説明

カメラ

【課題】動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影する。
【解決手段】焦点調節手段により測距、演算および駆動とを繰り返し実行させながら、画像生成手段により記録用動画を生成させる動画撮影モード、または画像生成手段により表示用画像を生成させるライブビューモードを実行する制御手段とを備え、制御手段は、動画撮影モードまたはライブビューモードの実行中であって、焦点調節手段による演算または駆動の実行中に静止画撮影操作がなされた場合には、焦点調節手段により測距、演算および駆動を実行させた後に画像生成手段により静止画を生成させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカメラに関する。
【背景技術】
【0002】
動画撮影中に静止画撮影を行うようにしたカメラが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−111878号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来のカメラでは、動画撮影中に静止画撮影指令が入ったら動画撮影シーケンスを変えずにそのまま静止画撮影シーケンスに移行するため、静止画撮影に最適なタイミングで測距が行われるとは限らず、常にピントの合った静止画を撮影できるものではない。
【課題を解決するための手段】
【0005】
撮像用画素と焦点検出用画素とが配列された撮像素子と、撮像素子に被写体像を結像させる撮影光学系と、焦点検出用画素により撮影光学系の焦点状態を示す信号を検出する測距と、測距結果の信号に基づいて撮影光学系の焦点状態を検出する演算と、演算結果の焦点状態に基づいて撮影光学系の焦点調節を行う駆動とを順に実行する焦点調節手段と、撮像用画素の出力に基づいて画像を生成する画像生成手段と、焦点調節手段により測距、演算および駆動とを繰り返し実行させながら、画像生成手段により記録用動画を生成させる動画撮影モード、または画像生成手段により表示用画像を生成させるライブビューモードを実行する制御手段とを備え、制御手段は、動画撮影モードまたはライブビューモードの実行中であって、焦点調節手段による演算または駆動の実行中に静止画撮影操作がなされた場合には、焦点調節手段により測距、演算および駆動を実行させた後に画像生成手段により静止画を生成させる。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】一実施の形態のカメラの構成を示す図
【図2】一実施の形態のカメラの撮影画面に設定された十字型焦点検出領域を示す図
【図3】図2に示す十字型焦点検出領域の内の横(撮影画面4aの長辺方向)領域における撮像用画素R、G、Bと焦点検出用画素S1、S2の受光領域の配置を示す部分拡大図
【図4】図2に示す十字型焦点検出領域の内の縦(撮影画面4aの短辺方向)領域における撮像用画素R、G、Bと焦点検出用画素S3、S4の受光領域の配置を示す部分拡大図
【図5】従来のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中のAF(Auto Focus)動作を示すタイミングチャート
【図6】従来のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作を示すタイミングチャート
【図7】一実施の形態のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作を示すタイミングチャート
【図8】一実施の形態のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の他の静止画撮影動作を示すタイミングチャート
【図9】上下走行方式のフォーカルプレーンシャッターにおける後幕の走行による焦点検出領域a、kの遮光タイミングを示す図
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、一実施の形態のカメラの構成を示すブロック図である。なお、図1では本発明と直接、関係のないカメラの機器および回路の図示と説明を省略する。図1において、カメラ1は撮影レンズ2、シャッター3、撮像素子4、AFE(Analog Front End)回路5、画像処理回路6、位相差AF回路7、シャッター駆動回路8、レンズ駆動回路9、操作部材10、メモリ11、モニター12、メモリカード13、インターフェース14、コントローラー15などを備えている。
