説明

カメラ

【課題】無駄な電力消費や発熱を防止することができるカメラを提供する。
【解決手段】プロジェクタユニット20の投影中に、投影レンズ103の正面が塞がれているか否かを撮影レンズ101を介して被写体像を取得する撮像素子の出力に基づいて判定し、投影レンズ103の正面が塞がれていると判定されたとき、プロジェクタユニット20の光源21を消灯する制御回路30を採用した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、カメラ等から映像信号が出力されていない場合、投影用のランプを自動的に消灯する投射型表示装置が知られている(下記公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−133880号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
電源スイッチを切り忘れた状態で投射型表示装置をケースやかばんに収納したり、外部から加わった力によって、ケースやかばんに収納されている投射型表示装置の電源スイッチが入ってしまったりした場合、ユーザの知らない間に電池の放電が進み、無駄な電力の消費や発熱を招くという問題がある。
【0005】
この発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、その課題は無駄な電力消費や発熱を防止することができるカメラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するため請求項1記載の発明は、撮影レンズを介して被写体像を取得する撮像手段と、投影レンズと投影用の光源とを有するプロジェクタと、前記プロジェクタによる投影中に、前記投影レンズの正面が塞がれているか否かを判定する判定手段と、前記判定手段によって前記投影レンズの正面が塞がれていると判定されたとき、前記光源を消灯させる消灯制御手段とを備えていることを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載のカメラにおいて、前記判定手段は、前記撮像手段の出力に基づいて前記投影レンズの正面が塞がれた否かを判定することを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項2記載のカメラにおいて、前記撮像手段の出力は前記被写体像の明度又はコントラストに応じた情報であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項2記載のカメラにおいて、前記撮像手段の出力は前記撮影レンズと前記投影レンズとの視差情報であることを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載のカメラにおいて、前記判定手段は、前記撮影レンズと前記被写体との距離を検出するオートフォーカス手段の検出結果に基づいて前記投影レンズの正面が塞がれているか否かを判定することを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか1項記載のカメラにおいて、前記撮影レンズの光軸と前記投影レンズの光軸とはほぼ平行であることを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか1項記載のカメラにおいて、音及び光の少なくとも一方を出力する警告手段を備えていることを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項7記載のカメラにおいて、前記消灯制御手段は、前記光源を消灯させる前、消灯させる時又は消灯させた後に前記警告手段を駆動することを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項記載のカメラにおいて、前記消灯制御手段は、前記光源を消灯させた後、前記プロジェクタの電源及びカメラ本体の電源から電力の供給を停止することを特徴とする。
【0015】
請求項10に記載の発明は、請求項7又は8記載のカメラにおいて、前記消灯制御手段は、前記警告手段を駆動した後、前記プロジェクタの電源及びカメラ本体の電源から電力の供給を停止することを特徴とする。
【0016】
請求項11に記載の発明は、請求項9又は10記載のカメラにおいて、前記消灯制御手段は、前記電源から電力の供給が停止したとき、前記警告手段を駆動することを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
この発明によれば、無駄な電力消費や発熱を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1はこの発明の第1実施形態に係るカメラの斜視図である。
【図2】図2は光源点等時の電源をオフにするときのシーケンスを説明するフローチャートである。
【図3】図3はこの発明の第2実施形態に係るカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図4】図4はこの発明の第3実施形態に係るカメラの動作を説明するフローチャートである。
