説明

カメラ用フォーカルプレンシャッタ

【課題】シャッタ地板と中間板との間隔、及び中間板と補助地板との間隔を小さくするのに適した、二つのシャッタ羽根を備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供すること。
【解決手段】先羽根は、二つのアーム32,33と4枚の羽根34〜37で構成されていて、シャッタ地板1と中間板2の間に配置されている。後羽根は、二つのアーム38,39と4枚の羽根40〜43で構成されていて、中間板2と補助地板3の間に配置されている。露光作動時には、先羽根の4枚の羽根34〜37は、展開状態から重畳状態にさせられ、後羽根の4枚の羽根40〜43は、重畳状態から展開状態にさせられるが、中間板2は、開口部1aの上方の外形形状形成縁2bが円弧状に形成されているので、後羽根の4枚の羽根40〜43は、重畳状態から好適に作動を開始することが可能になっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の羽根を有しているシャッタ羽根を二つ備えたカメラ用フォーカルプレンシャッタに関する。
【背景技術】
【0002】
カメラ用フォーカルプレンシャッタの中には、先羽根及び後羽根などと言われている二つのシャッタ羽根を備えたものが知られており、デジタルカメラにも、銀塩フィルムカメラにも採用されているが、この種のフォーカルプレンシャッタは、シャッタ地板と補助地板(カバー板などとも言う)との間を中間板(仕切り板などとも言う)で仕切ることによって二つの羽根室を構成し、二つのシャッタ羽根をそれらの羽根室に別々に配置するようにしている。
【0003】
また、二つのシャッタ羽根は、いずれも、シャッタ地板に対してそれらの一端を個々に枢着した二つのアームと、それらのアームの両方に対して、それらのアームの自由端に向けて順に枢支した複数枚の羽根とで構成されており、羽根室内においては、二つのアームよりも複数枚の羽根の方を中間板側にして配置されているため、いずれのシャッタ羽根も、二つのアームの一番枢着部側に枢支されているは、中間板に常に接するようになっている。そして、それらのシャッタ羽根は、露光開口から退いているときには、複数枚の羽根の相互の重なり量を大きくして重畳状態にさせられており、露光開口を覆っているときには、複数枚の羽根の相互の重なり量を小さくして展開状態にさせられている。
【0004】
このような構成をしている二つのシャッタ羽根は、露光作動を行うに際しては、先ず、展開状態にある第1のシャッタ羽根が作動を開始させられて露光開口を開いてゆき、続いて、重畳状態にある第2のシャッタ羽根が同じ方向へ作動を開始させられて露光開口を覆ってゆき、両者のスリット形成羽根の間に形成されたスリットにより、撮像面を露光していくようにしているが、その露光作動を行うときの駆動源としては、ばねを用いるものとモータを用いるものとが知られている。
【0005】
それらのうち、ばねを駆動源としたものは、上記の第1のシャッタ羽根のアームの一つに駆動ピンを連結させている第1の駆動部材を、第1の駆動ばねの付勢力によって回転させるようにし、上記の第2のシャッタ羽根のアームの一つに駆動ピンを連結させている第2の駆動部材を、第2の駆動ばねの付勢力によって回転させるように構成されているが、第1の駆動部材と第2の駆動部材を露光作動開始直前の状態に保持する形式の違いによって、ダイレクトタイプと言われているものと、係止タイプと言われているものとがある。そして、下記の特許文献1には、そのような構成をしたダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタが記載されており、下記の特許文献2には、係止タイプのフォーカルプレンシャッタが記載されている。
【0006】
また、このように、ばねを駆動源として露光作動を行うフォーカルプレンシャッタの場合には、ダイレクトタイプであっても係止タイプであっても、撮影前には、第2のシャッタ羽根だけではなく、第1のシャッタ羽根も重畳状態にして、露光開口を全開にしておき、撮影対象とする被写体像を、撮像素子を介してモニタで観察可能にし、撮影に際してレリーズボタンを押すと、第1のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態にした後、上記のようにして露光作動を行わせるものが知られているが、下記の特許文献3には、そのように構成したダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタが記載されている。
【0007】
他方、モータを駆動源としたものは、第1のモータの回転子と一体の出力ピン(駆動ピン)を第1のシャッタ羽根のアームの一つに連結させ、第2のモータの回転子と一体の出力ピン(駆動ピン)を第2のシャッタ羽根のアームの一つに連結させたものが知られており、下記の特許文献4には、そのように構成されたフォーカルプレンシャッタが、第2実施例として記載されている。
【0008】
そして、この構成のフォーカルプレンシャッタは、露光作動に際しては、撮影の都度、第1のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第2のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させるようにすることもできるほか、前の撮影で、第1のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第2のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させた場合には、次の撮影では、第2のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第1のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させることも可能になっている。
【0009】
また、この構成のフォーカルプレンシャッタは、撮影前には、第2のシャッタ羽根だけではなくて、第1のシャッタ羽根も重畳状態にして、露光開口を全開にしておき、撮影対象とする被写体像を、撮像素子を介してモニタで観察可能にし、撮影に際してレリーズボタンを押すと、第1のシャッタ羽根と第2のシャッタ羽根のいずれか一方を重畳状態から展開状態にした後、上記のように露光作動を行わせることもできるし、撮影に際してレリーズボタンを押すと、第1のシャッタ羽根と第2のシャッタ羽根とを撮影ごとに交互に重畳状態から展開状態にした後、上記のようにして露光作動を行わせることもできるものである。本発明は、これらのように、撮影に際してレリーズボタンを押した直後に、重畳状態にあったシャッタ羽根が展開状態に作動するようにした、二つのシャッタ羽根を備えたフォーカルプレンシャッタに関するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−216484号公報
【特許文献2】特開2008−164805号公報
【特許文献3】特開2007−298544号公報
【特許文献4】特開2004−264468号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
ところで、最近では、カメラが小型化,薄型化されてきているため、フォーカルプレンシャッタについても、小型化,薄型化が要求されており、その一環として、シャッタ羽根の作動領域の厚さ方向(光軸に沿った方向)の寸法も、極力薄くすることが要求されている。そのため、各々の羽根室を構成している上記の各板部材の厚さや、シャッタ羽根の構成部材の厚さも可能な限り薄くしてきているが、その上に、シャッタ地板と補助地板の間に構成されている二つの羽根室の空間間隔も小さくする必要に迫られている。しかしながら、それらの空間間隔を余り小さくすると、加工公差の関係などから、羽根同士の摩擦抵抗力や羽根と三つの板部材(シャッタ地板,中間板,補助地板)との間の摩擦抵抗力が均一に得られなくなって、重畳状態にあるシャッタ羽根を作動させるとき、好適に作動を開始させることができず、露光開口を閉じ始めるタイミングや、露光開口を閉じ始めるときの羽根(スリット形成羽根)の姿勢が変動し易くなってしまう。
【0012】
そして、そのような現象が生じると、特許文献1,2に記載されているフォーカルプレンシャッタの場合には、特に高速撮影のときに露光時間が安定して得られなくなってしまったり、露光むらを発生させたりしてしまうという問題が生じる。また、特許文献3に記載されているフォーカルプレンシャッタのように、撮影前には、撮影対象とする被写体像を、撮像素子を介してモニタで観察可能となるように構成したフォーカルプレンシャッタの場合には、上記のように、露光時間が安定して得られなくなってしまったり、露光むらを発生させたりしてしまうほか、カメラのレリーズボタンを押してから、先羽根によって実際に撮影が開始されるまでの時間を必要以上に長くせざるを得なくなってしまい、動いている被写体を意図した状態で撮影し難くしてしまうという問題が生じる。
