説明

カラーフィルタの製造方法、電気光学装置の製造方法、カラーフィルタ、及び電気光学装置

【課題】製造工程数を削減し、その生産性を向上したカラーフィルタの製造方法、電気光
学装置の製造方法、カラーフィルタ、及び電気光学装置を提供する。
【解決手段】カラーフィルタ基板15の対向面15bに遮光層23を形成し遮光層23に
区画された複数の画素領域S2を形成した。そして、緑色用画素領域SGに凸部用液滴D
1を吐出し、着弾した凸部用液滴D1を硬化して遮光層23の厚さよりも厚い無色透明の
凸部25を形成した。また、遮光層23の表面と凸部25の表面とに撥液処理を施して撥
液性を与え、各画素領域S2にフィルタ用液滴D2を吐出して各色用フィルタ層CFR,
CFG,CGBを形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの製造方法、電気光学装置の製造方法、カラーフィルタ、及
び電気光学装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、複数の画素領域の各々にカラーフィルタを設け、特定波長の光を透過
させることによりフルカラーの画像を表示させる。液晶表示装置は、入射光の一部を、こ
のカラーフィルタに吸収させるため、出射する着色光の強度が入射光の強度に対して弱く
なり、明るい画面を得難い傾向にあった。特に、反射透過型の液晶表示装置は、反射型の
表示を行うとき、表示面から入射した光を一度カラーフィルタに透過させ、背面の反射部
材で反射させた後、再びカラーフィルタに透過させて出射させる。この結果、表示面から
入射した光は、カラーフィルタを2回も透過するため、表示画像の輝度を、さらに低下さ
せてしまう。
【0003】
そこで、液晶表示装置においては、従来から、表示画像の輝度を向上させる提案がなさ
れている。特許文献1は、カラーフィルタの一部に開口を設け、1つの画素領域から、カ
ラーフィルタを介した着色光と、開口を介した非着色光とを出射させる。これによれば、
開口を介した非着色光が可視領域の強度を増大させるため、画素領域の各々に対して輝度
を向上させることができる。さらに、特許文献2〜5は、それぞれ上記開口の位置、サイ
ズ、数量を各色の画素領域ごとに最適化し、入射光の方向に関わらす輝度の向上を可能に
させ、コントラストや色再現性を向上させている。
【特許文献1】特開平11−183892号公報
【特許文献2】特開平11−72779号公報
【特許文献3】特開平11−72780号公報
【特許文献4】特開平11−109331号公報
【特許文献5】特開平11−183891号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
カラーフィルタに対して上記の開口を形成する場合、一般的に、フォトリソグラフィ技
術やエッチング技術を用いたパターニングを必要とする。こうしたパターニングは、開口
に応じたマスクを形成する工程や開口を形成した後にマスクを除去する工程などを要し、
カラーフィルタの生産性、ひいては液晶表示装置の生産性を著しく損なう問題を招いてい
た。
【0005】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであり、その目的は、パターンを形
成するための工程数を削減し、その生産性を向上したカラーフィルタの製造方法、電気光
学装置の製造方法、カラーフィルタ、及び電気光学装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、基板の1つの面に隔壁を形成し前記隔壁に区画
された複数の画素領域を形成する工程と、前記画素領域に樹脂材料を含む第一の液滴を吐
出し、着弾した前記第一の液滴を硬化して前記隔壁の厚さよりも厚い無色透明の凸部を形
成する工程と、前記隔壁の表面と前記凸部の表面とに撥液性を与える工程と、前記画素領
域にカラーフィルタ材料を含む第二の液滴を吐出し、着弾した前記第二の液滴を乾燥して
撥液性を有する前記凸部を除いた前記画素領域にカラーフィルタ層を形成する工程と、を
備えた。
【0007】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、画素領域の中において、凸部を除いた領域
にのみカラーフィルタ層を形成させることができる。しかも、凸部の厚さを隔壁よりも厚
く形成させるため、着弾した第二の液滴を、より確実に凸部の領域から離脱させることが
できる。したがって、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いることなく、画素