【0009】
撮影レンズ2は単レンズとして図示しているが、ズーミングレンズやフォーカシングレンズを含む複数のレンズ群で構成され、シャッター3を介して被写体像を撮像素子4の撮像面上に結像させる。シャッター3はフォーカルプレーンシャッターであり、図示しない先幕と後幕を有する。撮像素子4は、受光面に複数の画素が二次元状に配列されたCMOSイメージセンサなどから構成され、撮影レンズ2により結像された被写体像を光電変換してアナログ画像信号を出力する。
【0010】
図2はカメラ1の撮影画面4aを示す図である。撮影画面4aに対応する撮像素子4の撮像面には、複数の撮像用画素と焦点検出用画素とが二次元状に配列され、これらの画素はそれぞれマイクロレンズと受光部を備えている。この一実施の形態では、撮影画面4aの中央部の11カ所に十字型の焦点検出領域a〜kが設定されている。
【0011】
撮像用画素は撮影画面4aの全域にベイヤー配列され、撮影レンズ2(図1参照)の射出瞳を通る光を受光して被写体像に応じた画像信号を出力する。一方、焦点検出用画素は、撮影画面4aの中央に各焦点検出領域a〜kに対応して十字型の領域に配列され、撮影レンズ2の一部の領域を通る光を受光して撮影レンズ2の焦点調節状態を示す焦点検出信号を出力する。
【0012】
図3は、十字型焦点検出領域の内の横(撮影画面4aの長辺方向)領域における撮像用画素R、G、Bと焦点検出用画素S1、S2の受光領域の配置を示す部分拡大図である。また、図4は、十字型焦点検出領域の内の縦(撮影画面4aの短辺方向)領域における撮像用画素R、G、Bと焦点検出用画素S3、S4の受光領域の配置を示す部分拡大図である。図3および図4において、縦横のラインで囲まれた各“マス”は撮像用画素または焦点検出用画素の領域を示す。各マスの中の実線で示す正方形および長方形はマスク開口部を示し、これらのマスク開口部を通って光が撮像用画素と焦点検出用画素の受光部に到達する。また、R、G、Bはそれぞれ撮像用赤画素、撮像用緑画素、撮像用青画素を表す。なお、図3および図4では各画素のマイクロレンズおよび受光部の図示を省略する。
【0013】
この一実施の形態では撮像用画素R、G、Bの受光領域(マスク開口部)の形状を正四角形とした例を示すが、撮像用画素R、G、Bの受光領域の形状は正四角形に限定されず、例えば円形としてもよい。
【0014】
また、この一実施の形態では焦点検出用画素S1〜S4の受光領域(マスク開口部)の形状を、撮像用画素R、G、Bの受光領域(マスク開口部)を縦または横に略二分した長方形とした例を示す。さらに、図3に示す横方向の対の焦点検出用画素S1とS2では、受光領域を画素中心に対し左と右に偏って配置する。同様に、図4に示す縦方向の対の焦点検出用画素S3とS4では、受光領域を画素中心に対し上と下に偏って配置する。
【0015】
なお、焦点検出用画素の受光領域の形状は長方形に限定されず、例えば撮像用画素の受光領域(マスク開口部)が円形の場合には、焦点検出用画素の受光領域(マスク開口部)を撮像用画素の受光領域を略二分した半円形としてもよい。
【0016】
十字型焦点検出領域の横領域では、焦点検出用画素S1とS2が一対になり、撮影レンズ2の射出瞳の一対の領域を通過した光を受光し、撮影レンズ2の横方向(撮影画面4aの長辺方向)の焦点調節状態を示す焦点検出信号を出力する。また、十字型焦点検出領域の縦領域では、焦点検出用画素S3とS4が一対になり、撮影レンズ2の縦方向(撮影画面4aの短辺方向)の焦点調節状態を示す焦点検出信号を出力する。
【0017】
なお、撮影画面4aの焦点検出領域は、撮影画面4aの中央部に設定される限りこの一実施の形態の配置に限定されない。また、焦点検出領域の個数および形状についても、この一実施の形態の個数および形状に限定されるものではない。さらに、各焦点検出領域に対応して配列される焦点検出用画素の配置もこの一実施の形態の配置に限定されるものではない。
【0018】
図1に戻り、AFE回路5はアナログ画像信号に対して相関二重サンプリングやゲイン調整などのアナログ処理を行うとともに、アナログ処理後の画像信号をデジタル画像データに変換する。画像処理回路6はデジタル画像データに対して各種の画像処理(色補間処理、階調変換処理、輪郭強調処理、ホワイトバランス調整処理、画像圧縮処理、画像伸張処理など)を施す。
【0019】
