説明

カラーフィルタの製造方法

【課題】赤緑青の各色に着色された各着色領域を精度良く形成すると共に、該着色領域とブラックマトリクスとの境界を明確に形成し、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタの製造方法を提案する。
【解決手段】フィルタ基板10の非着色領域4上の限定空域11を加熱してイオンを発生させ、該イオンを、所定電位に帯電しているフィルタ基板10の非着色領域4へ引き寄せることにより、該非着色領域4を着色領域3aに比して電位を低下させて静電潜像を形成し、電位の高い着色領域3aを液体トナーにより現像するようにした製造方法である。この製造方法によれば、着色領域3aと非着色領域4との境界を明確に形成できるため、コンストラストが高く、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタを製造することができ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶画面やデジタルカメラなどに用いられるカラーフィルタの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルタとしては、ガラス板の表面上にブラックマトリクスが格子状に形成され、該ブラックマトリクスに囲繞された複数の矩形状領域を赤色、緑色、青色のいずれかで着色してなるものが主流となっている。そして、近年、ブラックマトリクスや各色の領域の寸法形状に対する要求精度が厳しくなってきている。尚、カラーフィルタには、直線状のブラックマトリクスを複数並設した縞状形態が形成され、各ブラックマトリクス間の帯状領域を着色してなる構成のものや、波線状のブラックマトリクスを複数並設した縞状形態に形成され、同様に着色してなる構成のものなども存在している。
【0003】
このようなカラーフィルタの製造方法としては、例えば特許文献1のように、感光体を外周に有する感光ドラムの外周面を帯電して光を照射することにより静電潜像を形成し、該静電潜像に赤色、緑色、青色の各トナーを付与した後に、該トナーをブラックマトリクスが形成されたガラス板の表面に転写するようにした方法が知られている。
【特許文献1】特開2006−126688号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した特許文献1の製造方法にあっては、感光ドラムの外周面に付与した各色トナーをガラス板に転写するために、該ガラス板上のブラックマトリクスと感光ドラム上の各色トナーとの位置合わせを精度良く行うことが必要である。ところが、この位置合わせは、感光ドラムとガラス板との位置決めによって行うため、前記精度には限界がある。また、ガラス板へ転写して該ガラス板を感光ドラムから引き剥がす際に、感光ドラムにトナーが残留してしまい、転写が不充分となることもあり得た。さらに、各色トナーが付着した感光ドラム上の各付着領域では、その端部をうまく転写することができず、ガラス板上に転写した各色トナーの転写領域の端部に欠け等が生じ易い。そのため、各色トナーの転写領域とブラックマトリクスとの境界が不鮮明になり易く、当該カラーフィルタでは高画質化に限界がある。
【0005】
本発明は、赤緑青色の各色に着色された各着色領域とブラックマトリクスとの境界を明確に形成し、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタの製造方法を提案することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、絶縁性のフィルタ基板の表面上に、ブラックマトリクスを形成するBM形成工程と、前記フィルタ基板に所定の電圧を印加して、該フィルタ基板の表面を帯電する電圧印加工程と、フィルタ基板の表面上に形成されたブラックマトリクスを含む非着色領域上の限定空域を加熱することによって、該限定空域にイオンを発生させ、該イオンが、フィルタ基板の非着色領域に引き寄せられることにより、静電潜像を形成する潜像形成工程と、フィルタ基板の非着色領域を除く着色領域に、液体トナーを付着することにより所定色に着色して、静電潜像を現像する現像工程とを備えていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法である。ここで、フィルタ基板は、絶縁性を有するものであれば良く、例えばガラス板等が好適に用い得る。また、非着色領域は、ブラックマトリクスの全表面を含む場合だけでなく、ブラックマトリクスを部分的に含む場合をも設定することができる。すなわち、前者の場合には、ブラックマトリクス上に着色領域が形成されず、後者の場合には、ブラックマトリクス上に部分的に着色領域が形成される。
【0007】
かかる方法にあっては、フィルタ基板の非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させ、所定電位に帯電しているフィルタ基板の非着色領域へ該イオンが引き寄せられることにより、該非着色領域を着色領域に比して電位を低下させて静電潜像を形成し、電位の高い着色領域を液体トナーにより現像することにより、カラーフィルタを得るようにした方法である。
【0008】
尚、カラーフィルタの赤緑青色を着色する場合には、例えば、最初に赤色の着色領域を除く非着色領域上の限定空域を加熱して静電潜像を形成して、赤色の液体トナーによって着色し、次に、同様に緑色の着色領域を除く非着色領域上の限定空域を加熱して静電潜像を形成して、緑色の液体トナーによって着色し、次に、同様に青色の着色領域を除く非着色領域上の限定空域を加熱して静電潜像を形成して、青色の液体トナーによって着色する。すなわち、電圧印加工程、潜像形成工程、現像工程を順に三回繰り返すことにより、赤緑青色の三原色とブラックマトリクスとからなるカラーフィルタを得ることができる。
【0009】
