カラーインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、及び画像形成方法
【課題】
ブラックとカラーのインクセットを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であり、且つ保存安定性に優れたカラーインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法及びインクを提供すること
【解決手段】水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインク、該カラーインクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置、画像形成方法。
ブラックとカラーのインクセットを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であり、且つ保存安定性に優れたカラーインク、インクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法及びインクを提供すること
【解決手段】水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインク、該カラーインクを用いたインクジェット記録方法、インクカートリッジ、記録ユニット及びインクジェット記録装置、画像形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、水溶性有機溶剤及び水不溶性色材を含有する水性インクに関し、より詳しくは、インクジェット記録方式を用いた記録方法や記録装置、更には、インクジェット記録方法、画像形成方法に好適なカラーインクとブラックインクの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着色剤として顔料を含むインク(顔料インク)は、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を得ることを目的として、顔料の選択や溶剤の選択など様々な検討がされている。また、近年、このようなインク及びインクセットにより形成されてなる画像の光学濃度の向上、更には、互いに異なる色を組み合わせて形成する画像の美麗さを向上させる目的として種々の技術の提案がされている。例えば、画像濃度を向上させる技術として、自己分散型カーボンブラックと特定の塩を組み合わせてなるブラックインクを用いることにより、画像濃度をより一層の向上を達成できることが提案されている(例えば、特許文献1参照)
また、画像の美麗さを向上させる技術として、インク中に顔料と多価金属塩を含んでなるカラーインクと、インク中にカーボンブラックと、樹脂エマルジョンまたは無機酸化物コロイドを1種以上含むブラックインクのインクセットによる記録方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
これらの技術では、いずれの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させて画像濃度を向上させたり、カラーインク中の含有物によりブラックインク中のカーボンブラックを増粘・凝集を起こし、ブラックインクとカラーインクの境界の滲みが改善された画像を得ている。
【0003】
このように、画像濃度の向上や、境界の滲みが抑制された高品位な画像の形成にあたり、従来ではインク中に別途化合物を含有させる手段が主に用いられてきた。
【特許文献1】特開2000−198955公報
【特許文献2】特開平09−279069公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上述したような方法によって色材の媒体表面で強制的に凝集させた場合には、インク滴の体積に比較して、被記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(所謂、エリアファクタ)が十分でない場合がある事がわかった。このとき、図8に示したしたように、被記録材90上にインク滴が着弾、色材が定着する際に、色材で被覆することを意図した部分91に対して、色材で被覆された部分92と、被覆できなかった部分93が生じる。このため、画像に、視覚的に不均一性が認められ、色むら及び粒状感が目立つという問題があった。十分なエリアファクタを得るためには、付与する液滴量を増大させなければならないが、インクの付与量増大は、記録媒体のインク吸収能等に悪影響を及ぼすだけでなく、印字物の必要乾燥時間が長くなるなどの欠点があり、好ましくない。
【0005】
少ない液滴量でエリアファクタを得るための技術としては、インクの被記録媒体に対する浸透性を高めることが知られている。しかし、インクの浸透性を高めた場合、当該インクは被記録媒体表面上のみならず、被記録材内部へも浸透してしまい、十分な画像濃度、鮮明な発色性が得られない場合が生じる。
【0006】
以上のように、粒状感や色むらを低減させ、且つ、鮮明な色調を得ることは、画像形成におけるひとつの課題であった。又、この課題は、ブラックインクとカラーインクを用いて混色画像形成を行う場合、画像中での夫々の色材の相関も相まって、従来の技術では解決が困難であった。
【0007】
特に、ファインアートやデジタルフォトの分野においては、写真、描画、グラフィックなどのデジタル画像などの再現性の高いプリント、好みの表現をするためのプリントを実現することが望まれている。この分野においては、被記録媒体の基材の色や風合いを生かすため、インク受容層の塗布量が少ないコート紙であるファインアート紙が用いられる。このような被記録材に、上記の従来技術によるインクを用いて混色画像を形成した場合には、粒状感や色むらが特に顕著になること、鮮明な色調が得られないことといった問題が更に顕著となり、一層美麗な画像を得ることが望まれていた。
【0008】
これに対して、本発明者らは、一般的に水性インクを形成する基本成分、例えば、色材や水溶性有機溶剤等の適切な設計及び組み合わせ等を制御することにより、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調をもつ混色画像が形成されないかという課題を掲げて鋭意検討を行った。そして、その検討により、インクの構成成分を機能分離し、色材と水溶性有機溶剤の相互作用を利用したインクシステムを考案して、この課題を改善することができるインクセットを提供できるものと考えた。
【0009】
従って、本発明の目的は、ブラックとカラーのインクの組み合わせを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であり、且つ、保存安定性に優れたカラーインクを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記の優れたインクセットを用いることで、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調を有すること混色画像の形成が可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法及びインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の本発明によって達成される。本発明のインクセットの一態様は、水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクとともに画像形成に用いられる少なくとも1色のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインクである。
【0013】
本発明にかかるインクジェット記録方法は、請求項6に記載のカラーインクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0014】
本発明にかかるインクカートリッジは、上記のカラーインクを収容されていることを特徴とするインクカートリッジである。
【0015】
本発明にかかる記録ユニットは、上記のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニットである。
【0016】
本発明にかかるインクジェット記録装置は、上記のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0017】
本発明にかかる画像形成方法は、上記のカラーインクを用いて、被記録媒体に多次色を形成する画像形成方法である。
【0018】
本発明にかかる水性インクの一態様は、ブラックインクと、水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを用いた画像形成方法の前記ブラックインクとして用いられる水性インクであって、水溶性有機溶剤として水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有することを特徴とする水性インクである。
【0019】
本発明にかかる水性インクの他の態様は、少なくとも1種類のカラーインクと、水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを用いた画像形成方法の前記カラーインクとして用いられる水性インクであって、カラーインクの水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることを特徴とする水性インクである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ブラックとカラーのインクの組み合わせを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であって、且つ、保存安定性に優れたカラーインクを提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、かかるカラーインクとブラックインクを組み合わせて用いることで、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調を有する画像を形成することができるインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法、及びインクが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、好ましい実施の形態をあげて本発明を更に詳細に説明する。本発明にかかるカラーインクの特徴は、水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることである。
ことを特徴とする又、より好ましい形態は、カラーインクに含まれる水溶性有機溶剤の、ブリストウ法によって求められる上記水溶性有機溶剤の各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒であることである。更に、より好ましい形態は、前記カラーインクにおける貧溶媒の全量(質量%)Bが少なくとも4%以上であることが挙げられる。
【0023】
上記構成のカラーインクを用いることで、粒状感及び色むらが低減し、且つ均一で、鮮明な色調を有する混色画像の形成が可能になる、という顕著な効果が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0024】
このような、本発明にかかるブラックインクとカラーインクを用いた混色画像は、以下に述べるような理由により、粒状感及び色むらが低減し、且つ均一で、鮮明な色調を有することが可能になると考えられる。先ず、画像濃度を向上させるために、前述した従来の技術によって各々の色材を非記録材表面に凝集させた場合に、色むら及び粒状感が顕著となる原因について説明する。図9に示したように、被記録材90上にインク滴が着弾、色材が定着する際に、ブラックの色材で被覆することを意図した部分101、カラーの色材で被覆することを意図した部分104に対して、色材で被覆された部分102、105と、被覆できなかった部分103、106が生じてしまう。
【0025】
この現象は、以下のプロセスによるものと推定できる。即ち、色材で被覆できなかった部分103及び106と、被覆された部分102、105とのコントラストの差が大きく、視覚的に目立つ。このとき、カラーに比べ、ブラック色材の101と、102とのコントラストの差は、特に視覚的に目立ち易い。また、このとき、ブラックとカラーを比較すると、ブラックの方が視覚的に際立ってしまう傾向がある。これらの相関により、形成された混色画像は視覚的に不均一性があると認められ、画像中での色むら、粒状感を顕著にする。更に、ブラックがカラーに比べ目立ちすぎることで、ブラックに比べ感覚的にカラーの画像濃度が高く感じられなくなる。このため、形成された混色画像は、色調が不鮮明な印象を与える。
【0026】
一方、少ない液滴量でエリアファクタを得るため、被記録媒体に対する浸透性を高めたインクセットを用いた場合にも、以下のプロセスで同様の課題が生じる。即ち、図10に示すように、ブラック及びカラーのドット112、114において、色材の被記録材表面上の広がりが大きくなることにより、ブラックの色材で被覆することを意図した部分111、カラーの色材で被覆することを意図した部分113を色材で完全に被覆できるが、依然としてブラックがカラーに比べ視覚的に目立ってしまう。また、カラー色材が被記録材内部に浸透してしまい、画像濃度が減少するため、カラーの不鮮明さが際立ってしまう。これらの相関によって、形成画像は視覚的に不均一性が認められ、色むら、粒状感が顕著になり、また、見た目の色調が不鮮明となる。
【0027】
これら、従来のインク夫々の利点や欠点を追求し、更なる画像性能向上を追及した。そして、ブラックとカラーの視覚上の違いと、その相関に着目したところ、従来の技術では、十分なエリアファクタを得ることと、ブラックに対してカラーの印字濃度を相対的に際立たせることの2点を、十分なレベルでは両立できていないことがわかった。
【0028】
本発明にかかるインクは、このブラックとカラーの違いに着目し、色材ごとに、被記録材上での色材の様態を最適化することで、インク付与量を増大させることなく、インク滴が十分なエリアファクタを有し、且つ、ブラックに対して、相対的にカラーの印字濃度が際立った画像を形成している。即ち、色材を安定にさせない水溶性有機溶剤を、該色材に対する貧溶媒、色材を安定にさせる水溶性有機溶剤を良溶媒とし、ブラックインクには、色材に対する該良溶媒のみを、一方、カラーインクには色材に対する該良溶媒と、該貧溶媒とを含むインクを設計した。そして、このカラーインクとブラックインクを組み合わせて用いることで、従来技術では達成し得なかった、視覚的に均一で、色むら、粒状感のない、鮮明な色調をもつ混色画像の形成を可能としている。
【0029】
ここで本発明にかかる水性インクが被記録媒体上に着弾して、表面近傍で画像が形成されるまでの工程について説明する。
【0030】
先ず、本発明にかかる、貧溶媒が含まれたカラーインクを用いた場合には、図11(a)及び(b)に示したように、貧溶媒を含むインク滴123が、被記録媒体90に印刷された場合には、インクが被記録媒体上に着弾した後、インク中の、水と、水溶性有機溶剤と、色材との比率は変化していく。そして、水の蒸発と共に、まず、インク中の水溶性溶性有機溶剤のうちKa値の高い貧溶媒129が、Ka値の低い良溶媒よりも被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、インクドットが形成されていくと考えられる。
【0031】
図11の(b)〜(d)は、インクが被記録媒体90へ着弾してから後に定着するまでのインクの様子を示した模式図である。この場合におけるインクドットの広がり状態に着目すると、ドットの中心部125よりも、インクと紙の接触部分におけるドットの外周124において貧溶媒の濃度が高くなっていると考えられる。この結果、インクドットが被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、その広がる過程で、色材に対して貧溶媒129の濃度が急激に増加することが起こる。これに伴って色材が不安定化し、色材の凝集若しくは分散破壊が起こり、この結果、図11(b)に示したように、紙面上に新円形に近い縁取りをとりつつ拡散し、色材126が被記録媒体90の表面に留まることが起こり、ドットの外縁部分に、あたかも色材の土手が形成されたかのようになる。このようにして、図11(c)に示したように、色材のドットが真円形に形成され、その状態で紙面に固定化されると考えられる。この時点において、色材のドット形成は完了するが、インク中の水溶性有機溶剤及び水は更に拡散しながら放射状に広がっていく。つまり、色材のドット形成後も、水及び、水溶性有機溶剤は被記録媒体表面近傍を拡散していく。それに引き続き、良溶媒が多い中央部125の水溶性有機溶剤の蒸発や浸透により、図11(c)に示したように、この部分においても色材が析出して画像を形成するドット127が形成される。上記したようなプロセスによって形成されるインク画像は、真円形で、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、高い印字濃度と鮮明な色調を有するものとなり、しかも、フェザリングの発生が十分に軽減された高品位なものとなる。
【0032】
次に、本発明にかかる、色材に対する良溶媒のみからなるブラックインクを用いた場合には、以下のプロセスでドットが形成される。即ち、インク滴が被記録媒体上に着弾する際、貧溶媒が含まれる場合と同様に、インクドットは被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散する。このとき、良溶媒のみしか含まないため、色材の分散性は安定に保たれる。そのため色材が被記録媒体の表面に留まることなく、インク中の水溶性有機溶剤及び水と共に、更に拡散しながら放射状に広がっていき。被記録媒体表面上、及び内部で広がったインクドットを形成する。これにより、単一色での画像濃度は、色材を表面凝集させた場合よりも若干劣るものの、十分なエリアファクタもつ画像が形成される。
【0033】
これらの、カラーインクとブラックインクの組み合わせを用いて形成した混色画像は以下のようになる。図12(a)及び(b)に示したように、被記録材90上で、ブラックインクにより形成されるドット131は、単一色での画像濃度という点では十分ではないものの、十分に広いエリアファクタを有する。また、カラーインクにより形成されるドット132は、十分に広いエリアファクタを有し、且つ、均一であり、高い印字濃度と鮮明な色調を有する。このため、各々の色材のエリアファクタが不十分なことによる視覚的な不均一性、即ち色むらや粒状感が大幅に低減される。また、ブラックとカラーの視覚的なバランスに着目すると、カラーの印字濃度が、ブラックに対し相対的に際立つことにより、各色の見た目のバランスが良好になる。以上の相関により、この形成された混色画像は、色むらや粒状感がなく、且つ、画像の均一性が非常に高く、見た目の色調が鮮明な、高品位なものとなるのである。
【0034】
本発明にかかるカラーインク及びブラックインクは、各インク中の水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外は、従来の水不溶性色材を含む水性インクと同様の構成とすればよい。即ち、本発明にかかるカラーインク及びブラックインクの第1の特徴は、ブラックインク中の水溶性有機溶剤としては、ブラックインク中の色材に対する良溶媒のみを含有し、且つ、カラーインク中の水溶性有機溶剤として、少なくとも1種の良溶媒である水溶性有機溶剤と、少なくとも1種の貧溶媒である水溶性有機溶剤とを含むことである。また、より好ましい形態としては、カラーインク中の種類の異なる複数の水溶性有機溶剤の各々の、ブリストウ法によって求められるKa値を比較したときに、Ka値が最大の水溶性有機溶剤が貧溶媒であることである。この結果、カラーインク中における水不溶性色材の分散安定性が非常に優れたものとなると同時に、被記録媒体、特に普通紙上に印字した場合に、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、且つ高い印字濃度を示す、非常に優れた印字品位をもたらす画像形成が可能になる。
