説明

カラーフィルタ形成方法、及びカラーフィルタ基板

【課題】カラーフィルタ形成方法における混色、白抜け等の抑制。
【解決手段】本発明のカラーフィルタ形成方法は、複数個の画素領域5からなる表示領域4を表面11上に有するガラス基板1と、表示領域4を囲むようにガラス基板1上に形成される枠部21と、この枠部21内において表示領域4を画素領域5毎に区画するようにガラス基板1上に形成される格子部22とを有するブラックマトリックス2と、を備えるカラーフィルタ用基板3の画素領域5に向けて、インクジェットノズル7から液滴状のインク8を吐出して、画素領域5にインク8からなる膜状のカラーフィルタ15を形成する。インク8を吐出する前に、画素領域5に熱源10を近付けて画素領域5を加熱して、画素領域5と、ブラックマトリックス2との間に温度差を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット方式でカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成方法、及び前記カラーフィルタ形成方法によって形成されたカラーフィルタを備えるカラーフィルタ基板に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータ、テレビ、携帯電話等の表示部として、液晶表示パネルが広く利用されている。この種の液晶表示パネルは、例えば、液晶層と、この液晶層を挟んで互いに向かい合う薄膜トランジスタ(TFT)基板と、カラーフィルタ(CF)基板とを備える。前記TFT基板は、ガラス基板上においてマトリックス状に形成された、スイッチング素子としての複数個のTFTと、各々のTFTに接続された複数個の画素電極を備える。
【0003】
これに対し、前記CF基板は、各画素電極に対応するようにガラス基板上においてマトリックス状に割り当てられた複数個のカラーフィルタと、各カラーフィルタを区画するように前記ガラス基板上に形成されたブラックマトリックスとを備える。なお、前記カラーフィルタは、赤色、緑色、青色等の複数色のものが、前記ガラス基板上においてそれぞれマトリックス状に配置されている。
【0004】
このようなCF基板上のカラーフィルタは、例えば、特許文献1に示されるように、インクジェット方式を利用して形成されている。インクジェット方式では、特許文献1等に示されるように、ガラス基板上のブラックマトリックスによって区画された各領域(画素領域、着色領域)上に向けて、液状インクが、インクジェット装置(インクジェットノズル)を利用して滴下されている。そして、滴下された液状インクが、前記領域内で膜状に広がり、加熱等によって乾燥されてカラーフィルタとなる。このようなインクジェット方式によるカラーフィルタの形成方法は、その他の従来方法と比べて、生産性が高く、またコストダウンを図ることができるため、近年、特に利用されている。
【0005】
なお、特許文献1等に示されるように、液状インクを、ガラス基板上のブラックマトリックスで区画された各領域上で馴染み易く、親和性を高めるために、前記領域に対して、紫外線(UV)オゾン処理、コロナ放電処理等の表面処理が行われている。このように表面処理を施すことによって、前記領域上の表面エネルギーを、液状インクの表面エネルギーよりも小さくして、液状インクが前記領域上で広がり易くしている。
【0006】
また、液状インクを、前記領域を囲むブラックマトリックスの頂面(前記TFT基板と向かい合う表面)では、馴染み難くするために、例えば、CFプラズマを常圧下で照射することによって、前記ブラックマトリックスの頂面をフッ素化処理することが従来、行われている。
【0007】
なお、本件発明と関連する他の技術文献としては、例えば、特許文献2が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平10−142418号公報
【特許文献2】特開2003−29020号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
特許文献1等に示されるコロナ放電処理等の表面処理は、ガラス基板上において、カラーフィルタが形成されるべき個所のみに、選択的に施されることが好ましい。しかしながら、前記表面処理は、通常、前記ガラス基板表面に対して、全面的に施されてしまう。つまり、ブラックマトリックスで囲まれたガラス基板上の各領域のみならず、ブラックマトリックスの表面までも前記表面処理が施されてしまう。このように、ブラックマトリックスの表面(特に、頂面)までも、表面処理されてしまうと、液状インクが、ブラックマトリックスを乗り越えて、隣接する他の領域内へ浸入し、カラーフィルタの混色等の欠陥が発生する虞があり、問題となっている。
