説明

カラーフィルタ用感光性着色組成物及びカラーフィルタ

【課題】微細化顔料の使用や、あるいは顔料濃度が高い場合にも分散安定性に優れ、かつフィルタセグメントの断面形状が良好で透明電極の断線のないカラーフィルタ用感光性着色組成物を提供する。
【解決手段】着色剤(A)と、エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を含むポリオール(b3)中の水酸基と、一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させてなる、ガラス転移温度Tgが260K以上であるビニル重合体部位(b)を有する樹脂型分散剤(B)と、樹脂(C)と、光重合性単量体と、光重合開始剤と、溶剤とを含有してなるカラーフィルタ用感光性着色組成物により解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カラー液晶表示装置、カラー撮像管素子等に用いられるカラーフィルタの製造に使用されるカラーフィルタ用感光性着色組成物及びこれを用いて形成されるカラーフィルタに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、2枚の偏光板に挟まれた液晶層が、1枚目の偏光板を通過した光の偏光度合いを制御して、2枚目の偏光板を通過する光量をコントロールすることにより表示を行う表示装置であり、ツイストネマチック(TN)型液晶を用いるタイプが主流となっている。液晶表示装置は、2枚の偏光板の間にカラーフィルタを設けることによりカラー表示が可能となり、近年、テレビやパソコンモニタ等に用いられるようになったことから、カラーフィルタに対して高コントラスト化、高明度化の要求が高まっている。
【0003】
カラーフィルタは、ガラス等の透明な基板の表面に2種以上の異なる色相の微細な帯(ストライプ)状のフィルタセグメントを平行又は交差して配置したもの、あるいは微細なフィルタセグメントを縦横一定の配列で配置したものからなっている。フィルタセグメントは、数ミクロン〜数100ミクロンと微細であり、しかも色相毎に所定の配列で整然と配置されている。
【0004】
一般的に、カラー液晶表示装置では、フィルタセグメントの上に液晶を駆動させるための透明電極が蒸着あるいはスパッタリングにより形成され、更にその上に液晶を一定方向に配向させるための配向膜が形成されている。これらの透明電極及び配向膜の性能を充分に得るには、その形成を一般に200℃以上、好ましくは230℃以上の高温で行う必要がある。このため、現在、カラーフィルタのフィルタセグメント形成用着色組成物(カラーフィルタ用感光性着色組成物と言う)の製造方法としては、耐光性、耐熱性に優れる顔料を着色剤とする顔料分散法と呼ばれる方法が主流となっている。
【0005】
顔料分散法によるカラーフィルタセグメントは、分散剤、溶剤等を用いて顔料を樹脂(アクリル樹脂等)中に分散させて得られる着色組成物に、光重合性単量体、や光重合開始剤を添加して感光化した感光性着色組成物をガラス基板等の透明支持体上に塗布し、着色層や遮光層等の着色塗膜を形成し、パターニングするフォトリソグラフィー法が広く用いられている。また、パターニングされた塗膜にはその後の工程での耐性を付与するため、200℃以上の高温でポストベークを行う。
【0006】
近年、カラーフィルタには、高輝度化、高コントラスト化の要求が高まっており、フィルタセグメント中に含まれる顔料の微細化処理が行われている。顔料を微細化するとその表面積が増加するため、顔料の凝集が強く、安定した顔料分散体を得るために分散剤添加量を増加させる必要がある。
【0007】
また、カラーフィルタの高彩度化を実現するなどの高まる色特性要求を満たしながら薄膜化が求められており、フィルタセグメント中の顔料成分含有率が高くなる傾向にある。このため更にカラーレジスト中の樹脂の含有量が制限され、現像性およびパターンニング性の低下、粘度の上昇も大きな問題となっている。
【0008】
カラーフィルタ用感光性着色組成物を使用するフォトリソグラフィー方式においては、光架橋に必要な紫外線が顔料により吸収されてしまうため、フィルタセグメント内部まで届かず、結果として光架橋が不足し、現像工程においてオーバーハング形状(基板側よりも透明電極側の面積が大きいこと)となりやすく、良好な順テーパー形状(基板側よりも透明電極側の面積が小さいこと)とする難易度が高くなっている。フィルタセグメントの上に透明電極層を形成する際に、オーバーハング形状の場合には、透明電極層の蒸着あるいはスパッタリングが不完全となり断線不良が起こるといったことが問題となっている。
【0009】
このようなオーバーハング形状にならないようにする方法として、特許文献1には、特定の可塑剤を用いる方法が、特許文献2には、3官能以上の多価不飽和二重結合を有する共重合単位を含む共重合体を用いる方法が開示されている。
また、オーバーハング形状のフィルタセグメントであっても、熱フロー(熱流動)現象を利用し、熱処理により順テーパー形状とする方法が、特許文献3に開示されている。
【0010】
しかしこれらの方法では、近年のカラーフィルタに対する高輝度化、高コントラスト化、高彩度化の要求に伴う、微細化顔料の使用や、あるいは顔料濃度が高い場合には十分ではないのが現状である。すなわち、微細化顔料を使用した場合には、多量の樹脂型分散剤が必要となり、その影響による現像性、パターン形状の悪化がおこることがあり、また顔料濃度が高い場合には、含有する顔料担体成分が少ないことによる分散安定性不良などが問題となっている。このように、カラーフィルタ用着色組成物として安定性に優れ、さらに高現像性且つ順テーパーのパターン断面形状も満たすカラーフィルタ用感光性着色組成物を得ることが難しくなってきている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許2007−57655号公報
【特許文献2】特開2007−114604号公報
【特許文献3】特開2003−167115号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、微細化顔料の使用や、あるいは顔料濃度が高い場合にも分散安定性に優れ、かつフィルタセグメントの断面形状が良好で透明電極の断線のないカラーフィルタ用感光性着色組成物を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記課題は、着色剤(A)、樹脂型分散剤(B)、樹脂(C)、光重合性単量体、光重合開始剤、及び溶剤を含有してなるカラーフィルタ用感光性着色組成物において、
該樹脂型分散剤(B)が、
エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を含むポリオール(b3)中の水酸基と、下記一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させてなる、ビニル重合体部位(b)を有するポリエステル分散剤であって、
該ビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgが260K以上であることを特徴とするカラーフィルタ用感光性着色組成物によって解決される。
一般式(1):
【化1】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【化2】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO
−、−SO2−、−C(CF32−、式(3):
【化3】