【図5】図5は視差と投影距離との関係を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、この発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0020】
図1はこの発明の第1実施形態に係るカメラ1の斜視図である。
【0021】
カメラ1のボディ10の正面には、撮影レンズ101と、フラッシュ光を送り出すフラッシュ窓102と、画像を投影するプロジェクタユニット(プロジェクタ)20の投影レンズ103とが設けられている。ボディ10の上面にはレリーズボタン104が設けられている。なお、図示しないが、ボディ10の背面には、LCD表示器及びズームボタン、カメラ/プロジェクタ切替えボタン等の操作部材が設けられている。また、ボディ10にはカメラ本体(図示せず)の電池(電源)40、制御回路30、プロジェクタユニット20等が収容されている。プロジェクタユニット20以外の部分がカメラ本体である。
【0022】
制御回路30は例えば1チップマイクロコンピュータ(以下マイコンという)である。制御回路30は制御プログラムに基づいて撮影動作及び投影動作の制御を行う。なお、制御プログラムは例えば制御回路30内の図示しない不揮発性メモリに格納されている。
【0023】
また、制御回路30はプロジェクタユニット20による投影中に、投影レンズ103の正面が塞がれているか否かを判定する判定手段として機能する。
【0024】
更に、制御回路30は投影レンズ103の正面が塞がれていると判定したとき、光源21を消灯させる消灯制御手段として機能する。
【0025】
撮影レンズ101は制御回路30から出力される撮影レンズ駆動信号に基づいて光軸方向へ進退駆動される。
【0026】
また、撮影レンズ101は図示しない撮像素子(撮像手段)の撮像面上に被写体を結像させる。撮像素子は受光した光の強弱に応じた電気信号を出力する。その電気信号は被写体像の明度又はコントラストに応じた情報として制御回路30へ送られる。
【0027】
投影レンズ103は制御回路30から出力される投影レンズ駆動信号に基づいて光軸方向へ進退駆動される。
【0028】
撮影時に被写体を照らす光量が少ないと露光量が不足したり、手ブレが発生したりするので、フラッシュ窓102を介してフラッシュ光を被写体に照射する。
【0029】
レリーズボタン104は、レリーズ操作を行なうための操作ボタンである。
【0030】
プロジェクタユニット20は、例えば高輝度の光を発光するLEDを用いた光源21と、制御回路30からの制御信号に基づいて画像を表示する液晶パネル(図示せず)と、液晶パネルに表示された画像をスクリーン(図示せず)に拡大する投影レンズ103等とを備えている。光源21は電源40によって駆動される。
【0031】
なお、撮影レンズ101の光軸と投影レンズ103の光軸とはほぼ平行であり、撮影方向と投影方向とが同方向である。投影レンズ103の正面又はその近傍が塞がれていないときには、プロジェクタユニット20からスクリーンに投影された投影像が撮影範囲内に入るため、たとえばかばんの中のような暗い場所であっても被写体像の明度が高くなる。これに対し、投影レンズ103の正面又はその近傍が塞がれているときには、撮影範囲内に投影像が入らないため、被写体像の明度が低くなる。したがって、投影レンズ103の正面が塞がれていることを判定できる。
【0032】
次に、図2はフローチャート及び図1に基づいてカメラ1の動作を説明する。
【0033】
図2は光源点等時の電源40をオフにするときのシーケンスを説明するフローチャートである。図2においてS1〜S10は上記シーケンスの各ステップを示す。
【0034】
まず、プロジェクタユニット20の光源21を点灯する(S1)。
【0035】
次に、撮像素子の出力に基づいて被写体像の明度が規定値以下であるか否か(プロジェクタ部20の投影中に投影レンズ103の正面が塞がれているか否か)を判定する(S2)。
【0036】
被写体像の明度が規定値以下でないとき(NO)、プロジェクタユニット20の投影中に投影レンズ103の正面が塞がれていないと判定し、所定時間(この実施形態では60秒)間待機する(S3)。所定時間が経過した後、ステップS2へ戻り、再度被写体像の明度が規定値以下であるか否かを判定する。所定時間待機することによって所定のシーケンスを繰り返すことにより生じる消費電力の増加を抑制することができる。
【0037】
被写体像の明度が規定値以下であるとき(YES)、プロジェクタユニット20による投影中に投影レンズ103の正面が塞がれていると判定し、1秒間待機する(S4)。
【0038】
その後、カウンタ(図示せず)に1を加算する(S5)。なお、カウンタのカウント数はシーケンス開始時に予め“0”にクリアされている。カウンタを用いることによって、一時的に投影レンズ103の正面が塞がれたような場合(例えば指で投影レンズ103の正面を塞いでしまったような場合)に、電池40からの電力供給が停止することを防ぐことができる。
【0039】
