説明

カラー画像評価システム

【課題】 表示装置に表示される色をより正確に表色値として表すことが可能なカラー画像評価システムを提供する。
【解決手段】 カラー画像評価システムは、第1の表色値に基づく入力信号を表示装置に出力する手段と、入力信号に基づいて表示装置の表示部から出力される光を分光して該光のスペクトルを生成する分光手段と、分光手段によって生成されたスペクトルから、第1の表色値と同じ表色系の第2の表色値を生成する手段と、第1の表色値及び第2の表色値を表示ユニットに表示させる手段と、を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示装置に表示される色を評価するためのカラー画像評価システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
表示装置に表示される色を評価するためのカラー画像評価システムとしては、特許文献1及び特許文献2に開示されたものがある。これら文献に開示されたカラー画像評価システムは、表示装置に表示された色を計測するために、測色計を用いている。測色計は、表示装置が発する光をRGBの三つの色フィルタにて分離し、これらフィルタを経由した光を受光素子で検出するものである。
【特許文献1】特開2002−209230号公報
【特許文献2】特開2002−218261号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、測色計を用いるシステムでは、色フィルタ自体の感度特性を最適にコントロールすることが困難である。例えば、XYZ表色系の表色値を得るためには、Xでは青の領域と赤の領域の双方に所定の感度を有するフィルタを使用する必要があるが、そのようなフィルタの作成は困難であり、ソフトウェアや回路による擬似的な補正が必要となる。また、例えば、RGB表色系では、特に、青の領域に負の値があり、これを実現するフィルタを用いることは不可能であり、ソフトウェアや回路による擬似的な補正が必要となるのが現状である。
【0004】
そこで、本発明は、表示装置に表示される色をより正確に表色値として表すことが可能なカラー画像評価システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明のカラー画像評価システムは、第1の表色値に基づく入力信号を表示装置に出力する手段と、入力信号に基づいて表示装置の表示部から出力される光を分光して当該光のスペクトルを生成する分光手段と、分光手段によって生成されたスペクトルから、第1の表色値と同じ表色系の第2の表色値を生成する手段と、第1の表色値及び第2の表色値を表示ユニットに表示させる手段と、を備えている。
【0006】
このカラー画像評価システムは、第1の表色値に基づいて表示装置が表示する色を、分光によって得られるスペクトルに基づいて第2の表色値としている。したがって、本カラー画像評価システムは、色フィルタの特性に影響されず、表示装置が表示する色をより正確に表色値として得ることができる。また、このように得られた第2の表色値とその原信号である第1の表色値とが同じ表示ユニットに表示されるので、原信号の表色値と表示装置に表示された色の表色値との差異が、より正確、且つ、理解し易いように提示される。
【0007】
本カラー画像評価システムでは、表示させる手段が、表示ユニットに、分光手段によって生成されたスペクトルを更に表示させることが好適である。表示装置には、液晶、プラズマ、FED、有機EL等、性格の異なるデバイスがある。これらデバイスの蛍光体や発光方式は異なっているので、ある強度でXYZといった表色値が同じような値をとっても、強度によってスペクトルの形が異なり微妙な色の変化が生じることがある。この構成のカラー画像評価システムによれば、表色値に加えてスペクトルも表示されるので、強度によるスペクトルの変化についても、情報を得ることが可能である。
【0008】
本カラー画像評価システムでは、分光手段が、表示装置の表示部から出力される光を受ける端面を有する光ファイバと、光ファイバの端面と表示装置との間の距離を規定するためのアダプタと、光ファイバから出力される光を分光する分光素子と、分光素子によって分光された光を波長成分ごとに受光する複数の受光素子と、を有することが好適である。この構成によれば、アダプタによって光ファイバ端面と表示装置の間の距離を略一定に保つことができるので、安定したスペクトルの取得が可能となる。
【0009】