【0035】
ここで、ブリストウ法によって求められるKa値について説明する。該値は、インクの被記録媒体への液の浸透性を表わす尺度として用いられる。インク液を引用例に採って説明すると、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの被記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
【0036】
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
ここで、インク滴が被記録媒体表面に付着した直後には、インクは、被記録媒体表面の凹凸部分(被記録媒体の表面の粗さの部分)において吸収されるのが殆どで、被記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに被記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ被記録媒体への浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、このKa値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定可能である。
【0037】
本発明にかかるカラーインクとブラックインクの組み合わせを用いて、上記に示したプロセスによって形成されるインク画像は、各水性インク中に含まれる溶媒特性によって、被記録媒体中での相対的なドット形成位置が定められるため、どの被記録媒体でも効果が得られる。特に、被記録媒体内部へインクが浸透しやすい、普通紙、及びインク受容層を有するコート紙での効果が大きい。更に、コート紙の中でも、特に被記録媒体の基材の色や風合いを生かすためにインク受容層の塗布量が少ないコート紙である、ファインアート紙などで最も効果を得ることができる。
【0038】
[良溶媒及び貧溶媒]
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否かによって決定される。即ち、水不溶性色材、或いはその分散剤との関係において決定されるものである。従って、本発明にかかるインクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、水不溶性色材の分散状態の安定性の程度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該液体中の粒子径が、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液の粒径と比較して増加しているものを貧溶媒とし、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液と同じか、或いは減少しているものを良溶媒と定義した場合に、本発明の効果との整合性が極めてよいことを見出した。
【0039】
より具体的には、下記の方法で、特定の不溶性色材に対して使用する溶媒が、良溶媒となっているか、或いは貧溶媒となっているかの判定を行った。先ず、下記の2つの水不溶性色材分散液A及びBを調製する。
【0040】
A:判定対象としての水溶性有機溶剤の濃度が50%、水不溶性色材の濃度、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%、水の濃度が45%である組成の水不溶性色材分散液;
B:水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%の、水溶性有機溶剤を含まない水不溶性色材の水分散液。
【0041】
次に、上記分散液Aを60℃で48時間保存した後に常温に冷ました分散液Aの粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)等を用いて測定した。又、同様にして上記水分散液Bの粒径を、上記濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、上記分散液A及び水分散液Bの各々の粒径値を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、これらの値を下記の定義に従って良溶媒と貧溶媒とに判別した。このようにして、判定された良溶媒と貧溶媒とを用いて本発明の構成を有するインクを調製したところ、上記したような優れた効果を得られることが確認できた。良溶媒と貧溶媒は、上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を貧溶媒とし、粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
【0042】
[水性媒体]
本発明にかかる水性インクは、少なくとも、水、色材、水溶性有機溶剤を含んでなるが、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
【0043】
本発明にかかる水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲とすることが好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
【0044】
本発明の好ましい形態では、カラーインク中における良溶媒の全量(質量%)をA、インクにおける貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、これらの比率A:Bが10:5以上10:30未満の範囲内となるように、好ましくは、A:Bが、10:5以上〜10:10未満の範囲内となるように、更に好ましくは、比率A:Bが10:6〜10:10の範囲内となるように、水性インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量とを調整する。
【0045】
本発明者らの詳細な検討によれば、水性インク中に含まれる良溶媒の比率が多い場合には保存安定性に優れるが、高い印字濃度を得ることが難しく、又、逆に良溶媒の比率が少ない場合には、高い印字濃度を得ることができるが、保存安定性が不充分になることがある。これに対して、インク中の水溶性有機溶剤における良溶媒と貧溶媒との比率を上記のように制御すれば、インクの保存安定性と、高い印字濃度の実現との両立を図ることが可能となる。
【0046】
また、カラーインク中の貧溶媒の全量(質量%)Bは4%以上にすることが、高い画像濃度と長期保存性の両立の観点からより好ましい。
【0047】
更に、先に述べたように、本発明においては、カラーインク中に含有させる各水溶性有機溶剤を決定する場合に、含有させる各水溶性有機溶剤が有する、被記録媒体への浸透性を表わす尺度であるブリストウ法によって求められるKa値の値を制御することで、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、しかも高い印字濃度を実現できる、という従来得ることのできなかった効果の達成を図る。
【0048】
[水不溶性色材]
次に、本発明にかかる水性インクに含有される不溶性色材について説明する。本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材としては、その分散方式にかかわらず、例えば、分散剤や活性剤を用いる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、水不溶性色材自体の分散性を高めて分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることができる。もちろん、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。以下、本発明に用いることのできるこれらの顔料について説明する。
【0049】
[顔料]
本発明にかかる水性インクに使用することのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものをいずれも使用することができる。また、1つの水性インク中に必要に応じて複数種の顔料を併用することもできる。顔料の水性インク中の含有量は水性インクの用途に応じて設定される。
【0050】
黒色インクに使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックをいずれも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0051】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0052】
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0053】
[樹脂分散型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、分散剤を用いた樹脂分散型顔料も使用可能であるが、この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための化合物が必要となる。このようなものとしては、いわゆる分散剤、界面活性剤、樹脂分散剤等を用いることができる。分散剤又は界面活性剤としては、特に限定はないが、中でも、アニオン系、ノニオン系のものを好適に使用できる。例えば、アニオン系のものとしては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びこれらの置換誘導体等;ノニオン系のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。樹脂分散剤としては、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩等を挙げることができる他、これらの共重合体を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0054】
[マイクロカプセル型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することもできる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
【0055】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン等が挙げられる。
【0056】
これらの中ではカルボン酸基又はスルホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。又、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート又はそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0057】
マイクロカプセル化の方法として転相法又は酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能又は溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材との複合物又は複合体、或いは自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材、硬化剤及びアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、或いは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、インクに用いられる水溶性有機溶剤や添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接インク用の分散液を製造できることからいえば、インクの液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0058】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材と、水性媒体中で混練する工程及び酸性化合物でpHを中性又は酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部又は全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を製造することができる。
【0059】
又、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロール等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、二塩化エチレン等の塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。尚、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離又は濾過等によりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水及び必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とするマイクロカプセル型顔料とすることもできる。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
【0060】
[自己分散型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型の顔料を使用することもできる。自己分散型顔料としては、顔料粒子表面に、親水性基が直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが挙げられる。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理でカーボンを酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、カーボンブラック表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散顔料も好適に用いることができる。
【0061】
[ポリマー結合型自己分散顔料]
本発明にかかる水性インクに含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散顔料も使用可能である。この分散剤を用いないポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。即ち、このような構造を有するものを使用すれば、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるので好適である。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもでき、この点からも好適である。
【0062】
(官能基)
上記ポリマー結合型自己分散顔料における官能基は、顔料表面に直接、若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。該官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、ここで官能基の種類は、該共重合体が担持している官能基との関連において選択される。そして、官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体中に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じるような反応とすることが好ましい。該官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることによって、共重合体を、顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。又、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることによっても同様に共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
【0063】
ここで、顔料表面に化学的に結合されている官能基は、直接、顔料表面に結合していてもよく、又、他の原子団を介して結合していてもよい。しかし、比較的分子量の大きな共重合体を顔料表面に導入する場合、共重合体同士の立体障害を避けるために、他の原子団を介して官能基を顔料表面に導入することが好ましい。ここで、他の原子団は、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものでない。しかし、上記した理由により官能基の顔料表面からの距離を制御するという観点から、例えば2価の有機残基が好ましく用いられる。2価の有機残基の例は、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等を包含する。
【0064】
より具体的に述べると、例えば後述する実施例においては、顔料をアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンと反応させて、顔料表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入している。この場合には、アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料表面に化学的に結合している、ということができる。
【0065】
(ポリマー結合型自己分散顔料の共重合ポリマー)
上記イオン性モノマーと疎水性モノマーからなる共重合体としては、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好適に用いられる。
【0066】
上記アニオン性の共重合体としては、疎水性モノマーと、アニオン性モノマーからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。この際に使用する代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等である。
【0067】
上記において使用するアニオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0068】
本発明にかかる共重合体の一態様としての、アニオン性モノマーと疎水性モノマーと、からなるアニオン性の共重合体としては、上記に挙げた疎水性モノマーから選択されたいずれかと、上記に挙げたアニオン性モノマーから選択された少なくとも1つとの、少なくとも2つ以上のモノマーからなる。該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等を包含する。
【0069】
かかるアニオン性の共重合体の酸価としては、100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、酸価のばらつきが平均酸価の20%以内であるものを使用することが好ましい。酸価をかかる範囲内とすることによって、顔料表面の親水性が高過ぎて、印字後におけるインク中の水及び溶剤が顔料表面にとどまり、記録媒体への印字後における、インクの耐マーカー性の発現が遅くなることを有効に抑制することができる。又、顔料の表面の親水性が低過ぎてしまい、インク中に顔料が安定に分散しにくくなるといったことも有効に抑制することができる。
【0070】
尚、前記した塩とは、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられ、これらを、単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0071】
