャッタ羽根8,9は、相反する方向へ回転させられ、開口部1aを開放していく。そして、開口部1aを全開にすると、その直後に、シャッタ羽根8はストッパ軸1hに当接し、シャッタ羽根9はストッパ軸1iに当接することによって、回転子4の回転が停止させられる。このときにも衝撃は生じるが、上記したように、シャッタ羽根8が取付軸1fから脱落してしまう心配はない。その後、コイル6への通電を断つと、図1の状態に復帰したことになる。
【0022】
以上のように、本実施例によれば、カバー板2を薄くしても、羽根軸1fの先端を羽根室内に存在させておくことが可能になるため、そのぶんだけ、カメラ内でカバー板2に隣接される部材の配置設計が容易になる。
【実施例2】
【0023】
次に、図4〜図8に示した実施例2を説明するが、本実施例は、絞り付きシャッタ装置として構成したものである。そして、図4は、撮影待機状態を示した平面図であり、図5は、上記の図2と同じようにして示した断面図である。また、図6は、絞り羽根を撮影光路へ臨ませずに行った撮影終了状態を示す平面図である。更に、図7は、絞り羽根を撮影光路へ臨ませた状態を示す平面図であり、図8は、その図7の状態で行った撮影終了状態を示す平面図である。尚、図4は、カバー板2と中間板10を、それらの一部を破断して示したものであり、図6〜図8の平面図は、絞り羽根を配置している羽根室内を見易くするために、図4に示されているカバー板2を取り外して示したものである。
【0024】
最初に、本実施例の構成を説明するが、本実施例におけるシャッタ羽根の取付構成と、シャッタ羽根の駆動手段である電磁アクチュエータの構成は、実施例1の場合と実質的に同じである。そこで、各図においては、それらの構成部材と部位については、実施例1の場合と同じ符号を付けてある。そのため、それらについての詳細な説明は省略することにし、実施例1の場合と異なる構成についてだけ説明することにする。
【0025】
本実施例は、地板1とカバー板2との間を中間板10で仕切り、地板1側に構成した羽根室に上記のシャッタ羽根8,9を配置し、カバー板2側に構成した羽根室に絞り羽根11を配置している。そこで先ず、中間板10は、カバー板2と略同じ平面形状をしていて、上記の開口部1a,2aと対向するところに、開口部2aと同じ大きさをした撮影光路用の開口部10aを形成している。そのほか、この中間板10には、上記の長孔1e,2bと対向するところに、長孔2bと同じ形状をした長孔10bを形成しており、カバー板2の孔2c,2d,2e,2f,2gと対向するところには、それらと同じ形状をした孔10c,10d,10e,10f,10gを形成している。そのため、上記の羽根軸1fの先端は、地板1側の羽根室内に存在しているが、上記の羽根軸1gと上記のストッパ軸1h,1i,1j,1kは、孔10c,10d,10e,10f,10gを貫通して、それらの先端を、カバー板2の孔2c,2d,2e,2f,2gに挿入している。また、上記した回転子4の駆動ピン4cは、長孔1e,10bを貫通して、その先端を、カバー板2の長孔2bに挿入している。
【0026】
本実施例の場合、地板1の羽根室側の面には、さらに、一つの羽根軸1mと、二つのストッパ軸1n,1pが立設されている。そして、それらのうち、羽根軸1mは、中間板10に形成されている孔10hを貫通し、その先端を、カバー板2に形成された孔2hに挿入している。また、ストッパ軸1n,1pは、中間板10に形成されている孔10i,10jを貫通し、それらの先端を、カバー板2に形成された孔2i,2jに挿入している。
【0027】