で表される基、または式(4):
【化4】

で表される基である。]
【0014】
また、本発明は、樹脂型分散剤(B)が、樹脂型分散剤(B)と樹脂(C)との合計を基準として、25重量%以上含まれていることを特徴とする前記カラーフィルタ用感光性着色組成物に関する。
また、本発明は着色剤(A)の含有量が、カラーフィルタ用感光性着色組成物中の固形分100重量%中、25〜55重量%であることを特徴とする前記カラーフィルタ用感光性着色組成物に関する。
また、本発明は樹脂型分散剤(B)の重量平均分子量(Mw)が、5,000〜25,000であることを特徴とする前記カラーフィルタ用感光性着色組成物に関する。
また、本発明は基板上に、前記カラーフィルタ用感光性着色組成物を用いて形成されたフィルタセグメントを具備することを特徴とするカラーフィルタに関する。
【発明の効果】
【0015】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物は、樹脂型分散剤が熱フロー性を有しているために、露光・現像後にオーバーハングなパターン断面形状であっても、例えば、200℃以上の高温処理により、順テーパー形状となることで、カラーフィルタ製造後、電極として蒸着されるITO形成過程において、透明電極が断線しないカラーフィルタを得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物の各種構成成分について説明する。
なお、「(メタ)アクリル酸」、「(メタ)アクリレート」、及び「(メタ)アクリロイルオキシ」と表記した場合には、それぞれ、「アクリル酸又はメタクリル酸」、「アクリレート又はメタクリレート」、及び「アクリロイルオキシ又はメタアクリロイルオキシ」を示すものとする。
【0017】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物は、着色剤(A)、樹脂型分散剤(B)、樹脂(C)、光重合性単量体、光重合開始剤、及び溶剤を含有してなるカラーフィルタ用感光性着色組成物において、
該樹脂型分散剤(B)が、
エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を含むポリオール(b3)中の水酸基と、下記一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させてなる、ビニル重合体部位(b)を有するポリエステル分散剤であって、
該ビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgが260K以上であることを特徴とする。
【0018】
≪カラーフィルタ用感光性着色組成物の要求特性≫
本発明の感光性着色組成物は、その特徴である樹脂型分散剤(B)を含むことで、微細化顔料を用いた場合や、顔料濃度が高い場合にも、下記の(1)を達成しながら(2)及び(3)の特性を満たすことができる。
(1)着色組成物中の顔料分散性
着色組成物中の顔料吸着基により顔料に吸着し、又は立体障害基により顔料凝集を防ぎ、微細に分散した状態を長期間維持可能であること。
(2)フィルタセグメントの熱フロー性
カラーフィルタ製造工程において、着色組成物を基材に塗布・露光し、更に現像を行った時点のフィルタセグメントがオーバーハング形状であっても、以降の加熱処理工程である200℃以上のポストベイク時に熱フロー(熱流動)し、順テーパー形状になること。
(3)着色組成物の現像性
現像工程において未露光部のみを(アルカリ性)現像液で除去可能であること。
【0019】
<着色剤(A)>
本発明の感光性着色組成物に含まれる着色剤(A)としては、有機物である有機顔料であってもよいし、無機物である無機顔料であってもよいし、形成するフィルタセグメントの色相に応じて、染料、天然色素であってもよい。中でも、耐熱性、発色性に優れていることから、有機顔料が好ましく用いられる。
【0020】
本発明の着色組成物に含まれる有機顔料の具体例を、カラーインデックス番号で示す。
[有機顔料]
赤色フィルタセグメントを形成するための赤色感光性着色組成物には、赤色顔料として、例えばC.I. Pigment Red 7、9、14、41、48:1、48:2、48:3、48:4、81:1、81:2、81:3、97、122、123、146、149、168、177、178、179、180、184、185、187、192、200、202、208、210、215、216、217、220、223、224、226、227、228、240、242、246、254、255、264、272、又は279等を用いることができる。赤色感光性着色組成物には、黄色顔料、オレンジ顔料を併用することができる。
【0021】
赤色感光性着色組成物に添加する黄色顔料としては、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、又は199等を用いることができる。なかでも、C.I. Pigment Yellow138、139、150、又は185が好ましい。
【0022】
赤色感光性着色組成物に添加するオレンジ色顔料としては、例えばC.I. Pigment Orange 36、43、51、55、59、61、又は71等を用いることができる。
【0023】
緑色フィルタセグメントを形成するための緑色感光性着色組成物には、緑色顔料として、例えばC.I. Pigment Green 7、10、36、37、又は58等を用いることができる。緑色感光性着色組成物には黄色顔料を併用することができる。
【0024】
緑色感光性着色組成物に添加する黄色顔料としては、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、又は199等を用いることができる。なかでも、C.I. Pigment Yellow138、139、150、又は185が好ましい。
【0025】
青色フィルタセグメントを形成するための青色感光性着色組成物には、青色顔料として、例えばC.I. Pigment Blue 15、15:1、15:2、15:3、15:4、15:6、16、22、60、又は64等を用いることができる。青色感光性着色組成物には、C.I. Pigment Violet 1、19、23、27、29、30、32、37、40、42、又は50等の紫色顔料を併用することができる。
【0026】
イエロー色フィルタセグメントを形成するためのイエロー色感光性着色組成物には、例えばC.I. Pigment Yellow 1、2、3、4、5、6、10、12、13、14、15、16、17、18、20、24、31、32、34、35、35:1、36、36:1、37、37:1、40、42、43、53、55、60、61、62、63、65、73、74、77、81、83、86、93、94、95、97、98、100、101、104、106、108、109、110、113、114、115、116、117、118、119、120、123、125、126、127、128、129、137、138、139、147、148、150、151、152、153、154、155、156、161、162、164、166、167、168、169、170、171、172、173、174、175、176、177、179、180、181、182、185、187、188、193、194、又は199等の黄色顔料を用いることができる。
【0027】
オレンジ色フィルタセグメントを形成するためのオレンジ色感光性着色組成物には、例えばC.I. Pigment orange 36、43、51、55、59、61、又は71等のオレンジ色顔料を用いることができる。
【0028】
シアン色フィルタセグメントを形成するためのシアン色感光性着色組成物には、例えばC.I. Pigment Blue15:1、15:2、15:4、15:3、15:6、16、又は81等の青色顔料を用いることができる。
【0029】
マゼンタ色フィルタセグメントを形成するためのマゼンタ色感光性着色組成物には、例えばC.I. Pigment Violet 1、19、C.I. Pigment Red144、146、177、169、又は81等の紫色顔料及び赤色顔料を用いることができる。マゼンタ色感光性着色組成物には、イエロー色フィルタセグメントを形成するためのイエロー色感光性着色組成物と同様の黄色顔料を併用することができる。
【0030】
[無機顔料及び染料]
彩度と明度のバランスを取りつつ良好な塗布性、感度、及び現像性等を確保するために、上記有機顔料と組み合わせて、無機顔料を用いることも可能である。無機顔料としては、黄色鉛、亜鉛黄、べんがら(赤色酸化鉄(III))、カドミウム赤、群青、紺青、酸化クロム緑、若しくはコバルト緑等の金属酸化物粉、金属硫化物粉、又は金属粉等を挙げることができる。更に、調色のため、耐熱性を低下させない範囲内で染料を含有させることができる。
【0031】
[顔料の微細化]
本発明に用いる顔料は、ソルトミリング処理を行い微細化することができる。顔料の一次粒子径は、顔料担体中への分散が良好なことから、20nm以上であることが好ましい。また、コントラスト比が高いフィルタセグメントを形成できることから、100nm以下であることが好ましい。特に好ましい範囲は、25〜85nmの範囲である。なお、顔料の一次粒子径は、顔料のTEM(透過型電子顕微鏡)による電子顕微鏡写真から一次粒子の大きさを直接計測する方法で行った。具体的には、個々の顔料の一次粒子の短軸径と長軸径をnm単位で計測し、その平均をその顔料粒子の一次粒子径とした。次に、合計300個の分布を5nm刻みで作成し、5nm刻みの中央値(例えば6nm以上10nm以下の場合は8nm)をそれらの粒子の粒子径として近似し、それぞれの粒子径とその数を基に計算することで個数平均粒子径を算出できる。
【0032】
ソルトミリング処理とは、顔料と水溶性無機塩と水溶性有機溶剤との混合物を、ニーダー、2本ロールミル、3本ロールミル、ボールミル、アトライター、サンドミル等の混練機を用いて、加熱しながら機械的に混練した後、水洗により水溶性無機塩と水溶性有機溶剤を除去する処理である。水溶性無機塩は、破砕助剤として働くものであり、ソルトミリング時に無機塩の硬度の高さを利用して顔料が破砕される。顔料をソルトミリング処理する際の条件を最適化することにより、一次粒子径が非常に微細であり、また、分布の幅がせまく、シャープな粒度分布をもつ顔料を得ることができる。
【0033】
水溶性無機塩としては、塩化ナトリウム、塩化バリウム、塩化カリウム、硫酸ナトリウム等を用いることができるが、価格の点から塩化ナトリウム(食塩)を用いるのが好ましい。水溶性無機塩は、処理効率と生産効率の両面から、顔料の全重量を基準(100重量部)として、50〜2000重量部用いることが好ましく、300〜1000重量部用いることが最も好ましい。
【0034】
水溶性有機溶剤は、顔料及び水溶性無機塩を湿潤する働きをするものであり、水に溶解(混和)し、かつ用いる無機塩を実質的に溶解しないものであれば特に限定されない。ただし、ソルトミリング時に温度が上昇し、溶剤が蒸発し易い状態になるため、安全性の点から、沸点120℃以上の高沸点溶剤が好ましい。例えば、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール、2−(イソペンチルオキシ)エタノール、2−(ヘキシルオキシ)エタノール、ジエチレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコール、トリエチレングリコールモノメチルエーテル、液状のポリエチレングリコール、1−メトキシ−2−プロパノール、1−エトキシ−2−プロパノール、ジプロピレングリコール、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、液状のポリプロピレングリコール等が用いられる。水溶性有機溶剤は、顔料の全重量を基準(100重量部)として、5〜1000重量部用いることが好ましく、50〜500重量部用いることが最も好ましい。
【0035】
顔料をソルトミリング処理する際には、必要に応じて樹脂を添加してもよい。用いられる樹脂の種類は特に限定されず、天然樹脂、変性天然樹脂、合成樹脂、天然樹脂で変性された合成樹脂等を用いることができる。用いられる樹脂は、室温で固体であり、水不溶性であることが好ましく、かつ上記有機溶剤に一部可溶であることがさらに好ましい。樹脂の使用量は、顔料の全重量を基準(100重量部)として、5〜200重量部の範囲であることが好ましい。
【0036】
<樹脂型分散剤(B)>
本発明における樹脂型分散剤(B)は、エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を含むポリオール(b3)中の水酸基と、下記一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させてなる、ビニル重合体部位(b)を有するポリエステル分散剤であって、該ビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgが260K以上であることを特徴とする。
一般式(1):
【化5】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【化6】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO
−、−SO2−、−C(CF32−、式(3):
【化7】