位相差AF回路7は、対の焦点検出用画素(S1,S2)、(S3,S4)から出力される焦点検出信号に基づいて、フォーカシングレンズの焦点調節状態を示すデフォーカス量を演算する。シャッター駆動回路8はシャッター3の先幕と後幕のチャージと走行を駆動制御する。レンズ駆動回路9は、撮影レンズ2のフォーカシングレンズを駆動して焦点調節を行うとともに、ズーミングレンズを駆動して焦点距離を変える。
【0020】
操作部材10には、レリーズ半押しおよび全押しスイッチ、ズームスイッチ、モードスイッチ、メニュースイッチ、十字スイッチ、OKスイッチなどの各種スイッチ類が含まれる。
【0021】
メモリ11は各種プログラムや各種情報を記憶するROM、RAMなどの記憶素子である。モニター12は、撮像素子3により撮像したスルー画像や撮影した画像と各種情報を表示するLCDである。インターフェース14は、メモリカード13に対する画像や各種情報データの書き込みや、メモリカード13からの画像や各種情報データの読み込みを行う。コントローラー15はCPUとその周辺部品から構成され、撮像、露出、焦点調節(AF)、画像表示などのカメラ1の各種動作を制御する。
【0022】
図5は、従来のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中のAF(Auto Focus)動作を示すタイミングチャートである。動画撮影中またはライブビュー動作中はシャッター3の先幕が走行完了してシャッター3が開放状態にあり、撮像素子4による撮像が繰り返し行われる。撮像素子4から繰り返し読み出された画像信号はAFE回路5と画像処理回路6により処理され、記録用画像または表示用画像が生成される。記録用画像は動画像としてメモリカード13に記録され、表示用画像はモニター12にライブビュー画像として表示される。
【0023】
動画撮影中またはライブビュー動作中にはまた、撮像素子4の焦点検出用画素S1〜S4(図3および図4参照)からAFE回路5を介して繰り返し焦点検出用信号が読み出され、測距が行われる。位相差AF回路7では焦点検出用信号に基づいて焦点検出演算が行われ、予め指定された焦点検出領域(図2参照)における撮影レンズ2の焦点調節状態(デフォーカス量)が検出され(この明細書ではこの動作を“測距”という)、焦点調節状態に基づいて撮影レンズ2の駆動量が演算される(この明細書では単に“演算”という)。レンズ駆動回路9は、撮影レンズ2の駆動量にしたがって撮影レンズ2を駆動し、焦点調節を行う(この明細書では単に“駆動”という)。
【0024】
動画撮影中またはライブビュー動作中は、上述した測距、演算および駆動からなる1AFサイクルが繰り返し実行される。なお、撮影条件によって測距、演算および駆動に要する時間は異なり、したがって撮影条件によって1AFサイクルの時間も異なる。
【0025】
図6は、従来のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作を示すタイミングチャートである。動画撮影中またはライブビュー動作中の時刻t1においてレリーズSW(レリーズ全押しスイッチ)が操作されると、図5に示す測距、演算および駆動からなるAFサイクルを停止した後、時刻t2でシャッター3の後幕を走行させてシャッター3を閉じ、後幕走行完了後にシャッターチャージを行う。シャッターチャージ完了後の時刻t3で撮影を開始し、まずシャッター3の先幕を走行させた後、設定シャッター秒時後にシャッター3の後幕を走行させ、時刻t4で撮影を完了する。
【0026】
このように、従来のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作では、シャッターがレリーズされると測距、演算および駆動からなるAFサイクル動作を停止し、後幕走行とシャッターチャージを含む撮影準備時間後に撮像素子4により静止画を撮像している。図6に示す例では、レリーズ直前の測距結果に基づく演算と駆動は実行されないので、それ以前のAFサイクルにおける焦点調節状態で静止画撮影が行われる。つまり、AFサイクルにおけるレンズ駆動が完了してから実際に静止画撮影が開始されるまでの間は焦点調節が行われないため、例えば図6に示すようにAFサイクルの演算終了間際にシャッターがレリーズされると、AFサイクルで焦点調節を行ってから静止画撮影までの時間が長くなる。そのため、この間に被写体の移動、画角の変化、手ブレなどが発生する可能性が高くなり、意図する主要被写体に対するピントがずれてしまうことがある。