【0010】
また、上述したフッ素化処理も、ブラックマトリックスの頂面のみに、選択的に施されることが好ましい。しかしながら、前記フッ素化処理も、通常は、前記ガラス基板表面に対して、全面的に施されてしまう。すると、液状インクが、ブラックマトリックスで囲まれたカラーフィルタが形成されるべき領域内で、均一に広がり難くなり、白抜け等の広がり不良(欠陥)が発生する虞があり、問題となっている。
【0011】
本発明の目的は、混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制された、カラーフィルタ形成方法を提供することである。
【0012】
本発明の他の目的は、混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制された、カラーフィルタ基板を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明に係るカラーフィルタ形成方法は、以下の通りである。
<1> 複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、を備えるカラーフィルタ用基板の前記画素領域に向けて、インクジェットノズルから液滴状のインクを吐出して、前記画素領域に前記インクからなる膜状のカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成方法であって、
前記インクを吐出する前に、前記画素領域に熱源を近付けて前記画素領域を加熱して、前記画素領域と、前記画素領域を囲む前記ブラックマトリックスとの間に温度差を設けることを特徴とするカラーフィルタ形成方法。
【0014】
<2> 前記ブラックマトリックスが、前記ガラス基板よりも熱伝導度が大きい金属からなる前記<1>に記載のカラーフィルタ形成方法。
【0015】
<3> 前記金属がクロムからなる前記<2>に記載のカラーフィルタ形成方法。
【0016】
<4> 前記熱源が、赤外線又は遠赤外線ランプからなる前記<1>〜<3>の何れか1つに記載のカラーフィルタ形成方法。
【0017】
<5> 複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、を備えるカラーフィルタ用基板の前記画素領域に向けて、インクジェットノズルから液滴状のインクを吐出して、前記画素領域に前記インクからなる膜状のカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成方法であって、
前記インクジェットノズルの先端に、先端が前記カラーフィルタ用基板に向かう針状熱源が設けられ、
前記針状熱源が、液滴状の前記インク内を通過するように、前記インクジェットノズルから前記インクが吐出されることを特徴とするカラーフィルタ形成方法。
【0018】
本発明に係るカラーフィルタ基板は、以下の通りである。
<6> 複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、
前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、
各画素領域を覆うように前記ガラス基板上に形成される複数個のカラーフィルタと、を備えるカラーフィルタ基板であって、
前記カラーフィルタが、前記<1>〜<5>の何れか1つに記載のカラーフィルタ形成方法によって形成されたことを特徴とするカラーフィルタ基板。
【発明の効果】
【0019】
本発明のカラーフィルタ形成方法によれば、混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制される。
【0020】
本発明のカラーフィルタ基板は、混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制されている。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】表面上にブラックマトリックスが形成されたガラス基板の平面図である。
【図2】一実施形態に係るカラーフィルタ形成方法の内容を模式的に表した説明図である。
【図3】ヒータによって加熱された後の画素領域上の温度変化と、その領域を囲むブラックマトリックス上の温度変化との関係を表すグラフである。
【図4】インクジェットノズルから吐出された液状インクが、画素領域上に向かって落下する様子を模式的に表した説明図である。