で表される基、または式(4):
【化8】

で表される基である。]
【0037】
また、樹脂型分散剤(B)が、樹脂型分散剤(B)と樹脂(C)の合計重量を基準として、10重量%以上、好ましくは25重量%以上含まれていることが熱フロー性及び顔料分散性の観点から好ましい。また、90重量%以下含まれることが、現像性の観点で好ましい。本発明における樹脂型分散剤(B)は、顔料の分散安定性、および熱フロー性に優れるというだけでなく、樹脂成分中の含有量が多い場合にも、塗膜の耐性や現像性に影響を与えることなく、良好なパターン形状が可能であるという点で優れた効果を有するものである。
【0038】
また、樹脂型分散剤(B)の重量平均分子量は、好ましくは、5,000〜25,000である。重量平均分子量が5,000未満であれば顔料組成物の安定性が低下する場合があり、25,000を超えると樹脂間の相互作用が強くなり、顔料組成物の増粘が起きる場合がある。
【0039】
本発明の樹脂型分散剤(B)の各構成要素について説明する。
[エチレン性不飽和単量体(b1)]
樹脂型分散剤(B)中のビニル重合体部位(b)を構成するエチレン性不飽和単量体としては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリール(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、2−メチル−2−アダマンチル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、オキセタン(メタ)アクリレート等、メトキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、エトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート等のアルコキシポリアルキレングリコール(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリルアミド、およびN,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトン(メタ)アクリルアミド、アクリロイルモルホリン等のN置換型(メタ)アクリルアミド類、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート類、(メタ)アクリロニトリル等のニトリル類、及びこれらの混合物があげられる。
【0040】
また、上記アクリル単量体と併用できる単量体として、スチレン、α−メチルスチレン等のスチレン類、エチルビニルエーテル、n−プロピルビニルエーテル、イソプロピルビニルエーテル、n−ブチルビニルエーテル、イソブチルビニルエーテル等のビニルエーテル類、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等の脂肪酸ビニル類、およびこれらの混合物があげられる。
【0041】
また、カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体を併用することもできる。カルボキシル基含有エチレン性不飽和単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、マレイン酸、フマール酸、クロトン酸などから1種または2種以上を選択することができる。
【0042】
ビニル重合体部位(b)は、塗膜を光硬化する際の重合反応の進行度合いと、その後の熱処理における流動性に影響を与える。塗膜が良好な熱フロー性を発現するためには、該ビニル重合体部位(b)が、熱処理の際に流動しやすい骨格を有することが求められるため、ビニル重合体部位(b)の側鎖は小さな構造をとることが好ましい。そして、露光工程における光硬化を適度に阻害し架橋密度を低下させることによって流動性を保つことも求められるため、ビニル重合体部位(b)は260K以上の高いTgを有することが好ましく、より好ましくは300K以上である。また、現像性の観点から、340K未満のTgを有することがより好ましい。
【0043】
ビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgを260K以上とするために、好ましい構成単位としては、側鎖が小さいという観点からメチルメタアクリレート、又はエチルメタアクリレートを用いることが好ましい。Tgが比較的低いヘキシルメタアクリレートや各種アクリル酸エステルと併用する場合にはメチルメタアクリレート、又はエチルメタアクリレートを、ビニル重合体部位(b)中の構成単位の合計100重量%中、50重量%以上使用することが好ましい。
【0044】
また本発明の樹脂型分散剤(B)は、ポリカルボン酸無水物に由来するカルボキシル基を有するため、現像性にも優れているが、ビニル重合体部位(b)にカルボキシル基を有する構成単位を含むことで、アルカリ可溶性部位として機能し、現像性を向上させることができる。カルボキシル基を有する構成単位を含む場合には、現像性の向上と分散安定性を両立する観点から、ビニル重合体部位(b)中の全構成単位の重量を基準として、30重量%以下が好ましく、より好ましくは20重量%以下である。30重量%を超えると、カルボキシル基同士の相互作用、或いは樹脂組成物中に水酸基が含まれた場合に、これとの相互作用に起因して粘度の上昇を引き起こす場合がある。
【0045】
ビニル重合体(b)の重量平均分子量は、1,000〜10,000が好ましく、より好ましくは2000〜8000、さらに好ましくは2,000〜6,000、特に好ましくは3,000〜5,000である。この部位が顔料担体および溶剤への親和性部位となる。ビニル重合体部位(b)の重量平均分子量が1,000未満では、顔料担体および溶剤に対する親和性部位として、その立体反発の効果がなくなると共に、顔料の凝集を抑えることが困難になる。また、10,000を超えると、分散性の効果自体が低下する場合がある。さらに、分散体の粘度が高くなる場合がある。ビニル重合体(b)は、分子量を上記範囲に調整することが容易であり、かつ、溶剤への親和性も良好である。
【0046】
[分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)]
分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物としては、例えば、
1−メルカプト−1,1−メタンジオール、1−メルカプト−1,1−エタンジオール、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール(チオグリセリン)、2−メルカプト−1,2−プロパンジオール、2−メルカプト−2−メチル−1,3−プロパンジオール、2−メルカプト−2−エチル−1,3−プロパンジオール、1−メルカプト−2,2−プロパンジオール、2−メルカプトエチル−2−メチル−1,3−プロパンジオール、及び2−メルカプトエチル−2−エチル−1,3−プロパンジオール等が挙げられる。
【0047】
[ポリカルボン酸無水物(b4)]
ポリカルボン酸無水物(b4)は、一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を少なくとも含むポリカルボン酸無水物である。
【0048】
樹脂型分散剤(B)の構成部位の中では、一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を少なくとも含むポリカルボン酸無水物(b4)由来のカルボキシル基が顔料吸着基として作用するとともに現像性に影響し、ビニル重合体部位(b)が顔料担体親和基として作用するとともに熱フロー性に影響する。特にポリカルボン酸無水物に芳香族環が含まれるときに分散安定性がもっとも良好となる。
すなわち、ポリカルボン酸無水物(b4)とビニル重合体部位(b)のTgにより、分散安定性と現像性が良好であり、かつ、カラーフィルタ製造後、電極として蒸着されるITO形成過程において、透明電極が断線しないカラーフィルタを得ることが可能となる。
【0049】
一般式(1):
【化9】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
【0050】
一般式(2):
【化10】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO
−、−SO2−、−C(CF32−、式(3):
【化11】

