説明

カラーフィルタの製造方法及び製造装置

【課題】オーバーコート層4を形成する樹脂として熱硬化性樹脂を用いた塗布膜が品質基準に達しない場合、塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス2及び着色画素3を活用してカラーフィルタを廉価に製造するカラーフィルタの製造方法、製造装置。
【解決手段】カルボキシル基が露出していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態のガラス基板1の再生を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルタの製造方法に関するものであり、特に、熱硬化性樹脂を用いたオーバーコート層用の塗布膜が品質基準に達しない場合、この塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス及び着色画素を活用してカラーフィルタを廉価に製造するカラーフィルタの製造方法及び製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置などの表示装置において、カラー表示、反射率の低減、コントラストの調整、分光特性制御などの目的にカラーフィルタを用いることは有用な手段となっている。この表示装置に用いられるカラーフィルタは、多くの場合、画素として形成され用いられる。表示装置に用いられるカラーフィルタの画素を形成する方法として、これまで実用されてきた方法には、印刷法、フォトリソグラフィ法などが挙げられる。
【0003】
図1は、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。また、図2は、図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。図1、及び図2に示すように、液晶表示装置に用いられるカラーフィルタは、ガラス基板(1)上にブラックマトリックス(2)、及び着色画素(3)が順次に形成されたものである。
【0004】
液晶表示装置に用いられる上記カラーフィルタの製造方法としては、先ず、ガラス基板(1)上にブラックマトリックス(2)を形成し、次に、ブラックマトリックス(1)が形成されたガラス基板上のブラックマトリックスの開口部に位置合わせして着色画素(3)を形成するといった方法が広く用いられている。
【0005】
ブラックマトリックス(2)は遮光性を有し、その開口部にてガラス基板上での着色画素の位置を定め、着色画素の大きさを均一なものとしている。また、表示装置に用いられた際に、好ましくない光を遮蔽し、表示装置の画像をムラのない均一な、且つコントラストを向上させた画像にする機能を有している。このブラックマトリックス(2)の形成は、例えば、ガラス基板(1)上に、黒色感光性樹脂の塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介したパターン露光、現像によって不要な部分の黒色感光性樹脂を除去し、残存した樹脂にてブラックマトリックスを形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
【0006】
また、着色画素(3)は、例えば、赤色、緑色、青色の色再現フィルタの機能を有するものであり、ブラックマトリックスが形成されたガラス基板(1)上に、顔料などの色素を分散させた着色感光性樹脂の塗布膜を設け、この塗布膜へのフォトマスクを介した露光、現像によって着色画素を形成するといったフォトリソグラフィ法がとられている。
【0007】
図3は、図2に示す液晶表示装置に用いられるカラーフィルタに保護層(オーバーコート層)(4)が形成された状態の断面図である。保護層(オーバーコート層)(4)はカラーフィルタの表面に平坦性を与えるために、或いはブラックマトリックス(1)や着色画素(3)からの成分の溶出を防ぐために設けられる。この保護層(オーバーコート層)(4)の形成には非感光性樹脂を用いることが多い。
【0008】
このようなカラーフィルタの実際の製造においては、ガラス基板(1)上にブラックマトリックス(2)、着色画素(3)、オーバーコート層(4)を形成する各工程では、樹脂の残渣、パーティクルなどの異物(異物付着)や、ピンホール、パターン欠けなどの欠
陥が発生することがある。
この欠陥が、品質基準に達しないカラーフィルタは不良品扱いとなるが、ガラス基板自体に傷などの不良がないものは、このカラーフィルタをガラス基板として再生し、ガラス基板は再利用されてきた。
【0009】
不良品扱いとなったカラーフィルタのブラックマトリックス(2)、着色画素(3)、オーバーコート層(4)など、感光性樹脂、或いは非感光性樹脂を用いて形成された樹脂層を剥離し、カラーフィルタをガラス基板として再生する際の処理液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムなどの水酸化物、炭酸アルカリ金属塩などのアルカリ液が挙げられる。このアルカリ液を使用したアルカリ処理によって樹脂層を剥離している。
【0010】
例えば、図2に示すような、ブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)が形成されたガラス基板(1)上の、ブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)を一括して剥離し、或いは、図3に示すような、ブラックマトリックス(2)、着色画素(3)、及びオーバーコート層(4)が形成されたガラス基板(1)上の、ブラックマトリックス(2)、着色画素(3)、及びオーバーコート層(4)を一括して剥離するといった処理を施しガラス基板(1)を再生する(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0011】