【0027】
なお、AFサイクルのレンズ駆動中にシャッターレリーズがあった場合にも、直ちにレンズ駆動を停止して静止画撮影の準備に入るため、主要被写体に完全にピントが合わない状態で静止画撮影が行われ、意図する主要被写体に対するピントがずれてしまう。
【0028】
図7は、一実施の形態のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作を示すタイミングチャートである。動画撮影中またはライブビュー動作中の時刻t1においてレリーズSW(レリーズ全押しスイッチ)が操作されると、実行中のAFサイクルの動作(図7に示す例では演算)を停止し、改めてAFサイクルを開始して測距、演算および駆動を実施する。測距後の時刻t2において、AFサイクルの演算と駆動を開始するとともに、シャッター3の後幕を走行させ、後幕走行完了後にシャッターチャージを行う。そして、レンズ駆動とシャッターチャージの完了後の時刻t3において静止画撮影を開始し、まずシャッター3の先幕を走行させた後、設定シャッター秒時後にシャッター3の後幕を走行させ、時刻t4で撮影を完了する。
【0029】
なお、図7では動画撮影中またはライブビュー動作中であって、AFサイクルの“演算”中にレリーズSWが操作された場合について図示と説明を行ったが、AFサイクルの“駆動”中にレリーズSWが操作された場合も同様に、実行中のAFサイクルの駆動を停止し、改めてAFサイクルを開始して測距、演算および駆動を実施する。
【0030】
このように、一実施の形態のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の静止画撮影動作では、AFサイクルの演算または駆動中にシャッターがレリーズされると実行中のAFサイクル動作を停止し、改めて測距、演算および駆動からなるAFサイクル動作を開始するとともに、新しいAFサイクルの演算と駆動の動作と並行してシャッター後幕走行とシャッターチャージを含む撮影準備を行い、それらの動作完了後に撮像素子4により静止画を撮像する。このため、AFサイクルによる主要被写体に対する焦点調節が行われた直後に静止画撮影が実行されることになり、動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影することができる。
【0031】
なお、図7に示す一実施の形態のカメラの静止画撮影動作において、AFサイクルにおける測距中または測距終了直後にシャッターがレリーズされた場合には、改めて測距からAFサイクルを開始せずに、測距結果を利用して演算と駆動を行うとともに、それらの動作と並行してシャッター後幕の走行とシャッターチャージを行い、レンズ駆動とシャッターチャージの完了後に静止画撮影を行う。実行中のAFサイクルの測距を停止してシャッターレリーズ後に改めて測距からAFサイクルを開始する場合に比べ、測距動作が不要となってレリーズタイムラグが減少し、動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影することができる。
【0032】
《一実施の形態の変形例》
図8は、一実施の形態のカメラにおける動画撮影中またはライブビュー動作中の変形例の静止画撮影動作を示すタイミングチャートである。上述した一実施の形態では、シャッターレリーズ後に強制的にAFサイクル動作を最初から実行する例を示したが、この変形例では、繰り返し実行されるAFサイクル動作の途中でシャッターレリーズがあると、そのAFサイクル動作後の次のAFサイクル動作と並行して撮影準備動作を行い、次のAFサイクル動作と撮影準備動作の完了後に静止画撮影を行う。
【0033】
図8に示すように、AFサイクルの演算途中の時刻t1においてレリーズSW(レリーズ全押しスイッチ)が操作されると、実行中のAFサイクル動作をそのまま継続し、次のAFサイクルの測距後の時刻t2において、AFサイクルの演算と駆動を開始するとともに、シャッター3の後幕を走行させ、後幕走行完了後にシャッターチャージを行う。そして、レンズ駆動とシャッターチャージの完了後の時刻t3において静止画撮影を開始し、まずシャッター3の先幕を走行させた後、設定シャッター秒時後にシャッター3の後幕を走行させ、時刻t4で撮影を完了する。
【0034】