【0013】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、シャッタ地板に各々の一端を枢着した二つのアームと、それらのアームの両方に対してそれらのアームの自由端に向けて順に枢支した複数枚の羽根とで構成されているシャッタ羽根が、カメラのレリーズボタンを押した直後において、重畳状態から安定して作動を開始できるようにした、薄型化に適した、二つのシャッタ羽根を備えているカメラ用フォーカルプレンシャッタを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用フォーカルプレンシャッタは、被写体光路用の開口部を有しているシャッタ地板と、被写体光路用の開口部を有していて所定の間隔を空けて前記シャッタ地板に取り付けられている補助地板と、前記二つの開口部を含めた三つのうちの少なくとも一つによって長方形の露光開口を形成している被写体光路用の開口部を有しており前記シャッタ地板と前記補助地板との間に配置されていて前記シャッタ地板との間に第1羽根室を構成し前記補助地板との間に第2羽根室を構成している中間板と、前記第1羽根室に配置されており前記露光開口の一方の短辺の外側となる領域において前記シャッタ地板に各々の一端を枢着されている二つのアームとそれらのアームよりも前記中間板側に配置されていてそれらのアームの両方に対してそれらのアームの自由端に向けて各々の長さ方向の一端を順に枢支されている複数枚の羽根とで構成されていて前記露光開口を開いているときには前記露光開口の一方の長辺の外側となる領域において該複数枚の羽根を前記露光開口の長辺と略平行になるようにして重畳させている第1シャッタ羽根と、前記第2羽根室に配置されており前記露光開口の前記一方の短辺の外側となる領域において前記シャッタ地板に各々の一端を枢着されている二つのアームとそれらのアームよりも前記中間板側に配置されていてそれらのアームの両方に対してそれらのアームの自由端に向けて各々の長さ方向の一端を順に枢支されている複数枚の羽根とで構成されていて前記露光開口を開いているときには前記露光開口の他方の長辺の外側となる領域において該複数枚の羽根を前記露光開口の長辺と略平行になるようにして重畳させている第2シャッタ羽根と、を備えていて、前記中間板は、前記露光開口の二つの長辺の外側となる二つの外形形状形成縁の少なくとも一方が前記露光開口に向けて略山型となるように形成されていて、前記露光開口の長辺の外側となる領域の一部が前記重畳されている複数枚の羽根とは重ならないようにする。
【0015】
その場合、前記二つの外形形状形成縁の少なくとも一方が、前記露光開口に向けて凸となる円弧状に形成されているようにすると、重畳状態にある複数枚の羽根の作動開始が極めて良好に行われる。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、シャッタ地板と補助地板の間を仕切っている中間板を、長方形をしている露光開口の二つの長辺の外側となる外形形成縁のうちの少なくとも一方が、露光開口に向けて中間板の一部を切り落とした形状に形成されていて、露光開口の長辺の外側となる領域の一部が重畳状態にある複数枚の羽根と重ならないようにしたため、シャッタ地板と補助地板との間の間隔を従来より小さくしても、撮影に際して、複数枚の羽根の作動を安定して開始させることができるという特徴がある。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】露光作動終了直後の状態を示した平面図であって、シャッタ羽根の制御機構については、主に、シャッタ地板の近くに配置されている開閉駆動機構の構成部材だけを示したものである。
【図2】図1における左約半分だけを拡大して示した平面図である。
【図3】露光作動終了直後の状態を示した平面図であって、図2に示されている開閉駆動機構よりもシャッタ地板から離れたところに、その開閉駆動機構と重なるようにして配置されている係止解除機構の構成部材を示したものである。
【図4】図2に示されている開閉駆動機構のオーバーセット状態を示した平面図である。
【図5】図2に示されている開閉駆動機構のセット完了状態を示した平面図である。
【図6】図3に示されている係止解除機構のセット完了状態を示した平面図である。
【図7】図3に示されている係止解除機構が、カメラのレリーズ直後に発生させる現象を示した平面図である。
【図8】図7に示した状態の直後における係止解除機構の状態を示した平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施の形態を、図示した実施例によって説明する。尚、本発明は、複数枚の羽根を有しているシャッタ羽根を二つの備えているフォーカルプレンシャッタであれば、どのような形式の構成をしたものにも採用することが可能であるが、実施例は、上記の特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタに類する、係止タイプのフォーカルプレンシャッタとして構成したものである。
【実施例】
【0019】
先ず、主に、図1〜図3を用いて本実施例の構成を説明する。尚、図1〜図3は、いずれも露光作動終了直後の状態を示した平面図である。そして、図1は、シャッタ地板の背面側に配置されている二つのシャッタ羽根などの構成も破線で示している。しかし、開閉駆動機構と係止解除機構とからなっていてシャッタ地板の表面側(手前側)に配置されているシャッタ羽根の制御機構については、シャッタ地板の近くに配置されている開閉駆動機構の構成部材だけを示している。また、図2は、図1における左約半分だけを拡大して示した平面図である。更に、図3は、図2に示されている開閉駆動機構と重なるようにして、開閉駆動機構よりもシャッタ地板から離れて配置されている係止解除機構の構成部材を示したものである。そのため、図3には、図2に示されている一部の構成も示されている。
【0020】
図1において、シャッタ地板1は、その略中央部に開口部1aを形成している。シャッタ地板1の背面側には、所定の間隔を空けて、中間板2と補助地板3が順に取り付けられており、シャッタ地板1と中間板2との間に後述する先羽根の羽根室を構成し、中間板2と補助地板3との間に後述する後羽根の羽根室を構成している。また、中間板2にも、開口部1aと重なるところに独特の形状をした開口部2aが形成されていて、補助地板3にも、開口部1aと重なるところに、開口部1aよりも若干大きな長方形の開口部3aが形成されている。通常、長方形を横長にした形状をしている露光開口(シャッタとして被写体光を通過させる開口)は、それらの開口部1a,2a,3aの一つによって形成されるか、二つ以上の合成によって形成されるようにしているが、本実施例の場合には、開口部1aだけによって形成されている。
【0021】
また、本実施例の中間板2は、右上隅と、左下隅と、右下隅の3箇所に形成されている取付け孔(符号なし)によってシャッタ地板1に取り付けられている。そして、開口部2aの左側となる外形形成縁の形状は、周知のように、後述する二つの駆動ピンの作動軌跡を避ける(逃げる)ようにして複雑な形状に形成されている。また、この中間板2は、開口部2aの上方となる外形形状形成縁2bの形状が、開口部2a側に向けて、即ち本実施例では露光開口となる開口部1a側に向けて凸状となる円弧状に形成されているが、その理由は、後述する作動説明の中で説明する。また、補助地板3の外形形状は、シャッタ地板1と略同じであるが局部的に若干小さく形成されており、中間板2の場合と同じ3箇所のほか、図示していない左上隅の1箇所でシャッタ地板1に取り付けられている。尚、図2においては、図1に示されている補助地板3の外形形状の図示が省略されている。
【0022】
図1及び図2に示されているように、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域に、円弧状の二つの長孔1b,1cが形成されており、それらの下端部には、周知のように、平面形状が略C字状をしているゴム製の緩衝部材4,5が取り付けられている。また、シャッタ地板1には、開口部1aの左側の領域に、三つの柱1d,1e,1fが立設されている。
【0023】
それらの柱のうち、柱1fは、その先端に形成された図示していないねじ孔に、図3に示されているねじ6を螺合させることによって、図3に示されている上地板7を取り付けている。また、柱1d,1eは、長さ方向の途中で上地板7を取り付けているほか、図3に示されているように、上地板7に立設されている柱7a及び軸7bと共に、それらの先端に形成された図示していないねじ孔に、図示していないねじを螺合させることによって、上地板7との間に所定の間隔をあけてカバー板8(外形が二点鎖線で示されている)を取り付けている。
【0024】
