説明

カリウムチャンネルのオープナーとしての3,4−ジアミノ−3−シクロブテン−1,2−ジオン誘導体

本発明は、新規な3,4−ジアミノ−3−シクロブテン−1,2−ジオン誘導体、それらを含有する製薬学的組成物およびカリウムチャンネルに関連する障害の処置におけるそれらの使用に対向される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な3,4−ジアミノ−3−シクロブテン−1,2−ジオン誘導体、それらを含有する製薬学的組成物およびカリウムチャンネル関連障害の処置におけるそれらの使用に対向される。かくして、本発明の化合物は、種々の障害の処置のために有用である。これは、限定されるものではないが、尿失禁、過活動性膀胱、高血圧、勃起機能不全、女性性的障害、月経困難、感応性腸症候群、気道機能亢進、てんかん、卒中、アルツハイマーおよびパーキンソン病、心筋傷害、冠状動脈疾患ならびに毛髪喪失および禿頭症を含む。
【背景技術】
【0002】
イオンチャンネルは、イオンの膜貫通移動の調節をとおして細胞機能のホメオスタシスにおいて基本的役割を演じる。細胞活動はイオンチャンネルの活動の修飾によって影響を受けることができる。これは膜電位差における変化をもたらす。カリウムチャンネルはイオンチャンネルの多様かつ偏在性グループである。それらは、主として、細胞の静止膜電位を調節し、そして細胞の励起レベルを弱める。機能的KATPチャンネルは、4つの内部に整流するカリウムチャンネル・サブユニット(Kir6.2)および4つのスルホニル尿素受容体(SUR)サブユニットから組み立てられるヘテロ八量体である。2つのSUR遺伝子、SUR1およびSUR2が存在する。SUR1/Kir6.2チャンネルは膵臓と脳において見出だされている。2つの主要なスプライス変異体はSUR2遺伝子、SUR2AおよびSUR2Bから生じ、これらはC末端の42個のアミノ酸においてのみ異なる。SUR2A/Kir6.2チャンネルは心臓および骨格組織において見出だされるが、SUR2B/Kir6.2チャンネルは膀胱を含む多くの組織の平滑筋において見出だされている(非特許文献1)。多数の疾病または症状は、カリウムチャンネル・オープナー(opener)により処置することができる。これは、過活動性膀胱、尿失禁、男性勃起機能不全、女性性的障害、早産、良性前立腺増殖症(BPH)、月経困難、神経変性、卒中、疼痛、冠状動脈疾患、アンギナ、虚血、摂食障害、感応性腸症候群、脱毛症を含む。
【0003】
尿失禁(UI)は患者の全体的な生活の質に影響を与える疾患である。過活動性膀胱(OAB)は、全ての診断されたUI症例の40〜70%の報告された有病率をもつ、UIのもっとも一般的な形態である(非特許文献2)。OABは、増大した尿の頻度、切迫、および尿の不随意な排出という症候を特徴とする。OABの一次症例は、予期せず、かつ不随意に収縮する過敏性膀胱である。理想的な製薬学的作用物は、正常な排出収縮をそのままに保ちながら不随意の収縮を抑制することが必要である。ATP感受性カリウムチャンネル・オープナー(KCO)はそのような作用物として働くことができるであろう。ATP感受性カリウムチャンネル(KATP)は、膀胱平滑筋において発現され、そしてこれらの細胞の静止膜電位の重要なレギュレーターとして機能する。これらのチャンネルを選択的に開く化合物は細胞を過分極し、そして細胞の興奮を減少して、正常な排尿回路をそのままに保ちながら不随意の膀胱収縮の抑制をもたらす。
【非特許文献1】Aguilar−Bryan,1998
【非特許文献2】Wein,2000
【発明の開示】
【0004】
本発明は、式(I)
【0005】
【化1】

【0006】
[式中、
nは整数0〜2であり;
は、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールよりなる群から選ばれ;ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロゲン置換C1−4アルキルおよびハロゲン置換C1−4アルコキシよりなる群から独立して選ばれる1個以上の置換基により置換されている]
の化合物、および製薬学的に許容できるそれらの塩に関する。
【0007】
本発明の具体例は、製薬学的に許容できる担体およびいずれかの前記化合物を含んでなる製薬学的組成物である。本発明の具体例は、いずれかの前記化合物および製薬学的に許容できる担体を混合することによって調製される製薬学的組成物である。本発明の具体例は、いずれかの前記化合物および製薬学的に許容できる担体を混合することを含む製薬学的組成物の調製方法である。
【0008】
本発明の具体例は、前記の化合物または製薬学的組成物のいずれかの治療学的に有効な量を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、イオンチャンネル、好ましくはカリウムイオンチャンネル、より好ましくはATP感受性カリウムイオンチャンネルに関連する障害を処置する方法である。
【0009】
本発明の例は、前記の化合物または製薬学的組成物のいずれかの有効量を、それらを必要とする被験者に投与することを含む、尿失禁、過活動性膀胱、高血圧、勃起機能不全、女性性的障害、月経困難、感応性腸症候群、気道機能亢進、てんかん、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋傷害、冠状動脈疾患、毛髪喪失および禿頭症よりなる群から選ばれる障害、好ましくは尿失禁を処置する方法である。
【0010】
本発明のその他の例は、それらを必要とする被験者における(a)尿失禁、(b)過活動性膀胱、(c)高血圧、(d)勃起機能不全、(e)女性性的障害、(f)月経困難、(g)感応性腸症候群、(h)気道機能亢進、(i)てんかん、(j)卒中、(k)アルツハイマー病、(l)パーキンソン病、(m)心筋傷害、(n)冠状動脈疾患、(o)毛髪喪失または(p)禿頭症:を処置するための薬物の製造における本明細書に記述される化合物のいずれかの使用である。
【0011】
本発明は、式(I)
【0012】
【化2】