領域の中の所望する領域にのみ、非着色光の出射領域(以下単に、非着色領域という。)
を形成させることができる。よって、カラーフィルタの製造工程数を削減させることがで
き、ひいてはカラーフィルタの生産性を向上させることができる。
【0008】
このカラーフィルタの製造方法は、前記基板と、前記基板と相対向する素子基板との間
の距離に相当する厚さを有した前記凸部を形成してもよい。
このカラーフィルタの製造方法によれば、基板と素子基板との間の距離が凸部の厚さに
規定される。したがって、凸部をスペーサとして機能させることができる。
【0009】
このカラーフィルタの製造方法は、前記カラーフィルタ層の上に透明電極材料を含む第
三の液滴を吐出し、着弾した第三の液滴を乾燥して前記凸部を除いた前記画素領域に対向
電極を形成する工程を備えてもよい。
【0010】
このカラーフィルタの製造方法によれば、カラーフィルタ層の上に、凸部に応じた対向
電極を形成させることができる。したがって、凸部のサイズや形状に関し、その設計の自
由度を拡張させることができる。
【0011】
このカラーフィルタの製造方法は、前記1つの面と相対向する前記基板の他側面に対向
電極を形成する工程を備えてもよい。
このカラーフィルタの製造方法によれば、凸部の有無に関わらず、対向電極の位置を他
側面に規定させることができる。したがって、凸部のサイズや形状に関し、その設計の自
由度を拡張させることができる。
【0012】
このカラーフィルタの製造方法は、前記画素領域に光硬化性樹脂材料を含む前記第一の
液滴を吐出し、着弾した前記第一の液滴に光を照射して半球面状の前記凸部を形成する構
成であってもよい。
【0013】
このカラーフィルタの製造方法によれば、光を照射するだけで第一の液滴を硬化できる
。そのため、着弾した第一の液滴が画素領域の中で濡れ広がる前に第一の液滴を硬化させ
ることができ、半球面状の凸部を形成させることができる。したがって、より高い位置精
度の下で非着色領域を形成させることができる。
【0014】
本発明の電気光学装置の製造方法は、基板の1つの面にカラーフィルタを有した電気光
学装置の製造方法であって、前記カラーフィルタを上記のカラーフィルタの製造方法によ
って製造する。
【0015】
本発明の電気光学装置の製造方法によれば、電気光学装置の製造工程数を削減させるこ
とができ、ひいては電気光学装置の生産性を向上させることができる。
本発明のカラーフィルタは、基板の1つの面に設けられた隔壁に区画される複数の画素
領域と、前記複数の画素領域の各々に設けられ前記隔壁の厚さよりも厚い無色透明の凸部
と、前記複数の画素領域の各々に設けられ前記凸部を除いた前記画素領域に形成されるカ
ラーフィルタ層と、を備えた。
【0016】
本発明のカラーフィルタによれば、画素領域の中において、凸部の厚さが隔壁よりも厚
く形成させる。したがって、液相プロセスを利用してカラーフィルタ層を形成する場合、
凸部の領域を除いた領域にのみカラーフィルタ層を形成させることができる。したがって
、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いることなく、画素領域の中の所望する
領域にのみ非着色領域を形成させることができる。よって、カラーフィルタの製造工程数
を削減させることができ、ひいてはカラーフィルタの生産性を向上させることができる。
【0017】
本発明の電気光学装置は、基板の1つの面にカラーフィルタを有した電気光学装置であ
って、前記カラーフィルタは、上記のカラーフィルタである。
本発明の電気光学装置によれば、電気光学装置の製造工程数を削減させることができ、
ひいては電気光学装置の生産性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
(第一実施形態)
以下、本発明を具体化した第一実施形態を図1〜図4に従って説明する。まず、電気光
学装置としての液晶表示装置について説明する。図1は液晶表示装置の全体を示す斜視図
、図2は液晶表示装置に備えられたカラーフィルタ基板を示す斜視図、図3(a)、(b
)は、それぞれ画素領域を示す平面図及び断面図である。
【0019】
図1において、液晶表示装置10は、バックライト11と液晶パネル12とを有する。
バックライト11は、光源13から出射された光を液晶パネル12の全面に照射させる。
液晶パネル12は、素子基板14とカラーフィルタ基板15とを有し、これら素子基板1
