説明

カラーフィルター用インク及びその製造方法、並びにカラーフィルターの製造方法

【課題】カラーフィルター用インク及びその製造方法、並びにカラーフィルターの製造方法を提供する。
【解決手段】本発明の実施例は、カラーフィルター用インクジェットインク及びその製造方法、並びにカラーフィルターの製造方法を提供する。当該カラーフィルター用インクジェットインクは、水性ナノ顔料分散液10〜50重量部と低温硬化性成分51〜95重量部とを含む。また、水性ナノ顔料分散液は、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、7〜80重量%のスチレン−アクリレート共重合体、40〜90重量%の脱イオン水を含み、且つ各成分の重量%の合計が100重量%であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラーフィルター用インクジェットインク及びその製造方法、並びにカラーフィルターの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カラーフィルターは液晶ディスプレイの重要な構成部分である。バックライトの白色光はカラーフィルター基板(color filter substrate)の赤、緑、青の三色フィルター層を通ることによって、赤色光、緑色光及び青色光にろ過され、最終的に人間の目の中でカラー映像となる。カラーフィルター基板は液晶ディスプレイパネルのコストの30%以上を占め、よってTFT−LCD(薄膜トランジスタ液晶ディスプレイ)産業の発展において、必ず把握しなければならないコア技術となる。従来技術において、カラーフィルター基板を製作する方法は顔料分散法及びインクジェット法がある。
【0003】
顔料分散法はカラーフォトレジスト(photoresist)をスピンコートの方式で基板上に塗布して、露光現像の方法で画素フィルター層を形成する。カラーフォトレジストはカラー顔料を均一に分散させたフォトレジストであって、光硬化性及び熱硬化性の特性を有する。RGB三色カラーフォトレジストは、塗布、露光、現像の三つの工程を経ることが必要で、最後にカラーフィルターを形成する。しかし大きなサイズのパネルの生産において、顔料分散法は原料の浪費がひどく、且つ製造工程が複雑で、設備コストが高すぎる。
【0004】
インクジェット法は、インクジェット装置を用いて、RGB顔料を含むインクを透明基板のブラックマトリックス内に同時に噴出し、インクは、溶媒が揮発して固まることによって、画素フィルター層を形成する。インクジェット法では、一回でRGBカラー層を形成することができ、製造過程が大幅に簡易化され、コストが大幅に下がる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、インクジェット法でカラーフィルターを製造する場合、インクの性能は製品に大きな影響を及ぼす。従来技術におけるインクは主に以下の問題点が存在する。1)媒体として有機溶媒を大量に使用するため、硬化する際には大量のVOC(Volatile Organic Compounds、揮発性有機化合物)が生成する。よって火災の恐れがあり、環境保護及び従業員の健康に良くない。2)インクの粘度は樹脂の分子量及び添加量と直接関連するため、調整することが難しい。3)画素フィルター層は光硬化または熱硬化ステップを経ることが必要で、エネルギー消費が大きい。よって、従来のカラーフィルター用インクジェットインクは、一般的に、VOC生成率が高く、粘度が調整しにくい、及び画素フィルター層の硬化にエネルギー消費が多い、との問題点が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は一つの態様において、カラーフィルター用インクジェットインクを提供する。該インクは水性ナノ顔料分散液10〜50重量部と低温硬化性成分51〜95重量部とを含む。
【0007】
もう一つの態様において、本発明はカラーフィルター用インクジェットインクの製造方法を提供する。該方法は、5〜40重量%のスチレン、1〜30重量%の(メタ)アクリレートモノマー、0.5〜5重量%の酸性モノマー、0.25〜5重量%の架橋性モノマー、0.05〜0.5重量%の乳化助剤、0.05〜0.5重量%の油溶性開始剤を混合して混合物を形成し、上記混合物中に、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、任意で0.05〜0.5重量%の核形成促進剤を入れて、溶解させて油相溶液を得る段階と、0.05〜2重量%の乳化剤と0.05〜2重量%の緩衝剤とを、40〜90重量%の脱イオン水中に溶解させ、水相溶液を得る段階と、上記油相溶液と上記水相溶液とを混合し、攪拌及び均質化を経てミニエマルションを得る段階と、上記ミニエマルションを反応温度まで昇温させるように加熱し、0.05〜0.5重量%の水溶性開始剤を加えて重合を開始させ、反応後にpH値を9〜10に調整して、得られたものをろ過して水性ナノ顔料分散液を得る段階と、上記水性ナノ顔料分散液中に低温硬化性成分を入れて、均一に混合して、カラーフィルター用インクジェットインクを得る段階とを含む。
