説明

カラー表示装置及びその製造方法

【課題】本発明の課題は、高精細表示が可能で且つ製造の容易なカラー表示装置及びその製造方法を提供することである。
【解決手段】基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成されるカラー表示装置であって、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えていることを特徴とするカラー表示装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子を用いたカラー表示装置及びその製造方法に関する。特にカラー表示装置及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブラウン管(CRT)に替わって薄型で軽量なフラットパネルディスプレイが広い分野で用いられ、その用途を延ばしてきている。これは、インターネットを核としたサービス網に対する情報機器およびインフラの発展により、パーソナル・コンピュータならびにネットワークアクセス対応型携帯電話などの個人情報端末が加速的に普及したためである。さらに、従来CRTの独壇場であった家庭用テレビへ、フラットパネルディスプレイの市場が拡大してきている。
【0003】
その中で、近年特に注目を浴びているデバイスに、有機電界発光素子(有機EL素子)がある。有機EL素子は、電気信号に応じて発光し、かつ、発光物質として有機化合物を用いて構成される素子である。有機EL素子は、生来的に広視野角および高コントラストならびに高速応答などの優れた表示特性を有している。また、薄型軽量かつ高画質な小型から大型までの表示装置を実現する可能性があることから、CRTやLCDに代わる素子として注目されている。
【0004】
有機EL素子を用いたフルカラー表示装置が種々提案されている。
例えば、フルカラー表現のための赤色(R)、緑色(G)、青色(B)の3基本色を得る手段として3色塗り分け法、白色有機ELにカラーフィルターを組みあわせる方法、及び色変換法等がある。
【0005】
三色塗り分け法においては、発色材料として3色適正な材料を揃えることと円偏光板のロスを小さくすることで、高効率化できる可能性がある。しかしながら、その塗り分け技術が困難であることから、高精細なディスプレイの実現は難しく、大画面化は困難とされている。
【0006】
白色有機EL素子にカラーフィルタを組みあわせて3色を得る方法では、白色発光材料自体の発光効率が低いこと、さらにカラーフィルターにより約1/3に輝度が低下することが問題として挙げられる。
また、有機EL素子からの発光を色変換膜を用いて色変換して所望の色を得る方法では、様々な改良がなされているが、赤色への変換効率が低いこと等が問題として挙げられる。
【0007】
一方、上部電極に半透明の陰極を採用し、光反射膜との間での多重干渉効果によって、特定の波長の光のみを有機EL素子の外部に取り出し、高い色再現性を実現することが検討されている。例えば、光反射材料からなる第1の電極、有機発光層を備えた有機層、光半透明反射層及び透明材料からなる第2の電極が順次積層され、有機層が共振部となるように構成された有機EL素子において、取り出したい光のスペクトルのピーク波長をλとした場合、以下の式を満たすように構成した有機EL素子が知られている。
(2L)/λ+Φ/(2π)=m
(Lは光学的距離、λは取り出したい光の波長、mは整数、Φは位相シフトであり、光学的距離Lが正の最小値となるように構成)
【0008】
例えば、1画素を赤色副画素(R副画素)、緑色副画素(G副画素)、青色副画素(B副画素)、及び白色副画素(W副画素)に面積分割し、この4副画素によりカラー表示する有機EL表示装置が開示されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1によれば、R副画素部はオレンジ色の有機EL発光層に赤色カラーフィルター(Rフィルター)を重ねて赤光を取りだし、G副画素部は青色の有機EL発光層とオレンジ色の有機EL発光層を積層し、これに緑色カラーフィルター(Gフィルター)を重ねて緑光を取りだし、B副画素部は青色の有機EL発光層に青色カラーフィルター(Bフィルター)を重ねて青光を取りだし、W副画素部は青色の有機EL発光層とオレンジ色の有機EL発光層を積層して得られる光をカラーフィルター無しで取りだして白色光を得るとされている。しかしながら、該構成は複雑で製造が多工程に亘り歩留まりが低下すること、また、カラーフィルターによる輝度低下のため、高輝度が得られない問題がある。
【0009】
また、有機EL発光層を光半透明反射体と光反射層の間に挟持して特定の波長を共振する共振器を形成し、更に共振波長より短波の光を吸収して該共振波長の光に変換する色変換媒体を含む層を備えた表示装置が開示されている(例えば、特許文献2参照)。該構成によれば、視野角度が光軸よりずれた位置で観察した時の色ズレが改良されるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2007−265859号公報
【特許文献2】特表2007−533076号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、発光素子を用いたカラー表示装置及びその製造方法を提供するものである。特に、高精細化カラー表示が可能で且つ製造の容易なカラー表示装置及びその製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の上記課題は、下記の手段によって解決する事を見出された。
<1> 基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成されるカラー表示装置であって、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えていることを特徴とするカラー表示装置。
<2> 前記少なくとも2種の副画素が青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素を有し、それぞれ青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターを有し、前記白色副画素が青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素を有し、それぞれ青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターを有することを特徴とする<1>に記載のカラー表示装置。
<3> 前記青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素の青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターと前記青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素の青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターとが同色毎に同一組成であることを特徴とする<2>に記載のカラー表示装置。
<4> 前記白色副画素の少なくとも2種の副副画素が各々共振器を形成していることを特徴とする<1>〜<3>のいずれかに記載のカラー表示装置。
<5> 前記少なくとも2種の副画素が各々共振器を形成していることを特徴とする<1>〜<4>のいずれかに記載のカラー表示装置。
<6> 前記青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記青色副画素と前記青色副副画素の共振器、緑色副画素と緑色副副画素の共振器、及び赤色副画素と赤色副副画素の共振器が同色毎に同一構成であることを特徴とする<2>〜<5>のいずれかに記載のカラー表示装置。
<7> 基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成され、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えているカラー表示装置の製造方法であって、前記少なくとも2種の副画素と少なくとも2種の副副画素のカラーフィルターを同一の組成で連続して形成し、且つ、前記少なくとも2種の副画素と少なくとも2種の副副画素において白色発光する有機電界発光層を同一の組成で連続して形成することを特徴とするカラー表示装置の製造方法。
<8> 前記少なくとも2種の副画素が赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素を有し、前記白色副画素が赤色副副画素、緑色副副画素及び青色副副画素を有することを特徴とする<7>に記載のカラー表示装置の製造方法。
<9> 前記赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素と、前記赤色副副画素、緑色副副画素及び青色副副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記赤色副画素と前記赤色副副画素の光路長調整層、前記緑色副画素と前記緑色副副画素の光路長調整層、及び前記青色副画素と前記青色副副画素の光路長調整層を同色毎に同一の材料で同一の厚みで形成することを特徴とする<8>に記載のカラー表示装置の製造方法。
<10> 前記光路長調整層が無機絶縁材料であることを特徴とする<9>に記載のカラー表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、高精細化カラー表示が可能で且つ製造の容易なカラー表示装置及びその製造方法が提供される。特に、W副画素部におけるR,G,B副画素のカラーフィルターで外光反射によるコントラスト低下を防止し、外光がある場所に於いても高コントラストで観察できること、更に、W副画素部が共振器を有する副副画素からの光の混合により白色を得るので、高輝度の白色光が得られるカラー表示装置が提供される。