本発明の方法によれば、着色領域に比して電位の低い非着色領域を正確かつ安定して形成でき、該非着色領域と着色領域とが明確に区別されてなる静電潜像を正確かつ安定して形成できることから、液体トナーにより着色された着色領域と着色されない非着色領域との境界がはっきりと形成され得る。そのため、赤緑青色に着色された各着色領域と、着色されないブラックマトリクスとの境界が精度良く且つ鮮明に形成される。さらに、本発明の方法は、フィルタ基板上に直接着色することから、上述した従来の転写する方法のように、転写する際に、トナーの転写が不充分となったり、着色領域の端部が欠ける等の問題を生じない。したがって、本発明の製造方法により製造されるカラーフィルタは、コンストラストが向上し、鮮明な画像を得ることができる。
【0010】
尚、フィルタ基板の非着色領域上の限定空域としては、その空気を加熱して生成したイオンが非着色領域に移動して静電潜像を形成できるように、所定高さ範囲内に限定された空域であり、具体的には、フィルタ基板の表面から200μm以下の高さ範囲に設定されることが好適である。そして、限定空域は、フィルタ基板の表面からの高さが100μm以下とすることにより、イオンを安定して非着色領域に移動させることができるために好適に用い得る。さらには、フィルタ基板の表面からの高さを80μm以下とすることにより、イオンを安定して移動させる効果がさらに向上する。このように安定してイオンをフィルタ基板の表面に移動させ得ることにより、着色領域と非着色領域との境界が明確化した静電潜像を形成でき得る。
【0011】
上記のBM形成工程にあっては、ブラックマトリクスを、フィルタ基板の表面上に格子状に形成する方法が好適に用い得る。この場合には、ブラックマトリクスに囲繞された複数の矩形状領域を、着色領域として所定の液体トナーを付着する。また、ブラックマトリクスを、直線状や波線状の縞状形態に形成するようにしても良い。このような場合には、各ブラックマトリクス間の帯状領域が着色領域として、液体トナーを付着する。
【0012】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、BM形成工程により形成するブラックマトリクスが絶縁性を有するものである方法が提案される。
【0013】
かかる方法によれば、フィルタ基板およびブラックマトリクスが絶縁性であるため、電圧印加工程により帯電した電荷が除電されてしまうことがなく、フィルタ基板の表面を所定電位に保持することができる。そのため、潜像形成工程によって着色領域と非着色領域との境界を一層明確に形成することができる。したがって、本方法によれば、上述した本発明の作用効果を一層適正に発揮し得る。
【0014】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程により静電潜像を形成した後に、フィルタ基板にバイアス電圧を印加して、該フィルタ基板の着色領域が所定電位となるように調整する電位調整工程を行い、その後、現像工程により静電潜像を現像するようにしている方法が提案される。ここで、バイアス電圧としては、電圧印加工程で印加した電圧と正負(プラス/マイナス)逆の電圧とすることが好適であり、さらに、電圧印加工程で印加した電圧よりも小さい(電圧値の絶対値が小さい)バイアス電圧を印加することが好ましい。
【0015】
かかる方法にあっては、静電潜像を形成したフィルタ基板に、バイアス電圧を印加することにより、着色領域の電位を所定電位で均一化することができるため、現像工程で液体トナーを該着色領域に一様な膜厚で付着させることができ得る。そのため、各着色領域の色調を均一化でき、一層鮮明な画像を得ることが可能である。また、着色領域と非着色領域との境界を一層明確化する作用効果も奏する。
【0016】
本方法にあっては、非着色領域の電位を、着色領域の電位と逆電位となるように、バイアス電圧を印加する方法が好適である。この場合には、現像工程で、着色領域の電位と逆の電荷に帯電した液体トナーを用いることによって、着色領域のみに一層確実かつ安定して液体トナーを付着することができ得る。尚、潜像形成工程では、イオンを非着色領域に移動してその電位を低くするようにしていることから、非着色領域ではその電位に乱れが生じ易い。そのため、前記のように着色領域と逆電位となるようにバイアス電圧を印加することにより、この乱れによる影響を生じないようにすることができ得る。
【0017】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程は、フィルタ基板の表面と空域を介して整列配設された複数の発熱素子を発熱することにより、当該発熱素子と前記フィルタ基板の非着色領域との間の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしている方法が提案される。
【0018】
かかる方法にあっては、フィルタ基板の非着色領域上の発熱素子を発熱することにより、該非着色領域と発熱素子との間の限定空域を正確かつ安定して加熱できる。そのため、着色領域より電位の低い非着色領域を精度良く形成することができ、該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成することができる。したがって、より鮮明な画像を得ることができるカラーフィルターを製造できる。
【0019】
尚、複数の発熱素子を発熱する方法としては、全ての発熱素子を発熱することにより、非着色領域上の限定空域を加熱するようにしても良いし、複数の発熱素子を選択的に発熱することにより、限定空域を加熱するようにしても良い。
【0020】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程は、フィルタ基板の表面の非着色領域に集光点を合わせてレーザー光を照射することにより、該非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしている方法が提案される。
【0021】