【0008】
もう一つの態様において、本発明はカラーフィルターの製造方法を提供する。該方法では、基板上に黒色光遮蔽層材料を塗布して、パターン化プロセスを経て光遮蔽層パターンを形成し、上記基板の非光遮蔽層パターン部分に、上記カラーフィルター用インクジェットインクを滴下し、上記基板を所定の温度下で硬化させ、カラーフィルターを得る。
【発明の効果】
【0009】
本発明の実施例では、水性系を使用することにより、溶媒の揮発に起因する高いVOCの生成を回避して、環境汚染を減らし、従業員の健康を確保し、同時に火災の恐れも減らす。また、水性系を使用することにより、インクの粘度を粘度付与剤またはpH値によって調整することができる。従来技術と比較して、樹脂の分子量及び添加量とは関係なくなり、弾力的且つ自由に調整することができる。また、低温硬化性成分を添加することにより、室温下の硬化を実現することができ、従来技術の高温硬化に比較して、エネルギー消費が少なくなり、コストが低減される。
【0010】
本発明の実施例または従来技術の技術構成をさらに明確に説明するために、下記において実施例または従来技術中で使用される図面について簡単に紹介する。明らかに、下記に記載の図面は本発明の一部の実施例のみであり、当業者にとって、創作的労働を必要としない前提下において、これらの図面に基づいてその他の図面を得ることができることは、言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】カラーフィルター用インクジェットインクの製造方法を示したフローチャートである。
【図2】好ましいカラーフィルター用インクジェットインクの製造方法のフローチャートである。
【図3】もう一つの好ましいカラーフィルター用インクジェットインクの製造方法のフローチャートである。
【図4】カラーフィルターの製造方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下において、本発明の実施例中の図面を参照して、本発明の実施例における技術構成について明確且つ完全に説明する。明らかに、ここで記載した実施例は本発明の実施例の一部のみであり、全部の実施例ではない。本発明中の実施例に基づいて、当業者が創作的な労働を必要とせずに得られるその他の実施例も、本発明の保護の範囲に属するものとなる。
【実施例】
【0013】
<実施例1>
本発明の実施例1は、カラーフィルター用インクジェットインクを提供する。該インクは、水性ナノ顔料分散液10〜50重量部と低温硬化性成分51〜95重量部とを含む。上記水性ナノ顔料分散液と低温硬化性成分との合計は100重量部である。水性ナノ顔料分散液の例として、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、7〜80重量%のスチレン−アクリレート共重合体、40〜90重量%の脱イオン水を含む。
【0014】
該低温硬化性成分の例として、第一低温硬化性成分を含むアクリレート乳液40〜80重量部と第二低温硬化性成分1〜20重量部を含む。
【0015】
例えば、当該第一低温硬化性成分は、活性カルボニル基を含むことができ、第二低温硬化性成分はヒドラジド系化合物を含むことができる。または、上記第一低温硬化性成分はアセトアセトキシ基を含むことができ、上記第二低温硬化性成分はポリアミン系化合物を含むことができる。
【0016】
本発明の実施例1が提供するカラーフィルター用インクジェットインクは、水性ナノ顔料分散液10〜50重量部と低温硬化性成分51〜95重量部とを含む。このように、水性系を使用することにより、溶媒の揮発に起因する高いVOCの生成を回避して、環境汚染を減らし、従業員の健康を確保し、同時に火災の恐れも減らす。また、水性系を使用することにより、インクの粘度を粘度付与剤またはpH値によって調整することができる。従来技術と比較して、樹脂の分子量及び添加量とは関係なくなり、思いのままに調整することができる。また、低温硬化性成分を添加することにより、室温下の硬化を実現することができ、従来技術の高温硬化に比較して、エネルギー消費が少なくなり、コストが低減される。