次に、主に図2を用いて、シャッタ地板1と上地板7との間に配置されている構成部材を説明するが、その前に、それらを取り付けるためにシャッタ地板1に立設されている軸部材を説明する。シャッタ地板1には、上地板7に向けて六つの軸1g,1h,1i,1j,1k,1mが立設されている。それらのうち、軸1g,1hは、シャッタ地板1を貫通していて背面側にも軸部を立設しており、シャッタ地板1の背面側に立設された軸1n,1pと共に、後述する先羽根の二つのアームと後羽根の二つのアームとを、それぞれ回転可能に取り付けるようにしている。また、軸1k,1mは、先端に形成されている小径部を上地板7に形成された孔に嵌合させ、小径部との間に形成されたリング状の段差端面で上地板7を支える役目もしている。
【0025】
そこで先ず、シャッタ地板1の上記の柱1dには、リング状の緩衝部材9が取り付けられている。また、上記の軸1gには、上地板7側に立設されている軸部に、先羽根用駆動部材10が回転可能に取り付けられており、図示していない先羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。また、この先羽根用駆動部材10は、被係止部10aを有しており、上地板7側の面にはローラ10bを回転可能に取り付け、シャッタ地板1側には駆動ピン10cを有している。そして、その駆動ピン10cは、シャッタ地板1の長孔1bを貫通しており、根元部が上記の緩衝部材4に当接し得るようになっていて、先端部は、羽根室内で先羽根に連結されている。その先羽根の構成については後述する。
【0026】
シャッタ地板1の上記の軸1hには、上地板7側に立設されている軸部に、後羽根用第1駆動部材11と、後羽根用第2駆動部材12とが、後羽根用第1駆動部材11をシャッタ地板1側にして、個々に回転可能に取り付けられている。そして、後羽根用第1駆動部材11は、上地板7側に円柱形をした係合部11aを設けており、シャッタ地板1側には駆動ピン11bを有している。そして、その駆動ピン11bは、シャッタ地板1の長孔1cを貫通しており、根元部が上記の緩衝部材5に当接し得るようになっていて、先端部は、羽根室内で後羽根に連結されている。その後羽根の構成については後述する。
【0027】
また、後羽根用第2駆動部材12は、被係止部12aと、上記の係合部11aを挿入させた窓部12bとを有していて、上地板7側にはローラ12cを回転可能に取り付けている。そして、この後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。
【0028】
また、本実施例の場合には、この後羽根用第2駆動部材12と上記の後羽根用第1駆動部材11との間に、図示していないセットばねが掛けられていて、後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させ、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させるように付勢しているが、図1及び図2の状態においては、後羽根用第1駆動部材11の係合部11aが後羽根用第2駆動部材12の窓部12bの縁に接触しているので、その付勢力は働かないようになっている。尚、周知のように、そのセットばねを二つのばねで構成し、一方のばねが、後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させるように付勢し、他方のばねが、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させるように付勢するようにしても構わない。
【0029】
シャッタ地板1の上記の軸1iには、セット部材13が回転可能に取り付けられており、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。そして、このセット部材13は、シャッタ地板1側の面に、上記した先羽根用駆動部材10のローラ10bに接触し得るローラ13aと、上記した後羽根用第2駆動部材12のローラ12cに接触し得るローラ13bとを回転可能に取り付けている。
【0030】
シャッタ地板1の上記の軸1jには、セット操作部材14が回転可能に取り付けられている。このセット操作部材14は、カメラ本体側の部材によって操作されるローラ14aを回転可能に取り付けていると共に、シャッタ地板1側の面に軸14bを立設している。そして、このセット操作部材14は、リンク部材15を介して上記のセット部材13に連結されている。即ち、リンク部材15には一端に孔が形成されていて、そこに、セット操作部材14の上記の軸14bが回転可能に嵌合している。また、リンク部材15の他端には、上地板7側にピン15aが設けられ、そのピン15aと同心となるようにしてシャッタ地板1側には軸が立設されている。そして、その軸が、セット部材13に形成されている孔に回転可能に嵌合している。
【0031】
そのため、図1においては、セット操作部材14は、セット部材13が図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転したのに伴って、リンク部材15を介して反時計方向へ回転させられ、緩衝部材9をストッパとして停止させられた状態になっている。尚、このセット操作部材14は、セット作動時に、カメラ本体側の部材によってローラ14aを押されて時計方向へ回転させられたとき、リンク部材15を介して、セット部材13を時計方向へ回転させるためのものであるが、このようなセット操作部材14を備えることなく、セット作動時には、直接、カメラ本体側の部材によって、セット部材13を時計方向へ回転させるようにしても構わない。しかし、その場合には、リンク部材15も不要になってくるので、後述の説明からも分かるように、上記のピン15aに代るピンを、セット部材13に設ける必要がある。
【0032】
シャッタ地板1の上記の軸1kには、先羽根用係止部材16が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用係止部材16は、シャッタ地板1側に折り曲げられた係止部16aを有しているが、この係止部16aは、先羽根用駆動部材10の被係止部10aを係止し、先羽根用駆動部材10の時計方向への回転を阻止するためのものである。また、この先羽根用係止部材16は、上地板7側に折り曲げられた折曲部の上端に、さらに上地板7側に突出させた被押動部16bを有していて、その被押動部16bを、上地板7の略長方形をした孔7c(図3参照)に挿入することによって、被押動部16bの先端が上地板7とカバー板8との間に存在するようにしている。
【0033】
シャッタ地板1の上記の軸1mには、後羽根用係止部材17が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用係止部材17は、シャッタ地板1側に折り曲げられた係止部17aと、上地板7側に折り曲げられた被押動部17bを有している。そして、それらのうち、係止部17aは、後羽根用第2駆動部材12の被係止部12aを係止し、後羽根用駆動部材12の時計方向への回転を阻止するためのものである。また、被押動部17bは、図3に示されているように、上地板7とカバー板8の側方において、その先端が、上地板7とカバー板8との間に存在するようにさせられている。
【0034】
図3に示されているように、上地板7には、カバー板8側に向けて軸7dが立設されているが、その軸7dと同心上に、シャッタ地板1側に向けて軸7eが立設されており、その軸7eには、補助セット部材18が回転可能に取り付けられている。そして、この補助セット部材18には、ばねが掛けられていない。また、この補助セット部材18は、押動部18aと、円弧状をした長孔18bと、大きな逃げ孔18cとを有していて、長孔18bには、上記したリンク部材15のピン15aが挿入されている。
【0035】
そのため、この補助セット部材18は、セット部材13が時計方向へ回転すると反時計方向へ回転し、その後、セット部材13が反時計方向へ回転すると時計方向へ回転するようになっている。また、逃げ孔18cは、先羽根用係止部材16の被押動部16bを貫通させ、上地板7の孔7cに挿入し得るようにしていると共に、作動上で、被押動部16bとは干渉しない形状をしている。尚、図3には、リンク部材15のピン15aが図示されているが、作動説明で用いる図6〜図8においては図示が省略されている。
【0036】
次に、主に図3を用いて、上地板7とカバー板8との間に配置されている構成部材を説明するが、その前に、上地板7の全体の形状と、それらの構成部材を取り付けるためにカバー板8側に向けて上地板7に立設されている軸部材などについて説明する。先ず、上地板7は、図3において実線で示されているように、全体として上下方向に長い形状をしているが、右半分は同一平面領域として形成されているのに対して、左半分は、右半分の領域から左方向へ張り出した三つの張出し領域として形成されている。
【0037】
