説明

カメラ用絞り装置

【課題】全ての羽根が、隣接する2枚の羽根の間に存在するように構成されているにもかかわらず、小さい絞り口径の制御を好適に行えるようにしたカメラ用絞り装置を提供すること。
【解決手段】地板1と補助地板2の間に構成された羽根室には、電磁駆動手段によって、光軸を中心にして往復回転させられる絞りリング4と、その絞りリング4によって同時に同じ方向へ往復回転させられ協働して絞り口径を変化させる複数枚の羽根5が配置されていて、羽根5は、羽根軸5aを地板1の孔1hに嵌合させ、連結ピン5bを絞りリング4に形成されたカム状の長孔4aに嵌合させている。また、地板1と絞りリング4には、対向する複数箇所に、カム面1fとカム面4dが形成されていて、地板1に設けられた弾性を有する舌片1gによって常に接触させられ、補助地板2と絞りリング4の間隔が変化するようになっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数枚の羽根が絞りリングによって同時に同じ方向へ回転させられることによって、協働して絞り口径を変化させるようにしたカメラ用絞り装置に関する。
【背景技術】
【0002】
複数枚の羽根が絞りリングによって同時に同じ方向へ回転させられることにより、協働して絞り口径を変化させるようにしたカメラ用絞り装置は、古くから知られている。そして、この種の絞り装置のうち、普及カメラに採用されている絞り装置は、各羽根が、地板に対して長さ方向の一端で回転可能に取り付けられており、その近傍位置で絞りリングに連結されているのが普通である。そのため、各羽根は、他端部、即ち先端部を撮影光路に臨ませた状態で絞り口径を変化させることになる。また、各羽根と絞りリングとの連結は、下記の特許文献1に記載されているように、絞りリングに設けられているピンを羽根に形成された長孔に嵌合させるようにするか、下記の特許文献2に記載されているように、羽根に設けられているピンを絞りリングに形成された長孔(一般に、カム溝といわれている)に嵌合させるようにするのが普通であるが、最近では、後者のようにすることが多くなっている。
【0003】
また、羽根相互の取り付け構成としては、特許文献1に記載されている構成のように、最初の羽根から順に重ねて取り付けていくだけであって、取り付け状態においては、いかなる状態においても最初の羽根と最後の羽根の先端部が接触しないようにしたものが知られている。この構成は、取り付け作業が簡単であるから、低コスト化には有利である。しかしながら、複数枚の羽根は、単に重ねられているだけであるから、隣接している羽根同士を所定の密接状態に保つことが難しい。特に撮影光路用の開口部が比較的大きいと、先端部がその開口部内に臨んでいることから、先端部同士の重なり関係が乱れてしまい、作動が不安定になったり、適正な最小絞り口径が得られなくなったりしてしまうことがある。そこで、そのようなことが生じないようにするため、特許文献2に記載されているように、取り付け状態においては、全ての羽根が、隣接する2枚の羽根の間に存在するように構成することが知られている。本発明は、羽根同士の重なり関係を、このような特許文献2に記載の構成にしたカメラ用絞り装置に関するものである。
【0004】
【特許文献1】実公昭62−32266号公報
【特許文献2】特開2005−284102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近のカメラ用絞り装置は、駆動手段として電磁アクチュエータを用いるのが普通になっており、特許文献2に記載されている絞り装置の場合にも、絞りリングを回転させる駆動手段として、ステップモータを用いている。ところで、周知のように、羽根同士の重なり関係を特許文献2に記載されているように構成すると、絞り口径を小さくしていくにしたがって、各羽根に反りが生じ、それらの先端部が、撮影光路用の開口部からその先端部を目視できる方向(特許文献2の図3においては、図面の奥方向)へ盛り上がっていくようになる。言い換えれば、ステップモータの負荷が徐々に大きくなっていくわけである。また、その先端部が盛り上がっている状態から逆に絞り口径を大きくしようとすると、いわゆる引っ掛かりが生じて、スムーズに作動を開始せず、絞り口径の小さい領域での制御が不安定なものになってしまう場合もある。そのため、このような羽根同士の重なり構成をした絞り装置の場合には、駆動力の大きな電磁アクチュエータを採用しなければならないという問題点があった。