【図5】液状インクが画素領域上に着地して、その画素領域上を広がる様子を模式的に表した説明図である。
【図6】カラーフィルタ基板の平面図である。
【図7】他の実施形態に係るカラーフィルタ形成方法の内容を模式的に表した説明図である。
【図8】他の実施形態に係るカラーフィルタ形成方法の内容を模式的に表した説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係るカラーフィルタ形成方法の実施形態、及びカラーフィルタ基板の実施形態を説明する。なお、本発明は、本明細書に例示する実施形態に限定されるものではない。
【0023】
図1は、表面上にブラックマトリックスが形成されたガラス基板の平面図である。図1に示されるように、ガラス基板1の表面11上には、ブラックマトリックス2がパターン状に形成されている。ガラス基板1としては、例えば、厚みが0.7mm〜1.1mm程度のものが利用される。なお、本明細書において、ブラックマトリックス2が表面11上に形成されているガラス基板1のことを、特に、「カラーフィルタ用基板3」と称する場合がある。
【0024】
ブラックマトリックス2は、クロム等の遮光性を有する膜状の金属材料からなり、スパッタリング法、蒸着法等の公知の成膜技術と、フォトリソグラフィ法等の公知のパターニング技術とを利用して、ガラス基板1上に形成される。このようにして形成されるブラックマトリックス2の厚みとしては、例えば、0.1μm〜0.3μm程度である。また、ブラックマトリックス2の線幅は、例えば、10μm〜50μm程度である。
【0025】
図1に示されるように、パターン状のブラックマトリックス2は、枠部21と、格子部22とからなる。枠部21は、画像を表示させるための表示領域4の周りを囲むように、ガラス基板1の表面11上に形成されている。表示領域4は、複数個の画素領域5が集まったものからなる。格子部22は、枠部21内において表示領域4を画素領域5毎に区画するように、ガラス基板1上に形成されている。なお、ガラス基板1上において、この枠部21から外側(縁側)の部分が、画像を表示しない非表示領域となっている。
【0026】
画素領域5は、一般的に、サブ画素(領域)とも呼ばれるものであり、赤色(R)のカラーフィルタが形成される画素領域51と、緑色(G)のカラーフィルタが形成される画素領域52と、青色(B)のカラーフィルタが形成される画素領域53とからなる。つまり、画素領域51、画素領域52、及び画素領域53がそれぞれ1つずつ集まったものが、1つの絵素6となっている。図1には、画素領域5が、ガラス基板1上において、マトリックス状(行列状)に形成されている様子が示されている。図1に示されるように、左端の列に対応するように画素領域51が配置されており、その右隣の列に対応するように画素領域52が配置されており、更にその右隣の列に対応するように画素領域53が配置されている。このような順序で各画素領域51,52,53が並ぶように、複数個の画素領域5が、ガラス基板1上に形成されている。
【0027】
本実施形態のカラーフィルタ形成方法は、図1に示されるカラーフィルタ用基板3上の各画素領域5に、それぞれの色に対応したカラーフィルタを、インクジェット装置(インクジェット方式)を利用して、形成するものである。
【0028】
図2は、一実施形態に係るカラーフィルタ形成方法の内容を模式的に表した説明図である。図2に示されるように、表面11が水平となるように、ガラス基板1が配置されている。このガラス基板1は、図示されない支持台上に載せられ、その支持台上で固定されている。また、図2に示されるように、ガラス基板1の上方には、インクジェット装置の一部であるインクジェットノズル7が配置されている。インクジェットノズル7は、その先端からガラス基板1上の領域5に向けて所定のタイミングで、所定量(所定サイズ)の液状インク8を吐出する。このインクジェットノズル7としては、通常、この種のカラーフィルタ形成方法で用いられるものを適用できる。インクジェットノズル7から吐出された液状インク8は液滴状であり、領域5に向かって落下する。落下した液状インク8は、ブラックマトリックス2で囲まれた画素領域5内で膜状に広がる。
【0029】
図2に示されるように、インクジェットノズル7は、その先端がガラス基板1に向かうように走査手段9に固定されている。インクジェットノズル7は、走査手段9によって、ガラス基板1の表面11に対して平行方向に自在に移動でき、かつ自在に停止できるように構成されている。インクジェットノズル7は、一列に並んだ各領域5に対して、所定量の液状インク8を順次滴下するように構成されている。そして、各領域5上に液状インク8の膜81がそれぞれ形成される。なお、インクジェットノズル7の移動、吐出量、吐出時期(タイミング)等の制御は、図示されないコンピュータ(制御装置)からの指示に従って行われる。なお、他の実施形態においては、インクジェットノズル7に対して、ガラス基板1を載せた支持台の方を、移動させてもよい。
