説明

カラーフィルタの欠陥修正用インキの設計方法および製造方法

【課題】本発明は、カラーフィルタの欠陥部分を良好に修正するための欠陥修正用インキの設計方法を提供することを主目的とする。
【解決手段】本発明は、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの設計方法であって、修正される上記欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定する欠陥修正用インキ物性決定工程と、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された上記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、上記欠陥修正用インキの組成を決定する欠陥修正用インキ組成決定工程とを有することを特徴とする欠陥修正用インキの設計方法を提供することにより、上記目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば液晶テレビ等に用いられるカラーフィルタの着色層に存在する欠陥の修正に用いられる欠陥修正用インキを設計する方法および製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば液晶表示素子用カラーフィルタなどのように、基板上にBk(黒)、R(赤)、G(緑)、B(青)の着色層を形成する場合には、製造工程中、あるいは材料中に存在する微小な異物などに起因して、ある程度の確率でパターン欠陥が生じる。パターン欠陥は、主として、異物欠陥、顔料凝集による濃色欠陥などに起因する黒欠陥と、白っぽく色が抜ける白欠陥(色抜け欠陥、あるいはパターン欠け欠陥)とに分類され、白欠陥は、黒欠陥部分の付着物が除去される際にも生じる。黒欠陥は、視覚的に黒っぽい点として認識されるだけでなく、突起がある欠陥のため、カラーフィルタをTFT基板と貼り合わせ表示パネルを組んだ際に、その突起がTFT基板にまで到達してしまい短絡を起こし、重大な製品不良の原因になり得る。白欠陥は、液晶表示素子を組み立て、表示した場合に、たとえそれが数十ミクロンの小さい欠陥でもピンホールのように光り、目立つため、避けるべき欠陥である。最近では液晶表示素子の大画面化に伴うパターン面積の増大に伴い、黒欠陥や白欠陥も生じやすくなってきており、そのような問題解決に対する重要度はますます増してきている。
【0003】
欠陥を生じても、歩留まりを向上させて生産性を損なわないために、特許文献1に示されるような部分的に欠陥部を修正する技術が確立されるようになった。この欠陥部修正装置は、黒欠陥部をレーザーで焼いて揮散させ、白欠陥の色抜け部にカラー紫外線硬化性樹脂を塗布し、紫外線で硬化させるものである。
【0004】
上記カラー紫外線硬化樹脂を塗布する手段としては、上記特許文献1のようにディスペンサによってペーストを必要量垂らす方法、インクジェットによる方法、または特許文献2に開示されているような、先端が平面を形成している針状物(塗布針)の先端にカラー紫外線硬化性樹脂を付着させ、それを欠陥部に押しつける手段等がある。この中で塗布針により直接カラー紫外線硬化性樹脂を塗布する方法は、より微小な白欠陥に対応できるので好ましいとされている。
【0005】
しかしながら、着色層を形成するために用いられるインキをそのまま用いても、うまく修正することはできない。例えば、印刷法によりカラーフィルタの着色層を形成するためのインキについては、ブランケットに対する付着性を考慮して調製されるために、そのまま修正部の塗布に用いると粘度が高すぎて、色抜け部のみならず正常な色画素部分にまでインキが重なった場合に、重なり部分が新たな突起になりやすいという問題がある。また、例えばパターン露光で形成する着色レジスト用組成物については、スピンコート等によって均一に塗布することを目的とするために、そのまま修正部の塗布に用いると粘度が低すぎて、塗布後に塗布スポットが広がってしまい、正常な色画素部分への重なり部分の面積が大きくなり、新たに混色欠陥となることがあった。また、粘度が低いと、特に塗布針による塗布の場合、インキの塗布針への「のり」が悪いという問題がある。
【0006】
一方、特許文献3には、塗布針による色抜け部への塗布用カラーペーストが開示されており、カラーペーストにおける固形分中の着色剤濃度やペーストの粘度が規定されている。しかしながら、塗布針を用いてインキの塗布をする場合、所望の量のインキを塗布針に付着させ、当該塗布針に付着したインキを欠陥部分に塗布し、上記欠陥内にインキが濡れ広がり、かつ、上記欠陥の周囲まで濡れ広がらないようにする必要があり、インキの粘度以外にも、様々なインキの物性を考慮し、調製する必要がある。しかも、インキが塗布される欠陥のサイズによって、修正に必要となるインキの量や、欠陥内にインキが均一に濡れ広がるために所望される濡れ性が異なるため、同じ修正用インキを様々なサイズの欠陥に塗布しても、良好な修正は行えない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−109919号公報
【特許文献2】特開平8−182949号公報
【特許文献3】特開平11−142635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、カラーフィルタの欠陥部分を良好に修正するための欠陥修正用インキの設計方法および製造方法を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明は、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの設計方法であって、修正される上記欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定する欠陥修正用インキ物性決定工程と、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された上記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、上記欠陥修正用インキの組成を決定する欠陥修正用インキ組成決定工程とを有することを特徴とする欠陥修正用インキの設計方法を提供する。
【0010】
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって欠陥修正用インキを設計することにより、各サイズの欠陥の修正に適した物性を有する欠陥修正用インキを設計することができる。
【0011】
上記発明においては、上記欠陥修正用インキの物性が、上記欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量、動的表面張力変化、および、せん断応力変化の各パラメータに基づいて決定されることが好ましい。上記3つのパラメータを用いることにより、欠陥のサイズに適した欠陥修正用インキの物性を容易かつ適切に決定することができる。
【0012】
上記発明においては、上記欠陥修正用インキ物性決定工程では、上記欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係を予め定め、予め定められた上記関係に基づいて上記欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。予め上記関係を定めておくことにより、欠陥修正用インキの物性を容易に決定することができる。
【0013】
また、上記発明においては、予め定められた上記関係が、生じうる欠陥のサイズを複数の範囲に分けた場合の各サイズの範囲と、当該サイズの範囲を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係であることが好ましい。このような方法により、各サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性を容易、かつ、効率的に決定することができる。
【0014】
さらに、本発明は、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの製造方法であって、上述した欠陥修正用インキの設計方法を用いて上記欠陥修正用インキを設計する欠陥修正用インキ設計工程と、上記欠陥修正用インキ設計工程において決定された組成を有する欠陥修正用インキを調製する欠陥修正用インキ調製工程とを有することを特徴とする欠陥修正用インキの製造方法を提供する。
【0015】
本発明の欠陥修正用インキの製造方法によって製造された欠陥修正用インキは、修正される欠陥のサイズに適した物性を有するものであるため、欠陥修正用インキを塗布針に付着させ、欠陥部分に塗布し、適切に濡れ広がらせるといった、欠陥修正の各工程を容易かつ良好に行うことができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明の方法によって設計または製造された欠陥修正用インキを用いることにより、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥部分を良好かつ効率的に修正することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】カラーフィルタの修正方法の一例を示す概略工程図である。
【図2】カラーフィルタの修正方法において用いられる塗布針の一例を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の欠陥修正用インキの設計方法、および、欠陥修正用インキの製造方法について詳細に説明する。
なお、本明細書において(メタ)アクリルはアクリル及びメタクリルを表し、(メタ)アクリレートはアクリレート及びメタクリレートを表す。また、本明細書において光とは、光反応性官能基に光反応を引き起こさせることが可能な可視および非可視領域の波長が全て含まれ、例えばマイクロ波、可視光、紫外線等の電磁波が全て含まれるが、主に紫外線等が用いられる。
【0019】
A.欠陥修正用インキの設計方法
本発明の欠陥修正用インキの設計方法は、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの設計方法であって、修正される上記欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定する欠陥修正用インキ物性決定工程と、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された上記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、上記欠陥修正用インキの組成を決定する欠陥修正用インキ組成決定工程とを有することを特徴とするものである。