本カラー画像評価システムは、表示装置において入力信号に対するマトリクス変換によって生成される信号が表示部に与えられる場合に、第1の表色値と第2の表色値との誤差を最小化するよう、マトリクス変換用のマトリクスを修正するための修正マトリクスを算出する手段を更に備えることが好適である。この構成によれば、第2の表色値を第1の表色値に近づけるよう、入力信号に対するマトリクス変換を修正するための修正マトリクスが得られる。この修正マトリクスは、分光によって得られたスペクトルに基づく第2の表色値を用いて算出されるものであるので、表示装置が表示する色を原信号により正確に近づけることが可能となる。
【0010】
本カラー画像評評価システムでは、算出する手段が、最小自乗推定によって、第1の表色値と第2の表色値との誤差を最小化するよう、修正マトリクスを算出してもよい。また、算出する手段が、第1の表色値と第2の表色値との誤差を最小化するようニューラルネットワークを学習させ、該学習させたニューラルネットワークにおける結合荷重に基づいて、修正マトリクスを算出してもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、表示装置に表示される色をより正確に表色値として表すことが可能なカラー画像評価システムが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0013】
図1は、一実施形態に係るカラー画像評価システムを概略的に示す図である。図1に示すカラー画像評価システム10は、入力部12、変換部14、カラー入力信号発生部16、分光ユニット18、変換部20、表示制御部22、表示ユニット24、及び、算出部26を備えている。
【0014】
入力部12は、例えば、キーボードといった入力デバイスから構成されるものであり、所望の第1の表色値を、カラー画像評価システム10に入力するためのものである。なお、第1の表色値は、XYZ表色系、L表色系、RGB表色系等の任意の表色系における表色値とし得る。以下、本例では、第1の表色値を、XYZ表色系の表色値であるものとする。
【0015】
変換部14は、入力部12によって入力された第1の表色値(X1,Y1,Z1)を、カラー入力信号発生部16への入力形式に変換する。例えば、カラー入力信号発生部16への信号の入力形式がYPbPrである場合には、変換部14は、第1の表色値(X1,Y1,Z1)をYPbPr信号に変換して、当該信号を、カラー入力信号発生部16へ出力する。なお、カラー入力信号発生部16への信号の入力形式は任意の形式であってよい。例えば、カラー画像評価システム10は、変換部14を備えずに、第1の表色値(X1,Y1,Z1)を、カラー入力信号発生部16にそのまま出力してもよい。
【0016】
カラー入力信号発生部16は、変換部14からの信号を受けて、入力信号を表示装置30に出力する。即ち、カラー入力信号発生部16は、第1の表色値(X1,Y1,Z1)に基づく入力信号を、表示装置30に出力する。なお、この入力信号は、表示装置30への入力形式に応じて、任意の形式の信号とし得る。以下、本例では、表示装置30への入力信号は、第1の表色値であるXYZ表色系の表色値から得られたYPbPr信号であるものとする。
【0017】
表示装置30では、カラー入力信号発生部16からの入力信号が、表示部30aへの信号入力形式に変換部30bによって変換される。そして、表示部30aが、変換部30bによって変換された信号を受けて、色を表示する。なお、変換部30bには、表示部30aが受け入れる信号形態に応じて、任意の変換を適用することができる。例えば、表示装置30への入力信号がYPbPr信号であり、表示部30aがRGB信号を受け入れる場合には、変換部30bは、YPbPr信号からRGB信号へのマトリクス変換を行う。また、表示部30aは、任意の形態の表示ユニットであることができる。例えば、表示部30aには、液晶ユニット、有機液晶ユニット、プラズマディスプレイユニット、等を用いることができる。
【0018】
分光ユニット18は、表示部30aによって発せられる光を受けて、当該光のスペクトルを生成する。図2は、一実施形態に係る分光ユニットを概略的に示す図である。図2に示す分光ユニット18は、光ファイバ18a、アダプタ18b、分光素子18c、及び、ラインセンサ18dを有している。
【0019】
図2に示す分光ユニット18では、光ファイバ18aの一端面18eに表示部30aが発する光が結合する。光ファイバ18aの一端面18eに結合した光は、光ファイバ18aを経て、当該光ファイバ18aの他端面18fから出射する。
【0020】