次に、本発明にかかる共重合体の他の実施態様としての、カチオン性モノマーと疎水性モノマーとからなるカチオン性の共重合体について説明する。カチオン性の共重合体としては、下記に挙げる疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。疎水性モノマーとしては、先に挙げたモノマーを使用することができる。
【0072】
カチオン性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0073】
カチオン性の共重合体は、上記モノマーから選ばれた疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとを含む少なくとも2つ以上のモノマーからなるブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いはこれらの塩等が挙げられる。特に、カチオン性の共重合体のアミン価が100〜500の範囲のものが好ましく、又、アミン価のばらつきが平均アミン価の20%以内であることが好ましい。アミン価とは、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の、KOHのmg数で表す。尚、前記、塩とは、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、これらを単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0074】
以上で説明したアニオン性或いはカチオン性の共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,000〜20,000の範囲のものを好ましく使用でき、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものが好ましく使用できる。又、カチオン性の共重合体セグメントの多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が、3以下であるものを使用することが好ましい。このようなカチオン性の共重合体のインク中における含有量は、該共重合体によって表面改質された顔料粒子に対して、その含有率が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。又、共重合体の多分散度については、多分散度が大きい場合には、共重合体の分子量分布が広くなり、共重合体の分子量に基づく上記で述べた性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0075】
次に、カーボンブラックを例に挙げて、顔料粒子表面に化学的に有機基を結合させて、顔料を改質する方法について説明する。この際に用いることのできる方法としては、顔料粒子表面の官能基、或いは顔料粒子表面に官能基を導入し、これらの官能基に、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体を結合させ、該共重合体を顔料粒子表面に化学的に結合させる方法であれば、通常用いられるいずれの方法でもよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
【0076】
カーボンブラック等の顔料粒子表面に、ポリエチレンイミン等を導入し、その末端官能基に、アミノ基を有する、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法や、カーボンブラック等の顔料粒子表面に、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法等の方法を用いることができる。この他のものとしては、最も典型的な例が、WO 01/51566 A1に開示されている。
【0077】
上記した方法において、例えば、アニオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の3工程を含むこととなる。
【0078】
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
【0079】
第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加させる工程。
【0080】
第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
【0081】
上記第2の工程では、第1の工程によってカーボンブラック表面に化学的に結合しているフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とAPSESのアミノ基とを反応させることによって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてのアミノ基が導入される。そして第3の工程においては、例えば共重合体のイオン性モノマー部分が有するカルボキシル基の一部をアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基とPEHAの残基とを含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0082】
又、上記した方法において、例えば、カチオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の2工程を含むこととなる。 第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
【0083】
第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。上記第1の工程によって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてスルホン基が導入される。そして第2の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するアミノ基の一部をスルホン基と反応させて(求核置換)、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0084】
<その他の成分>
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
【0085】
更に、本発明にかかるインクセットを構成するインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0086】
上記で説明したような構成成分からなる本発明で使用するブラック及びカラーインクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。又、ブラックインクとカラーインクとを併用する場合には特に、ブラックインクの表面張力よりもカラーインクの表面張力が低いことが更に好ましい。具体的には、ブラックインクが35〜50mN/m、カラーインクが25〜35mN/mである。
【0087】
[インクセット]
本発明のカラーインクは、 水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを少なくとも1種類と、水溶性有機溶媒として水溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを組み合わせて、2色以上の水性インクを有するインクセットとすることが好適である。
【0088】
本発明で言うインクセットは、少なくとも1種類のカラーインクとブラックインク、若しくは2種類以上のカラーインクが一体のインクタンク又は、ヘッドつきインクタンクで構成されるインクセット、又は、記録装置に対し個別のインクタンクが脱着可能で有るように用いられる事を実質的に「これらのインクを有するインクセット」と称する。いずれにしても、本発明においては、使用される(プリンター内であるいはインクタンクとして)他のインクに対して、本発明のインク単体の特性を相対的に規定するもので、これらの上記形態に限らず、どのような変形の形態で有っても良い。
【0089】
[記録方法、記録ユニット、カートリッジ及び記録装置]
次に、本発明にかかるインクジェット記録装置の一例について説明するが、該装置は、先に説明した本発明にかかるカラーインクが収容されていることを特徴とする。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を、図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。
【0090】
発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0091】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0092】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0093】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0094】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0095】
51は記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0096】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングのときの位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0097】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0098】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0099】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例について説明する。力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図7に示す。
【0100】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0101】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【実施例】
【0102】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるものは、特に記載のない限り質量基準である。
【0103】
(ブラック顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0104】
上記のポリマー溶液を120g、カーボンブラックを100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0105】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のブラック顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のブラック顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するブラック顔料分散液を調製した。最終的に得られたブラック顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0106】
(シアン顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0107】
上記のポリマー溶液を120g、ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0108】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のシアン顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のシアン顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するシアン顔料分散液を調製した。最終的に得られたシアン顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0109】
(マゼンタ顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0110】
上記のポリマー溶液を120g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0111】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のマゼンタ顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のマゼンタ顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するマゼンタ顔料分散液を調製した。最終的に得られたマゼンタ顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0112】
(イエロー顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0113】
上記のポリマー溶液を120g、C.I.ピグメントイエロー74を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0114】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のイエロー顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のイエロー顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するイエロー顔料分散液を調製した。最終的に得られたイエロー顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0115】
[各水溶性有機溶剤についてのKa値測定方法]
各水溶性有機溶剤のKa値測定において、測定しやすいように、下記の組成を有する染料濃度0.5%の染料水溶液を作製した。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199:0.5部
・純水:99.5部
次いで、この0.5%染料水溶液を利用して以下の配合比で、測定対象の各水溶性有機溶剤を使用して、着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ作製した。
・上記0.5%染料水溶液:80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤:20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20%水溶液を測定用の試料として、東洋精機製作所製の動的浸透性試験装置S(商品名)を用い、ブリストウ法により水溶性有機溶剤20%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
【0116】
尚、測定の際、記録媒体として、キヤノン社製、PPC用紙NSKを23℃40%の環境下に24時間放置したものを用いた。
【0117】
(判定及び測定結果)
上記のようにして測定した、インクに使用し得る各水溶性有機溶剤について、各水溶性有機溶剤の20%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に記した。
【0118】
【表1】
【0119】
[使用した水溶性有機溶剤の良溶媒及び貧溶媒の判定方法]
上記顔料分散体中の顔料、若しくは顔料と分散剤とに対する良溶媒と貧溶媒とを選択するために以下の実験を行った。先ず、上記ブラック及びカラー顔料分散液の固形分濃度10%水溶液を調製し、これを用いて、以下の配合比にて良溶媒、貧溶媒の判定用分散液を作成した。
(良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の配合比)
・各顔料分散液の固形分濃度10%水溶液:50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒、貧溶媒の判定用分散液10gを透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分攪拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、60℃オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該液中の水不溶性色材の粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いて測定し、これを60℃、48時間加温保存後の良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の原液粒径(希釈せずに測定した粒子径)とした。一方、レファレンスとして、良溶媒、貧溶媒の判定用分散液と固形分濃度が等しい顔料水分散体、つまり、水溶性有機溶剤の代わりに同量の水を加えた良溶媒、貧溶媒の判定比較用の顔料水分散液を作成し、当該水分散液は加温保存を行うことなしに上記と同様に濃厚系粒径アナライザーによって液中の水不溶性色材の粒径を測定した。そして、得られた判定用分散液の原液粒径を、レファレンスの水分散液の粒径と比較し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液の原液粒径よりも増大しているものを貧溶媒と判定し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液のそれと、同一若しくは小さくなったものを良溶媒と判定した。表2に、各色のインクに対して、上記のようにして平均粒径を測定することで得た良溶媒か、貧溶媒かの判定結果を示した。
[水溶性有機溶剤の良溶媒及び貧溶媒の判定方法]
上記のブラック顔料、及び各カラー顔料に対して、良溶媒及び貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を判断するために以下の実験を行った。先ず、各色顔料に対して、下記の配合比にて良溶媒及び貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを作成した。
【0120】
(判定用分散液の配合比)
判定用分散液A
・顔料:5部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:75部
・純水:20部
判定用水分散液B
・顔料A:5部
・純水:95部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した、各色顔料に対する良溶媒及び貧溶媒判定用の各分散液10gを透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分攪拌し、これを25℃の室温で24時間静置した。その後、静置した分散液を測定用サンプルとして、当該液中の水不溶性色材の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いて測定した。25℃、24時間保存後の分散液の平均粒径が、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる場合を良溶媒とし、判定用分散液Aの方が判定用水分散液B(原液)より大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒とした。表2に、各色のインクに対して、上記のようにして平均粒径を測定することで得た良溶媒か、貧溶媒かの判定結果を示した。