【0030】
本実施形態のカラーフィルタ形成方法では、液状インク9が滴下される前の領域5内の温度(表面温度)T(ガラス基板1の表面11における温度)が、その領域5を囲むブラックマトリックス2の温度(表面温度)Tよりも高くなるように、設定される。図2に示されるように、走査手段9には、ヒータ(熱源)10が固定されている。このヒータ10を利用して、前記領域5の表面温度Tと、前記ブラックマトリックス2の表面(頂面)温度Tとの温度差が設けられる。
【0031】
ヒータ10は、インクジェットノズル7から液状インク8を吐出して領域5上に液状インク8の膜を形成する直前に、その領域10に近付けられて、その領域5を予め加熱する。ヒータ10としては、例えば、赤外線ランプ、遠赤外線ランプ等の公知の熱源を利用できる。ヒータ10は、インクジェットノズル7(走査手段9)の進行方向側において、インクジェットノズル7と並ぶように配置されている。ヒータ10は、その先端(ヘッド部)101から熱を放出し、液状インク8が吐出される前の領域5上を瞬間的に、加熱する。図2には、ガラス基板1上の領域5に加えられた熱12が模式的に示されている。
【0032】
ヒータ10は、温度Tを高めるために、液状インク8が滴下される前の領域5のみを選択的に加熱することが好ましい。しかしながら、ガラス基板1上に設けられている各領域5のサイズは、例えば、縦方向が100μm〜200μm程度、横方向が50μm〜100μm程度であり、非常に小さい。その為、本実施形態のカラーフィルタ形成方法では、ヒータ10によって、ガラス基板1上の領域5と共に、その領域5を囲むブラックマトリックス2をも、加熱される。
【0033】
上述したように、本実施形態のブラックマトリックス2は、クロム等の膜状の金属材料からなる。金属材料からなるブラックマトリックス2は、ガラス基板1上の領域5と比べて、熱伝導度が高い。つまり、ブラックマトリックス2の方が、ガラス基板1上の領域5よりも、冷めやすく温度が低下し易い材料からなる。したがって、ヒータ10によって、ガラス基板1上の領域5と共に、その領域5を囲むブラックマトリックス2も加熱されても、その加熱後に所定時間経過すれば、ブラックマトリックス2上の温度の方が、ガラス基板1上の領域5上の温度よりも先に低下するため、前記領域5上の温度の方が、前記ブラックマトリックス2上の温度よりも高くなるような、温度状態が得られる。
【0034】
図3は、ヒータ10によって加熱された後の領域5上の温度変化と、その領域を囲むブラックマトリックス上の温度変化との関係を表すグラフである。図3において左側の縦軸は温度T(℃)を表し、横軸は、ヒータ10による加熱後の経過時間tを表す。図3には、領域5(ガラス基板1)上の温度曲線Tbと、ブラックマトリックス2上の温度曲線Taとが示されている。これらの温度曲線Ta,Tbは、ヒータ10によって、液状インク8が滴下される前の領域5と、その領域5を囲むブラックマトリックス2とが、共に室温(25℃)から70℃まで加熱された後、所定時間tの間、室温で放置された場合の温度変化を表している。図3に示されるように、所定時間tx経過後のブラックマトリックス2上の温度Tは30℃まで低下している。これに対し、所定時間tx経過後の領域5上の温度Tは50℃であり、温度Tよりも20℃高くなっている。このようにガラス基板1(領域5)と、ブラックマトリックス2との間の熱伝導度の違い(差)を利用して、これらの間に、上記のような温度差を設けることができる。
【0035】
上記のような温度差が、ガラス基板1上の領域5と、その領域5を囲むブラックマトリックス2との間に設けられた後、図2に示されるように、その領域5へ向けてインクジェットノズル7から液状インク8が吐出され、滴下される。1つの画素領域5内に滴下される液状インク8の量(滴下量)は、適宜、調節される。
【0036】
液状インク8は、顔料、染料等の色材、バインダー樹脂、及び溶剤等の混合物液からなり、通常、この種のカラーフィルタ形成方法で用いられているものを適用できる。液状インク8としては、例えば、熱硬化性のものが利用される。
【0037】