【0020】
図1(a)に例示するような、ブラックマトリックス1の開口部に赤色2R、青色2B、および緑色2Gのカラーパターン2が形成されているカラーフィルタ3の黒欠陥4(4Lおよび4S)を修正する場合、黒欠陥4をレーザー等で焼いて揮散させて白欠陥5(5Lおよび5S)とし(図1(b))、上記白欠陥5の色抜け部に欠陥修正用インキ6を塗布し(図1(c))、上記欠陥修正用インキ6が欠陥内に濡れ広がった後に紫外線等で硬化させることにより、欠陥を修正する(図1(d))。
なお、本発明はカラーフィルタの着色層に存在する欠陥を修正するための欠陥修正用インキの設計方法等に関するものであるが、本明細書においては、修正される上記「着色層」には赤色(R)、青色(B)、緑色(G)等のカラーパターンの他に、ブラックマトリックスも含まれるものとする。
【0021】
上記白欠陥に欠陥修正用インキを塗布する方法としては、ディスペンサによって必要量の欠陥修正用インキを垂らす方法、インクジェットによる方法、または、図2に例示するような先端が平面を形成している針状物(塗布針)の先端に欠陥修正用インキを付着させ、それを白欠陥部に押しつける方法等がある。より微小な白欠陥に対応することができるため、本発明においては上記の方法の中でも、塗布針により白欠陥に塗布されることが好ましい。図2に例示するような塗布針7によって欠陥修正用インキ6を塗布する場合、欠陥修正用インキを塗布針に付着させ、塗布針に付着した欠陥修正用インキを欠陥部分に塗布し、適切に濡れ広がらせる必要がある。そのため欠陥修正用インキは、静的な状態における物性のみならず、動的な状態における物性をも考慮して調製されることが好ましい。
【0022】
また、修正される欠陥のサイズによって、修正に必要となる欠陥修正用インキの量や、欠陥内に欠陥修正用インキが均一に濡れ広がるために所望される濡れ性等が異なるため、同じ欠陥修正用インキを様々なサイズの欠陥に塗布しても、良好な修正は行えない場合がある。例えば、中程度のサイズの欠陥を修正する場合に最適となるように調製された欠陥修正用インキを小さい欠陥の修正に用いると、塗布針による1回の塗布によって塗布される欠陥修正用インキの量が多すぎ、欠陥の周囲にまで欠陥修正用インキが濡れ広がってしまう可能性がある。また、上記欠陥修正用インキを大きい欠陥の修正に用いると、塗布針による1回の塗布によって塗布される量よりも遥かに多い量の欠陥修正用インキが必要となるため、塗布回数が多くなり、生産効率上好ましくない。
【0023】
上述したような不具合を抑制し、各サイズの欠陥に適した欠陥修正用インキを得るために、本発明においては、修正される欠陥のサイズに応じた欠陥修正用インキの物性を決定し、決定された物性が得られるように溶剤を選択して欠陥修正用インキの組成を決定する。
【0024】
カラーフィルタの着色層に黒欠陥が検出された場合は、レーザー等によって黒欠陥およびその周辺の着色層を除去して白欠陥とした後に、欠陥修正用インキを塗布して修正を行う。本発明明細書において上記「欠陥のサイズ」とは、黒欠陥が除去された後に生じる白欠陥の寸法を意味するものとする。また、カラーフィルタの着色層に色抜け等の白欠陥が検出された場合は、当該白欠陥にそのまま欠陥修正用インキが塗布されることもあるが、通常は欠陥修正用インキの塗布を良好に行えるように、当該白欠陥の周辺部分をレーザー等によって除去し、基板(カラーフィルタ基板)が露出した状態にした後に欠陥修正用インキの塗布を行う。上記いずれの場合においても、「欠陥のサイズ」とは、本発明の設計方法によって設計された欠陥修正用インキが塗布される直前、すなわち、レーザー等による欠陥部分の除去が行われる場合は当該除去後の白欠陥の寸法を意味するものとする。
【0025】
以下、本発明の欠陥修正用インキの設計方法における各工程、および、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキの用途について説明する。
【0026】
1.欠陥修正用インキ物性決定工程
本発明において欠陥修正用インキ物性決定工程は、修正される欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定する工程である。本工程においては、修正される欠陥のサイズに応じて欠陥修正用インキの物性が決定されるものであれば特に限定されるものではなく、欠陥のサイズに応じて、種々のパラメータに基づき、公知の方法によって物性を決定することができる。
以下、欠陥修正用インキの物性を決定する方法、および、物性を決定するために用いることができるパラメータについて説明する。
【0027】
(1)物性を決定する方法
本工程において欠陥修正用インキの物性を決定する方法は、修正される欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定することができる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、本工程においては、上記欠陥修正用インキの物性を、上記欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係を定め、定められた上記関係に基づいて決定することができる。
【0028】
本発明において上記関係は、上記欠陥修正用インキ物性決定工程に先立って予め定められたもの(第一の方法)でもよく、上記欠陥修正用インキ物性決定工程においてその都度実験等を行うことによって定められるもの(第二の方法)でもよい。上記の中でも、本工程において欠陥修正用インキの物性は、予め定められた上記関係に基づいて決定されること(第一の方法)が好ましい。上記関係を予め定めることにより、その都度実験等を行う必要がなく、容易、かつ効率的に欠陥修正用インキの物性を決定することができるからである。
以下、上記2つの方法について説明する。
【0029】
(a)第一の方法
第一の方法においては、上記欠陥修正用インキの物性が、上記欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係を予め定め、予め定められた上記関係に基づいて決定される。このように、上記欠陥修正用インキ物性決定工程に先立って実験等を行い、予め上記関係を定めておくことにより、上記欠陥修正用インキ物性決定工程においてその都度実験等をする必要がないため、欠陥修正用インキの物性を容易に決定することができる。
【0030】
例えば、上記関係は、生じうる欠陥のサイズを複数の範囲に分けた場合の各サイズの範囲と、当該サイズの範囲を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係として定めることができる。また、生じうる欠陥のサイズの全範囲において、各サイズの欠陥を修正するのに適したパラメータの値の、グラフ等の相関関係図を作成することによっても上記関係を定めることができる。
【0031】
本発明において上記関係は、生じうる欠陥のサイズを複数の範囲に分け、定められることが好ましい。このような関係は、実際に様々なサイズの欠陥サイズの修正を行い、一連の結果から定めることができる。上記生じうる欠陥のサイズは、例えば「大」と、「小」との2つの範囲、または「大」と、「中」と、「小」との3つの範囲に分けることができる。中でも、上記範囲を2つに分けることが好ましい。このように範囲を2つに分けて上記関係を定めることにより、各サイズの欠陥に適切に対応した関係を効率的に定めることができる。
【0032】
また、相関関係図を作成することによって上記関係を定める場合は、生じうる欠陥のサイズの全範囲において、欠陥のサイズと、各サイズの欠陥を修正するのに適した各パラメータの値との相関関係図を作成し、上記相関関係図に基づいて上記欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係を定めることができる。このような相関関係図を作成することにより上記関係を高い精度において定めることができる。
【0033】
(b)第二の方法
本発明においては、上述した欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係は、欠陥修正用インキ物性決定工程においてその都度実験等を行うことによって定め、その都度定められた上記関係に基づいて欠陥修正用インキの物性を決定してもよい。この場合も、上記第一の方法と同様に、生じうる欠陥のサイズを複数の範囲に分けて上記関係を定めても、上記相関関係図を作成することによって定めてもよい。
【0034】
(2)パラメータ
次に、本発明において欠陥修正用インキの物性を決定するために用いることができるパラメータについて説明する。欠陥修正用インキの物性を示すパラメータとしては、静的な物性を示すパラメータや、動的な物性を示すパラメータ等があるが、本発明において欠陥修正用インキの物性は、静的な物性および動的な物性の両方のパラメータを用いて決定されることが好ましい。
【0035】
塗布された欠陥修正用インキが白欠陥内に濡れ広がることを考える場合、当該欠陥修正用インキが塗布されるカラーフィルタ基板の表面上での静的な表面張力(接触角)や粘度を調整することにより、所望の濡れ広がり性を得ることができる。しかしながら、欠陥修正用インキを塗布針に付着させ、当該塗布針に付着した欠陥修正用インキを白欠陥(カラーフィルタ基板)に塗布する際、塗布針と欠陥修正用インキとの界面、および、欠陥修正用インキとカラーフィルタ基板との界面は静止状態ではなく、動的な状態である。そのため、静的な物性のみを考慮して調製された欠陥修正用インキを用いると、塗布針による欠陥修正用インキの塗布を良好に行えない場合がある。
【0036】
例えば、静的な状態における表面張力が調整されており、所望の濡れ広がり性を有する欠陥修正用インキを用いても、当該欠陥修正用インキの動的な状態における表面張力が静的な状態における表面張力よりも大幅に大きい場合は、塗布針やカラーフィルタ基板との界面における表面張力が大きすぎ、欠陥修正用インキを塗布針へ脱着させることが困難となる場合がある。
【0037】
本発明においては、上述したような不具合を解消し、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥を効率的かつ良好に修正するために、静的および動的の両方のパラメータ、例えば欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量、動的表面張力、せん断応力変化、粘度等を考慮して欠陥修正用インキの物性を決定することができる。本発明においては上記パラメータの中でも、欠陥修正用インキの欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量、動的表面張力変化、および、せん断応力変化の各パラメータに基づいて欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。