なお、図8ではAFサイクルの演算中にシャッターレリーズがあった場合の図示と説明を行ったが、AFサイクルの駆動中にシャッターレリーズがあった場合も同様に、実行中のAFサイクル動作をそのまま継続し、次のAFサイクル動作と並行して撮影準備動作を行い、次のAFサイクル動作と撮影準備動作の完了後に静止画撮影を行う。
【0035】
一方、図8に示すカメラの変形例の静止画撮影動作において、AFサイクルにおける測距中または測距終了直後にシャッターがレリーズされた場合には、次のAFサイクルまで待たずに測距結果を利用して演算と駆動を行うとともに、それらの動作と並行してシャッター後幕の走行とシャッターチャージを行い、レンズ駆動とシャッターチャージの完了後に静止画撮影を行う。次のAFサイクルを実行した後に静止画撮影を行う場合に比べ、1回のAFサイクル動作が省略されてレリーズタイムラグが減少し、動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影することができる。
【0036】
このように、動画撮影中またはライブビュー動作中の変形例の静止画撮影動作では、AFサイクルの演算または駆動中にシャッターがレリーズされると実行中のAFサイクル動作をそのまま継続し、次のAFサイクルの演算と駆動の動作と並行してシャッター後幕走行とシャッターチャージを含む撮影準備を行い、それらの動作完了後に撮像素子4により静止画を撮像する。このため、AFサイクルによる主要被写体に対する焦点調節が行われた直後に静止画撮影が実行されることになり、動画撮影中またはライブビュー動作中にピントの合った静止画を撮影することができる。
【0037】
《一実施の形態の他の変形例》
図7および図8に示す上述した一実施の形態とその変形例では、シャッターレリーズ後に測距を行い、測距完了時刻t2にシャッター3の後幕を走行させるタイミングとした。ところで、図2に示すように、撮影画面4aの広い範囲に亘って複数の焦点検出領域a〜kを展開した場合、焦点検出領域ごとにシャッター後幕により遮光されるタイミングが異なる。
【0038】
図9は、上下走行方式のフォーカルプレーンシャッター3における後幕3aの走行による焦点検出領域a、kの遮光タイミングを示す。図2に示す撮影画面4aの上部にある焦点検出領域aはシャッター後幕3aの係止位置に近いため、シャッター後幕3aの係止が解除されて走行を開始した後、すぐに遮光される。これに対し、図2に示す撮影画面4aの下部にある焦点検出領域kはシャッター後幕3aの係止位置から遠い位置にあり、シャッター後幕3aの係止が解除されて走行を開始してから遮光されるまでに時間がかかる。
【0039】
そこで、カメラまたは撮影者によって指定される焦点検出領域の撮影画面内の位置に応じて、後幕走行開始のタイミング、すなわち図7および図8における時刻t2を可変にしてもよい。つまり、静止画撮影に先立ち撮像素子を遮光するために走行するシャッター幕(この一実施の形態ではシャッター後幕)が、係止解除から焦点検出領域の焦点検出用画素を遮光するまでの時間だけ時刻t2を繰り上げて早くしてもよい。シャッター幕の係止位置から遠い焦点検出領域が焦点検出用として指定された場合には、シャッター幕の走行タイミングを繰り上げて早くしても、シャッター幕が走行を開始して指定された焦点検出領域に達するまでに時間がかかるので、指定された焦点検出領域に到達するまでにその焦点検出領域において測距を完了させることができる。
【0040】
このように、使用する焦点検出領域の位置に応じてシャッター幕の走行開始タイミングを変更することによって、使用する焦点検出領域に応じた最適な静止画撮影のための撮影準備時間を設定することができる。
【0041】
《一実施の形態の他の変形例》
上述した一実施の形態とその変形例では、先幕と後幕を有するメカニカルなフォーカルプレーンシャッターと、撮像素子上の全画素同時に撮像を行う電子的なグローバルシャッターとを用いた例を示したが、撮像素子上の1行または数行ごとに撮像を行うローリングシャッター(電子シャッター)を用いたカメラに対しても本発明を適用することができる。このローリングシャッターを用いる場合でも、先幕と後幕を備えたフォーカルプレーンシャッターに代えて1枚幕により構成されるメカニカルシャッターが用いられ、撮影前にいったん遮光して撮像素子をリセットする動作を実行する。例えば図7、図8に示す例では、時刻t2からの後幕走行に代えて1枚幕を走行させ、撮像素子へ入射する光をいったん遮光して撮像素子をリセットする。その後、時刻t3の撮影開始直前に1枚幕を開けて撮像素子へ被写体光を導き、撮像素子による撮像を行う。