【0013】
[式中、nおよびRは本明細書で定義されたとおりである]
の化合物に関する。本発明の化合物は、イオンチャンネル・オープナー、より具体的にはカリウムイオンチャンネル・オープナーである。かくして、本発明の化合物は、限定されるものではないが、尿失禁、過活動性膀胱、高血圧、勃起機能不全、女性性的障害、月経困難、感応性腸症候群、気道機能亢進、てんかん、卒中、アルツハイマーおよびパーキンソン病、心筋傷害、冠状動脈疾患ならびに毛髪喪失および禿頭症を含む、種々の障害の処置のために有用である。好ましくは、本発明の化合物は尿失禁または過活動性膀胱の処置において有用である。
【0014】
本発明の1つの実施態様では、nは整数0〜1である。本発明のその他の実施態様では、nは整数1〜2である。
【0015】
本発明の1つの実施態様では、Rは、シクロアルキル、アリールおよび5ないし6員のヘテロアリールよりなる群から選ばれ;ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキルおよびフッ素置換C1−4アルキルよりなる群から独立して選ばれる1個以上の置換基により置換されている。
【0016】
本発明のその他の実施態様では、Rは、シクロアルキル、フェニルおよび6員のヘテロアリールよりなる群から選ばれ;ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、C1−4アルキル、フッ素置換C1−4アルキルおよびシアノよりなる群から独立して選ばれる1〜3個の置換基により置換されている。
【0017】
本発明のその他の実施態様では、Rは、シクロヘキシル、1−アダマンチル、フェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2−フルオロフェニル、2−トリフルオロメチル−フェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、3.5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル、2−エチル−4−シアノ−フェニル、2,4−ジクロロ−6−メチル−フェニルおよび5−シアノ−ピリド−2−イルよりなる群から選ばれる。
【0018】
本発明のその他の実施態様では、Rは、フェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、2−エチル−4−シアノ−フェニルおよび2,4−ジクロロ−6−メチル−フェニルよりなる群から選ばれる。
【0019】
本発明のその他の実施態様では、nは0であり、そしてRは2−エチル−4−シアノ−フェニルである。
【0020】
本発明のさらなる実施態様は、本明細書で定義された可変物(variables)(すなわち、nおよびR)の1つ以上について選ばれる置換基が、本明細書で定義されたような完全なリストから選ばれるいずれか個々の置換基または置換基のいずれかのサブセットであるように独立して選ばれる、それらの置換基を含む。
【0021】
本発明の代表的な化合物は下記表1に列挙されるとおりである。本発明の1つの実施態様では、いずれか1個の化合物または化合物のサブセットは、下記表1に列挙される代表的な化合物から選ばれる。
【0022】
【表1】

【0023】
本明細書で使用されるように、「ハロゲン」は、塩素、臭素、フッ素およびヨウ素を意味するであろう。好ましくは、ハロゲンは塩素、臭素またはフッ素、より好ましくは塩素またはフッ素である。
【0024】
本明細書で使用されるように、用語「アルキル」は、単独でもまた置換基の一部として使用されても、直鎖および分枝鎖を含む。例えば、アルキル基は、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、t−ブチル,ペンチルなどを含む。同様に、単独でもまた置換基の一部として使用されても、用語「C1−4アルキル」は、1〜4個の炭素原子を含有する直鎖または分枝鎖を含む。例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチルおよびt−ブチル。
【0025】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、「アルコキシ」は、単独でもまた置換基の一部として使用されても、前記直鎖および分枝鎖アルキル基の酸素エーテル基を指すであろう。例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシ,n−ヘキシルオキシなどを含む。同様に、単独でもまた置換基の一部として使用されても、用語「C1−4アルコキシ」は、前記直鎖および分枝鎖C1−4アルキル基の酸素エーテル基を指すであろう。例えば、メトキシ、エトキシ、n−プロポキシ、sec−ブトキシ、t−ブトキシなどを含む。
【0026】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、用語「ハロゲン置換C1−4アルキル」は、少なくとも1個のハロゲン原子により置換された、好ましくは少なくとも1個のフッ素原子により置換された先に定義されたようなすべてのC1−4アルキル基を意味するであろう。適当な例は、限定されるものではないが、−CF、−CHF、−CH−CF、−CF−CF−CF−CFなどを含む。
【0027】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、用語「フッ素置換C1−4アルキル」は、少なくとも1個のフッ素原子、好ましくは1〜3個のフッ素原子により置換された先に定義されたようなすべてのC1−4アルキル基を意味するであろう。適当な例は、限定されるものではないが、−CF、−CHF、−CH−CF、−CF−CF−CF−CFなどを含む。
【0028】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、用語「ハロゲン置換C1−4アルコキシ」は、少なくとも1個のハロゲン原子により置換された、好ましくは少なくとも1個のフッ素原子により置換された先に定義されたようなすべてのC1−4アルコキシ基を意味するであろう。適当な例は、限定されるものではないが、−OCF、−OCHF、−OCH−CF、−OCF−CF−CF−CFなどを含む。
【0029】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、用語「フッ素置換C1−4アルコキシ」は、少なくとも1個のフッ素原子、好ましくは1〜3個のフッ素原子により置換された先に定義されたようなすべてのC1−4アルコキシ基を意味するであろう。適当な例は、限定されるものではないが、−OCF、−OCHF、−OCH−CF、−OCF−CF−CF−CFなどを含む。
【0030】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、用語「シクロアルキル」は、すべての安定な単環式、二環式、多環式または架橋飽和環系、例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチルおよびシクロオクチル、テトラヒドロナフチル、アダマンチルなどを意味するであろう。
【0031】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、「アリール」は、非置換炭素環式芳香基、例えばフェニル、ナフチルなどを指すであろう。好ましくは、アリール基はフェニルまたはナフチル、より好ましくはフェニルである。
【0032】
本明細書で使用されるように、別に示されない限り、「ヘテロアリール」は、O、NおよびSからなる基から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、場合によってはO、NおよびSからなる基から独立して選ばれる1〜3個のさらなるヘテロ原子を含有するすべての5または6員の単環式芳香環構造;あるいはO、NおよびSからなる基から選ばれる少なくとも1個のヘテロ原子を含有し、場合によってはO、NおよびSからなる基から独立して選ばれる1〜4個のさらなるヘテロ原子を含有する9または10員の二環式芳香環構造を指すであろう。好ましくは、ヘテロアリールは5〜6環原子を含有する(すなわち、ヘテロアリール基は5〜6員のヘテロアリールである)、より好ましくは、ヘテロアリールは6環原子を含有する(すなわち、ヘテロアリール基は6員のヘテロアリールである)。ヘテロアリール基は、結果が安定な構造になるように環のいかなるヘテロ原子または炭素原子に結合されてもよい。
【0033】
適当なヘテロアリール基の例は、限定されるものではないが、ピロリル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イミダゾリル、プラゾリル、イソオキサゾリル、イソチアゾリル、トリアゾリル、チアジアゾリル、ピリジル、ピリダジニル、ピリミジニル、ピラジニル、ピラニル、フラザニル、インドリジニル、インドリル、イソインドリニル、インダゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、ベンズイミダゾリル、ベンズチアゾリル、プリニル、キノリジニル、キノリニル、イソキノリニル、イソチアゾリル、シノリニル、フタラジニル、キナゾリニル、キノキサリニル、ナフチリジニル、プテリジニルなどを含む。好ましくは、ヘテロアリール基はピリジルである。
【0034】
本明細書で使用されるように、表記「*」は立体形成中心の存在を示すであろう。
【0035】
特定の基が「置換される」(例えば、アリール、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール)場合、その基は、置換基のリストから独立して選ばれる1個以上の置換基、好ましくは1〜5個の置換基、より好ましくは1〜3個の置換基、もっとも好ましくは1〜2個の置換基を有してもよい。
【0036】
置換基に関して、用語「独立して」は、1個以上のそのような置換基が可能である場合には、そのような置換基が互いに同じでもまた異なっていてもよいことを意味する。
【0037】
より正確な説明を与えるために、本明細書に与えられる量的表現のあるものは、用語「約」により限定されない。用語「約」が明確に使用されてもまた不明確に使用されても、本明細書に与えられるどの量も、実際に与えられた値を指すことが意味され、そしてまた、それは、そのような与えられた値についての実験および/または測定条件による近似値を含む、当該技術分野における通常の技術に基づいて合理的に推定できるそのような与えられた値に対する近似値を指すことを意味すると理解される。
【0038】
本開示をとおして使用される標準命名法の下では、指定された側鎖の末端部分が最初に記述され、続いて結合点への隣接する官能基が記述される。したがって、例えば、「フェニル−C1−4アルキル−アミノ−カルボニル−C1−4アルキル−」置換基は、式
【0039】
【化3】

