説明

カリクレイン7を阻害するための環状デプシペプチドの使用

本願は、式(I)を有する環状デプシペプチドまたはその誘導体、および例えばカリクレイン7の阻害剤としてのその使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は環状デプシペプチドまたはその誘導体に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
カリクレイン7は、キモトリプシン様活性を示すカリクレイン遺伝子ファミリーのS1セリンプロテアーゼである。ヒトカリクレイン7(hK7、KLK7または角質層キモトリプシン酵素(SCCE)、Swissprot P49862)は皮膚生理学において重要な役割を果たす(1、2、3)。これは主として皮膚において発現し、皮膚生理に深く関与していることが報告されている。hK7は落屑プロセスにおける角化扁平上皮細胞の細胞間接着構造の分解に関与する。落屑プロセスは、皮膚障壁機能に深く関与する皮膚の最外層である角質層の一定の厚みを維持するために十分に制御され、角質細胞のデノボ生産と繊細に釣り合いを取っている。この観点から、hK7は角質接着斑タンパク質コルネオデスモシンおよびデスモコリン1を切断することができると報告されている(4、5、6)。両方のコルネオデスモソームの分解は、落屑に必要である。さらに、ごく最近、2種の脂質プロセッシング酵素β−グルコセレブロシダーゼおよび酸性スフィンゴミエリナーゼがhK7によって分解され得ることが示されている(7)。両方の脂質プロセッシング酵素は、それらの基質であるグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンと共に分泌され、これらの極性脂質前駆体をそれらのより非極性な生成物、例えばセラミドに処理し、これは次いで、細胞外層状膜に取り込まれる。該層状膜構造は機能的皮膚障壁に重要である。最後に、hK7はインビトロでインターロイキン−1β(IL−1β)前駆体をその活性形態に活性化することが示されている(8)。角化細胞はIL−1βを発現するが、特異的IL−1β変換酵素(ICEまたはカスパーゼ1)の活性形態を発現しないため、ヒト上皮におけるIL−1β活性化は別のプロテアーゼ(潜在的な候補はhK7である)を介して生じることが提案されている。
【0003】
最近の研究は、hK7の増加した活性を、アトピー性皮膚炎、乾癬またはネザートン症候群のような炎症性皮膚疾患と関連付けている。これは脱制御落屑を引き起こすコルネオデスモソームの脱制御分解、阻害された層状膜構造を引き起こす脂質プロセッシング酵素の向上した分解または前炎症性サイトカインIL−1βの脱制御活性化を導き得る。その最終結果は、皮膚障壁機能不全および炎症である(WO-A-2004/108139も参照されたい)。
【0004】
hK7活性が様々なレベルで制御されているため、炎症性皮膚疾患において、多様な因子が上昇したhK7活性に関与している可能性がある。第一に、発現されるプロテアーゼの量は遺伝的因子によって影響され得る。かかる遺伝的リンク、hK7遺伝子の3’−UTRにおける多型は、近年記載された(9)。著者らはカリクレイン7遺伝子の3’−UTRにおける記載の4塩基対挿入がhK7mRNAを安定化して、hK7の過剰発現をもたらすと仮定している。第二に、hK7は層状体を介して角質層細胞外空間に酵素原として分泌され、自己活性化することができないため、別のプロテアーゼ、例えばhK5によって活性化される必要がある(5)。かかる活性化酵素の制御されていない活性はhK7の過剰活性化をもたらす可能性がある。第三に、活性化hK7はLEKTI、ALPまたはエラフィンのような天然阻害剤によって阻害することができる(10、11)。かかる阻害剤の発現低下または欠如は、hK7の活性上昇を引き起こす可能性がある。近年、LEKTIをコードするspink5遺伝子における変異がネザートン症候群の原因であり(12)、該遺伝子における点突然変異がアトピー性皮膚炎に関連している(13、14)ことが見出された。最後に、hK7の活性を制御する別のレベルはpHである。hK7は中性乃至わずかにアルカリ性のpHが至適であり(2)、皮膚の最内層から最外層にかけて中性から酸性のpH勾配が存在する。石けんのような環境因子は、角質層の最外層においてhK7の至適pHにpHを上昇させて、hK7活性を上昇させる可能性がある。
【0005】
上昇したhK7活性が炎症性および過増殖性皮膚疾患を含む皮膚障壁機能不全による皮膚疾患に関与しているという仮説は、次の研究によって支持される:第一に、ネザートン症候群患者はセリンプロテアーゼ活性の表現型依存性上昇、コルネオデスモソームの減少、脂質プロセッシング酵素β−グルコセレブロシダーゼおよび酸性スフィンゴミエリナーゼの減少および障壁機能不全を示す(15、16)。第二に、ヒトカリクレイン7を過剰発現するトランスジェニックマウスはアトピー性皮膚炎を有する患者において見られるものと同様の皮膚表現型を示す(17、18、19)。第三に、アトピー性皮膚炎および乾癬患者の皮膚において、上昇したhK7濃度が記載された(17、20)。さらにまた、上昇したK7の活性およびそれによる上皮障壁機能不全はまた、炎症性腸疾患およびクローン病のような他の上皮疾患の病理に重要な役割を果たし得る。
【0006】
したがって、hK7は、アトピー性皮膚炎、乾癬、ネザートン症候群または他の掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、老人の不特定の掻痒ならびに上記障壁機能不全を伴う他の疾患、例えば炎症性腸疾患およびクローン病のような炎症性および/または過増殖性および掻痒性皮膚疾患の処置のための潜在的な標的と考えられ、その特異的調節剤(アゴニストまたは阻害剤)が必要とされている。
【0007】
処置はそれぞれ、局所または全身投与、例えばクリーム、軟膏および座薬によって、または経口、皮下または静脈内投与であってよい。
【0008】
コンドロマイセス(Chondromyces)はポリアンギウム科(Polyangiaceae)の1種であり、デルタプロテオバクテリアのミキソコッカス目(Myxocccales)に属する。粘液細菌目とも称されるミキソコッカス目の細菌は、他のほとんどの細菌とそれらを区別する2個の特徴を有する、グラム陰性桿菌である。それらは、飢餓状態になると能動的滑走メカニズムを用いて固体表面上に集合し、集合して子実体を形成する(Kaiser (2003))。本発明者らは、カリクレイン7を特異的に調節することができるコンドロマイセスによって生産される環状デプシペプチドを同定した。
【発明の概要】
【0009】
発明の要約
本発明は、カリクレイン7依存性疾患の処置用医薬として使用するための、式(I):
【化1】