また、本発明による製造方法によれば、白色発光する有機電界発光層を副画素及び副副画素を含めて全画素共通に形成することができるので、射出色によって有機電界発光層部を塗り分ける必要がない。また、カラーフィルターについても副画素のR,G,Bフィルターと副副画素のR,G,Bフィルターをそれぞれ共通に設置することができること、あるいは共振器構造を設ける場合も、副画素及び副副画素のそれぞれの波長の光路長調整層についても共通に形成できるので、極めて生産性に優れ、かつ高精細パターンの製造を容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】マトリックス型表示装置の画素配列の概念図である。
【図2】1画素の副画素配列を示す概念図である。
【図3】1画素の副画素配列の別の態様を示す概念図である。
【図4】1画素の副画素配列の別の態様を示す概念図である。
【図5】1画素の副画素配列の更に別の態様を示す概念図である。
【図6】本発明による1画素の概略断面図である。
【図7】本発明による1画素の別の態様を示す概略断面図である。
【図8】本発明による1画素の別の態様を示す概略断面図である。
【図9】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図10】本発明による1画素の製造方法を工程順に示す概略断面図である。
【図11】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図12】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順に示す概略断面図である。
【図13】本発明による1画素の製造方法の更に別の態様の工程順に示す概略断面図である。
【図14】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図15】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図16】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図17】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図18】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図19】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図20】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図21】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図22】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図23】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【図24】本発明による1画素の更に別の態様を示す概略断面図である。
【図25】本発明による1画素の製造方法の別の態様の工程順を示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に本発明について、より詳細に説明する。
1.表示装置
本発明の表示装置は、基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成されるカラー表示装置であって、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えている。
図1に示されるように、本発明の表示装置は基板の上に複数の画素を縦横に配列したマトリクス型画面パネルを有する。各画素は、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成される。好ましくは、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)、及び白色(W)の副画素で、白色副画素は赤色(R)、緑色(G)、及び青色(B)の副副画素より構成される(図2)。
【0016】
画素内のR,G,B,W副画素、及びR,G,B副副画素の配列は、図2に示される配列に限定される訳ではなく、例えば、図3〜図5に示されるような種々の配列とすることができる。
【0017】
本発明の構成を用いた表示装置は、2色カラー、又はフルカラーの表示装置に好適に用いることが可能である。
【0018】
本発明における各画素のR,G,B副画素、及びR,G,B副副画素のR,G,Bの発光色は、白色発光する有機電界発光層からの発光にカラーフィルターを組みあわせて得られる。従って、R,G,B副画素、及びR,G,B副副画素の発光層は、全て共通に一貫して形成することができる。また、R,G,B副画素のR,G,Bフィルター、及びR,G,B副副画素のR,G,Bフィルターは、同色毎に同一のカラーフィルター材料で構成することができる。さらに、本発明のW副画素部のカラーフィルターは外光反射を防止するので、表示される画像のコントラストを低下させることなく、高い黒色濃度を再現することできる。
【0019】
次に、本発明の表示装置の構成を図面により具体的に説明する。
図6は、本発明による1画素の構成を示す断面模式図である。
透明基板1上に、各副画素の色に対応してカラーフィルター層(CF層2)を有する。分割されたR,G,B副画素部に対応して、Rフィルター(CR1),Gフィルター(CG1),Bフィルター(CB1)が設置され、W副画素にもR,G,B副副画素部に対応して、Rフィルター(CR2),Gフィルター(CG2),Bフィルター(CB2)が設置される。
CF層2の上に、パターン化された透明電極4、その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層5及び光反射電極6を有する。通電により白色有機電界発光層5で発光した光は、各色のCF層2によって、それぞれ、R,G,B光が透過し、更に基板1を透過して外部に射出される。W副画素においてはR,G,B副副画素からの3色の光の混合により白色光として観察される。W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。
【0020】
図7は、本発明による別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
透明基板11上に、各副画素の色に対応してカラーフィルター層(CF層12)を有する。分割されたR,G,B副画素部に対応して、Rフィルター(CR1),Gフィルター(CG1),Bフィルター(CB1)が設置され、W副画素にもR,G,B副副画素部に対応して、Rフィルター(CR2),Gフィルター(CG2),Bフィルター(CB2)が配置される。
CF層12上に、各副画素及び各副副画素とも共通に光半透過反射層13を有する。その上に設置される光路長調整層17は光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射光波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に、透明電極14が各副画素部に対応してパターン化されて配置される。その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層15及び光反射電極16を有する。光反射電極16と光半透過反射層13との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層17の厚みが設定される。
【0021】
通電により白色有機電界発光層15で発光した光は、光反射電極16と光半透過反射層13との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射層13を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介し、透明基板11を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターは外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。更に、R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0022】
図8は、本発明による1画素の別の構成を示す断面模式図である。
基板21上に、パターン化された光反射電極24、その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層25及び透明電極26を有する。別途、透明基板29上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層23)を配置したフィルターが、該CF層23を前記透明電極26に面して、接着層28によって貼り合わせる。得られた表示装置に通電すると、白色有機電界発光層25で発光した光は、各色のCF層23によって、それぞれ、R,G,B光が透過し、更に透明基板29を透過して外部に射出される。W副画素においてはR,G,B副副画素からの3色の光の混合により白色光として観察される。該構成はトップエミッション型有機EL表示装置の例である。該構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。
【0023】
図9は、本発明による更に別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