【0121】
【表2】
【0122】
<組成が未知なるインクの検証方法>
上で述べてきた判定方法を用いて、その組成が未知なるインクセットを構成するインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを識別することも可能である。
【0123】
具体的には、まず[検証対象インク]中に含まれている水溶性有機溶剤の種類及び量の道程を行う。例えば、メタノールで所定の濃度に希釈した[検証対象インク]を、GC/MS(商品名:TRACE DSQ;サーモクエスト(ThermoQuest)社製)を用いて分析することにより、[検証対象インク]中に含まれている水溶性有機溶剤の種類、及び量の特定が可能である。
【0124】
続いて、[検証対象インク]から色材成分の採取を行う。この際色材以外の成分、例えばインク中に含有される溶剤や界面活性剤や添加剤などは、極力除去しておくことが好ましい。色材と色材以外の成分を分離する手段の一例を示すと、まず[検証対象インク]を純水で約10倍に希釈し、限外濾過装置(商品名;Centramate Low Volume;PALL社製)と分画分子量300,000のフィルターを用いて、液量が元の分量になるまで限外濾過を行い、色材以外の水溶性成分をろ液と共に系外に分離する。この工程を数回繰り返すことにより、色材と純水を主成分とする液体が得られる。尚、上記工程の繰り返し回数の目安としては、色材以外の水溶性成分、例えばインク中に含有されていた溶剤や界面活性剤や添加剤等がろ液中にほとんど含まれなくなるまでが好ましい。
【0125】
次に、上記色材と水を主成分とする液体を乾燥(例えば60℃環境下)させて水分を除去した後、乳鉢等で粉末状に粉砕し、色材を主成分とする粉末を作成する。必要に応じて、この粉末を減圧、高温(例えば100℃)環境下で乾燥(例えば24時間)することにより、微量に残っている色材以外の成分を除去することも可能である。上記一連の操作により、[検証対象インク]から抽出された色材を得ることができる。
【0126】
そしてこの[検証対象インク]から抽出された色材、及び同定された[検証対象インク]中に含まれる水溶性有機溶剤を用いて、上述した判定方法にのっとった試験を行い、その素性が未知なるインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを判断する。
後述する実施例、参考例及び比較例のインクセットを構成する各インクに対して、上記操作及び判定を行った結果、妥当性のある判定結果が得られたことからも、その素性が未知なるインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを識別するのに、上記操作及び判定方法が有効なものであることが確認された。
<実施例1〜3、参考例1、比較例1〜4>
本発明は、少なくとも1つのカラーインクを、ブラックインクに対して有すれば良いものである。以下の例では、シアン、マゼンタ、イエローの3色のカラー共々本発明の対象となるが、本発明にとっては1つ以上、若しくは、特色に対しても適用されるものである。
【0127】
上記で作製したブラック顔料分散液を用い、表4に記載した成分を秤量後、十分に溶解し攪拌させ、ポアサイズ1.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、ブラックインク1及び2を調製した。
【0128】
【表3】
【0129】
(*)商品名:アセチレノールE−100(川研ファインケミカル製)
又、上記で調製したブラックインクと併用するカラーインクセットA〜F を、上記で作成したシアン、マゼンタ、イエロー顔料分散液を用いて下記のようにして調製した。表4に示した配合で諸原料を混合し、ポアサイズ0.2μmのミクロンフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、C、M、Yのカラーインクをそれぞれ作製し、カラーインクセットA〜Fを作製した。
【0130】
【表4】
【0131】
(*)商品名:アセチレノールE−100(川研ファインケミカル製)
[評価]
上記で調製したブラックインクとカラーインクを表5のように組み合わせ、実施例1〜3、参考例1及び比較例1〜4のインクセットとした。そして、これらのインクセットを用いて画像を形成して評価を行った。評価は、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−900(キヤノン(株)製)を用いて画像形成することによって行った。
【0132】
【表5】
【0133】
(色むら及び粒状感)
上記各インクセットと上記したインクジェット記録装置を用いて、自然画のカラー画像を印字して、画像の色むら、粒状感を以下の基準で評価した。尚、ここでは記録媒体にはCanon社製インクジェット用紙SG−101を用いた。表6に評価結果をまとめて示した。
【0134】
○:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感を視認できない。
【0135】
△:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感が視認できる。
【0136】
×:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感が視覚的に目立つ。
【0137】
(均一性及び色調の鮮明性)
上記各インクセットと上記したインクジェット記録装置を用いて、自然画のカラー画像を印字して、画像の均一性と、色調の鮮明性を、下記の基準で評価した。尚、ここでは記録媒体にはCanon社製インクジェット用紙SG−101を用いた。表6に評価結果をまとめて示した。
○:画像の不均一性がなく、見た目の色調が鮮明である。
△:画像の不均一性が視覚的に認められるか、見た目の色調の鮮明性が若干低い。
×:画像の不均一性が視覚的に目立ち、且つ、見た目の色調が不鮮明である。
【0138】
(保存安定性性評価)
上記各インクセットに用いたカラーインクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃オーブンに投入し、2週間後に取り出して、そのときのインクの状態から保存安定性を以下の基準で評価した。そして、得られた評価結果を、表6にまとめて示した。
○:カラーインク中の色材が安定均一に分散している。
×:カラーインクがゲル状に変化、又は、インクの上部が透明になっている。若しくは明らかに増粘している。
【0139】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図。
【図2】インクジェット記録装置ヘッドの縦横面図。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図。
【図5】インクカートリッジの縦断面図。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図。
【図7】記録ヘッドの構成の一例を示す図。
【図8】被記録媒体上に従来技術で色材を表面凝集させたときの、インク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための図。
【図9】被記録媒体上に従来技術で色材を表面凝集させたときの、ブラックインクとカラーインクで形成された画像を模式的に説明するための図。
【図10】被記録媒体上に浸透系のブラックインクとカラーインクで形成された画像を模式的に説明するための図。
【図11】本発明のカラーインク滴が記録媒体に着弾したときの様子を模式的に説明するための図
【図12】本発明にかかるカラーインクセットを用いたブラックインクとカラーインクで形成された2次色画像を模式的に説明するための図。
【符号の説明】
【0141】
13:ヘッド
14:インクノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
90:被記録媒体
91:色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
92:色材で被覆された被記録媒体上の部分
93:色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
101:ブラック色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
102:ブラック色材で被覆された被記録媒体上の部分
103:ブラック色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
104:カラー色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
105:カラー色材で被覆された被記録媒体上の部分
106:カラー色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
111:ブラック色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
112:ブラック色材の被記録媒体上での広がり
113:カラー色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
114:カラー色材の被記録媒体上での広がり
121:貧溶媒を含むカラーインクから最終的に形成されるドット
122:良溶媒を含むカラーインクから最終的に形成されるドット
123:インク滴
124:ドット外周
125:ドット中心部
126:色材
127:最終的に形成されるドット
128:水溶性溶剤
129:貧溶媒
131:本発明にかかるブラックインクで形成されたドット
132:本発明にかかるカラーインクで形成されたドット
【技術分野】
【0001】
本発明は、水、水溶性有機溶剤及び水不溶性色材を含有する水性インクに関し、より詳しくは、インクジェット記録方式を用いた記録方法や記録装置、更には、インクジェット記録方法、画像形成方法に好適なカラーインクとブラックインクの組み合わせに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、着色剤として顔料を含むインク(顔料インク)は、耐水性や耐光性等の堅牢性に優れた画像を得ることを目的として、顔料の選択や溶剤の選択など様々な検討がされている。また、近年、このようなインク及びインクセットにより形成されてなる画像の光学濃度の向上、更には、互いに異なる色を組み合わせて形成する画像の美麗さを向上させる目的として種々の技術の提案がされている。例えば、画像濃度を向上させる技術として、自己分散型カーボンブラックと特定の塩を組み合わせてなるブラックインクを用いることにより、画像濃度をより一層の向上を達成できることが提案されている(例えば、特許文献1参照)
また、画像の美麗さを向上させる技術として、インク中に顔料と多価金属塩を含んでなるカラーインクと、インク中にカーボンブラックと、樹脂エマルジョンまたは無機酸化物コロイドを1種以上含むブラックインクのインクセットによる記録方法が提案されている。(例えば、特許文献2参照)
これらの技術では、いずれの場合も、インク中に分散状態で存在している顔料を、記録媒体表面で強制的に凝集させて画像濃度を向上させたり、カラーインク中の含有物によりブラックインク中のカーボンブラックを増粘・凝集を起こし、ブラックインクとカラーインクの境界の滲みが改善された画像を得ている。
【0003】
このように、画像濃度の向上や、境界の滲みが抑制された高品位な画像の形成にあたり、従来ではインク中に別途化合物を含有させる手段が主に用いられてきた。
【特許文献1】特開2000−198955公報
【特許文献2】特開平09−279069公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、本発明者らの検討によれば、上述したような方法によって色材の媒体表面で強制的に凝集させた場合には、インク滴の体積に比較して、被記録媒体表面を色材で被覆することのできる面積(所謂、エリアファクタ)が十分でない場合がある事がわかった。このとき、図8に示したしたように、被記録材90上にインク滴が着弾、色材が定着する際に、色材で被覆することを意図した部分91に対して、色材で被覆された部分92と、被覆できなかった部分93が生じる。このため、画像に、視覚的に不均一性が認められ、色むら及び粒状感が目立つという問題があった。十分なエリアファクタを得るためには、付与する液滴量を増大させなければならないが、インクの付与量増大は、記録媒体のインク吸収能等に悪影響を及ぼすだけでなく、印字物の必要乾燥時間が長くなるなどの欠点があり、好ましくない。
【0005】
少ない液滴量でエリアファクタを得るための技術としては、インクの被記録媒体に対する浸透性を高めることが知られている。しかし、インクの浸透性を高めた場合、当該インクは被記録媒体表面上のみならず、被記録材内部へも浸透してしまい、十分な画像濃度、鮮明な発色性が得られない場合が生じる。
【0006】
以上のように、粒状感や色むらを低減させ、且つ、鮮明な色調を得ることは、画像形成におけるひとつの課題であった。又、この課題は、ブラックインクとカラーインクを用いて混色画像形成を行う場合、画像中での夫々の色材の相関も相まって、従来の技術では解決が困難であった。
【0007】
特に、ファインアートやデジタルフォトの分野においては、写真、描画、グラフィックなどのデジタル画像などの再現性の高いプリント、好みの表現をするためのプリントを実現することが望まれている。この分野においては、被記録媒体の基材の色や風合いを生かすため、インク受容層の塗布量が少ないコート紙であるファインアート紙が用いられる。このような被記録材に、上記の従来技術によるインクを用いて混色画像を形成した場合には、粒状感や色むらが特に顕著になること、鮮明な色調が得られないことといった問題が更に顕著となり、一層美麗な画像を得ることが望まれていた。
【0008】
これに対して、本発明者らは、一般的に水性インクを形成する基本成分、例えば、色材や水溶性有機溶剤等の適切な設計及び組み合わせ等を制御することにより、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調をもつ混色画像が形成されないかという課題を掲げて鋭意検討を行った。そして、その検討により、インクの構成成分を機能分離し、色材と水溶性有機溶剤の相互作用を利用したインクシステムを考案して、この課題を改善することができるインクセットを提供できるものと考えた。
【0009】
従って、本発明の目的は、ブラックとカラーのインクの組み合わせを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であり、且つ、保存安定性に優れたカラーインクを提供することにある。
【0010】
また、本発明の他の目的は、上記の優れたインクセットを用いることで、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調を有すること混色画像の形成が可能なインクジェット記録方法を提供することにある。
【0011】
また、本発明の他の目的は、上記記録方法に好適に用いることのできるインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法及びインクを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的は以下の本発明によって達成される。本発明のインクセットの一態様は、水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクとともに画像形成に用いられる少なくとも1色のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインクである。
【0013】
本発明にかかるインクジェット記録方法は、請求項6に記載のカラーインクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録方法である。
【0014】
本発明にかかるインクカートリッジは、上記のカラーインクを収容されていることを特徴とするインクカートリッジである。
【0015】
本発明にかかる記録ユニットは、上記のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニットである。
【0016】
本発明にかかるインクジェット記録装置は、上記のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置である。
【0017】
本発明にかかる画像形成方法は、上記のカラーインクを用いて、被記録媒体に多次色を形成する画像形成方法である。
【0018】
本発明にかかる水性インクの一態様は、ブラックインクと、水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを用いた画像形成方法の前記ブラックインクとして用いられる水性インクであって、水溶性有機溶剤として水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有することを特徴とする水性インクである。
【0019】
本発明にかかる水性インクの他の態様は、少なくとも1種類のカラーインクと、水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを用いた画像形成方法の前記カラーインクとして用いられる水性インクであって、カラーインクの水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることを特徴とする水性インクである。
【発明の効果】
【0020】
以上説明したように、本発明によれば、ブラックとカラーのインクの組み合わせを用いて混色画像の形成を行った際に、粒状感及び色むらを低減し、均一で、鮮明な色調を有することが可能であって、且つ、保存安定性に優れたカラーインクを提供することができる。
【0021】
また、本発明によれば、かかるカラーインクとブラックインクを組み合わせて用いることで、粒状感及び色むらを低減し、かつ均一で、鮮明な色調を有する画像を形成することができるインクカートリッジ、記録ユニット、インクジェット記録装置、画像形成方法、及びインクが提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下に、好ましい実施の形態をあげて本発明を更に詳細に説明する。本発明にかかるカラーインクの特徴は、水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることである。
ことを特徴とする又、より好ましい形態は、カラーインクに含まれる水溶性有機溶剤の、ブリストウ法によって求められる上記水溶性有機溶剤の各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒であることである。更に、より好ましい形態は、前記カラーインクにおける貧溶媒の全量(質量%)Bが少なくとも4%以上であることが挙げられる。
【0023】
上記構成のカラーインクを用いることで、粒状感及び色むらが低減し、且つ均一で、鮮明な色調を有する混色画像の形成が可能になる、という顕著な効果が得られることを見出し、本発明に至ったものである。
【0024】
このような、本発明にかかるブラックインクとカラーインクを用いた混色画像は、以下に述べるような理由により、粒状感及び色むらが低減し、且つ均一で、鮮明な色調を有することが可能になると考えられる。先ず、画像濃度を向上させるために、前述した従来の技術によって各々の色材を非記録材表面に凝集させた場合に、色むら及び粒状感が顕著となる原因について説明する。図9に示したように、被記録材90上にインク滴が着弾、色材が定着する際に、ブラックの色材で被覆することを意図した部分101、カラーの色材で被覆することを意図した部分104に対して、色材で被覆された部分102、105と、被覆できなかった部分103、106が生じてしまう。
【0025】