かかる方法にあっては、レーザー光の集光点を非着色領域に位置制御することによって、当該レーザー光により非着色領域上の限定空域を正確かつ安定して加熱することができる。そのため、着色領域より電位の低い非着色領域を精度良く形成することができ、該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成できる。したがって、より鮮明な画像を得ることができるカラーフィルターを製造できる。
【0022】
ここで、レーザー光の照射によってフィルタ基板の集光点となる部位が加熱することを抑制するように、出力や照射時間を制御することが好ましい。これにより、フィルタ基板の集光点となる部位が、加熱により電気的性質の変化を生じないようにすることができるため、限定空域で発生したイオンにより正確かつ安定して静電潜像を形成するという、本発明の作用効果を一層向上することができる。尚、優れた耐熱性を有する材料からなるフィルタ基板を用いることにより、その電気的性質の変化を抑制する効果が高く発揮されるため、本方法に好適に用い得る。
【0023】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程は、フィルタ基板の表面と空域を介して設けられた薄板状の絶縁加熱体の、前記フィルタ基板の非着色領域と対向する部位に、その裏面側からレーザー光を照射することにより、前記非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしている方法が提案される。
【0024】
かかる方法にあっては、絶縁加熱体に集光点を合わせてレーザー光を照射することにより、その集光点の部位を正確かつ安定して加熱することができることから、これに伴い限定空域を正確に加熱できる。そのため、着色領域より電位の低い非着色領域を精度良く形成することができ、該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成できる。したがって、より鮮明な画像を得ることができるカラーフィルターを製造できる。
【0025】
ここで、絶縁加熱体としては、レーザー光を照射した部位が、比較的高温に加熱されることによって局所的に破壊する等の不具合を生じないように、耐熱性を有する材料から形成されたものが好適に用い得る。また、レーザー光は、絶縁加熱体の照射部位(集光点の部位)での、導体化などの電気的性質の変化を可及的に抑制できるように制御して照射することが好適である。
【発明の効果】
【0026】
本発明のカラーフィルタの製造方法は、上述したように、フィルタ基板の非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させ、所定電位に帯電しているフィルタ基板の非着色領域へ該イオンが引き寄せられることにより、該非着色領域を着色領域に比して電位を低下させて静電潜像を形成し、電位の高い着色領域を液体トナーにより現像するようにした方法であるから、電位の高い着色領域と電位の低い非着色領域とを正確かつ安定して形成できるため、該着色領域と着色されない非着色領域との境界を明確に形成することができる。したがって、コンストラストが高く、鮮明な画像を得ることができるカラーフィルタを製造することができ得る。
【0027】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、BM形成工程により形成するブラックマトリクスが絶縁性を有するものである方法の場合には、フィルタ基板の表面を電圧印加工程で印加してなる所定電位に一層安定して保持することができるため、上述した本発明の作用効果を一層適正に発揮することができる。
【0028】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、潜像形成工程により静電潜像を形成したフィルタ基板に、着色領域を所定電位に調整するバイアス電圧を印加した後に、現像工程を行うようにした方法の場合には、着色領域の電位を均一化した後に現像するため、液体トナーを該着色領域に一様な膜厚で付着できる。したがって、均一な色調の着色領域を形成することができ、一層鮮明な画像を得ることのできるカラーフィルタを製造できる。
【0029】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、フィルタ基板上に整列配設された複数の発熱素子を発熱することにより、非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させる潜像形成工程を行うようにした場合には、非着色領域を精度良く形成でき、かつ該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成できるため、上述した本発明の作用効果を一層適正に発揮できる。
【0030】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、フィルタ基板の非着色領域に集光点を合わせてレーザー光を照射することにより、該非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させる潜像形成工程を行うようにした場合には、非着色領域を精度良く形成でき、かつ該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成できるため、上述した本発明の作用効果を一層適正に発揮できる。
【0031】
上述したカラーフィルタの製造方法にあって、フィルタ基板上に設けられた絶縁加熱体の裏面側から、その非着色領域と対向する部位にレーザー光を照射することにより、非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させる潜像形成工程を行うようにした場合には、非着色領域を精度良く形成でき、かつ該非着色領域と着色領域との境界を一層明確かつ安定して形成できるため、上述した本発明の作用効果を一層適正に発揮できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0032】