【0040】
の基を指す。
【0041】
本明細書で使用されるように、用語「被験者」は、処置、観察または実験の対象であった動物、好ましくは哺乳動物、もっとも好ましくはヒトを指す。
【0042】
本明細書で使用されるように、用語「治療学的に有効な量」は、処置されている疾病または障害の症候の軽減を含む、研究者、獣医師、医師または他の臨床医によって探求されている、組織系、動物またはヒトにおいて生物学的または医学的応答を惹起する活性化合物または製薬学的作用物のその量を意味する。
【0043】
本明細書で使用されるように、用語「組成物」は、特定量における特定成分を含んでなる生産物、ならびに特定量における特定成分の組み合わせ物から直接または間接的にもたらされるすべての生産物を包含することが意図される。
【0044】
本発明による化合物が少なくとも1つのキラル中心を有する場合には、それらは鏡像異性体として存在してもよい。本化合物が2つ以上のキラル中心を保有する場合には、それらはさらに、ジアステレオマーとして存在してもよい。全てのそのような異性体およびそれらの混合物が本発明の範囲内に包含されることは理解されるべきである。好ましくは、本化合物が鏡像異性体として存在する場合、鏡像異性体は、約80%を超えるか等しい鏡像異性体過剰、より好ましくは、約90%を超えるか等しい鏡像異性体過剰、なお、より好ましくは、約95%を超えるか等しい鏡像異性体過剰、なお、より好ましくは、約98%を超えるか等しい鏡像異性体過剰、もっとも好ましくは、約99%を超えるか等しい鏡像異性体過剰において存在している。同様に、本化合物がジアステレオマーとして存在する場合、ジアステレオマーは、約80%を超えるか等しいジアステレオマー過剰、より好ましくは、約90%を超えるか等しいジアステレオマー過剰、なお、より好ましくは、約95%を超えるか等しいジアステレオマー過剰、なお、より好ましくは、約98%を超えるか等しいジアステレオマー過剰、もっとも好ましくは、約99%を超えるか等しいジアステレオマー過剰において存在している。
【0045】
さらにまた、本発明の化合物の若干の結晶形態物は多形物として存在してもよく、そしてそれ自体、本発明に含まれることが意図される。さらに、本発明の若干の化合物は、水(すなわち、水和物)または通常の有機溶媒との溶媒和物を形成してもよく、そしてそのような溶媒和物もまた本発明に包含されることが意図される。
【0046】
本発明の式(I)の化合物は、次に示すようなスキーム1に略記される方法にしたがって製造されてもよい:
【0047】
【化4】