基板31上に、各副画素及び各副副画素に対応してパターン化された光反射電極34を有する。その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層35及び透明電極36を有する。その上に設置される光路長調整層37は、光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に光半透過反射層32を各副画素共通に有する。光反射電極34と光半透過反射層32との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層37の厚みが設定される。
【0024】
別途、透明基板39上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層33)を配置したカラーフィルター基板が、該CF層33を前記光半透過反射層32に面して、接着層38によって貼り合わされる。
通電により白色有機電界発光層35で発光した光は、光反射電極34と光半透過反射層32との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射層32を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介して、透明基板39を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0025】
図14は、本発明による更に別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
基板41上に、各副画素及び各副副画素に対応してパターン化された光反射層44を有する。その上に設置される光路長調整層47は、光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に、パターン化された透明電極46、各副画素共通に白色有機電界発光層45及び光半透過反射電極42を有する。光反射層44と光半透過反射電極42との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層47の厚みが設定される。
【0026】
別途、透明基板49上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層43)を配置したカラーフィルター基板が、該CF層43を前記光半透過反射電極42に面して、接着層48によって貼り合わされる。
通電により白色有機電界発光層45で発光した光は、光反射層44と光半透過反射電極42との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射電極42を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介して、透明基板49を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0027】
図16は、本発明による更に別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
透明基板51上に、各副画素の色に対応してカラーフィルター層(CF層52)を有する。分割されたR,G,B副画素部に対応して、Rフィルター(CR1),Gフィルター(CG1),Bフィルター(CB1)が設置され、W副画素にもR,G,B副副画素部に対応して、Rフィルター(CR2),Gフィルター(CG2),Bフィルター(CB2)が設置される。
CF層52の上に、光取出し構造層510が設置される。光取出し構造層は、同層の両側にある各構成層の屈折率段差によって生じる全反射を抑えて外部に射出される光量を増大させるための層である。
光取出し構造層510の上に、パターン化された透明電極54、その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層55及び光反射電極56を有する。通電により白色有機電界発光層55で発光した光は、透明電極54及び光取出し構造層510を透過した後、各色のCF層52によって、それぞれ、R,G,B光が透過し、更に基板51を透過して外部に射出される。W副画素においてはR,G,B副副画素からの3色の光の混合により白色光として観察される。W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。
【0028】
図18は、本発明による別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
透明基板61上に、各副画素の色に対応してカラーフィルター層(CF層62)を有する。分割されたR,G,B副画素部に対応して、Rフィルター(CR1),Gフィルター(CG1),Bフィルター(CB1)が設置され、W副画素にもR,G,B副副画素部に対応して、Rフィルター(CR2),Gフィルター(CG2),Bフィルター(CB2)が配置される。
CF層62の上に、光取出し構造層610が設置される。光取出し構造層は、同層の両側にある各構成層の屈折率段差によって生じる全反射を抑えて外部に射出される光量を増大させるための層である。
光取出し構造層610の上に、各副画素及び各副副画素とも共通に光半透過反射層63を有する。その上に設置される光路長調整層67は光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射光波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に、透明電極64が各副画素部に対応してパターン化されて配置される。その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層65及び光反射電極66を有する。光反射電極66と光半透過反射層63との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層67の厚みが設定される。
【0029】
通電により白色有機電界発光層65で発光した光は、光反射電極66と光半透過反射層63との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射層63及び光取出し構造層610を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介し、透明基板61を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターは外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。更に、R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0030】
図20は、本発明による1画素の別の構成を示す断面模式図である。
基板71上に、パターン化された光反射電極74、その上に、各副画素とも共通に白色有機電界発光層75及び透明電極76を有する。別途、透明基板79上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層73)、及び光取出し構造層710を配置したフィルターが、該光取出し構造層710を前記透明電極76に面して、接着層78によって貼り合わせる。得られた表示装置に通電すると、白色有機電界発光層75で発光した光は、各色のCF層73によって、それぞれ、R,G,B光が透過し、更に透明基板79を透過して外部に射出される。W副画素においてはR,G,B副副画素からの3色の光の混合により白色光として観察される。該構成はトップエミッション型有機EL表示装置の例である。該構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、明室において表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。
【0031】
図22は、本発明による更に別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
基板81上に、各副画素及び各副副画素に対応してパターン化された光反射電極84を有する。その上に、各副画素共通に白色有機電界発光層85及び透明電極86を有する。その上に設置される光路長調整層87は、光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に、光半透過反射層82を各副画素共通に有する。光反射電極84と光半透過反射層82との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層87の厚みが設定される。
【0032】
別途、透明基板89上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層83)、及び光取出し構造層810を配置したカラーフィルター基板が、該光取出し構造層810を前記光半透過反射層82に面して、接着層88によって貼り合わされる。
通電により白色有機電界発光層85で発光した光は、光反射電極84と光半透過反射層82との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射層82を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介して、透明基板89を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0033】
図24は、本発明による更に別の態様の1画素の構成を示す断面模式図である。