4とカラーフィルタ基板15とが、四角枠状のシール材16によって貼り合わされて、そ
の間隙に液晶LCを封入する。液晶LCは、バックライト11からの光を変調して所望の
画像をカラーフィルタ基板15の上面に表示させる。
【0020】
素子基板14は、四角板状の無アルカリガラス基板であって、図1における上面(以下
単に、素子形成面14aという。)には、一方向に延びる複数の走査線Lxが所定の間隔
をおいて形成されている。各走査線Lxは、それぞれ素子基板14の一側端に配設される
走査線駆動回路17に電気的に接続されている。走査線駆動回路17は、複数の走査線L
xの中から所定の走査線Lxを所定のタイミングで選択駆動し、その走査線Lxに走査信
号を出力する。
【0021】
素子形成面14aには、走査線Lxと直交する他方向に延びる複数のデータ線Lyが所
定の間隔をおいて形成されている。各データ線Lyは、それぞれ素子基板14の一側端に
配設されるデータ線駆動回路18に電気的に接続されている。データ線駆動回路18は、
表示データに基づくデータ信号を生成し、そのデータ信号を対応するデータ線Lyに所定
のタイミングで出力する。
【0022】
ここで、走査線Lxに沿う方向をX方向とし、データ線Lyに沿う方向をY方向という

素子形成面14aには、走査線Lxとデータ線Lyによってマトリックス状に区画され
る複数の素子領域S1が形成されている。各素子領域S1には、それぞれTFT等からな
る図示しない制御素子や、ITO等の透明電極材料からなる画素電極P1などが形成され
ている。素子領域S1の制御素子は、走査線駆動回路17が走査線Lxを線順次走査に基
づき1本ずつ順次選択するとき、選択期間中だけオン状態になる。素子領域S1の制御素
子がオン状態となるとき、データ線駆動回路18から出力されるデータ信号は、データ線
Ly及び制御素子を介して画素電極P1に出力される。
【0023】
各走査線Lx、各データ線Ly、各素子領域S1の上側には、素子形成面14aの全体
にわたって共通する配向膜19が積層されている。配向膜19は、ラビング処理などの配
向処理を施されたポリイミドなどからなる薄膜であって、近傍の液晶分子の配向方向を所
定の方向に規定する。
【0024】
素子基板14の下面には、偏光板や位相差板などからなる光学基板21が貼り合わされ
ている。光学基板21は、所定の方向に透過軸を有し、バックライト11からの光を液晶
LCに向けて透過可能にする。
【0025】
カラーフィルタ基板15は、四角板状の無アルカリガラス基板であって、図1における
上面(以下単に、表示面15aという。)には、偏光板22が貼り合わされている。偏光
板22は、所定の方向に透過軸を有し、液晶LCからの光を液晶パネル12の上方に向け
て透過可能にする。
【0026】
図2において、カラーフィルタ基板15の上面(図1における下面:以下単に、対向面
15bという。)には、隔壁としての遮光層23が形成されている。遮光層23は、クロ
ムやカーボンブラックなどの遮光材料を含むアクリル系感光樹脂によって形成され、液晶
LCからの透過光を遮光する。遮光層23の表面は、フッ素系の官能基(例えば、パーフ
ルオロ基など)を有し、液滴を撥液するための撥液性を有している。遮光層23は、走査
線Lx及びデータ線Lyと対向する格子状に形成されて、遮光層23によって囲まれる複
数の画素領域S2を、対向面15bの全体にわたり区画形成する。すなわち、遮光層23
は、素子基板14に形成された複数の素子領域S1の各々と対向する複数の画素領域S2
を対向面15bの全体にわたり形成する。
【0027】
複数の画素領域S2は、Y方向に沿って配列された複数の赤色用画素領域SRと、Y方
向に沿って配列された複数の緑色用画素領域SGと、Y方向に沿って配列された複数の青
色用画素領域SBとによって構成されている。
【0028】
図3において、赤色用画素領域SR、緑色用画素領域SG、青色用画素領域SBには、
それぞれ対応する色の光を透過させるカラーフィルタ層、すなわち赤色の光を透過させる
赤色用フィルタ層CFR、緑色の光を透過させる緑色用フィルタ層CFG、青色の光を透
過させる青色用フィルタ層CFBが形成されている。
【0029】
各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBは、それぞれインクジェット法を用いて形成
されている。すなわち、各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBは、それぞれ対応する
