説明

カラー酸化被膜層の形成方法

【課題】本発明は、従来の技術に比べて処理費用が低く、色相の再現性が優れ、美麗かつ多様で、装飾性が優れたカラー酸化被膜層の形成することを課題とする。
【解決手段】素材をニッケルメッキまたはクロムメッキしてメッキ層を形成する工程(S10)と、メッキ層を形成した素材を200℃〜500℃の酸化性雰囲気下において1分〜20時間、酸化熱処理して前記メッキ層上にカラー酸化被膜層を形成するカラー工程(S
30)を具備することを特徴とするカラー酸化被膜層の形成方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、色相が多様かつ美麗で、装飾性が優れたカラー色相を具現するため、ニッケル又はクロムメッキ層を酸化熱処理してカラー酸化被膜層を形成するカラー酸化被膜層の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
産業が発達し生活が潤沢になるにつれて、金属固有の特性を有しかつ高機能、高付加価値が得られる新素材とともに多様な色調概念を反映したカラー素材に対する需要が増加している。このため、ニッケル及びクロムメッキ素材に酸化熱処理技術を応用して多様な色相を発現することができる技術を開発することになった。
【0003】
これに対し、カラー色相の具現方法として、従来、素材の表面に直接カラー塗料で塗装して着色したり、カラーコーティング組成物でコーティングして熱処理したり、めっき液に浸漬して金属固有または金属化合物の色相を出す方法が用いられてきた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記した従来の方法は時間の経過の際、色相が老化したり、めっき液に伴う環境の公害を誘発することは勿論、多様な色相を具現するのに限界があり、耐食性が低下するという問題点があった。また、素材に金メッキをしてカラー色相を得る方法は、耐食性及び装飾性は優れるが、処理費用が高く、単一の金色のみが得られるという限界がある。
本発明はかかる従来の技術の問題点を解決するためになされたもので、従来の技術に比べて処理費用が低く、色相の再現性が優れ、美麗かつ多様で、装飾性が優れたカラー酸化被膜層の形成方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、素材をニッケルメッキまたはクロムメッキしてメッキ層を形成する工程と、メッキ層を形成した素材を200℃〜500℃の酸化性雰囲気下において1分〜20時間、酸化熱処理して前記メッキ層上にカラー酸化被膜層を形成するカラー工程を具備することを特徴とするカラー酸化被膜層の形成方法である。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、従来の技術に比べて処理費用が低く、色相の再現性が優れ、美麗かつ多様で、装飾性が優れたカラー酸化被膜層の形成方法を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明は、(a)素材をニッケルメッキまたはクロムメッキしてメッキ層を形成する工程と、(b)メッキ層を形成した素材を200℃〜500℃の酸化性雰囲気下において1分〜20時間、酸化熱処理して前記メッキ層上にカラー酸化被膜層を形成するカラー工程と、を具備している。
【0008】
ここで、前記(a)工程の素材は、鉄系のあらゆる素材は勿論、アルミニウム(Al)、銅(Cu)などあらゆる非鉄金属をはじめ、ニッケルメッキまたはクロムメッキが可能なあらゆる種類の材料または製品であり、500℃以上の温度で溶融または形状が変形しない材料を含む。
【0009】
また、前記(a)工程のニッケルメッキ工程は、電気メッキ、無電解メッキなどあらゆるニッケルメッキ工程で実施することができる。一方、クロムメッキ工程は、硬質クロムメッキ、装飾用クロムメッキなどあらゆるクロムメッキ工程を含む。
【0010】
前記(b)工程において、酸化ガスはメッキ層の表面にカラー酸化被膜層を形成するため、酸素、空気、二酸化炭素、蒸気などあらゆる酸化性ガスを単独または混合して用いられる。また、酸化性ガスの他、窒素ガスを含むことができる。