【0017】
<実施例2>
本発明の実施例2は、カラーフィルター用インクジェットインクの製造方法を提供する。図1に示すように、以下のステップを含む。
【0018】
S101ステップ。5〜40重量%のスチレン、1〜30重量%の(メタ)アクリレートモノマー、0.5〜5重量%の酸性モノマー、0.25〜5重量%の架橋性モノマー、0.05〜0.5重量%の乳化助剤、0.05〜0.5重量%の油溶性開始剤を混合して混合物を形成する。上記混合物中に、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、任意で0.05〜0.5重量%の核形成促進剤を入れて、完全に溶解させて油相溶液を得る。
【0019】
上記(メタ)アクリレートモノマーの例としては、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートからなる群より選ばれる一種類または二種類以上を含んでもよい。好ましくは、n−ブチルアクリレート及びメチルメタクリレートの混合物を用いることができる。
【0020】
該酸性モノマーの例としては、アクリル酸またはメタクリル酸を含んでもよい。
【0021】
該架橋性モノマーの例としては、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキシレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート(tripropylene glycol diacrylate)、テトラプロピレングリコールジアクリレート(tetrapropylene glycol diacrylate)、トリメチロールプロパントリメタクリレートからなる群より選ばれる一種類または二種類以上を含んでもよい。好ましくは、1,6−ヘキシレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート及びジビニルベンゼンの混合物である。
【0022】
該乳化助剤の例としては、ヘキサデカノールまたはヘキサデカン含んでもよい。好ましくはヘキサデカノールである。
【0023】
上記油溶性開始剤の例としては、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルを含んでもよい。
【0024】
該核形成促進剤の例としては、分子量20000〜70000のポリスチレン微粒子を含むことができる。
【0025】
該有機顔料または染料は、赤色顔料、黄色顔料、橙色顔料、緑色顔料、青色顔料、紫色顔料または上記二種類または二種類以上の顔料の混合物であってもいい。赤色顔料は、ペリレン系、キナクリドン、ピロロピロール系が主となる。例えば、P.R.224、P.R.254、P.R.255、P.R.264、P.R.122、P.R.123、P.R.177、P.R.179、P.R.190、P.R.202、P.R.210、P.R.270、P.R.272、P.R.122などである。黄色顔料は、例えばアゾ系及びヘテロ環系がある。例えば、P.Y.1、P.Y.12、P.Y.3、P.Y.13、P.Y.83、P.Y.93、P.Y.94、P.Y.95、P.Y.109、P.Y.126、P.Y.127、P.Y.138、P.Y.139、P.Y.147、P.Y.150、P.Y.174などである。橙色顔料は、例えばアゾ系、ピロリドン系、ベンジジン系顔料がある。例えば、P.0.5、P.0.13、P.0.16、P.0.34、P.0.36、P.0.48、P.0.49、P.0.71、P.0.73などである。緑色顔料は、例えばP.G.37、P.G.36、P.G.7などである。青色顔料は、例えばP.B.1、P.B.2、P.B.15、P.B.15:3、P.B.15:4、P.B.15:6、P.B.16、P.B.22、P.B.60、P.B.66などである。紫色顔料は、例えばP.V.32、P.V.36、P.V.38、P.V.39、P.V.23、P.V.9、P.V.1などである。
【0026】
S102ステップ。0.05〜2重量%の乳化剤と0.05〜2重量%の緩衝剤とを、40〜90重量%の脱イオン水中に溶解させ、水相溶液を得る。
【0027】
該乳化剤の例としては、ラウリル硫酸ナトリウムを含んでもよい。
【0028】
該緩衝剤の例としては、炭酸水素ナトリウムまたはアンモニア水を含むことができる。
【0029】
S103ステップ。油相溶液と水相溶液とを混合し、攪拌及び均質化を経てミニエマルションを得る。
【0030】