上記ブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)は、感光性樹脂を用いて形成されたパターンであり、パターンを形成する工程で発生した欠陥が品質基準に達しない場合の対応である。或いは、ブラックマトリックス(2)、着色画素(3)上にオーバーコート層(4)が形成された段階で発生した欠陥が品質基準に達しない場合の対応である。
【0012】
一方、パターンを順次に形成するカラーフィルタの製造工程にて、パターンを形成する前段階、すなわち、カラーフィルタを構成する、あるパターンを形成するための当該塗布膜を設けた段階で、当該塗布膜が品質基準に達しない場合の対応として、当該塗布膜のみを剥離しカラーフィルタの製造を継続することも行われる。
すなわち、上記あるパターン以前に形成されたパターンをも剥離し、ガラス基板(1)として再生する手法をとらず、あるパターン以前に形成されたパターンは活用し、カラーフィルタを廉価に製造する手法である。
【0013】
例えば、上記ブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)は、ネガ型の感光性樹脂が多く用いられる。ブラックマトリックス(2)が既に形成されたガラス基板(1)上に、着色画素(3)を形成するためのネガ型の感光性樹脂の塗布膜を設けた段階で、この塗布膜が品質基準に達しない際には、ネガ型の感光性樹脂はカルボキシル基が露出しているので、この未露光の塗布膜へ現像を施し、この塗布膜のみを剥離しガラス基板(1)上に形成されたブラックマトリックス(2)を活用する。すなわち、再度、着色画素(3)を形成するための塗布膜を設ける。
【0014】
また、例えば、図2に示すブラックマトリックス(2)、着色画素(3)上に透明導電膜が設けられ、該透明導電膜上に配向制御突起(図示せず)が形成されることがある。このような配向制御突起の形成には、ポジ型の感光性樹脂が多く用いられる。透明導電膜などが既に形成されたガラス基板(1)上に、配向制御突起を形成するためのポジ型の感光性樹脂の塗布膜を設けた段階で、この塗布膜が品質基準に達しない際には、この塗布膜の全面に露光を施し、感光剤との水素結合により立体障害を受けているカルボキシル基を露出した上で現像を施し、この塗布膜のみを剥離しガラス基板(1)上に形成されたブラックマトリックス(2)、着色画素(3)、透明導電膜などを活用する。すなわち、再度、配向制御突起を形成するための塗布膜を設ける(例えば、特許文献3参照)。
【0015】
上記のように、パターンの形成に用いる樹脂が、ネガ型、ポジ型のいずれにせよ、感光性樹脂の際には、ガラス基板(1)上に塗布膜を設けた段階での塗布膜が品質基準に達しない場合には、この塗布膜を不良品扱いとし、この塗布膜のみを剥離しガラス基板(1)上のパターンを活用することは容易である。
【0016】
さて、オーバーコート層(4)においては、所望される耐性を満たすため、またパターン形成をしないために、熱硬化性樹脂を用いることが多い。熱硬化性樹脂はカルボキシル基を露出していない、或いは含有していない場合が多く、ガラス基板(1)上に塗布膜を設けた段階での塗布膜が品質基準に達しない際に、例えば、アルカリ液にて塗布膜のみを剥離しガラス基板(1)に形成されたブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)を活用することは困難である。
【0017】
すなわち、オーバーコート層(4)を形成するための塗布膜が品質基準に達しない場合には、前記のように、パターンとして形成されたブラックマトリックス(2)及び着色画素(3)と共に、一括して剥離するといったガラス基板(1)の再生処理になる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】特許第4056383
【特許文献2】特開2007−188080号公報
【特許文献3】特開2008−170773号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたものであり、ガラス基板上にブラックマトリックス及び着色画素が形成され、該着色画素上にオーバーコート層を設ける際に、オーバーコート層を形成する樹脂として熱硬化性樹脂を用いた塗布膜が品質基準に達しない場合、この塗布膜のみを剥離し、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用してカラーフィルタを廉価に製造することのできるカラーフィルタの製造方法を提供することを課題とするものである。
また、上記塗布膜のみを剥離する方法に基づいたカラーフィルタの製造装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明は、ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が順次に形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成するための塗布膜を設ける工程にて、前記オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行い、該ガラス基板を再利用することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0021】