基板91上に、各副画素及び各副副画素に対応してパターン化された光反射層94を有する。その上に設置される光路長調整層97は、光透過性の材料で、R,G,B副画素部及びR,G,B副副画素部の各々出射波長に対応して厚みを変えて配置される。その上に、パターン化された透明電極96、各副画素共通に白色有機電界発光層95及び光半透過反射電極92を有する。光反射層94と光半透過反射電極92との間の距離は、それぞれR,G,B光が共振する光学的距離となるように光路長調整層97の厚みが設定される。
【0034】
別途、透明基板99上に各副画素及び副副画素の色に対応して面積分割されたカラーフィルター層(CF層93)、及び光取出し構造層910を配置したカラーフィルター基板が、該、及び光取出し構造層910を前記光半透過反射電極92に面して、接着層98によって貼り合わされる。
通電により白色有機電界発光層95で発光した光は、光反射層94と光半透過反射電極92との間で反射を繰り返し、それぞれ共振波長のR,G,B光が光半透過反射電極92を透過した後、さらにそれぞれR,G,Bフィルターを介して、透明基板99を透過して外部に射出される。W副画素部では、R,G,B光の混合により白色光として観察される。
本構成に拠れば、W副画素部のカラーフィルターにより外光反射が防止されるので、表示される画像のコントラストが低下せず、黒色表示部が明瞭な高品質の画像が再現される。R,G,Bフィルターの不要波長吸収により輝度が低下するが、共振器により必要波長の強度が増幅されているため、高輝度の光を取り出すことができる。
【0035】
2.カラーフィルター層
本発明に用いられるカラーフィルターは、特に限定されるものではない。従来、微細パターンのカラーフィルターは、種々知られていて、その製造方法についても多種知られていて、本発明に於いては、これらの従来知られているカラーフィルターの製造方法によって、好ましく設けることができる。
本発明に用いられるカラーフィルターは、上記の図6,7,16,18で例示されるように発光層を含む表示装置の形成工程で、微細パターンを形成して設置することができる。あるいは、上記図8,9,14,20,22,24で例示されるように、微細パターンのカラーフィルターを予め作製して、これを発光層を含む表示装置の形成工程の途中で貼り合わせても良い。
【0036】
3.光路長調整層
本発明においては、光路長調整層を内部に導入して、共振器を形成することが好ましい。
本発明の光路長調整層に用いられる材料としては、無機材料及び有機材料のいずれも用いることができる。
光透過性無機絶縁材料としては、従来知られている種々の金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物などを用いることができる。
金属酸化物の具体例としては、MgO、SiO、Al、Y、TiO等が挙げられ、金属窒化物の具体例としては、SiN、SiN、AlN等が挙げられ、金属フッ化物の具体例としては、MgF、LiF、AlF、CaF、BaF等が挙げられる。また、これらの混合物であっても良い。
【0037】
有機材料としては、被膜形成性ポリマーが好ましく用いられる。被膜形成性ポリマーとしては、ポリカーボネート、ポリアクリレート、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール等が挙げられる。
【0038】
光路長調整層の厚みは、各副画素が所定の波長の光が効率良く共振し得る光学的距離となるように調整される。従って、共振する光学的距離は、光反射膜と光半透過反射膜との間に挟持される材料の屈折率とその組成、厚みによって決定されるので、光路長調整層によって決定される訳ではない。一般に用いられる有機EL発光層の構成を斟酌すると、R副画素部およびR副副画素部の光路長調整層の厚みは、物理的厚みで、30nm〜1000nmが好ましく、より好ましくは、150nm〜350nm、さらに好ましくは、200nm〜250nmである。G副画素部およびG副副画素部の光路長調整層の厚みは、物理的厚みで、5nm〜800nmが好ましく、より好ましくは、100nm〜250nm、さらに好ましくは、150nm〜200nmである。B副画素部およびB副副画素部の光路長調整層の厚みは、物理的厚みで、0nm〜600nmが好ましく、より好ましくは、50nm〜200nm、さらに好ましくは、100nm〜150nmである。
【0039】
光路長調整層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、又は転写法を適用できる。
【0040】
4.有機電界発光素子
本発明における有機電界発光素子は、発光層の他に、正孔輸送層、電子輸送層、ブロック層、電子注入層、および正孔注入層などの従来知られている有機化合物層を有しても良い。
【0041】
以下、詳細に説明する。
1)層構成
<電極>
本発明における有機電界発光素子の一対の電極は、少なくとも一方は透明電極であり、もう一方は背面電極となる。背面電極は透明であっても、非透明であっても良い。
<有機化合物層の構成>
前記有機化合物層の層構成としては、特に制限はなく、有機電界発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記透明電極上に又は前記背面電極上に形成されるのが好ましい。この場合、有機化合物層は、前記透明電極又は前記背面電極上の前面又は一面に形成される。
有機化合物層の形状、大きさ、および厚み等については、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0042】
具体的な層構成として、下記が挙げられるが本発明はこれらの構成に限定されるものではない。
・陽極/正孔輸送層/発光層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/陰極、
・陽極/正孔注入層/正孔輸送層/発光層/ブロック層/電子輸送層/電子注入層/陰極。
【0043】
以下に各層について詳細に説明する。
2)正孔輸送層
本発明に用いられる正孔輸送層は正孔輸送材を含む。前記正孔輸送材としては正孔を輸送する機能、もしくは陰極から注入された電子を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば特に制限されることはなく用いることが出来る。本発明に用いられる正孔輸送材としては、低分子正孔輸送材、および高分子正孔輸送材のいずれも用いることができる。
本発明に用いられる正孔輸送材の具体例として、例えば以下の材料を挙げることができる。
【0044】
カルバゾ−ル誘導体、イミダゾ−ル誘導体、ポリアリ−ルアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリ−ルアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。
これらは、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
正孔輸送層の厚みとしては、10nm〜400nmが好ましく、50nm〜200nmがより好ましい。
【0046】
3)正孔注入層
本発明おいては、正孔輸送層と陽極の間に正孔注入層を設けることができる。
正孔注入層とは、陽極から正孔輸送層に正孔を注入しやすくする層であり、具体的には前記正孔輸送材の中でイオン化ポテンシャルの小さな材料が好適用いられる。例えばフタロシアニン化合物、ポルフィリン化合物、及びスターバースト型トリアリールアミン化合物等を挙げることができ、好適に用いることができる。
正孔注入層の膜厚は、1nm〜300nmが好ましい。
【0047】
4)発光層
本発明に用いられる発光層は、少なくとも一種の発光材料を含み、必要に応じて正孔輸送材、電子輸送材、ホスト材を含んでもよい。
本発明に用いられる発光材料としては特に限定されることはなく、蛍光発光材料または燐光発光材料のいずれも用いることができる。発光効率の点から燐光発光材料が好ましい。
また、発光材料は、白色発光であれば1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用して白色発光を得てもよい。2種以上を併用する場合、発光材料の発光色の組合せは、特に限定されるものではないが、青色発光材料と黄色発光材料の併用、青色発光材料と緑色発光材料と赤色発光材料の併用などを挙げることができる。
【0048】
蛍光発光材料としては、例えばベンゾオキサゾール誘導体、ベンゾイミダゾール誘導体、ベンゾチアゾール誘導体、スチリルベンゼン誘導体、ポリフェニル誘導体、ジフェニルブタジエン誘導体、テトラフェニルブタジエン誘導体、ナフタルイミド誘導体、クマリン誘導体、ペリレン誘導体、ペリノン誘導体、オキサジアゾール誘導体、アルダジン誘導体、ピラリジン誘導体、シクロペンタジエン誘導体、ビススチリルアントラセン誘導体、キナクリドン誘導体、ピロロピリジン誘導体、チアジアゾロピリジン誘導体、スチリルアミン誘導体、芳香族ジメチリデン化合物、8−キノリノール誘導体の金属錯体や希土類錯体に代表される各種金属錯体、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらは1種または2種以上を混合して用いることができる。
【0049】
燐光発光材料としては特に限定されることはないが、オルトメタル化金属錯体、又はポルフィリン金属錯体が好ましい。
【0050】
上記オルトメタル化金属錯体とは、例えば山本明夫著「有機金属化学−基礎と応用−」150頁〜232頁、裳華房社(1982年発行)やH.Yersin著「Photochemistry and Photophisics of Coodination Compounds」、71頁〜77頁、135頁〜146頁、Springer−Verlag社(1987年発行)等に記載されている化合物群の総称である。該オルトメタル化金属錯体を発光材料として発光層に用いることは、高輝度で発光効率に優れる点で有利である。
【0051】