【0038】
上述したように、修正される欠陥のサイズによって、修正に必要となる欠陥修正用インキの量や、欠陥内に欠陥修正用インキが均一に濡れ広がるために所望される濡れ性等が異なるため、同じ欠陥修正用インキを様々なサイズの欠陥に塗布しても、良好な修正は行えない場合がある。そのため、本発明においては上記パラメータの中でも、欠陥修正用インキの欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量、動的表面張力変化、および、せん断応力変化の各パラメータのうちの少なくとも1つ、より好ましくは2つ、特に好ましくは3つのパラメータの値が、修正される欠陥のサイズに応じて調整されることが好ましい。
以下、修正される欠陥のサイズに応じて調整されることが好ましい上記3つのパラメータと、その他のパラメータとについて説明する。
【0039】
(a)カラーフィルタ基板上の接触角
本発明において接触角は、接触角計(協和界面科学製、商品名:Drop Master )を用いて、欠陥修正用インキ2ccをシリンジにとり、素ガラス上に滴下した時の0ms〜20000msでの接触角を計測することにより測定することができる。本発明においては、上述したように計測された際の0msの時の測定値から、20000msの時の測定値を引いた数値を「0ms〜20000msにおけるカラーフィルタ基板上の接触角の変化量」として用いることができる。
【0040】
欠陥修正用インキの上記接触角の変化量が小さすぎると、塗布針を用いて欠陥修正用インキを欠陥に塗布しても、当該欠陥内に欠陥修正用インキが十分に濡れ広がらず、膜厚の不均一や白抜け等の不具合の原因となり得る。一方、欠陥修正用インキの上記接触角の変化量が大きすぎると、塗布針を用いて欠陥に塗布された欠陥修正用インキが、上記欠陥の周囲へまで濡れ広がり、シミ等の不具合の原因となり得る。
【0041】
本工程において、上記「(1)物性を決定する方法」の「(a)第一の方法」において説明したように、生じうる欠陥のサイズを2つの範囲に分けて上記欠陥修正用インキの物性が決定される場合は、上記欠陥修正用インキの接触角の変化量を下記の範囲内とすることが好ましい。
【0042】
本工程において物性が決定される欠陥修正用インキによって修正される欠陥のサイズが、xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内である場合、0ms〜20000msにおけるカラーフィルタ基板上の接触角の変化量が20°〜35°の範囲内、中でも25°〜30°の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。
【0043】
また、上記欠陥のサイズが、xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲内である場合、0ms〜20000msにおけるカラーフィルタ基板上の接触角の変化量が15°〜35°の範囲内、中でも15°〜20°の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。
【0044】
上記接触角の変化量が大きい欠陥修正用インキは、濡れ広がりやすいという傾向がある。修正される欠陥サイズが大きい場合は、比較的広い範囲である当該欠陥の隅々まで欠陥修正用インキを濡れ広がらせる必要があり、また、欠陥修正用インキが塗布針によって複数回塗布される場合には、近接した欠陥修正用インキの液滴同士の馴染みを良くし、均一に濡れ広がらせる必要がある。そのため、修正する欠陥のサイズが大きい場合は、接触角の変化量が比較的大きな欠陥修正用インキが好適に用いられる。一方、修正する欠陥のサイズが小さい場合は、欠陥修正用インキの濡れ広がりが良すぎると、塗布された欠陥修正用インキが欠陥の周囲にまで濡れ広がってしまう可能性がある。そのため、欠陥サイズが小さい場合は、欠陥サイズが大きい場合に比べ、接触角の変化量が小さい欠陥修正用インキが好適に用いられる。なお、本明細書において、xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲のサイズの欠陥修正に適した欠陥修正用インキの物性として記載された範囲は、x、yが20μm以上で80μm未満の範囲に適用する場合もある。
【0045】
(b)動的表面張力
本発明において動的表面張力は、動的表面張力計(栄弘精機株式会社製、商品名:動的表面張力計シータt60)を用いて欠陥修正用インキ15ccをガラス瓶に採取し、欠陥修正用インキ中に気泡を発生させ、その液体から気泡にかかる圧力を計測することによって測定することができる。
【0046】
上記動的表面張力の変化量が大きいことは、静的な状態に比べ、動的な状態における表面張力が著しく大きいことを意味する。そのため、静的な表面張力が所望の範囲内である場合でも、動的表面張力の変化量が上記範囲を超えると、欠陥修正用インキを塗布針に付着させる際、および、塗布針に付着した欠陥修正用インキをカラーフィルタ基板の表面に塗布する際に塗布針やカラーフィルタ基板と、欠陥修正用インキとの界面における表面張力が大きすぎ、欠陥修正用インキを塗布針へ脱着させることが困難となる場合がある。
【0047】
本工程において、上記「(1)物性を決定する方法」の「(a)第一の方法」において説明したように、生じうる欠陥のサイズを2つの範囲に分けて上記欠陥修正用インキの物性が決定される場合は、上記欠陥修正用インキの動的表面張力の変化量を下記の範囲内とすることが好ましい。
【0048】
本工程において物性が決定される欠陥修正用インキによって修正される欠陥のサイズが、xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内である場合、気泡発生速度(発生周期)を2Hzから10Hzまで変化させて測定した際の動的表面張力の変化量が10〜22の範囲内、中でも14〜17の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。
【0049】
また、上記欠陥のサイズが、xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲内である場合、気泡発生速度(発生周期)を2Hzから10Hzまで変化させて測定した際の動的表面張力の変化量が10〜25の範囲内、中でも17〜21の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。なお、上記「動的表面張力の変化量」とは、上記の方法によって測定された10Hzの時の動的表面張力の値から、2Hzの時の動的表面張力の値を引いた値を意味するものとする。
【0050】
欠陥修正用インキの動的表面張力の変化量が大きいと欠陥修正用インキを塗布針に付着させる際、および、塗布針に付着した欠陥修正用インキをカラーフィルタ基板の表面に塗布する際に塗布針やカラーフィルタ基板と、欠陥修正用インキとの界面における表面張力が大きすぎ、欠陥修正用インキを塗布針へ脱着させることが困難となる場合がある。すなわち、欠陥修正用インキの動的表面張力の変化量が小さい方が、より多くの量の欠陥修正用インキを塗布針に付着させることができ、付着した欠陥修正用インキを基板表面に塗布しやすい。従って、修正する欠陥のサイズが大きい場合は、小さいサイズの欠陥を修正する場合と比べ、欠陥修正用インキの動的表面張力の変化量が上記範囲のように小さいことが好ましい。
【0051】
(c)せん断速度に対するせん断応力の変化量
本発明において欠陥修正用インキのせん断速度γおよびせん断応力τは、レオメーター(粘弾性測定器:レオメトリック・サイエンティフィック・エフ・イー製、ARES100)により、粘弾性を求め、せん断速度γ値と、せん断応力τ値との関係を演算することにより得ることができる。
【0052】
上記せん断応力の変化量が大きいということは、せん断速度が低い状態と、せん断速度が高い状態とにおける粘度の差が大きいということである。そのため、せん断速度が低い(静止状態に近い)状態における粘度が調整されており、所望の濡れ広がり性を有する欠陥修正用インキを用いても、せん断応力の変化量が上記範囲を超えると、欠陥修正用インキを塗布針に付着させる際、および、塗布針に付着した欠陥修正用インキをカラーフィルタ基板の表面に塗布する際の欠陥修正用インキの粘度が高すぎ、または低すぎ、欠陥修正用インキを塗布針へ脱着させることが困難となる場合がある。
【0053】
本工程において、上記「(1)物性を決定する方法」の「(a)第一の方法」において説明したように、生じうる欠陥のサイズを2つの範囲に分けて上記欠陥修正用インキの物性が決定される場合は、上記欠陥修正用インキのせん断応力の変化量を下記の範囲内とすることが好ましい。
【0054】
本工程において物性が決定される欠陥修正用インキによって修正される欠陥のサイズが、xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内である場合、せん断速度を10(1/s)から100(1/s)まで変化させて測定した際のせん断応力の変化量が2〜15の範囲内、中でも4〜8の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。
【0055】
また、上記欠陥のサイズが、xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲内である場合、せん断速度を10(1/s)から100(1/s)まで変化させて測定した際のせん断応力の変化量が5〜15の範囲内、中でも5〜10の範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。なお、上記「せん断応力の変化量」とは、100(1/s)の時のせん断応力の値と、10(1/s)の時のせん断応力の値との差(絶対値)を意味するものとする。
【0056】
すなわち、修正する欠陥のサイズが大きい場合は、修正する欠陥サイズが小さい場合と比べ、上記せん断応力の変化量が少ない方が好ましい。修正する欠陥のサイズが小さい場合は、修正するために必要となる欠陥修正用インキの量が少なく、塗布回数も少ないため、塗布針に付着させる欠陥修正用インキの微調整は塗布針の寸法を調整することによって行うことができる。一方、修正する欠陥のサイズが大きい場合は、修正のために必要となる欠陥修正用インキの量が比較的多く、塗布回数も多いため、塗布針に欠陥修正用インキをたくさん付着させることが好ましい。しかしながら塗布針には寸法上の制限があり、1回に塗布針に付着する欠陥修正用インキの量を多くするために塗布針の寸法を無限に大きくすることができない。そのため、欠陥サイズが大きい場合は、欠陥修正用インキの物性を調整することにより、1回の塗布による塗布量を多くする必要があり、せん断速度等による欠陥修正用インキの物性の変化が少ないことが好ましい。