そして、上から二番目の張出し領域は、右半分の領域と同一平面となるように形成されているのに対して、残りの二つの張出し領域は、折曲部7f,7g,7hによって段差が付けられ、カバー板8側に高くなるように形成されている。また、二つの折曲部7g,7hの間には、特殊な形状をした細長い窓部7iが形成されている。更に、このような上地板7の右上方部には折曲部7jが形成され、右下方部には被当接部7kが形成されているが、折曲部7jは、シャッタ地板1側に折り曲げられていて、上記の後羽根用係止部材17が反時計方向へ回転させられたときのストッパの役目をするものである。
【0038】
このような形状をした上地板7には、既に説明した軸7b,7dのほかに、カバー板8に向けて二つの軸7m,7nが立設されている。そして、それらのうち、軸7d,7nは、先端に形成されている小径部をカバー板8に形成された孔に嵌合させ、小径部との間に形成されているリング状の段差端面でカバー板8を支えている。また、上地板7の上記した上から二番目の張出し領域には、二つの位置決めピン7p,7qが、カバー板8側に向けて立設されている。
【0039】
そこで次に、このような上地板7に取り付けられている構成部材を説明する。先ず、先羽根用電磁石19と後羽根用電磁石20は、鉄芯部材19a,20aに形成されている孔を上記の位置決めピン7p,7qに嵌合させた後、ねじ21,22によって上地板7に取り付けられている。これらの電磁石19,20は、U字形をしていて各々の二つの脚部の先端を磁極部とした上記の鉄芯部材19a,20aと、コイル19b,20bを巻回していて鉄芯部材19a,20aの一方の脚部に嵌装されたボビン19c,20cとからなっている。そのため、鉄芯部材19a,20aの脚部は、上地板7の表面には接しておらず、浮いていることになる。
【0040】
上地板7の上記の軸7nには、先羽根用係止解除部材23が回転可能に取り付けられており、図示していない先羽根用解除ばねによって時計方向へ回転するように付勢されている。この先羽根用係止解除部材23は、先羽根用係止部材16の被押動部16bを押す押動部23aを有しているほか、上方先端に形成された折曲部には鉄片部材24を、周知のようにして取り付けている。そして、その鉄片部材24には、被押動部24aが、その折曲部の右側に突き出るようにして設けられている。
【0041】
上地板7の上記の軸7bには、後羽根用係止解除部材25が回転可能に取り付けられており、図示していない後羽根用解除ばねによって反時計方向へ回転するように付勢されている。この後羽根用係止解除部材25は、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押す押動部25aを有しているほか、下方先端に形成された折曲部には鉄片部材26を取り付けている。そして、その鉄片部材26には、被押動部26aが、その折曲部の右側に突き出るようにして設けられている。
【0042】
上地板7の上記の軸7dには、ホールド部材27とホールド補助部材28とが個々に回転可能に取り付けられていて、ホールド部材27は、上記の先羽根用係止解除部材23よりも上地板7側に配置され、ホールド補助部材28は、上記の先羽根用係止解除部材23よりもカバー板8側に配置されている。そして、ホールド部材27は、図示していない第1のばねによって時計方向に回転するように付勢されている。
【0043】
また、ホールド部材27とホールド補助部材28との間には、ホールド部材27を反時計方向へ回転させるように付勢し、ホールド補助部材28を時計方向へ回転させるように付勢している図示していない第2のばねが掛けられている。そして、図3においては、ホールド部材27とホールド補助部材28との相対関係は、上記の第2のばねの付勢力によって互いに異なる方向へ回転し得る限度状態になっており、しかも、両者は、上記の第1のばねの付勢力によって、一緒に時計方向へ回転して停止させられた状態になっている。
【0044】
そのため、図3の状態において、ホールド補助部材28が反時計方向へ回転させられると、上記の第1のばねの付勢力に抗して、ホールド部材27も一緒に反時計方向へ回転させられ、その後、ホールド補助部材28を反時計方向へ回転させる力が失われると、上記の第1のばねの付勢力によって両者は一緒に時計方向へ回転させられるようになっているが、そのように、ホールド部材27とホールド補助部材28とが一緒に反時計方向へ回転されてゆき、ホールド部材27の回転が阻止されるようになった場合にだけ、上記の第2のばねを緊張させながら、ホールド補助部材28だけが、反時計方向への回転を若干続け得るようになっている。尚、両者間をこのように構成することは周知であって、その具体的な構成の一例が、例えば、特開2007−34042号公報に記載されている。
【0045】
ホールド部材27の先端には軸27aが立設されており、その軸27aには、周知の押圧部材29が取り付けられている。この押圧部材29は、図3の上下方向に延伸して形成された二つの押圧部29a,29bを有していて、それらで、上記の鉄片部材24,26の被押動部24a,26aを押し、鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに押圧し得るようになっている。そして、この押圧部材29は、二つの鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに確実に押圧できるようにするために、周知の構成により、軸27aに対して所定の角度だけ回転し得るようにして取り付けられている。他方、ホールド補助部材28は、その先端が、窓部7iを通って上地板7の背面側に配置されており、シャッタ地板1側に折り曲げられた被押動部28aが、補助セット部材18の押動部18aによって押され得るようになっている。
【0046】
上地板7の上記の軸7mには、レリーズ部材30が回転可能に取り付けられていて、図示していないばねによって、反時計方向へ回転するように付勢されている。このレリーズ部材30は、一方の腕部の先端に係止部30aを有していて、他方の腕部の先端に被押動部30bと当接部30cを有しており、上記のホールド補助部材28よりも上地板7側に配置されている。そして、係止部30aは、窓部7iを通っていて、上地板7の背面側で、ホールド補助部材28の被押動部28aを係止し、ホールド補助部材28の時計方向の回転を阻止し得るようになっている。また、被押動部30bは、図示していないカメラ本体側の部材によって押される部位であり、当接部30cは、レリーズ部材30が、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられたとき、上地板7に形成された上記の被当接部7kに当接して停止させられる部位である。
【0047】
上地板7とカバー板8との間には、もう一つの部材が配置されている。即ち、カバー板8には、図3の中央右端に、上地板7側に向けて、折曲部8aが上下方向に細長く形成されており、その折曲部8aの左側に、細長い直方体をしたゴム製の緩衝部材31(便宜的に破線で示してある)が接着剤で取り付けられている。そして、この緩衝部材31は、図3においては、ホールド部材27と一部が重なって示されているが、実際には、カバー板8側に寄ったところで折曲部8aに取り付けられているため、ホールド部材27の作動には影響を与えず、ホールド部材27に取り付けられている押圧部材29の押圧部29a,29bだけが当接し得るように配置されている。
【0048】
次に、既に説明した中間板2と補助地板3以外に、シャッタ地板1の背面側に配置されている構成部材を、図1及び図2を用いて説明する。先ず、シャッタ地板1と中間板2の間に配置されている先羽根は、シャッタ地板1に立設された二つの軸1g,1nに一端を枢着されている二つのアーム32,33と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根34,35,36,37とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根37をスリット形成羽根としている。そして、アーム32は、周知の孔に、先羽根用駆動部材10の駆動ピン10cを嵌合させていると共に、軸1gに対する枢着部の近傍に、二つの遮光部32a,32bを形成している。また、アーム32,33と羽根34,35,36,37との重なり関係は、アーム32,33が最もシャッタ地板1側に存在し、羽根34が最も中間板2側に存在するようになっている。
【0049】
また、中間板2と補助地板3の間に配置されている後羽根は、シャッタ地板1に立設された二つの軸1h,1pに一端を枢着されている二つのアーム38,39と、それらの自由端に向けて順に枢支された4枚の羽根40,41,42,43とで構成されていて、それらの最先端に枢支された羽根43をスリット形成羽根としている。そして、アーム38は、周知の孔に、後羽根用第1駆動部材11の駆動ピン11bを嵌合させていると共に、軸1hに対する枢着部の近傍に、二つの遮光部38a,38bを形成している。また、アーム38,39と羽根40,41,42,43との重なり関係は、アーム38,39が最も補助地板3側に存在し、羽根40が最も中間板2側に存在するようになっている。