【0048】
したがって、適当に置換された式(X)の化合物、既知化合物または既知の方法によって製造された化合物は、有機溶媒、例えばTHF、テトラヒドロピランなど、好ましくはTHF中で、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)イソプロポキシドなど、既知の化合物(共に触媒および脱水剤として働く)、既知の化合物の存在下で、R−tert−ブチルスルフィンイミド(また2−メチル−プロパン−2−スルフィン酸アミドとして既知)と反応されて、対応する式(XI)および(XII)の化合物の混合物を生成する。
【0049】
式(XI)および(XII)の化合物の混合物は、好ましくは、既知の方法にしたがい、例えば、クロマトグラフィーによって分離されて、比較的低い極性の式(XI)の化合物および比較的高い極性の式(XII)の化合物を生成する。
【0050】
比較的高い極性の式(XII)の化合物は、有機溶媒、例えばテトラヒドロフラン(THF)およびアルコール、例えばメタノール、エタノールなどの混合液中で、適当に選ばれた還元剤、例えばホウ水素化ナトリウムと反応されて、単一ジアステレオマーとして対応する式(XIII)の化合物を生成する。
【0051】
式(XIII)の化合物は、ジオキサン中HClのような酸またはジクロロメタン(DCM)など中トリフルオロ酢酸(TFA)のような酸と反応されて、式(XIV)の化合物を生成する。
【0052】
式(XIV)の化合物は、有機溶媒、例えばエタノール、イソプロパノールなどの中で、約室温を超える温度、好ましくは約還流温度において、式(XV)の化合物[式中、R1Aは、場合によっては置換されたアリールまたは場合によっては置換されたヘテロアリール(本明細書で定義されたような)である]、既知の化合物または既知の方法によって製造される化合物と反応されて、対応する式(Ia)の化合物を生成する。
【0053】
あるいはまた、式(IV)の化合物は、室温において、有機溶媒、例えばTHF、テトラヒドロピランなど中で、ジ−n−ブチル−スクアレート(ここで、構造中略号「n−Bu」はn−ブチルを表す)、既知化合物と反応されて、対応する式(XVI)の化合物を生成する。
【0054】
式(XVI)の化合物は、室温において、有機溶媒、例えばTHF、テトラヒドロフランなど中で、適当に置換された式(XVII)の化合物[式中、nが1または2であれば、R1Bは、シクロアルキル、場合によっては置換されたアリールまたは場合によっては置換されたヘテロアリール(本明細書で定義されたような)であり、そしてnが0であれば、R1Bは、シクロアルキル(本明細書で定義されたような)である]、既知の化合物または既知の方法によって製造される化合物と反応されて、対応する式(Ib)の化合物を生成する。
【0055】
本発明による化合物の製造方法が立体異性体の混合物を生じる場合、これらの異性体は、慣用の技術、例えば調製用クロマトグラフィーによって分離されてもよい。化合物はラセミ形態において製造されてもよく、あるいは個々の鏡像異性体が鏡像特異的な合成または分割のいずれによって製造されてもよい。化合物は、例えば、光学的に活性な酸、例えば(−)−ジ−p−トロオイル−D−酒石酸および/または(+)−ジ−p−トロオイル−L−酒石酸との塩形成によるジアステレオマーペアの形成、続いて分別晶出および遊離塩基の再生成のような標準技術によって、それらの構成成分鏡像異性体に分割されてもよい。また、化合物は、ジアステレオマーのエステルまたはアミドの形成、続いてクロマトグラフィー分離およびキラル補助剤の除去によって分割されてもよい。あるいはまた、化合物はキラルHPLCカラムを使用して分割されてもよい。
【0056】
本発明の化合物の製造方法のいずれにおいても、関係する分子のいずれかにおける感受性または反応性の基を保護することが必要であり、そして/または望ましいであろう。このことは、慣用の保護基の手段、例えば、Protective Groups in Organic Chemistry,ed.J.F.McOmie,Plenum Press,1973:およびT.H.Greene & P.G.M.Wuts,Protective Groups in Organic Synthesis,John Wiley & Sons,1991において記述された手段によって達成できる。保護基は、当該技術分野において既知の方法を使用して都合のよい続いての段階において除去することができる。
【0057】
当業者は、本発明の反応段階が種々の溶媒または溶媒系中で実施されてもよい場合、該反応段階はまた適当な溶媒または溶媒系の混合液中で実施できることを認識できる。
【0058】
本発明は、その範囲内に本発明の化合物の「プロドラッグ」を含む。一般に、そのようなプロドラッグは、イン・ビボにおいて、要求される化合物に容易に変換できる化合物の機能的誘導体である。かくして、本発明の処置方法では、用語「投与する」は、具体的に開示される化合物または具体的には開示されないが患者への投与後にイン・ビボで特定の化合物に変換する化合物による、既述の種々の障害の処置を包含する。適当なプロドラッグ誘導体の選択および製造のための慣例的操作は、例えば、”Design of Prodrug”,ed.H.Bundgaard,Elsevier,1985において記述されている。
【0059】
本発明は、その範囲内に本発明の化合物の「製薬的に許容できる塩」を含む。医薬における使用のためには、本発明の化合物の塩は非毒性の製薬的に許容できる塩を指す。しかしながら、他の塩は、本発明による化合物またはそれらの製薬学的に許容できる塩の製造において有用であろう。本化合物の適当な製薬学的に許容できる塩は、例えば、本化合物の溶液を、塩酸、硫酸、フマル酸、マレイン酸、コハク酸、酢酸、安息香酸、クエン酸、酒石酸、炭酸またはリン酸のような製薬的に許容できる酸の溶液と混合することによって形成されてもよい酸付加塩を含む。さらにまた、本発明の化合物が酸性部分を担持する場合は、適当な製薬学的に許容できるその塩は、アルカリ金属塩、例えば、ナトリウムもしくはカリウム塩;アルカリ土類金属塩、例えば、カルシウムもしくはマグネシウム塩;および適当な有機リガンドと形成される塩、例えば、第4級アンモニウム塩を含む。かくして、代表的な製薬学的に許容できる塩は、次に示す:
酢酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、安息香酸塩、重炭酸塩、重硫酸塩、重酒石酸塩、ホウ酸塩、臭化物、エデト酸カルシウム、カムシレート(camsylate)、炭酸塩、塩化物、クラブラン酸塩、クエン酸塩、ジヒドロ塩化物、エデト酸塩、エディシレート(edisylate)、エストレート(estolate)、エシレート(esylate)、フマル酸塩、グルセプテート(gluceptate)、グルコン酸塩、グルタミン酸塩、グルコリルアルサニレート(glucollylarsanilate)、ヘキシルレゾルシネート(hexylresorcinate)、ハイドラバミン塩、臭化水素酸塩,塩化水素酸塩、ヒドロキシナフトエート(hydroxynaphthoate)、ヨウ化物、イソチオン酸塩、乳酸塩、ラクトビオネート(lactobionate)、ラウリン酸塩、リンゴ酸塩、マレイン酸塩、マンデル酸塩、メタンスルホン酸塩、メチルブロミド、メチル硝酸塩、メチル硫酸塩、ムケート(mucate)、ナプシレート(napsylate)、硝酸塩、N−メチルグルカミンアンモニウム塩、オレイン酸塩、パモ酸塩(エンボネート(embonate))、パルミチン酸塩、パントテン酸塩、リン酸塩/二リン酸塩、ポリガラクツロン酸塩、サリチル酸塩、ステアリン酸塩、硫酸塩、サブ酢酸塩、コハク酸塩、タンニン酸塩、酒石酸塩、テオクレート(teoclate)、トルエンスルホン酸塩および吉草酸塩を含む。
【0060】
製薬学的に許容できる塩の製造において使用されてもよい代表的な酸および塩基は、次に示す:
酢酸、2,2−ジクロロ酢酸、アシル化アミノ酸、アジピン酸、アルギン酸、アスコルビン酸、L−アスパラギン酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、4−アセトアミド安息香酸、(+)−樟脳酸、カンフォスルホン酸、(+)−(1S)−カンフォル−10−スルホン酸、カプリン酸、カプロン酸、カプリル酸、桂皮酸、クエン酸、シクラミン酸、ドデシル硫酸、エタン−1,2−ジスルホン酸、エタンスルホン酸、2−ヒドロキシ−エタンスルホン酸、ギ酸、フマル酸、ガラクタル酸、ゲンチジン酸、グルコヘプトン酸、D−グルコン酸、D−グルクロン酸、L−グルタミン酸、α−オキソ−グルタル酸、グリコール酸、馬尿酸、臭化水素酸、塩化水素酸、(+)−L−乳酸、(±)−DL−乳酸,ラクトビオン酸(lactobionic acid)、マレイン酸、(−)−L−リンゴ酸、マロン酸、(±)−DL−マンデル酸塩、メタンスルホン酸、ナフタレン−2−スルホン酸、ナフタレン−1,5−ジスルホン酸、1−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸、ニコチン酸、硝酸、オレイン酸、オロチン酸、シュウ酸、パルミチン酸、パモ酸、リン酸、L−ピログルタミン酸、サリチル酸、4−アミノ−サリチル酸、セバイクアシド(sebaic acid),ステアリン酸、コハク酸、硫酸、タンニン酸、(+)−L−酒石酸、チオシアン酸、p−トルエンスルホン酸およびウンデシレン酸塩を含む酸;ならびに
アンモニア、L−アルギニン、ベネサミン、ベンザシン、水酸化カルシウム、コリン、デアノール(deanol)、ジエタノールアミン、ジエチルアミン、2−(ジエチルアミノ)−エタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−メチル−グルカミン、ハイドラバミン、1H−イミダゾール、L−リジン、水酸化マグネシウム、4−(2−ヒドロキシエチル)−モルホリン、ピペラジン、水酸化カリウム、1−(2−ヒドロキシエチル)−ピロリジン、第2級アミン、水酸化ナトリウム、トリエタノールアミン、トロメタミン(tromethamine)および水酸化亜鉛を含む塩基;
を含む。
【0061】
本発明は、さらに、製薬学的に許容できる担体とともに1種以上の式(I)の化合物を含有する製薬学的組成物を含む。有効成分として本明細書に記述される本発明の化合物の1種以上を含有する製薬学的組成物は、慣用の製薬学的調合技術にしたがって、本化合物を製薬学的担体と緊密に混合することによって製造することができる。担体は、所望の投与経路(例えば、経口、非経口)に応じて広範な形態をとることができる。かくして、液状経口調製物、例えば懸濁剤、エリキシル剤および液剤では、適当な担体および添加物は、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、安定剤、着色剤などを含み:固形経口調製物、例えば散剤、カプセル剤および錠剤では、適当な担体および添加物は、澱粉、糖、賦形剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを含む。また、固形経口調製物は、糖のような物質でコートされてもよく、あるいは主吸収部位を調節するために腸溶コートされてもよい。非経口投与では、担体は、通常、無菌水からなり、そして他の成分が溶解度または保存性を増大するために添加されてもよい。注射用懸濁剤または液剤は、また、適当な添加物とともに水性担体を利用して製造されてもよい。
【0062】