画素領域S2の中に、各色用の無機顔料や有機顔料などのカラーフィルタ材料を分散させ
たインク(以下単に、フィルタ用インクという。)を液滴として吐出し、着弾した液滴を
乾燥させることによって形成されている。
【0030】
緑色用画素領域SGには、緑色用フィルタ層CFGを除く領域に略半球形状に形成され
た一対の凸部25が形成されている。各凸部25は、それぞれ光透過性樹脂からなる凸部
であって、緑色用画素領域SGの内部に、入射光を非着色光として出射させる非着色領域
を形成する。各凸部25は、それぞれインクジェット法を用いて形成されている。すなわ
ち、各凸部25は、それぞれ上記光透過性樹脂を含むインク(以下単に、凸部用インクと
いう。)を液滴として緑色用画素領域SGの内部に吐出し、着弾した液滴を硬化させるこ
とによって形成されている。
【0031】
光透過性樹脂としては、ポリメチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルメタクリレ
ートなどのアクリル系樹脂、ポリカーボネートなどのアリル系樹脂、メタクリル樹脂、ポ
リウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂
、セルロース系樹脂、ポリアミド系樹脂、フッ素系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリス
チレン系樹脂など、これらのうちの一種、あるいは複数種を混合した熱硬化性樹脂を用い
ることができる。
【0032】
また、光透過性樹脂としては、上記樹脂にビスイミダゾール系化合物などの光重合開始
剤を配合した光照射硬化性樹脂を用いることができる。光硬化性樹脂は、着弾直後に硬化
を開始させる熱硬化性樹脂と異なり、光(例えば、紫外線)が照射されるまで硬化しない
ため、凸部25の形状を制御させる上で好適である。
【0033】
各凸部25の厚さは、それぞれ対向面15bと画素電極P1との間の距離と略等しい大
きさに形成されている。これによって、素子基板14とカラーフィルタ基板15とが貼り
合わされている状態において、素子基板14とカラーフィルタ基板15との間の距離、す
なわち液晶LCの厚みが所定のサイズで均一に維持される。
【0034】
各凸部25の表面は、それぞれ液状体(例えば、フィルタ用インク)に対する撥液性を
有する。ここで、撥液性とは、例えば表面自由エネルギーを20mJ/m程度に低くし
て、極性を有した材料との間の親和性を小さくさせる性質、あるいは液状体の接触角を5
0°以上にする性質である。これによって、凸部25の表面に液状体が吐出される場合で
あっても、液状体を凸部25の領域から離脱させることができ、後続する液相プロセスに
対し非着色領域を確保させることができる。
【0035】
各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBの上側には、共通するオーバーコート層26
と、共通する透明電極としての対向電極P2と、共通する配向膜27とが積層されている

【0036】
オーバーコート層26は、無色透明のアクリル樹脂やエポキシ樹脂からなる薄膜であっ
て、凸部25を除いたカラーフィルタ基板15の全体に形成され、各画素領域S2を保護
してその上側を平坦にする。オーバーコート層26は、液相プロセス(例えば、スピンコ
ート法、ロールコート法、インクジェット法など)を用いて形成されている。すなわち、
オーバーコート層26は、光透過性樹脂を含む液状体を各色用フィルタ層CFR,CFG
,CFBの上に塗布した塗布膜を形成し、その塗布膜を乾燥させることによって形成され
ている。
【0037】
対向電極P2は、ITO等の透明電極材料からなる薄膜であって、凸部25を除いたカ
ラーフィルタ基板15の全体に形成され、所定の共通電位を受けて対向電極P2と画素電
極P1との間にデータ信号に対応した電位を供給する。対向電極P2は、オーバーコート
層26と同じく、液相プロセスを用いて形成されている。すなわち、対向電極P2は、透
明電極材料からなる微粒子の分散した液状体をオーバーコート層26の上に塗布した塗布
膜を形成し、その塗布膜を乾燥・焼成させることによって形成されている。
【0038】
配向膜27は、ラビング処理などの配向処理を施されたポリイミドなどからなる薄膜で
あって、凸部25を除いたカラーフィルタ基板15の全体に形成され、近傍の液晶分子の
配向方向を所定の方向に規定する。配向膜27は、オーバーコート層26と同じく、液相
プロセスを用いて形成されている。すなわち、配向膜27は、透明電極材料からなる微粒