【0057】
(d)その他のパラメータ
修正される欠陥のサイズに応じて調整されることが好ましい上記3つのパラメータに加え、本発明においては欠陥修正用インキの物性が、さらにせん断速度が低い(静止状態に近い)状態における粘度等の物性を考慮して決定されることが好ましい。欠陥修正用インキの粘度は、20mPa・sec〜300mPa・secの範囲内、中でも20mPa・sec〜150mPa・secの範囲内、特には20mPa・sec〜70mPa・secの範囲内となるように欠陥修正用インキの物性が決定されることが好ましい。欠陥修正用インキの粘度が上記範囲に満たないと、塗布された欠陥修正用インキが欠陥の周囲にまで濡れ広がってしまう可能性がある。逆に粘度が上記範囲を越えると、欠陥修正用インキが欠陥部分に塗布されても、欠陥内に均一に濡れ広がらず、膜厚の不均一や白抜けの要因となり得る。
【0058】
上記欠陥修正用インキの粘度は、25℃において、B型粘度計(例えばTOKIMEC製、商品名:VISCOMETER TV−20)を用いて、BLアダプター、M1ローター、又はM2ローターを使用して1分間測定することにより求めることができる。
【0059】
2.欠陥修正用インキ組成決定工程
本工程においては、上述した欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された上記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、上記欠陥修正用インキの組成を決定する。欠陥修正用インキは、着色剤や溶剤等種々の材料から構成されるものであるが、本発明においては、欠陥修正用インキの物性に特に大きな影響を及ぼす溶剤を選択することにより、所望の物性が得られるように欠陥修正用インキの組成を決定する。
以下、本工程において決定される欠陥修正用インキの組成について説明する。
【0060】
(1)溶剤
本工程において溶剤は、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された物性を得られるものであれば特に限定されないが、共に用いられる着色剤の分散性や反応性官能基を有するモノマーやポリマーに対する溶解性又は分散性の良好な溶剤を用いることが好ましく、2種以上の溶剤を用いた混合溶剤であっても良い。
【0061】
溶剤としては、例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、N−プロピルアルコール、i−プロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;メトキシアルコール、エトキシアルコールなどのセロソルブ系溶剤;メトキシエトキシエタノール、エトキシエトキシエタノールなどのカルビトール系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤;アセトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;ジエチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどの非プロトン性アミド溶剤;γ−ブチロラクトンなどのラクトン系溶剤;ベンゼン、トルエン、キシレン、ナフタレンなどの不飽和炭化水素系溶剤;N−ヘプタン、N−ヘキサン、N−オクタンなどの飽和炭化水素系溶剤などの非水系有機溶剤を例示することができる。これらの溶剤の中では、メトキシエチルアセテート、エトキシエチルアセテート、エチルセロソルブアセテートなどのセロソルブアセテート系溶剤;メトキシエトキシエチルアセテート、エトキシエトキシエチルアセテートなどのカルビトールアセテート系溶剤;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、プロピレングリコールジエチルエーテルなどのエーテル系溶剤;メトキシプロピオン酸メチル、エトキシプロピオン酸エチル、乳酸エチルなどのエステル系溶剤が特に好適に用いられる。特に好ましくは、PGMEA(プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、CHOCHCH(CH)OCOCH)(商品名:メトキシプロピルアセテート(ダイセル化学工業製))、MBA(酢酸−3−メトキシブチル、CHCH(OCH)CHCHOCOCH)、DMDG(ジエチレングリコールジメチルエーテル、CHOCOCH)又はこれらを混合したものを使用することができる。
【0062】
上記「1.欠陥修正用インキ物性決定工程」の「(1)物性を決定する方法」の「(a)第一の方法」において説明したように、生じうる欠陥のサイズを2つの範囲に分けて上記欠陥修正用インキの物性が決定された場合は、溶剤の沸点等の観点から、下記の溶剤が選択されることが好ましい。欠陥修正用インキによって修正される欠陥のサイズが、xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲内である場合は、沸点が140℃〜160℃、より好ましくは145℃〜155℃程度の溶剤を用いることが好ましく、分散安定性が良好であることから、特にPGMEAが好適に用いられる。
【0063】
また、修正される欠陥のサイズが、xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内である場合は、メトキシブチルアセテートに少量のBCA(ブチルカルビトールアセテート)を添加する等、沸点が200℃〜245℃、より好ましくは230℃〜240℃程度の高沸点の溶剤を少量添加することにより、欠陥修正用インキとしての沸点を上昇させることが好ましい。上記少量添加される溶剤としては、修正後に行われるポストベーク処理温度よりも沸点が低い溶剤、および、欠陥修正用インキの分散安定性を大きく乱さない溶剤が好適に用いられる。
【0064】
修正する欠陥のサイズが大きい場合は、複数回にわたって欠陥修正用インキが塗布されることが多い。塗布後に直ちに流動性を失うことなく、1つの欠陥内に塗布された複数の液滴が互いに濡れ広がり、一体化して均一な膜を形成するために、欠陥サイズが大きい場合は、欠陥サイズが小さい場合に比べ、沸点が高い溶剤が好適に用いられる。この際に添加される高沸点溶剤の量は特に限定されるものではないが、例えば全溶剤の5重量%〜15重量%の範囲内、中でも7重量%〜10重量%の範囲内において添加することができる。
【0065】
溶剤は、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に25重量%〜70重量%の範囲内、中でも25重量%〜55重量%の範囲内、さらには30重量%〜45重量%の範囲内において配合されることが好ましい。
【0066】
(2)着色剤
本工程において着色剤は、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された物性を得られるものであれば特に限定されないが、修正される着色層の色に応じて選択されるのが好ましく、種々の有機または無機顔料を用いることができる。有機顔料の具体例としては、カラーインデックス(C.I.;The Society of Dyers and Colourists 社発行)においてピグメント(Pigment)に分類されている化合物、すなわち、下記のようなカラーインデックス(C.I.)番号が付されているものを挙げることができる。具体的には、例えば、C.I.ピグメントイエロー1、C.I.ピグメントイエロー3、C.I.ピグメントイエロー12、C.I.ピグメントイエロー13、C.I.ピグメントイエロー83、C.I.ピグメントイエロー138、C.I.ピグメントイエロー139、C.I.ピグメントイエロー150、C.I.ピグメントイエロー180、C.I.ピグメントイエロー185等のイエロー系ピグメント;C.I.ピグメントレッド1、C.I.ピグメントレッド2、C.I.ピグメントレッド3、C.I.ピグメントレッド177、C.I.ピグメントレッド254等のレッド系ピグメント;及び、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントブルー15:3、C.I.ピグメントブルー15:4、C.I.ピグメントブルー15:6等のブルー系ピグメント;C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントグリーン36等のグリーン系ピグメント;C.I.ピグメントバイオレット23、C.I.ピグメントバイオレット23:19等のバイオレット系ピグメントを挙げることができる。
【0067】
また、上記無機顔料の具体例としては、酸化チタン、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、亜鉛華、硫酸鉛、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、コバルト緑、アンバー、チタンブラック、合成鉄黒、カーボンブラック等を挙げることができる。本発明において顔料は、単独でまたは2種以上を混合して使用することができ、上記に限定されずに種々の顔料を使用することができる。なお、顔料は必要に応じて、ロジン処理、酸性処理、塩基性処理などの表面処理が施されているものを使用しても良い。
【0068】
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおける着色剤の配合量は、5重量%〜40重量%の範囲内、中でも5重量%〜25重量%の範囲内、特に7重量%〜18重量%の範囲内であることが好ましい。
【0069】
(3)反応性官能基を有するモノマー
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキは反応性官能基を有するモノマーを有することができる。