光ファイバ18aの他端面18fから出射した光は、分光素子18cに入射する。分光素子18cは、本例では、反射型回折格子であり、入射する光を波長によって異なる方向に反射する。したがって、他端面18fから出射して分光素子18cに入射した光は、波長によって異なる方向へと向かう。なお、分光素子18cは、透過型回折格子、又は、プリズム等の波長分散を用いる素子であってもよい。
【0021】
分光素子18cによって波長ごとに異なる方向に向けられた光は、ラインセンサ18dによって受光される。ラインセンサ18dは、複数の受光素子を含んでいる。受光素子としては、CCD、CMOS、又はフォトダイオードを用いることができる。ラインセンサ18dの複数の受光素子は、異なる波長の光を受光し、受光した光の強度に応じた信号を出力する。したがって、ラインセンサ18dは、表示部30aが発する光のスペクトルを出力する。
【0022】
アダプタ18bは、光ファイバ18aの一端面18eと表示部30aとの間の距離を規定するための部材である。アダプタ18bは、円筒形もしくはコーン状の筒形状を有しており、内部に光ファイバ18aの一端面18eを含む部分を保持している。アダプタ18bには黒塗り等の加工が施されており、外部からの光がアダプタ18bの内部に入射しないようになっている。かかるアダプタ18bによれば、光ファイバ18aの一端面18eと表示部30aとの距離を安定して維持することが可能であり、また、光ファイバ18aへのノイズ光の入射も防ぐことが可能である。したがって、アダプタ18bは、測定の安定性に寄与している。
【0023】
ラインセンサ18dからの出力、即ち、分光ユニット18から出力されるスペクトルは、変換部20及び表示制御部22に入力される。変換部20は、分光ユニット18からのスペクトルを用いて第2の表色値を生成する。この第2の表色値は、第1の表色値に基づく入力信号を受けた表示部30aが表示する色を表色値としたものであり、第1の表色値と同じ表色系の表色値である。したがって、以下、本例では、第2の表色値は、XYZ表色系の表色値とする。
【0024】
変換部20は、以下の(1)式に基づいて、スペクトルS(λ)から第2の表色値(X2,Y2,Z2)を生成する。ここで、(1)式中、X2、Y2、及びZ2は、第2の表色値の各成分を示しており、λは波長を示しており、Kは定数である。また、x(λ)、y(λ)、及びz(λ)は、XYZ表色系におけるX成分、Y成分、及びZ成分それぞれの等色関数である。
【数1】

【0025】
(1)式に示すように、変換部20は、分光ユニット18からのスペクトルと等色関数との積を人間の感じる波長領域で積分することによって、第2の表色値(X2,Y2,Z2)を得ている。この第2の表色値は、表示制御部22に出力される。
【0026】
表示制御部22は、入力部12からの第1の表色値(X1,Y1,Z1)、及び、変換部20からの第2の表色値(X2,Y2,Z2)を表示ユニット24に表示させる。図3は、一実施形態に係る表示ユニットの表示例を示す図である。図3に示すように、本例では、第1の表色値(X1,Y1,Z1)及び第2の表色値(X2,Y2,Z2)は、XYZ表色系の色度図上に表示される。この表示のために、本例では、表示制御部22は、第1の表色値(X1,Y1,Z1)を、x1=X1/(X1+Y1+Z1)、y1=Y1/(X1+Y1+Z1)、z1=Z1/(X1+Y1+Z1)の演算により規格化し、x1及びy1を、第1の表色値として表示ユニット24に表示させている。図3における点Aは、色度図上の第1の表色値を示している。
【0027】
また、表示制御部22は、第2の表色値(X2,Y2,Z2)を、x2=X2/(X2+Y2+Z2)、y2=Y2/(X2+Y2+Z2)、z2=Z2/(X2+Y2+Z2)の演算により規格化し、x2及びy2を、第2の表色値として表示ユニット24に表示させる。図3における点Bは、色度図上の第2の表色値を示している。
【0028】
このように、カラー画像評価システム10は、スペクトル解析の結果得られる第2の表色値を表示しているので、より正確な表色値を提供可能である。さらに、カラー画像評価システム10では、かかる第2の表色値が、その原信号である第1の表色値と共に表示されるので、原信号の表色値と表示装置30に表示された色の表色値との差異が、より正確、且つ、理解し易いように提示される。
【0029】
表示制御部22は、図3に示すように、更に、分光ユニット18から得たスペクトルも表示ユニット24に表示させる。これによって、カラー画像評価システム10は、原信号の強度の差異によって生じる表示部30aが発する光のスペクトルの変化や表色値がたとえ同じであっても人間の感じる疲れ易さや違和感といった生理的な感覚情報と光のスペクトルの関係についても、情報を提供することが可能である。