【0042】
なお、上述した実施の形態とそれらの変形例において、実施の形態と変形例とのあらゆる組み合わせが可能である。上述した一実施の形態とその変形例では、カメラに静止画撮影を指令する操作部材としてレリーズ全押しスイッチを用いた例を示したが、レリーズ全押しスイッチ以外の例えば専用のスイッチを設けてもよい。また、上述した実施の形態とその変形例では、静止画撮影後は動画撮影またはライブビュー動作を停止する例を示したが、静止画撮影後に動画撮影またはライブビュー動作を再開するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1;カメラ、2;撮影レンズ、3;シャッター、3a;後幕、4;撮像素子、5;AFE回路、6;画像処理回路、7;位相差AF回路、8;シャッター駆動回路、9;レンズ駆動回路、10;操作部材、15;コントローラー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像用画素と焦点検出用画素とが配列された撮像素子と、
前記撮像素子に被写体像を結像させる撮影光学系と、
前記焦点検出用画素により前記撮影光学系の焦点状態を示す信号を検出する測距と、前記測距結果の前記信号に基づいて前記撮影光学系の焦点状態を検出する演算と、前記演算結果の焦点状態に基づいて前記撮影光学系の焦点調節を行う駆動とを順に実行する焦点調節手段と、
前記撮像用画素の出力に基づいて画像を生成する画像生成手段と、
前記焦点調節手段により前記測距、前記演算および前記駆動とを繰り返し実行させながら、前記画像生成手段により記録用動画を生成させる動画撮影モード、または前記画像生成手段により表示用画像を生成させるライブビューモードを実行する制御手段とを備え、
前記制御手段は、前記動画撮影モードまたは前記ライブビューモードの実行中であって、前記焦点調節手段による前記演算または前記駆動の実行中に静止画撮影操作がなされた場合には、前記焦点調節手段により前記測距、前記演算および前記駆動を実行させた後に前記画像生成手段により静止画を生成させることを特徴とするカメラ。
【請求項2】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記制御手段は、前記焦点調節手段により実行中の前記演算または前記駆動を停止させ、前記焦点調節手段により改めて前記測距、前記演算および前記駆動を実行させた後に前記画像生成手段により静止画を生成させることを特徴とするカメラ。
【請求項3】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記制御手段は、前記焦点調節手段により実行中の前記演算と前記駆動または前記駆動を終了させ、前記焦点調節手段により次の前記測距、前記演算および前記駆動を実行させた後に前記画像生成手段により静止画を生成させることを特徴とするカメラ。
【請求項4】
請求項1に記載のカメラにおいて、
前記制御手段は、前記動画撮影モードまたは前記ライブビューモードの実行中であって、前記焦点調節手段による前記測距の実行中に静止画撮影操作がなされた場合には、前記焦点調節手段により実行中の前記測距を終了させて前記演算および前記駆動を実行させた後に前記画像生成手段により静止画を生成させることを特徴とするカメラ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のカメラにおいて、
前記撮影光学系と前記撮像素子との間にシャッターが設けられるとともに、前記焦点検出用画素は撮影画面に設定された複数の焦点検出領域のそれぞれに配列されており、
前記制御手段は、前記複数の焦点検出領域の内の焦点検出用として指定された焦点検出領域の撮影画面内の位置に応じて、前記静止画撮影の前に前記シャッターにより前記撮像素子を遮光するタイミングを変更することを特徴とするカメラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−83772(P2013−83772A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223136(P2011−223136)
【出願日】平成23年10月7日(2011.10.7)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】