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキは、バインダ成分として後述するポリマーと反応性官能基を有するモノマーとの両方を含有していることが好ましい。ポリマーと共に反応性官能基を有するモノマーを含有することにより、従来ポリマーに求められていた粘度調整や塗布後の成膜性や硬化性、被塗工面に対する密着性等の機能を、反応性官能基を有するモノマーとポリマーとの両方で分けることができ、その結果、例えば必ずしもポリマーに硬化性を必要としない等、ポリマーの選択の自由度が高まり、欠陥修正用インキとしての設計の自由度が高まる。従って、反応性官能基を有するモノマーおよびポリマーの種類と量とを調節することによって、粘度等の塗布適性に関係する物性を適切な範囲に調整しながら、着色剤およびバインダ成分の量比も適切な範囲に調整して、充分な着色濃度と、基材に対する充分な密着性とが得られる。
【0070】
また、反応性官能基を有するモノマーを含有させることにより、ポリマーのみを含有する場合に比べて、修正部の耐溶剤性や耐熱性、被塗工面に対する密着性を向上させることができる。
【0071】
さらに、反応性官能基を有するモノマーが一部溶剤の代替となり得るため、上記反応性官能基を有するモノマーを含有させることにより、欠陥修正用インキ中の溶剤含有量を減らすことができ、粘度等の物性を調整するための成分としても用いることができる。このため、溶剤の揮発量が減少し、保存時や使用時にはインキの粘度等の物性安定性が良くなり、インキの塗布後においては溶剤の揮発による体積減少率が小さくなる。体積減少率が小さいため、欠陥部分に少量の欠陥修正用インキを塗布することにより、欠陥部分に形成される着色層の膜厚を充分に厚くすることが可能であり、繰り返し塗布する手間がなくなる。また、付着させた欠陥修正用インキの液滴は乾燥前でも体積が小さいので周囲にはみ出し難くなり、新たな突起の形成や混色欠陥の発生を回避することができる。
【0072】
欠陥修正用インキが反応性官能基を有するモノマーを含有する場合、反応性官能基を有するモノマーは、後述するポリマーと共に成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するためのバインダ成分を構成し、特に硬化反応性を付与する作用をする。
【0073】
反応性官能基を有するモノマーは、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおいて重合反応の構成単位となり得る化合物であり、例えば、2以上のモノマーが重合したオリゴマーであっても反応性官能基を有し、常温で流動性があるものであれば、上記モノマーとして用いることができる。
【0074】
このような反応性官能基を有するモノマーは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0075】
反応性官能基を有するモノマーとして、反応性官能基を1分子内に2以上有する多官能の反応性モノマーを用いる場合には、高い架橋密度が得られ、十分な硬化性を示すので好ましい。
【0076】
反応性官能基の反応形式は硬化反応であれば特に限定されず、例えば、反応エネルギーの点では光反応又は熱反応のいずれに属するものであってもよいし、活性種の点ではラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合、光二量化反応等のいずれに属するものであってもよい。具体的には、例えば、モノマーが反応性官能基としてエチレン性不飽和結合を有する場合には光ラジカル重合及び熱ラジカル重合が可能であり、モノマーが反応性官能基としてエポキシ基を有する場合には熱硬化及び光カチオン重合が可能である。
【0077】
光反応性のモノマーとしては、エチレン性不飽和結合を有するモノマーが好ましく用いられる。光ラジカル重合性基としてのエチレン性不飽和結合を有するモノマーは、光照射により直接、又は開始剤の作用を受けて間接的に重合反応を生じるものであり、カラーフィルタの欠陥部分に欠陥修正用インキを塗布した後、光照射により短時間にインキを定着させるのに好ましく用いられる。
【0078】
エチレン性不飽和結合を有するモノマーとして具体的には、次のような多官能アクリレート系のモノマー、すなわち、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトール(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートプロピレンオキサイド付加物、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、グリセリンジ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンテトラ(メタ)アクリレート、テトラトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジアクリレート、などを例示することができるが、中でも、ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレートが、高い架橋密度が得られ、充分な硬化性を示すので好ましい。
【0079】
光カチオン重合反応性モノマーとしては、例えば、エポキシ基、オキセタニル基等の環状エーテル基、チオエーテル基、ビニルエーテル基等を有するモノマーが挙げられる。また、光アニオン重合性モノマーとしては、例えば、電子吸引性基をもつビニル基、環状ウレタン基、環状尿素類、環状シロキサン基等を有するモノマーが挙げられる。
【0080】
熱反応性の系としては、例えば、エポキシ基と活性水素、環状尿素基と水酸基等の開環付加反応系等を用いることができる。特に好ましくは、経時安定性の点からグリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマー(オリゴマーも含む)と多価カルボン酸無水物又は多価カルボン酸の組み合わせを例示することができる。また、硬化性の点からは、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマーと、特許第2682256号、特許第2850897号、特許第2894317号、特開2001−350010号公報に開示されているようなブロックカルボン酸の組み合わせを使用するのが特に好ましい。
【0081】
また、グリシジル基、脂環式エポキシ基、オキセタニル基を有するモノマーとしては、常温で液状のノボラック系エポキシ、脂環式エポキシ、カルドエポキシ等を例示でき、例えば、商品名BPEFG(ナガセケムテックス製)、セロキサイド2021P、3000、2000、スチレンオキサイド、エポリードGT300、GT400(以上、ダイセル化学工業製)、エピコート901、801P、802、802XA、806、806L、807、815、819、825、827、828、815XA、828EL、828XA、152、604、630(以上、油化シェルエポキシ製)等を例示することができる。中でも、脂環式エポキシであるエポリードGT400が、粘度、反応性の点から、好ましい。
【0082】
エポキシ基を有するモノマーと組み合わせて用いる多価カルボン酸無水物の具体例としては、無水フタル酸、無水イタコン酸、無水コハク酸、無水シトラコン酸、無水ドデセニルコハク酸、無水トリカルバリル酸、無水マレイン酸、無水ヘキサヒドロフタル酸、無水ジメチルテトラヒドロフタル酸、無水ハイミック酸、無水ナジン酸などの脂肪族または脂環族ジカルボン酸無水物;1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物などの脂肪族多価カルボン酸二無水物;無水ピロメリット酸、無水トリメリット酸、無水ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸無水物;エチレングリコールビストリメリテイト、グリセリントリストリメリテイトなどのエステル基含有酸無水物を挙げることができ、特に好ましくは、芳香族多価カルボン酸無水物を挙げることができる。また、市販のカルボン酸無水物からなるエポキシ樹脂硬化剤も好適に用いることができる。
【0083】
また、エポキシ基を有するモノマーと組み合わせて用いる多価カルボン酸の具体例としては、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ブタンテトラカルボン酸、マレイン酸、イタコン酸などの脂肪族多価カルボン酸;ヘキサヒドロフタル酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2,4−シクロヘキサントリカルボン酸、シクロペンタンテトラカルボン酸などの脂肪族多価カルボン酸、およびフタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、ピロメリット酸、トリメリット酸、1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸などの芳香族多価カルボン酸を挙げることができ、好ましくは芳香族多価カルボン酸を挙げることができる。
【0084】
これら多価カルボン酸無水物および多価カルボン酸は、1種単独でも2種以上の混合でも用いることができる。硬化剤の配合量は、エポキシ基を有するモノマー100重量部当たり、通常は50重量部〜200重量部の範囲とする。
【0085】
また、光反応及び熱反応性モノマーとしては、エチレン性不飽和結合とエポキシ基を有するモノマーが挙げられ、具体的には、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、α−エチルアクリル酸グリシジル、α−n−プロピルアクリル酸グリシジル、α−n−ブチルアクリル酸グリシジル、アクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−3,4−エポキシブチル、メタクリル酸−4,5−エポキシペンチル、アクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、メタクリル酸−6,7−エポキシヘプチル、α−エチルアクリル酸−6,7−エポキシヘプチルなどの(メタ)アクリレート類;o−ビニルフェニルグリシジルエーテル、m−ビニルフェニルグリシジルエーテル、p−ビニルフェニルグリシジルエーテル、o−ビニルベンジルグリシジルエーテル、m−ビニルベンジルグリシジルエーテル、p−ビニルベンジルグリシジルエーテルなどのビニルグリシジルエーテル類;2,3−ジグリシジルオキシスチレン、3,4−ジグリシジルオキシスチレン、2,4−ジグリシジルオキシスチレン、3,5−ジグリシジルオキシスチレン、2,6−ジグリシジルオキシスチレン、5−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、4−ビニルピロガロールトリグリシジルエーテル、ビニルフロログリシノールトリグリシジルエーテル、2,3−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,4−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、3,5−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,6−ジヒドロキシメチルスチレンジグリシジルエーテル、2,3,4−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、及び、1,3,5−トリヒドロキシメチルスチレントリグリシジルエーテル、脂環式エポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0086】