で表される基、または式(4):
【化12】

で表される基である。]
【0051】
[樹脂型分散剤(B)の製造方法]
本発明の樹脂型分散剤(B)は、エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を少なくとも含むポリオール(b3)中の水酸基と、一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させることによって得られる。
【0052】
片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を少なくとも含むポリオール(b3)の製造は、通常、上述したエチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下で、ラジカル重合開始剤を用いて、塊状重合又は溶液重合を行う。
ラジカル重合開始剤は、全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0.0005〜5重量部使用するのが好ましい。反応温度は好ましくは40〜150℃、より好ましくは50〜110℃、反応時間は好ましくは3〜30時間、より好ましくは5〜20時間である。ラジカル重合開始剤としては、例えば、アゾ系化合物、又は有機過酸化物を用いることができる。
【0053】
(ラジカル重合開始剤)
アゾ系化合物の例としては、2,2'−アゾビスイソブチロニトリル、2,2'−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1'−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2'−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2'−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、4,4'−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2'−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、又は2,2'−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]等が挙げられる。
【0054】
有機過酸化物の例としては、
過酸化ベンゾイル、t−ブチルパーベンゾエイト、クメンヒドロパーオキシド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネート、ジ(2−エトキシエチル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシビバレート、(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキシド、ジプロピオニルパーオキシド、又はジアセチルパーオキシド等が挙げられる。
【0055】
これらの重合開始剤は、単独で、若しくは2種類以上組み合わせて用いることができる。
ラジカル重合は、無溶剤又は場合によって溶剤を使用することができる。
【0056】
溶剤としては、例えば、
酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸イソブチル、トルエン、キシレン、アセトン、ヘキサン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、又はジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等が用いられるが、特にこれらに限定されるものではない。これらの重合溶媒は、2種類以上混合して用いてもよい。
【0057】
使用する溶剤量は全エチレン性不飽和単量体100重量部に対して、0〜300重量部が好ましく、更には0〜100重量部が好ましい。使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま、分散剤の製品の一部として使用することもできる。
【0058】
また、本発明においては、ビニル重合体部位(b)がS原子を介して結合したポリオール(b3)以外のその他のポリオールを含んでいてもよく、その例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール類や、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール等のポリエーテルグリコール類等など、従来公知のものが各種用いることができる。
【0059】
ビニル重合体部位(b)がS原子を介して結合したポリオール(b3)中の水酸基に、ポリカルボン酸無水物(b4)を反応させると、樹脂型分散剤(B)が得られる。この時、場合によっては、分子内にチオール基を有さないポリオールと共に反応させても良い。
【0060】
(反応触媒)
上記に使用される触媒としては、公知の触媒を使用することができる。触媒としては3級アミン系化合物が好ましく、例えばトリエチルアミン、トリエチレンジアミン、N,N−ジメチルベンジルアミン、N−メチルモルホリン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン、1,5−ジアザビシクロ−[4.3.0]−5−ノネン等が挙げられる。
【0061】
(反応溶剤)
本発明の樹脂型分散剤(B)は、これまで挙げた原料のみで製造することも可能であるが、高粘度になり反応が不均一になるなどの問題を回避すべく、溶剤を用いるのが好ましい。使用される溶剤としては、特に限定はなく、公知のものを使用できる。例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、トルエン、キシレン、アセトニトリル等が挙げられる。反応に使用した溶媒は、反応終了後、蒸留等の操作により取り除くか、あるいはそのまま次の工程の溶剤として使用したり、製品の一部として使用することもできる。
【0062】
(反応温度)
ビニル重合体部位(b)がS原子を介して結合したポリオール(b3)中の水酸基に、ポリカルボン酸無水物(b4)を反応させる際の反応温度は50℃〜180℃、好ましくは80℃〜140℃の範囲で行う。反応温度が50℃以下では反応速度が遅く、180℃以上ではカルボキシル基と水酸基がエステル化反応してしまい、酸価の減少や、ゲル化を起こしてしまう場合がある。反応の停止は、赤外吸収で酸無水物の吸収がなくなるまで反応させるのが理想であるが、酸価が5〜200の範囲に入ったとき、または、水酸基価が20〜200の範囲に入った時に反応を止めてもよい。
【0063】
(その他の製造方法)
なお、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基とを有する化合物(b2)を含むポリオールと、ポリカルボン酸無水物(b4)を反応させてなるポリエステルの存在下、
ビニル重合体部位(b)を形成するエチレン性不飽和単量体(b1)をラジカル重合する方法によっても、樹脂型分散剤(B)を得ることが可能である。
【0064】
<その他の顔料分散剤>
顔料を分散する際には、顔料分散剤として本発明の特徴である樹脂型分散剤(B)の他に、適宜、顔料誘導体や、その他の樹脂型分散剤、界面活性剤等の顔料分散剤を用いることができる。顔料分散剤は、顔料の分散に優れ、分散後の顔料の再凝集を防止する効果が大きいので、透明性に優れたカラーフィルタが得られる。
【0065】
[顔料誘導体]
顔料分散剤として使用する顔料誘導体は、下記一般式(5)で示される化合物であり、塩基性置換基を有するものと酸性置換基を有するものとがある。
【0066】
X−Y 一般式(5)
(一般式(5)中、Xは、有機顔料残基であり、Yは、塩基性置換基、又は酸性置換基である。)
【0067】
例えば特開昭63−305173号公報、特公昭57−15620号公報、特公昭59−40172号公報、特公昭63−17102号公報、特公平5−9469号公報等に記載されているものを使用でき、これらは単独で又は2種類以上を混合して用いることができる。顔料誘導体の配合量は、最も好ましくは、顔料100重量部に対し、0.1〜30重量部である。顔料誘導体の配合量が、0.1重量部未満であると分散性が悪くなる場合があり、30重量部を超えると耐熱性、耐光性が悪くなる場合がある。
【0068】
一般式(5)中、Xの有機顔料残基を構成する有機顔料としては、ジケトピロロピロール系顔料、アゾ、ジスアゾ、若しくはポリアゾ等のアゾ系顔料、銅フタロシアニン、ハロゲン化銅フタロシアニン、若しくは無金属フタロシアニン等のフタロシアニン系顔料、アミノアントラキノン、ジアミノジアントラキノン、アントラピリミジン、フラバントロン、アントアントロン、インダントロン、ピラントロン、若しくはビオラントロン等のアントラキノン系顔料、又は、キナクリドン系顔料、ジオキサジン系顔料、ペリノン系顔料、ペリレン系顔料、チオインジゴ系顔料、イソインドリン系顔料、イソインドリノン系顔料、キノフタロン系顔料、スレン系顔料、又は金属錯体系顔料等が挙げられる。
【0069】
顔料誘導体の配合量は、分散性向上の点から、着色剤(A)100重量部に対し、好ましくは0.5重量部以上、さらに好ましくは1重量部以上、最も好ましくは3重量部以上である。また、耐熱性、耐光性の観点から、着色剤(A)100重量部に対し、好ましくは40重量部以下、最も好ましくは35重量部以下である。
【0070】
[その他の樹脂型分散剤]
顔料分散剤として使用可能なその他の樹脂型分散剤は、顔料に吸着する性質を有する顔料親和性部位と、顔料担体と相溶性のある部位とを有し、顔料に吸着して顔料の顔料担体への分散を安定化する働きをするものである。
【0071】
本発明の特徴である樹脂型分散剤(B)の他に使用可能な樹脂型分散剤としては、ポリビニル系、ポリウレタン系、ポリエステル系、ポリエーテル系、ホルマリン縮合系、シリコーン系、又はこれらの複合系ポリマーが挙げられる。
【0072】
その他の樹脂型分散剤として具体的には、
スチレン−無水マレイン酸共重合物、オレフィン−無水マレイン酸共重合物、ポリ(メタ)アクリル酸塩、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、(メタ)アクリル酸−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、(メタ)アクリル酸−ポリビニル系マクロマー共重合体、燐酸エステル基含有アクリル樹脂、芳香族カルボキシル基含有アクリル樹脂、ポリスチレンスルホン酸塩、アクリルアミド−(メタ)アクリル酸共重合物、カルボキシメチルセルロース、カルボキシル基を有するポリウレタン、ナフタレンスルホン酸塩のホルマリン縮合物、又はアルギン酸ソーダ等のアニオン系樹脂型顔料分散剤;ポリビニルアルコール、ポリアルキレンポリアミン、ポリアクリルアミド、又はポリマー澱粉等のノニオン系樹脂型顔料分散剤;あるいは、ポリエチレンイミン、アミノアルキル(メタ)アクリレート共重合物、ポリビニルイミダゾリン、アミノ基を有するポリウレタン、ポリ(低級アルキレンイミン)と遊離のカルボキシル基を有するポリエステルとの反応物、又はサトキンサン等のカチオン系樹脂型顔料分散剤が挙げられ、これらを単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0073】
その他の樹脂型分散剤として使用できる市販の樹脂型顔料分散剤としては、例えば、Disperbyk−101、103、107、108、110、111、116、130、140、154、161、162、163、164、165、166、170、171、174、180、181、182、183、184、185、190、2000、2001、2020、2090、2091、2164、若しくは2163、又は、Anti−Terra−U、203、若しくは204、又は、BYK−P104、P104S、若しくは220S、又は、Lactimon、若しくはLactimon−WS、又はBykumen等のビックケミー社製樹脂型顔料分散剤;SOLSPERSE−3000、9000、13240、13650、13940、17000、18000、20000、21000、24000、26000、27000、28000、31845、32000、32500、32600、34750、36600、38500、41000、41090、又は53095等の日本ルーブリゾール社製樹脂型顔料分散剤;あるいは、EFKA−46、47、48、452、LP4008、4009、LP4010、LP4050、LP4055、400、401、402、403、450、451、453、4540、4550、LP4560、120、150、1501、1502、又は1503等のチバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製樹脂型顔料分散剤等が挙げられるが、これらに限定されることなく任意の樹脂型顔料分散剤が使用でき、これらを単独又は2種以上を混合して用いることもできる。
【0074】
[界面活性剤]
顔料分散剤として使用する界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、ステアリン酸ナトリウム、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、又はポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等のアニオン性界面活性剤;ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、又はポリエチレングリコールモノラウレート等のノニオン性界面活性剤;アルキル4級アンモニウム塩、又はそれらのエチレンオキサイド付加物等のカオチン性界面活性剤; アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン;あるいは、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤が挙げられ、これらは単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
【0075】
その他の樹脂型顔料分散剤、界面活性剤を添加する場合には、着色剤(A)100重量部に対し、0.1〜40重量部が好ましく、0.1〜30重量部がより好ましい。これらの配合量が、0.1重量部未満の場合には、添加した効果が得られ難く、配合量が40重量部より多いと、安定性に影響を及ぼすことがある。
【0076】
<樹脂(C)>
樹脂(C)は、着色剤(A)を分散するものであって、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が挙げられる。
樹脂(C)としては、可視光領域の400〜700nmの全波長領域において光透過率が好ましくは80%以上、より好ましくは95%以上の樹脂であることが好ましい。また、酸性基含有エチレン性不飽和化合物を共重合したアルカリ可溶性ビニル系樹脂を用いることが好ましい。また、さらに光感度を向上させるために、エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることもできる。
特に側鎖にエチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂を用いることで、レジスト材の安定性が改善され好ましい。
【0077】
樹脂(C)の重量平均分子量(Mw)は、着色剤(A)を好ましく分散させるためには、10,000〜100,000の範囲が好ましく、より好ましくは10,000〜80,000の範囲である。また数平均分子量(Mn)は5,000〜50,000の範囲が好ましく、Mw/Mnの値は10以下であることが好ましい。
【0078】