子の分散した液状体をオーバーコート層26の上に塗布して塗布膜を形成し、その塗布膜
を乾燥・焼成させることによって形成されている。
【0039】
画素電極P1にデータ信号が入力されるとき、液晶分子は、画素電極P1と対向電極P
2との間の電位差に応じてその配向状態を変更し、バックライト11から入射する入射光
を通過あるいは遮光する。各画素領域S2は、それぞれ液晶LCを透過した光から対応す
る特定波長の光を透過させ、カラーフィルタ基板15にフルカラーの画像を表示させる。
【0040】
この際、緑色用画素領域SGは、緑色用フィルタ層CFGを介した緑色の光と、凸部2
5を介した非着色光とを出射させる。凸部25を介した非着色光は、可視領域の全体にわ
たり出射光の強度を増大させる。緑色の光は、可視領域の略全体にわたってブロードな発
光を示す、すなわち赤色の光の領域及び青色の光の領域にも発光を示す。そのため、緑色
用画素領域SGを利用した非着色光の透過・遮光は、液晶パネル12の全体から見て、カ
ラーバランスの大きな変動を招くことなく輝度を増大させる。
【0041】
次に、カラーフィルタ基板15の製造方法について説明する。図4(a)、(b)、(
c)、(d)は、それぞれカラーフィルタ基板15の製造工程を示す工程図である。
まず、図4(a)において、カラーフィルタ基板15の対向面15bに遮光層23を形
成する。遮光層23の形成方法としては、例えばフォトリソグラフィ技術を用いることが
できる。すなわち、遮光材料を含むアクリル系感光性樹脂を対向面15bの略全面に塗布
して厚みが2〜3(μm)の塗布膜を形成し、塗布膜に対し露光・現像を施して各画素領
域S2を有した遮光層23を形成させる。あるいは、カラーフィルタ基板15の対向面1
5bにクロム、酸化クロムなどの遮光材料からなる遮光膜を形成し、遮光膜に対しエッチ
ングを施して各画素領域S2に対応する開口を形成させる。そして、遮光膜の上側に感光
性樹脂の塗布膜を積層した後、塗布膜に対して露光・現像を施し、遮光膜と塗布膜とから
なる2層構造の遮光層23を形成させる。
【0042】
次いで、インクジェット法を用いて緑色用画素領域SGに凸部25を形成する。すなわ
ち、凸部用インクを公知のインクジェット装置に供給し、粒径が数十(μm)の複数の液
滴(以下単に、第一の液滴としての凸部用液滴D1という。)を形成させる。そして、各
凸部用液滴D1をそれぞれインクジェット装置から対応する緑色用画素領域SGの内部に
吐出させ、カラーフィルタ基板15の全体をオーブンなどにより加熱する、あるいはカラ
ーフィルタ基板15の全体に紫外線を照射する。これによって、緑色用画素領域SGに着
弾した凸部用液滴D1を硬化させ、緑色用画素領域SGの各々に凸部25を形成させる。
【0043】
凸部25と形成すると、遮光層23の表面と凸部25の表面に撥液性を与えるための撥
液処理を行う。撥液処理としては、例えばフッ素系のプラズマによる表面処理を用いるこ
とができる。すなわち、フルオロカーボンガス(例えば、CF、C、C
ど)を用いたプラズマPSの雰囲気の中に対向面15bの全面を晒し、遮光層23の表面
と凸部25の表面にフルオロカーボン基を置換させて撥液性を与える。
【0044】
図4(b)において、撥液処理を終了すると、インクジェット法を用いて、画素領域S
2の各々に対応する各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBを形成する。すなわち、フ
ィルタ用インクを公知のインクジェット装置に供給し、粒径が数十(μm)の複数の液滴
(以下単に、第二の液滴としてのフィルタ用撥液層用液滴D2という。)を形成させる。
そして、各フィルタ用液滴D2をそれぞれインクジェット装置から対応する画素領域S2
の内部に吐出させる。
【0045】
各画素領域S2の内部に着弾したフィルタ用液滴D2は、それぞれ対応する画素領域S
2の内部で合一する。この際、遮光層23の表面及び凸部25の表面がそれぞれ撥液性を
有しているため、フィルタ用インクは、その表面張力により、遮光層23の表面及び凸部
25の表面より盛り上がった状態で安定する。
【0046】
各画素領域S2にフィルタ用液滴D2を吐出させると、カラーフィルタ基板15の全体
をオーブンなどにより加熱し、フィルタ用インクを乾燥させる。この際、フィルタ用イン
クは、遮光層23の表面と凸部25の表面がそれぞれ撥液性を有しているため、画素領域
S2の内部であって、かつ、凸部25を除いた領域に行きわたるように乾燥する。これに