本発明の製薬学的組成物を製造するためには、有効成分として本発明の化合物の1種以上が、慣用の製薬学的調合技術にしたがって製薬学的担体と緊密に混合されるが、この担体は、投与、例えば、経口または筋肉内のような非経口投与のための所望の調製物の形態に応じて広範な形態をとることができる。経口投与形態における組成物の製造では、通常の製薬学的媒質のいずれが用いられてもよい。かくして、液状経口調製物、例えば懸濁剤、エリキシル剤および液剤では、適当な担体および添加物は、水、グリコール、油、アルコール、着香剤、保存剤、着色剤などを含み:固形経口調製物、例えば、散剤、カプセル剤、キャプレット剤(caplets)、ゲルキャップ剤(gelcaps)および錠剤では、適当な担体および添加物は、澱粉、糖、賦形剤、造粒剤、滑沢剤、結合剤、崩壊剤などを含む。投与を容易にするために、錠剤およびカプセル剤はもっとも有利な経口用量単位形態を表し、この場合には、明らかに固形製薬学的担体が用いられる。所望であれば、錠剤は、標準技術によって糖コートされても、また腸溶コートされてもよい。非経口剤では、担体は、例えば、溶解性を助けるような目的のためまたは保存のための他の成分を有する無菌水を通常は含むであろう。注射用懸濁剤もまた製造されてもよく、この場合、適当な液状担体、懸濁化剤などが用いられてもよい。本明細書の製薬学的組成物は、1用量単位、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射剤、ティースプーン量剤などについて、前記のような有効用量を送達するために必要な有効成分の量を含有できる。本明細書の製薬学的組成物は、1単位用量単位、例えば、錠剤、カプセル剤、散剤、注射剤、坐剤、ティースプーン量剤などについて、約50〜100mgを含有でき、そして約0.1〜5.0mg/kg/日、好ましくは約0.5〜2.5mg/kg/日の用量において投与されてもよい。しかしながら、用量は、患者の要件、処置されている症状の重篤度および用いられる化合物に応じて変えられてもよい。毎日の投与または一定間隔後の投与のいずれの使用が用いられてもよい。
【0063】
好ましくは、これらの組成物は、経口、非経口、鼻内、舌下または肛門投与のため、または吸入または吹入による投与のために;錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤、無菌の非経口液剤または懸濁剤、定量エアゾルまたは液スプレー剤、点滴剤、アンプル剤、自動注入デバイスまたは坐剤のような単位用量形態物において存在する。あるいはまた、組成物は、週1回または月1回投与のために適当な形態物において提供されてもよい;例えば、活性化合物の不溶性塩、例えばデカン酸塩は、筋肉内注入のためのデポ調製物を提供するために適用されてもよい。錠剤のような固形組成物を製造するためには、主有効成分は、製薬学的担体、例えば、コーンスターチ、乳糖、蔗糖、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウムまたは粘質ゴムのような慣用の打錠用成分、および水のような他の製薬学的希釈剤と混合されて、本発明の化合物またはその製薬学的に許容できる塩の均一な混合物を含有する固形の予備調合組成物が形成される。これらの予備調合組成物を均一であるという場合、それは、組成物が錠剤、丸剤およびカプセル剤のような等しく有効な用量形態物中に容易に再分できるように、有効成分が組成物中に平均して分散されることを意味している。この固形の予備調合組成物は、次に、本発明の有効成分の0.1〜約500mgを含有する前記種類の単位用量形態物中に再分される。新規組成物の錠剤または丸剤は、長期作用という利点を与える用量形態物を提供するためにコートされるか、または他の方法で調合することができる。例えば、錠剤または丸剤は、内部の投薬成分および外部の投薬成分(後者が前者を覆う外皮の形態で存在する)を含むことができる。2成分は腸溶性の層によって分離することができ、この層は、胃における崩壊に抵抗するのに役立ち、そして内部成分を十二指腸へとそのまま通過させるか、または放出において遅延させことができる。種々の材料がそのような腸溶性層またはコーティングのために使用でき、そのような材料は、セラック、セチルアルコールおよび酢酸セルロースのような材料とともに多くの重合酸類を含む。
【0064】
本発明の新規組成物が経口的または注射による投与のために組み入れられてもよい液状形態物は、水性液剤、適当に着香されたシロップ剤、水性または油性懸濁剤、および食用油、例えば綿実油、ゴマ油、椰子油またはピーナッツ油による着香された乳剤、ならびにエリキシル剤および類似の製薬学的媒質を含む。水性懸濁剤のために適当な分散化または懸濁化剤は、合成および天然の粘質ゴム、例えばトラガカント、アカシア、アルギン酸塩、デキストラン、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、メチルセルロース、ポリビニル−ピロリドンまたはゼラチンを含む。
【0065】
また、本発明の処置の方法は、本明細書で定義されるいずれかの化合物および製薬学的に許容できる担体を含んでなる製薬学的組成物を使用して実施できる。製薬学的組成物は、本化合物の約0.1mg〜500mg、好ましくは約50〜100mgを含有してもよく、そして選ばれた投与の方式のために適当ないかなる形態に構成されてもよい。担体は、限定されるものではないが、結合剤、懸濁化剤、滑沢剤、着香剤、甘味剤、保存剤、染料およびコーティングを含む必要かつ不活性な製薬学的添加物を含む。経口投与のために適当な組成物は、固形形態物、例えば、丸剤、錠剤、キャプレット剤、カプセル剤(各、即時放出、定時(timed)放出および持続放出調合物を含む)、顆粒剤および散剤、ならびに液状形態物、例えば、液剤、シロップ剤、エリキシル剤、乳剤および懸濁剤を含む。非経口投与のために有用な形態物は、無菌の液剤、乳剤および懸濁剤を含む。
【0066】
有利には、本発明の化合物は、単回の1日用量で投与されてもよく、または総1日用量が、1日に2、3または4回の分割用量で投与されてもよい。さらにまた、本発明のための化合物は、適当な鼻内媒質の局所使用によるか、または当業者には周知の経皮皮膚パッチ剤による鼻内形態物において投与することができる。経皮送達システムの形態において投与されるためには、用量投与は、もちろん、用量療法を通じて断続的よりもむしろ連続的であろう。
【0067】
例えば、錠剤またはカプセル剤の形態における経口投与では、活性薬物成分は、エタノール、グリセロール、水などのような経口的非毒性の製薬学的に許容できる不活性担体と組み合わすことができる。さらにまた、所望または必要である場合には、適当な結合剤;滑沢剤、崩壊剤および着色剤もまた混合物中に組み入れられてもよい。適当な結合剤は、限定されるものではないが、澱粉、ゼラチン、天然の糖、例えばグルコースまたはβ−ラクトース、コーン甘味料、天然および合成の粘質ゴム、例えばアカシア、トラガカント、またはオレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどを含む。崩壊剤は、限定されるものではないが、澱粉、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどを含む。
【0068】
合成および天然の粘質ゴム、例えばトラガカント、アカシア、メチルセルロースなどのような、適当に着香された懸濁化剤または分散化剤における液状形態物。非経口投与では、無菌の懸濁剤および液剤が所望される。静脈内投与が所望される場合には、一般に適当な保存剤を含有する等張調製物が用いられる。
【0069】
本発明の製薬学的組成物を製造するためには、有効成分として式(I)の化合物が、慣用の製薬学的調合技術にしたがって製薬学的担体と緊密に混合されるが、この担体は、投与(例えば、経口または非経口)のために所望される調製物の形態に応じて広範な形態をとることができる。適当な製薬学的に許容できる担体は当該技術分野において周知である。これらの製薬学的に許容できる担体の若干の記述は、The Handbook of Pharmaceutical Excipients,published by the American Pharmaceutical Association and the Pharmaceutical Society of Great Britainにおいて見出だすことができる。
【0070】
製薬学的組成物を調合する方法は、種々の出版物、例えば、Pharmaceutical Dosage Forms:Tablets,Second Edition,Revised and Expanded,Volumes 1−3,edited by Lieberman et al;およびPharmaceutical Dosage Forms:Disperse Systems,Volumes 1−2,edited by Lieberman et al;published by Marcel Dekker,Inc.において記述されている。
【0071】
本発明の化合物は、本明細書に記述されるような障害の処置が要求される場合は常に、前記組成物のすべてにおいて、かつ当該技術分野において確立された用量用法にしたがって投与することができる。
【0072】
生産物の1日の用量は、1日当たり1成人について0.01〜1,000mgの広い範囲にわたって変えられてもよい。経口投与では、本組成物は、好ましくは、処置されるべき患者に対して、用量の症候に応じた調節のために有効成分の0.01、0.05、0.1、0.5、1.0、2.5、5.0、10.0、15.0、25.0、50.0、100、150、200、250および500mgを含有する錠剤の形態で提供される。薬物の有効量は、通常では、1日当たり約0.01mg/kg〜約300mg/体重kgの用量レベルにおいて供給される。好ましくは、その範囲は、1日当たり約0.5〜約5.0mg/体重kg、もっとも好ましくは、1日当たり約1.0〜約3.0mg/体重kgである。化合物は1日当たり1〜4回の用法において投与されてもよい。
【0073】
投与される最適用量は、当業者によって容易に決定でき、そして使用される特定の化合物、投与方式、調製物の強度、投与方式および病状の進捗により変わるであろう。さらに、患者年齢、体重、飲食物および投与時間を含む、処置されている特定の患者に関するファクターは、用量を調節する必要性をもたらすであろう。
【0074】
当業者は、適当な、既知の、そして一般的に受け入れられる細胞および/または動物モデルを使用するインビボおよびインビトロの両試行が、与えられた障害を処置または予防する試験化合物の能力を予測させることを認識できる。
【0075】
当業者はさらに、健全な患者および/または与えられた障害を罹患している患者における、ヒトにおける最初の、用量範囲決定および効力試行が、臨床および医療技術において周知の方法にしたがって完成できることを認識するであろう。
【0076】
次に示す実施例は、本発明の理解を助けるために記述され、そしてそれ以後に示す請求項における本発明の記述を、いかなる点においても限定しないと考えるべきである。
【0077】
次に示す実施例では、若干の合成生成物は、残渣として分離されたものとして挙げられる。用語「残渣」が、生成物が単離される物理的状態を限定するものではなく、そして例えば、固形物、油状物、泡状物、ガム質、シロップなどを含んでもよいことは、当業者によって理解できる。
<実施例>
【0078】
例1
2−メチル−N−[1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イリデン]−2−プロパンスルフィンアミド
【0079】
【化5】