この現象は、以下のプロセスによるものと推定できる。即ち、色材で被覆できなかった部分103及び106と、被覆された部分102、105とのコントラストの差が大きく、視覚的に目立つ。このとき、カラーに比べ、ブラック色材の101と、102とのコントラストの差は、特に視覚的に目立ち易い。また、このとき、ブラックとカラーを比較すると、ブラックの方が視覚的に際立ってしまう傾向がある。これらの相関により、形成された混色画像は視覚的に不均一性があると認められ、画像中での色むら、粒状感を顕著にする。更に、ブラックがカラーに比べ目立ちすぎることで、ブラックに比べ感覚的にカラーの画像濃度が高く感じられなくなる。このため、形成された混色画像は、色調が不鮮明な印象を与える。
【0026】
一方、少ない液滴量でエリアファクタを得るため、被記録媒体に対する浸透性を高めたインクセットを用いた場合にも、以下のプロセスで同様の課題が生じる。即ち、図10に示すように、ブラック及びカラーのドット112、114において、色材の被記録材表面上の広がりが大きくなることにより、ブラックの色材で被覆することを意図した部分111、カラーの色材で被覆することを意図した部分113を色材で完全に被覆できるが、依然としてブラックがカラーに比べ視覚的に目立ってしまう。また、カラー色材が被記録材内部に浸透してしまい、画像濃度が減少するため、カラーの不鮮明さが際立ってしまう。これらの相関によって、形成画像は視覚的に不均一性が認められ、色むら、粒状感が顕著になり、また、見た目の色調が不鮮明となる。
【0027】
これら、従来のインク夫々の利点や欠点を追求し、更なる画像性能向上を追及した。そして、ブラックとカラーの視覚上の違いと、その相関に着目したところ、従来の技術では、十分なエリアファクタを得ることと、ブラックに対してカラーの印字濃度を相対的に際立たせることの2点を、十分なレベルでは両立できていないことがわかった。
【0028】
本発明にかかるインクは、このブラックとカラーの違いに着目し、色材ごとに、被記録材上での色材の様態を最適化することで、インク付与量を増大させることなく、インク滴が十分なエリアファクタを有し、且つ、ブラックに対して、相対的にカラーの印字濃度が際立った画像を形成している。即ち、色材を安定にさせない水溶性有機溶剤を、該色材に対する貧溶媒、色材を安定にさせる水溶性有機溶剤を良溶媒とし、ブラックインクには、色材に対する該良溶媒のみを、一方、カラーインクには色材に対する該良溶媒と、該貧溶媒とを含むインクを設計した。そして、このカラーインクとブラックインクを組み合わせて用いることで、従来技術では達成し得なかった、視覚的に均一で、色むら、粒状感のない、鮮明な色調をもつ混色画像の形成を可能としている。
【0029】
ここで本発明にかかる水性インクが被記録媒体上に着弾して、表面近傍で画像が形成されるまでの工程について説明する。
【0030】
先ず、本発明にかかる、貧溶媒が含まれたカラーインクを用いた場合には、図11(a)及び(b)に示したように、貧溶媒を含むインク滴123が、被記録媒体90に印刷された場合には、インクが被記録媒体上に着弾した後、インク中の、水と、水溶性有機溶剤と、色材との比率は変化していく。そして、水の蒸発と共に、まず、インク中の水溶性溶性有機溶剤のうちKa値の高い貧溶媒129が、Ka値の低い良溶媒よりも被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、インクドットが形成されていくと考えられる。
【0031】
図11の(b)〜(d)は、インクが被記録媒体90へ着弾してから後に定着するまでのインクの様子を示した模式図である。この場合におけるインクドットの広がり状態に着目すると、ドットの中心部125よりも、インクと紙の接触部分におけるドットの外周124において貧溶媒の濃度が高くなっていると考えられる。この結果、インクドットが被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散し、その広がる過程で、色材に対して貧溶媒129の濃度が急激に増加することが起こる。これに伴って色材が不安定化し、色材の凝集若しくは分散破壊が起こり、この結果、図11(b)に示したように、紙面上に新円形に近い縁取りをとりつつ拡散し、色材126が被記録媒体90の表面に留まることが起こり、ドットの外縁部分に、あたかも色材の土手が形成されたかのようになる。このようにして、図11(c)に示したように、色材のドットが真円形に形成され、その状態で紙面に固定化されると考えられる。この時点において、色材のドット形成は完了するが、インク中の水溶性有機溶剤及び水は更に拡散しながら放射状に広がっていく。つまり、色材のドット形成後も、水及び、水溶性有機溶剤は被記録媒体表面近傍を拡散していく。それに引き続き、良溶媒が多い中央部125の水溶性有機溶剤の蒸発や浸透により、図11(c)に示したように、この部分においても色材が析出して画像を形成するドット127が形成される。上記したようなプロセスによって形成されるインク画像は、真円形で、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、高い印字濃度と鮮明な色調を有するものとなり、しかも、フェザリングの発生が十分に軽減された高品位なものとなる。
【0032】
次に、本発明にかかる、色材に対する良溶媒のみからなるブラックインクを用いた場合には、以下のプロセスでドットが形成される。即ち、インク滴が被記録媒体上に着弾する際、貧溶媒が含まれる場合と同様に、インクドットは被記録媒体表面近傍で真円に近い形で拡散する。このとき、良溶媒のみしか含まないため、色材の分散性は安定に保たれる。そのため色材が被記録媒体の表面に留まることなく、インク中の水溶性有機溶剤及び水と共に、更に拡散しながら放射状に広がっていき。被記録媒体表面上、及び内部で広がったインクドットを形成する。これにより、単一色での画像濃度は、色材を表面凝集させた場合よりも若干劣るものの、十分なエリアファクタもつ画像が形成される。
【0033】
これらの、カラーインクとブラックインクの組み合わせを用いて形成した混色画像は以下のようになる。図12(a)及び(b)に示したように、被記録材90上で、ブラックインクにより形成されるドット131は、単一色での画像濃度という点では十分ではないものの、十分に広いエリアファクタを有する。また、カラーインクにより形成されるドット132は、十分に広いエリアファクタを有し、且つ、均一であり、高い印字濃度と鮮明な色調を有する。このため、各々の色材のエリアファクタが不十分なことによる視覚的な不均一性、即ち色むらや粒状感が大幅に低減される。また、ブラックとカラーの視覚的なバランスに着目すると、カラーの印字濃度が、ブラックに対し相対的に際立つことにより、各色の見た目のバランスが良好になる。以上の相関により、この形成された混色画像は、色むらや粒状感がなく、且つ、画像の均一性が非常に高く、見た目の色調が鮮明な、高品位なものとなるのである。
【0034】
本発明にかかるカラーインク及びブラックインクは、各インク中の水溶性有機溶剤を上記した特定の構成とする以外は、従来の水不溶性色材を含む水性インクと同様の構成とすればよい。即ち、本発明にかかるカラーインク及びブラックインクの第1の特徴は、ブラックインク中の水溶性有機溶剤としては、ブラックインク中の色材に対する良溶媒のみを含有し、且つ、カラーインク中の水溶性有機溶剤として、少なくとも1種の良溶媒である水溶性有機溶剤と、少なくとも1種の貧溶媒である水溶性有機溶剤とを含むことである。また、より好ましい形態としては、カラーインク中の種類の異なる複数の水溶性有機溶剤の各々の、ブリストウ法によって求められるKa値を比較したときに、Ka値が最大の水溶性有機溶剤が貧溶媒であることである。この結果、カラーインク中における水不溶性色材の分散安定性が非常に優れたものとなると同時に、被記録媒体、特に普通紙上に印字した場合に、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、且つ高い印字濃度を示す、非常に優れた印字品位をもたらす画像形成が可能になる。
【0035】
ここで、ブリストウ法によって求められるKa値について説明する。該値は、インクの被記録媒体への液の浸透性を表わす尺度として用いられる。インク液を引用例に採って説明すると、インクの浸透性を1m2あたりのインク量Vで表わすと、インク滴を吐出してから所定時間tが経過した後における、インクの被記録媒体への浸透量V(mL/m2=μm)は、下記に示すブリストウの式によって示される。
【0036】
V=Vr+Ka(t−tw)1/2
ここで、インク滴が被記録媒体表面に付着した直後には、インクは、被記録媒体表面の凹凸部分(被記録媒体の表面の粗さの部分)において吸収されるのが殆どで、被記録媒体内部へは殆ど浸透していない。その間の時間がコンタクトタイム(tw)であり、コンタクトタイムに被記録媒体の凹凸部に吸収されたインク量がVrである。そして、インクが付着した後、コンタクトタイムを超えると、該コンタクトタイムを超えた時間、即ち、(t−tw)の1/2乗べきに比例した分だけ被記録媒体への浸透量が増加する。Kaは、この増加分の比例係数であり、浸透速度に応じた値を示す。そして、このKa値は、ブリストウ法による液体の動的浸透性試験装置(例えば、商品名:動的浸透性試験装置S;東洋精機製作所製)等を用いて測定可能である。
【0037】
本発明にかかるカラーインクとブラックインクの組み合わせを用いて、上記に示したプロセスによって形成されるインク画像は、各水性インク中に含まれる溶媒特性によって、被記録媒体中での相対的なドット形成位置が定められるため、どの被記録媒体でも効果が得られる。特に、被記録媒体内部へインクが浸透しやすい、普通紙、及びインク受容層を有するコート紙での効果が大きい。更に、コート紙の中でも、特に被記録媒体の基材の色や風合いを生かすためにインク受容層の塗布量が少ないコート紙である、ファインアート紙などで最も効果を得ることができる。
【0038】
[良溶媒及び貧溶媒]
上記したような想定メカニズムの下で、本発明に用いる良溶媒及び貧溶媒は、水不溶性色材の分散状態を良好に維持できるか否かによって決定される。即ち、水不溶性色材、或いはその分散剤との関係において決定されるものである。従って、本発明にかかるインクの調製にあたって、良溶媒と貧溶媒とを選択する場合には、水不溶性色材の分散状態の安定性の程度を観察し、その結果から求めることが好ましい。そして本発明者らは、本発明の効果をもたらす良溶媒と貧溶媒との判定の基準を、本発明の効果との関連の下で種々検討した結果、判定しようとする溶媒50質量%程度を含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液を、60℃で、48時間保存したときの当該液体中の粒子径が、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液の粒径と比較して増加しているものを貧溶媒とし、判定しようとする溶媒を含まない、若しくは少量含み、且つ当該インクに用いる水不溶性色材を分散状態で含む顔料分散液と同じか、或いは減少しているものを良溶媒と定義した場合に、本発明の効果との整合性が極めてよいことを見出した。
【0039】
より具体的には、下記の方法で、特定の不溶性色材に対して使用する溶媒が、良溶媒となっているか、或いは貧溶媒となっているかの判定を行った。先ず、下記の2つの水不溶性色材分散液A及びBを調製する。
【0040】
A:判定対象としての水溶性有機溶剤の濃度が50%、水不溶性色材の濃度、又は、水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%、水の濃度が45%である組成の水不溶性色材分散液;
B:水不溶性色材及びその分散に寄与する物質の総量の濃度が5質量%の、水溶性有機溶剤を含まない水不溶性色材の水分散液。
【0041】
次に、上記分散液Aを60℃で48時間保存した後に常温に冷ました分散液Aの粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)等を用いて測定した。又、同様にして上記水分散液Bの粒径を、上記濃厚系粒径アナライザーを用いて測定した。そして、上記分散液A及び水分散液Bの各々の粒径値を、粒径(A)、粒径(B)としたときに、これらの値を下記の定義に従って良溶媒と貧溶媒とに判別した。このようにして、判定された良溶媒と貧溶媒とを用いて本発明の構成を有するインクを調製したところ、上記したような優れた効果を得られることが確認できた。良溶媒と貧溶媒は、上記において、粒径(A)が粒径(B)よりも大きい場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を貧溶媒とし、粒径(A)と粒径(B)と同じか、或いは粒径(A)が粒径(B)よりも減少した場合、当該判定対象としての水溶性有機溶剤を良溶媒として定義した。
【0042】
[水性媒体]
本発明にかかる水性インクは、少なくとも、水、色材、水溶性有機溶剤を含んでなるが、水としては種々のイオンを含有する一般の水ではなく、イオン交換水(脱イオン水)を使用するのが好ましい。水と混合して使用される水溶性有機溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール等の炭素数1〜4のアルキルアルコール類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド類;アセトン、ジアセトンアルコール等のケトン又はケトアルコール類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2,6−ヘキサントリオール、チオジグリコール、ヘキシレングリコール、ジエチレングリコール等のアルキレン基が2〜6個の炭素原子を含むアルキレングリコール類;グリセリン;エチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル、ジエチレングリコールメチル(又はエチル)エーテル、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン、2−ピロリドン、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等が挙げられる。これらの多くの水溶性有機溶剤の中でも、ジエチレングリコール等の多価アルコール、トリエチレングリコールモノメチル(又はエチル)エーテル等の多価アルコールの低級アルキルエーテルが好ましい。
【0043】
本発明にかかる水性インク中の水溶性有機溶剤の含有量は特に限定されないが、インク全質量に対して、好ましくは3〜50質量%の範囲とすることが好適である。又、インクに含有される水の量は、インク全質量に対して、好ましくは50〜95質量%の範囲とすることが好ましい。
【0044】
本発明の好ましい形態では、カラーインク中における良溶媒の全量(質量%)をA、インクにおける貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、これらの比率A:Bが10:5以上10:30未満の範囲内となるように、好ましくは、A:Bが、10:5以上〜10:10未満の範囲内となるように、更に好ましくは、比率A:Bが10:6〜10:10の範囲内となるように、水性インクを構成する水溶性有機溶剤の種類と含有量とを調整する。
【0045】
本発明者らの詳細な検討によれば、水性インク中に含まれる良溶媒の比率が多い場合には保存安定性に優れるが、高い印字濃度を得ることが難しく、又、逆に良溶媒の比率が少ない場合には、高い印字濃度を得ることができるが、保存安定性が不充分になることがある。これに対して、インク中の水溶性有機溶剤における良溶媒と貧溶媒との比率を上記のように制御すれば、インクの保存安定性と、高い印字濃度の実現との両立を図ることが可能となる。
【0046】
また、カラーインク中の貧溶媒の全量(質量%)Bは4%以上にすることが、高い画像濃度と長期保存性の両立の観点からより好ましい。
【0047】
更に、先に述べたように、本発明においては、カラーインク中に含有させる各水溶性有機溶剤を決定する場合に、含有させる各水溶性有機溶剤が有する、被記録媒体への浸透性を表わす尺度であるブリストウ法によって求められるKa値の値を制御することで、少ないインク液滴量であっても十分に大きなエリアファクタを有し、しかも高い印字濃度を実現できる、という従来得ることのできなかった効果の達成を図る。
【0048】
[水不溶性色材]
次に、本発明にかかる水性インクに含有される不溶性色材について説明する。本発明にかかる水性インクを構成する水不溶性色材としては、その分散方式にかかわらず、例えば、分散剤や活性剤を用いる樹脂分散タイプの顔料(樹脂分散型顔料)や、活性剤分散タイプの顔料であってもよいし、水不溶性色材自体の分散性を高めて分散剤等を用いることなく分散可能とした、マイクロカプセル型顔料や、顔料粒子の表面に親水性基を導入した自己分散タイプの顔料(自己分散型顔料)や、更には、顔料粒子の表面に高分子を含む有機基が化学的に結合している改質された顔料(ポリマー結合型自己分散顔料)を用いることができる。もちろん、これらの分散方法の異なる顔料を組み合わせて使用することも可能である。以下、本発明に用いることのできるこれらの顔料について説明する。
【0049】
[顔料]
本発明にかかる水性インクに使用することのできる顔料は特に限定されず、下記に挙げるようなものをいずれも使用することができる。また、1つの水性インク中に必要に応じて複数種の顔料を併用することもできる。顔料の水性インク中の含有量は水性インクの用途に応じて設定される。
【0050】
黒色インクに使用される顔料としては、カーボンブラックが好適である。例えば、ファーネスブラック、ランプブラック、アセチレンブラック、チャンネルブラック等のカーボンブラックをいずれも使用することができる。具体的には、例えば、レイヴァン(Raven)7000、レイヴァン5750、レイヴァン5250、レイヴァン5000ULTRA、レイヴァン3500、レイヴァン2000、レイヴァン1500、レイヴァン1250、レイヴァン1200、レイヴァン1190ULTRA−II、レイヴァン1170、レイヴァン1255(以上、コロンビア社製)、ブラックパールズ(Black Pearls)L、リーガル(Regal)400R、リーガル330R、リーガル660R、モウグル(Mogul)L、モナク(Monarch)700、モナク800、モナク880、モナク900、モナク1000、モナク1100、モナク1300、モナク1400、モナク2000、ヴァルカン(Valcan)XC−72R(以上、キャボット社製)、カラーブラック(Color Black)FW1、カラーブラックFW2、カラーブラックFW2V、カラーブラックFW18、カラーブラックFW200、カラーブラックS150、カラーブラックS160、カラーブラックS170、プリンテックス(Printex)35、プリンテックスU、プリンテックスV、プリンテックス140U、プリンテックス140V、スペシャルブラック(Special Black)6、スペシャルブラック5、スペシャルブラック4A、スペシャルブラック4(以上、デグッサ社製)、No.25、No.33、No.40、No.47、No.52、No.900、No.2300、MCF−88、MA600、MA7、MA8、MA100(以上、三菱化学社製)等の市販品を使用することができる。又、本発明のために別途新たに調製されたカーボンブラックを使用することもできる。しかし、本発明は、これらに限定されるものではなく、従来公知のカーボンブラックをいずれも使用することができる。又、カーボンブラックに限定されず、マグネタイト、フェライト等の磁性体微粒子や、チタンブラック等を黒色顔料として用いてもよい。
【0051】