また、本発明は、ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が順次に形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成するための塗布膜を設ける工程にて、前記オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない、もしくは含有していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離液を浸透させて密着性を阻害した上で、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行い、該ガラス基板を再利用することを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。
【0022】
また、本発明は、請求項1に記載する、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離する方法、又は請求項2に記載する、該塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離を浸透させて密着性を阻害した上で、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理を施して塗布膜のみを剥離する方法に基づいたことを特徴とするカラーフィルタの製造装置である。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行うので、熱硬化性樹脂を用いた塗布膜が品質基準に達しない場合でも、この塗布膜のみを剥離し、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用してカラーフィルタを廉価に製造するカラーフィルタの製造方法となる。
【0024】
また、本発明は、オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない、もしくは含有していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離液を浸透させて密着性を阻害した上で、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行うので、熱硬化性樹脂を用いた塗布膜が品質基準に達しない場合でも、この塗布膜のみを剥離し、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用してカラーフィルタを廉価に製造するカラーフィルタの製造方法となる。
【0025】
また、本発明は、請求項1に記載する塗布膜のみを剥離する方法、又は請求項2に記載する塗布膜のみを剥離する方法に基づいたカラーフィルタの製造装置であるので、オーバーコート層を形成する樹脂として熱硬化性樹脂を用いた塗布膜が品質基準に達しない場合、この塗布膜のみを剥離し、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用してカラーフィルタを廉価に製造するカラーフィルタの製造装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】液晶表示装置用カラーフィルタの画素の一例を拡大して示す平面図である。
【図2】図1に示すカラーフィルタの画素のX−X線における断面図である。
【図3】図2に示すカラーフィルタに保護層(オーバーコート層)が形成された状態の断面図である。
【図4】本発明において用いられるカラーフィルタの製造装置における塗布装置の一例の構成概略を示す説明図である。
【図5】請求項2の発明において用いられるカラーフィルタの製造装置における塗布装置の一例の構成概略を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下に、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図4は、本発明のカラーフィルタの製造方法において用いられるカラーフィルタの製造装置における塗布装置の一例の構成概略を示す説明図である。この塗布装置は、ブラックマトリックス及び着色画素が形成されたガラス基板上に、オーバーコート層を形成するための塗布膜を設ける塗布装置である。
【0028】
図4に示すように、この塗布装置(10)は、ガラス基板の搬入装置(LD)、前洗浄装置(11)、コーター(12)、減圧乾燥装置(13)、ホットプレート(14)、塗布膜検査装置(15)、コンベア(16)、搬出装置(ULD)、及び剥離装置(20)で構成されている。剥離装置(20)は、微加熱装置(21)、中和・溶解・水洗装置(22)、剥離検査装置(23)、オーブン(24)、及び薬液槽(25)で構成されている。
【0029】
図4中、白太矢印(a)で示すように搬送されてきた、ブラックマトリックス及び着色画素が形成されたガラス基板(図示せず)を、塗布装置(10)の搬入装置(LD)が前洗浄装置(11)へ搬入すると、前洗浄装置(11)はガラス基板に前洗浄を施し、続いて、コーター(12)は、オーバーコート層を形成するための樹脂として熱硬化性樹脂をガラス基板上に塗布する。続いて、減圧乾燥装置(13)及びホットプレート(14)による乾燥処理が施され、塗布膜検査装置(15)による、膜厚、ムラなど塗布膜の品質検査が行われる。
【0030】