【0050】
最後に、シャッタ地板1の背面側には、軸1g,1hの近傍部に、同じ構成をした二つの光電センサ44,45が取り付けられている。これらの光電センサ44,45は、一般にフォトインターラプタといわれているものであって、発光部と受光部とが対向して配置されていて、発光部から出射した光を受光部で受光するように構成されており、受光部が受光しているときはH(High)信号を出力し、受光していないときにはL(Low)信号を出力するようになっている。そして、本実施例の場合には、上記のアーム32の遮光部32a,32bが、光電センサ44の光路を遮断し、上記のアーム38の遮光部38a,38bが、光電センサ45の光路を遮断し得るようになっている。
【0051】
次に、本実施例の作動を説明する。図1〜図3は、既に説明したように、露光作動終了直後の状態、即ち撮影終了直後の状態を示したものである。そして、このとき、図1及び図2に示されているセット部材13は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転するように付勢されているが、このセット部材13と連動しているセット操作部材14が緩衝部材9に接触していることによって、この停止状態が維持されている。以下、セット部材13については、この停止位置を初期位置ということにする。
【0052】
また、このとき、先羽根用駆動部材10と後羽根用第1駆動部材11は、それらの駆動ピン10c,11bを緩衝部材4,5に当接させ、時計方向の回転を停止させられており、それによって、先羽根の4枚の羽根34〜37は、相互の重なり量を最大にした重畳状態となって、開口部1aの下方領域に格納され、後羽根の4枚の羽根40〜43は、相互の重なり量を最小にした展開状態になって、開口部1aを閉鎖している。また、このとき、ホールド部材27とホールド補助部材28は、図示していない上記の第1ばねによって時計方向へ回転するように付勢されているが、図3に示されているように、ホールド補助部材28の被押動部28aが、補助セット部材18の押動部18aに接触していることによって、その回転を阻止されている。
【0053】
また、このとき、先羽根用係止解除部材23は、図示していない先羽根用解除ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、鉄片部材24を先羽根用電磁石19の鉄芯部材19aから離反させており、押動部23aが先羽根用係止部材16の被押動部16bを上地板7の孔7cの縁に押し付けた状態で停止させられている。また、後羽根用係止解除部材25は、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、鉄片部材26を後羽根用電磁石20の鉄芯部材20aから離反させており、押動部25aが後羽根用係止部材17の被押動部17bを押し、後羽根用係止部材17を上地板7の折曲部7jに押し付けた状態で停止させられている。そして、この状態においては、二つの電磁石19,20のコイル19c,20cには通電されていない。
【0054】
先羽根と後羽根の露光作動が終了して、このような状態になると、撮像情報が、撮像素子から画像処理回路を介して転送され、記憶装置に記憶された後、直ちにセット作動が行われる。本実施例の場合、そのセット作動は、図2において、セット操作部材14が、図示していないカメラ本体側の部材によってローラ14aを押され、時計方向へ回転させられることによって開始される。そこで、そのセット作動を、図2及び図3のほかに、図4〜図6を用いて説明する。
【0055】
上記のように、図2において、図示していないカメラ本体側の部材がローラ14aを押し、セット操作部材14を時計方向へ回転させると、セット部材13は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられる。そのため、一方では、セット部材13の二つのローラ13a,13bが、開閉駆動機構をセットしていくことになり、他方では、リンク部材15のピン15aが、図3において補助セット部材18を反時計方向へ回転させ、係止解除機構をセットしていくことになる。そして、それらのセット作動は、並行して行われていくことになるが、先ずは、開閉駆動機構のセット作動の方から説明する。
【0056】
そこで先ず、図2において、セット部材13が時計方向へ回転を開始すると、最初に、ローラ13aが先羽根用駆動部材10のローラ10bを押し、先羽根用駆動部材10を、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させるので、開口部1aの下方位置に格納されていた先羽根の4枚の羽根34〜37が、隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ、スリット形成羽根37を先頭にして上方へ作動させられていく。そして、先羽根のスリット形成羽根37と後羽根のスリット形成羽根43の重なりが所定量に達すると、セット部材13の他方のローラ13bが、後羽根用第2駆動部材12のローラ12cを押し始めるため、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させられようになる。
【0057】
また、上記したように、図示していないセットばねが、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12との間に掛けられていて、後羽根用第1駆動部材11を反時計方向へ回転させ且つ後羽根用第2駆動部材12を時計方向へ回転させるように付勢しているので、後羽根用第2駆動部材12が、上記のようにして、セット部材13によって反時計方向へ回転させられると、先羽根用第1駆動部材11も、その係合部11aが後羽根用第2駆動部材12の窓部12bの縁に追従して、反時計方向へ回転させられる。そのため、後羽根の4枚の羽根40〜43は、その時点から隣接する羽根同士の重なり量を小さくしつつ上方へ作動させられていく。そして、それ以後は、先羽根と後羽根は、スリット形成羽根同士の重なり量を好適に保ちながら作動を続けていくことになる。
【0058】
このようにして、セット作動が行われてゆき、先羽根の4枚の羽根34〜37が展開状態となって開口部1aを覆い、後羽根の4枚の羽根40〜43が重畳状態となって開口部1aの上方位置に格納された段階になると、後羽根用第1駆動部材11は、その駆動ピン11bが、シャッタ地板1に形成されている円弧状の長孔1cの上端に当接して停止させられる。
【0059】
そして、先羽根用駆動部材10と後羽根用第2駆動部材12は、その後も、僅かに反時計方向への回転を続けるので、先羽根の4枚の羽根34〜37も上方への作動を続けるが、後羽根の4枚の羽根40〜43は停止したままになるため、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12との間に掛けられた図示していないセットばねが緊張されていく。つまり、本実施例の場合には、このような作動を可能にしたことによって、後羽根用第2駆動部材12がそれ以上回転しても、後羽根の4枚の羽根40〜43は、それに伴って、それ以上は上方へ作動させられないようになっている。
【0060】
そのため、後羽根の格納領域のスペース、言い換えれば、開口部1aの上端縁からシャッタ地板1の上端縁までの距離が小さくて済むので、光学ファインダなどの図示していないカメラ本体側の構成部材を、少しでも有利に設置できるようになっている。従って、そのように構成する必要がない場合には、後羽根用第1駆動部材11と後羽根用第2駆動部材12とを、上記の特許文献2に記載されているフォーカルプレンシャッタのように、一つの部材としてしまっても構わない。
【0061】
本実施例の場合には、このようにして、後羽根用第1駆動部材11の回転が停止した後も、先羽根用駆動部材10と後羽根用第2駆動部材12は、なおも反時計方向へ回転させられていく。それによって、先羽根用駆動部材10は、その被係止部10aが、その段階では既に被係止部10aの作動軌跡内に存在している(その理由は、後述の係止解除機構のセット作動説明から理解することができる)係止部16aを押すことによって、先羽根用係止部材16を、図示していないばねの付勢力に抗して僅かに時計方向へ回転させ始める。そして、先羽根用駆動部材10がなおも回転してそれらの接触が解かれると、先羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、係止部16aを、被係止部10aの係止可能状態にする。
【0062】