有機顔料としては、具体的には、例えば、トルイジンレッド、トルイジンマルーン、ハンザエロー、ベンジジンエロー、ピラゾロンレッド等の不溶性アゾ顔料、リトールレッド、ヘリオボルドー、ピグメントスカーレット、パーマネントレッド2B等の溶性アゾ顔料、アリザリン、インダントロン、チオインジゴマルーン等の建染染料からの誘導体、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン等のフタロシアニン系顔料、キナクリドンレッド、キナクリドンマゼンタ等のキナクリドン系顔料、ペリレンレッド、ペリレンスカーレット等のペリレン系顔料、イソインドリノンエロー、イソインドリノンオレンジ等のイソインドリノン系顔料、ベンズイミダゾロンエロー、ベンズイミダゾロンオレンジ、ベンズイミダゾロンレッド等のイミダゾロン系顔料、ピランスロンレッド、ピランスロンオレンジ等のピランスロン系顔料、インジゴ系顔料、縮合アゾ系顔料、チオインジゴ系顔料、ジケトピロロピロール系顔料、フラバンスロンエロー、アシルアミドエロー、キノフタロンエロー、ニッケルアゾエロー、銅アゾメチンエロー、ペリノンオレンジ、アンスロンオレンジ、ジアンスラキノニルレッド、ジオキサジンバイオレット等が挙げられる。勿論、これらに限定されず、その他の有機顔料であってもよい。
【0052】
又、本発明で使用することのできる有機顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーにて示すと、例えば、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、17、20、24、74、83、86、93、97、109、110、117、120、125、128、137、138、147、148、150、151、153、154、166、168、180、185、C.I.ピグメントオレンジ16、36、43、51、55、59、61、71、C.I.ピグメントレッド9、48、49、52、53、57、97、122、123、149、168、175、176、177、180、192、215、216、217、220、223、224、226、227、228、238、240、254、255、272、C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3、15:4、15:6、22、60、64、C.I.ピグメントグリーン7、36、C.I.ピグメントブラウン23、25、26等が例示できる。
【0053】
[樹脂分散型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、分散剤を用いた樹脂分散型顔料も使用可能であるが、この場合には、上記に列挙したような疎水性の顔料を分散させるための化合物が必要となる。このようなものとしては、いわゆる分散剤、界面活性剤、樹脂分散剤等を用いることができる。分散剤又は界面活性剤としては、特に限定はないが、中でも、アニオン系、ノニオン系のものを好適に使用できる。例えば、アニオン系のものとしては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルリン酸エステル塩、ナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキル硫酸エステル塩、及びこれらの置換誘導体等;ノニオン系のものとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、グリセリン脂肪酸エステル、オキシエチレンオキシプロピレンブロックポリマー、及びこれらの置換誘導体等が挙げられる。樹脂分散剤としては、スチレン及びその誘導体、ビニルナフタレン及びその誘導体、α,β−エチレン性不飽和カルボン酸の脂肪族アルコールエステル等、アクリル酸及びその誘導体、マレイン酸及びその誘導体、イタコン酸及びその誘導体、フマール酸及びその誘導体、酢酸ビニル、ビニルアルコール、ビニルピロリドン、アクリルアミド、及びその誘導体等から選ばれた少なくとも2つの単量体(このうち少なくとも1つは親水性単量体)からなるブロック共重合体、ランダム共重合体及びグラフト共重合体、並びにこれらの塩等を挙げることができる他、これらの共重合体を2種類以上併用して用いることも可能である。
【0054】
[マイクロカプセル型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化してなるマイクロカプセル型顔料を使用することもできる。水不溶性色材を有機高分子類で被覆してマイクロカプセル化する方法としては、化学的製法、物理的製法、物理化学的方法、機械的製法等が挙げられる。具体的には、界面重合法、in−situ重合法、液中硬化被膜法、コアセルベーション(相分離)法、液中乾燥法、融解分散冷却法、気中懸濁被覆法、スプレードライング法、酸析法、転相乳化法等が挙げられる。
【0055】
マイクロカプセルの壁膜物質を構成する材料として使用される有機高分子類としては、例えば、ポリアミド、ポリウレタン、ポリエステル、ポリウレア、エポキシ樹脂、ポリカーボネート、尿素樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、多糖類、ゼラチン、アラビアゴム、デキストラン、カゼイン、タンパク質、天然ゴム、カルボキシポリメチレン、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリ酢酸ビニル、ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、セルロース、エチルセルロース、メチルセルロース、ニトロセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、酢酸セルロース、ポリエチレン、ポリスチレン、(メタ)アクリル酸の重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸エステルの重合体又は共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、アルギン酸ソーダ、脂肪酸、パラフィン、ミツロウ、水ロウ、硬化牛脂、カルナバロウ、アルブミン等が挙げられる。
【0056】
これらの中ではカルボン酸基又はスルホン酸基等のアニオン性基を有する有機高分子類を使用することが可能である。又、ノニオン性有機高分子としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコールモノメタクリレート、ポリプロピレングリコールモノメタクリレート、メトキシポリエチレングリコールモノメタクリレート又はそれらの(共)重合体)、2−オキサゾリンのカチオン開環重合体等が挙げられる。特に、ポリビニルアルコールの完全ケン物は、水溶性が低く、熱水には解け易いが冷水には解けにくいという性質を有しており特に好ましい。
【0057】
マイクロカプセル化の方法として転相法又は酸析法を選択する場合は、マイクロカプセルの壁膜物質を構成する有機高分子類としては、アニオン性有機高分子類を使用する。転相法は、水に対して自己分散能又は溶解能を有するアニオン性有機高分子類と、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材との複合物又は複合体、或いは自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材、硬化剤及びアニオン性有機高分子類との混合体を有機溶媒相とし、該有機溶媒相に水を投入するか、或いは水中に該有機溶媒相を投入して、自己分散(転相乳化)化しながらマイクロカプセル化する方法である。上記転相法において、有機溶媒相中に、インクに用いられる水溶性有機溶剤や添加剤を混入させて製造しても何等問題はない。特に、直接インク用の分散液を製造できることからいえば、インクの液媒体を混入させる方がより好ましい。
【0058】
一方、酸析法は、アニオン性基含有有機高分子類のアニオン性基の一部又は全部を塩基性化合物で中和し、自己分散性有機顔料又は自己分散型カーボンブラック等の色材と、水性媒体中で混練する工程及び酸性化合物でpHを中性又は酸性にしてアニオン性基含有有機高分子類を析出させて、顔料に固着する工程とからなる製法によって得られる含水ケーキを、塩基性化合物を用いてアニオン性基の一部又は全部を中和することによりマイクロカプセル化する方法である。このようにすることによって、微細で顔料を多く含むアニオン性マイクロカプセル化顔料を製造することができる。
【0059】
又、上記に挙げたようなマイクロカプセル化の際に用いられる溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール等のアルキルアルコール類;ベンゾール、トルオール、キシロール等の芳香族炭化水素類;酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル類;クロロホルム、二塩化エチレン等の塩素化炭化水素類;アセトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類等が挙げられる。尚、上記の方法により調製したマイクロカプセルを遠心分離又は濾過等によりこれらの溶剤中から一度分離して、これを水及び必要な溶剤とともに撹拌、再分散を行い、目的とするマイクロカプセル型顔料とすることもできる。以上の如き方法で得られるカプセル化顔料の平均粒径は50nm〜180nmであることが好ましい。
【0060】
[自己分散型顔料]
本発明にかかる水性インク中に含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能とした自己分散型の顔料を使用することもできる。自己分散型顔料としては、顔料粒子表面に、親水性基が直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合しているものが挙げられる。例えば、顔料粒子表面に導入された親水性基が、−COOM1、−SO3M1及び−PO3H(M1)2(式中のM1は、水素原子、アルカリ金属、アンモニウム又は有機アンモニウムを表わす。)からなる群から選ばれるもの等を好適に用いることができる。更に、上記他の原子団が、炭素原子数1〜12のアルキレン基、置換若しくは未置換のフェニレン基又は置換若しくは未置換のナフチレン基であるもの等を好適に用いることができる。その他にも、カーボンブラックを次亜塩素酸ソーダで酸化処理する方法、水中オゾン処理でカーボンを酸化する方法、オゾン処理を施した後に酸化剤により湿式酸化し、カーボンブラック表面を改質する方法等によって得られる、表面酸化処理タイプの自己分散顔料も好適に用いることができる。
【0061】
[ポリマー結合型自己分散顔料]
本発明にかかる水性インクに含有される水不溶性色材としては、先に述べたように、水不溶性色材自体の分散性を高めた、分散剤等を用いることなく分散可能としたポリマー結合型自己分散顔料も使用可能である。この分散剤を用いないポリマー結合型自己分散顔料は、顔料の表面に、直接若しくは他の原子団を介して化学的に結合されている官能基と、イオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合体と、の反応物を含むものを用いることが好ましい。即ち、このような構造を有するものを使用すれば、表面を改質する場合に用いる共重合体の形成材料であるイオン性モノマーと疎水性モノマーとの共重合比率を適宜に変化させることができ、これによって改質された顔料の親水性を適宜に調整できるので好適である。又、使用するイオン性モノマー及び疎水性モノマーの種類や、両者の組み合わせを適宜に変化させることができるため、顔料表面に様々な特性を付与することもでき、この点からも好適である。
【0062】
(官能基)
上記ポリマー結合型自己分散顔料における官能基は、顔料表面に直接、若しくは他の原子団を介して化学的に結合している。該官能基は、後述する共重合体との反応によって有機基を構成するためのものであり、ここで官能基の種類は、該共重合体が担持している官能基との関連において選択される。そして、官能基と共重合体との反応は、当該顔料が水性媒体中に分散されるものであることを考慮すると、加水分解等を生じることのない結合、例えばアミド結合等を生じるような反応とすることが好ましい。該官能基をアミノ基とし、共重合体にカルボキシル基を担持させることによって、共重合体を、顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。又、官能基をカルボキシル基とし、共重合体にアミノ基を担持させることによっても同様に共重合体を顔料粒子表面にアミド結合を介して導入することができる。
【0063】
ここで、顔料表面に化学的に結合されている官能基は、直接、顔料表面に結合していてもよく、又、他の原子団を介して結合していてもよい。しかし、比較的分子量の大きな共重合体を顔料表面に導入する場合、共重合体同士の立体障害を避けるために、他の原子団を介して官能基を顔料表面に導入することが好ましい。ここで、他の原子団は、多価の元素や有機基であれば特に限定されるものでない。しかし、上記した理由により官能基の顔料表面からの距離を制御するという観点から、例えば2価の有機残基が好ましく用いられる。2価の有機残基の例は、アルキレン基やアリーレン基(フェニレン基)等を包含する。
【0064】
より具体的に述べると、例えば後述する実施例においては、顔料をアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホンと反応させて、顔料表面にアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基を導入し、その後、ペンタエチレンヘキサミンのアミノ基とアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とを反応させることにより、官能基としてのアミノ基を導入している。この場合には、アミノ基は、フェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して顔料表面に化学的に結合している、ということができる。
【0065】
(ポリマー結合型自己分散顔料の共重合ポリマー)
上記イオン性モノマーと疎水性モノマーからなる共重合体としては、例えば、アニオン性を有するアニオン性の共重合体、或いはカチオン性を有するカチオン性の共重合体が好適に用いられる。
【0066】
上記アニオン性の共重合体としては、疎水性モノマーと、アニオン性モノマーからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。この際に使用する代表的な疎水性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、スチレン、ビニルナフタレン、メチルメタクリレート等のメタクリル酸アルキルエステル、フェニルメタクリレート、ベンジルメタクリレート、2−エトキシエチルメタクリレート、メタクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、p−トリルメタクリレート、ソルビルメタクリレート、メチルアクリレート等のアクリル酸アルキルエステル、フェニルアクリレート、ベンジルアクリレート、アクリロニトリル、2−トリメチルシロキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、p−トリルアクリレート及びソルビルアクリレート等である。
【0067】
上記において使用するアニオン性モノマーとしては、次に挙げるモノマーがあるが、本発明は、これらに限定されるものではない。例えば、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸等が挙げられる。
【0068】
本発明にかかる共重合体の一態様としての、アニオン性モノマーと疎水性モノマーと、からなるアニオン性の共重合体としては、上記に挙げた疎水性モノマーから選択されたいずれかと、上記に挙げたアニオン性モノマーから選択された少なくとも1つとの、少なくとも2つ以上のモノマーからなる。該共重合体は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いは、これらの塩等を包含する。
【0069】
かかるアニオン性の共重合体の酸価としては、100〜500の範囲のものが好ましく、且つ、酸価のばらつきが平均酸価の20%以内であるものを使用することが好ましい。酸価をかかる範囲内とすることによって、顔料表面の親水性が高過ぎて、印字後におけるインク中の水及び溶剤が顔料表面にとどまり、記録媒体への印字後における、インクの耐マーカー性の発現が遅くなることを有効に抑制することができる。又、顔料の表面の親水性が低過ぎてしまい、インク中に顔料が安定に分散しにくくなるといったことも有効に抑制することができる。
【0070】
尚、前記した塩とは、ナトリウム、リチウム、カリウム等のアルカリ金属塩の他、アンモニウム塩、アルキルアミン塩、アルカノールアミン塩等が挙げられ、これらを、単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0071】
次に、本発明にかかる共重合体の他の実施態様としての、カチオン性モノマーと疎水性モノマーとからなるカチオン性の共重合体について説明する。カチオン性の共重合体としては、下記に挙げる疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとからなる共重合体、或いは、これらの塩等が挙げられる。疎水性モノマーとしては、先に挙げたモノマーを使用することができる。
【0072】
カチオン性モノマーとしては、例えば、アリルアミン、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、第3−ブチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ジメチルアミノプロピルメタクリルアミド、N−ビニルカルバゾール、メタクリルアミド、アクリルアミド及びジメチルアクリルアミド等を使用することができる。
【0073】
カチオン性の共重合体は、上記モノマーから選ばれた疎水性モノマーと、カチオン性モノマーとを含む少なくとも2つ以上のモノマーからなるブロック共重合体、ランダム共重合体、グラフト共重合体、或いはこれらの塩等が挙げられる。特に、カチオン性の共重合体のアミン価が100〜500の範囲のものが好ましく、又、アミン価のばらつきが平均アミン価の20%以内であることが好ましい。アミン価とは、試料1gを中和するのに要する塩酸に当量の、KOHのmg数で表す。尚、前記、塩とは、酢酸、塩酸、硝酸等が挙げられ、これらを単独或いは数種類を適宜に組み合わせて使用できる。
【0074】
以上で説明したアニオン性或いはカチオン性の共重合体は、その重量平均分子量(Mw)が、1,000〜20,000の範囲のものを好ましく使用でき、更に好ましくは、3,000〜20,000の範囲のものが好ましく使用できる。又、カチオン性の共重合体セグメントの多分散度Mw/Mn(重量平均分子量Mw、数平均分子量Mn)が、3以下であるものを使用することが好ましい。このようなカチオン性の共重合体のインク中における含有量は、該共重合体によって表面改質された顔料粒子に対して、その含有率が5質量%以上40質量%以下であることが好ましい。又、共重合体の多分散度については、多分散度が大きい場合には、共重合体の分子量分布が広くなり、共重合体の分子量に基づく上記で述べた性質が発現しにくくなるため、共重合体の分子量分布は、揃っている方が好ましい。
【0075】
次に、カーボンブラックを例に挙げて、顔料粒子表面に化学的に有機基を結合させて、顔料を改質する方法について説明する。この際に用いることのできる方法としては、顔料粒子表面の官能基、或いは顔料粒子表面に官能基を導入し、これらの官能基に、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体を結合させ、該共重合体を顔料粒子表面に化学的に結合させる方法であれば、通常用いられるいずれの方法でもよく、特に限定されない。このような方法としては、例えば、以下の方法等を用いることができる。
【0076】
カーボンブラック等の顔料粒子表面に、ポリエチレンイミン等を導入し、その末端官能基に、アミノ基を有する、イオン性モノマーと疎水性モノマーとからなる共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法や、カーボンブラック等の顔料粒子表面に、分子内にアミノ基とカルボキシル基を有する共重合体をジアゾニウム反応で結合させる方法等の方法を用いることができる。この他のものとしては、最も典型的な例が、WO 01/51566 A1に開示されている。