本発明にかかる実施例1〜3のカラーフィルタの製造方法を添付図面に従って以下に説明する。ここで、カラーフィルタ1は、図1のように、格子状のブラックマトリクス2により複数の着色領域3a,3b,3cに区画されており、赤色の着色領域3aと緑色の着色領域3bと青色の着色領域3cとがそれぞれ一列に列んで設けられた構成としている。
【実施例1】
【0033】
実施例1のカラーフィルタの製造方法としては、BM形成工程(図示省略)、電圧印加工程(図3参照)、潜像形成工程(図4参照)、電位調整工程(図6参照)、現像工程(図示省略)を備えてなる。そして、ブラックマトリクス2により区画された各着色領域3a,3b,3cに赤色、緑色、青色を着色するために、各色毎に、電圧印加工程、潜像形成工程、電位調整工程、現像工程を実施する。すなわち、電圧印加工程、潜像形成工程、電位調整工程、現像工程を三回繰り返す。
【0034】
BM形成工程では、平板状のガラスからなるフィルタ基板10の表面10a上に、絶縁性を有するブラックマトリクス2を格子状に形成する(図1,2参照)。ここで、絶縁性のブラックマトリクス2により区画された格子内側の領域が、略矩形状の着色領域3a,3b,3cである。尚、このブラックマトリクス2を形成する方法は、従来から用いられている方法と同じ方法を適用することができるため、その詳細については省略する。
【0035】
次に、電圧印加工程では、絶縁性のブラックマトリクス2を形成したフィルタ基板10に、所定の電圧を印加し、図3のように、該フィルタ基板10の表面10aを帯電する。ここで、本実施例1にあっては、フィルタ基板10の表面10aを、+1kVの電位とするように、電圧を印加している(図3(B)参照)。
【0036】
次に、図4のように潜像形成工程を行う。この潜像形成工程にあっては、図示しない搬送装置によって、フィルタ基板10を、その表面10aがイオン発生装置20に所定間隔を置いて対向するようにして搬送する(図中の矢印の向きに搬送する)。すなわち、フィルタ基板10の表面10aとイオン発生装置20との間には、所定間隔の空域8が存在している。
【0037】
上記のイオン発生装置20にあっては、図5のように、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂で形成された担持基板21と、該担持基板21の上面に配設された発熱用共通電極22とを備えている。ここで、発熱用共通電極22は、一定間隔で並列する複数の狭幅の発熱用櫛歯電極22aと、各発熱用櫛歯電極22aの基端が接続された広幅のコ字形電極22bとを備えている。さらに、担持基板21上には、各発熱用櫛歯電極22aの先端から所定間隔をおいて、細帯状の発熱用個別電極23が各発熱用櫛歯電極22aと一直線状になるように配設されてなる。この発熱用櫛歯電極22a,コ字形電極22b,及び発熱用個別電極23は、平面状に形成された担持基板21の表面に金ペースト等の導体を印刷した後、エッチングすることにより形成され得る。
【0038】
上記した各発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23上には、一対の両者を橋渡して電気的に接続する発熱素子25が一定間隔で列設されている。すなわち、発熱用櫛歯電極22aまたは発熱用個別電極23と同数の発熱素子25が整列して配設されている。尚、発熱素子25は、発熱用櫛歯電極22a及び発熱用個別電極23上にTaSiO、RuO等を印刷する等して形成され得る。
【0039】
また、担持基板21上には、前記コ字形電極22b及び発熱用個別電極23の端部を除いて絶縁層26が覆設されている。この絶縁層26は、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂を印刷する等して形成され得る。
【0040】
また、担持基板21上には、前記発熱素子25の発熱を制御するドライバIC27が実装されている。このドライバIC27は、コ字形電極22b及び発熱用個別電極23から伸びるリードパターンに金線でワイヤボンディングされた状態で、エポキシ樹脂等のIC保護用の樹脂で封止されている。
【0041】
上記した各発熱素子25は、ドライバIC27が所定の信号を発信して発熱用櫛歯電極22aと発熱用個別電極23とに対して電圧を印加して通電することにより発熱する。すなわち、一本の発熱用個別電極23とその対となる発熱用櫛歯電極22aとの間に所定の電圧を印加して通電することにより、当該発熱用個別電極23と発熱用櫛歯電極22aとを接続した発熱素子25を発熱させる。この発熱素子25の発熱により、上記の絶縁層26の、当該発熱素子25を被覆している被加熱部位28を加熱する。このように、絶縁層26にあって、各発熱素子25を夫々被覆する部位がそれぞれ、該発熱素子25により加熱される被加熱部位28となっている。そして、所定の発熱用櫛歯電極22aと発熱用個別電極23との間に電圧を印加することにより任意の発熱素子25を発熱し、該発熱素子25に対応する被加熱部位28を選択的に加熱する。
【0042】
尚、発熱用櫛歯電極22aと発熱用個別電極23とに電圧を印加する作動(ON作動)と電圧を印加しない作動(OFF作動)とを制御することにより、任意の発熱素子25を選択して発熱することができると共に、発熱と非発熱とを選択して行うこともできる。すなわち、図示しない搬送装置により所定速度でフィルタ基板10を搬送するに伴って、該フィルタ基板10の非着色領域4が対向する位置にくると、その発熱素子25を選択的に発熱し、着色領域3aが対向する位置にくると、その発熱素子25を発熱しないように、発熱素子25を選択的に発熱する制御を行う。このような発熱素子25の発熱制御としては、予め着色領域3aと非着色領域4とを設定した画像データに基づいて、上記したドライバIC27を駆動制御することにより行うことができる。
【0043】