例えば、600rpm〜1300rpmの回転数で継続的に15分(min)〜30分(min)攪拌する。
【0031】
均質化の方式の例としては、高圧マイクロジェット装置での均質化または超音波装置での均質化が挙げられる。
【0032】
S104ステップ。ミニエマルションを反応温度まで昇温するように加熱し、0.05〜0.5重量%の水溶性開始剤を加えて重合を開始させ、反応後にpH値を9〜10に調整して、得られたものをろ過して水性顔料分散液を得る。
【0033】
該水性顔料分散液は、水性ナノ顔料分散液であることが好ましい。ナノスケールの顔料を用いる場合、カラーフィルターの高透過率,高色純度及び高コントラストが確保できる。また、上記ナノ顔料分散液を製造するために、ミニエマルション重合法を採用することができる。
【0034】
例えば、加熱過程において、窒素などの不活性ガスを導入することによって、反応の安全性を高めることができる。
【0035】
水溶性開始剤の例としては、過硫酸カリウムまたは過硫酸アンモニウムを挙げることができる。好ましくは、過硫酸カリウムを使用する。
【0036】
該反応温度の例としては、60℃〜90℃、好ましくは70℃〜80℃である。
【0037】
S105ステップ。水性ナノ顔料分散液中に低温硬化性成分を入れて、均一に混合して、カラーフィルター用インクジェットインクを得る。
【0038】
例えば、該低温硬化性成分は、第一低温硬化性成分を含むアクリレート乳液と第二低温硬化性成分とを含んでもよい。ここに、第一低温硬化性成分は活性カルボニル基を含んでもよく、第二低温硬化性成分はヒドラジド系化合物を含んでもよい。または、第一低温硬化性成分はアセトアセトキシ基を含んでもよく、第二低温硬化性成分はポリアミン系化合物を含んでもよい。
【0039】
該アクリレート乳液の固形分含有量を10%〜60%とすることができ、pH値は9〜10である。
【0040】
該アクリレート乳液のガラス転移温度の例としては、−20℃〜90℃とすることができ、好ましくは0℃〜50℃である。
【0041】
従来技術に対して、本発明の実施例はミニエマルション重合法で水性顔料分散体を製造するものである。水性系を使用することにより、溶媒の揮発に起因する環境汚染を減らし、従業員の健康へのダメージを減らし、同時に火災の恐れも減らす。また、インクの粘度を粘度付与剤またはpH値によって、組成における樹脂の含有量及び分子量を変えずに調整することができ、粘度をより弾力的且つ自由に調整できる。ミニエマルションのラテックス粒子の内部と表面は適度に架橋しているため、顔料粒子がラテックス内を遷移し、ひいては水相に滲み出ることを防止することができ、顔料の優れた色特性を保証している。
【0042】
本発明中における低温硬化の原理は、二種類の低温硬化性成分の組み合わせであって、この組み合わせは活性カルボニル基系モノマー及びヒドラジド系化合物の組み合わせであり、例えばジアセトンアクリルアミド及びアジピン酸ジヒドラジドの組み合わせ、またはアセトアセトキシ基を含む化合物とポリアミンの組み合わせであり、例えばアセトアセトキシエチルメタクリレートとヘキサンジアミンの組み合わせである。具体的な原理では、上記組み合わせが酸性条件下で架橋反応を起こして塗装層の硬化が起こるが、アルカリ性条件下では架橋反応を起こさない。よって、本発明の実施例においては、ナノ顔料分散液を製造する際に、一定量の酸性モノマーを入れる。次に、例えばアンモニア水でインクをアルカリ性に調整して、低温硬化性成分が反応することを防ぐ。使用時にはアンモニア水の蒸発に伴い、インクにおける酸性モノマーが効果を発揮してインクは酸性になり、よって低温硬化性成分は反応をして、硬化を実現する。
【0043】
<実施例3>
本発明の実施例3は好ましいカラーフィルター用インクジェットインクの製造方法を提供している。図2に示すように、以下のステップを含む。
【0044】
S201ステップ。例えば、35gの蒸留により重合防止剤を除去したスチレン、5gのn−ブチルアクリレート、5gのメチルメタクリレート、5gのアクリル酸、0.8gの1,6ーヘキサンジオールジアクリレート、1.7gのテトラプロピレングリコールジアクリレート、0.5gのp−ジビニルベンゼン、1gのヘキサデカノール、0.5gの過酸化ベンゾイルを混合して混合物を形成し、1.8gの分散用有機顔料または染料を上記混合物中に分散して、完全に溶解させて油相溶液を形成する。
【0045】
S202ステップ。例えば、3gのラウリル硫酸ナトリウム、2.2gの炭酸水素ナトリウムを120gの脱イオン水中に溶解させて、水性溶液を形成する。
【0046】