着色剤(A)の分散性、現像性、及び耐熱性の観点から、顔料吸着基及び現像時のアルカリ可溶基として働くカルボキシル基、顔料担体及び溶剤に対する親和性基として働く脂肪族基及び芳香族基のバランスが、着色剤(A)の分散性、現像性、さらには耐熱性にとって重要であり、酸価20〜300mgKOH/gの樹脂を用いることが好ましい。酸価が、20mgKOH/g未満では、現像液に対する溶解性が悪く、微細パターン形成するのが困難である。300mgKOH/gを超えると、微細パターンが残らなくなる。
【0079】
樹脂(C)は、成膜性および諸耐性が良好なことから、着色剤(A)100重量部に対し、30重量部以上の量で用いることが好ましく、着色剤濃度が高く、良好な色特性を発現できることから、500重量部以下の量で用いることが好ましい。
【0080】
[熱可塑性樹脂]
熱可塑性樹脂としては、例えば、アクリル樹脂、ブチラール樹脂、スチレン−マレイン酸共重合体、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリ酢酸ビニル、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル樹脂、ビニル系樹脂、アルキッド樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、環化ゴム系樹脂、セルロース類、ポリエチレン(HDPE、LDPE)、ポリブタジエン、およびポリイミド樹脂等が挙げられる。
【0081】
酸性基含有エチレン性不飽和化合物を共重合したビニル系アルカリ可溶性樹脂としては、例えば、カルボキシル基、スルホン基等の酸性基を有する樹脂が挙げられる。アルカリ可溶性樹脂として具体的には、酸性基を有するアクリル樹脂、α−オレフィン/(無水)マレイン酸共重合体、スチレン/スチレンスルホン酸共重合体、エチレン/(メタ)アクリル酸共重合体、又はイソブチレン/(無水)マレイン酸共重合体等が挙げられる。中でも、酸性基を有するアクリル樹脂、およびスチレン/スチレンスルホン酸共重合体から選ばれる少なくとも1種の樹脂、特に酸性基を有するアクリル樹脂は、耐熱性、透明性が高いため、好適に用いられる。
【0082】
エチレン性不飽和二重結合を有する活性エネルギー線硬化性樹脂としては、たとえば以下に示す(i)や(ii)の方法によりエチレン性不飽和二重結合を導入した樹脂が挙げられる。
【0083】
(方法(i))
方法(i)としては、例えば、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物と、他の1種類以上のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖エポキシ基に、エチレン性不飽和二重結合を有する不飽和一塩基酸のカルボキシル基を付加反応させ、更に、生成した水酸基に、多塩基酸無水物を反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0084】
エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物としては、例えば、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、2−グリシドキシエチル(メタ)アクリレート、3,4エポキシブチル(メタ)アクリレート、及び3,4エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレートが挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。次工程の不飽和一塩基酸との反応性の観点で、グリシジル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0085】
不飽和一塩基酸としては、(メタ)アクリル酸、クロトン酸、o−、m−、p−ビニル安息香酸、(メタ)アクリル酸のα位ハロアルキル、アルコキシル、ハロゲン、ニトロ、シアノ置換体等のモノカルボン酸等が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。
【0086】
多塩基酸無水物としては、テトラヒドロ無水フタル酸、無水フタル酸、ヘキサヒドロ無水フタル酸、無水コハク酸、無水マレイン酸等が挙げられ、これらは単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。カルボキシル基の数を増やす等、必要に応じて、トリメリット酸無水物等のトリカルボン酸無水物を用いたり、ピロメリット酸二無水物等のテトラカルボン酸二無水物を用いて、残った無水物基を加水分解すること等もできる。また、多塩基酸無水物として、エチレン性不飽和二重結合を有する、テトラヒドロ無水フタル酸、又は無水マレイン酸を用いると、更にエチレン性不飽和二重結合を増やすことができる。
【0087】
方法(i)の類似の方法として、例えば、カルボキシル基を有するエチレン性不飽和化合物と、他の1種類以上のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖カルボキシル基の一部に、エポキシ基を有するエチレン性不飽和化合物を付加反応させ、エチレン性不飽和二重結合およびカルボキシル基を導入する方法がある。
【0088】
(方法(ii))
方法(ii)としては、水酸基を有するエチレン性不飽和化合物を使用し、他のカルボキシル基を有する不飽和一塩基酸のエチレン性不飽和化合物や、他のエチレン性不飽和化合物とを共重合することによって得られた共重合体の側鎖水酸基に、イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物のイソシアネート基を反応させる方法がある。
【0089】
水酸基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−若しくは3−若しくは4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、又はシクロヘキサンジメタノールモノ(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類が挙げられ、これらは、単独で用いても、2種類以上を併用してもかまわない。また、上記ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、及び/又はブチレンオキシド等を付加重合させたポリエーテルモノ(メタ)アクリレートや、(ポリ)γ−バレロラクトン、(ポリ)ε−カプロラクトン、及び/又は(ポリ)12−ヒドロキシステアリン酸等を付加した(ポリ)エステルモノ(メタ)アクリレートも使用できる。塗膜異物抑制の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、又はグリセロール(メタ)アクリレートが好ましい。
【0090】
イソシアネート基を有するエチレン性不飽和化合物としては、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルイソシアネート、又は1,1−ビス〔(メタ)アクリロイルオキシ〕エチルイソシアネート等が挙げられるが、これらに限定することなく、2種類以上併用することもできる。
【0091】
[熱硬化性樹脂]
熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、ベンゾグアナミン樹脂、ロジン変性マレイン酸樹脂、ロジン変性フマル酸樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、およびフェノール樹脂等が挙げられる。
【0092】
<光重合性単量体>
光重合性単量体は、紫外線や熱などにより硬化して透明樹脂を生成するものであり、単独で、または2種以上混合して用いることができる。光重合性単量体の配合量は、着色剤(A)100重量部に対し、5〜400重量部であることが好ましく、光硬化性および現像性の観点から10〜300重量部であることがより好ましい。
【0093】
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物に用いる光重合性単量体としては、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、β−カルボキシエチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、1, 6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテルジ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、トリシクロデカニル(メタ)アクリレート、エステルアクリレート、メチロール化メラミンの(メタ)アクリル酸エステル、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタンアクリレート等の各種アクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル、(メタ)アクリル酸、スチレン、酢酸ビニル、ヒドロキシエチルビニルエーテル、エチレングリコールジビニルエーテル、ペンタエリスリトールトリビニルエーテル、(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ビニルホルムアミド、アクリロニトリル等が挙げられるが、必ずしもこれらに限定されるものではない。
【0094】
<光重合開始剤>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物には、該組成物を紫外線照射により硬化し、フォトリソグラフィー法によりフィルタセグメントを形成するために、光重合開始剤が添加される。光重合開始剤を使用する際の配合量は、着色剤(A)100重量部に対し、5〜200重量部であることが好ましく、光硬化性及び現像性の観点から10〜150重量部であることがより好ましい。
【0095】
光重合開始剤としては、4−フェノキシジクロロアセトフェノン、4−t−ブチル−ジクロロアセトフェノン、ジエトキシアセトフェノン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタン−1−オン、又は2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン等のアセトフェノン系光重合開始剤;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、又はベンジルジメチルケタール等のベンゾイン系光重合開始剤;ベンゾフェノン、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−フェニルベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、アクリル化ベンゾフェノン、又は4−ベンゾイル−4'−メチルジフェニルサルファイド等のベンゾフェノン系光重合開始剤;チオキサンソン、2−クロルチオキサンソン、2−メチルチオキサンソン、イソプロピルチオキサンソン、又は2,4−ジイソプロピルチオキサンソン等のチオキサンソン系光重合開始剤;2,4,6−トリクロロ−s−トリアジン、2−フェニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−メトキシフェニル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(p−トリル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−ピペロニル−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−スチリル−s−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2−(4−メトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス(トリクロロメチル)−s−トリアジン、2,4−トリクロロメチル−(ピペロニル)−6−トリアジン、又は2,4−トリクロロメチル(4'−メトキシスチリル)−6−トリアジン等のトリアジン系光重合開始剤;ボレート系光重合開始剤; カルバゾール系光重合開始剤; イミダゾール系光重合開始剤;あるいは、オキシムエステル系光重合開始剤等が用いられる。
【0096】
光重合開始剤は、単独あるいは2種以上混合して用いるが、増感剤として、α−アシロキシエステル、アシルフォスフィンオキサイド、メチルフェニルグリオキシレート、ベンジル、9,10−フェナンスレンキノン、カンファーキノン、エチルアンスラキノン、4,4'−ジエチルイソフタロフェノン、3,3',4,4'−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノン、又は4,4'−ジエチルアミノベンゾフェノン等の化合物を併用することもできる。
【0097】
増感剤を使用する際の配合量は、感光性着色組成物中に含まれる光重合開始剤100重量部に対して、3〜60重量部であることが好ましく、光硬化性、及び現像性の観点から5〜50重量部であることがより好ましい。
【0098】
<溶剤>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物には、着色剤(A)を充分に着色剤担体中に分散させ、ガラス基板等の透明基板上に乾燥膜厚が0.2〜5μmとなるように塗布してフィルタセグメントを形成することを容易にするために溶剤を含有させることができる。
【0099】
溶剤としては、例えば1,2,3−トリクロロプロパン、1,3−ブタンジオール、1,3-ブチレングリコール、1,3-ブチレングリコールジアセテート、1,4−ジオキサン、2−ヘプタノン、2−メチル−1,3−プロパンジオール、3,5,5-トリメチル-2-シクロヘキセン-1-オン、3,3,5−トリメチルシクロヘキサノン、3−エトキシプロピオン酸エチル、3−メチル−1,3−ブタンジオール、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール、3−メトキシ−3−メチルブチルアセテート、3-メトキシブタノール、3−メトキシブチルアセテート、4−ヘプタノン、m−キシレン、m−ジエチルベンゼン、m−ジクロロベンゼン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、n−ブチルアルコール、n−ブチルベンゼン、n−プロピルアセテート、N−メチルピロリドン、o−キシレン、o−クロロトルエン、o−ジエチルベンゼン、o−ジクロロベンゼン、p−クロロトルエン、p−ジエチルベンゼン、sec−ブチルベンゼン、tert−ブチルベンゼン、γ―ブチロラクトン、イソブチルアルコール、イソホロン、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、エチレングリコールモノイソプロピルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノターシャリーブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノヘキシルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジイソブチルケトン、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールモノイソプロピルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、シクロヘキサノール、シクロヘキサノールアセテート、シクロヘキサノン、ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノプロピルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、ダイアセトンアルコール、トリアセチン、トリプロピレングリコールモノブチルエーテル、トリプロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールジアセテート、プロピレングリコールフェニルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルプロピオネート、ベンジルアルコール、メチルイソブチルケトン、メチルシクロヘキサノール、酢酸n−アミル、酢酸n−ブチル、酢酸イソアミル、酢酸イソブチル、酢酸プロピル、又は二塩基酸エステル等が挙げられ、これらを単独でもしくは混合して用いることができるが、必ずしもこれらに限定されない。