【0030】
なお、表示ユニット24には、液書ディスプレイユニット、プラズマディスプレイユニットといった任意の表示ユニットを採用し得る。また、表示ユニット24には、第1の表色値、及び第2の表色値が、数値として表示されてもよい。
【0031】
本カラー画像評価システム10は、更に、算出部26によって、表示装置30の変換部30bによるマトリクス変換用のマトリクスを修正するための修正マトリクスを算出することが可能である。この算出部26によって算出された修正マトリクスを用いることで、表示装置30に原信号に近い色を表示させることが可能となる。以下、算出部26について詳述する。
【0032】
算出部26は、入力部12から第1の表色値を受け、また、変換部20から第2の表色値を受ける。算出部26は、第2の表色値が第1の表色値に近くなるように、修正マトリクスを算出する。即ち、算出部26は、第1の表色値と第2の表色値との誤差が最小になるように、修正マトリクスを算出する。本例では、変換部30bによる変換が、YPbPr信号からRGB信号へのマトリクス変換であるので、算出部26は、このマトリクス変換用のマトリクスを修正するための修正マトリクスを算出する。
【0033】
算出部26は、第1の表色値と第2の表色値との誤差を最小にする最小自乗推定により、修正マトリクスを算出することができる。そのために、算出部26は、三つ以上の異なる色に対して第2の表色値を得て、これら第2の表色値をRGB値に変換する。そして、算出部26は、得られたRGB値と、第1の表色値を変換して得られるRGB値との誤差を最小化するよう最小自乗推定を行って、修正マトリクスを得ることができる。このように修正マトリクスを算出することによって、表示装置30の変換部30bにおけるマトリクス変換用のマトリクスを修正することが可能となり、表示装置30に原信号に近い色を表示させることが可能となる。
【0034】
なお、算出部26は、第1の表色値と第2の表色値との誤差を最小にするよう修正マトリクスを得ることが可能な手法であれば、最小自乗推定以外の任意の手法を用いることもができる。
【0035】
例えば、算出部26は、ニューラルネットワークの学習によって、修正マトリクスを得ることができる。図4は、一実施形態に係る算出部が用いるニューラルネットワークを概略的に示す図である。図4に示すように、算出部26は、3層の階層型ニューラルネットワークNを用いることができる。このニューラルネットワークNでは、第1層のニューロンへの入力は、第1の表色値に基づくYPbPr信号であり、第3層の出力はRGB信号である。
【0036】
算出部26は、第1の表色値に基づくYPbPr信号が入力されたニューラルネットワークNの出力RGB信号と、第2の表色値に基づくRGB信号との間の誤差を用いて、誤差逆伝播法により、ニューラルネットワークNを学習させる。即ち、算出部26は、この誤差を用いる誤差逆伝播法によって、各ニューロンへの結線の結合荷重ωを変更する。かかる結合荷重ωを用いることによって、算出部26は、修正マトリクスを得ることができる。
【0037】
なお、図4に示すニューラルネットワークは3層のものであり、また、中間層は五つのニューロンを有しているが、層数及び中間層のニューロンの数は、任意の個数とすることができる。例えば、YPbPr信号をRGB信号に変換するマトリクスは3×3の要素を有しているが、層数及び中間層のニューロンの数を変化させることによって、非線形の変換を実現することも可能である。表示装置が発する色と原信号との間の関係は非線形であることもあるので、非線形の変換によれば、かかる変換も修正することが可能である。
【0038】
また、変換部30bのマトリクスは、種々の方法で変更し得る。例えば、表示装置30が、マトリクスを変更するための入力ユニットを有している場合には、当該入力ユニットを用いて手動で、既存のマトリクスを修正マトリクスで置き換えてもよい。また、表示装置30が、修正マトリクスを受け入れる入力端子を有している場合には、算出部26によって算出された修正マトリクスが表示装置30の当該入力端子に入力されてもよい。
【0039】
以下、カラー画像評価システム10の動作について説明する。まず、入力部12が、所望の第1の表色値を受けて、これを変換部14に出力する。次いで、変換部14が、第1の表色値をYPbPr信号に変換してカラー入力信号発生部16に出力する。次いで、カラー入力信号発生部16が、YPbPr信号を表示装置30の変換部30bに提供する。なお、変換部14を経由せずに、入力部12から第1の表色値をカラー入力信号発生部16にそのまま出力してもよい。この場合には、カラー入力信号発生部16が、第1の表色値をYPbPr信号に変換する。