他方、上記のように、先羽根用駆動部材10の被係止部10aが、先羽根用係止部材16の係止部16aを押している段階では、後羽根用第2駆動部材12も、被係止部12aが、その被係止部12aの作動軌跡内に既に存在している(後述の係止解除機構のセット作動説明から理解することができる)係止部17aを押すことによって、後羽根用係止部材17を、図示していないばねの付勢力に抗して、反時計方向へ回転させ始めている。そして、後羽根用第2駆動部材12がなおも回転することによってそれらの接触が解かれると、後羽根用係止部材17は、図示していないばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、係止部17aを、被係止部12aの係止可能状態にする。そのときの状態が、図4に示されたオーバーセット状態である。
【0063】
このようなオーバーセット状態になると、図示していないカメラ本体側の部材が、セット操作部材14のローラ14aから離れていく。そのため、セット部材13は、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転し得るようになり、リンク部材15を介して、セット操作部材14を反時計方向へ回転させながら、初期位置へ復帰していく。
【0064】
他方、この回転によって、セット部材13のローラ13a,13bが、二つの駆動部材10,12のローラ10b,12cに対する押圧力を解いていくので、それらの駆動部材10,12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるが、いずれも僅かに回転したところで、それらの被係止部10a,12aが上記の各係止部材16,17の係止部16a,17aによって係止され、停止させられる。また、この僅かな回転で、先羽根の4枚の羽根34〜37は僅かに下方へ作動させられるが、開口部1aの一部を開いてしまうことはない。
【0065】
そして、その後、セット部材13が初期位置で停止すると、セット作動が完了する。図5は、そのセット完了状態、即ち撮影待機状態を示したものであるが、本実施例の場合には、中間板2の外形形状形成縁2bが、図1に示されているように、開口部1a側に凸状となる円弧状に形成されているため、図5からも容易に推測できるように、この撮影待機状態においては、他の3枚の羽根41〜43と重畳状態になっている羽根40は、開口部1aの上方に位置する領域では、おおよそ1/3が中間板2と接触していない。尚、光電センサ44,45は、カメラの電源をONにしたときから通電されているので、このセット完了状態では、いずれも、アーム32,38の遮光部32a,38aによって光路を遮断され、L信号を出力している。
【0066】
以上で、開閉駆動機構のセット作動の説明を終え、次に、セット作動時に、セット部材13が、図2において、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転し、リンク部材15のピン15aによって、係止解除機構をセットする場合を説明する。セット部材13が図2において時計方向へ回転すると、図3に示されている補助セット部材18は、その長孔18bの幅方向の縁をリンク部材15のピン15aに押されて反時計方向へ回転させられ、その押動部18aによってホールド補助部材28の被押動部28aを押し、図示していない上記の第1ばねの付勢力に抗して、ホールド部材27とホールド補助部材28を反時計方向へ回転させていく。
【0067】
それにより、ホールド部材27の先端に取り付けられている押圧部材29は、その二つの押圧部29a,29bによって鉄片部材24,26の被押動部24a,26aを押し、各々の図示していないばねの付勢力に抗して、先羽根用係止解除部材23を反時計方向へ回転させ、後羽根用係止解除部材25を時計方向へ回転させていく。また、その回転に伴って、二つの係止解除部材23,25の押動部23a,25aが、上記の先羽根用係止部材16と後羽根用係止部材17の被押動部16b,17bに対する押圧力を解いていく。
【0068】
その結果、各々の図示していないばねの付勢力によって、先羽根用係止部材16は反時計方向へ回転し、後羽根用係止部材17は時計方向へ回転するので、上記の開閉駆動機構の作動説明で述べたように、それらの係止部16a,17aが、二つの駆動部材10,12に形成されている被係止部10a,12aの作動軌跡内に存在するようになる。そして、それらの係止部材16,17の回転は、それらの被押動部16b,17bが上地板7の縁に当接することによって停止させられる。
【0069】
ホールド部材27は、その後も、押圧部材29によって先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25を回転させていくと、やがて、鉄片部材24,26が、先羽根用電磁石19と後羽根用電磁石20の各々の鉄芯部材19a,20aに接触する。そのため、先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25の回転は停止し、ホールド部材27もそれ以上は反時計方向へ回転できなくなる。しかしながら、その後もホールド補助部材28の被押動部28aが補助セット部材18の押動部18aに押されるので、ホールド補助部材28は、ホールド部材27との間に掛けられた図示していない上記の第2のばねを緊張させながら僅かに回転させられたところで停止する。
【0070】
他方、上記のように鉄片部材24,26が鉄芯部材19a,20aに接触した後、レリーズレバー30は、それまで、ホールド補助部材28の被押動部28aによって阻止されていた回転を許されるようになり、図示していないばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられ、その当接部30cが上地板7の被当接部7kに当接して停止させられる。それによって、レリーズ部材30の係止部30aが、ホールド補助部材28の被押動部28aの作動軌跡内に入り込んで、ホールド補助部材28の時計方向の回転を阻止し得る状態になる。補助セット部材18の回転が停止して、係止解除機構がこのような状態になったときが、上記の開閉駆動機構のセット作動で説明したオーバーセット状態のときである。
【0071】
このようなオーバーセット状態から、上記したように、セット部材13が初期位置へ復帰させられると、補助セット部材18も時計方向へ回転させられるので、ホールド補助部材28も、ホールド部材27との間に掛けられた図示していない上記の第2のばねの付勢力によって時計方向へ回転させられるが、その回転は、僅かに回転したところで、ホールド補助部材28の被押動部28aが、レリーズ部材30の係止部30aに係止されて停止させられる。
【0072】
そして、このときのホールド補助部材28の回転は、ホールド部材27との間に掛けられている図示していない第2のばねの付勢力が作用する範囲内であるから、ホールド部材27は回転せず、押圧部材29の押圧部29a,29bは、依然として鉄片部材24,26を鉄芯部材19a,20aに接触させている。このような状態が、図6に示された係止解除機構のセット完了状態、即ち撮影待機状態である。
【0073】
次に、図7及び図8も加えて、撮影時における作動を説明する。図5及び図6に示された撮影待機状態において、撮影者が、光学ファインダで被写体像を観察しながらカメラのレリーズボタンを押すと、先ず、一方では、可動ミラーを跳ね上げて、撮影光路から退かせ、他方では、先羽根用電磁石19のコイル19bと後羽根用電磁石20のコイル20bに通電する。そのため、それまでは、単に鉄芯部材19a,20aに接触させられていただけの鉄片部材24,26が、鉄芯部材19a,20aに電磁力で吸着される。そこで次に、図示していないカメラ本体側の部材が、図6において、レリーズ部材30の被押動部30bを押すので、レリーズ部材30は時計方向へ回転し、係止部30aによって行っていた、ホールド補助部材28の係止を解く。
【0074】
被押動部28aの係止を解かれたホールド補助部材28は、図示していない上記の第2のばねの付勢力によって極めて僅かに回転した後、図示していない上記の第1のばねの付勢力によってホールド部材27と共に時計方向へ回転する。このようにしてホールド部材27が時計方向へ回転を開始すると、押圧部材29の押圧部29a,29bが、鉄片部材24,26の被押動部24a,26aから離れていくが、上記のように、鉄芯部材24,26が既に鉄芯部材19a,20aによって吸着されているので、先羽根用係止解除部材23と後羽根用係止解除部材25とは、各々の図示していないばねの付勢力によって回転することができず、図6の状態を維持される。そして、ホールド部材27とホールド補助部材28との時計方向の回転は、ホールド補助部材28の被押動部28aが補助セット部材18の押動部18aに当接することによって停止させられる。
【0075】
このようにして、ホールド部材27の回転は停止させられるが、そのとき、ホールド部材27に取り付けられている押圧部材29が、軸27aを中心にして大きく傾いて振動する。ところが、本実施例の場合には、カバー板8の折曲部8aに、ゴム製の緩衝部材31が取り付けられているので、押圧部材29が傾くと、押圧部29a,29bのいずれかが緩衝部材31に当接し、押圧部材29の振動が早期に収まるようになっている。図7は、そのような傾きによって、押圧部材29の押圧部29bが緩衝部材31に当接している状態を示したものである。また、その後、押圧部材29が理想的な姿勢になって静止した状態が図8に示されている。