塗布膜検査装置(15)にての品質検査の結果、塗布膜の品質が基準を満たした際には、ガラス基板は、符号(A)で示すように、コンベア(16)により搬送され、剥離検査装置(23)での検査、及びオーブン(24)での処理を受けずに、白太矢印(b)で示すように、搬出装置(ULD)から搬出され、次工程である、例えば、透明導電膜を形成する工程へと搬送される。
【0031】
一方、塗布膜検査装置(15)にての品質検査の結果、塗布膜の品質が基準に達しない際には、ガラス基板は、符号(B)で示すように、剥離装置(20)にて塗布膜が剥離され、白太矢印(c)で示すように、塗布装置(10)の搬入装置(LD)へと再度搬入される。塗布装置(10)の搬入装置(LD)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度、塗布膜が設けられる。
【0032】
剥離装置(20)の微加熱装置(21)では、例えば、熱硬化性樹脂としてエポキシ系樹脂を用いた際には、熱源としてIRを用い、軟化点以下の80〜160℃、60〜300sec程度の微加熱処理が施される。この処理により、カルボキシル基が塗布膜表面に露出される。続いて、中和・溶解・水洗装置(22)では、アルカリ液による中和、溶解処理が施されて塗布膜のみが剥離される。
この処理に用いられるアルカリ液としては、無機アルカリ系の炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、ノニオン系界面活性剤の水溶液が挙げられる。
【0033】
中和・溶解・水洗装置(22)での水洗後に、ガラス基板は剥離検査装置(23)にて、塗布膜の剥離状態が検査され、剥離の品質が基準を満たした際には、オーブン(24)を経て白太矢印(c)で示すように、搬出装置(ULD)から塗布装置(10)の搬入装置(LD)へと再度搬入される。塗布装置(10)の搬入装置(LD)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度塗布膜が設けられる。
【0034】
また、剥離検査装置(23)にて、塗布膜の剥離状態が検査され、剥離の品質が基準に達しない際には、例えば、オーブン(24)を経て白太矢印(d)で示すように、搬出装
置(ULD)から微加熱装置(21)へと再度搬入される。微加熱装置(21)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度、微加熱処理以降が施される。
なお、本発明における熱硬化性樹脂としてはエポキシ系樹脂に限定されず、例えば、アクリル系樹脂にても適用することができる。
【0035】
上記のように、本発明によるカラーフィルタの製造方法は、ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない熱硬化性樹脂を用いても、微加熱処理を施してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施すので、塗布膜のみを剥離することが可能となる。
従って、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用し、カラーフィルタを廉価に製造することができる。
【0036】
図5は、請求項2に係わる発明のカラーフィルタの製造方法において用いられるカラーフィルタの製造装置における塗布装置の一例の構成概略を示す説明図である。
図5に示すように、この塗布装置(30)は、ガラス基板の搬入装置(LD)、前洗浄装置(11)、コーター(12)、減圧乾燥装置(13)、ホットプレート(14)、塗布膜検査装置(15)、コンベア(16)、搬出装置(ULD)、及び剥離装置(40)で構成されている。剥離装置(40)は、浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置(42)、剥離検査装置(43)、オーブン(44)、及び薬液槽(45)で構成されている。
【0037】
図5中、白太矢印(a)で示すように搬送されてきた、ブラックマトリックス及び着色画素が形成されたガラス基板(図示せず)を、塗布装置(30)の搬入装置(LD)が前洗浄装置(11)へ搬入すると、前洗浄装置(11)はガラス基板に前洗浄を施し、続いて、コーター(12)は、オーバーコート層を形成するための樹脂として熱硬化性樹脂をガラス基板上に塗布する。続いて、減圧乾燥装置(13)及びホットプレート(14)による乾燥処理が施され、塗布膜検査装置(15)による、膜厚、ムラなど塗布膜の品質検査が行われる。
【0038】
塗布膜検査装置(15)にての品質検査の結果、塗布膜の品質が基準を満たした際には、ガラス基板は、符号(A)で示すように、コンベア(16)により搬送され、剥離検査装置(43)での検査、及びオーブン(44)での処理を受けずに、白太矢印(b)で示すように、搬出装置(ULD)から搬出され、次工程である、例えば、透明導電膜を形成する工程へと搬送される。
【0039】
一方、塗布膜検査装置(15)にての品質検査の結果、塗布膜の品質が基準に達しない際には、ガラス基板は、符号(B)で示すように、剥離装置(40)にて塗布膜が剥離され、白太矢印(c)で示すように、塗布装置(30)の搬入装置(LD)へと再度搬入される。塗布装置(10)の搬入装置(LD)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度、塗布膜が設けられる。
【0040】