よって、画素領域S2の各々に、対応する各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBを形
成する。
【0047】
フィルタ用インクとしては、例えばポリウレタンオリゴマーに無機顔料を分散させた樹
脂に、シクロヘキサノン、酢酸ブチルなどの低沸点溶媒、ブチルカルビトールなどのグリ
コールアルキルエーテル類、またはブチルカルビトールアセテートなどのグリコールアル
キルエーテルアセテート類、またはコハク酸ジメチルなどの二塩基酸エステル類といった
高沸点溶媒、非イオン系界面活性剤などの分散媒を加えた液状体を用いることができる。
なお、フィルタ用インクは、フィルタ用液滴D2の吐出安定性を得るため、その粘度が1
〜50(mPas)であることが好ましく、1〜20(mPas)に調整されたものがよ
り好ましい。
【0048】
図4(c)において、各色用フィルタ層CFR,CFG,CFBを形成すると、オーバ
ーコート層26を形成する。オーバーコート層の形成は、撥液層により各色用フィルタ層
が形成されなかった部分と周囲の凹凸を緩和させる役割がある。オーバーコート層の形成
前に酸素プラズマ処理などを行うことで、遮光層および撥液層の表面を親液性に変えるこ
とができ、オーバーコート層の上に被覆ムラ無く均等に形成することができる。オーバー
コート層26の形成方法としては、スピンコート法、ロールコート法、インクジェット法
などの液相プロセスを用いる。すなわち、光透過性樹脂を含む液状体を各色用フィルタ層
CFR,CFG,CFB、及び遮光層23の略全面に吐出して塗布膜LFを形成し、塗布
膜LFを乾燥することによってオーバーコート層26を形成する。この際、塗布膜LFは
、凸部25の表面が撥液性を有しているため、凸部25を除いた領域に行きわたるように
乾燥する。これによって、凸部25の形状を保持した状態でオーバーコート層26を形成
させることができる。
【0049】
図4(d)において、オーバーコート層26を形成すると、オーバーコート層26の上
側に対向電極P2を形成する。対向電極P2の形成方法としては、インクジェット法、ス
ピンコート法、ロールコート法、インクジェット法などの液相プロセスを用いる。すなわ
ち、透明電極材料からなる微粒子の分散した液状体を用いて複数の液滴(以下単に、第三
の液滴としての対向電極用液滴D3という。)を形成させる。そして、各対向電極用液滴
D3をオーバーコート層26の上に吐出して塗布膜を形成し、塗布膜を乾燥することによ
って対向電極P2を形成する。この際、対向電極用液滴D3は、凸部25の表面が撥液性
を有しているため、凸部25を除いた領域に行きわたるように乾燥する。これによって、
凸部25の形状を保持した状態で対向電極P2を形成させることができる。
【0050】
そして、液相プロセスを用いてこの対向電極P2の上側に配向膜27を積層し、凸部2
5を有したカラーフィルタ基板15を形成する。
次に、上記のように構成した本実施形態の効果を以下に記載する。
【0051】
(1)上記実施形態は、カラーフィルタ基板15の対向面15bに遮光層23を形成し
遮光層23に区画された複数の画素領域S2を形成した。そして、緑色用画素領域SGに
凸部用液滴D1を吐出し、着弾した凸部用液滴D1を硬化して遮光層23の厚さよりも厚
い無色透明の凸部25を形成した。また、遮光層23の表面と凸部25の表面とに撥液処
理を施して撥液性を与え、各画素領域S2にフィルタ用液滴D2を吐出して各色用フィル
タ層CFR,CFG,CGBを形成した。
【0052】
したがって、緑色用画素領域SGの中において、凸部25を除いた領域にのみ緑色用フ
ィルタ層CFGを形成させることができる。しかも、凸部25の厚さを隔壁よりも厚く形
成させるため、フィルタ用液滴D2を、より確実に凸部25の領域から離脱させることが
できる。よって、フォトリソグラフィ技術やエッチング技術を用いることなく、緑色用画
素領域SGの中の所望する領域にのみ、非着色領域を形成させることができる。よって、
カラーフィルタの製造工程数を削減させることができ、カラーフィルタの生産性、液晶表
示装置10の生産性を向上させることができる。
【0053】
(2)上記実施形態によれば、凸部25の厚さを、対向面15bと画素電極P1との間
の距離と略同じ大きさに形成した。したがって、素子基板14とカラーフィルタ基板15
との間の距離を凸部25の厚さによって規定させることができ、液晶LCの厚さを維持す
るためのスペーサとして凸部25を機能させることができる。
【0054】