【0077】
上記した方法において、例えば、アニオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の3工程を含むこととなる。
【0078】
第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応で、アミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
【0079】
第2工程;APSES処理をしたカーボンブラックに、ポリエチレンイミンやペンタエチレンヘキサミン(PEHA)を付加させる工程。
【0080】
第3工程;疎水性モノマーとカルボキシル基を有するイオン性モノマーとの共重合体をつける工程。
【0081】
上記第2の工程では、第1の工程によってカーボンブラック表面に化学的に結合しているフェニル(2−スルホエチル)スルホン基とAPSESのアミノ基とを反応させることによって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてのアミノ基が導入される。そして第3の工程においては、例えば共重合体のイオン性モノマー部分が有するカルボキシル基の一部をアミノ基と反応させてアミド結合を形成させることによって、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基とPEHAの残基とを含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0082】
又、上記した方法において、例えば、カチオン性の共重合体を、カーボンブラック粒子表面に化学的に結合させる場合には、下記の2工程を含むこととなる。 第1工程;カーボンブラックにジアゾニウム反応でアミノフェニル(2−スルホエチル)スルホン基(APSES)を付加させる工程。
【0083】
第2工程;疎水性モノマーとカチオン性モノマーとの共重合体をつける工程。上記第1の工程によって、カーボンブラック表面に化学的に結合してなる官能基としてスルホン基が導入される。そして第2の工程においては、例えば、共重合体のイオン性モノマー部分が有するアミノ基の一部をスルホン基と反応させて(求核置換)、共重合体をカーボンブラックの表面に、APSESの残基であるフェニル(2−スルホエチル)基を含む原子団を介して共重合体が導入できる。
【0084】
<その他の成分>
本発明にかかる水性インクは、保湿性維持のために、上記した成分の他に、尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン、トリメチロールエタン等の保湿性固形分をインク成分として用いてもよい。尿素、尿素誘導体、トリメチロールプロパン等の、保湿性固形分のインク中の含有量は、一般には、インクに対して0.1〜20.0質量%の範囲とすることが好ましく、より好ましくは3.0〜10.0質量%の範囲である。
【0085】
更に、本発明にかかるインクセットを構成するインクには、上記成分以外にも必要に応じて、界面活性剤、pH調整剤、防錆剤、防腐剤、防黴剤、酸化防止剤、還元防止剤、蒸発促進剤、キレート化剤等の、種々の添加剤を含有させてもよい。
【0086】
上記で説明したような構成成分からなる本発明で使用するブラック及びカラーインクは、インクジェット記録ヘッドから良好に吐出できる特性を有することが好ましい。このため、インクジェット記録ヘッドからの吐出性という観点からは、インクの特性が、例えば、その粘度が1〜15mPa・s、表面張力が25mN/m以上、更には、粘度が1〜5mPa・s、表面張力が25〜50mN/mとすることが好ましい。又、ブラックインクとカラーインクとを併用する場合には特に、ブラックインクの表面張力よりもカラーインクの表面張力が低いことが更に好ましい。具体的には、ブラックインクが35〜50mN/m、カラーインクが25〜35mN/mである。
【0087】
[インクセット]
本発明のカラーインクは、 水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを少なくとも1種類と、水溶性有機溶媒として水溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを組み合わせて、2色以上の水性インクを有するインクセットとすることが好適である。
【0088】
本発明で言うインクセットは、少なくとも1種類のカラーインクとブラックインク、若しくは2種類以上のカラーインクが一体のインクタンク又は、ヘッドつきインクタンクで構成されるインクセット、又は、記録装置に対し個別のインクタンクが脱着可能で有るように用いられる事を実質的に「これらのインクを有するインクセット」と称する。いずれにしても、本発明においては、使用される(プリンター内であるいはインクタンクとして)他のインクに対して、本発明のインク単体の特性を相対的に規定するもので、これらの上記形態に限らず、どのような変形の形態で有っても良い。
【0089】
[記録方法、記録ユニット、カートリッジ及び記録装置]
次に、本発明にかかるインクジェット記録装置の一例について説明するが、該装置は、先に説明した本発明にかかるカラーインクが収容されていることを特徴とする。先ず、熱エネルギーを利用したインクジェット記録装置の主要部であるヘッド構成の一例を、図1及び図2に示す。図1は、インク流路に沿ったヘッド13の断面図であり、図2は図1のA−B線での切断面図である。ヘッド13はインクを通す流路(ノズル)14を有するガラス、セラミック、シリコン又はプラスチック板等と発熱素子基板15とを接着して得られる。
【0090】
発熱素子基板15は、酸化シリコン、窒化シリコン、炭化シリコン等で形成される保護層16、アルミニウム、金、アルミニウム−銅合金等で形成される電極17−1及び17−2、HfB2、TaN、TaAl等の高融点材料から形成される発熱抵抗体層18、熱酸化シリコン、酸化アルミニウム等で形成される蓄熱層19、シリコン、アルミニウム、窒化アルミニウム等の放熱性のよい材料で形成される基板20よりなっている。
【0091】
上記ヘッド13の電極17−1及び17−2にパルス状の電気信号が印加されると、発熱素子基板15のnで示される領域が急速に発熱し、この表面に接しているインク21に気泡が発生し、その圧力でメニスカス23が突出し、インク21がヘッドのノズル14を通して吐出し、吐出オリフィス22よりインク小滴24となり、記録媒体25に向かって飛翔する。図3には、図1に示したヘッドを多数並べたマルチヘッドの一例の外観図を示す。このマルチヘッドは、マルチノズル26を有するガラス板27と、図1に説明したものと同じような発熱ヘッド28を接着して作られている。
【0092】
図4に、このヘッドを組み込んだインクジェット記録装置の一例を示す。図4において、61はワイピング部材としてのブレードであり、その一端はブレード保持部材によって保持固定されており、カンチレバーの形態をなす。ブレード61は記録ヘッド65による記録領域に隣接した位置に配置され、又、図示した例の場合、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。
【0093】
62は記録ヘッド65の突出口面のキャップであり、ブレード61に隣接するホームポジションに配置され、記録ヘッド65の移動方向と垂直な方向に移動して、インク吐出口面と当接し、キャッピングを行う構成を備える。更に、63はブレード61に隣接して設けられるインク吸収体であり、ブレード61と同様、記録ヘッド65の移動経路中に突出した形態で保持される。上記ブレード61、キャップ62及びインク吸収体63によって吐出回復部64が構成され、ブレード61及びインク吸収体63によって吐出口面に水分、塵埃等の除去が行われる。
【0094】
65は、吐出エネルギー発生手段を有し、吐出口を配した吐出口面に対向する記録媒体にインクを吐出して記録を行う記録ヘッド、66は記録ヘッド65を搭載して記録ヘッド65の移動を行うためのキャリッジである。キャリッジ66はガイド軸67と摺動可能に係合し、キャリッジ66の一部はモーター68によって駆動されるベルト69と接続(不図示)している。これによりキャリッジ66はガイド軸67に沿った移動が可能となり、記録ヘッド65による記録領域及びその隣接した領域の移動が可能となる。
【0095】
51は記録媒体を挿入するための給紙部、52は不図示のモーターにより駆動される紙送りローラーである。これらの構成により記録ヘッド65の吐出口面と対向する位置へ記録媒体が給紙され、記録の進行につれて排紙ローラー53を配した排紙部へ排紙される。以上の構成において記録ヘッド65が記録終了してホームポジションへ戻る際、吐出回復部64のキャップ62は記録ヘッド65の移動経路から退避しているが、ブレード61は移動経路中に突出している。その結果、記録ヘッド65の吐出口がワイピングされる。
【0096】
尚、キャップ62が記録ヘッド65の吐出面に当接してキャッピングを行う場合、キャップ62は記録ヘッドの移動経路中に突出するように移動する。記録ヘッド65がホームポジションから記録開始位置へ移動する場合、キャップ62及びブレード61は上記したワイピングのときの位置と同一の位置にある。この結果、この移動においても記録ヘッド65の吐出口面はワイピングされる。上述の記録ヘッドのホームポジションへの移動は、記録終了時や吐出回復時ばかりでなく、記録ヘッドが記録のために記録領域を移動する間に所定の間隔で記録領域に隣接したホームポジションへ移動し、この移動に伴って上記ワイピングが行われる。
【0097】
図5は、記録ヘッドにインク供給部材、例えば、チューブを介して供給されるインクを収容したインクカートリッジの一例を示す図である。ここで40は供給用インクを収納したインク収容部、例えば、インク袋であり、その先端にはゴム製の栓42が設けられている。この栓42に針(不図示)を挿入することにより、インク袋40中のインクをヘッドに供給可能にする。44は廃インクを受容するインク吸収体である。インク収容部としてはインクとの接液面がポリオレフィン、特にポリエチレンで形成されているものが好ましい。
【0098】
本発明で使用されるインクジェット記録装置としては、上述のようにヘッドとインクカートリッジとが別体となったものに限らず、図6に示すようなそれらが一体になったものにも好適に用いられる。図6において、70は記録ユニットであり、この中にはインクを収容したインク収容部、例えば、インク吸収体が収納されており、かかるインク吸収体中のインクが複数オリフィスを有するヘッド部71からインク滴として吐出される構成になっている。インク吸収体の材料としてはポリウレタンを用いることが本発明にとって好ましい。又、インク吸収体を用いず、インク収容部が内部にバネ等を仕込んだインク袋であるような構造でもよい。72はカートリッジ内部を大気に連通させるための大気連通口である。この記録ユニット70は図4に示す記録ヘッド65に換えて用いられるものであって、キャリッジ66に対して着脱自在になっている。
【0099】
次に、力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置の好ましい一例について説明する。力学的エネルギーを利用したインクジェット記録装置としては、複数のノズルを有するノズル形成基板と、ノズルに対向して配置される圧電材料と導電材料からなる圧力発生素子と、この圧力発生素子の周囲を満たすインクを備え、印加電圧により圧力発生素子を変位させ、インクの小液滴をノズルから吐出させるオンデマンドインクジェット記録ヘッドを挙げることができる。その記録装置の主要部である記録ヘッドの構成の一例を図7に示す。
【0100】
ヘッドは、インク室(不図示)に連通したインク流路80と、所望の体積のインク滴を吐出するためのオリフィスプレート81と、インクに直接圧力を作用させる振動板82と、この振動板82に接合され、電気信号により変位する圧電素子83と、オリフィスプレート81、振動板82等を指示固定するための基板84とから構成されている。
【0101】
図7において、インク流路80は、感光性樹脂等で形成され、オリフィスプレート81は、ステンレス、ニッケル等の金属を電鋳やプレス加工による穴あけ等により吐出口85が形成され、振動板82はステンレス、ニッケル、チタン等の金属フィルム及び高弾性樹脂フィルム等で形成され、圧電素子83は、チタン酸バリウム、PZT等の誘電体材料で形成される。以上のような構成の記録ヘッドは、圧電素子83にパルス状の電圧を与え、歪み応力を発生させ、そのエネルギーが圧電素子83に接合された振動板を変形させ、インク流路80内のインクを垂直に加圧しインク滴(不図示)をオリフィスプレート81の吐出口85より吐出して記録を行うように動作する。このような記録ヘッドは、図4に示したものと同様なインクジェット記録装置に組み込んで使用される。インクジェット記録装置の細部の動作は、先述と同様に行うもので差しつかえない。
【実施例】
【0102】
次に、実施例及び比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、下記実施例によって限定されるものではない。尚、文中「部」、及び「%」とあるものは、特に記載のない限り質量基準である。
【0103】
(ブラック顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0104】
上記のポリマー溶液を120g、カーボンブラックを100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0105】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のブラック顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のブラック顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するブラック顔料分散液を調製した。最終的に得られたブラック顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0106】
(シアン顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0107】
上記のポリマー溶液を120g、ピグメントブルー15:3を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0108】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のシアン顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のシアン顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するシアン顔料分散液を調製した。最終的に得られたシアン顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0109】
(マゼンタ顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0110】
上記のポリマー溶液を120g、C.I.ピグメントレッド122を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0111】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のマゼンタ顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のマゼンタ顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するマゼンタ顔料分散液を調製した。最終的に得られたマゼンタ顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0112】
(イエロー顔料分散液の調製)
ベンジルアクリレートとメタクリル酸を原料として、常法により、酸価250、数平均分子量2000のAB型ブロックポリマーを作り、更に、水酸化カリウム水溶液で中和し、イオン交換水で希釈して均質な50質量%ポリマー水溶液を作成した。
【0113】
上記のポリマー溶液を120g、C.I.ピグメントイエロー74を100gおよびイオン交換水を280g混合し、そして機械的に0.5時間撹拌した。ついで、マイクロフリュイダイザーを使用し、この混合物を、液体圧力約10,000psi(約700kg/cm2)下で相互作用チャンバ内に5回通すことによって処理した。
【0114】
更に、上記で得た分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、大粒子径側のイエロー顔料分散液を調製した。
これとは別に上記方法と同様の方法でマイクロフリュイダイザーのチャンバ内に通す回数を10回とし、より微粒子化を試みた。得られた分散液を遠心分離処理(12,000rpm、20分間)することによって、粗大粒子を含む非分散物を除去し、小粒子径側のイエロー顔料分散液を調製した。これら二種類の顔料分散液を混ぜることにより、実施例に使用するイエロー顔料分散液を調製した。最終的に得られたイエロー顔料分散液は、その顔料濃度が10.0質量%、分散剤濃度が7.0質量%であった。
【0115】
[各水溶性有機溶剤についてのKa値測定方法]
各水溶性有機溶剤のKa値測定において、測定しやすいように、下記の組成を有する染料濃度0.5%の染料水溶液を作製した。
・水溶性染料C.I.ダイレクトブルー199:0.5部
・純水:99.5部
次いで、この0.5%染料水溶液を利用して以下の配合比で、測定対象の各水溶性有機溶剤を使用して、着色された水溶性有機溶剤の20%水溶液をそれぞれ作製した。
・上記0.5%染料水溶液:80部
・表1に記載の水溶性有機溶剤:20部
上記で調製した各水溶性有機溶剤の20%水溶液を測定用の試料として、東洋精機製作所製の動的浸透性試験装置S(商品名)を用い、ブリストウ法により水溶性有機溶剤20%水溶液のKa値をそれぞれ求めた。
【0116】
尚、測定の際、記録媒体として、キヤノン社製、PPC用紙NSKを23℃40%の環境下に24時間放置したものを用いた。
【0117】
(判定及び測定結果)
上記のようにして測定した、インクに使用し得る各水溶性有機溶剤について、各水溶性有機溶剤の20%水溶液におけるKa値の測定結果を表1に記した。
【0118】
【表1】
【0119】
[使用した水溶性有機溶剤の良溶媒及び貧溶媒の判定方法]
上記顔料分散体中の顔料、若しくは顔料と分散剤とに対する良溶媒と貧溶媒とを選択するために以下の実験を行った。先ず、上記ブラック及びカラー顔料分散液の固形分濃度10%水溶液を調製し、これを用いて、以下の配合比にて良溶媒、貧溶媒の判定用分散液を作成した。
(良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の配合比)
・各顔料分散液の固形分濃度10%水溶液:50部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:50部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した良溶媒、貧溶媒の判定用分散液10gを透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分攪拌し、これを60℃のオーブン内に48時間静置した。その後、60℃オーブンから取り出した分散液を測定用サンプルとして、当該液中の水不溶性色材の粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いて測定し、これを60℃、48時間加温保存後の良溶媒、貧溶媒の判定用分散液の原液粒径(希釈せずに測定した粒子径)とした。一方、レファレンスとして、良溶媒、貧溶媒の判定用分散液と固形分濃度が等しい顔料水分散体、つまり、水溶性有機溶剤の代わりに同量の水を加えた良溶媒、貧溶媒の判定比較用の顔料水分散液を作成し、当該水分散液は加温保存を行うことなしに上記と同様に濃厚系粒径アナライザーによって液中の水不溶性色材の粒径を測定した。そして、得られた判定用分散液の原液粒径を、レファレンスの水分散液の粒径と比較し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液の原液粒径よりも増大しているものを貧溶媒と判定し、60℃、48時間の加温保存後の分散液の原液粒径が、レファレンスの水分散液のそれと、同一若しくは小さくなったものを良溶媒と判定した。表2に、各色のインクに対して、上記のようにして平均粒径を測定することで得た良溶媒か、貧溶媒かの判定結果を示した。