S203ステップ。油相溶液と水相溶液を混合して、例えば800rpm下で15分攪拌した後、超音波ホモゲナイザー内に移し、超音波により均質化を行い、ミニエマルションを形成する。
【0047】
S204ステップ。ミニエマルションを反応器中に移し、例えば窒素ガスを通入し80℃に昇温させて、0.5gの過硫酸カリウムを入れて重合を開始させる。3時間反応して、室温まで温度を下げ、アンモニウム水でpH値を9に調整して、できたものをろ過して水性ナノ顔料分散液を得る。
【0048】
得られた水性ナノ顔料分散液に対して粒子径計測を行い、結果として、以下の表1に示すように、その平均粒子径は70〜110nmの範囲であった。
【0049】
【表1】

【0050】
S205ステップ。得られた顔料分散液中に、ジアセトンアクリルアミド(第一低温硬化性成分の例)を含むアクリレート乳液600gを入れ、さらにアジピン酸ジヒドラジド(第二低温硬化性成分の例)10gを入れ、均一に混合して、カラーフィルター用インクジェットインクを得る。
【0051】
第一低温硬化性成分の一例として、ジアセトンアクリルアミド(diacetone acrylamide、DMMA)を含む混合モノマーをエマルジョン重合することによって製造する。その製造方法としては、9重量%のジアセトンアクリルアミド、12重量%のメチルメタクリレート、4重量%のブチルアクリレート、4重量%のスチレン、1重量%の熱開始剤である過硫酸カリウム、及び70重量%の脱イオン水を混合して、エマルジョン重合を行わせる。
【0052】
本発明の実施例3が提供するカラーフィルター用インクジェットインクは、水性系を採用したため、溶媒の蒸発に起因する高いVOCの生成を回避し、環境汚染を減らし、従業員の健康を確保し、同時に火災の恐れを低減した。また、水性系を採用したため、インク粘度を粘度付与剤またはpH値によって調整することができる。従来技術と比較した場合、樹脂の分子量と添加量とは無関係であるため、弾力的且つ自由に粘度を調整することができる。また、低温硬化性成分を入れたため、室温下での硬化が可能で、従来技術の高温硬化と比較して、エネルギー消費が減り、コストは低減される。
【0053】
<実施例4>
本発明の実施例4はもう一つの好ましいカラーフィルター用インクジェットインクの製造方法を提供する。図3に示すように、以下のステップを含む。
【0054】
ステップS301。例えば、26gの蒸留により重合防止剤を除去したスチレン、10gのメチルメタクリレート、5gのイソオクチルアクリレート、5gのメタクリル酸、1.2gの1,6ーヘキサンジオールジアクリレート、1.5gのテトラプロピレングリコールジアクリレート、0.3gのp−ジビニルベンゼン、0.8gのヘキサデカノール、0.2gのヘキサデカン、0.5gのアゾビスイソブチロニトリルを混合して混合物を形成し、1.6gの分散用有機顔料または染料を上記混合物中に分散して、完全に溶解させて油相溶液を形成する。
【0055】
ステップS302。例えば、3gのラウリル硫酸ナトリウム、2.2gの炭酸水素ナトリウムを、120gの脱イオン水中に溶解させて、水相溶液を形成する。
【0056】
ステップS303。油相溶液と水相溶液を混合して、例えば800rpm下で15分攪拌した後、高圧マイクロジェットにより均質化を行い、ミニエマルションを形成する。
【0057】
ステップS304。ミニエマルションを反応器中に移し、例えば窒素ガスを通入し80℃に昇温して、0.5gの過硫酸カリウムを入れて重合を開始させる。3時間反応して、室温まで温度を下げ、アンモニウム水でpH値を9に調整して、できたものをろ過して水性ナノ顔料分散液を得る。
【0058】
ステップS305。得られた顔料分散液中に、アセトアセトキシエチルメタクリレート(第一低温硬化性成分)を含むアクリレート乳液550gを入れ、さらにヘキサンジアミン(第二低温硬化性成分)8gを入れ、均一に混合して、カラーフィルター用インクジェットインクを得る。
【0059】
本発明の実施例4が提供するカラーフィルター用インクジェットインクは、水性系であるため、溶媒の蒸発に起因する高いVOCの生成を回避し、環境汚染を減らし、従業員の健康を確保し、同時に火災の恐れを低減させた。また、水性系を採用したことにより、インク粘度を粘度付与剤またはpH値によって調整することができる。従来技術と比較した場合、樹脂の分子量及び添加量とは無関係であるため、弾力的且つ自由に粘度を調整することができる。さらに、低温硬化性成分を入れたため、室温下の硬化を実現することができ、従来技術の高温硬化と比べ、エネルギー消費が減り、コストが低減される。
【0060】