カバー板2側の羽根室に配置されている絞り羽根11は、開口部1aよりも小さい円形をした絞り用の開口部11aと、作動上、上記の羽根軸1gと上記の駆動ピン4cとに干渉しないようにするための開口部11bを有していて、上記の羽根軸1mに回転可能に取り付けられている。また、絞り羽根11を往復回転させるための電磁アクチュエータ(以下、第2電磁アクチュエータという)は、シャッタ羽根8,9を往復回転させるための上記の電磁アクチュエータ(以下、第1電磁アクチュエータという)と実質的に同じ構成をしている。そのため、その全体構成の図示は省略されているが、図4及び図6〜図8には、その回転子と一体的に回転する駆動ピン12だけが示されている。そして、その回転子は、地板1の羽根室外の面に回転可能に取り付けられているため、駆動ピン12は、地板1に形成された円弧状の長孔1qと、中間板10に形成された同じ形状の長孔10kを貫通して、カバー板2側の羽根室内で、絞り羽根11に形成された周知の長孔に嵌合し、その先端を、長孔1q,10kと同じ形状であってカバー板2に形成されている長孔2kに挿入している。そのため、図4において、駆動ピン12は、図示していない回転子が反時計方向へ回転すると略右方向へ移動し、その後、回転子が時計方向へ回転すると、図4の位置に復帰するようになっている。
【0028】
次に、本実施例の作動を説明する。図4は撮影待機状態を示したものであって、シャッタ羽根8,9は開口部1aを全開にしている。また、絞り羽根11は開口部1aに進入しておらず、退避状態にある。そのため、図示していない固体撮像素子には被写体光が当たっており、撮影者は、モニターによって被写体像を観察することが可能になっている。また、このとき、夫々の電磁アクチュエータのコイルには通電されていない。しかしながら、第1電磁アクチュエータの回転子は、このとき、その本体部4aとヨーク5との間に作用する磁気吸引力によって、時計方向へ回転するように付勢されており、第2電磁アクチュエータの回転子も、同様にして、時計方向へ回転するように付勢されている。そのため、駆動ピン4cは、シャッタ羽根8を時計方向へ、シャッタ羽根9を反時計方向へ回転させようとし、駆動ピン12は、絞り羽根11を反時計方向へ回転させようとしているが、夫々の羽根8,9,11が、ストッパ軸1h,1i,1nに接触していることによって、この状態が維持されている。
【0029】
撮影に際してレリーズボタンが押されると、その初期段階において、先ず、測光回路によって被写体光を測定し、その結果、被写体光を減光して撮影すると判断された場合は、最初に絞り羽根11を開口部1aに進入させておいてから実際の撮影が開始され、被写体光を減光しないで撮影すると判断された場合には、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始される。しかしながら、後者の場合には、第1電磁アクチュエータによって、シャッタ羽根8,9が往復回転させられるだけであるから、その作動説明は、実施例1の作動説明中におけるカバー板2を中間板10と読み替えるだけで同じになる。従って、重複を避けるために、後者の場合の作動説明を省略し、実施例1の図3に相当する状態を図6に示すだけにする。
【0030】
そこで、撮影に際してレリーズボタンが押されたとき、測光回路の測定結果によって、被写体光を減光して撮影すると判断された場合について説明する。この場合には、先ず、その第2電磁アクチュエータのコイルに対して、順方向の電流が供給される。それによって、図示していない回転子は、反時計方向へ回転させられ、図4において、駆動ピン12を略右方向へ移動させる。それによって、絞り羽根11は、時計方向へ回転させられ、開口部1a内に進入していく。そして、絞り用の開口部11aの中心が、開口部1aの中心位置までくると、絞り羽根11がストッパ軸1pに当接して停止する。図7は、そのときの状態を示したものである。
【0031】
この状態になると、直ちに、固体撮像素子に蓄積されていた電荷を放出させて、撮影が開始され、新たな電荷が固体撮像素子に蓄積されていく。そして、所定の時間が経過すると、露光時間制御回路からの信号によって、第1電磁アクチュエータのコイル6に対して順方向の電流が供給される。それによって、回転子4は反時計方向へ回転させられるので、駆動ピン4cによって、シャッタ羽根8は反時計方向へ、シャッタ羽根9は時計方向へ回転させられ、開口部1aを閉じていく。そして、開口部1aが完全に閉鎖されると、その直後に、シャッタ羽根8がストッパ軸1jに当接し、シャッタ羽根9がストッパ軸1kに当接することにより、回転子4の回転が停止させられるが、このとき、衝撃によって、薄い中間板10が瞬間的に変形させられても、シャッタ羽根8と中間板10の間にはシャッタ羽根9が配置されているので、シャッタ羽根8が羽根軸1fから脱落するようなことはない。図7は、そのようにしてシャッタ羽根8,9が停止した状態を示したものである。