反応性官能基を有するモノマーは、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に15重量%〜65重量%含まれることが好ましく、20重量%〜55重量%含まれることが更に好ましく、25重量%〜45重量%含まれることが特に好ましい。
【0087】
(4)ポリマー
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおいては、成膜性や被塗工面に対する密着性を付与するためのバインダ成分として、また、インキの状態のときにモノマーと比べて高粘度であることから、インキの粘度等物性を調整するための成分としてポリマーを配合してもよい。欠陥修正用インキが上述した反応性官能基を有するモノマーを含有する場合、特にバインダ成分としての機能を上記反応性官能基を有するモノマーと分け合うため、使用できるポリマーの選択肢が広がり、設計の自由度が増す。
【0088】
本発明においてポリマーは、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された物性を得られるものであれば特に限定されず、使用する溶剤に溶解するものであるか、使用するモノマーに相溶するものであればよい。本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおいて、溶剤の配合量を少なくし、反応性官能基を有するモノマーに一部溶剤の代替機能を持たせる場合は、使用するモノマーに相溶性が高いものがより好ましい。
【0089】
ポリマーは、インキの状態のときにモノマーと比べて高粘度であり、粘度を高く調整するのに用いることができ、重量平均分子量は30,000以上(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定したポリスチレン換算重量平均分子量)であることが好ましく、50,000以上であることがより好ましい。このような場合には、少量で充分な粘度上昇効果を得られる場合が多い。
【0090】
このようなポリマーは、単独で又は2種以上混合して用いることができる。
【0091】
また、特に修正しようとするカラーフィルタの欠陥個所に用いられているポリマーと同じ種類のポリマーである方が欠陥修正用インキの修正部位へのなじみ、密着性などの面で好ましい。例えば、カラーフィルタの着色層に一般的に用いられているポリマーはアクリル樹脂等であり、カラーフィルタの着色層を修正しようとする場合は、これらを好ましく用いることができる。
【0092】
ポリマーは反応性のものでも非反応性のものでも使用できるが、反応性ポリマーを用いる場合には、塗膜を反応硬化させて膜強度を上げることができるので、好ましい。反応性官能基の反応形式は、上記反応性官能基を有するモノマーに例示したものと同様の反応形式が使用可能であり、特に限定されない。
【0093】
ここで、非反応性ポリマーとしては、例えば、次のモノマーからなる重合体、又は2種以上のモノマーを用いた共重合体:(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、スチレン、ポリスチレンマクロモノマー、及びポリメチルメタクリレートマクロモノマー、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、α−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、トリシクロデニカル(メタ)アクリレート;等を用いることができる。
【0094】
また、反応性ポリマーとしては、反応性官能基を有するポリマーであればよく、例えば、エチレン性不飽和結合を有するポリマー、エポキシ基を有するポリマー、オキサゾリン基を有するポリマー、環状尿素基を有するポリマー、環状エステル基を有するポリマー、ポリイミド前駆体(ポリアミック酸)、メラミン樹脂等を用いることができるが、安定性と反応性の点から、エチレン性不飽和結合を有するポリマー、エポキシ基を有するポリマーが好ましく用いられる。
【0095】
エチレン性不飽和結合を有するポリマーとしては、上記エチレン性不飽和結合を含有する多官能アクリレート系のモノマーの1種又は2種以上用いた重合体及び共重合体を用いることができる。その中でも特に、ジアリルフタレートプレポリマー、特開2000−239497号公報で示されるポリマーは、熱硬化性の点から、好ましく用いられる。
【0096】
ポリマーは、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に1重量%〜25重量%の範囲内、中でも2重量%〜20重量%の範囲内、さらには2重量%〜12重量%の範囲内で配合されることが好ましい。
【0097】
(5)その他の添加剤
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおいて、反応性官能基を有するモノマーを比較的多量に配合する場合は、得られる欠陥修正用インキのゲル化を防止して保存時の安定性を向上させるために、インキ製造時に重合禁止剤を配合することが好ましい。重合禁止剤としては、特に限定されず、ジフェニルピクリルヒドラジド、トリ−p−ニトロフェニルメチル,p−ベンゾキノン、p−tert−ブチルカテコール、ピクリン酸、塩化銅、メチルハイドロキノン、メトキノン、tert−ブチルハイドロキノン等の反応の重合禁止剤を用いることができるが、中でも保存安定性の点からハイドロキノン系重合禁止剤が好ましく、メチルハイドロキノンを用いるのが特に好ましい。
【0098】
重合禁止剤は、欠陥修正用インキ中に0.01重量%〜1重量%の範囲内、中でも0.01重量%〜0.5重量%の範囲内、さらには0.01重量%〜0.05重量%の範囲において配合することが好ましい。
【0099】
顔料分散剤は、着色剤の分散性を向上させる目的で、インキ製造時に配合することが好ましい。
【0100】
顔料分散剤として具体例には、ノナノアミド、デカンアミド、ドデカンアミド、N−ドデシルヘキサデカンアミド、N−オクタデシルプロピオアミド、N,N−ジメチルドデカンアミド及びN,N−ジヘキシルアセトアミド等のアミド化合物、ジエチルアミン、ジヘプチルアミン、ジブチルヘキサデシルアミン、N,N,N',N'−テトラメチルメタンアミン、トリエチルアミン、トリブチルアミン及びトリオクチルアミン等のアミン化合物、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N,N,N',N'−(テトラヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N'−トリ(ヒドロキシエチル)−1,2−ジアミノエタン、N,N,N',N'−テトラ(ヒドロキシエチルポリオキシエチレン)−1、2−ジアミノエタン、1,4−ビス(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン及び1−(2−ヒドロキシエチル)ピペラジン等のヒドロキシ基を有するアミン等、ニペコタミド、イソニペコタミド、ニコチン酸アミド等、その他に、ポリウレタン、ポリアクリレート等のポリカルボン酸エステル、不飽和ポリアミド、ポリカルボン酸(部分)アミン塩、ポリカルボン酸アンモニウム塩、ポリカルボン酸アルキルアミン塩、ポリシロキサン、長鎖ポリアミノアマイドリン酸塩、水酸基含有ポリカルボン酸エステル、これらの変性物、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応により形成されたアミド及びその塩等のポリエステル系高分子量顔料分散剤を挙げることができるが、着色剤濃度が高い時でも分散性が良好な点から、ポリエステル系高分子量顔料分散剤を用いることが好ましく、特にソルスパース24000GR(アビシア製)を用いることが好ましい。
【0101】
顔料分散剤は、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に1重量%〜25重量%配合することが好ましく、1重量%〜15重量%配合することが更に好ましく、1重量%〜10重量%配合することが特に好ましい。
【0102】
重合開始剤は、反応性官能基を有するモノマーや、反応性ポリマーの反応性を向上させる目的で、製造時に配合することが好ましい。
【0103】
例えば、エチレン性不飽和結合のようなラジカル重合性基を有するモノマー及び/又はポリマーを用いる場合には、通常、ラジカル重合開始剤を添加する。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類、アゾ化合物、過酸化物、2,3−ジアルキルジオン化合物類、ジスルフィド化合物類、チウラム化合物類、フルオロアミン化合物などが用いられる。より具体的には、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン、2−メチル−1[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、ベンジルジメチルケトン、1−(4−ドデシルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン等を例示できる。これらのうちでも、アセトフェノン類、チオキサントン類化合物の開始剤が好ましく用いられ、具体的には、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1、2−メチル−1−(4−メチルチオフェニル)2−モルフォリノ−プロパンー1−オン、ジエチルチオキサントンが、感度、酸素低阻害性の点から、本発明において好ましく用いられる。これらは、いずれか一方を単独で、又は、両方を組み合わせて用いることができる。
【0104】
光カチオン重合開始剤としては、スルホン酸エステル、イミドスルホネート、ジアルキル−4−ヒドロキシスルホニウム塩、アリールスルホン酸−p−ニトロベンジルエステル、シラノール−アルミニウム錯体、(η6-ベンゼン)(η5-シクロペンタジエニル)鉄(II)等が例示され、さらに具体的には、ベンゾイントシレート、2,5−ジニトロベンジルトシレート、N−トシフタル酸イミド等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0105】