剥離装置(40)の浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置(42)では、塗布膜の樹脂として熱硬化性樹脂を用いた際に、塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離液を浸透させる処理が施される。この処理により、カルボキシル基が露出していない、もしくは含有していない熱硬化性樹脂は、塗布膜と着色画素との界面の密着性が阻害される。続いて、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理が施されて塗布膜のみが剥離される。
この処理に用いられるアルカリ剥離液としては、有機アルカリ系のモノエタノールアミン(2−アミノエタノール)、グライコールエーテルの水溶液が挙げられる。
【0041】
浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置(42)での水洗後に、ガラス基板は剥離検査装置(43)にて、塗布膜の剥離状態が検査され、剥離の品質が基準を満たした際には、オーブン(44)を経て白太矢印(c)で示すように、搬出装置(ULD)から塗布装置(30)の搬入装置(LD)へと再度搬入される。塗布装置(30)の搬入装置(LD)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度塗布膜が設けられる。
【0042】
また、剥離検査装置(43)にて、塗布膜の剥離状態が検査され、剥離の品質が基準に達しない際には、例えば、オーブン(44)を経て白太矢印(d)で示すように、搬出装置(ULD)から浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置(42)へと再度搬入される。浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置(42)へ再度搬入されたガラス基板へは、再度、アルカリ剥離液を浸透させる処理以降が施される。
なお、本発明における熱硬化性樹脂としてはエポキシ系樹脂に限定されず、例えば、アクリル系樹脂にても適用することができる。
【0043】
上記のように、本発明によるカラーフィルタの製造方法は、ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない、もしくは含有しない熱硬化性樹脂を用いても、アルカリ剥離液による処理、スプレイによる処理、加水分解による処理をを施すので、塗布膜のみを剥離することが可能となる。
従って、ガラス基板上に形成されたブラックマトリックス及び着色画素を活用し、カラーフィルタを廉価に製造することができる。
【符号の説明】
【0044】
1・・・ガラス基板
2・・・ブラックマトリックス
3・・・着色画素
4・・・保護層(オーバーコート層)
10、30・・・塗布装置
11・・・前洗浄装置
12・・・コーター
13・・・減圧乾燥装置
14・・・ホットプレート
15・・・塗布膜検査装置
16・・・コンベア
20、40・・・剥離装置
21・・・微加熱装置
22・・・中和・溶解・水洗装置
23、43・・・剥離検査装置
24、44・・・オーブン
25、45・・・薬液槽
42・・・浸透・スプレイ・加水分解・水洗装置
LD・・・搬入装置
ULD・・・搬出装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が順次に形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成するための塗布膜を設ける工程にて、前記オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行い、該ガラス基板を再利用することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
ガラス基板上にブラックマトリックス、着色画素が順次に形成され、該着色画素上にオーバーコート層を形成するための塗布膜を設ける工程にて、前記オーバーコート層を形成する樹脂として、カルボキシル基が露出していない、もしくは含有していない熱硬化性樹脂を用いた塗布膜の品質が基準に達しない際、該塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離液を浸透させて密着性を阻害した上で、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理を施して塗布膜のみを剥離し、ブラックマトリックス、着色画素が順次に形成された状態でガラス基板の再生を行い、該ガラス基板を再利用することを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
請求項1に記載する、該塗布膜を軟化点以下の温度で微加熱してカルボキシル基を塗布膜表面に露出させ、アルカリ液による中和、溶解処理を施して塗布膜のみを剥離する方法、又は請求項2に記載する、該塗布膜と着色画素との界面にアルカリ剥離を浸透させて密着性を阻害した上で、スプレイによる物理的な処理、及び加水分解による処理を施して塗布膜のみを剥離する方法に基づいたことを特徴とするカラーフィルタの製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−81116(P2011−81116A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−232261(P2009−232261)
【出願日】平成21年10月6日(2009.10.6)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】