(3)上記実施規定によれば、オーバーコート層26の上側に対向電極用液滴D3を吐
出し、着弾した対向電極用液滴D3を乾燥して対向電極P2を形成した。よって、対向電
極用液滴D3が、凸部25の表面に撥液されるため、凸部25のサイズや形状に応じた対
向電極P2を形成することができる。したがって、凸部25のサイズや形状に関し、その
設計の自由度を拡張させることができる。
【0055】
(4)上記実施形態によれば、光硬化性の樹脂材料を含む凸部用液滴D1を吐出し、着
弾した凸部用液滴D1に光を照射して半球面状の凸部25を形成した。したがって、光を
照射するだけで凸部用液滴D1を硬化できる。すなわち、凸部用液滴D1が緑色用画素領
域SGの中で濡れ広がる前に凸部用液滴D1を硬化させることができ、半球面状の凸部2
5を形成させることができる。よって、より高い位置精度の下で非着色領域を形成させる
ことができる。
【0056】
(第二実施形態)
以下、本発明を具体化した第二実施形態を図5に従って説明する。第二実施形態は、第
一実施形態の遮光層23、各色用フィルタ層CFR,CFG,CFB、及び凸部25の位
置を変更したものである。そのため、以下では、その変更点について詳細に説明する。
【0057】
図5において、カラーフィルタ基板15の対向面15bには、その略全面にわたり、対
向電極P2と、その対向電極P2に積層された配向膜27とが形成されている。対向電極
P2は、第一実施形態と同じく、液相プロセスを用いて形成してもよく、あるいはスパッ
タリング法などの気相プロセスを用いて形成してもよい。
【0058】
カラーフィルタ基板15の表示面15aには、その略全面にわたり、遮光層23と、遮
光層23に囲まれた複数の画素領域S2とが形成されている。表示面15aに形成された
各画素領域S2には、それぞれ対応する色用のカラーフィルタが形成されている。すなわ
ち、赤色用画素領域SRには、赤色用フィルタ層CFRが形成され、緑色用画素領域SG
には、緑色用フィルタ層CFGが形成され、青色用画素領域SBには、青色用フィルタ層
CFBが形成されている。
【0059】
表示面15aに形成された緑色用画素領域SGには、第一実施形態と同じく、緑色用フ
ィルタ層CFGを除く領域に略半球形状に形成された凸部25が形成されている。凸部2
5は、それぞれ光透過性樹脂からなる凸部であって、緑色用画素領域SGの内部に非着色
領域を形成し、入射光を非着色光として出射させる。
【0060】
この第二実施形態によれば、凸部25が表示面15aに形成されるため、液晶LCの配
向状態に対し凸部25の影響を無くすことができる。したがって、凸部25のサイズや形
状に関し、その設計の自由度を拡張させることができる。
【0061】
尚、上記実施形態は以下のように変更してもよい。
・上記実施形態では、凸部25を緑色用画素領域SGにのみ形成した。これに限らず、
例えば赤色用画素領域SR、緑色用画素領域SG、青色用画素領域SBの少なくともいず
れか1つに形成する構成であればよい。
【0062】
・上記第一実施形態では、凸部25を緑色用画素領域SGの内部に2つだけ形成した。
これに限らず、例えば凸部25を遮光層23と接触する位置に1つ、あるいは3つ以上形
成してもよい。すなわち、本発明は、凸部25の形状や数量、さらには凸部25の画素領
域S2内における位置に限定されるものではない。
【0063】
・上記第一実施形態では、凸部25を除いたカラーフィルタ基板15の全体にオーバー
コート層26と配向膜27とを形成する構成にした。これに限らず、例えば凸部25を含
むカラーフィルタ基板15の全体にオーバーコート層26を形成する構成にしてもよく、
凸部25を含むカラーフィルタ基板15の全体に配向膜27を形成する構成にしてもよい

【0064】
・上記実施形態では、遮光材料を含むアクリル系感光樹脂によって遮光層23を構成し
、遮光層23に撥液処理を施して撥液性を与える構成した。これに限らず、例えばヘキサ
フルオロポリプロピレン樹脂などの黒色感光性樹脂材料によって遮光層23を構成し、遮
光層23の構成材料が撥液性を有する構成であってもよい。
【0065】
・上記実施形態では、電気光学装置を、透過型の液晶表示装置10に具体化した。これ
に限らず、例えば、電気光学装置を反射透過型の液晶表示装置として具体化してもよい。
・上記実施形態では、電気光学装置を、液晶表示装置10に具体化した。これに限らず
、例えば、電気光学装置をエレクトロルミネッセンス表示装置として具体化してもよい。
この構成においても、エレクトロルミネッセンス表示装置の生産性を向上することができ