前記色材として使用される有機顔料としては、例えば、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、ポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダトロン、ピラントロン、ビオラントロン等のアントラキノン系顔料、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ベリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0038】
前記色材として使用される無機顔料としては、例えば、酸化チタン、亜鉛華、硫化亜鉛、鉛白、炭酸カルシウム、沈降性硫酸バリウム、ホワイトカーボン、アルミナホワイト、カオリンクレー、タルク、ベントナイト、黒色酸化鉄、カドミウムレッド、べんがら、モリブデンレッド、モリブデートオレンジ、クロムバーミリオン、黄鉛、カドミウムイエロー、黄色酸化鉄、チタンイエロー、酸化クロム、ビリジアン、チタンコバルトグリーン、コバルトグリーン、コバルトクロムグリーン、ビクトリアグリーン、群青、紺青、コバルトブルー、セルリアンブルー、コバルトシリカブルー、コバルト亜鉛シリカブルー、マンガンバイオレット、コバルトバイオレット等が挙げられる。
【0039】
なお、前記色材として使用される各色の顔料を、カラーインデックス(C.I.)ナンバーで表したものは、以下の通りである。
【0040】
前記色材として使用される赤色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Violet 19、C.I.Pigment Violet 23、C.I.Pigment Violet 29、C.I.Pigment Violet 30、C.I.Pigment Violet 37、C.I.Pigment Violet 40等が挙げられる。
【0041】
前記色材として使用される緑色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Green 7、C.I.Pigment Green 36等が挙げられる。また、C.I.Pigment Green 36と、C.I.Pigment Yellow 150、C.I.Pigment Yellow 139又はC.I.Pigment Yellow 13との混合物を、前記色材として用いてもよい。
【0042】
前記色材として使用される青色顔料としては、例えば、C.I.Pigment Blue 15、C.I.Pigment Blue 15:3、C.I.Pigment Blue 15:4、C.I.Pigment Blue 15:6、C.I.Pigment Blue 22、C.I.Pigment Blue 60等が挙げられる。
【0043】
前記バインダー樹脂としては、例えば、カゼイン、ゼラチン、ポリビニルアルコール、カルボキシメチルアセタール、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等が挙げられる。
【0044】
前記溶剤としては、例えば、2−メトキシエタノール、2−エトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−エトキシエチルアセテート、2−ブトキシエチルアセテート、2−メトキシエチルアセテート、2−エトキシエチルエーテル、2−(2−エトキシエトキシ)エタノール、2−(2−ブトキシエトキシ)エタノール、2−(2−エトキシエトキシ)エチルアセテート、2−(2−ブトキシエトキシ)エチルアセテート、2−フェノキシエタノール、ジエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。
【0045】
前記液状インク8には、色材の分散性向上等の目的で、ポリオキシエチレンアルキルエーテル等の非イオン性界面活性剤、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム、ポリ脂肪酸塩、脂肪酸塩アルキルリン酸塩、テトラアルキルアンモニウム塩等のイオン性界面活性剤、有機顔料誘導体、ポリエステル等が添加されてもよい。
【0046】
図2及び図3に示されるように、領域5上に向けて吐出される前の液状インク8の温度T(℃)は、例えば、T≦T≦Tに設定される。図3に示されるTは40℃となっている。液状インク8としては、この温度範囲におけるの粘度η(mPa・s)が、例えば、15≦η≦25となるようなものが利用される。
【0047】
ここで図3を参照しつつ、液状インク8の粘度ηと、その温度Tとの関係について説明する。図3において、右側の縦軸は、液状インクの粘度η(mPa・s)を表す(20℃における水の粘度が1mPa・s)。図3に示されるように、インクジェットノズル7から吐出される際の液状インク8は、T≦T≦Tという温度範囲において、その温度Tが高くなると、その粘度ηが低くなり、流動性が高くなる。これに対し、温度Tが低くなると、液状インク8の粘度ηは高くなり、流動性が低くなる。このような液状インク8は、上述した材料同士を適宜、混合することによって調製できる。