[水溶性有機溶剤の良溶媒及び貧溶媒の判定方法]
上記のブラック顔料、及び各カラー顔料に対して、良溶媒及び貧溶媒として作用する水溶性有機溶剤を判断するために以下の実験を行った。先ず、各色顔料に対して、下記の配合比にて良溶媒及び貧溶媒の判定用分散液A、判定用水分散液Bを作成した。
【0120】
(判定用分散液の配合比)
判定用分散液A
・顔料:5部
・表1に記載の各水溶性有機溶剤:75部
・純水:20部
判定用水分散液B
・顔料A:5部
・純水:95部
(判定方法)
次に、上記のようにして調製した、各色顔料に対する良溶媒及び貧溶媒判定用の各分散液10gを透明なガラス製フタつきサンプルビンに入れ、蓋をした後、充分攪拌し、これを25℃の室温で24時間静置した。その後、静置した分散液を測定用サンプルとして、当該液中の水不溶性色材の平均粒径を、濃厚系粒径アナライザー(商品名:FPAR−1000;大塚電子(株)社製)を用いて測定した。25℃、24時間保存後の分散液の平均粒径が、判定用分散液Aの平均粒径が、判定用水分散液Bと同等又はそれ以下になる場合を良溶媒とし、判定用分散液Aの方が判定用水分散液B(原液)より大きくなる水溶性有機溶剤を貧溶媒とした。表2に、各色のインクに対して、上記のようにして平均粒径を測定することで得た良溶媒か、貧溶媒かの判定結果を示した。
【0121】
【表2】
【0122】
<組成が未知なるインクの検証方法>
上で述べてきた判定方法を用いて、その組成が未知なるインクセットを構成するインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを識別することも可能である。
【0123】
具体的には、まず[検証対象インク]中に含まれている水溶性有機溶剤の種類及び量の道程を行う。例えば、メタノールで所定の濃度に希釈した[検証対象インク]を、GC/MS(商品名:TRACE DSQ;サーモクエスト(ThermoQuest)社製)を用いて分析することにより、[検証対象インク]中に含まれている水溶性有機溶剤の種類、及び量の特定が可能である。
【0124】
続いて、[検証対象インク]から色材成分の採取を行う。この際色材以外の成分、例えばインク中に含有される溶剤や界面活性剤や添加剤などは、極力除去しておくことが好ましい。色材と色材以外の成分を分離する手段の一例を示すと、まず[検証対象インク]を純水で約10倍に希釈し、限外濾過装置(商品名;Centramate Low Volume;PALL社製)と分画分子量300,000のフィルターを用いて、液量が元の分量になるまで限外濾過を行い、色材以外の水溶性成分をろ液と共に系外に分離する。この工程を数回繰り返すことにより、色材と純水を主成分とする液体が得られる。尚、上記工程の繰り返し回数の目安としては、色材以外の水溶性成分、例えばインク中に含有されていた溶剤や界面活性剤や添加剤等がろ液中にほとんど含まれなくなるまでが好ましい。
【0125】
次に、上記色材と水を主成分とする液体を乾燥(例えば60℃環境下)させて水分を除去した後、乳鉢等で粉末状に粉砕し、色材を主成分とする粉末を作成する。必要に応じて、この粉末を減圧、高温(例えば100℃)環境下で乾燥(例えば24時間)することにより、微量に残っている色材以外の成分を除去することも可能である。上記一連の操作により、[検証対象インク]から抽出された色材を得ることができる。
【0126】
そしてこの[検証対象インク]から抽出された色材、及び同定された[検証対象インク]中に含まれる水溶性有機溶剤を用いて、上述した判定方法にのっとった試験を行い、その素性が未知なるインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを判断する。
後述する実施例、参考例及び比較例のインクセットを構成する各インクに対して、上記操作及び判定を行った結果、妥当性のある判定結果が得られたことからも、その素性が未知なるインク[検証対象インク]が本発明の対象物であるか否かを識別するのに、上記操作及び判定方法が有効なものであることが確認された。
<実施例1〜3、参考例1、比較例1〜4>
本発明は、少なくとも1つのカラーインクを、ブラックインクに対して有すれば良いものである。以下の例では、シアン、マゼンタ、イエローの3色のカラー共々本発明の対象となるが、本発明にとっては1つ以上、若しくは、特色に対しても適用されるものである。
【0127】
上記で作製したブラック顔料分散液を用い、表4に記載した成分を秤量後、十分に溶解し攪拌させ、ポアサイズ1.2μmのミクロフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過して、ブラックインク1及び2を調製した。
【0128】
【表3】
【0129】
(*)商品名:アセチレノールE−100(川研ファインケミカル製)
又、上記で調製したブラックインクと併用するカラーインクセットA〜F を、上記で作成したシアン、マゼンタ、イエロー顔料分散液を用いて下記のようにして調製した。表4に示した配合で諸原料を混合し、ポアサイズ0.2μmのミクロンフィルター(富士フィルム製)にて加圧ろ過し、C、M、Yのカラーインクをそれぞれ作製し、カラーインクセットA〜Fを作製した。
【0130】
【表4】
【0131】
(*)商品名:アセチレノールE−100(川研ファインケミカル製)
[評価]
上記で調製したブラックインクとカラーインクを表5のように組み合わせ、実施例1〜3、参考例1及び比較例1〜4のインクセットとした。そして、これらのインクセットを用いて画像を形成して評価を行った。評価は、記録信号に応じて熱エネルギーをインクに付与することによりインクを吐出させるオンデマンド型マルチ記録ヘッドを有するインクジェット記録装置BJF−900(キヤノン(株)製)を用いて画像形成することによって行った。
【0132】
【表5】
【0133】
(色むら及び粒状感)
上記各インクセットと上記したインクジェット記録装置を用いて、自然画のカラー画像を印字して、画像の色むら、粒状感を以下の基準で評価した。尚、ここでは記録媒体にはCanon社製インクジェット用紙SG−101を用いた。表6に評価結果をまとめて示した。
【0134】
○:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感を視認できない。
【0135】
△:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感が視認できる。
【0136】
×:40センチメートルの距離から目視したとき、色むら、粒状感が視覚的に目立つ。
【0137】
(均一性及び色調の鮮明性)
上記各インクセットと上記したインクジェット記録装置を用いて、自然画のカラー画像を印字して、画像の均一性と、色調の鮮明性を、下記の基準で評価した。尚、ここでは記録媒体にはCanon社製インクジェット用紙SG−101を用いた。表6に評価結果をまとめて示した。
○:画像の不均一性がなく、見た目の色調が鮮明である。
△:画像の不均一性が視覚的に認められるか、見た目の色調の鮮明性が若干低い。
×:画像の不均一性が視覚的に目立ち、且つ、見た目の色調が不鮮明である。
【0138】
(保存安定性性評価)
上記各インクセットに用いたカラーインクをそれぞれショット瓶に入れて密栓し、60℃オーブンに投入し、2週間後に取り出して、そのときのインクの状態から保存安定性を以下の基準で評価した。そして、得られた評価結果を、表6にまとめて示した。
○:カラーインク中の色材が安定均一に分散している。
×:カラーインクがゲル状に変化、又は、インクの上部が透明になっている。若しくは明らかに増粘している。
【0139】
【表6】
【図面の簡単な説明】
【0140】
【図1】インクジェット記録装置ヘッドの縦断面図。
【図2】インクジェット記録装置ヘッドの縦横面図。
【図3】図1に示したヘッドをマルチ化したヘッドの外観斜視図。
【図4】インクジェット記録装置の一例を示す斜視図。
【図5】インクカートリッジの縦断面図。
【図6】記録ユニットの一例を示す斜視図。
【図7】記録ヘッドの構成の一例を示す図。
【図8】被記録媒体上に従来技術で色材を表面凝集させたときの、インク滴が記録媒体表面に着弾したときの様子を模式的に説明するための図。
【図9】被記録媒体上に従来技術で色材を表面凝集させたときの、ブラックインクとカラーインクで形成された画像を模式的に説明するための図。
【図10】被記録媒体上に浸透系のブラックインクとカラーインクで形成された画像を模式的に説明するための図。
【図11】本発明のカラーインク滴が記録媒体に着弾したときの様子を模式的に説明するための図
【図12】本発明にかかるカラーインクセットを用いたブラックインクとカラーインクで形成された2次色画像を模式的に説明するための図。
【符号の説明】
【0141】
13:ヘッド
14:インクノズル
15:発熱素子基板
16:保護層
17−1、17−2:電極
18:発熱抵抗体層
19:蓄熱層
20:基板
21:インク
22:吐出オリフィス(微細孔)
23:メニスカス
24:インク滴
25:記録媒体
26:マルチノズル
27:ガラス板
28:発熱ヘッド
40:インク袋
42:栓
44:インク吸収体
45:インクカートリッジ
51:給紙部
52:紙送りローラー
53:排紙ローラー
61:ブレード
62:キャップ
63:インク吸収体
64:吐出回復部
65:記録ヘッド
66:キャリッジ
67:ガイド軸
68:モーター
69:ベルト
70:記録ユニット
71:ヘッド部
72:大気連通口
80:インク流路
81:オリフィスプレート
82:振動板
83:圧電素子
84:基板
85:吐出口
90:被記録媒体
91:色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
92:色材で被覆された被記録媒体上の部分
93:色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
101:ブラック色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
102:ブラック色材で被覆された被記録媒体上の部分
103:ブラック色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
104:カラー色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
105:カラー色材で被覆された被記録媒体上の部分
106:カラー色材で被覆されなかった被記録媒体上の部分
111:ブラック色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
112:ブラック色材の被記録媒体上での広がり
113:カラー色材で被覆することを意図した被記録媒体上の部分
114:カラー色材の被記録媒体上での広がり
121:貧溶媒を含むカラーインクから最終的に形成されるドット
122:良溶媒を含むカラーインクから最終的に形成されるドット
123:インク滴
124:ドット外周
125:ドット中心部
126:色材
127:最終的に形成されるドット
128:水溶性溶剤
129:貧溶媒
131:本発明にかかるブラックインクで形成されたドット
132:本発明にかかるカラーインクで形成されたドット
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインク。
【請求項2】
前記カラーインクに含まれる水溶性有機溶剤の、ブリストウ法によって求められる各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒である請求項1に記載のカラーインク。
【請求項3】
前記カラーインクにおける貧溶媒の全量(質量%)Bが少なくとも4%以上である請求項1又は2に記載のカラーインク。
【請求項4】
前記水不溶性色材が、インク中に分散された状態で存在する請求項1又は2に記載のカラーインク。
【請求項5】
前記水不溶性色材が、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散型顔料、マイクロカプセル型顔料、自己分散型顔料のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項6】
前記ブラックインク中に含まれる中に含まれる前記水不溶性色材が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項7】
インクジェット用である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーインク及びブラックインクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記インクジェット方法が、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクジェット方法が、インクに力学的エネルギーを加えてインクを吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラーインクを収容されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項12】
請求項6に記載のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニット。
【請求項13】
請求項6に記載のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項1〜6に記載のカラーインクを用いて、被記録媒体に多次色を形成する画像形成方法。
【請求項15】
ブラックインクと、水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを用いた画像形成方法の前記ブラックインクとして用いられる水性インクであって、
水溶性有機溶剤として水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有することを特徴とする水性インク。
【請求項16】
少なくとも1種類のカラーインクと、水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを用いた画像形成方法の前記カラーインクとして用いられる水性インクであって、
カラーインクの水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることを特徴とする水性インク。
【請求項1】
水不溶性色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクと共に画像形成に用いられる少なくとも1種類のカラーインクであって、
該カラーインクは、各カラーインクに使用されている水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にある
ことを特徴とするカラーインク。
【請求項2】
前記カラーインクに含まれる水溶性有機溶剤の、ブリストウ法によって求められる各々のKa値を比較したときに、この中で最大のKa値を示す水溶性有機溶剤が貧溶媒である請求項1に記載のカラーインク。
【請求項3】
前記カラーインクにおける貧溶媒の全量(質量%)Bが少なくとも4%以上である請求項1又は2に記載のカラーインク。
【請求項4】
前記水不溶性色材が、インク中に分散された状態で存在する請求項1又は2に記載のカラーインク。
【請求項5】
前記水不溶性色材が、分散剤として樹脂を用いる樹脂分散型顔料、マイクロカプセル型顔料、自己分散型顔料のいずれかである請求項1〜3のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項6】
前記ブラックインク中に含まれる中に含まれる前記水不溶性色材が、カーボンブラックであることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項7】
インクジェット用である請求項1〜5のいずれか1項に記載のカラーインク。
【請求項8】
請求項6に記載のカラーインク及びブラックインクをインクジェット方法で吐出する工程を少なくとも有することを特徴とするインクジェット記録方法。
【請求項9】
前記インクジェット方法が、熱エネルギーをインクに与えて気泡を発生させることにより液滴を吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項10】
前記インクジェット方法が、インクに力学的エネルギーを加えてインクを吐出させる方式のインクジェット記録方法である請求項7に記載のインクジェット記録方法。
【請求項11】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のカラーインクを収容されていることを特徴とするインクカートリッジ。
【請求項12】
請求項6に記載のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とする記録ユニット。
【請求項13】
請求項6に記載のカラーインクを収容しているインク収容部と、該カラーインクを吐出させるためのインクジェットヘッドとを具備していることを特徴とするインクジェット記録装置。
【請求項14】
請求項1〜6に記載のカラーインクを用いて、被記録媒体に多次色を形成する画像形成方法。
【請求項15】
ブラックインクと、水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあるカラーインクを用いた画像形成方法の前記ブラックインクとして用いられる水性インクであって、
水溶性有機溶剤として水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有することを特徴とする水性インク。
【請求項16】
少なくとも1種類のカラーインクと、水不溶性ブラック色材に対する良溶媒のみを含有するブラックインクを用いた画像形成方法の前記カラーインクとして用いられる水性インクであって、
カラーインクの水不溶性色材に対する良溶媒の全量(質量%)をA、貧溶媒の全量(質量%)をBとした場合に、A:Bが10:5以上10:30以下の範囲内にあることを特徴とする水性インク。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
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【図4】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2006−8916(P2006−8916A)
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−190572(P2004−190572)
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年1月12日(2006.1.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年6月28日(2004.6.28)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】
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