【0080】
1−オキサ−スピロ[4.4]ノナン−6−オン(2.53g,18.0mmol)およびR−tert−ブチルスルフィンイミド(2.20g,18.1mmol)を無水THF(40ml)に溶解した。チタンエトキシド(8.17g,エタノール中〜20%)を導入し、そして反応混合液を74℃に一夜加熱した。冷却後、反応混合液を冷食塩水(50ml)上に注入し、そして酢酸エチルで抽出した。有機層を合わせ、真空濃縮して黄色残渣を生成した。残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって極性の低い異性体と極性の高い異性体に精製した。表題の化合物、極性の高い異性体を無色の油状物として単離し、そしてさらなる精製なしに次の反応段階において使用した。(註:極性の低い異性体もまた残渣として単離した)。(註:表題の化合物のN−S結合の正確な立体配置は決定されなかった)。
【0081】
極性の高い異性体:
HNMR(300MHz,CDCl)δ3.96(t,J=7.0Hz,2H);3.05−2.94(m,1H);2.73−2.62(m,1H);2.21−1.72(m.8Hのシリーズ);1.26(s,9H)
極性の低い異性体:
HNMR(300MHz,CDCl)δ4.00−3.87(m,2H);3.16−3.05(m,1H);2.64−2.58(m,1H);2.21−1.66(m.8Hのシリーズ);1.26(s,9H)
【0082】
例2
2−メチル−N−(1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イル)−2−プロパンスルフィンアミド
【0083】
【化6】