上記オルトメタル化金属錯体を形成する配位子としては、種々のものがあり、上記文献にも記載されているが、その中でも好ましい配位子としては、2−フェニルピリジン誘導体、7,8−ベンゾキノリン誘導体、2−(2−チエニル)ピリジン誘導体、2−(1−ナフチル)ピリジン誘導体、及び2−フェニルキノリン誘導体等が挙げられる。これらの誘導体は必要に応じて置換基を有してもよい。また、上記オルトメタル化金属錯体は、上記配位子のほかに、他の配位子を有していてもよい。
【0052】
本発明で用いるオルトメタル化金属錯体は、Inorg Chem.,1991年,30号,1685頁、同1988年,27号,3464頁、同1994年,33号,545頁、Inorg.Chim.Acta,1991年,181号,245頁、J.Organomet.Chem.,1987年,335号,293頁、J.Am.Chem.Soc.1985年,107号,1431頁等、種々の公知の手法で合成することができる。
上記オルトメタル化錯体の中でも、三重項励起子から発光する化合物が本発明においては発光効率向上の観点から好適に使用することができる。
【0053】
また、ポルフィリン金属錯体の中ではポルフィリン白金錯体が好ましい。
燐光発光材料は1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。また、蛍光発光材料と燐光発光材料を同時に用いてもよい。
【0054】
ホスト材とは、その励起状態から、蛍光発光材料または燐光発光材料へエネルギー移動を起こし、その結果、蛍光発光材料または燐光発光材料を発光させる機能を有する材料のことである。
【0055】
ホスト材としては、励起子エネルギーを発光材料にエネルギー移動させることのできる化合物ならば特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、具体的にはカルバゾール誘導体、トリアゾール誘導体、オキサゾール誘導体、オキサジアゾール誘導体、イミダゾール誘導体、ポリアリールアルカン誘導体、ピラゾリン誘導体、ピラゾロン誘導体、フェニレンジアミン誘導体、アリールアミン誘導体、アミノ置換カルコン誘導体、スチリルアントラセン誘導体、フルオレノン誘導体、ヒドラゾン誘導体、スチルベン誘導体、シラザン誘導体、芳香族第三アミン化合物、スチリルアミン化合物、芳香族ジメチリデン系化合物、ポルフィリン系化合物、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレン、ペリレン等の芳香環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノール誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾールやベンゾチアゾールを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、ポリシラン系化合物、ポリ(N−ビニルカルバゾ−ル)誘導体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマー、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマー、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体等の高分子化合物等が挙げられる。これらの化合物は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
ホスト材の発光層における含有量としては0質量%〜99.9質量%が好ましく、さらに好ましくは0質量%〜99.0質量%である。
【0056】
5)ブロック層
本発明においては、発光層と電子輸送層との間にブロック層を設けることができる。ブロック層とは発光層で生成した励起子の拡散抑制する層であり、また正孔が陰極側に突き抜けることを抑制する層である。
【0057】
ブロック層に用いられる材料は、電子輸送層より電子を受け取り、発光層にわたす事のできる材料で有れば特に限定されることはなく、一般的な電子輸送材を用いることができる。例えば以下の材料を挙げることができる。トリアゾ−ル誘導体、オキサゾ−ル誘導体、オキサジアゾ−ル誘導体、フルオレノン誘導体、アントラキノジメタン誘導体、アントロン誘導体、ジフェニルキノン誘導体、チオピランジオキシド誘導体、カルボジイミド誘導体、フルオレニリデンメタン誘導体、ジスチリルピラジン誘導体、ナフタレンペリレン等の複素環テトラカルボン酸無水物、フタロシアニン誘導体、8−キノリノ−ル誘導体の金属錯体やメタルフタロシアニン、ベンゾオキサゾ−ルやベンゾチアゾ−ルを配位子とする金属錯体に代表される各種金属錯体、アニリン系共重合体、チオフェンオリゴマ−、ポリチオフェン等の導電性高分子オリゴマ−、ポリチオフェン誘導体、ポリフェニレン誘導体、ポリフェニレンビニレン誘導体、及びポリフルオレン誘導体等の高分子化合物を挙げることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0058】
6)電子輸送層
本発明においては電子輸送材を含む電子輸送層を設けることができる。
電子輸送材としては電子を輸送する機能、もしくは陽極から注入された正孔を障壁する機能のいずれかを有しているもので有れば制限されることはなく、前記ブロック層の説明時に挙げた電子輸送材を好適に用いることができる。
前記電子輸送層の厚みとしては、10nm〜200nmが好ましく、20nm〜80nmがより好ましい。
【0059】
前記厚みが、1000nmを越えると駆動電圧が上昇することがあり、10nm未満であると該発光素子の発光効率が非常に低下する可能性があり好ましくない。
【0060】
7)電子注入層
本発明おいては、電子輸送層と陰極の間に電子注入層を設けることができる。
電子注入層とは、陰極から電子輸送層に電子を注入しやすくする層であり、具体的にはフッ化リチウム、塩化リチウム、臭化リチウム等のリチウム塩、フッ化ナトリウム、塩化ナトリウム、フッ化セシウム等のアルカリ金属塩、酸化リチウム、酸化アルミニウム、酸化インジウム、又は酸化マグネシウム等の絶縁性金属酸化物等を好適に用いることができる。
電子注入層の膜厚は0.1nm〜5nmが好ましい。
【0061】
8)基板
本発明に用いられる基板の材料としては、水分を透過させない材料又は水分透過率の極めて低い材料が好ましく、また、前記有機化合物層から発せられる光を散乱乃至減衰等のさせることのない材料が好ましい。具体的例として、例えばYSZ(ジルコニア安定化イットリウム)、ガラス等の無機材料、ポリエチレンテレフタレ−ト、ポリブチレンテレフタレ−ト、ポリエチレンナフタレ−ト等のポリエステル、ポリスチレン、ポリカ−ボネ−ト、ポリエ−テルスルホン、ポリアリレ−ト、アリルジグリコ−ルカ−ボネ−ト、ポリイミド、ポリシクロオレフィン、ノルボルネン樹脂、およびポリ(クロロトリフルオロエチレン)等の合成樹脂等の有機材料、などが挙げられる。
前記有機材料の場合、耐熱性、寸法安定性、耐溶剤性、電気絶縁性、加工性、低通気性、又は低吸湿性等に優れていることが好ましい。これらの材料は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0062】
基板の形状、構造、大きさ等については、特に制限はなく、発光素子の用途、目的等に応じて適宜選択することができる。一般的には、前記形状としては、板状である。前記構造としては、単層構造であってもよいし、積層構造であってもよく、また、単一部材で形成されていてもよいし、2以上の部材で形成されていてもよい。
【0063】
基板は、無色透明であってもよいし、有色透明であってもよいが、前記発光層から発せられる光を散乱あるいは減衰等させることがない点で、無色透明であるのが好ましい。
【0064】
基板には、その表面又は裏面(前記透明電極側)に透湿防止層(ガスバリア層)を設けるのが好ましい。前記透湿防止層(ガスバリア層)の材料としては、窒化珪素、酸化珪素などの無機物が好適に用いられる。該透湿防止層(ガスバリア層)は、例えば、高周波スパッタリング法などにより形成することができる。
基板には、さらに必要に応じて、ハ−ドコ−ト層、およびアンダ−コ−ト層などを設けてもよい。
【0065】
9)電極
本発明における一対の電極は、第1の電極よび第2の電極のいずれが陽極であっても陰極であっても構わないが、好ましくは第1の電極が陽極であり、第2の電極が陰極である。
【0066】
<陽極>
本発明に用いられる陽極としては、通常、前記有機化合物層に正孔を供給する陽極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0067】
陽極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、有機導電性化合物、またはこれらの混合物を好適に挙げられ、仕事関数が4.0eV以上の材料が好ましい。具体例としては、アンチモンやフッ素等をド−プした酸化錫(ATO、FTO)、酸化錫、酸化亜鉛、酸化インジウム、酸化インジウム錫(ITO)、酸化亜鉛インジウム(IZO)等の半導性金属酸化物、金、銀、クロム、ニッケル等の金属、さらにこれらの金属と導電性金属酸化物との混合物または積層物、ヨウ化銅、硫化銅などの無機導電性物質、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロ−ルなどの有機導電性材料、およびこれらとITOとの積層物などが挙げられる。
【0068】
陽極は例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。例えば、陽極の材料として、ITOを選択する場合には、該陽極の形成は、直流あるいは高周波スパッタ法、真空蒸着法、イオンプレ−ティング法等に従って行うことができる。また陽極の材料として有機導電性化合物を選択する場合には湿式製膜法に従って行うことができる。
【0069】