【0032】
この図7の状態において、固体撮像素子に蓄積された電荷が、撮像情報として記憶装置に転送されると、第1電磁アクチュエータのコイルに対して逆方向の電流が供給されるので、回転子4は時計方向へ回転させられ、その駆動ピン4cによって、シャッタ羽根8,9を相反する方向へ回転させ、開口部1aの開き作動を行わせる。他方、第2電磁アクチュエータのコイルに対しても逆方向の電流が供給されるので、回転子は時計方向へ回転させられ、その駆動ピン12によって、絞り羽根11を反時計方向へ回転させ、開口部1aから退かせていく。そして、シャッタ羽根8,9は、開口部1aを全開にした直後に、ストッパ軸1h,1iに当接して停止させられるが、そのときの衝撃で中間板10が瞬間的に変形させられても、シャッタ羽根8が羽根軸1fから脱落してしまうようなことはない。他方、絞り羽根11の方は、開口部1aから完全に退いた直後に、ストッパ軸1nに当接して停止させられる。その後、両方の電磁アクチュエータのコイルに対する通電を断つと、図4の状態に復帰したことになる。
【0033】
このような本実施例においては、図4及び図7から分かるように、カバー板2側の羽根室内に配置されている絞り羽根11は、いかなる作動位置においても、地板1側の羽根室内にある羽根軸1fの延長線上に存在している。そのため、仮に、羽根軸1fが、従来のように、中間板10に形成された孔からカバー板2側の羽根室内に突き出ていると、絞り羽根11を本実施例のように配置することができなくなる。また、それだからといって、設計上は、羽根軸1fの先端が中間板10に形成された孔の中に存在するようにしたとしても、中間板10が薄いため、実際にそのように製作することが困難であるし、中間板10が撓み易くなっているため、絞り羽根11に接触し、傷付けられてしまうようになる。ところが、本実施例の場合には、地板1側に配置されているシャッタ羽根8を羽根軸1fに取り付け、中間板10側に配置されているシャッタ羽根9を羽根軸1gに取り付けているため、羽根軸1fの先端を、地板1側の羽根室内に存在させることが可能となり、その結果、絞り羽根11を本実施例のように配置することが可能になっている。
【0034】
また、上記したように、本実施例においては、カバー板2に、二つの長孔2b,2kと、八つの孔2c,2d,2e,2f,2g,2h,2i,2jが形成されている。しかしながら、それらのうち、長孔2bは、駆動ピン4cの先端を挿入するためのものである。ところが、その駆動ピン4cは、シャッタ羽根8,9だけを作動させるためのものであるから、中間板10の長孔10bに挿入されているだけでよいものである。そのため、駆動ピン4cを短くして、カバー板2に長孔2bを形成しないようにすることが可能である。また、仮に、長孔2bを形成したとしても、駆動ピン4cの先端を、その長孔2bから、突き出ないようにすることが可能である。そして、それと同じことは、上記の孔2cに先端を挿入している羽根軸1gや、上記の孔2d,2e,2f,2gに先端を挿入しているストッパ軸1h,1i,1j,1kについてもいえることである。従って、そのようにすれば、駆動ピン12の先端と、ストッパ軸1p,1nの先端だけが、カバー板2から突き出ることになるので、カメラ内でカバー板2に隣接される部材の配置設計が容易になる。
【0035】
更に、本実施例は、上記のように、絞り装置を一緒にユニット化した絞り付きシャッタ装置として構成したものである。しかしながら、光量制御羽根としては、絞り羽根のほかにNDフィルタ羽根が知られている。そのため、本発明は、本実施例のような絞り付きシャッタ装置に限定されず、NDフィルタ装置を一緒にユニット化したフィルタ付きシャッタ装置として構成しても差し支えない。そして、そのように構成するためには、本実施例の絞り羽根11に、開口部11aを覆うようにしてNDフィルタシートを取り付ければよいことになるが、その場合の開口部11aの大きさは、撮影光路用の開口部1aより小さくなくても構わない。