光ラジカル重合開始剤としても、光カチオン重合開始剤としても用いられるものとしては、芳香族ヨードニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族ホスホニウム塩、トリアジン化合物、鉄アレーン錯体等が例示され、更に具体的には、ジフェニルヨードニウム、ジトリルヨードニウム、ビス(p−tert−ブチルフェニル)ヨードニウム、ビス(p−クロロフェニル)ヨードニウム等のヨードニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のヨードニウム塩、トリフェニルスルホニウム、4−tert−ブチルトリフェニルスルホニウム、トリス(4−メチルフェニル)スルホニウム等のスルホニウムのクロリド、ブロミド、ホウフッ化塩、ヘキサフルオロホスフェート塩、ヘキサフルオロアンチモネート塩等のスルホニウム塩、2,4,6−トリス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン、2−メチル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−1,3,5−トリアジン等の2,4,6−置換−1,3,5トリアジン化合物等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0106】
光アニオン重合開始剤としては、例えば紫外線照射によりアミンを発生する化合物、より具体的には、1,10−ジアミノデカンや4,4’−トリメチレンジピペリジン、カルバメート類及びその誘導体、コバルト−アミン錯体類、アミノオキシイミノ類、アンモニウムボレート類等を例示することができ、市販品としては、みどり化学(株)NBC−101がある。
【0107】
重合開始剤は、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に2重量%〜20重量%配合することが好ましく、2重量%〜15重量%配合することが更に好ましく、5重量%〜9重量%配合することが特に好ましい。
【0108】
また、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキには、他にも、界面活性剤、架橋剤等を配合しても良い。
【0109】
塗布時に塗布上面が尖ることを防止する、着色剤の分散安定性を向上させる等の目的で界面活性剤を欠陥修正用インキに配合してもよい。界面活性剤としては特に制限はないが、具体的には、アルキルナフタレンスルホン酸塩、燐酸エステル塩に代表されるアニオン系界面活性剤、アミン塩に代表されるカチオン系界面活性剤、アミノカルボン酸、ベタイン型に代表される両性界面活性剤を例示することができる。
【0110】
界面活性剤は、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に0.01重量%〜2重量%配合することが好ましく、0.01重量%〜0.5重量%配合することが更に好ましく、0.01重量%〜0.1重量%配合することが特に好ましい。
【0111】
架橋剤を使用すると、修正部の耐溶剤性、耐熱性が向上したり、特にシラン系の架橋剤の場合には修正部の密着性を向上させたりすることができる。
【0112】
架橋剤としては、使用するモノマーやポリマーの硬化に効果があるものなら特に制限はないが、例えばアミノアルキル多価アルコキシシランあるいはアミノアリール多価アルコキシシランの加水分解物ないしこれらの縮合物などを好ましく用いることができる。また、アミノアルキル多価アルコキシシランあるいはアミノアリール多価アルコキシシラン、あるいはこれらの加水分解物ないし縮合物と、多価カルボン酸あるいは多価カルボン酸二無水物の反応体などの他、金属キレート等も好ましく用いることができる。
【0113】
架橋剤は、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキ中に0.1重量%〜5重量%配合することが好ましく、0.1重量%〜3重量%配合することが更に好ましく、0.1重量%〜1.5重量%配合することが特に好ましい。
【0114】
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキにおける固形分濃度としては、40重量%〜55重量%であることが好ましく、45重量%〜52重量%がより好ましく、45重量%〜50重量%であることが更に好ましい。
【0115】
固形分中の着色剤濃度は、30重量%〜60重量%であることが好ましく、35重量%〜60重量%がより好ましく、40重量%〜55重量%であることが更に好ましい。
【0116】
固形分中のバインダ成分は、30重量%〜60重量%であることが好ましく、35重量%〜60重量%がより好ましく、40重量%〜55重量%であることが更に好ましい。
【0117】
なお、ここで固形分濃度とは、溶剤以外のインキ含有物、すなわち着色剤、反応性官能基を有するモノマー、ポリマー、その他の任意成分の正味の重量のインキ重量に対する重量%のことである。また、固形分中の着色剤濃度は、インキ中に含まれる固形分の重量に対する着色剤の重量%で表す。さらに、固形分中のバインダ成分の濃度は、インキ中に含まれる固形分の重量に対するバインダ成分(例えば反応性官能基を有するモノマーとポリマーの合計量)の重量%で表す。
【0118】
(6)ブラックマトリックス
上記では、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキが主に赤色(R)、青色(B)および緑色(G)等のカラーパターンの修正に用いられる場合について説明したが、本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキはブラックマトリックスの欠陥の修正に用いられてもよい。この際のブラックマトリックスは、樹脂バインダ中にカーボン微粒子、金属酸化物、無機顔料、有機顔料等の遮光性粒子を含有させた遮光部であってもよい。用いられる樹脂バインダとしては、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリルアミド、ポリビニルアルコール、ゼラチン、カゼイン、セルロース等の樹脂を1種または2種以上混合したものや、感光性樹脂、さらにはO/Wエマルジョン型の樹脂組成物、例えば、反応性シリコーンをエマルジョン化したもの等を用いることができる。
【0119】
本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキがブラックマトリックスの欠陥の修正に用いられる場合は、上記遮光性粒子等を用い、上記記載に基づいて、上記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された物性が得られるように溶剤を選択し、上記欠陥修正用インキの組成を決定することができる。
【0120】
3.用途
上記欠陥修正用インキ物性決定工程および欠陥修正用インキ組成決定工程を経て設計された欠陥修正用インキは、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥の修正に用いることができる。本発明の設計方法によって設計された欠陥修正用インキを用いて修正される上記「着色層」は赤色(R)、青色(B)、緑色(G)等のカラーパターンやブラックマトリックスであってもよく、中でもカラーパターン、特には赤色(R)、青色(B)および緑色(G)の3色のカラーパターンであることが好ましい。
また、上記カラーフィルタは基板上にカラーパターンやブラックマトリックス等が形成された一般的なカラーフィルタであり、液晶表示装置や有機エレクトロルミネッセント(EL)ディスプレイ等に用いることができる。
【0121】
本発明の設計方法によって設計された欠陥修正用インキは、図1に例示されるように、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥の修正に用いることができる。図1の例においては、基板上に着色層が形成されたカラーフィルタの欠陥(図1(a)参照)を検出し、検出された欠陥をレーザー等により除去し(図1(b)参照)、着色層が除去された部分に本発明の設計方法によって設計された欠陥修正用インキを塗布し(図1(c)参照)、塗布された欠陥修正用インキが欠陥内に濡れ広がった後に紫外線等で硬化させることにより、欠陥を修正する(図1(d))ことができる。
【0122】
カラーフィルタの着色層に存在する欠陥は、主として、異物欠陥、顔料凝集による濃色欠陥などに起因する黒欠陥と、白っぽく色が抜ける白欠陥(色抜け欠陥、あるいはパターン欠け欠陥)とに分類され、白欠陥は、黒欠陥部分の付着物が除去される際にも生じる。本発明の欠陥修正用インキの設計方法によって設計される欠陥修正用インキを用いることにより、これらの欠陥を修正することができる。
【0123】
修正されるべき欠陥を検出するための方法は、上記欠陥を検出することが可能な方法であれば、特に限定されるものではないが、例えばハロゲンランプ光を照射し、その反射光もしくは透過光をCCDライセンサにて受光し、受光した結果を画像処理して欠陥部分を抽出するような検査装置を用いる方法等を挙げることができる。この工程において、欠陥の存在が確認された場合は、その欠陥のカラーフィルタ内での位置を測定し、その位置情報に基づき、欠陥部分の除去および/または欠陥修正用インキの塗布をすることできる。
【0124】
カラーフィルタの着色層に色抜け等の白欠陥が検出された場合は、当該白欠陥にそのまま欠陥修正用インキを塗布してもよいが、欠陥修正用インキの塗布を良好に行えるように、当該白欠陥の周辺部分にレーザー等を照射することによって除去し、カラーフィルタの基板が露出した状態にした後に欠陥修正用インキの塗布を行うことが好ましい。また、カラーフィルタの着色層に黒欠陥が検出された場合は、当該黒欠陥およびその黒欠陥の近傍に存在する着色層にレーザーを照射して除去した後に、当該除去部分に欠陥修正用インキを塗布することが好ましい。
【0125】
この際、黒欠陥等の除去に用いられるレーザーは、着色層と共に異物等を除去することができるレーザーであれば特に限定されるものではない。例えば、エキシマ、YAG等のレーザーを用いることが可能であり、YAGは、第2高調波だけでなく、YAG基本波、YAG第3高調波、YAG第4高調波等を用いてもよい。また、この除去に用いられる装置としては、上述したようなレーザーを照射できる装置であれば、特に限定されるものではないが、製造効率の面から、黒欠陥等の除去のためのレーザーの光源を有するレーザー照射装置と、除去された部分に塗布される欠陥修正用インキを硬化させる紫外線光源を有する紫外線照射装置とを有する装置であることが好ましい。