【0076】
図8に示された状態が得られると、次に、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材24に対する吸着力が失われるので、先羽根用係止解除部材23は、図示していない先羽根用解除ばねの付勢力によって時計方向へ回転させられ、その過程で、押動部23aが、先羽根用係止部材16の被押動部16bを押していく。そのため、先羽根用係止部材16は、図示していないばねの付勢力に抗して時計方向へ回転させられ、それまで係止部16aによって係止していた先羽根用駆動部材10の係止を解く。そして、その後における先羽根用係止解除部材23の回転は、その押動部23aが先羽根用係止部材16の被押動部16bを、上地板7に形成されている孔7cの縁に押し付けることによって停止する。
【0077】
このようにして、先羽根用係止解除部材23が、先羽根用係止部材16の係止部16aによる先羽根用駆動部材10の被係止部10aの係止を解くと、先羽根用駆動部材10は、図5の状態から、図示していない先羽根用駆動ばねの付勢力によって急速に時計方向へ回転させられる。そのため、先羽根の4枚の羽根34〜37は、隣接する羽根同士の重なりを大きくしつつ開口部1aの下方へ作動し、スリット形成羽根37の上端縁によって、開口部1aを開いていく。そして、周知のように、被写体が暗い場合やフラッシュ撮影をする場合には、先羽根の4枚の羽根34〜37が開口部1aを全開にしてから、二つの後羽根用駆動部材11,12が時計方向へ回転させられることになるが、本実施例の作動説明においては、被写体が明るく、しかもフラッシュを使用しないで撮影をする場合で説明する。
【0078】
上記のようにして、先羽根用電磁石19のコイル19bに対する通電が断たれてから所定時間が経過すると、今度は後羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電が断たれる。そのため、鉄片部材26に対する吸着力が失われ、後羽根用係止解除部材25は、図8の状態から、図示していない後羽根用解除ばねの付勢力によって反時計方向へ回転させられるが、その過程で、押動部25aが、後羽根用係止部材17の被押動部17bを押していく。それによって、後羽根用係止部材17は、図示していないばねの付勢力に抗して反時計方向へ回転させられ、それまで係止部17aで係止していた後羽根用第2駆動部材12の係止を解く。そして、その後の後羽根用係止解除部材25の回転は、その押動部25aが後羽根用係止部材17を、上地板7に形成されている折曲部7jに押し付けることによって停止する。
【0079】
このようにして、後羽根用係止部材17による係止が解かれると、後羽根用第2駆動部材12は、図示していない後羽根用駆動ばねの付勢力によって、図5の状態から急速に時計方向へ回転させられるが、その初期段階において、窓部12bの縁が後羽根用第1駆動部材11の係合部11aを押すので、後羽根用第1駆動部材11も時計方向へ回転を開始する。従って、それ以後は、二つの駆動部材11,12は、時計方向へ一体的に回転することになる。そして、後羽根用第1駆動部材11が時計方向へ回転を開始すると、後羽根の4枚の羽根40〜43は、隣接する羽根同士の重なりを小さくしつつ開口部1a内へ作動してゆき、スリット形成羽根43の下端縁によって、開口部1aを上方から閉じていく。そのため、それ以後は、先羽根のスリット形成羽根37と後羽根のスリット形成羽根43の間に形成されたスリットにより、撮像素子の撮像面を上方から下方に向けて露光していく。
【0080】
ところで、本実施例の場合には、中間板2の形状が従来とは異なっている。即ち、本実施例の中間板2は、既に説明したように、後羽根の4枚の羽根40〜43が重畳状態にさせられて格納される側の外形形成縁2bが、露光開口、即ち開口部1a側に向けて凸状となる円弧状になるように形成されている。そのため、図5に示されているセット完了状態においては、後羽根の4枚の羽根40〜43は、それらの羽根の長さ方向の略中央部において、中間板2との重なり幅が最も小さくなるようになっている。そこで、本実施例の中間板2が何故このような形状をしているのかを、ここで説明しておく。
【0081】
周知のように、本実施例のように、シャッタ地板1と中間板2との間に先羽根が配置され、中間板2と補助地板3の間に後羽根が配置されている場合には、シャッタ地板1と中間板2との間は、先羽根の4枚の羽根34〜37が重畳状態になるところで最も大きな空気間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3との間では、後羽根の4枚の羽根40〜43が重畳状態になるところで最も大きな空気間隔を必要とする。即ち、本実施例の場合には、シャッタ地板1と中間板2の間の羽根室は、開口部1aの下方において最も大きな空気間隔を必要とするし、中間板2と補助地板3の間の羽根室は、開口部1aの上方において最も大きな空気間隔を必要とする。
【0082】
ところが、最近では、カメラの小型化に伴い、シャッタ地板1と補助地板3との間隔を少しでも小さくすることが要求されているため、重畳状態になっているときには、先羽根の4枚の羽根34〜37は、シャッタ地板1と中間板2とによって比較的強く挟まれ、後羽根の4枚の羽根40〜43は、中間板2と補助地板3とによって比較的強く挟まれるようになっている。そのため、先羽根の4枚の羽根34〜37の場合も、後羽根の4枚の羽根40〜43の場合にも、重畳状態から展開状態に作動するときには、従来よりも大きな摩擦抵抗力に抗して作動を開始させる必要が生じている。
【0083】
このような状況下において、本実施例の場合には、先羽根の4枚の羽根34〜37が、重畳状態から展開状態に作動させられるのは、セット作動を行うときである。そのため、先羽根の場合には、その作動開始のタイミングが多少不安定になったとしても、撮影自体には特に大きな問題を生じさせることがない。
【0084】
しかしながら、後羽根の4枚の羽根40〜43が、重畳状態から展開状態に作動するのは、露光作動を行うときである。そのため、羽根40〜43の相互間の摩擦抵抗力や、スリット形成羽根43と補助地板3との間の摩擦抵抗力や、羽根40と中間板2との間の摩擦抵抗力が大きいと、部品加工や組立加工上での僅かな差異によって、作動開始のタイミングが不安定になったり、スリット形成羽根43が若干傾いて作動を開始したりしてしまうようになる。従って、特に高速で撮影する場合には、露光時間が安定して得られなくなったり、露光むらを発生させたりして、極めて大きな問題になる。そこで、本実施例の場合には、重畳状態における後羽根の羽根40と中間板2との接触面積を、全体構成上からみて効率的に小さくするために、中間板2の外形形状形成縁2bを円弧状にしている。
【0085】
つまり、中間板2の上方両端の位置は、シャッタ地板1に対する取付けの都合や、その取付け部が羽根の作動に干渉しないようにするために、従来どおりにしており、その上で外形形状形成縁2bを円弧状にしたのは、羽根40と中間板2との接触面積を小さくして摩擦抵抗力を小さくすることによって、間接的にスリット形成羽根43の作動開始を円滑且つ安定したものにすると共に、作動を開始するとき、スリット形成羽根43に左右方向の傾きが生じにくくなるように配慮したものである。尚、本実施例においては、外形形状形成縁2bを円弧状に形成しているが、本発明の外形形状形成縁は円弧状に限定されるものではなく、露光開口に向けて全体として略山型となるように形成されてさえいれば、その外形形状形成縁の全て又は一部を直線で形成しているようにしても構わない。
【0086】
ここで、先羽根と後羽根による露光作動の説明に戻る。本実施例における先羽根と後羽根は、上記のようにして、所定の間隔のスリットを形成して、撮像素子の撮像面を露光していくが、周知のように、その露光量は、撮像面のどの領域においても同じであることが要求される。ところが、シャッタユニットを製作するときには、所定の規格どおりに製作されていても、カメラ本体に組み込まれたときや、カメラの発売後においては、撮像面の露光量の分布が一定しなくなって、露光むらを発生させてしまうことがある。そこで、本実施例のフォーカルプレンシャッタを備えているカメラは、そのような事態が生じても、それを自動的に補正できるようになっている。
【0087】
そこで、そのような補正を可能にするために、本実施例では、上記したように、シャッタ地板1に二つの光電センサ44,45が取り付けられており、先羽根のアーム32には遮光部32a,32bが形成され、後羽根のアーム38には遮光部38a,38bが形成されていて、先羽根のスリット形成羽根37と後羽根のスリット形成羽根43とによって形成されるスリットが、開口部1aの上方領域にあるときと、真中の領域にあるときと、下方領域にあるときとの3箇所で、スリット幅を検出するようになっている。
【0088】