このとき、前記(b)工程のカラー工程において、酸化熱処理後に形成されたカラー酸化被膜層の色相は、酸化熱処理の温度、時間、酸化熱処理雰囲気によって金色、紫色、青色及び薄緑色などに発現され得る。
【0011】
前記のように構成された本発明においては、酸化ガスを用いた酸化熱処理を実施してカラー酸化被膜層を形成するため、従来の方法では発現できない多様かつ装飾性が優れたカラー色相を具現することができる。
さらに、この際、形成された表面酸化被膜層の構成成分は、ニッケルメッキを実施した場合はNiOであり、クロムメッキを実施した場合はCrである。従って、硬度が高くて、素材の使用の際または取扱の際に表面に傷が発生しにくいため、装飾性の低下または耐食性の低下が発生しない。
【0012】
以下、添付図面に基づいて本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明に従うカラー色相の具現方法を示すフローチャートである。
(1)まず、本発明は素材の耐食性を向上するため、ニッケルメッキまたはクロムメッキ工程を経る(S10)。次に、前記メッキ工程を通じて得られた素材と酸化ガスを炉内に投入し(S20)、カラー工程を実施する。前記カラー工程はメッキ層の表面を酸化熱処理を実施してカラー酸化被膜層を形成することであって(S30)、酸化熱処理の条件は発現しようとする色相に従い、酸化熱処理が行われる温度を200℃〜500℃の範囲において、1分〜20時間の間実施する。
【0013】
酸化熱処理温度を上記の範囲に設定したのは、酸化熱処理の温度を200℃未満とした場合には酸化熱処理が行われなくて望むカラー酸化被膜層を得ることができなくなり、酸化熱処理の温度が500℃を超過する場合には黒色に維持されるからである。また、酸化熱処理時間を上記の範囲に設定したのは、酸化熱処理時間が1分未満であると、酸化被膜層が形成される時間が充分ではないので均一なカラー酸化被膜層を得にくくなり、20時間を超過する場合は経済的な観点からみると不必要な時間をもたらすからである。
【0014】
酸化熱処理後に形成されたカラー酸化被膜層の色相は、酸化熱処理の温度、時間、酸化熱処理雰囲気によって金色、紫色、青色及び薄緑色に発現され、各色相の中間色相も具現される。
さらに、前記カラー酸化被膜層の厚さは0.005μm〜5μmとすることが好ましい。この理由は、表面酸化被膜層の厚さによって光の散乱や干渉に影響を与えて発現されるカラーが異なるためである。
(2)その後、前記酸化熱処理過程を通じてカラー酸化被膜層が形成された素材は空冷、炉冷、水冷及び油冷の中からいずれか一つの方法によって冷却される(S40)。本発明のカラー酸化被膜層の形成方法により具現されたカラー色相は、ニッケルメッキ層またはクロムメッキ層が酸化することによって色を発現し、酸化熱処理の条件によって夫々金色、紫色、青色、薄緑色系列の多様な色相及び各色相の中間色相を発現することができる。従って、その色相が多様かつ美麗であるばかりでなく、耐食性が優れ、これによってその用途を室内外の装飾用、各種の構造物及び建築用などに多様に適用し得る。
【0015】
一方、酸化熱処理を実施する熱処理としては、ピット型炉(pit type furnace)、シールドクエンチファーネス(sealed quench furnace)、流動床炉または一つ以上のチャンバで構成された連続炉を適用することができる。しかし、前記酸化熱処理の条件を満たせば、これに限定されるものではない。
【0016】
また、本発明は、前記酸化熱処理方式以外にも高周波誘導加熱方式を適用してカラー酸化被膜層を形成することができる。前記高周波誘導加熱方式の適用の際は、素材を短時間内に所定の温度に加熱することができるので、前記酸化ガスと温度で10秒〜30分程度の短い時間に色を発現することができる。
【0017】
前記したように、本発明のカラー酸化被膜層の形成方法は、従来のコーティングの後、熱処理法、メッキ法では発現できない多様な色相を具現することができ、価格が低廉で、表面に傷があまり発生せず、装飾性がすぐれたカラー色相を具現することができる。
次に、本発明の具体的な実施例について説明する。
(実施例1)