【0048】
なお、本実施形態のカラーフィルタ形成方法で利用できる具体的な液状インク8としては、例えば、特開2007−256313号公報、特開2004−2815号公報においてそれぞれ開示されているものが挙げられる。
【0049】
例えば、領域5上の温度Tが50℃であり、その領域5を囲むブラックマトリックス2上の温度Tが30℃である場合に、温度Tが40℃である液状インク8が、その領域5上に滴下されると、その液状インク8は、その領域5内に収まり易くなり、かつその領域5上を広がり易くなる。以下、その理由を、図4及び図5を参照しつつ、説明する。
【0050】
図4は、インクジェットノズルから吐出された液状インクが、画素領域上に向かって落下する様子を模式的に表した説明図である。図4には、ガラス基板1上における1つの画素領域5の平面図が示されている。図4に示されるように、温度Tで吐出された液状インク8は、加熱されて温度が高くなった領域5(温度T)に向かって落下する。なお、液状インク8のサイズ(液滴サイズ)は、通常、数十μm程度であり、画素領域5よりも小さい。ただし、図4等において示される液状インク8は、説明の便宜上、画素領域5の幅よりも、大きく描かれている。
【0051】
図5は、液状インクが画素領域上に着地して、その画素領域上を広がる様子を模式的に表した説明図である。液滴状の液状インク8が、画素領域5と接触すると、その接触した部分は、画素領域5から熱を受け取って温度が高くなる。すると、その部分の流動性は接触する前よりも高くなる。そのため、画素領域5上に着地した液状インク8は、流動性が高くなって、広がり易くなる。なお、インクジェットノズル7から吐出された液状インク8の中には、往々にして、画素領域5を囲んでいるブラックマトリックス2と接触するものがある。このような液状インク8は、要するに、温度が高くなった画素領域5と共に、その画素領域5よりも温度が低くなっているブラックマトリックス2に対して、同時に接触することになる。この場合、液状インク8の流動性は、画素領域5と接触して熱を受け取った部分83の方が、ブラックマトリックス2と接触して熱が奪われた部分82よりも、相対的に高くなっている。すると、流動性が高くなった部分(画素領域5上に載っている部分)83が、画素領域5上を広がる際に、それよりも流動性が低い部分(ブラックマトリックス2上に載っている部分)82が、画素領域5内へ引っ張り込まれることになる。したがって、液状インク8がブラックマトリックス2と接触するように滴下されても、液状インク8は画素領域5内へ誘導される。そのため、液状インク8がブラックマトリックス2を乗り越えて、隣接する他の画素領域内へ浸入することが抑制される。
【0052】
以上のように、画素領域5と、その画素領域5を囲むブラックマトリックス2との間に温度差を設けておき、その温度差を利用することによって、画素領域5内に収まり易く、かつその画素領域5内で広がり易くなるように、液状インク8の流動性を制御できる。
【0053】
画素領域5上に滴下された液状インク8は、図2に示されるように、画素領域5内で広がって膜状(膜状インク)81になる。全ての画素領域5内に、液状インク8が滴下され、充填された後、その液状インク8(81)を載せたカラーフィルタ用基板3は、加熱(ベーク)処理される。すると、各画素領域5内の膜状インク81が硬化されて、膜状のカラーフィルタとなる。その後、ガラス基板1上のカラーフィルタ及びブラックマトリックス2を覆うように、ITO(Indium−tin oxide)等の透明導電膜からなる共通電極(不図示)が、スパッタリング法等の成膜技術を利用して形成される。更に、その共通電極を覆うように、ラビング処理(配向処理)された配向膜(不図示)が形成される。
【0054】
図6は、カラーフィルタ基板の平面図である。このカラーフィルタ基板13は、図1に示されるカラーフィルタ用基板3の各画素領域5上に、本実施形態のカラーフィルタ形成方法を利用して、カラーフィルタ15が形成されたものである。図6に示されるように、画素領域5(51)上に、赤色のカラーフィルタ15(151)が形成され、画素領域5(52)上に、緑色のカラーフィルタ15(152)が形成され、画素領域5(53)上に、青色のカラーフィルタ15(153)が形成されている。なお、説明の便宜上、図6において、共通電極、配向膜等のカラーフィルタ基板13に形成されるその他の部材は、図示されず省略されている。このカラーフィルタ基板13は、TFT基板と貼り合わせられ、液晶表示パネルに利用される。