陽極の前記発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、前記基板上に形成されるのが好ましい。この場合、該陽極は、前記基板における一方の表面の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
【0070】
なお、前記陽極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−法などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0071】
陽極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜50μmであり、50nm〜20μmが好ましい。
陽極の抵抗値としては、10Ω/□以下が好ましく、10Ω/□以下がより好ましい。
陽極は、無色透明であっても、有色透明であってもよく、該陽極側から発光を取り出すためには、その透過率としては、60%以上が好ましく、70%以上がより好ましい。この透過率は、分光光度計を用いた公知の方法に従って測定することができる。
【0072】
陽極については、沢田豊監修「透明電極膜の新展開」シ−エムシ−刊(1999)に詳述があり、これらを本発明に適用することができる。耐熱性の低いプラスティック基材を用いる場合は、ITOまたはIZOを使用し、150℃以下の低温で製膜した陽極が好ましい。
【0073】
<陰極>
本発明に用いることの出来る陰極としては、通常、前記有機化合物層に電子を注入する陰極としての機能を有していればよく、その形状、構造、大きさ等については特に制限はなく、発光素子の用途、目的に応じて、公知の電極の中から適宜選択することができる。
【0074】
陰極の材料としては、例えば、金属、合金、金属酸化物、電気伝導性化合物、これらの混合物などが挙げられ、仕事関数が4.5eV以下のものが好ましい。具体例としてはアルカリ金属(たとえば、Li、Na、K、又はCs等)、アルカリ土類金属(たとえばMg、Ca等)、金、銀、鉛、アルミニウム、ナトリウム−カリウム合金、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−銀合金、インジウム、及びイッテルビウム等の希土類金属、などが挙げられる。これらは、単独で使用してもよいが、安定性と電子注入性とを両立させる観点からは、2種以上を好適に併用することができる。
【0075】
これらの中でも、電子注入性の点で、アルカリ金属やアルカリ土類金属が好ましく、保存安定性に優れる点で、アルミニウムを主体とする材料が好ましい。アルミニウムを主体とする材料とは、アルミニウム単独、又はアルミニウムと0.01質量%〜10質量%のアルカリ金属若しくはアルカリ土類金属との合金若しくは混合物(例えば、リチウム−アルミニウム合金、マグネシウム−アルミニウム合金など)をいう。
【0076】
陰極の材料については、特開平2−15595号公報、特開平5−121172号公報に詳述されていて、これらを本発明に適用することができる。
【0077】
陰極の形成法は、特に制限はなく、公知の方法に従って行うことができる。例えば、印刷方式、コ−ティング方式等の湿式方式、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレ−ティング法等の物理的方式、CVD、プラズマCVD法等の化学的方式、などの中から前記材料との適性を考慮して適宜選択した方法に従って前記基板上に形成することができる。
例えば、前記陰極の材料として、金属等を選択する場合には、その1種又は2種以上を同時又は順次にスパッタ法等に従って行うことができる。
【0078】
陰極のパタ−ニングは、フォトリソグラフィ−法などによる化学的エッチングにより行ってもよいし、レ−ザ−などによる物理的エッチングにより行ってもよく、また、マスクを重ねて真空蒸着やスパッタ等をして行ってもよいし、リフトオフ法や印刷法により行ってもよい。
【0079】
陰極の有機電界発光素子における形成位置としては、特に制限はなく、該発光素子の用途、目的に応じて適宜選択することができるが、有機化合物層上に形成されるのが好ましい。この場合、該陰極は、前記有機化合物層上の全部に形成されていてもよく、その一部に形成されていてもよい。
また、陰極と有機化合物層との間に前記アルカリ金属又は前記アルカリ土類金属のフッ化物等による誘電体層を0.1nm〜5nmの厚みで挿入してもよい。
【0080】
陰極の厚みとしては、前記材料により適宜選択することができ、一概に規定することはできないが、通常10nm〜5μmであり、50nm〜1μmが好ましい。
陰極は、透明であってもよいし、不透明であってもよい。なお、透明な陰極は、前記陰極の材料を1nm〜10nmの厚みに薄く製膜し、更に前記ITOやIZO等の透明な導電性材料を積層することにより形成することができる。
【0081】
10)保護層
本発明において、有機EL素子全体は、保護層によって保護されていてもよい。
保護層に含まれる材料としては、水分や酸素等の素子劣化を促進するものが素子内に入ることを抑止する機能を有しているものであればよい。
その具体例としては、In、Sn、Pb、Au、Cu、Ag、Al、Ti、Ni等の金属、MgO、SiO、SiO、Al、GeO、NiO、CaO、BaO、Fe、Y、TiO等の金属酸化物、SiN、SiN等の金属窒化物、MgF、LiF、AlF、CaF等の金属フッ化物、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリイミド、ポリウレア、ポリテトラフルオロエチレン、ポリクロロトリフルオロエチレン、ポリジクロロジフルオロエチレン、クロロトリフルオロエチレンとジクロロジフルオロエチレンとの共重合体、テトラフルオロエチレンと少なくとも1種のコモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させて得られる共重合体、共重合主鎖に環状構造を有する含フッ素共重合体、吸水率1%以上の吸水性物質、吸水率0.1%以下の防湿性物質等が挙げられる。
【0082】
保護層の形成方法については、特に限定はなく、例えば、真空蒸着法、スパッタリング法、反応性スパッタリング法、MBE(分子線エピタキシ)法、クラスターイオンビーム法、イオンプレーティング法、プラズマ重合法(高周波励起イオンプレーティング法)、プラズマCVD法、レーザーCVD法、熱CVD法、ガスソースCVD法、コーティング法、印刷法、又は転写法を適用できる。
【0083】
11)封止
さらに、本発明における有機電界発光素子は、封止容器を用いて素子全体を封止してもよい。
また、封止容器と発光素子の間の空間に水分吸収剤又は不活性液体を封入してもよい。
水分吸収剤としては、特に限定されることはないが、例えば、酸化バリウム、酸化ナトリウム、酸化カリウム、酸化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸カルシウム、硫酸マグネシウム、五酸化燐、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、塩化銅、フッ化セシウム、フッ化ニオブ、臭化カルシウム、臭化バナジウム、モレキュラーシーブ、ゼオライト、および酸化マグネシウム等を挙げることができる。不活性液体としては、特に限定されることはないが、例えば、パラフィン類、流動パラフィン類、パーフルオロアルカンやパーフルオロアミン、パーフルオロエーテル等のフッ素系溶剤、塩素系溶剤、及びシリコーンオイル類が挙げられる。
【0084】
12)素子の製造方法
本発明における素子を構成する各層は、蒸着法やスパッタ法等の乾式製膜法、ディッピング、スピンコ−ト法、ディップコ−ト法、キャスト法、ダイコ−ト法、ロ−ルコ−ト法、バ−コ−ト法、グラビアコ−ト法等の湿式製膜法いずれによっても好適に製膜することができる。
中でも発光効率、耐久性の点から乾式法が好ましい。湿式製膜法の場合、残存する塗布溶媒が発光層を損傷させるので好ましくない。
特に好ましくは、抵抗加熱式真空蒸着法である。抵抗加熱式真空蒸着法は、真空下で加熱により蒸散させる物質のみを効率的に加熱できるので、素子が高温に曝されないのでダメージが少なく有利である。
【0085】
真空蒸着とは真空にした容器の中で、蒸着材料を加熱させ気化もしくは昇華して、少し離れた位置に置かれた被蒸着物の表面に付着させ、薄膜を形成するというものである。蒸着材料、被蒸着物の種類により、抵抗加熱、電子ビーム、高周波誘導、レーザーなどの方法で加熱される。この中で最も低温で成膜を行うのが抵抗加熱式の真空蒸着法であり、昇華点の高い材料は成膜できないが、低い昇華点の材料であれば、被蒸着材料への熱ダメージがほとんど無い状態で成膜を行うことができる。
【0086】
本発明における封止膜材料は、抵抗加熱式の真空蒸着で成膜し得ることを特徴とする。
従来用いられてきた酸化シリコン等の封止剤は昇華点が高く、抵抗加熱で蒸着することは不可能であった。また、公知例に一般的に記載されているイオンプレーティング式などの真空蒸着法は、蒸着元部が数千℃と超高温となるため、被蒸着材料に熱的な影響を与えて変質させるため、特に熱や紫外線の影響を受けやすい有機EL素子の封止膜の製造方法としては適していない。
【0087】
13)駆動方法
本発明における有機電界発光素子は、陽極と陰極との間に直流(必要に応じて交流成分を含んでもよい)電圧(通常2ボルト〜15ボルト)、又は直流電流を印加することにより、発光を得ることができる。
【0088】
本発明における有機電界発光素子の駆動方法については、特開平2−148687号、同6−301355号、同5−29080号、同7−134558号、同8−234685号、同8−241047号の各公報、特許第2784615号、米国特許5828429号、同6023308号の各明細書、等に記載の駆動方法を適用することができる。