そして、各領域でのスリット幅の検出は、上方領域の場合には、アーム32の遮光部32aが光電センサ44の光路から退いてから、アーム38の遮光部38aが光電センサ45の光路から退くまでの時間を検出し、真中の領域の場合には、アーム32の遮光部32bが光電センサ44の光路を遮断してから、アーム38の遮光部38bが光電センサ45の光路を遮断するまでの時間を検出し、下方領域の場合には、アーム32の遮光部32bが光電センサ44の光路から退いてから、アーム38の遮光部38bが光電センサ45の光路から退くまでの時間を検出することによって行なわれる。そして、その検出結果に基づいて、3箇所における露光量が適正露光量となるように補正される。
【0089】
尚、このようなスリット幅の検出結果による補正は、例えばカメラ側の制御回路が後羽根用電磁石20のコイル20bに対する通電を遮断する時機を、電気的に微調整するようにして、次の撮影が適正露光で行われるようにしてもよいが、デジタルカメラの場合には、検出時に撮影した画像情報を、記憶装置からカメラ本体側の画像処理回路に呼び出して補正をし、その補正後の画像情報を最終画像情報として記憶装置にあらためて記憶させるようにすることも可能である。
【0090】
このようにして、先羽根の4枚の羽根34〜37と後羽根の4枚の羽根40〜43とが、それらのスリット形成羽根37,43の間にスリットを形成して下方へ移動していくが、先羽根の露光作動は、4枚の羽根34〜37が重畳状態になって開口部1aからその下方位置へ退いた直後に、先羽根用駆動部材10の駆動ピン10cが緩衝部材4に当接することによって停止させられ、後羽根の露光作動は、4枚の羽根40〜43が展開状態になって開口1aを完全に閉鎖した直後に、後羽根用第1駆動部材11の駆動ピン11bが緩衝部材5に当接することによって停止させられる。その状態が、図1及び図2に示されている状態である。そして、既に説明したように、この状態で撮像情報が記憶装置に記憶された後、直ちにセット作動が行われるが、それと並行して、カメラ本体側に備えられている可動ミラーが撮影光路内に復帰する。
【0091】
尚、本実施例は、上記の特許文献2に記載されているような係止タイプのフォーカルプレンシャッタに本発明を適用したものであるが、本発明は、上記の特許文献1,3に記載されているような、ダイレクトタイプのフォーカルプレンシャッタにも適用することができるし、上記の特許文献4に第2実施例として記載されているような、モータを駆動源としたフォーカルプレンシャッタにも適用することができることは言うまでもない。
【0092】
また、既に述べたように、特許文献4に第2実施例として記載されているフォーカルプレンシャッタは、本実施例の場合と同様に、露光作動に際しては、撮影の都度、第1のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第2のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させるようにすることができるほか、前の撮影で、第1のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第2のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させた場合には、次の撮影では、第2のシャッタ羽根を展開状態から重畳状態に作動させ、第1のシャッタ羽根を重畳状態から展開状態に作動させることも可能である。従って、後者のような露光作動を行わせる場合には、本発明の外形形状形成縁を、本実施例のように、露光開口の一方の長辺の外側の外形形状形成縁にだけ適用するのではなく、他方の長辺の外側の外形形状形成縁にも適用すると有効である。
【0093】
更に、特許文献3に記載されているフォーカルプレンシャッタは、撮影前には、撮影対象とする被写体像を、撮像素子を介してモニタで観察可能となっており、撮影に際してカメラのレリーズボタンを押すと、先羽根が重畳状態から展開状態に復帰した後、先羽根と後羽根による露光作動が行われるように構成されている。そして、本実施例や特許文献2に記載されている係止タイプのフォーカルプレンシャッタの場合にも、先羽根用駆動部材の構成を特許文献3に記載されている構成のようにすることによって、同じような作動を行わせることが可能である。また、特許文献4に記載されている第2実施例のフォーカルプレンシャッタに同じような作動を行わせることも可能である。そのため、そのような作動を行わせる場合にも、本発明の外形形状形成縁を、露光開口の一方の長辺の外側の外形形状形成縁にだけ適用するのではなく、他方の長辺の外側の外形形状形成縁にも適用すると有効である。
【符号の説明】
【0094】
1 シャッタ地板
1a,2a,3a 開口部
1b,1c,18b 長孔
1d〜1f,7a 柱
1g〜1k,1m,1n,1p,7b,7d,7e,7m,7n,14b,27a 軸
2 中間板
2b 外形形状形成縁
3 補助地板
4,5,9,31 緩衝部材
6,21,22 ねじ
7 上地板
7c 孔
7f〜7h,7j,8a 折曲部
7i,12b 窓部
7k 被当接部
7p,7q 位置決めピン
8 カバー板
10 先羽根用駆動部材
10a,12a 被係止部
10b,12c,13a,13b,14a ローラ
10c,11b 駆動ピン
11 後羽根用第1駆動部材
11a 係合部
12 後羽根用第2駆動部材
13 セット部材
14 セット操作部材
15 リンク部材
15a ピン
16 先羽根用係止部材
16a,17a,30a 係止部
16b,17b,24a,26a,28a,30b 被押動部
17 後羽根用係止部材
18 補助セット部材
18a,23a,25a 押動部
18c 逃げ孔
19 先羽根用電磁石
19a,20a 鉄芯部材
19b,20b コイル
19c,20c ボビン
20 後羽根用電磁石
23 先羽根用係止解除部材
24,26 鉄片部材
25 後羽根用係止解除部材
25b 被抑止部
27 ホールド部材
28 ホールド補助部材
29 押圧部材
29a,29b 押圧部
30 レリーズ部材
30c 当接部
32,33,38,39 アーム
32a,32b,38a,38b 遮光部
33〜37,40〜43 羽根
44,45 光電センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被写体光路用の開口部を有しているシャッタ地板と、被写体光路用の開口部を有していて所定の間隔を空けて前記シャッタ地板に取り付けられている補助地板と、前記二つの開口部を含めた三つのうちの少なくとも一つによって長方形の露光開口を形成している被写体光路用の開口部を有しており前記シャッタ地板と前記補助地板との間に配置されていて前記シャッタ地板との間に第1羽根室を構成し前記補助地板との間に第2羽根室を構成している中間板と、前記第1羽根室に配置されており前記露光開口の一方の短辺の外側となる領域において前記シャッタ地板に各々の一端を枢着されている二つのアームとそれらのアームよりも前記中間板側に配置されていてそれらのアームの両方に対してそれらのアームの自由端に向けて各々の長さ方向の一端を順に枢支されている複数枚の羽根とで構成されていて前記露光開口を開いているときには前記露光開口の一方の長辺の外側となる領域において該複数枚の羽根を前記露光開口の長辺と略平行になるようにして重畳させている第1シャッタ羽根と、前記第2羽根室に配置されており前記露光開口の前記一方の短辺の外側となる領域において前記シャッタ地板に各々の一端を枢着されている二つのアームとそれらのアームよりも前記中間板側に配置されていてそれらのアームの両方に対してそれらのアームの自由端に向けて各々の長さ方向の一端を順に枢支されている複数枚の羽根とで構成されていて前記露光開口を開いているときには前記露光開口の他方の長辺の外側となる領域において該複数枚の羽根を前記露光開口の長辺と略平行になるようにして重畳させている第2シャッタ羽根と、を備えていて、前記中間板は、前記露光開口の二つの長辺の外側となる二つの外形形状形成縁の少なくとも一方が前記露光開口に向けて略山型となるように形成されていて、前記露光開口の長辺の外側となる領域の一部が前記重畳されている複数枚の羽根とは重ならないようにしていることを特徴とするカメラ用フォーカルプレンシャッタ。
【請求項2】
前記二つの外形形状形成縁の少なくとも一方が、前記露光開口に向けて凸となる円弧状に形成されていることを特徴とする請求項1に記載のカメラ用フォーカルプレンシャッタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−98355(P2012−98355A)
【公開日】平成24年5月24日(2012.5.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−243832(P2010−243832)
【出願日】平成22年10月29日(2010.10.29)
【出願人】(000001225)日本電産コパル株式会社 (755)
【Fターム(参考)】