【0040】
次に、変換部30bによって、YPbPr信号がRGB信号にマトリクス変換され、当該RGB信号を受けた表示部30aによって、第1の表色値に基づく色が表示される。そして、分光ユニット18が、表示部30aによって発せられる光を分光して、当該光のスペクトルを出力する。
【0041】
次いで、変換部20が、分光ユニット18からのスペクトルを用いて、第2の表色値を算出する。そして、表示制御部22が、入力部12からの第1の表色値と変換部20からの第2の表色値とを、表示ユニット24に表示させる。また、同時に、表示制御部22が、分光ユニット18からのスペクトルを、表示ユニット24に表示させる。
【0042】
また、算出部26が、異なる第1の表色値に対して得られた複数の第2の表色値を用い、第1の表色値と第2の表色値との誤差が最小になるように、変換部30bのマトリクス変換用の修正マトリクスを算出する。
【0043】
以上の動作によって、カラー画像評価システム10は、第1の表色値と、当該第1の表色値に基づいて評価対象の表示装置30の表示部30aに表示される色の表色値(第2の表色値)とを、比較可能な態様で表示ユニット24に表示することができる。また、カラー画像評価システム10は、当該色、即ち表示部30aが発する光のスペクトルも、同時に表示することができる。さらに、カラー画像評価システム10は、評価対象の表示装置30の変換部30bにおけるマトリクス変換用の修正マトリクスも算出することが可能である。
【0044】
図5〜図8は、一実施形態に係るカラー画像評価システムによって表示されるスペクトルの例を示す図である。図5〜図7は、評価対象の表示装置30としてのある液晶ディスプレイから発せられる光のスペクトルを示している。図5、6、7はそれぞれ、当該液晶ディスプレイにxyz値として(0.64,0.33,0.03),(0.3,0.6,0.1),(0.09,0.06,0.85)を与えた場合、即ち、液晶ディスプレイにR、G、Bを表示させた場合のスペクトルを示している。また、図8は、ある有機ELディスプレイのRに対するスペクトルを示している。
【0045】
図5〜図7に示すように、評価対象の液晶ディスプレイにR,G,Bを表示させた場合には、比較的鋭い輝線の集合と蛍光体のスペクトルが観測され、バックライトの発光パターンが略そのまま色情報として与えられていることがわかる。なお、液晶ディスプレイにR、G、Bをそれぞれ表示させた場合のxyz値は(0.603,0.350,0.047),(0.283,0.616,0.101),(0.147,0.071,0.782)であった。
【0046】
また、図8に示すように、有機ELディスプレイにRを表示させたときに得られるスペクトルには、輝線はなく、蛍光体のスペクトルであることがわかる。この時のxyz値は(0.596,0.340.0.064)であった。
【0047】
このように、表示装置30として用いられるディスプレイでは、与えた原信号と観測される色との間にずれが生じている。このようなずれが、第1の表色値と第2の表色値の比較表示、及び、スペクトルの表示を提供することによって、如何なる性質のもので、回路構成に起因するものか、又は、ディスプレイ自体が有する性質に起因するものであるのかを、効率よく分析することが可能となる。
【0048】
以下、カラー画像評価システム10のハードウェア構成について説明する。カラー画像評価システム10は、単一の筐体内に構成された一つの装置であってもよく、また、上述した各部が、別個の装置として実現されて電気的に接続されたシステムであってもよい。
【0049】
例えば、入力部12、変換部14、算出部26、変換部20、表示制御部22、及び表示ユニット24を、パーソナルコンピュータといった計算機32によって構成し(図1参照)、カラー入力信号発生部16及び分光ユニット18を、当該計算機32に接続された別個の装置とすることができる。この場合には、変換部14、算出部26、変換部20、及び、表示制御部22の機能は、計算機32のメモリ(記憶手段)に記憶されたプログラムに従って動作するプロセッサによって実現される。このとき、プロセッサは、各処理におけるデータの一時的記憶のために、メモリを利用することもできる。
【0050】
また、カラー画像評価システム10の各部は、専用回路で構成されていてもよく、一以上の機能を実現する回路が単一の基板上に形成されていてもよい。