【0055】
以上のように、本実施形態のカラーフィルタ形成方法によれば、カラーフィルタ用基板(ガラス基板)上の各画素領域上に、混色、白抜け等の欠陥の発生を抑制しつつ、カラーフィルタを形成できる。また、前記カラーフィルタ形成方法を用いて製造された、本実施形態のカラーフィルタ基板は、カラーフィルタの混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制される。
【0056】
以下、図7及び図8を参照しつつ、他の実施形態に係るカラーフィルタ形成方法について説明する。図7及び図8は、他の実施形態に係るカラーフィルタ形成方法の内容を模式的に表した説明図である。本実施形態のカラーフィルタ形成方法は、図2等に示される上記実施形態の形成方法と同様、図1に示されるカラーフィルタ用基板3上の各画素領域5に、それぞれの色に対応したカラーフィルタを、インクジェット装置(インクジェット方式)を利用して、形成するものである。また、液状インク8も、上記実施形態と同様のものが利用される。しかしながら、本実施形態のカラーフィルタ形成方法は、液状インク8を吐出するインクジェットノズル71及び熱源16の構成が、上記実施形態の形成方法のものとは異なっている。本実施形態のカラーフィルタ形成方法は、上記実施形態の形成方法のように、加熱されて温度差が設けられたガラス基板1上の画素領域5に向けて液状インク8を吐出するものではなく、インクジェットノズル71から吐出された液滴状の液状インク8を、画素領域5に着地する前に、その液状インク8の中心部を局所的に加熱するものである。
【0057】
図7には、表面11が水平となるように支持台(不図示)上に固定されているガラス基板1(カラーフィルタ用基板3)と、そのガラス基板1の上方に配置されているインクジェットノズル71が示されている。液状インク8が滴下される前のガラス基板1の温度は、室温(25℃)程度になっている。インクジェットノズル71は、図示されない走査手段に固定されており、ガラス基板1の表面11に対して平行方向に自在に移動でき、かつ自在に停止できるように構成されている。インクジェットノズル71は、その先端から液状インク8を画素領域5に向けて液滴状に吐出する。このインクジェットノズル71の先端には、針状熱源(針状ヒータ)16が設けられている。この針状ヒータ16は、細長く延びた針のような形状であり、インクジェットノズル71の吐出口72において、略中央部分に配置されるように、インクジェットノズル71に固定されている。吐出口72から吐出された液状インク8は、針状ヒータ16がその液状インク8の内部を貫くように、針状ヒータ16に沿って落下する。なお、針状ヒータ16は、外部より電力が供給されて、適宜、温度が調節できるように構成されている。
【0058】
所定のタイミングで、インクジェットノズル71から液状インク8が液滴状に吐出されると、その液状インク8は、その内部(中心部)が針状ヒータ16を通過する際に、局所的に加熱される。図7には、針状ヒータ16を通過して、中心部84が局所的に加熱された液状インク8が示されている。液状インク8の中心部84の温度T10は、針状ヒータ16で加熱される前の温度よりも高くなっている。これに対し、その中心部84を覆う外側部分85は、落下の際に放熱される等の理由により、中心部84の温度T10よりも低い温度T20になっている。針状ヒータ16は、所定のタイミングで、発熱できるように図示されないコンピュータ(制御装置)によって制御される。
【0059】
液状インク8は、図3等において示されるように、所定の温度範囲内(例えば30℃〜50℃)において、温度が上昇すると、粘性が低下して流動性が高くなる。その為、上記のように、液状インク8の中心部84と、その中心部84を覆う外側部分85との間に上記のような温度差が形成されると、それらの間における液状インク8の流動性にも差が生じる。つまり、温度が高い中心部84の流動性が、温度が低い外側部分85の流動性よりも、高くなる。
【0060】
なお、針状ヒータ16によって加熱されて温度が高められた液状インク8の中心部84は、図7に示されるように、液状インク8の下方側に偏るように形成されることが好ましい。この場合、外側部分85は、中心部84に上方側から覆い被さるように形成される。このような中心部84及び外側部分85を有する液状インク8は、針状ヒータ16を発熱させるタイミング等を適宜、調節することによって得られる。なお、実際には、液状インク8は、温度T10の中心部84と、温度T20の外側部分85とに、明確に区別できるように形成されるものではない。図7及び図8には、説明の便宜上、中心部84と、外側部分85とが明確に区別できるように、液状インク8が模式的に示されている。