次に、カウンタによるカウント数が10であるか否かを判定する(S6)。カウント数が所定の値(例えば10)にならないとき(NO)、ステップS2〜S6の処理を繰り返す。
【0040】
カウント数が所定の値に達したとき(YES)、電池40からの電力供給が停止することを警告する(S7)。警告の方法としては、例えばスピーカ(図示せず)から警告音を発したり、LEDを点滅させたり、LCD表示器に例えば「電池からの電力供給が停止されます」等の情報を表示させたりする方法や、それらの方法を適宜組み合わせた警告方法がある。なお、警告用のLEDとしては、電池40がオンであることを示すLED、フラッシュ装置の充電を示すLED、オートフォーカスの補助光としてのLEDのいずれを用いてもよい。したがって、スピーカ、LED、LCD表示器が請求項7の警告手段として機能する。
【0041】
その後、電池40からの電力供給の停止を回避する回避信号の入力があった(ON)か否かを判定する(S8)。回避信号は例えばユーザがボディ10に設けられたスイッチ(図示せず)を押すことによって入力される。
【0042】
回避信号がオンであるとき(YES)、ステップS3へ戻る。
【0043】
回避信号がオンでないとき(NO)、プロジェクタユニット20の光源21を消灯する(S9)。
【0044】
最後に、電池40からの電力供給を停止(OFF)する(S10)。
【0045】
この実施形態によれば、カメラ1の周りの明るさに応じてプロジェクタユニット20の光源21をオン・オフ制御するので、無駄な電力消費や発熱を防止することができる。また、光源21を消灯した後、電池40の電力供給も停止されるので、電力消費や発熱をより低減することができる。
【0046】
なお、上記実施形態では光源21を消灯させる前に警告を行ったが、消灯させる時又は消灯させた後に警告を行ってもよい。
【0047】
また、電池40の電力供給を停止するステップS10の後に、音又は光による警告を再度行うようにしてもよい。
【0048】
更に、上記実施形態では被写体像の明度に基づいて投影レンズ103の正面が塞がれたか否かを判定したが、被写体像のコントラストに基づいて判定してもよい。
【0049】
図3はこの発明の第2実施形態に係るカメラ1の動作を説明するフローチャート、図5は視差と投影距離との関係を示す図である。図5(a)はカメラ1を正面、平面及び側面から見た図である。図5(b)は撮影範囲と投影範囲との関係を示す図である。図3においてS21〜S30はプロジェクタユニット20の光源点等時の電源40をオフするときのシーケンスの各ステップを示す。
【0050】
この実施形態は、撮像素子の出力から得られた撮影レンズ101と投影レンズ103との視差情報に基づいて投影レンズ103の正面が塞がれたか否かを判定するようにした(ステップ22)点で、第1実施形態と相違する。なお、ステップ22以外のステップ(S21、S23〜S30)は第1実施形態のステップS21、S23〜S30と同じであるのでその説明を省略する。
【0051】
一般に、撮影画像の高さをY、撮影範囲内での撮影範囲の中心位置から投影範囲の中心位置までの距離をy、撮影レンズと投影レンズとの間の距離をd、撮影画角を2θ、投影面であるスクリーン(図示せず)までの距離をlとしたとき、撮影レンズの光軸と投影レンズの光軸とが平行であるとき、数式1の関係が成り立つ。
【0052】
【数1】

【0053】
次に、視差情報に基づいて投影レンズ103の正面が塞がれたか否かを判定できる理由を図5(a),(b)を参照して説明する。
【0054】
θ、dは既知の値であるから、スクリーンの位置A,B,Cまでの距離lをlA,B,Cとしたとき、撮影範囲R1の中心に対する投影範囲R2の中心のズレ量yA,B,Cは、以下の数式2〜数式4で知ることができる。
【0055】
【数2】

【数3】

【数4】

【0056】
上記数式2〜4からズレ量yA,B,Cが分かればスクリーンの位置までの距離lA,B,Cを求められることがわかる。上記式2〜4によれば、ズレ量yA,B,Cはカメラ1からスクリーンの位置までの距離lA,B,Cに反比例し、カメラ1からスクリーンまでの距離lが短くなるにつれてズレ量yが大きくなることがわかる(図5(b)参照)。
【0057】
投影レンズ103の正面が塞がれる場合をスクリーンの位置までの距離lが所定値(例えば位置lD)以下のときと定義する。このときの撮影範囲R1と投影範囲R2との間のズレ量yをyS(yS>yA)とした場合、投影レンズ103の正面が塞がれるのはズレ量yがyS以上になるときであることがわかる。すなわち、撮影範囲R1と投影範囲R2との間のズレ(視差)からプロジェクタユニット20の正面が塞がれていることを判定できることがわかる。
【0058】
図4はこの発明の第3実施形態に係るカメラ1の動作を説明するフローチャートである。図4においてS31〜S31はプロジェクタユニット20光源点等時の電源40をオフするときのシーケンスの各ステップを示し、第1実施形態と共通する部分はその説明を省略する。
【0059】