本実施例1では、上記のイオン発生装置20を複数列設しており(図示省略)、フィルタ基板10の表面10aを、その搬送方向と直交する方向に亘ってカバーしている。そして、上述のように、フィルタ基板10を図示しない搬送装置により搬送するに伴って、各イオン発生装置20のドライバIC27を、図示しない制御装置により作動制御することにより、各発熱素子25を選択的に発熱する制御を行うようにしている。
【0044】
また、フィルタ基板10とイオン発生装置20とは、該フィルタ基板10の表面10aとイオン発生装置20の絶縁層26との間隔を100μm以下とするように設定しており、この間隔で上記した空域8が存在している。尚、フィルタ基板10は、上記した搬送装置(図示省略)により搬送されていても、前記空域8の間隔が維持される。
【0045】
潜像形成工程にあっては、図4のように、図示しない搬送装置により、イオン発生装置20下を、上記空域8を維持しつつ、フィルタ基板10が搬送される。そして、フィルタ基板10の搬送速度に応じて、該フィルタ基板10の着色領域3aを除く非着色領域4上で、イオン発生装置20の発熱素子25を選択的に発熱する制御を行う。尚ここで、本実施例1にあっては、最初に、フィルタ基板10の表面10aに、赤色を着色する着色領域3aの静電潜像を形成するように設定している。
【0046】
すなわち、搬送されるフィルタ基板10が、イオン発生装置20の各発熱素子25下を通過していく間に、該フィルタ基板10の非着色領域4と対向する発熱素子25を、ドライバIC27により選択的に発熱する。ドライバIC27の制御としては、非着色領域4上の発熱素子25に接続されている発熱用個別電極23とその対である発熱用櫛歯電極22aとに24Vの電圧を印加して通電し、当該発熱素子25を発熱することにより、絶縁層26の被加熱部位28を所定温度(200〜300℃)に加熱する。これによって、フィルタ基板10の非着色領域4と、該非着色領域4上の絶縁層26の被加熱部位28との間の限定空域11を加熱し、該限定空域11の空気を熱してマイナスイオンとプラスイオンを発生させる。そして、このように発生したマイナスイオンのみが、フィルタ基板10の表面10aに帯電したプラスの電位に引き寄せられて、該表面10aに移動することによって、非着色領域4の電位が低下して静電潜像が形成されていく。また、フィルタ基板10の着色領域3aと対向する発熱素子25は、発熱しないようにドライバIC27を制御して、該着色領域3aの電位を保つ。これにより、フィルタ基板10の表面10a上に、電位の高い着色領域3aと電位の低い非着色領域4とから構成されるパターンの静電潜像を形成する(図4(B)参照)。
【0047】
尚ここで、上記の静電潜像のパターンとしては、フィルタ基板10上で、赤色に着色される着色領域3aを除く非着色領域4が、ブラックマトリクス2と、緑色および青色に着色される着色領域3b,3cとから構成されている。
【0048】
次に、電位調整工程を行う。この電位調整工程では、図6のように、フィルタ基板10に、マイナスのバイアス電圧を印加することにより、上記した着色領域3aの電位を均一化するように調整する。ここで、本実施例1にあっては、上記した電圧印加工程で印加した電圧(+1kV)よりも絶対値の小さいバイアス電圧(−800V)を印加し、着色領域3aをプラスの電位とし且つ非着色領域4をマイナスの電位となるようにしている。これにより、着色領域3aを非着色領域4と明確に区別化すると共に、両者の境界を一層明確化してなる静電潜像を形成することができる。
【0049】
尚、上記した潜像形成工程にあって、低電位とした非着色領域4では、その電位に乱れが生じてしまい易い。そのため、非着色領域4と着色領域3aとを逆電位となるようにバイアス電圧を印加することにより、後述する現像工程でマイナスに帯電した液体トナー30aを確実かつ安定して着色部位3aにのみ付着できるという作用効果を生じさせ、非着色領域4の電位の乱れによる影響が生じないようにしている。
【0050】
次に、上述のように形成した静電潜像を現像する現像工程を行う。この現像工程では、マイナスに帯電した赤色の液体トナーを、所定のローラーによって、フィルタ基板10の表面10a上の各着色領域3aに付着させる。すなわち、図7(A)のように、マイナスに帯電した液体トナー30aが、プラスの電位の高い着色領域3aに引き寄せられて付着する。これにより、着色領域3aのみを赤色に着色することができる。尚、非着色領域4は、上記のようにマイナスの電位であることから、マイナス電荷の液体トナー30aが反発して付着しない。また、上記した電位調整工程により着色領域3aの電位を均一化していることから、液体トナー30aが一様に付着し、均一な膜厚に形成される。この現像工程により、一様な色調で赤色に着色された着色領域3aを得ることができ、着色されない非着色領域4との境界も鮮明に形成される。
【0051】
尚、このように、所定のローラーによって液体トナーを付着して静電潜像を現像する方法は、従来から用いられている方法を適用できることから、その詳細については省略する。また、この現像工程にあっては、その他、液体トナーを貯留してその液中にフィルタ基材を浸漬する方法、液体トナーを噴霧して吹き付ける方法などを適用することも可能である。
【0052】
さらに、この現像工程では、着色領域3aに赤色の液体トナー30aを付着した後に、所定の温度の熱風を吹き付けることによって、該液体トナー30aを仮定着する。これにより、次に着色領域3bを緑色に着色する過程で、赤色の液体トナー30aが剥がれてしまうことを防止する。
【0053】