<実施例5>
本発明の実施例5はカラーフィルターの製造方法を提供している。図4に示すように、以下のステップを含む。
【0061】
ステップS401。ベースとなる基板上に黒色光遮蔽層材料を塗布して、パターン化プロセスを経て光遮蔽層パターンを形成する。
【0062】
該黒色光遮蔽層材料の例としては、ポジティブフォトレジストまたはネガティブフォトレジストであってもいい。パターン化プロセスは、露出、現像、エッチング、剥離などの工程を含む。
【0063】
ステップS402。基板の非光遮蔽層パターン部分に上記実施例1のインクを滴下する。
【0064】
ステップS403。該基板を所定の温度下で硬化させ、カラーフィルターを得る。
【0065】
該所定の温度は、室温の10℃〜25℃、及び比較的低温の25℃〜100℃であってもよく、好ましくは50℃〜90℃である。
【0066】
本実施例では、比較的低い温度の硬化を実現するために、ケトンーヒドラジン架橋系を利用する。ケトンーヒドラジン架橋系の特徴は、酸触媒下で反応が起きることである。そこで、製造時に酸性のモノマーを添加し、製品インクのpH値をアンモニア水でアルカリ性に調整し、インクジェットインクが硬化する際、アンモニア水が揮発して、系における酸性基が系を酸性にさせ、ケトンーヒドラジン架橋反応を触媒し、室温または所定温度下での硬化を実現し、エネルギー消費を大いに低減させた。
【0067】
なお、本実施例中の油相溶液と水相溶液の製造過程中において、実際の操作は前後順序を厳格に決めているわけではなく、前後を決めて行っても良いし、同時に行っても良い。また、低温硬化方式としては、ケトンーヒドラジン架橋系以外の他の低温硬化系を採用することができ、ここでは逐一説明しないが、いずれも本発明が保護を求める請求の範囲に属する。
【0068】
好ましい実施例は本発明の好ましい実施形態を提供するためのものであって、本発明の権利を限定するためのものではなく、本発明の権利は請求の範囲を基準とすべきである。本発明に基づいて調整を行うことは、当業者の公知の技術であり、本発明の権利の保護範囲内に属するべきである。
【0069】
以上の記載は、本発明の具体的な実施形態であり、本発明の保護範囲はこれに限定されるものではない。本発明が開示している技術範囲内において、変化または変更を行うことにいかなる当業者も容易に想到することができるものについても、本発明の保護範囲内に含まれる。
【0070】
よって、本発明の保護範囲は、請求項の保護範囲を基準とすべきである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水性ナノ顔料分散液10〜50重量部と低温硬化性成分51〜95重量部とを含むことを特徴とするカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項2】
前記水性ナノ顔料分散液が、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、7〜80重量%のスチレン−アクリレート共重合体、40〜90重量%の脱イオン水を含み、且つ各成分の重量%の合計が100重量%であることを特徴とする請求項1に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項3】
前記低温硬化性成分が、第一低温硬化性成分を含むアクリレート乳液40〜80重量部と、第二低温硬化性成分1〜20重量部とを含有することを特徴とする請求項1又は2に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項4】
前記第一低温硬化性成分が活性カルボニル基を含み、前記第二低温硬化性成分がヒドラジド系化合物を含む、若しくは、前記第一低温硬化性成分がアセトアセトキシ基を含み、前記第二低温硬化性成分がポリアミン系化合物を含むことを特徴とする、請求項3に記載のカラーフィルター用インクジェットインク。
【請求項5】
カラーフィルター用インクジェットインクの製造方法であって、
5〜40重量%のスチレン、1〜30重量%の(メタ)アクリレートモノマー、0.5〜5重量%の酸性モノマー、0.25〜5重量%の架橋性モノマー、0.05〜0.5重量%の乳化助剤、0.05〜0.5重量%の油溶性開始剤を混合して混合物を形成し、前記混合物中に、0.5〜10重量%の有機顔料または染料、任意で0.05〜0.5重量%の核形成促進剤を入れて、溶解させて油相溶液を得る段階と、
0.05〜2重量%の乳化剤と0.05〜2重量%の緩衝剤とを、40〜90重量%の脱イオン水中に溶解させ、水相溶液を得る段階と、