【0006】
本発明は、このような問題点を解決するためになされたものであり、その目的とするところは、取り付け状態においては、全ての羽根が、隣接する2枚の羽根の間に存在するように構成されているにもかかわらず、小さい絞り口径の制御を好適に行えるようにしたカメラ用絞り装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を達成するために、本発明のカメラ用絞り装置は、羽根室側の面には光軸に沿った方向に高低差のあるスロープとして光軸を中心にして略円弧状に形成した複数のカム面を有している地板と、前記地板との間に前記羽根室を構成している板部材と、前記羽根室内において光軸を中心にして回転可能に配置されており前記地板側の面には前記地板のカム面と接し得るようにして該カム面とはスロープの高さ方向を逆にして略円弧状に形成した複数のカム面を有している絞りリングと、各羽根は前記絞りリングと前記板部材との間においてその一部が隣接する両側の羽根の間にあるように重ねられ前記地板又は前記板部材に対して回転可能に取り付けられておりピンと長孔との嵌合構成によって前記絞りリングに連結されていて前記絞りリングが回転したときには協働して絞り口径を変化させるようにした複数枚の羽根からなる絞り羽根と、前記絞りリングのカム面が前記地板のカム面に常に接触するように前記絞りリングを押圧している弾性手段と、前記絞りリングを往復回転させる電磁駆動手段と、を備えており、前記絞りリングが最小絞り口径制御位置にあるときには、前記絞りリングと前記板部材との間隔が最大となるようにする。
【0008】
その場合、前記弾性手段が、前記板部材又は前記地板に設けられた弾性を有する複数の舌片であって、該舌片は、その弾性によって、常にその先端を前記絞りリングの前記板部材側の面に接触させているようにする。しかも、前記地板又は前記板部材が合成樹脂製であって、前記複数の舌片は、前記地板又は前記板部材の製作時において同時一体成形によって形成されているようにするとコスト面で有利になる。また、前記地板に設けられている前記複数の舌片が、前記絞りリングを前記地板に対して回転可能に取り付けるために前記地板に設けられている複数の取付片でもあるようにすると、一層好ましいものとなる。更に、本発明のこれらのカメラ用絞り装置においては、前記板部材が、前記地板と補助地板との間に配置されていて、前記地板と該補助地板の間にもう一つの羽根室を構成し、該羽根室内にはシャッタ羽根を配置することによって、シャッタ装置と共に一つのユニットとして構成されているようにしてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、全ての羽根が、隣接する2枚の羽根の間に存在するように構成されたカメラ用絞り装置において、絞りリングに形成されているカム面を、地板に形成されているカム面に対して、弾性手段によって常に接触させておくようにし、絞りリングが、電磁駆動手段によって、最小絞り口径制御位置へ回転させられていくと、絞りリングと板部材との間隔が大きくなっていくようにしたので、従来の構成よりも各羽根の反りが大きくなっていかず、電磁駆動手段の駆動力を大きくしなくても、小口径の領域の絞り制御を安定して行えるという特徴がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の実施の形態を、図示した二つの実施例によって説明する。本発明のカメラ用絞り装置は、単体の絞り装置として構成することも、シャッタ装置と共にユニット化した絞り装置として構成することも可能である。しかしながら、実施例としては、単体の絞り装置として構成した場合で説明することにし、シャッタ装置と共にユニット化した絞り装置については、二つの実施例を説明した後に付言することにする。尚、図1〜図4は、実施例1を説明するためのものであり、図5〜図8は、実施例2を説明するためのものである。