【0084】
THF(50ml)中、前記例1で製造された化合物(1.73g,7.10mmol)の溶液を、メタノール(10ml)中ホウ水素化ナトリウム(462mg,12.2mmol)溶液と処理した。室温で45分間撹拌後、反応を飽和塩化アンモニウム(10ml)の添加によって停止させ、そして得られる混合液を酢酸エチルで抽出した。次いで、反応混合液を濃縮し、そして残渣をフラッシュクロマトグラフィーによって精製して、無色の油状物として表題の化合物を得た。
【0085】
MS(m/Z)=245(MH+)
HNMR(300MHz,CDCl)δ3.92(br d,J=5.0Hz,1H);3.89−3.77(m,2H);3.40(q,J=6.1Hz,1H);2.11−1.41(m.10Hのシリーズ);1.21(s,9H)
【0086】
例3
1−オキサスピロ[4.4]ノナン−6−アミン
【0087】
【化7】

【0088】
ジオキサン(20ml)中、前記例2におけるように製造された化合物(1.53g,6.23mmol)の溶液を、ジオキサン(16ml)中4NHClと処理した。30分間45℃に加熱後、反応混合液を真空濃縮し、残渣をジエチルエーテルで粉砕し、そして固形物を濾過によって回収して、白色固体として、その対応する塩酸塩としての表題の化合物を得た。絶対立体配置は決定されなかったけれども、表題の化合物は単一のジアステレオマーとして単離された。
【0089】
MS(m/Z)=142(MH+)
HNMR(300MHz,DMSO−d6)δ7.81(br s,3H);3.85−3.62(m,2H);3.26(t,J=7.4Hz,1H);2.04−1.49(m.10Hのシリーズ)
【0090】
例4
3−エチル−4−[[2−(1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イルアミノ)−3,4−ジオキソ−1−シクロブテン−1−イル]アミノ]−ベンゾニトリル(化合物1)
【0091】
【化8】

【0092】
エタノール中、4−(2−エトキシ−3,4−ジオキソ−シクロブト−1−エニルアミノ)−3−エチル−ベンゾニトリル(60mg,0.22mmol)の溶液を、エタノール(5ml)中、前記例3におけるように製造された塩酸塩(40mg,0.22mmol)の溶液と処理した。反応混合液を遊離塩基アミンに対してメタノール中ナトリウムメトキシドの1当量と処理し、次いで3時間加熱還流した。冷却後、水を反応混合液に添加し、そして得られる沈殿を濾過によって回収して、固体として表題の化合物を得た。
【0093】
MS(m/Z)=366(MH+)
【0094】
例5
3−ブトキシ−4−(1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イルアミノ)−3−シクロブテン−1,2−ジオン
【0095】
【化9】

【0096】
乾燥THF中、ジ−n−ブチルスクアレート(0.15ml,0.69mmol)および前記例3におけるように製造された塩酸塩化合物(116mg,0.65mmol)の溶液を、ナトリウムメトキシドの1当量と処理した。反応混合液を室温で20時間撹拌後、表題の化合物を濾過によって沈殿物として回収し、そしてさらなる精製なしに次の反応段階において使用した。
【0097】
例6
3−[[(2,4−ジクロロ−6−メチルフェニル)メチル]アミノ]−4−(1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イルアミノ)−3−シクロブテン−1,2−ジオン(化合物3)
【0098】
【化10】