【0126】
上記欠陥に欠陥修正用インキを塗布する方法としては、ディスペンサによって必要量の欠陥修正用インキを垂らす方法、インクジェットによる方法、または、図2に例示するような先端が平面を形成している針状物(塗布針)の先端に欠陥修正用インキを付着させ、それを白欠陥部に押しつける方法等がある。より微小な白欠陥に対応することができるため、本発明においては上記の方法の中でも、塗布針により白欠陥に塗布されることが好ましい。図2に例示するような塗布針7によって欠陥修正用インキ6を塗布する場合、欠陥修正用インキを塗布針に付着させ、欠陥部分に塗布し、適切に濡れ広がらせる必要があるが、本発明の設計方法によって設計された欠陥修正用インキは修正される欠陥のサイズに応じて調製された物性を有するものであるため、これらの各工程を容易かつ良好に行うことができる。
【0127】
B.欠陥修正用インキの製造方法
次に、本発明の欠陥修正用インキの製造方法について説明する。
本発明の欠陥修正用インキの製造方法は、カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの製造方法であって、上述した欠陥修正用インキの設計方法を用いて上記欠陥修正用インキを設計する欠陥修正用インキ設計工程と、上記欠陥修正用インキ設計工程において決定された組成を有する欠陥修正用インキを調製する欠陥修正用インキ調製工程とを有することを特徴とするものである。
【0128】
本発明の欠陥修正用インキの製造方法によって製造された欠陥修正用インキは、修正される欠陥のサイズに適した物性を有するものであるため、欠陥修正用インキを塗布針に付着させ、欠陥部分に塗布し、適切に濡れ広がらせるといった、欠陥修正の各工程を容易かつ良好に行うことができる。
【0129】
上記欠陥修正用インキ設計工程においては、上述した欠陥修正用インキの設計方法を用いて欠陥修正用インキを設計する。すなわち、上記欠陥修正用インキ設計工程においては、修正される上記欠陥のサイズに応じて、上記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定し、決定された上記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、欠陥修正用インキの組成を決定する。上記欠陥修正用インキ設計工程において欠陥修正用インキの物性や組成を決定する方法等は、上記「A.欠陥修正用インキの設計方法」と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0130】
上記欠陥修正用インキ調製工程においては、上記欠陥修正用インキ設計工程において決定された組成を有する欠陥修正用インキを調製する。本工程における欠陥修正用インキの調製方法としては、上記欠陥修正用インキの設計方法において決定された組成を有する欠陥修正用インキを調製できる方法であれば特に限定されるものではない。例えば、各成分をあらかじめ別々に混合してから全体を合わせて混合する方法、あるいは、溶剤と着色剤とを混合してあらかじめ分散した着色剤の分散液に、ポリマー、および反応性官能基を有するモノマーを混合する方法、等を用いることができる。粘度安定性を考慮すると、溶剤と着色剤とを混合してあらかじめ分散した着色剤の分散液に、ポリマー、および反応性官能基を有するモノマーを混合する方法が特に好ましい。
【0131】
本発明における欠陥修正用インキの調製において、インキ中、または着色剤の分散液中における着色剤の分散方法としては、特に限定されず、ニーダー、ロールミル、アトライタ、スーパーミル、ディゾルバ、サンドミル等の公知の分散機等、様々な方法をとり得る。
【0132】
なお、本発明は、上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0133】
以下に実施例を示し、本発明をさらに詳細に説明する。
[実施例1]
xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μm(80μm未満)の範囲内であるサイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性を決定するために、下記の実験(実験例1〜実験例24)を行った。すなわち、下記表1および表2に示す組成、表3に示す物性を有する欠陥修正用インキを用いて着色層の欠陥の修正を行い、修正後の状態を確認した。各実験例において修正される欠陥は、下記表3に示すサイズの白欠陥である。上記白欠陥は、形成された着色層にレーザーを照射して該当部分を除去することにより形成した。修正は、修正される欠陥のサイズに応じて直径20μm〜80μmの塗布針を用い、塗布針の先端に上記欠陥修正用インキを付着させ、上記塗布針に付着した欠陥修正用インキの液滴を上記着色層の欠陥と接触させて、上記欠陥に欠陥修正用インキを塗布し、当該領域に紫外線を照射して上記欠陥修正用インキを硬化させることにより行った。
【0134】
なお、表3中の接触角の欄には、シリンジを用いて各欠陥修正用インキをガラス基板上に滴下した時の0ms〜20000msでの接触角の変化量を示す。また、動的表面張力の欄には、気泡の発生速度を2Hzから10Hzまで変化させて測定した際の動的表面張力の変化量を、せん断応力の欄には、せん断速度を10(1/s)から100(1/s)まで変化させて測定した際のせん断応力の変化量を示す。
【0135】
【表1】

【0136】
【表2】

【0137】
【表3】

【0138】
上記各実施例および比較例において修正された欠陥部分と、修正されていない(正常な)部分との色差ΔEabを分光光度計(オリンパス製 商品名:分光光度計BH3−MJL)を用いて測定し、修正状態の判定を行った結果を下記表4に示す。下記表4においては、ΔEabが4未満の場合を「極めて良好」、ΔEabが4〜8の場合を「良好」、ΔEabが8を越える場合を「不良」と判定した。
【0139】
【表4】

【0140】
[実施例2]
xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内の範囲内であるサイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性を決定するために、上記実施例1と同様の実験(実験例25〜実験例48)を行った。すなわち、下記表5および表6に示す組成および表7に示す物性を有する欠陥修正用インキを用い、下記表7に示すサイズの着色層の欠陥の修正を行い、修正後の状態を確認した。修正された欠陥の状態の判定を下記表8に示す。
【0141】
【表5】

【0142】
【表6】

【0143】
【表7】

【0144】
【表8】

【0145】
[評価]
上記実施例1から、修正される欠陥のサイズが小さい(xが20μm〜80μm、yが20μm〜80μmの範囲内)場合は、欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量が15°〜35°の範囲内、動的表面張力の変化量が10〜25の範囲内、および、せん断応力の変化量が5〜15の範囲内であると良好に修正ができることが分かる。また、上記実施例2から、修正される欠陥のサイズが大きい(xが80μm〜200μm、yが80μm〜500μmの範囲内)場合は、欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量が20°〜35°の範囲内、動的表面張力の変化量が10〜22の範囲内、および、せん断応力の変化量が2〜15の範囲内であると良好に修正ができることが分かる。このように、修正される欠陥のサイズに応じて修正に用いる欠陥修正用インキの物性を決定し、当該物性を有する欠陥修正用インキを用いることにより、欠陥の修正を良好に行うことができる。
【符号の説明】
【0146】
1 … ブラックマトリックス
2 … カラーパターン
3 … カラーフィルタ
4 … 黒欠陥
5 … 白欠陥
6 … 欠陥修正用インキ
7 … 塗布針

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの設計方法であって、
修正される前記欠陥のサイズに応じて、前記欠陥の修正に適した欠陥修正用インキの物性を決定する欠陥修正用インキ物性決定工程と、
前記欠陥修正用インキ物性決定工程において決定された前記欠陥修正用インキの物性が得られるように溶剤を選択し、前記欠陥修正用インキの組成を決定する欠陥修正用インキ組成決定工程とを有することを特徴とする欠陥修正用インキの設計方法。
【請求項2】
前記欠陥修正用インキの物性が、前記欠陥修正用インキの基板との接触角の変化量、動的表面張力変化、および、せん断応力変化の各パラメータに基づいて決定されることを特徴とする請求項1に記載の欠陥修正用インキの設計方法。
【請求項3】
前記欠陥修正用インキ物性決定工程では、前記欠陥のサイズと、当該サイズの欠陥を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係を予め定め、予め定められた前記関係に基づいて前記欠陥修正用インキの物性が決定されることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の欠陥修正用インキの設計方法。
【請求項4】
予め定められた前記関係が、生じうる欠陥のサイズを複数の範囲に分けた場合の各サイズの範囲と、当該サイズの範囲を修正するのに適した欠陥修正用インキの物性との関係であることを特徴とする請求項3に記載の欠陥修正用インキの設計方法。
【請求項5】
カラーフィルタの着色層に存在する欠陥に塗布して修正するための欠陥修正用インキの製造方法であって、
請求項1から請求項4までのいずれかに記載の欠陥修正用インキの設計方法を用いて前記欠陥修正用インキを設計する欠陥修正用インキ設計工程と、
前記欠陥修正用インキ設計工程において決定された組成を有する欠陥修正用インキを調製する欠陥修正用インキ調製工程とを有することを特徴とする欠陥修正用インキの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−282149(P2010−282149A)
【公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−137545(P2009−137545)
【出願日】平成21年6月8日(2009.6.8)
【出願人】(000002897)大日本印刷株式会社 (14,506)
【Fターム(参考)】