このように着色領域3aを赤色で着色した後に、再び、上記した電圧印加工程から現像工程までを同様に実施して、着色領域3bを緑色に着色する。すなわち、電圧印加工程により、赤色に着色した着色領域3aを含むフィルタ基板10の表面10aを、所定のプラス電位となるように、電圧印加する。次に、潜像形成工程により、イオン発生装置20により、着色領域3bとそれ以外の非着色領域(図示省略)とからなる静電潜像を形成し、電位調整工程により着色領域3bの電位を調整する。次に、現像工程により、マイナスに帯電した緑色の液体トナー30bを着色領域3bにのみ付着して現像する(図7(B)参照)。さらに同様に、上記した電圧印加工程から現像工程までを同様に実施して、着色領域3cに青色の液体トナー30cを付着して青色に着色する(図7(B)参照)。その後、図示しない乾燥炉により所定温度で加熱することにより、各着色領域3a,3b,3cに定着させることにより、所望のカラーフィルタ1を得る(図1,7(B)参照)。
【0054】
このように製造されたカラーフィルタ1は、上述したように、各着色領域3a,3b,3cが一様な色調により精度良く形成されていると共に、格子状のブラックマトリクス2との境界も鮮明に形成されている。このカラーフィルタ1を用いることにより、コントラストが高く、鮮明な画像を得ることができる。
【実施例2】
【0055】
実施例2のカラーフィルタの製造方法としては、図8のように、潜像形成工程を、レーザー照射制御装置52によりレーザー光をフィルタ基板10に照射することによって行うようにした方法である。尚、潜像形成工程以外の、BM形成工程、電圧印加工程、電位調整工程、現像工程は、上述した実施例1と同様であり、同じ要素には同じ符号を記し、その説明を省略する。
【0056】
レーザー照射制御装置52は、レーザー光を発振する発振器55、レーザー光を集光して照射するレーザー照射部56、発振器55からレーザー照射部56に至るレーザー光路57、レーザー光の出力制御と集光点の制御とを行う制御装置58とから構成されている。さらにレーザー照射部56を位置変換移動するための移動装置(図示省略)も備えており、制御装置58により移動装置を制御することにより、レーザー照射部56を位置変換することができる。また、このレーザー照射部56には、レンズ(図示省略)が設けられており、該レンズを制御装置58により作動制御することによって、レーザー光を集光し且つその集光点を変位調整することができるようになっている。このレーザー照射制御装置52には、比較的波長の長い炭酸ガスレーザーを照射する装置を適用している。
【0057】
このレーザー照射制御装置52は、そのレーザー照射部56がフィルタ基板10の表面10a上に配設されており、該フィルタ基板10の表面10aに集光点を合わせてレーザー光を照射するようにしている。そして、本実施例2にあっても、レーザー照射部56下を、フィルタ基板10が図示しない搬送装置により(図中の矢印方向に)搬送されるようにしており、該レーザー照射部56が、フィルタ基板10の搬送方向と直交する方向に亘って、集光点を位置変換することができるようにしている。
【0058】
レーザー照射制御装置52は、出力を小さく、照射時間を短くしてレーザー光を照射制御することにより、集光点の部位が、該レーザー光により熱せられて導体化しないようにしている。これにより、レーザー光の照射による加熱によって、フィルタ基板10が局所的に破壊することを防ぐようにしている。尚、このようにレーザー光を照射しても、該レーザー光によって、後述のように限定空域61の空気を比較的容易に加熱できるため、イオンを発生することができ得る。
【0059】
本実施例2の潜像形成工程にあっては、電圧印加工程により所定のプラス電位に帯電したフィルタ基板10を、上述した実施例1と同様に図示しない搬送装置により搬送すると共に、レーザー照射部56下を通過する間に、該フィルタ基板10の非着色領域4に該レーザー照射部56によってレーザー光を照射していく。そして、フィルタ基板10の非着色領域4の全域にレーザー光を照射する。このようにレーザー光を照射することに伴って、フィルタ基板10上の空域68の、非着色領域4上の限定空域61を選択的に加熱していく。限定空域61の空気が加熱されることによって、マイナスイオンとプラスイオンとが発生し、マイナスイオンのみがフィルタ基板10の表面10aに帯電したプラスの電位に引き寄せられて、該表面10aに移動する。これにより、非着色領域4の電位が低下して静電潜像が形成されていく。このようにして、フィルタ基板10の表面10a上に、電位の高い着色領域3aと電位の低い非着色領域4とから構成されるパターンの静電潜像を形成する(図8(B)参照)。
【0060】
ここで、本実施例2にあっては、レーザー照射部56の作動制御によって、集光点の位置制御を精度良くかつ安定して行うことができることから、フィルタ基板10の搬送に伴って、非着色領域4に正確にレーザー光を照射する。そのため、非着色領域4上の限定空域61を選択的に加熱し、該非着色領域4のみの電位を低下した静電潜像を正確かつ安定して形成することができる。
【0061】
尚、レーザー照射部56により照射したレーザー光により加熱される限定空域61としては、その空気から発生したイオンが、フィルタ基板10に帯電したプラス電位によって引き寄せられるように、該フィルタ基板10の表面10aからの所定高さ範囲内に生ずる。そして、この高さ範囲は、電圧印加工程で印加する電圧やレーザー光の出力などによって定まり、具体的にはフィルタ基板10から100μm以下の微小な高さ範囲内に限定される。
【0062】
このような潜像形成工程の後に、上述した実施例1と同様に、電位調整工程(図6参照)と現像工程とを順次実行することによって、着色領域3aに赤色の液体トナー30aを付着する(図7(A)参照)。そして、同様に、電圧印加工程から現像工程まで繰り返し実行することにより、着色領域3bに緑色の液体トナー30bを付着し、さらに着色領域3cに青色の液体トナー30cを付着する。これにより、所望のカラーフィルタ1を製造することができる(図1,7(B)参照)。本実施例2の潜像形成工程によれば、上述したように、レーザー光の集光点を精度良くかつ安定して位置制御できることによって静電潜像を正確かつ安定して形成できるため、該静電潜像を現像した各着色領域3a,3b,3cを一様な色調により精度良く形成できると共に、格子状のブラックマトリクス2との境界も鮮明に形成されている。したがって、本実施例2の製造方法にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。