前記油相溶液と前記水相溶液とを混合し、攪拌及び均質化を経てミニエマルションを得る段階と、
前記ミニエマルションを反応温度まで昇温させるように加熱し、0.05〜0.5重量%の水溶性開始剤を加えて重合を開始させ、反応後にpH値を9〜10に調整して、得られたものをろ過して水性ナノ顔料分散液を得る段階と、
前記水性ナノ顔料分散液中に低温硬化性成分を入れて、均一に混合して、カラーフィルター用インクジェットインクを得る段階と、
を含むことを特徴とする、カラーフィルター用インクジェットインクの製造方法。
【請求項6】
前記(メタ)アクリレートモノマーが、n−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、n−ブチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、メチルアクリレート、エチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレートからなる群より選ばれる一種類または二種類以上を含むことを特徴とする、請求項5に記載の製造方法。
【請求項7】
前記架橋性モノマーが、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジアクリレート、ブチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキシレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、テトラプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレートからなる群より選ばれる一種類または二種類以上を含むことを特徴とする、請求項5又は6に記載の製造方法。
【請求項8】
前記核形成促進剤が、分子量20000〜70000のポリスチレン微粒子を含むことを特徴とする請求項5ないし7のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項9】
前記低温硬化性成分が、第一低温硬化性成分を含むアクリレート乳液と第二低温硬化性成分とを含み、前記第一低温硬化性成分が活性カルボニル基を含み、前記第二低温硬化性成分がヒドラジド系化合物を含む、若しくは、前記第一低温硬化性成分がアセトアセトキシ基を含み、前記第二低温硬化性成分がポリアミン系化合物を含むことを特徴とする、請求項5ないし8のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項10】
前記アクリレート乳液のpH値は9〜10であることを特徴とする、請求項9に記載の製造方法。
【請求項11】
前記酸性モノマーが、アクリル酸またはメタクリル酸を含むことを特徴とする、請求項5ないし10のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項12】
前記油相溶液と上記水相溶液との混合物を、600rpm〜1300rpmの回転数で継続的に15分〜30分攪拌することを特徴とする、請求項5ないし11のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項13】
前記油溶性開始剤が、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリルを含むことを特徴とする、請求項5ないし12のいずれか一項に記載の製造方法。
【請求項14】
カラーフィルターの製造方法であって、
基板上に黒色光遮蔽層材料を塗布して、パターン化プロセスを経て光遮蔽層パターンを形成する段階と、
前記基板の非光遮蔽層パターン部分に、請求項1ないし4のいずれか一項に記載のカラーフィルター用インクジェットインクを滴下する段階と、
前記基板を所定の温度下で硬化させ、カラーフィルターを得る段階と、
を含むことを特徴とする、カラーフィルターの製造方法。
【請求項15】
前記所定の温度が、10℃〜100℃であることを特徴とする請求項14に記載のカラーフィルターの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−255151(P2012−255151A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−130549(P2012−130549)
【出願日】平成24年6月8日(2012.6.8)
【出願人】(510280589)京東方科技集團股▲ふん▼有限公司 (35)
【Fターム(参考)】