【実施例1】
【0011】
図1〜図4を用いて実施例1を説明する。尚、図1は、最大絞り口径の制御状態を示した平面図である。図2は、図1の状態における要部の断面図であるが、図2(a)は羽根の取付け位置を示したものであり、図2(b)は絞りリングの取付け位置を示したものである。また、図3は、最小絞り口径の制御状態を示した平面図である。図4は、図3の状態における要部の断面図であって、図4(a)は羽根の取付け位置を示したものであり、図4(b)は絞りリングの取付け位置を示したものである。
【0012】
そこで先ず、主に図1及び図2を用いて、本実施例の構成を説明する。本実施例のカメラ用絞り装置は、地板1と補助地板2との間に羽根室を構成しており、図1は、その補助地板2を二点鎖線で示すことによって、補助地板2側から羽根室内の構成を分かり易く示したものである。本実施例の地板1は、合成樹脂製であって、その中央部には大きな開口部1aを形成しており、外周部には、断続的に六つの壁部1bを形成している。そして、壁部1bを形成していない箇所のうちの3箇所には、径方向へ突き出た突起部1cを形成している。補助地板2は、金属製の薄い板部材であって、その中央部には光軸を中心にした円形の開口部2aを形成しており、外周部には、3箇所に折曲部2bを有している。そして、この補助地板2は、外周部の地板1側の面を壁部1bの頂面に接触させ、折曲部2bに設けた孔を突起部1cに係合させた後、ねじ3によって地板1に螺着されている。尚、本実施例では、補助地板2を金属製としているが、合成樹脂製にし、別の方法で、地板1に取り付けるようにしても構わない。
【0013】
また、地板1の羽根室側には、壁部1bの直ぐ内側に第1環状面1dが形成され、その内側には、第1環状面1dよりも深くして第2環状面1eが形成されている。また、第2環状面1eには、三つのカム面1fが、光軸を中心にして円弧状に、且つ光軸に沿った方向に高低差のあるスロープとして形成されているが、図1においては、それらのカム面1fの形成されている角度範囲を理解できるようにするために、第2環状面1eの基準面から補助地板2側に高くなり始める箇所と一番高い箇所とを、光軸を中心にした放射状の一対の一点鎖線で示してある。そして、それらの一対の一点鎖線のうち、光軸を中心にして右側となる一点鎖線が一番高い箇所であるため、その箇所を示す3箇所の一点鎖線には、符号Hを付けてある。更に、地板1の羽根室側には、合成樹脂材料による同時一体成形によって、フック状をした三つの舌片1gが形成されているが、この舌片1gは、図2(b)からも察せられるように弾性を有している。
【0014】
本実施例の絞りリング4は、合成樹脂製であって、六つのカム形状をした長孔4aを有しており、外周部には、歯部4bと二つの凹部4cを形成している。また、地板1の第2環状面1eと対向する面には、三つのカム面4dが、光軸を中心にして円弧状に、且つ光軸に沿った方向に高低差のあるスロープとして形成されているが、図1においては、それらのカム面4dの形成されている角度範囲を理解できるようにするために、絞りリング4の基準面から地板1側に高くなり始める箇所と一番高い箇所とを、光軸を中心にした放射状の一対の三点鎖線で示してある。そして、それらの一対の三点鎖線のうち、光軸を中心にして左側となる三点鎖線が一番高い箇所であるため、その箇所を示す3箇所の三点鎖線には、符号hを付けてある。このことからも分かるように、絞りリング4に形成されているカム面4dは、地板1の第2環状面1eに形成されているカム面1fとは、スロープの高さ方向が逆になるように形成されている(図2参照)。
【0015】