【0100】
中でも、本発明の樹脂(C)との相溶性が良好なことから、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、又はエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート等のグリコールアセテート類、あるいはシクロヘキサノン等のケトン類を用いることが好ましい。溶剤は、着色組成物を適正な粘度に調節し、目的とする均一な膜厚のフィルタセグメントを形成できることから、着色剤(A)100重量部に対し、800〜4000重量部の量で用いることが好ましい。
【0101】
<レベリング剤>
本発明の着色組成物には、透明基板上での組成物のレベリング性を良くするため、レベリング剤を添加することが好ましい。レベリング剤としては、主鎖にポリエーテル構造又はポリエステル構造を有するジメチルシロキサンが好ましい。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、東レ・ダウコーニング社製FZ−2122、ビックケミー社製BYK−333等が挙げられる。主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンの具体例としては、ビックケミー社製BYK−310、BYK−370等が挙げられる。主鎖にポリエーテル構造を有するジメチルシロキサンと、主鎖にポリエステル構造を有するジメチルシロキサンとは、併用することもできる。レベリング剤の含有量は通常、着色組成物の全重量を基準(100重量%)として、0.003〜0.5重量%である。
【0102】
レベリング剤には、アニオン性、カチオン性、ノニオン性、又は両性の界面活性剤を補助的に加えることも可能である。界面活性剤は、2種以上混合して使用しても構わない。
【0103】
レベリング剤に補助的に加えるアニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のアルカリ塩、アルキルナフタリンスルホン酸ナトリウム、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸ナトリウム、ラウリル硫酸モノエタノールアミン、ラウリル硫酸トリエタノールアミン、ラウリル硫酸アンモニウム、ステアリン酸モノエタノールアミン、ステアリン酸ナトリウム、ラウリル硫酸ナトリウム、スチレン−アクリル酸共重合体のモノエタノールアミン、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
【0104】
レベリング剤に補助的に加えるカオチン性界面活性剤としては、アルキル4級アンモニウム塩やそれらのエチレンオキサイド付加物が挙げられる。
【0105】
レベリング剤に補助的に加えるノニオン性界面活性剤としては、ポリオキシエチレンオレイルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリエチレングリコールモノラウレート等の;アルキルジメチルアミノ酢酸ベタイン等のアルキルベタイン、アルキルイミダゾリン等の両性界面活性剤、また、フッ素系やシリコーン系の界面活性剤が挙げられる。
【0106】
<その他の成分>
本発明の着色組成物には、組成物の経時粘度を安定化させるために貯蔵安定剤を含有させることができる。また、透明基板との密着性を高めるためにシランカップリング剤等の密着向上剤を含有させることもできる。
【0107】
貯蔵安定剤としては、例えば、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、又はジエチルヒドロキシアミン等の4級アンモニウムクロライド類; 乳酸、又はシュウ酸等の有機酸類; 前記有機酸のメチルエステル類; t−ブチルピロカテコール等のカテコール類; トリフェニルホスフィン、テトラエチルホスフィン、又はテトラフェニルフォスフィン等の有機ホスフィン類; あるいは、亜リン酸塩類等が挙げられる。貯蔵安定剤は、着色剤(A)100重量部に対して、0.1〜10重量部の量で用いることができる。
【0108】
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、ビニルエトキシシラン、又はビニルトリメトキシシラン等のビニルシラン類;γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリルシラン類;β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、又はγ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン類;N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)γ−アミノプロピルメチルジエトキシシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、又はN−フェニル−γ−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノシラン類;あるいは、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、又はγ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン等のチオシラン類等が挙げられる。
【0109】
シランカップリング剤は、着色剤(A)100重量部に対して、0.01〜10重量部、好ましくは0.05〜5重量部の量で用いることができる。
【0110】
<感光性着色組成物の製造方法>
本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物は、必要に応じてソルトミリングした顔料等の着色剤(A)と、顔料分散剤(B)と、樹脂(C)と、必要に応じてその他の顔料分散剤や溶剤を混合したものを、三本ロールミル、二本ロールミル、サンドミル、ニーダー、又はアトライター等の各種分散手段を用いて着色剤(A)を樹脂(C)や溶剤に分散し、光重合性単量体、光重合開始剤等を添加して製造することができる。また、2種以上の着色剤を含むカラーフィルタ用感光性着色組成物は、各着色剤(A)を別々に、樹脂(C)や溶剤に分散したものを混合して製造することもできる。
【0111】
着色剤(A)は、カラーフィルタ用感光性着色組成物中(着色剤、樹脂型分散剤、樹脂、光重合開始剤や溶剤など、すべての成分を含む着色組成物)に0.5〜10重量%の割合で含有されることが好ましい。
【0112】
また、本発明のカラーフィルタ用感光性着色組成物は、着色剤(A)の含有量が、カラーフィルタ用感光性着色組成物中の全固形分の合計重量100重量%中、5〜70重量%と多くても画素形状はテーパー形状となり、優れている。しかし、熱処理後の膜厚を2μm以下の薄膜としても良好な分散安定性と熱フロー性を達成するという観点から、25〜55重量%であることがより好ましく、さらに好ましくは30〜50重量%である。その残部は、樹脂型分散剤(B)、樹脂(C)や光重合性単量体から実質的になる。
【0113】
本発明の感光性着色組成物は、遠心分離、焼結フィルタ、メンブレンフィルタ等の手段にて、5μm以上の粗大粒子、好ましくは1μm以上の粗大粒子、更に好ましくは0.5μm以上の粗大粒子及び混入した塵の除去を行うことが好ましい。
【0114】
<<カラーフィルタ>>
つぎに、本発明の感光性着色組成物を用いたカラーフィルタについて説明する。
【0115】
本発明のカラーフィルタは、基板上にフィルタセグメントを具備するものであり、例えば、ブラックマトリックスと、赤色、緑色、及び青色のフィルタセグメントとを備えることができる。前記フィルタセグメントは、スピンコート方式あるいはダイコート方式によって本発明の感光性着色組成物を塗布することにより、基板上に形成される。
【0116】
カラーフィルタの基板としては、可視光に対して透過率の高いソーダ石灰ガラス、低アルカリ硼珪酸ガラス、又は無アルカリアルミノ硼珪酸ガラス等のガラス板、あるいは、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、又はポリエチレンテレフタレート等の樹脂板が用いられる。また、ガラス板や樹脂板の表面には、パネル化後の液晶駆動のために、酸化インジウム、又は酸化錫等からなる透明電極が形成されていてもよい。
【0117】
現像に際しては、アルカリ現像液として炭酸ナトリウム、又は水酸化ナトリウム等の水溶液、あるいは、ジメチルベンジルアミン、トリエタノールアミン等の有機アルカリを用いることができる。また、現像液には、消泡剤や界面活性剤を添加することもできる。
【0118】
現像処理方法としては、シャワー現像法、スプレー現像法、ディップ(浸漬)現像法、又はパドル(液盛り)現像法等を適用することができる。
【0119】
なお、紫外線露光感度を上げるために、上記着色組成物材を塗布乾燥後、水溶性、又はアルカリ可溶性樹脂、例えば、ポリビニルアルコール、又は水溶性アクリル樹脂等を塗布乾燥し、酸素による重合阻害を防止する膜を形成した後、紫外線露光を行うこともできる。
【0120】
透明基板又は反射基板上にフィルタセグメントを形成する前に、あらかじめブラックマトリクスを形成しておくと、液晶表示パネルのコントラストを一層高めることができる。ブラックマトリクスとしては、クロムやクロム/酸化クロムの多層膜、窒化チタニウム等の無機膜や、遮光剤を分散した樹脂膜が用いられるが、これらに限定されない。また、前記の透明基板又は反射基板上に薄膜トランジスター(TFT)をあらかじめ形成しておき、その後にフィルタセグメントを形成することもできる。TFT基板上にフィルタセグメントを形成することにより、液晶表示パネルの開口率を高め、輝度を向上させることができる。
【0121】
カラーフィルタ上には、必要に応じてオーバーコート膜や柱状スペーサー、透明導電膜、液晶配向膜等が形成される。
【0122】
カラーフィルタは、シール剤を用いて対向基板と張り合わせ、シール部に設けられた注入口から液晶を注入したのち注入口を封止し、必要に応じて偏光膜や位相差膜を基板の外側に張り合わせることにより、液晶表示パネルが製造される。
【0123】
かかる液晶表示パネルは、ツイステッド・ネマティック(TN)、スーパー・ツイステッド・ネマティック(STN)、イン・プレーン・スイッチング(IPS)、ヴァーティカリー・アライメント(VA)、オプティカリー・コンベンセンド・ベンド(OCB)等のカラーフィルタを使用してカラー化を行う液晶表示モードに使用することができる。
【実施例】
【0124】
以下に、実施例により本発明をより具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り以下の実施例に限定されるものではない。
なお、実施例及び比較例中、「部」及び「%」とは「重量部」及び「重量%」をそれぞれ意味する。尚、樹脂と樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw)、樹脂型分散剤(B)中のビニル重合体部位(b)のガラス転移温度、および顔料粒子の比表面積の測定方法の測定法は以下の通りである。
【0125】
<樹脂と樹脂型分散剤の重量平均分子量(Mw)>
樹脂の重量平均分子量(Mw)は東ソー株式会社製ゲルパーミエイションクロマトグラフィー「HLC−8120GPC」において、分離カラムを4本直列に繋ぎ、充填剤には順に東ソー株式会社製「TSK−GEL SUPER H5000」、「H4000」、「H3000」、及び「H2000」を用い、移動相にテトラヒドロフランを用いて測定したポリスチレン換算分子量である。
【0126】
<ガラス転移温度>
樹脂型分散剤(B)中のビニル重合体部位(b)のガラス転移温度は、ラジカル重合に使用したエチレン性不飽和単量体(b1)それぞれの単独重合体のガラス転移温度(カタログ値)と重量分率から、下記Foxの式で算出した。
Foxの式
1/Tg=W1/Tg1+W2/Tg2+・・・+Wn/Tgn
W1からWnは、使用している単量体の重量分率を示し、Tg1からTgnは、単量体の単独重合体のガラス転移温度(単位は絶対温度「K」)を示す。
【0127】
<顔料粒子の比表面積の測定方法>
顔料粒子の比表面積は、窒素吸着によるBET法で求めた。なお、測定には自動蒸気吸着量測定装置(日本ベル社製「BELSORP18」)を用いた。
【0128】
実施例に先立ち、実施例および比較例で用いたアクリル樹脂溶液、樹脂型分散剤溶液、微細化顔料、および顔料分散体の製造方法について説明する。
【0129】
<アクリル樹脂溶液の製造方法>
(アクリル樹脂溶液の調製)
温度計、冷却管、窒素ガス導入管、滴下管及び撹拌装置を備えたセパラブル4口フラスコにシクロヘキサノン233部を仕込み、80℃に昇温し、フラスコ内を窒素置換した後、滴下管より、メタクリル酸20部、パラクミルフェノールエチレンオキサイド変性アクリレート(東亜合成社製アロニックスM110)20部、ベンジルメタクリレート25部、メチルメタクリレート20部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート15部、及び2,2'−アゾビスイソブチロニトリル1.33部の混合物を2時間かけて滴下した。滴下終了後、更に3時間反応を継続し、重量平均分子量(Mw)が20000のアクリル樹脂溶液を得た。
【0130】
<樹脂型分散剤溶液の製造方法>
(樹脂型分散剤溶液(B−1)の調整)
ガス導入管、温度計、コンデンサー、攪拌機を備えた反応容器に、メタクリル酸10部、ヘキシルアクリレート50部、メチルメタクリレート40部を仕込み、窒素ガスで置換した。反応容器内を80℃に加熱して、3−メルカプト−1,2−プロパンジオール5.7部に、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.1部をシクロヘキサノン45.7部に溶解した溶液を添加して、10時間反応した。固形分測定により95%が反応したことを確認した。このとき、重量平均分子量が5000であった。次に、ピロメリット酸二無水物9.2部、シクロヘキサノン70部、触媒として1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセン0.20部を追加し、120℃で7時間反応させた。酸価の測定で98%以上の酸無水物がハーフエステル化していることを確認し反応を終了した。反応終了後、不揮発分を50重量%に調製し、重量平均分子量10,000、ビニル重合体部位(d)のガラス転移温度Tgが270Kのポリエステル樹脂型分散剤溶液1(B−1)(シクロヘキサノン溶液)を得た。
【0131】
(樹脂型分散剤溶液(B−2〜19)、比較樹脂型分散剤溶液(BC−1〜3)の調製)
表2に示す組成、配合量に変えた以外は、樹脂型分散剤溶液(B−1)と同様にして樹脂型分散剤溶液((B−2〜19)、比較樹脂型分散剤溶液(BC−1〜3)をそれぞれ調製した。なお、樹脂型分散剤溶液(B−5、6)では、ピロメリット酸二無水物、シクロヘキサノン、1,8−ジアザビシクロ−[5.4.0]−7−ウンデセンとともにその他のポリオールとしてエチレングリコール(EG)2.6部を加えた。重量平均分子量測定結果を表1〜4に示す。
【0132】
【表1】