この実施形態は、投影レンズ103と被写体(図示せず)との距離を検出するAFセンサ(オートフォーカス手段)(図示せず)で検出された検出結果(合焦位置までの距離情報)に基づいて投影レンズ103の正面が塞がれたか否かを判定するようにした点で、第1実施形態と相違する。
【0060】
図4に示すように、まず、プロジェクタユニット20の光源21を点灯する(S31)。
【0061】
次に、カメラ1のAF機能を使用できるか否かを判定する(S32)。カメラ1のAF機能を使用できないとき(NO)、ステップ34へ進む。
【0062】
カメラ1のAF機能を使用できるとき(YES)、AF焦点範囲が規定値以下であるか否かを判定する(S33)。
【0063】
AF焦点範囲が規定値以下でないとき(NO)、プロジェクタユニット20による投影中に投影レンズ103の正面が塞がれていないと判定し、所定時間(この実施形態では60秒)間待機する(S35)。所定時間が経過した後、ステップS2へ戻り、AF焦点範囲が規定値以下であるか否かを再度判定する。
【0064】
AF焦点範囲が規定値以下であるとき(YES)、プロジェクタユニット20による投影中に投影レンズ103の正面が塞がれていると判定し、1秒間待機する(S34)。
【0065】
その後のステップ36〜41で第1実施形態のステップ5〜10と同じ処理を行う。
【0066】
なお、ステップ32,33,34,36,37の処理をステップ39の前又は後で行うようにしてもよい。
【0067】
この実施形態によれば、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0068】
なお、被写体像の明度又はコントラストに応じた情報、撮影レンズ101と投影レンズ103との視差情報及びAFセンサの検出結果を組み合わせて、投影レンズ103の正面が塞がれていることを判定するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0069】
1:カメラ、21:光源、101:撮影レンズ101,103:投影レンズ、20:プロジェクタユニット(プロジェクタ)、40:電池(電源)、30:制御回路。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮影レンズを介して被写体像を取得する撮像手段と、
投影レンズと投影用の光源とを有するプロジェクタと、
前記プロジェクタによる投影中に、前記投影レンズの正面が塞がれているか否かを判定する判定手段と、
前記判定手段によって前記投影レンズの正面が塞がれていると判定されたとき、前記光源を消灯させる消灯制御手段と
を備えていることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
前記判定手段は、前記撮像手段の出力に基づいて前記投影レンズの正面が塞がれた否かを判定することを特徴とする請求項1記載のカメラ。
【請求項3】
前記撮像手段の出力は前記被写体像の明度又はコントラストに応じた情報であることを特徴とする請求項2記載のカメラ。
【請求項4】
前記撮像手段の出力は前記撮影レンズと前記投影レンズとの視差情報であることを特徴とする請求項2記載のカメラ。
【請求項5】
前記判定手段は、前記撮影レンズと前記被写体との距離を検出するオートフォーカス手段の検出結果に基づいて前記投影レンズの正面が塞がれているか否かを判定することを特徴とする請求項1記載のカメラ。
【請求項6】
前記撮影レンズの光軸と前記投影レンズの光軸とはほぼ平行であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項記載のカメラ。
【請求項7】
音及び光の少なくとも一方を出力する警告手段を備えていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項記載のカメラ。
【請求項8】
前記消灯制御手段は、前記光源を消灯させる前、消灯させる時又は消灯させた後に前記警告手段を駆動することを特徴とする請求項7記載のカメラ。
【請求項9】
前記消灯制御手段は、前記光源を消灯させた後、前記プロジェクタの電源及びカメラ本体の電源から電力の供給を停止することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項記載のカメラ。
【請求項10】
前記消灯制御手段は、前記警告手段を駆動した後、前記プロジェクタの電源及びカメラ本体の電源から電力の供給を停止することを特徴とする請求項7又は8記載のカメラ。
【請求項11】
前記消灯制御手段は、前記電源から電力の供給が停止したとき、前記警告手段を駆動することを特徴とする請求項9又は10記載のカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−161518(P2010−161518A)
【公開日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−1231(P2009−1231)
【出願日】平成21年1月7日(2009.1.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】