この絞りリング4は、次のようにして地板1に取り付けられている。先ず、カム面4dを地板1側に向けておいて、凹部4cの位置を舌片1gの位置に合わせ、第2環状面1eに向けて落とし込む。このとき、絞りリング4には、凹部4cが二つしか形成されていないが、三つ目の凹部は、外周面より内側であって歯部4bに連設されている部位が、その役目をすることになる。次に、舌片1gを撓ませておいて、絞りリング4を反時計方向へ図1の位置まで回転させる。このようにして組み付けられた後は、絞りリング4は、その凹部4cの位置が舌片1gの位置まで回転させられることがないので、地板1から外れてしまうことがなくなる。そして、このような組み付け状態においては、図2(b)に示されているように、舌片1gの弾性によって押圧され、カム面4dをカム面1fに接触させられた状態になる。即ち、舌片1gは、絞りリング4の取付片であると同時に、絞りリング4を押圧する弾性手段の役目をしていることになる。
【0016】
尚、本実施例の場合には、舌片1gを地板1と同時一体成形で形成しているが、同様な機能を有する別部材として製作し、地板1に対して取り付けるように構成しても差し支えない。また、本実施例の場合には絞りリング4の内径が、補助地板2の開口部2aの直径よりも大きい。そのため、被写体光路の大きさは、開口部2aによって規制されている。しかしながら、絞りリング4の内径の方を小さくすることによって、被写体光路の大きさを規制するようにしてもよい。更に、本実施例の場合には、地板1の開口部1aが、かなり大きな非円形の開口部に形成されているが、それを、開口部2aの直径や絞りリング4の内径よりも小さな円形とすることによって、被写体光路の大きさを規制するようにしても構わない。
【0017】
本実施例は、絞り羽根として、6枚の羽根5を備えている。それらの羽根5は、合成樹脂製であって同じ形状をしており、同一の面に羽根軸5aと連結ピン5bを有しており、その羽根軸5aを、地板1の第1環状面1dに形成された孔1hに回転可能に嵌合させ、連結ピン5bを、絞りリング4にカム形状に形成された長孔4aに挿入している。また、それらの羽根5は、少なくともその先端部が隣接する羽根と重なるようにして取り付けられているが、本実施例の場合には、単に順番に重ね合わせているのではなく、全ての羽根が隣接する両側の羽根の間に存在するようにして重ね合わされている。尚、図3においては、図面を見易くするために、絞りリング4の長孔4aと、羽根5と、地板1の孔1hについては、1枚の羽根5に関係するものについてだけ符号を付けてある。
【0018】
本実施例の場合には、上記の絞りリング4が、ステップモータによって往復回転させられるようになっているが、そのステップモータの構成は、特許文献2に記載されている周知のステップモータの構成と実質的に同じである。そのため、図1においては、羽根室側に配置されている回転子6だけが示されている。そして、その回転子6は、出力歯車6aを有していて、地板1に立設された軸1iに回転可能に取り付けられている。また、地板1の軸1jには減速歯車7が回転可能に取り付けられているが、この減速歯車7は、親歯車と子歯車を有する2段歯車であって、親歯車を上記の出力歯車6aに噛合させ、子歯車を絞りリング4の歯部4cに噛合させている。
【0019】
次に、本実施例の作動を説明する。図1は、6枚の羽根5が開口部2aを全開にしている状態、即ち最大絞り口径の制御状態を示したものである。このとき、絞りリング4のカム面4dと地板1のカム面1fは、図2(a),図2(b)に示されているように、光軸方向に沿った方向の高さが高い領域同士で接触しているため、絞りリング4と補助地板2の間隔は最小になっている。この状態で、回転子6が時計方向へ回転すると、絞りリング4も時計方向へ回転するので、6枚の羽根5は、同時に反時計方向へ回転させられ、先端部から開口部2a内に進入していくことによって、協働して形成される絞り口径を小さくしていく。
【0020】
そして、本実施例の絞り装置がスチルカメラに採用されている場合には、所定の絞り口径が得られたところで回転子6が停止し、撮影が行われることになるし、ムービーカメラに採用されている場合には、被写体光の変化に対応して、回転子6が時計方向へ回転させられたり反時計方向へ回転させられたりして、常に適正な露光条件での撮影が行われるように絞り口径を変化させることになるが、図3は、そのようにして、最小絞り口径が形成された状態を示したものである。このとき、絞りリング4のカム面4dと地板1のカム面1fは、図4(a),図4(b)に示されているように、相対位置関係が変わっているが、舌片1gの弾性によって、カム面4eの高い領域がカム面1fの低い領域と接触するようにさせられているため、絞りリング4と補助地板2の間隔は最大になっている。
【0021】
ところで、従来のこの種のカメラ用絞り装置は、絞りリング4にカム面4dが形成されておらず、地板1にもカム面1fが形成されていなかったため、絞りリング4がどのような絞り口径制御位置にあっても、絞りリング4と補助地板2の間隔は同じであった。そのため、次のような不都合があった。図1に示されている最大絞り口径の制御状態のときには、各々の羽根5は、異なる部位で隣接する両側の羽根と重なっているため、絞りリング4と補助地板2の間隔は、実質的には2枚の重なり分だけを考慮すればよいことになる。ところが、そのような間隔にした場合には、最終的には図3に示されているように、先端部が他の4枚と重なって合計5枚分の重なりとなるため、絞り口径を小さくしていくにしたがって各羽根が反っていくようになる。
【0022】
その結果、絞りリング4が最小絞り口径制御位置に近づいていくと、回転子6の負荷が大きくなっていくため、駆動力の大きなステップモータが必要になる。また、羽根相互間に軋みが生じて各羽根の反りによる変形が一定せず、小さい絞り口径制御領域において理想的な口径形状が得にくくなってしまう。更に、絞りリング4が、図3に示されているような最小絞り口径制御位置から反時計方向へ回転を開始させられるときには、羽根相互間の軋みによって、いわゆる引っ掛かりが生じ、作動開始が不安定になってしまう場合がある。
【0023】
そこで、これらの不都合を解消するために、従来の機構において、絞りリング4と補助地板2の間隔を大きくし、小さい絞り口径の制御領域において、スムーズな作動が得られるようにすることが考えられる。しかしながら、そのようにすると、逆に大きい絞り口径制御領域において、各羽根5のガタツキが大きくなってしまうことになる。そのため、従来は、ステップモータの駆動力を大きくして対応していた。しかしながら、本実施例の場合には、上記のように、絞りリング4と補助地板2との間隔を、6枚の羽根5の相互の重なり状態に合わせて変化させるようにしている。そのため、小さい絞り口径の制御領域における羽根5の窮屈な作動が緩和され、仮に各々の羽根5に反りが生じたとしても、負荷の変動を最小限に止めることができるので、上記のような従来の構成における不都合を解消することができるようになっている。
【実施例2】
【0024】
次に、図5〜図8を用いて実施例2を説明するが、図5は、最大絞り口径の制御状態を示す実施例2の平面図であり、図6は、図5の状態における要部の断面図である。また、図7は、最小絞り口径の制御状態を示す平面図であり、図8は、図7の状態における要部の断面図である。尚、本実施例の構成は、実施例1における地板1,補助地板2,絞りリング4の一部が異なるだけである。そのため、各図面においては、実施例1と実質的に同じ部材,部位に同じ符号を付け、それらについての説明を省略する。また、図5及び図7においては、本実施例の要部の構成を見易くするために、上記の図1及び図3に示されている回転子6と減速歯車7の図示を省略してある。更に、図5及び図7においては、上記の図3の場合と同様に、絞りリング4の長孔4aと、羽根5と、地板1の孔1hについては、1枚の羽根5に関係したものについてだけ符号を付けてある。
【0025】
そこで、実施例1と異なる構成について説明する。先ず、実施例1の地板1は、その外周部に断続的に六つの壁部1bを形成していたが、本実施例の場合には、断続的に四つの壁部1bを形成している。また、本実施例の地板1は、実施例1において設けられていた三つの舌片1gを設けていない。そのほかは、実施例1の地板1の場合と同じである。次に、本実施例の補助地板2は、実施例1の補助地板2に設けていなかった弾性を有する三つの舌片2cをプレス加工で形成している。そのほかは、実施例1の補助地板2の場合と同じである。尚、本実施例の場合には、舌片2cをこのようにして形成しているが、別部材として製作したものを取り付けるようにしても構わないし、補助地板2と共に合成樹脂材料による同時一体成形で形成するようにしても構わない。最後に、本実施例の絞りリング4は、実施例1において形成されていた二つの凹部4cを形成していない。そのほかは、実施例1の絞りリング4の場合と同じである。このような構成からも分かるように、本実施例の場合には、絞りリング4は、地板1に取り付けられているのではなく、補助地板2の舌片2cに押圧されることによって、そのカム面4dを地板1のカム面1fに接触させられているだけである。
【0026】
次に、本実施例の作動を説明するが、その作動は、実施例1の場合と実質的に同じである。そのため、簡単に説明することにする。図5は、6枚の羽根5が開口部2aを全開にした最大絞り口径の制御状態を示したものであって、絞りリング4のカム面4dと地板1のカム面1fは、図6から分かるように、光軸方向に沿った方向の高さが高い領域同士で接触し、絞りリング4と補助地板2の間隔が最小になっている。この図5の状態で、絞りリング4が、図示していない回転子6によって時計方向へ回転させられると、6枚の羽根5は、同時に反時計方向へ回転させられ、協働して絞り口径を小さくしていくと共に、舌片2cの弾性によりカム面4dとカム面1fの相対的な接触関係が変わってゆき、絞りリング4と補助地板2の間隔が大きくなっていく。
【0027】
そして、所定の絞り口径制御位置に達すると、回転子6が停止して、絞りリング4と羽根5の回転も停止することになるが、図7及び図8には、絞りリング4が最小絞り口径の制御位置で停止し、絞りリング4と補助地板2の間隔が最大になっている状態が示されている。また、図7に示された状態において、絞りリング4が、反時計方向へ回転させられると、6枚の羽根5は、同時に時計方向へ回転させられて絞り口径を大きくしてゆき、途中で停止させられたり、図5及び図6に示された状態まで回転させられ、停止させられたりするようになっている。尚、重複を避けるために説明しないが、実施例1の作動に関連して説明したことは、全て本実施例にも援用される。
【0028】
尚、上記の各実施例においては、各羽根5は、羽根軸5aと連結ピン5bとを同一面に設けているが、本発明は、そのような構成に限定されず、一方の面に羽根軸5aを設け、他方の面に連結ピン5b設けるようにしてもよい。そして、そのように構成した場合には、羽根軸5aは、補助地板2に設けられた孔に嵌合させることになる。また、そのように補助地板2に取り付ける場合でも、上記の各実施例のように地板1に取り付ける場合であっても、羽根5には取付軸5aに代えて孔を形成し、その孔を、地板1又は補助地板2に設けた取付軸に対して嵌合させるようにしてもよい。更に、上記の各実施例の場合には、羽根5に連結軸5bを設け、絞りリング4にカム形状の長孔4aを形成しているが、特許文献1に記載されているように、絞りリング4に連結ピンを設け、羽根5に長孔を形成するようにしても構わない。
【0029】
また、上記の各実施例は、いずれも、本発明を単体の絞り装置として構成したものである。しかしながら、本発明は、シャッタ装置と共にユニット化した絞り装置としても構成することが可能である。そして、そのように構成する場合には、本実施例の地板1と補助地板2との間を、薄い板部材である中間板で仕切り、地板1と中間板の間に絞りリングと絞り羽根を配置し、中間板と補助地板2の間にシャッタ羽根を配置することが知られている。そして、その場合には、地板1の羽根室外の面に、シャッタ羽根の駆動手段として第2の電磁アクチュエータを取り付けることになる。また、上記の実施例2の構成を採用する場合には、舌片2cを中間板に設けることになる。従って、本発明の板部材は、上記の各実施例のように補助地板2である場合もあるし、また、シャッタ装置と共にユニット化した絞り装置における中間板である場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】最大絞り口径の制御状態を示す実施例1の平面図である。