【0133】
【表2】

【0134】
【表3】

【0135】
【表4】

【0136】
表1〜4中の略語は以下の通り。
エチレン性不飽和単量体(b1)
・MAA:メタクリル酸
・AA:アクリル酸
・CHxMA:シクロヘキシルメタクリレート
・DCPMA:ジシクロペンタニルメタクリレート
・HpA:ヘプチルアクリレート
・HxA:ヘキシルアクリレート
・BA:n−ブチルアクリレート
・2−MTA:2−メトキシエチルアクリレート
・EA:エチルアクリレート
・HxMA:ヘキシルメタクリレート
・MA:メチルアクリレート
・BMA:n−ブチルメタクリレート
・EMA: エチルメタクリレート
・MMA: メチルメタクリレート
【0137】
その他のポリオールおよびポリカルボン酸無水物(b4)
・EG:エチレングリコール
・BPDA:ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・PMA:ピロメリット酸二無水物
・TMA:トリメリット酸無水物
・Mw:重量平均分子量
【0138】
<微細化顔料の製造方法>
(青色顔料1の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6(東洋インキ製造株式会社製「LIONOL BLUE ES」)200部、塩化ナトリウム1400部、およびジエチレングリコール360部をステンレス製1ガロンニーダー(井上製作所製)に仕込み、80℃で6時間混練した。次にこの混練物を8リットルの温水に投入し、80℃に加熱しながら2時間攪拌してスラリー状とし、濾過、水洗を繰り返して塩化ナトリウムおよびジエチレングリコールを除いた後、85℃で一昼夜乾燥し、190部の青色顔料1を得た。
【0139】
(緑色顔料1の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6をハロゲン化銅フタロシアニン緑色顔料C.I.ピグメント グリーン 36(BASF社製「パリオトールエローK0961HD)に代えたこと以外は、青色顔料1の調製と同様の手順で緑色顔料1を得た。
【0140】
(緑色顔料2の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6をハロゲン化亜鉛フタロシアニン緑色顔料C.I.ピグメント グリーン 58に代えたこと以外は、青色顔料1の調製と同様の手順で緑色顔料2を得た。
【0141】
(黄色顔料1の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6を黄色顔料C.I.ピグメント イエロー 150(ランクセス社「E4GN−GT」)に代えたこと以外は、青色顔料1の調製と同様の手順で黄色顔料1を得た。
【0142】
(赤色顔料1の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6をジケトピロロピロール系赤色顔料C.I.ピグメント レッド 254(チバ・ジャパン社製「IRGAZIN RED 2030」)に代えたこと以外は、青色顔料1の調製と同様の手順で黄色顔料1を得た。
【0143】
(赤色顔料2の調製)
フタロシアニン系青色顔料C.I.ピグメント ブルー 15:6をアントラキノン系赤色顔料C.I.ピグメント レッド 177(チバ・ジャパン社製「クロモフタルレッド A2B」)に代えたこと以外は、青色顔料1の調製と同様の手順で赤色顔料2を得た。
【0144】
<顔料分散体の製造方法>
(顔料分散体1(DB−1)の調製)
下記の組成の混合物をディスパーで攪拌混合した後、遊星型ボールミルにてジルコニアビーズを使用して混合・顔料分散を行い、顔料分散体(DB−1)を作製した。

青色顔料1(PB15:6) :11.76部
顔料誘導体1 : 2.24部
式(6)
【化13】

CuPc;銅フタロシアニン残基
樹脂型分散剤溶液(B−1) :11.70部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート :74.30部
【0145】
(顔料分散体(DB−2〜25)の調製)
表5に示す組成、配合量に変えた以外は、顔料分散体1(DB−1)と同様にして顔料分散体2〜25(DB−2〜25)をそれぞれ調製した。
【0146】
(顔料分散体(DB−26〜29)の調製)
下記式(7)に示す顔料誘導体2を用い、表5に示す組成、配合量に変えた以外は、顔料分散体1(DB−1)と同様にして顔料分散体26〜29(DB−26〜29)をそれぞれ調製した。
式(7)
【化14】