【0036】
尚、上記の各実施例は、いずれも、その作動説明を、デジタルカメラに採用された場合で説明したが、それらは、銀塩フィルムを使用するカメラに採用することも可能である。そして、銀塩フィルムを使用するカメラに採用された場合には、図3,図6に示された状態が撮影待機状態になることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】撮影待機状態を示す実施例1の平面図である。
【図2】実施例1の断面図である。
【図3】撮影終了状態を示す実施例1の平面図である。
【図4】撮影待機状態を示す実施例2の平面図である。
【図5】実施例2の断面図である。
【図6】絞り羽根を用いずに行った撮影終了状態を示す実施例2の平面図である。
【図7】絞り羽根を撮影光路へ臨ませた状態を示す実施例2の平面図である。
【図8】図7の状態で行った撮影終了状態を示す実施例2の平面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 地板
1a,2a,10a,11a,11b 開口部
1b,1c 取付軸
1d 回転子軸
1e,1q,2b,2k,9a,10b,10k 長孔
1f,1g,1m 羽根軸
1h,1i,1j,1k,1n,1p ストッパ軸
2 カバー板
2c〜2j,10c〜10j 孔
3 モータ枠
4 回転子
4a 本体部
4b 腕部
4c,12 駆動ピン
5 ヨーク
6 コイル
7 ボビン
8,9 シャッタ羽根
10 中間板
11 絞り羽根

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影光路用の開口部を有していて羽根室側の面には短くて先端が羽根室内にある第1羽根軸と長い第2羽根軸とを立設している地板と、撮影光路用の開口部と前記第2羽根軸の先端を挿入する孔を有していて前記地板との間に前記羽根室を構成しているカバー板と、長孔を有しており前記羽根室内で前記第1羽根軸に回転可能に取り付けられている第1シャッタ羽根と、長孔を有しており前記羽根室内で前記第1シャッタ羽根よりも前記カバー板側に配置されていて前記第2羽根軸に回転可能に取り付けられている第2シャッタ羽根と、前記2枚のシャッタ羽根の前記長孔の両方に嵌合させた駆動ピンを有しており該駆動ピンを往復作動させることによって前記2枚のシャッタ羽根を同時に相反する方向へ回転させ前記開口部の開閉作動を行わせる駆動手段と、を備えていることを特徴とするカメラ用シャッタ装置。
【請求項2】
前記第2シャッタ羽根が、前記第2羽根軸を中心にした円弧状の長孔を有していて、該長孔に前記第1羽根軸が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用シャッタ装置。
【請求項3】
撮影光路用の開口部と前記第2羽根軸の先端を挿入する第1の孔のほか第2の孔を有していて前記地板と前記カバー板との間を仕切ることによって前記地板側には前記2枚のシャッタ羽根を配置した第1羽根室を構成し前記カバー板側には第2羽根室を構成している中間板と、前記地板に立設されていて前記中間板の前記第2の孔から挿入されている第3羽根軸に前記第2羽根室内において回転可能に取り付けられている光量制御羽根と、駆動ピンを有しており該駆動ピンを往復作動させることによって前記光量制御羽根を往復回転させ前記撮影光路に進退させる第2駆動手段と、を備えており、前記第1羽根軸の先端は前記第1羽根室内にあり、前記カバー板には、前記第2羽根軸と前記第3羽根軸のうち少なくとも前記第3羽根軸の先端を挿入させる孔が形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載のカメラ用シャッタ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate