説明

カラオケマイクおよびカラオケシステム

【課題】カラオケ歌唱時におけるカラオケ歌唱者の緊張度を測定し、歌唱者の歌唱力の判断要素にするとともに歌唱者のメンタル状態を判断できるようにし、カラオケシステムの機能を向上する。
【解決手段】カラオケ歌唱者の歌唱音声をカラオケマイクによりカラオケ演奏装置へ転送するカラオケシステムであり、人体の振動を検出する振動検出手段を備えたカラオケマイクと、当該振動検出手段により検出した信号をカラオケ演奏装置へ転送する転送手段と、を備えたカラオケマイクと、前記振動検出手段の検出信号から人体固有振動に相当する周波数成分を抽出する信号濾過手段と、前記信号濾過手段を介して得られた抽出信号を予め設定した基準値と比較して緊張度を判定する判定手段と、前記判定手段による判定結果をカラオケ歌唱者が歌唱するカラオケ楽曲の演奏中あるいは演奏後に通知する表示手段と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラオケシステムの利用者がカラオケ楽曲を歌唱中に生じる緊張度を検出し、その緊張度から歌唱力の判定、あるいはメンタル状態の把握が可能となるようにしたカラオケマイクおよびこのカラオケマイクを利用したカラオケシステムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年のカラオケシステムはきわめて多機能となり、楽曲の統計処理や歌唱者の歌唱力を評価する採点システムなどが搭載され、娯楽性の向上が図られている。また、歌唱者の生体的状態を把握するシステムとして、例えば、歌唱中の歌唱者のアルコール濃度の高低を検出する機能の提案もある。
【0003】
これは、歌唱者から発生する呼気に含まれるアルコール成分を検知するための半導体ガスセンサと、この半導体ガスセンサにより検知されたアルコール成分の濃度を測定する測定手段と、この測定手段により測定された測定データをカラオケ演奏装置へ転送する転送手段を備えたカラオケマイクによりなされる。
【0004】
かかるカラオケシステムでは、飲酒量(生体中のアルコール濃度)を歌唱者に認識されることなく検知して測定し、その測定結果を歌唱者に通知することができ、これにより歌唱者は歌唱時点での飲酒量を把握することができることから、以後の飲酒量の調整が可能となるようにしている(例えば、特許文献1)。
【特許文献1】特開2005−242062号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来のカラオケシステムは、歌唱者の飲酒による生体の変化を検出するようにしたものであるが、歌唱者に無意識に生じる心理現象(メンタル状態)を検出するものではない。ところで、一般にカラオケシステムによるカラオケ楽曲の歌唱は、その娯楽性により緊張を解すものであるが、歌唱により形成される心理的状態には個人差があり、却って心理的緊張を高める歌唱者もある。例えば、自身の歌唱レパートリーにないカラオケ楽曲を歌唱する場合、あるいは不慣れな場で歌唱する場合などは、多少なりとも緊張を伴うものである。
【0006】
通常、人が不安もしくは緊張状態に陥ると、人体はストレスを受け、血液が人体の末端部から重要な体内器官に集まり、このため手が冷たくなったり、微細に震えるなどの生理現象を生ずる。特に、後者の生理現象を利用し、例えば、特許第2960275号では、座席やベッド等の人体を支持する機器に、人体の振動状態を検出する振動検出手段を設け、人の緊張度を判定する判定手段からなる緊張度判定装置が想到されている。また、特開平9−117440号では、微小振動を手や指先といった人体の末端部で測定するストレス度測定装置が想到されている。そして、このような緊張状態は歌唱力に影響を与えることから、この緊張度を歌唱者の歌唱能力の採点要素とすることができ、メンタル状態の把握が可能となる。
【0007】
本発明は、上記したようなカラオケ歌唱時における歌唱者の緊張度を検出し、歌唱者の歌唱力の判断要素となるようにするとともに、歌唱時のメンタル状態を判断できるようにするものであり、カラオケシステムに新たな機能を付加することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
そこで本発明は、以下に述べる各手段により上記課題を解決するようにした。即ち、請求項1記載の発明では、人体の振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段により検出した信号をカラオケ演奏装置へ転送する転送手段をカラオケマイクに備える。
【0009】
請求項2記載の発明では、カラオケ歌唱者の歌唱音声をカラオケマイクによりカラオケ演奏装置へ転送するカラオケシステムであり、請求項1記載のカラオケマイクと、前記振動検出手段の検出信号から人体固有振動に相当する周波数成分を抽出する信号濾過手段と、前記信号濾過手段を介して得られた抽出信号を予め設定した基準値と比較して緊張度を判定する手段と、前記判定手段による判定結果をカラオケ歌唱者が歌唱するカラオケ楽曲の演奏中あるいは演奏後に通知する表示手段と、を備える。
【0010】
請求項3記載の発明では、上記請求項2記載の発明において、特定のカラオケ歌唱者による特定のカラオケ楽曲の歌唱時に、当該歌唱者による当該楽曲の歌唱時の緊張度を示す履歴データを読み出して歌唱中の緊張度の程度を判定する。
【0011】
請求項4記載の発明では、上記請求項2記載の発明において、緊張度の判定結果をメッセージ、画像、アニメーションなどにより表示する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、カラオケ歌唱時にカラオケ歌唱者の緊張度を測定することができ、歌唱者の歌唱力の判断要素とすることができるとともに、歌唱時のメンタル状態を判断することができ、カラオケシステムの機能を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
図1は、本発明のカラオケマイク1の断面図であり、符号2はマイクヘッドに収容されたマイクユニットを示し、カラオケ歌唱者の歌唱音声が電気信号に変換される。この電気信号はリード線2aを介して信号処理ユニット3に入力する。また、符号4は振動検出ユニットであり、出力される電気信号はリード線4aを介して前記信号処理ユニット3に入力する。
【0014】
前記信号処理ユニット3へ入力し、マイクユニット2および振動検出ユニット4の電気信号に所定の処理を施した信号はリード線3aを介して転送処理ユニット5へ出力し、該転送処理ユニット5は歌唱音声データおよび振動データをアンテナ(または、ケーブル)6を介してカラオケ演奏装置へ送出する。なお、符号7は、前記信号処理ユニット3、振動検出ユニット4、転送処理ユニット5へ電力を供給するための電池である。
【0015】
前記振動検出ユニット4は加速度センサーなどを主体に構成されるもので、カラオケマイク1に加わった微小振動を電気信号に変換して出力する。この振動検出ユニット4により検出された電気信号は、図2に示す信号処理ブロックAにより処理され振動スペクトルが生成される。即ち、同図において、振動検出ユニット4より出力された振動に伴う信号は増幅器A1により増幅され、フィルター(信号濾過手段)A2により抽出された所定の帯域の周波数成分がA/D変換器A3に入力してデジタル信号化された後、フーリエ変換器A4によりフーリエ変換され、振動スペクトルが得られる。
【0016】
このようにして信号処理を行うようにしたことから、例えば、振動スペクトルから人体の固有振動に相当する周波数成分(例えば、20〜35Hz)の領域を抽出し、その振動の強度からカラオケ歌唱者の緊張度を測定することが可能となる。即ち、人体の脈波間隔、微小振動は人体の疲労と深く関係し、自律神経失調症の指標ともされていることから、振動スペクトルの振動強度からカラオケ歌唱者の緊張度を測定、メンタル状態の判断が可能となる。
【0017】
以上のように構成される信号処理ブロックAをカラオケマイク1に設けた場合は、ここで生成された振動スペクトルを歌唱音声信号とともにカラオケ演奏装置に転送するようにする。また、信号処理ブロックAをカラオケ演奏装置に設ける場合は、カラオケマイク1に振動検出ユニット4のみを設け、この振動検出ユニット4から出力された検出信号を歌唱音声信号とともにカラオケ演奏装置に転送する。
【0018】
つぎに、本発明のカラオケシステムにおけるカラオケ演奏装置の構成を図3にもとづいて説明する。同図において、システムバスBUSに接続されたCPU(中央演算処理装置)10がシステム全体の制御を司る。ROM11には制御プログラムなどが格納され、RAM12には制御処理の内容などの一時記憶が可能となるようにしている。コマンダ受信部13は、コマンダ14から送られてくる赤外線コード信号を受信し、コマンドデータに復元してシステムバスBUSへ転送する。
【0019】
操作部15は、装置本体に設けられた各種スイッチ機能であり、、予約選曲、キーコントロール、歌唱プログラムなどカラオケ装置特有の機能のマニュアル設定が可能となるようにしている。表示制御部16は、CPU10により処理されたメッセージなどをモニター25により表示するための表示制御を行う。
【0020】
DVDプレーヤ26は、光ディスクをドライブし、記録されている背景映像を表示制御部17へ出力するもので、CPU10により制御される。通信制御部18は、情報通信ネットワークを介して楽曲配信センター(センターサーバ)と通信し、楽曲の配信を受け、あるいはカラオケ歌唱者の個人データなどの送受信を司る。HDD(Hard Disk Drive Unit)19は、楽曲配信センターから受信した楽曲データやカラオケ演奏以外の機能を実行させるデータであるICMデータを一時記憶する。
【0021】
文字パターン展開部20は、指定された楽曲の歌詞データを入力し、表示制御部17へ出力することにより背景映像とともに楽曲の進行に伴い、歌詞を色替えさせながら表示することが可能となるようにし、モニター25へこれを表示する。音源21は、MIDI(Musical Instrument Digital Interface)信号などで受信した楽曲データから楽音信号を形成し、音声データ処理部22は、楽曲データに含まれる音声データにもとづいてバックコーラスなどの音声信号を再生する。
【0022】
前記音源21が形成した楽音信号および音声データ処理部22が再生した音声信号は、DSP23へ入力し、これらの楽音信号および音声信号に対してリバーブ、エコーなどの効果を付与する。効果が付与された楽音信号、音声信号は、D/A変換器24でカラオケ楽曲信号となり、カラオケ演奏が可能となるようにアナログ信号に変換され、音響増幅器27へ出力される。
【0023】
入力処理部29は、前記カラオケマイク1に接続され、このカラオケマイク1により生成されたカラオケ歌唱者の音声信号ならびに振動検出ユニット4による検出信号が入力する。そして、この入力処理部29において音声信号と検出信号が分離される。この分離方法として、例えば、音声信号の周波数成分(通常、60〜16000Hz)と、緊張に起因する人体の固有振動に相当する周波数成分(通常、20〜35Hz)とを、それぞれの周波数帯に対応した信号を振り分けることにより行う。なお、本実施例では、音声信号と検出信号とをカラオケマイクにて混合しているが、本発明はこれに限らず、例えば、ワイヤレスマイクでは、搬送波のFM波長を異にしてカラオケ演奏装置に対し音声信号と検出信号とを別々の出力信号として転送したり、あるいは、ワイヤードマイクでは、別々の配線ルートで転送しても構わない。そして、音声信号は音響増幅器27へ入力する一方、検出信号は前述した信号処理ブロックAを含むデータ処理部30へ入力する。
【0024】
前記データ処理部30へ入力した検出信号は、振動スペクトル信号に変換され、カラオケ歌唱者の歌唱中の緊張度を連続的または間欠的に測定する。このようにして、測定されたカラオケ歌唱者の緊張度は、ROM11に搭載された分析プログラムにもとづく処理により解析され、その結果がモニター25に表示される。
【0025】
例えば、図4に示すようにカラオケ歌唱者の歌唱中の緊張度を数値データによりモニター25の画面に表示したり、あるいは図5に示すようにインジケータによりその程度を表示するようにしてもよい。この場合、カラオケ歌唱者の緊張度を実時間で表示、あるいは数十秒毎の間隔で平均した値を表示するようにしてもよい。
【0026】
図6は、上記処理の流れをフローチャートで示したもので、まず、歌唱者は歌唱を開始する前にキー入力により男性、女性、年齢などを指定する歌唱者データを入力する(Sa1)。ステップSa1により歌唱者データが入力されると、CPU10は当該入力条件にもとづく基準値(Ha)をROM11から読み出し、この基準値をデータ処理部30に設定する(Sa2)。緊張度を測定するにあたっての基準値は一義的に定めるようにしてもよいが、性別、年齢などの条件別に定めることにより高い精度の判定結果を期待することができる。
【0027】
このような設定がなされた後、カラオケ歌唱者の歌唱が開始されると、カラオケマイク1の振動検出ユニット4により生成された測定値(Hb)がデータ処理部30に入力する(Sa3)。そして、データ処理部30では、まず、基準値(Ha)と測定値(Hb)が比較され(Sa4)、このときの歌唱者の状態がHa>Hbなる場合は、歌唱者はリラックスしている状態にあると判断してモニター25にかかる状態を通知する表示がなされ(Sa5)、比較ルーチンが継続される。
【0028】
つぎに、ステップSa6において歌唱者の状態がHa=Hbと判定された場合は、適度に緊張している状態と判断してモニター25にかかる状態を通知する表示がなされ(Sa7)、比較ルーチンが継続される。また、ステップSa8において歌唱者の状態がHa<Hbと判定された場合は、かなり緊張している状態と判断してモニター25にかかる状態を通知する表示がなされ(Sa9)、比較ルーチンが継続される。なお、本実施例では、基準値を1つのみ設けているが、本発明はこれに限定されず、例えば、複数の緊張度レベル毎に基準値の幅をそれぞれ設定し、測定値が何れの基準値内に入るかを照会し、そのレベルを通知するようにしても構わない。
【0029】
このようにしてカラオケ歌唱者の緊張度を測定することが可能となることから、過去の歌唱時における歌唱力と対比することが可能となる。例えば、会員制による店舗運営形式におけるカラオケシステムでは、楽曲配信センター(センターサーバ)の会員データベースと接続することができ、この会員データベースに、会員ID番号、氏名、年齢、住所、電話番号などの基礎データのほかに会員固有情報を蓄積することができるてめ、上述したキー入力に代わり、利用者IDカードの読み取り手段により、男性、女性、年齢などを指定する歌唱者データが特定できる。
【0030】
この会員固有情報は、例えば、特定のカラオケ楽曲について当該会員の過去の歌唱力の実績などを蓄積しておくことができ、同様に特定のカラオケ楽曲を歌唱したときの緊張度を蓄積しておくことができる。したがって、かかる過去のデータを呼び出すことにより、カラオケ楽曲を歌唱する毎に緊張度を比較し、当該カラオケ楽曲に対する習熟度などを判断することが可能となる。
【0031】
前述したようにカラオケ歌唱者の緊張度をモニター表示するようにしたことから、多人数のグループでカラオケを楽しむような場合、緊張度の測定値を個人毎に比較するような今までにないアミューズメント効果を期待することができる。また、緊張度の測定結果から、カラオケ歌唱者自身がストレスの程度などのメンタル状態を間接的に把握することができ、健康管理などの参考とすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明のカラオケマイクの構成を示す断面図である。
【図2】本発明の要部の信号処理の例を示すブロック図である。
【図3】本発明のカラオケシステムのブロック図である。
【図4】本発明の機能を説明するための図である。
【図5】本発明の機能を説明するための図である。
【図6】本発明における測定処理の流れを示すフローチャート図である。
【符号の説明】
【0033】
1・・・・・・カラオケマイク
2・・・・・・マイクユニット
3・・・・・・信号処理ユニット
4・・・・・・振動検出ユニット
5・・・・・・転送処理ユニット
6・・・・・・アンテナ(ケーブル)
7・・・・・・電池
A・・・・・・信号処理ブロック
A1・・・・・増幅器
A2・・・・・フィルター
A3・・・・・A/D変換器
A4・・・・・フーリエ変換器
10・・・・・UPU
11・・・・・ROM
12・・・・・RAM
13・・・・・コマンダ受信部
14・・・・・コマンダ
15・・・・・操作部
16・・・・・表示制御部
17・・・・・表示制御部
18・・・・・通信制御部
19・・・・・HDD
20・・・・・文字パターン展開部
21・・・・・音源
22・・・・・音声データ処理部
23・・・・・DSP
24・・・・・D/A変換器
25・・・・・モニター
26・・・・・DVDプレーヤ
27・・・・・増幅器
28・・・・・音響装置
29・・・・・入力処理部
30・・・・・データ処理部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラオケ歌唱者の歌唱音声をカラオケ演奏装置へ転送するためのカラオケマイクであり、人体の振動を検出する振動検出手段と、前記振動検出手段により検出した信号をカラオケ演奏装置へ転送する転送手段と、を備えたことを特徴とするカラオケマイク。
【請求項2】
カラオケ歌唱者の歌唱音声をカラオケマイクによりカラオケ演奏装置へ転送するカラオケシステムであり、
(ア)人体の振動を検出する振動検出手段を備えたカラオケマイクと、当該振動検出手段により検出した信号をカラオケ演奏装置へ転送する転送手段と、を備えたカラオケマイクと、
(イ)前記振動検出手段の検出信号から人体固有振動に相当する周波数成分を抽出する信号濾過手段と、
(ウ)前記信号濾過手段を介して得られた抽出信号を予め設定した基準値と比較して緊張度を判定する判定手段と、
(エ)前記判定手段による判定結果をカラオケ歌唱者が歌唱するカラオケ楽曲の演奏中あるいは演奏後に通知する表示手段と、
を備えたことを特徴とするカラオケシステム。
【請求項3】
特定のカラオケ歌唱者による特定のカラオケ楽曲の歌唱時に、当該歌唱者による当該楽曲の歌唱時の緊張度を示す履歴データを読み出して歌唱中の緊張度の程度を判定するようにしたことを特徴とする請求項2記載のカラオケシステム。
【請求項4】
緊張度の判定結果をメッセージ、画像、アニメーションなどにより表示するようにしたことを特徴とする請求項2または請求項3に記載のカラオケシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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