【0099】
乾燥THF(5ml)中、前記例5におけるように製造された化合物(0.12g,0.41mmol)の溶液を、2,4−ジクロロ−6−メチルベンジルアミン(0.11g,0.56mmol)と処理し,そして得られる混合液を室温で20時間撹拌した。表題の化合物を濾過によって固体として回収した。
【0100】
MS(m/Z)=410(MH+)
本発明のさらなる化合物を、前記スキーム1および実施例に記述される操作にしたがって同様に製造した。
【0101】
例7:カリウムチャンネル・アッセイ
TE671ヒト髄芽細胞腫の細胞はATCCから得られ、そして10%胎児ウシ血清、100U/mlペニシリンおよび100U/mlストレプトマイシンを補足したDulbeccoの改変Eagle培地(DMEM)において増殖された。
【0102】
試験前日に、細胞を黒色の96穴プレート中に50K/ウェルにおいて接種した。試験当日に、増殖培地を除去し、次いでFLIPRバッファー(20mM4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)、120mM NaCl、2mM KCl、2mM CaCl、1mM MgCl、5mM グルコース)100μlおよびFLIPRバッファー中に溶解したMembrane Potential Assay Dye(Molecular Devices)100μlを各ウェルに添加した。細胞を室温で15〜30分間培養した。
【0103】
KATPチャンネルに及ぼす試験化合物の効果は、室温において蛍光造影プレートリーダー(FLIPR,Molecular Devices)において評価された。基礎期間後に、FLIPRバッファーにおいて調製した試験化合物の5X保存溶液50μlを添加し、そして蛍光変化を3分間追跡した。この読み取り後、グリブリド(glyburide)、KATPチャンネルブロッカーを、最終濃度5μMまで添加して、KATPチャンネル・オープナーとしての試験化合物の特異性をチェックした。KATPチャンネルの開放から生じる過分極を蛍光強度における減少量として観察した。
【0104】
本発明の代表的化合物が上記操作にしたがって試験されて、下記表2に列挙されるような結果が得られた。
【0105】
【表2】

【0106】
例8
経口組成物の特定の実施態様として、前記例4におけるように製造した化合物No.1の100mgを、十分細かく粉砕された乳糖とともに調合し、総量580〜590mgを提供してサイズO硬質ゲルカプセルを満たした。
【0107】
前述の明細書は、具体的説明の目的のために与えられた実施例とともに、本発明の原理を教示しているが、本発明の実施が、次の請求項およびそれらの等価物の範囲内にはいるような通常の変更物、適応物および/または修飾物のすべてを包含することは理解できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)
【化1】

[式中、
nは整数0〜2であり;
は、シクロアルキル、アリールおよびヘテロアリールよりなる群から選ばれ;
ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキル、C1−4アルコキシ、ハロゲン置換C1−4アルキルおよびハロゲン置換C1−4アルコキシよりなる群から独立して選ばれる1個以上の置換基により置換されている]
の化合物、または製薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項2】
nが整数0〜2であり;
が、シクロアルキル、アリールおよび5ないし6員のヘテロアリールよりなる群から選ばれ;
ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、アミノ、C1−4アルキルアミノ、ジ(C1−4アルキル)アミノ、シアノ、ニトロ、C1−4アルキルおよびフッ素置換C1−4アルキルよりなる群から独立して選ばれる1個以上の置換基により置換されている、
請求項1に記載の化合物、または製薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項3】
nが整数0〜2であり;
が、シクロアルキル、フェニルおよび6員のヘテロアリールよりなる群から選ばれ;ここで、アリールまたはヘテロアリールは、場合によっては、ハロゲン、C1−4アルキル、フッ素置換C1−4アルキルおよびシアノよりなる群から独立して選ばれる1〜3個の置換基により置換されている、
請求項2に記載の化合物、または製薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項4】
nが整数0〜2であり;
が、シクロヘキシル、1−アダマンチル、フェニル、4−クロロフェニル、3,4−ジクロロフェニル、2−フルオロフェニル、2−トリフルオロメチル−フェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、3.5−ビス(トリフルオロメチル)−フェニル、2−エチル−4−シアノ−フェニル、2,4−ジクロロ−6−メチル−フェニルおよび5−シアノ−ピリド−2−イルよりなる群から選ばれる、
請求項3に記載の化合物、または製薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項5】
nが整数0〜1であり;
が、フェニル、4−クロロフェニル、3−トリフルオロメチル−フェニル、2−エチル−4−シアノ−フェニルおよび2,4−ジクロロ−6−メチル−フェニルよりなる群から選ばれる、
請求項4に記載の化合物、または製薬学的に許容できるそれらの塩。
【請求項6】
3−エチル−4−[[2−(1−オキサスピロ[4.4]ノン−6−イルアミノ)−3,4−ジオキソ−1−シクロブテン−1−イル]アミノ]−ベンゾニトリルおよび製薬学的に許容できるその塩よりなる群から選ばれる、請求項4に記載の化合物。
【請求項7】
製薬学的に許容できる担体および請求項1に記載の化合物を含んでなる製薬学的組成物。
【請求項8】
請求項1に記載の化合物の治療学的に有効な量を、それを必要とする被験者に投与することを含む、イオンチャンネルに関連する障害を処置する方法。
【請求項9】
イオンチャンネルがカリウムイオンチャンネルである、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
イオンチャンネルがATP感受性カリウムイオンチャンネルである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
イオンチャンネルに関連する障害が、尿失禁、過活動性膀胱、高血圧、勃起機能不全、女性性的障害、月経困難、感応性腸症候群、気道機能亢進、てんかん、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋傷害、冠状動脈疾患、毛髪喪失および禿頭症よりなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
イオンチャンネルに関連する障害が、尿失禁および過活動性膀胱よりなる群から選ばれる、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
請求項7に記載の組成物の治療学的に有効な量を、それを必要とする被験者に投与することを含む、尿失禁、過活動性膀胱、高血圧、勃起機能不全、女性性的障害、月経困難、感応性腸症候群、気道機能亢進、てんかん、卒中、アルツハイマー病、パーキンソン病、心筋傷害、冠状動脈疾患、毛髪喪失および禿頭症よりなる群より選ばれる障害の処置方法。

【公表番号】特表2009−532380(P2009−532380A)
【公表日】平成21年9月10日(2009.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−503266(P2009−503266)
【出願日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2007/065457
【国際公開番号】WO2007/115071
【国際公開日】平成19年10月11日(2007.10.11)
【出願人】(390033008)ジヤンセン・フアーマシユーチカ・ナームローゼ・フエンノートシヤツプ (616)
【氏名又は名称原語表記】JANSSEN PHARMACEUTICA NAAMLOZE VENNOOTSCHAP
【Fターム(参考)】