る。
【0066】
・上記実施形態では、電気光学装置を、液晶表示装置10に具体化した。これに限らず
、電気光学装置を、電子放出素子から放出させる電子によって蛍光物質を発光させる電界
効果型装置(FEDやSED等)に具体化してもよい。この構成においても、電界効果型
装置の生産性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0067】
【図1】液晶表示装置を示す斜視図。
【図2】カラーフィルタ基板を示す斜視図。
【図3】(a)、(b)は、それぞれ画素領域を示す平面図及び側断面図。
【図4】(a)、(b)、(c)、(d)は、それぞれ液晶表示装置の製造工程を示す工程図。
【図5】第二実施形態の画素領域を示す平面図。
【符号の説明】
【0068】
D1…第一の液滴としての凸部用液滴、D2…第二の液滴としてのフィルタ用液滴、D
3…第三の液滴としての対極電極用液滴、P2…対向電極としての対向電極、S2…画素
領域、CFG…カラーフィルタを構成する緑色用フィルタ、10…電気光学装置としての
液晶表示装置、14…素子基板、15…カラーフィルタ基板、23…隔壁としての遮光層
、25…凸部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の1つの面に隔壁を形成し前記隔壁に区画された複数の画素領域を形成する工程と

前記画素領域に樹脂材料を含む第一の液滴を吐出し、着弾した前記第一の液滴を硬化し
て前記隔壁の厚さよりも厚い無色透明の凸部を形成する工程と、
前記隔壁の表面と前記凸部の表面とに撥液性を与える工程と、
前記画素領域にカラーフィルタ材料を含む第二の液滴を吐出し、着弾した前記第二の液
滴を乾燥して撥液性を有する前記凸部を除いた前記画素領域にカラーフィルタ層を形成す
る工程と、を備えたこと、
を特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法であって、
前記基板と、前記基板と相対向する素子基板との間の距離に相当する厚さを有した前記
凸部を形成すること、
を特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載のカラーフィルタの製造方法であって、
前記カラーフィルタ層の上に透明電極材料を含む第三の液滴を吐出し、着弾した第三の
液滴を乾燥して前記凸部を除いた前記画素領域に対向電極を形成する工程を備えたこと、
を特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
請求項1又は2に記載のカラーフィルタの製造方法であって、
前記1つの面と相対向する前記基板の他側面に対向電極を形成する工程を備えたこと、
を特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1つに記載のカラーフィルタの製造方法であって、
前記画素領域に光硬化性の樹脂材料を含む前記第一の液滴を吐出し、着弾した前記第一
の液滴に光を照射して半球面状の前記凸部を形成すること、
を特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
基板の1つの面にカラーフィルタを有した電気光学装置の製造方法であって、
前記カラーフィルタを請求項1〜5のいずれか1つに記載のカラーフィルタの製造方法
によって製造すること、
を特徴とする電気光学装置の製造方法。
【請求項7】
基板の1つの面に設けられた隔壁に区画される複数の画素領域と、
前記複数の画素領域の各々に設けられ前記隔壁の厚さよりも厚い無色透明の凸部と、
前記複数の画素領域の各々に設けられ前記凸部を除いた前記画素領域に形成されるカラ
ーフィルタ層と、を備えたこと、
を特徴とするカラーフィルタ。
【請求項8】
基板の1つの面にカラーフィルタを有した電気光学装置であって、
前記カラーフィルタは、請求項7に記載のカラーフィルタであること、
を特徴とする電気光学装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2008−176166(P2008−176166A)
【公開日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−11089(P2007−11089)
【出願日】平成19年1月22日(2007.1.22)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】