【実施例】
【0089】
以下に、本発明について、実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0090】
実施例1
本発明の図6に示される構成のカラー表示装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図10に段階的工程を示す。
(1)基板1上に、カラーフィルター層(CF層2)を形成する。このとき、各副画素部に対応して、R副画素部にはCR1、G副画素部にはCG1、B副画素部にはCB1、W副画素部には更に3分割した各副副画素部に対応してCR2,CG2,及びCB2をパターニングする。パターニングの方法は感光性カラーレジストを用いたフォトリソグラフィー法やカラーレジストを塗布するインクジェット製法の何れでも良い。
(2)上記CF層2の上面に透明電極4(ITO、IZO等より成る)を各副画素毎に電気的に分離形成する。透明電極4のパターニングはシャドウマスクを用いた成膜製法や全面成膜してフォトリソグラフィー法によるパターニングでも良い。
(3)上記透明電極4の上面に白色有機電界発光層5(白色OLED)を形成する。白色OLEDは、少なくとも発光層を含む複数の有機層を有し、真空成膜製法や塗布製法の何れによって形成しても良い。
(4)上記白色OLEDの上面に光反射電極6として金属電極(Al、Ag等)を真空成膜製法で形成する。
(5)OLED形成領域を封止し、各電極を外部の信号制御装置に接続する。
(6)上記R,G,B,W副画素からなる画素を複数配置することで表示面を形成し、各副画素を選択的に発光させることで表示面に画像を形成する。
【0091】
通電により得られるW副画素からの発光は白色OLED自体の分光特性とは異なり、W副画素内のカラーフィルターCR2,CG2,CB2の透過率に応じた分光特性が得られる。特に、W画素内にR,G.Bフィルターを備えた副副画素を構成にすることにより、外光がW副画素内のカラーフィルターで吸収され、光反射電極面で光反射することによるコントラストの低下が防止され、外光が射す環境下で表示画像面を観察しても黒色表示部が明瞭な高品質の画像が観察できる。
【0092】
実施例2
本発明の図7に示される構成のカラー表示装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図11に段階的工程を示す。
(1)基板11上にカラーフィルターCF層12の形成工程は、実施例1におけるCF層2の形成と同様である。
(2)上記CF層12上面に光半透過反射層13を形成する。光半透過反射層13は金属薄膜(Al、Ag等)や屈折率の異なる透明薄膜を積層する分布ブラッグ反射膜(DBR)の何れでも良い。
(3)上記光半透過反射膜の上面に、CF層12のパターニングに応じて、R,G,Bによって膜厚の異なる光路長調整層17を形成する。例えば、光半透過反射層13と後述の光反射電極16との間でR光(λ=625nm〜740nm)、G光(λ=500nm〜565nm)、B光(λ=450nm〜485nm)に光学共振を発生する光学距離長L(L=λ/2*m、λ:出力波長、m:自然数)の膜厚を形成する。光路長調整層17の材料は、透明な絶縁材料より形成され、無機材料でも有機材料でも良い。無機絶縁材料としては、SiO、SiON、SiN等が好ましく用いられる。有機材料としては、ポリカーボネート、アクリレート、シリコーン等が好ましく用いられる。
(4)上記光路長調整層17の上面に透明電極14(ITO、IZO等より成る)を各副画素毎に電気的に分離形成する。
(5)実施例1の白色有機電界発光層5の形成工程(3)と同様にして白色有機電界発光層15を形成する。
(6)実施例1の光反射電極6の形成工程(4)と同様にして光反射電極16を形成する。
【0093】
通電により得られるW副画素からの発光は白色OLED自体の分光特性とは異なり、W副画素内のカラーフィルターCR2,CG2,CB2の透過率に応じた分光特性が得られる。実施例1に対して、光学共振器構造を有することにより、各R,G,B副画素からの発光強度が強まり、輝度が高まる。特に、W副画素内にR,G.Bフィルターを備えることにより輝度が低下するが、W副画素部のR,G,B副副画素にそれぞれ光学共振器構造を導入したことにより、輝度低下が改良されるので、高輝度で且つ外光反射によるコントラストの低下を防止した高品質な画像が観察できる。
【0094】
実施例3
本発明の図8に示される構成のカラー表示装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図12に段階的工程を示す。実施例1および実施例2は基板側に発光を取り出すボトムエミッション型であるが、透明電極/白色OLED/金属電極の積層順を逆にし、上面に基板に発光を取り出すトップエミッション型の態様例である。
(1)基板21上に光反射電極24、白色有機電界発光層25、及び透明電極26を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板29上に、実施例1の(1)のCF層2の形成と同様にしてCF層23を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記(1)のOLED基板と上記(2)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層28を挟んで貼り合わせる。
【0095】
実施例4
実施例3に対して共振器構造を有するトップエミッション型態様である。図9に示される構成のカラー表示装置であって、図13に段階的工程を示す。
(1)基板31上に光反射電極34、白色有機電界発光層35、透明電極36、光路長調整層37、及び光半透過反射層32を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板39上に、実施例1の(1)のCF層2の形成と同様にしてCF層33を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記(1)のOLED基板と上記(2)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層38を挟んで貼り合わせる。
【0096】
実施例5
実施例4に対して別のトップエミッション型共振器構造態様のカラー表示装置の製造方法について、図面を用いて説明する。図14に示される構成のカラー表示装置であって、図15に段階的工程を示す。
【0097】
(1)基板41上に光反射層44、光路長調整層47、透明電極46、白色有機電界発光層45、及び光半透過反射電極42を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板49上に、実施例1の(1)のCF層2の形成と同様にしてCF層43を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記(1)のOLED基板と上記(2)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層48で挟んで貼り合わせる。
【0098】
実施例6
実施例1に対して光取出し構造を有する態様である。図16に示される構成のカラー表示装置の製造方法であって、図17に段階的工程を示す。
【0099】
(1)基板51上に、実施例1のCF層2の形成と同様にしてCF層52を形成する。
(2)上記CF層52の上面に光取出し構造層510を形成する。光取出し構造層510は下記(A)、(B)の何れによって形成しても良い。
(A)透明レジスト(屈折率1.5)に1μm未満の微粒子(屈折率1.8)を分散した層を塗布、硬化する。用いられる透明レジストは、CF層を形成する材料組成から色材のみを除いた組成であり、微粒子はITO、SiN、TiO、ZnO等である。
(B)透明レジスト(屈折率1.5)で1μm未満の孔または突起を周期配列パターニングする。その上面を光透過絶縁層SiN(屈折率1.8)で被覆成膜して回折格子を形成する。透明レジストは、CF層を形成する材料組成から色材のみを除いた組成であり、感光性を有するのでフォトリソグラフィ法によって前記の周期配列パターニングが成される。或いは、孔または突起を周期配列した原版を押圧して転写するレプリカ製法でも良い。
【0100】
(3)上記光取出し構造層510の上面に実施例1の透明電極4と同様にして透明電極54を各副画素毎に電気的に分離形成する。
(4)上記透明電極54の上面に実施例1の白色有機電界発光層5と同様にして白色有機電界発光層55(白色OLED)を形成する。
(5)上記白色OLEDの上面に実施例1の光反射電極6と同様にして光反射電極56を形成する。
【0101】
光取出し構造層を設けることにより、CF層(屈折率1.5)と透明電極(屈折率1.8)の屈折率差によって生じる面法線に対する全反射角度56°以上の白色OLED配光成分を、CF層を通して基板外部の観察側に取出すことができ、輝度向上または省電力化が得られる。
【0102】
実施例7
実施例2に対して光取出し構造を有する態様である。図18に示される構成のカラー表示装置の製造方法であって、図19に段階的工程を示す。
【0103】
(1)基板61上に、実施例1のCF層2の形成と同様にしてCF層62を形成する。
(2)上記CF層62上面に実施例6の光取出し構造層510の形成と同様にして光取出し構造層610を形成する。光取出し構造層610は実施例6に示す(A)、(B)の何れによって形成しても良い。
(3)上記光取出し構造層610上面に実施例2の光半透過反射層13の形成と同様にして光半透過反射層63を形成する。
(4)上記光半透過反射層63の上面に、CF層62のパターニングに応じて、R,G,Bによって膜厚の異なる光路長調整層67を実施例2の光路長調整層17の形成と同様にして形成する。
【0104】