ニッケルメッキ鋼材を320℃の空気雰囲気において6時間、酸化熱処理を実施した後、空冷した。その結果、金色のカラー酸化被膜層が形成された。また、10時間、酸化熱処理を実施した場合、濃い金色のカラー酸化被膜層を得た。
(実施例2)
ニッケルメッキ鋼材を炉内に投入した後、320℃の蒸気雰囲気において6時間、酸化熱処理を実施した後、空冷した。その結果、表面色相は実施例1と同一の金色のカラー酸化被膜層が形成された。
【0018】
(実施例3)
ニッケルメッキ鋼材を炉内に投入し、360℃の空気雰囲気において8時間、酸化熱処理を実施した後、空冷した。その結果、表面色相が薄緑色のカラー酸化被膜層を得た。
【0019】
(実施例4)
ニッケルメッキ鋼材を空気雰囲気において4.5時間、360℃の炉で酸化熱処理後、水冷した。その結果、素材の発現表面色相は青色であった。
(実施例5)
クロムメッキ鋼材を空気雰囲気において440℃で5時間、酸化熱処理を実施した後、空冷した。その結果、金色のカラー酸化被膜層が形成された。
【0020】
前記したようになされた本発明のカラー酸化被膜層の形成方法は、以下のような効果を提供する。
(1)従来の方法では発現できない各種のカラー色相を具現できるため、その色相が多様かつ美麗で装飾性が優れ、その用途が多様である。
(2)従来の方法に比べて簡単な工程でカラー色相を具現できるため、製造コストが低廉である。
(3)従来の方法に比べて表面硬度が高くて、使用の際、表面の傷があまり発生しないので、耐食性及び装飾性の低下を防止できる。
【0021】
なお、以上のように、本発明は限定された実施例及び図面により説明したが、本発明はこれに限定されるものではないし、本発明の属する技術分野における通常の知識を有するものによって本発明の技術思想及び特許請求の範囲の均等な範囲内において多様な修正及び変形が可能であることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、本発明の実施例に従うカラー酸化被膜層の形成方法を示すフローチャートである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
素材をニッケルメッキまたはクロムメッキしてメッキ層を形成する工程と、メッキ層を形成した素材を200℃〜500℃の酸化性雰囲気下において1分〜20時間、酸化熱処理して前記メッキ層上にカラー酸化被膜層を形成するカラー工程を具備することを特徴とするカラー酸化被膜層の形成方法。
【請求項2】
前記素材はあらゆる鉄系と、アルミニウム、銅等の非鉄金属などニッケルまたはクロムメッキが可能なあらゆる種類の材料または製品であって、500℃以上の温度で溶融されたり形状が変形されない材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のカラー酸化被膜層の形成方法。
【請求項3】
ニッケルメッキは電気メッキ、無電解ニッケルメッキなどあらゆる種類のニッケルメッキを含み、クロムメッキは硬質クロムメッキ、装飾用クロムメッキなどあらゆるクロムメッキのうちから選ばれたいずれか一つにすることを特徴とする請求項1に記載のカラー酸化被膜層の形成方法。
【請求項4】
前記酸化性雰囲気は酸素、空気、二酸化炭素、蒸気などあらゆる酸化性ガスのうちから単独またはこれらの混合ガスであり、これらガスに窒素が含まれうることを特徴とする請求項1に記載のカラー酸化被膜層の形成方法。
【請求項5】
酸化熱処理を実施する熱処理は、あらゆる形態のピット型炉、シールドクエンチファーネス、流動床炉または一つ以上のチャンバで構成された連続炉であることを特徴とする請求項1に記載のカラー酸化被膜層の形成方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2008−13843(P2008−13843A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−13643(P2007−13643)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(506061646)
【Fターム(参考)】