【図2】図1の状態における要部の断面図であって、図2(a)は羽根の取付け位置を示したものであり、図2(b)は絞りリングの取付け位置を示したものである。
【図3】最小絞り口径の制御状態を示す実施例1の平面図である。
【図4】図3の状態における要部の断面図であって、図4(a)は羽根の取付け位置を示したものであり、図4(b)は絞りリングの取付け位置を示したものである。
【図5】最大絞り口径の制御状態を示す実施例2の平面図である。
【図6】図5の状態における要部の断面図である。
【図7】最小絞り口径の制御状態を示す実施例2の平面図である。
【図8】図7の状態における要部の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 地板
1a,2a 開口部
1b 壁部
1c 突起部
1d 第1環状面
1e 第2環状面
1f,4d カム面
1g,2c 舌片
1h 孔
1i,1j 軸
2 補助地板
2b 折曲部
3 ねじ
4 絞りリング
4a 長孔
4b 歯部
4c 凹部
5 羽根
5a 羽根軸
5b 連結ピン
6 回転子
6a 出力歯車
7 減速歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
羽根室側の面には光軸に沿った方向に高低差のあるスロープとして光軸を中心にして略円弧状に形成した複数のカム面を有している地板と、前記地板との間に前記羽根室を構成している板部材と、前記羽根室内において光軸を中心にして回転可能に配置されており前記地板側の面には前記地板のカム面と接し得るようにして該カム面とはスロープの高さ方向を逆にして略円弧状に形成した複数のカム面を有している絞りリングと、各羽根は前記絞りリングと前記板部材との間においてその一部が隣接する両側の羽根の間にあるように重ねられ前記地板又は前記板部材に対して回転可能に取り付けられておりピンと長孔との嵌合構成によって前記絞りリングに連結されていて前記絞りリングが回転したときには協働して絞り口径を変化させるようにした複数枚の羽根からなる絞り羽根と、前記絞りリングのカム面が前記地板のカム面に常に接触するように前記絞りリングを押圧している弾性手段と、前記絞りリングを往復回転させる電磁駆動手段と、を備えており、前記絞りリングが最小絞り口径制御位置にあるときには、前記絞りリングと前記板部材との間隔が最大となるようにしていることを特徴とするカメラ用絞り装置。
【請求項2】
前記弾性手段が、前記板部材又は前記地板に設けられた弾性を有する複数の舌片であって、該舌片は、その弾性によって、常にその先端を前記絞りリングの前記板部材側の面に接触させているようにしたことを特徴とする請求項1に記載のカメラ用絞り装置。
【請求項3】
前記地板又は前記板部材が合成樹脂製であって、前記複数の舌片は、前記地板又は前記板部材の製作時において同時一体成形によって形成されていることを特徴とする請求項2に記載のカメラ用絞り装置。
【請求項4】
前記地板に設けられている前記複数の舌片が、前記絞りリングを前記地板に対して回転可能に取り付けるために前記地板に設けられている複数の取付片でもあるようにしたことを特徴とする請求項2又は3に記載のカメラ用絞り装置。
【請求項5】
前記板部材が、前記地板と補助地板との間に配置されていて、前記地板と該補助地板の間にもう一つの羽根室を構成し、該羽根室内にはシャッタ羽根を配置することによって、シャッタ装置と共に一つのユニットとして構成されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載のカメラ用絞り装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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