(5)上記光路長調整層67の上面に実施例1の透明電極4と同様にして透明電極64を各副画素毎に電気的に分離形成する。
(6)上記透明電極64の上面に実施例1の白色有機電界発光層5と同様にして白色有機電界発光層65(白色OLED)を形成する。
(7)上記白色OLEDの上面に実施例1の光反射電極6と同様にして光反射電極66を形成する。
【0105】
実施例8
実施例3に対して光取出し構造を有する態様である。図20に示される構成のカラー表示装置の製造方法であって、図21に段階的工程を示す。
【0106】
(1)基板71上に光反射電極74、白色有機電界発光層75、及び透明電極76を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板79上に、実施例1のCF層2の形成と同様にしてCF層73を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記CF層73上面に実施例6の光取出し構造層510の形成と同様にして光取出し構造層710を形成する。光取出し構造層710は実施例6に示す(A)、(B)の何れによって形成しても良い。
【0107】
(4)上記(1)のOLED基板と上記(3)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層78で挟んで貼り合わせる。接着層78は透明樹脂接着剤(屈折率1.5)に1μm未満の微粒子(屈折率1.8)を分散してなり、微粒子はITO、SiN、TiO、ZnO等である。
【0108】
実施例9
実施例4に対して光取出し構造を有する態様である。図22に示される構成のカラー表示装置の製造方法であって、図23に段階的工程を示す。
【0109】
(1)基板81上に光反射電極84、白色有機電界発光層85、透明電極86、光路長調整層87、及び光半透過反射層82を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板89上に、実施例1のCF層2の形成と同様にしてCF層83を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記CF層83上面に実施例6の光取出し構造層510の形成と同様にして光取出し構造層810を形成する。光取出し構造層810は実施例6に示す(A)、(B)の何れによって形成しても良い。
【0110】
(4)上記(1)のOLED基板と上記(3)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層88で挟んで貼り合わせる。接着層88は透明樹脂接着剤(屈折率1.5)に1μm未満の微粒子(屈折率1.8)を分散してなり、微粒子はITO、SiN、TiO、ZnO等である。
【0111】
実施例10
実施例5に対して光取出し構造を有する態様である。図24に示される構成のカラー表示装置の製造方法であって、図25に段階的工程を示す。
【0112】
(1)基板91上に光反射層94、光路長調整層97、透明電極96、白色有機電界発光層95、及び光半透過反射電極92を順に積層形成してOLED基板を用意する。
(2)別途、透明基板99上に、実施例1のCF層2の形成と同様にしてCF層93を形成したカラーフィルター基板を用意する。
(3)上記CF層93上面に実施例6の光取出し構造層510の形成と同様にして光取出し構造層910を形成する。光取出し構造層910は実施例6に示す(A)、(B)の何れによって形成しても良い。
【0113】
(4)上記(1)のOLED基板と上記(3)のカラーフィルター基板の画素を相互に位置合せして、各基板のデバイス形成面を対面させ接着層98を挟んで貼り合わせる。接着層98は透明樹脂接着剤(屈折率1.5)に1μm未満の微粒子(屈折率1.8)を分散してなり、微粒子はITO、SiN、TiO、ZnO等である。
【産業上の利用可能性】
【0114】
本発明の表示装置は、携帯電話ディスプレイ、パーソナルデジタルアシスタント(PDA)、コンピュータディスプレイ、自動車の情報ディスプレイ、TVモニター、あるいは一般照明を含む広い分野で幅広い分野で応用される。
【符号の説明】
【0115】
1,11,21,31,41,51,61,71,81,91:基板
2,12,23,33,43,52,62,73,83,93:カラーフィルター層(CF層)
4,14,26,36,46,54,64,76,86,96:透明電極
5,15,25,35,45,55,65,75,85,95:白色有機電界発光層
6,16,24,34,56,66,74,84:光反射電極
44,94:光反射層
28,38,48,78,88,98:接着層
29,39,49,79,89,99:透明基板
13,32,63,82:光半透過反射層
42,92:光半透過反射電極
510,610,710,810,910:光取出し構造層
17,37,47,67,87,97:光路長調整層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成されるカラー表示装置であって、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えていることを特徴とするカラー表示装置。
【請求項2】
前記少なくとも2種の副画素が青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素を有し、それぞれ青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターを有し、前記白色副画素が青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素を有し、それぞれ青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターを有することを特徴とする請求項1に記載のカラー表示装置。
【請求項3】
前記青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素の青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターと前記青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素の青色フィルター、緑色フィルター及び赤色フィルターとが同色毎に同一組成であることを特徴とする請求項2に記載のカラー表示装置。
【請求項4】
前記白色副画素の少なくとも2種の副副画素が各々共振器を形成していることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載のカラー表示装置。
【請求項5】
前記少なくとも2種の副画素が各々共振器を形成していることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載のカラー表示装置。
【請求項6】
前記青色副画素、緑色副画素及び赤色副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記青色副副画素、緑色副副画素及び赤色副副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記青色副画素と前記青色副副画素の共振器、緑色副画素と緑色副副画素の共振器、及び赤色副画素と赤色副副画素の共振器が同色毎に同一構成であることを特徴とする請求項2〜請求項5のいずれか1項に記載のカラー表示装置。
【請求項7】
基板上に複数の画素を備え、各画素が白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備え、波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副画素と白色副画素より構成され、前記白色副画素は波長の異なる光を射出する少なくとも2種の副副画素に面積分割され、該副副画素がそれぞれ白色発光する有機電界発光層とカラーフィルターを備えているカラー表示装置の製造方法であって、前記少なくとも2種の副画素と少なくとも2種の副副画素のカラーフィルターを同色毎に同一の組成で連続して形成し、且つ、前記少なくとも2種の副画素と少なくとも2種の副副画素において白色発光する有機電界発光層を同一の組成で連続して形成することを特徴とするカラー表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記少なくとも2種の副画素が赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素を有し、前記白色副画素が赤色副副画素、緑色副副画素及び青色副副画素を有することを特徴とする請求項7に記載のカラー表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記赤色副画素、緑色副画素及び青色副画素と、前記赤色副副画素、緑色副副画素及び青色副副画素がそれぞれ共振器を形成し、前記赤色副画素と前記赤色副副画素の光路長調整層、前記緑色副画素と前記緑色副副画素の光路長調整層、及び前記青色副画素と前記青色副副画素の光路長調整層を同色毎に同一の材料で同一の厚みで形成することを特徴とする請求項8に記載のカラー表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記光路長調整層が無機絶縁材料であることを特徴とする請求項9に記載のカラー表示装置の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2010−80423(P2010−80423A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−67723(P2009−67723)
【出願日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】