【0051】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記した実施形態に限定されることなく種々の変形が可能である。例えば、算出部26によって算出される修正マトリクスは、変換部30bのマトリクス変換用のマトリクスを置換するマトリクスではなく、変換用のマトリクスと積演算されることによって当該マトリクスを修正するマトリクスであってもよい。この場合には、変換部30bは、算出部26によって算出されたマトリクスと既存の変換用のマトリクスとの積演算によって得られるマトリクスを用いて、入力信号を表示部30aに与える形式の信号に変換する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】一実施形態に係るカラー画像評価システムを概略的に示す図である
【図2】一実施形態に係る分光ユニットを概略的に示す図である。
【図3】一実施形態に係る表示ユニットの表示例を示す図である。
【図4】一実施形態に係る算出部が用いるニューラルネットワークを概略的に示す図である。
【図5】一実施形態に係るカラー画像評価システムによって表示されるスペクトルの例を示す図である。
【図6】一実施形態に係るカラー画像評価システムによって表示されるスペクトルの例を示す図である。
【図7】一実施形態に係るカラー画像評価システムによって表示されるスペクトルの例を示す図である。
【図8】一実施形態に係るカラー画像評価システムによって表示されるスペクトルの例を示す図である。
【符号の説明】
【0053】
10…カラー画像評価システム、12…入力部、14…変換部、16…カラー入力信号発生部、18…分光ユニット、18a…光ファイバ、18b…アダプタ、18c…分光素子、18d…ラインセンサ、18e…光ファイバの一端面、18f…光ファイバの他端面、20…変換部、22…表示制御部、24…表示ユニット、26…算出部、30…表示装置、30a…表示部、30b…変換部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の表色値に基づく入力信号を表示装置に出力する手段と、
前記入力信号に基づいて前記表示装置の表示部から出力される光を分光して該光のスペクトルを生成する分光手段と、
前記スペクトルから、前記第1の表色値と同じ表色系の第2の表色値を生成する手段と、
前記第1の表色値及び前記第2の表色値を表示ユニットに表示させる手段と、
を備えるカラー画像評価システム。
【請求項2】
前記表示させる手段は、前記表示ユニットに、前記スペクトルを更に表示させる、請求項1に記載のカラー画像評価システム。
【請求項3】
前記分光手段は、少なくとも、
前記表示装置の前記表示部から出力される前記光を受ける端面を有する光ファイバと、
前記光ファイバの前記端面と前記表示装置との間の距離を規定するためのアダプタと、
前記光ファイバから出力される光を分光する分光素子と、
前記分光素子によって分光された光を波長成分ごとに受光する複数の受光素子と、
を有する、請求項1又は2に記載のカラー画像評価システム。
【請求項4】
前記表示装置では、前記入力信号に対するマトリクス変換によって生成される信号が前記表示部に与えられ、
該カラー画像評価システムは、前記第1の表色値と前記第2の表色値との誤差を最小化するよう前記マトリクス変換用のマトリクスを修正するための修正マトリクスを算出する手段を更に備える、
請求項1〜3の何れか一項に記載のカラー画像評価システム。
【請求項5】
前記算出する手段は、最小自乗推定によって、前記第1の表色値と前記第2の表色値との誤差を最小化するよう前記修正マトリクスを算出する、請求項4に記載のカラー画像評価システム。
【請求項6】
前記算出する手段は、前記第1の表色値と前記第2の表色値との誤差を最小化するようニューラルネットワークを学習させ、該学習させたニューラルネットワークにおける結合荷重に基づいて、前記修正マトリクスを算出する、
請求項4に記載のカラー画像評価システム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−14602(P2010−14602A)
【公開日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−175910(P2008−175910)
【出願日】平成20年7月4日(2008.7.4)
【出願人】(000101330)アストロデザイン株式会社 (28)
【Fターム(参考)】