【実施例3】
【0063】
実施例3のカラーフィルタの製造方法としては、図9のように、潜像形成工程を、フィルタ基板10上に配した絶縁加熱体85にレーザー光を照射することにより行うようにした方法である。尚、潜像形成工程以外の、BM形成工程、電圧印加工程、電位調整工程、現像工程は、上述した実施例1と同様であり、同じ要素には同じ符号を記し、その説明を省略する。
【0064】
上記した絶縁加熱体85が、図示しない搬送装置により搬送するフィルタ基板10上に、空域88を介して対向するように配設されており、該絶縁加熱体85の上方(裏方)に、レーザー照射制御装置52のレーザー照射部56が配設されている。そして、絶縁加熱体85は、フィルタ基板10上で、その搬送する方向と直交する方向に亘ってカバーするように設けられている。尚、本実施例2にあっては、絶縁加熱体85とフィルタ基板10の表面10aとの間隔を100μm以下とするように設定している。
【0065】
ここで、レーザー照射制御装置52は、上述した実施例2と同じ構成のものを用いている。また、絶縁加熱体85は、薄厚状の平板形状をなし、耐熱性及び絶縁性を有するポリイミド,アラミド,ポリエーテルイミド等の薄膜樹脂、又はセラミック等により形成されてなる。
【0066】
このレーザー照射制御装置52は、絶縁加熱体85の裏面に集光点を合わせるようにして、該集光点となる被加熱部位90にレーザー光を照射する。そして、レーザー照射部56を作動制御することにより、レーザー光の集光点を位置制御して、被加熱部位90を選択的に加熱するようにしている。尚、本実施例3にあっても、レーザー照射部56を作動制御して、絶縁加熱体85下をフィルタ基板10が通過する間に、該フィルタ基板10の搬送方向と直交する方向に亘って、集光点を位置変換することができるようにしている。
【0067】
また、本実施例3にあっても、絶縁加熱体85にレーザー光を照射した際に、その被加熱部位90が比較的高温まで加熱されて局所的な破壊を生じないように、また、該被加熱部位90の導体化を可及的に抑制するように、レーザー光の照射制御を行っている。
【0068】
本実施例3の潜像形成工程にあっては、電圧印加工程で所定のプラス電位に帯電したフィルタ基板10を、上述した実施例1と同様に図示しない搬送装置により搬送すると共に、レーザー照射制御装置52によりレーザー光を、該フィルタ基板10上に配設した絶縁加熱体85の裏面に照射していく。ここで、レーザー照射制御装置52は、フィルタ基板10が搬送装置により搬送されるに伴って、絶縁加熱体85の、該フィルタ基板10の非着色領域4と対向する部位(被加熱部位90)に、集光点を位置合わせするように制御してレーザー光を照射していく。これにより、非着色領域4と対向する被加熱部位90を加熱し、該非着色領域4と被加熱部位90との間の限定空域91を加熱する。そして、限定空域91の空気が加熱されてマイナスイオンとプラスイオンとが発生し、該マイナスイオンのみがフィルタ基板10の非着色領域4に引き寄せられることにより、該非着色領域4の電位が低下して静電潜像が形成されていく。このようにして、フィルタ基板10の表面10a上に、電位の高い着色領域3aと電位の低い非着色領域4とから構成されるパターンの静電潜像を形成する(図9(B)参照)。
【0069】
ここで、本実施例3の潜像形成工程にあっても、上述した実施例2と同様に、レーザー照射制御装置52が集光点を位置制御してレーザー光を照射するようにしていることから、該レーザー光を、絶縁加熱体85の、フィルタ基板10の非着色領域4と対向する被加熱部位90に精度良くかつ安定して照射することができる。そのため、フィルタ基板10の非着色領域4上の限定空域91を選択的に加熱して、該非着色領域4のみの電位を低下した静電潜像を正確かつ安定して形成することができる。
【0070】
このような潜像形成工程の後に、上述した実施例1と同様に、電位調整工程(図6参照)と現像工程とを順次実行して、着色領域3aに赤色の液体トナー30aを付着する(図7(A)参照)。そして、同様に、電圧印加工程から現像工程まで繰り返し実行することにより、着色領域3bに緑色の液体トナー30bを付着し、さらに着色領域3cに青色の液体トナー30cを付着する(図7(B)参照)。これにより、所望のカラーフィルタ1を製造することができる(図1参照)。本実施例3の潜像形成工程によっても、上述したように、レーザー光の集光点を精度良くかつ安定して位置制御できることによって静電潜像を正確かつ安定して形成できるため、該静電潜像を現像した各着色領域3a,3b,3cを一様な色調により精度良く形成できると共に、格子状のブラックマトリクス2との境界も鮮明に形成されている。したがって、本実施例3の製造方法にあっても、上述した実施例1と同様の作用効果を奏する。
【0071】
上述した実施例1では、フィルタ基板10の表面10aとイオン発生装置20の絶縁層26との間隔を100μm以下とするように設定しており、実施例3では、フィルタ基板10の表面10aと絶縁加熱体85との間隔を100μm以下とするように設定しているが、これら間隔は、発熱素子25の種類やレーザーの出力などに応じて適宜設定することができる。具体的に40μm、50μm、60μm、80μm等として設定することができる。また、このように間隔を設定することにより、限定空域を生じる高さ範囲が決まる。そのため、この間隔を、150μm以下に設定することによって、静電潜像を形成する効果が明確に生じさせることができ、さらにこの効果を一層高く発揮するためには、実施例のように100μm以下に設定したり、80μm以下として設定することが好適である。尚、実施例2の場合にあっても、その限定空域としては、前記同様の高さ範囲となり得る。
【0072】