【0147】
(顔料分散体(DB−30、31)の調製)
下記式(8)に示す顔料誘導体3を用い、表5に示す組成、配合量に変えた以外は、顔料分散体1(DB−1)と同様にして顔料分散体30、31(DB−30、31)をそれぞれ調製した。
式(8)
【化15】

【0148】
【表5】

【0149】
表5中の略語を以下に示す。
樹脂型分散剤
EFKA−4300;
チバ・スペシャリティ・ケミカルズ社製「EFKA−4300」
Disperbyk−111;
ビックケミー社製「Disperbyk−111」
SOLSPERSE−41000;
ルーブリゾール社製「SOLSPERSE−41000」
溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0150】
[実施例1]
(カラーフィルタ用感光性着色組成物(RB−1)の調製)
下記組成の混合物を均一になるように攪拌混合した後、1μmのフィルタで濾過して、カラーフィルタ用感光性着色組成物(RB−1)を得た。
顔料分散体(DB−1) :23.18部
アクリル樹脂溶液 :13.27部
光重合性単量体 : 3.76部
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート
光重合開始剤 : 1.17部
(2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン)
増感剤 : 0.29部
(2,4−ジエチルチオキサントン)
溶剤 :38.00部
プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
【0151】
[実施例2〜25、比較例1〜9]
(カラーフィルタ用感光性着色組成物(RB−2〜31、RG−1〜4、RR−1、2))
表6に示す組成、配合量に変えた以外は、カラーフィルタ用着色組成物(RB−1)と同様にしてカラーフィルタ用感光性着色組成物(RB−2〜31、RG−1〜4、RR−1、2)をそれぞれ調製した。
【0152】
【表6】

【0153】
表6中の略語を下記に示す。
溶剤;プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
分散剤含有量(%);
樹脂型分散剤(B)+樹脂(C)の合計における樹脂型分散剤(B)の重量%
顔料分(%);
感光性着色組成物の固形分合計100重量%中の、顔料の重量%
【0154】
(分散安定性評価)
作成した感光性着色組成物の25℃における粘度をE型粘度計(TOKI SANGYO社製TUE-20L型)を用い回転数20rpmで測定した。感光性着色組成物の作成当日の粘度を初期粘度(η0:mPa・s)と、40℃の恒温室にて7日間保存した後の粘度(η7:mPa・s)をそれぞれ測定し、分散安定性を下記の基準で評価した。表7に評価結果を示す。
○:η7/η0が1.10未満であり、粘度の上昇がほとんど起こらず分散安定性良好
△:η7/η0が1.10以上1.40未満であり、わずかに粘度の上昇がみられ分散安定性が若干劣る
×:η7/η0が1.40以上であり、粘度の上昇がみられ分散安定性が劣る
【0155】
(現像性評価)
感光性着色組成物を、10cm×10cmの透明ガラス基板上にスピンコート塗布、70℃20分間のプリベークを行い乾燥膜厚約2.0μmの塗膜を形成し、ついで所定のパターンを有するマスクを通して露光量50mJ/cm2で紫外線露光し、アルカリ現像液にて、未露光部のパターン全体が溶解する時間(T1)を算出し、T1の1.5倍の時間まで現像を延長し現像終点とした。表7に評価結果を示す。
○:T1が60sec未満であり、かつパターン剥離のないもの
△:T1が60sec以上80sec未満、又はパターン剥離が全体の10%未満のもの
×:T1が80sec以上、又はパターン剥離が全体の10%以上であるもの
【0156】
(パターン形状評価)
感光性着色組成物を、10cm×10cmの透明ガラス基板上にスピンコート塗布、70℃20分間のプリベークを行い乾燥膜厚約2.0μmの塗膜を形成し、ついで所定のパターンを有するマスクを通して露光量50mJ/cm2で紫外線露光し、アルカリ現像液にて現像した後、イオン交換水で洗浄、風乾して基板上に各色フィルタセグメントを形成した。
得られた各フィルタセグメントをガラスカッターにて半分(5cm×10cm)にカットして2ピースとし、内1つは230℃で20分,高温オーブンにてポストベイクし、「ポストベイク後」としてパターン形状評価を行った。
残り1つのフィルタセグメントは、ポストベイクをせずに、「現像後」としてパターン形状評価を行った。
【0157】
各フィルタセグメントを1cm角にガラスカットし、日立製作所製スパッタ装置(E−1030)にてPt/Pd蒸着を行った後、日立製作所製SEM(S−4300)にて、加速電圧15kV、観察倍率10000倍にてフィルタセグメントの断面パターン形状を観察し、ガラス基板とフィルタセグメントの断面のエッジ部分とでなす角度(θ度)により4段階で評価した。表7に評価結果を示す。
【0158】
◎:θ<20度、順テーパー形状
○:20度≦θ≦45度、順テーパー形状
△:45度<θ≦80度、順テーパー形状
×:θ>80度、シャープな順テーパー〜オーバーハング
【0159】
熱フロー性の評価は、現像後の断面形状とポストベイク後の断面形状から、以下の4段階で評価した。
◎:現像後の断面形状が×であり、ポストベイク後の断面形状が◎
○:現像後の断面形状が×であり、ポストベイク後の断面形状が○
△:現像後の断面形状が×であり、ポストベイク後の断面形状が△
×:現像後の断面形状が×であり、ポストベイク後の断面形状が×
【0160】
【表7】

【0161】
本発明の特徴である樹脂型分散剤(B)を含む感光性着色組成物は、いずれも粘度安定性に優れており、さらに現像性、および熱フロー性が良好で、フィルタセグメントの断面形状が順テーパーであった。
すなわち、いずれも現像後のパターン形状はオーバーハングであり、形状不良であったが、本発明の感光性樹脂組成物は、熱フロー性が優れており、ポストベイク後に、パターン形状が順テーパーであった。中でもビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgが、より好ましい範囲である300K以上の樹脂型分散剤(B)を用いた実施例10、15〜19は特に熱フロー性が優れており、ポストベイク後の形状が極めて良好であった。
【0162】
また、同じ樹脂型分散剤を用いた実施例1、21、22を比較すると、樹脂型分散剤量が多いほど、熱フロー性が優れた結果であった。
【0163】
また、樹脂型分散剤(B)の重量平均分子量(Mw)が5,000〜25,000という範囲を見たす場合には、分子量が範囲外のものに比べて、流動性の良化に起因して熱フロー性が良くなる結果となり、また現像性も良い結果となった。
【0164】
また、実施例1〜4、6〜11、13〜25は、粘度変化が小さく分散安定性がより良好であった。このように、樹脂型分散剤(B)のビニル重合体部位(b)にカルボキシル基を有する構成単位を特定量含むことで、現像性が向上し、分散安定性にも優れた感光性樹脂組成物が得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
着色剤(A)、樹脂型分散剤(B)、樹脂(C)、光重合性単量体、光重合開始剤、及び溶剤を含有してなるカラーフィルタ用感光性着色組成物において、
該樹脂型分散剤(B)が、
エチレン性不飽和単量体(b1)を、分子内に2つの水酸基と1つのチオール基を有する化合物(b2)の存在下でラジカル重合してなる、片末端に2つの水酸基を有するビニル重合体を含むポリオール(b3)中の水酸基と、下記一般式(1)または一般式(2)で表わされるテトラカルボン酸二無水物を含むポリカルボン酸無水物(b4)中の酸無水物基とを反応させてなる、ビニル重合体部位(b)を有するポリエステル分散剤であって、
該ビニル重合体部位(b)のガラス転移温度Tgが260K以上であることを特徴とするカラーフィルタ用感光性着色組成物。
一般式(1):
【化1】

[一般式(1)中、kは1または2である。]
一般式(2):
【化2】

[一般式(2)中、Q1は、直接結合、−O−、−CO−、−COOCH2CH2OCO
−、−SO2−、−C(CF32−、式(3):
【化3】

で表される基、または式(4):
【化4】

で表される基である。]
【請求項2】
樹脂型分散剤(B)が、樹脂型分散剤(B)と樹脂(C)との合計を基準として、25重量%以上含まれていることを特徴とする請求項1記載のカラーフィルタ用感光性着色組成物。
【請求項3】
着色剤(A)の含有量が、カラーフィルタ用感光性着色組成物中の固形分100重量%中、25〜55重量%であることを特徴とする請求項1または2に記載のカラーフィルタ用感光性着色組成物。
【請求項4】
樹脂型分散剤(B)の重量平均分子量(Mw)が、5,000〜25,000であることを特徴とする請求項1〜3いずれか1項に記載のカラーフィルタ用感光性着色組成物。
【請求項5】
基板上に、請求項1〜4いずれか1項に記載のカラーフィルタ用感光性着色組成物を用いて形成されたフィルタセグメントを具備することを特徴とするカラーフィルタ。

【公開番号】特開2012−93438(P2012−93438A)
【公開日】平成24年5月17日(2012.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−238678(P2010−238678)
【出願日】平成22年10月25日(2010.10.25)
【出願人】(000222118)東洋インキSCホールディングス株式会社 (2,229)
【Fターム(参考)】