【0061】
図8には、中心部84が、外側部分85よりも温度が高くなった液状インク8が、ガラス基板1上の画素領域5に着地した際の様子が、模式的に示されている。液状インク8が着地する際、画素領域5には、主として、流動性の高い中心部84が接触する。これに対し、画素領域5を囲むブラックマトリックス2には、主として、流動性の低い外側部分85が接触する。その為、ガラス基板1上の画素領域5では、液状インク8の流動性の高い部分が広がり、ブラックマトリックス2上では、液状インク8の流動性が低く広がりが抑制される。つまり、隣接する他の画素領域へ液状インクが浸入することが抑制される。また、ブラックマトリックス2上の液状インク8は、流動性の高い部分によって引き込まれるように、画素領域5内に誘導される。
【0062】
したがって、本実施形態のカラーフィルタ形成方法によっても、カラーフィルタ用基板(ガラス基板)上の各画素領域上に、混色、白抜け等の欠陥の発生を抑制しつつ、カラーフィルタを形成できる。また、前記カラーフィルタ形成方法を用いて製造された、本実施形態のカラーフィルタ基板も、カラーフィルタの混色、白抜け等の欠陥の発生が抑制されている。
【0063】
上記実施形態においては、ブラックマトリックス2として、金属材料を使用しているが、本発明の目的が達成できるのであれば、樹脂性のブラックマトリックスを利用してもよい。
【符号の説明】
【0064】
1 ガラス基板
11 ガラス基板の表面
2 ブラックマトリックス
3 カラーフィルタ用基板
5 画素領域
7 インクジェットノズル(インクジェット装置)
8 液状インク
9 走査手段
10 ヒータ(熱源)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、を備えるカラーフィルタ用基板の前記画素領域に向けて、インクジェットノズルから液滴状のインクを吐出して、前記画素領域に前記インクからなる膜状のカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成方法であって、
前記インクを吐出する前に、前記画素領域に熱源を近付けて前記画素領域を加熱して、前記画素領域と、前記画素領域を囲む前記ブラックマトリックスとの間に温度差を設けることを特徴とするカラーフィルタ形成方法。
【請求項2】
前記ブラックマトリックスが、前記ガラス基板よりも熱伝導度が大きい金属からなる請求項1に記載のカラーフィルタ形成方法。
【請求項3】
前記金属がクロムからなる請求項2に記載のカラーフィルタ形成方法。
【請求項4】
前記熱源が、赤外線又は遠赤外線ランプからなる請求項1〜3の何れか1項に記載のカラーフィルタ形成方法。
【請求項5】
複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、を備えるカラーフィルタ用基板の前記画素領域に向けて、インクジェットノズルから液滴状のインクを吐出して、前記画素領域に前記インクからなる膜状のカラーフィルタを形成するカラーフィルタ形成方法であって、
前記インクジェットノズルの先端に、先端が前記カラーフィルタ用基板に向かう針状熱源が設けられ、
前記針状熱源が、液滴状の前記インク内を通過するように、前記インクジェットノズルから前記インクが吐出されることを特徴とするカラーフィルタ形成方法。
【請求項6】
複数個の画素領域からなる表示領域を表面上に有するガラス基板と、
前記表示領域を囲むように前記ガラス基板上に形成される枠部と、この枠部内において前記表示領域を画素領域毎に区画するように前記ガラス基板上に形成される格子部とを有するブラックマトリックスと、
各画素領域を覆うように前記ガラス基板上に形成される複数個のカラーフィルタと、を備えるカラーフィルタ基板であって、
前記カラーフィルタが、請求項1〜5の何れか1項に記載のカラーフィルタ形成方法によって形成されたことを特徴とするカラーフィルタ基板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−237603(P2011−237603A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−109031(P2010−109031)
【出願日】平成22年5月11日(2010.5.11)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】