一方、上述した実施例1〜3にあっては、潜像形成工程の後に、電位調整工程を行うようにした方法であるが、この電位調整工程を行わずに、現像工程を行うようにすることもできる。この場合には、上述した非着色領域4の電位の乱れを可及的に小さくできるように、例えば、実施例1にあって発熱素子を発熱する時間を比較的長く設定したり、比較的高い温度で発熱することが好ましい。同様に、実施例2,3にあって、レーザー光の照射時間を比較的長くしたり、レーザー光の出力を比較的高くする等の設定をすることもできる。これにより、非着色領域と着色領域との電位差を安定的に明確化できるため、電位の高い着色領域に優先して液体トナーを付着することができ得る。
【0073】
また、上述した実施例1〜3にあっては、ブラックマトリクスを格子状に構成し、赤色の着色領域3aと緑色の着色領域3bと青色の着色領域3cとがそれぞれ一列に列んで設けられている構成であるが、その他の構成とすることも可能である。例えば、各着色領域3a,3b,3cが前後左右に交互に並ぶ構成のものであっても同様に製造でき得る。さらにまた、ブラックマトリクスを枠状に形成し、かつ該枠内で直線状のブラックマトリクスを並設した縞状形態に形成し、各ブラックマトリクス間の各帯状領域を所定色で着色するようにして、カラーフィルターを製造することもでき得る。同様に、波線状のブラックマトリクスを並設した縞状形態に形成することもできる。尚ここで、ブラックマトリクスを枠状に形成せずに、縞状形態に形成するようにしても良い。
【0074】
本発明にあっては、上述した実施例に限定されるものではなく、その他の製造方法についても、本発明の趣旨の範囲内で適宜変更可能である。例えば、DM形成工程で、導電性のブラックマトリクスを形成するようにしても良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】カラーフィルター1の平面図である。
【図2】BM形成工程によりブラックマトリクス2を形成したフィルタ基板10の断面図である。
【図3】電圧印加工程によりプラス電位に帯電した、(A)フィルタ基板10と(B)その電位を表す説明図である。
【図4】実施例1における(A)潜像形成工程を表す模式図と、(B)潜像形成工程により生じるフィルタ基板10の電位を表す説明図である。
【図5】実施例1の潜像形成工程で使用するイオン発生装置20を表す平面図である。
【図6】(A)電位調整工程を表す模式図と、(B)電位差調整工程により生ずるフィルタ基板10の電位を表す説明図である。
【図7】(A)現像工程によりフィルタ基板10の着色領域3aに赤色の液体トナー30aを付着した状態を示す説明図と、(B)各着色領域3a,3b,3cに各液体トナー30a,30b,30cを付着した状態を示す説明図である。
【図8】実施例2における潜像形成工程を表す模式図である。
【図9】実施例3における潜像形成工程を表す模式図である。
【符号の説明】
【0076】
1 カラーフィルタ
2 ブラックマトリクス
3a,3b,3c 着色領域
4 非着色領域
10 フィルタ基板
11,61,91 限定空域
25 発熱素子
30a,30b,30c 液体トナー
85 絶縁加熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性のフィルタ基板の表面上に、ブラックマトリクスを形成するBM形成工程と、
前記フィルタ基板に所定の電圧を印加して、該フィルタ基板の表面を帯電する電圧印加工程と、
フィルタ基板の表面上に形成されたブラックマトリクスを含む非着色領域上の限定空域を加熱することによって、該限定空域にイオンを発生させ、該イオンが、フィルタ基板の非着色領域に引き寄せられることにより、静電潜像を形成する潜像形成工程と、
フィルタ基板の非着色領域を除く着色領域に、液体トナーを付着することにより所定色に着色して、静電潜像を現像する現像工程と
を備えていることを特徴とするカラーフィルタの製造方法。
【請求項2】
BM形成工程により形成するブラックマトリクスが、絶縁性を有するものであることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項3】
潜像形成工程により静電潜像を形成した後に、フィルタ基板にバイアス電圧を印加して、該フィルタ基板の着色領域が所定電位となるように調整する電位調整工程を行い、その後、現像工程により静電潜像を現像するようにしていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項4】
潜像形成工程は、フィルタ基板の表面と空域を介して整列配設された複数の発熱素子を発熱することにより、当該発熱素子と前記フィルタ基板の非着色領域との間の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項5】
潜像形成工程は、フィルタ基板の表面の非着色領域に集光点を合わせてレーザー光を照射することにより、該非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。
【請求項6】
潜像形成工程は、フィルタ基板の表面と空域を介して設けられた薄板状の絶縁加熱体の、前記フィルタ基板の非着色領域と対向する部位に、その裏面側からレーザー光を照射することにより、前記非着色領域上の限定空域を加熱してイオンを発生させるようにしていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載のカラーフィルタの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2009−251159(P2009−251159A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−97037(P2008−97037)
【出願日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【出願人】(000186566)小林クリエイト株式会社 (169)
【Fターム(参考)】