〔式中、A7のカルボキシ基とA2のヒドロキシ基の間にエステル結合が見られ、XおよびAはそれぞれ独立して任意的に存在しており、Xは何れかの化学残基であり、Aは標準アミノ酸であり、Aはスレオニン、セリンまたは5−メチルヒドロキシプロリンであり、Aは非塩基性標準アミノ酸または非塩基性非標準アミノ酸、またはその非塩基性誘導体であり、AはAhp、デヒドロ−AHP、プロリンまたはその誘導体であり、Aはイソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、スレオニンまたはバリンであり、Aはアラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンまたはその誘導体であり、Aはロイシン、イソロイシンまたはバリンである〕
の構造を有する環状デプシペプチドまたはその誘導体、または環状デプシペプチドまたはその誘導体の薬学的に許容される塩に関する。
【0010】
好ましくは、カリクレイン7依存性疾患はネザートン症候群、掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、膿疱性乾癬およびがん、特に卵巣がんから成る群から選択される。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】式(II)の化合物のH−NMRスペクトル(600MHz、d−DMSO)。
【図2】式(II)の化合物の13C−NMRスペクトル(150MHz、d−DMSO)。
【図3】式(VIII)の化合物のH−NMRスペクトル(600MHz、d−DMSO)。
【図4】式(VIII)の化合物の13C−NMRスペクトル(150MHz、d−DMSO)。
【図5】Ahpが3−アミノ−2−ピペリドンに変換されている式(II)の環状デプシペプチド誘導体のH−NMRスペクトル(実施例4)。
【図6】実施例5の環状デプシペプチド誘導体のH−NMRスペクトル。
【図7】実施例6の環状デプシペプチド誘導体のH−NMRスペクトル。
【図8】実施例7の環状デプシペプチド誘導体のH−NMRスペクトル。
【発明を実施するための形態】
【0012】
発明の詳細な説明
上記のとおり、本発明は、カリクレイン7依存性疾患の処置用医薬として使用するための、式(I):
【化2】

〔式中、A7のカルボキシ基とA2のヒドロキシ基の間にエステル結合が見られ、XおよびAはそれぞれ独立して任意的に存在しており、Xは何れかの化学残基であり、Aは標準アミノ酸であり、Aはスレオニン、セリンまたは5−メチルヒドロキシプロリンであり、Aは非塩基性標準アミノ酸または非塩基性非標準アミノ酸、またはその非塩基性誘導体であり、AはAhp、デヒドロ−AHP、プロリンまたはその誘導体であり、Aはイソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、スレオニンまたはバリンであり、Aはアラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンまたはその誘導体であり、Aはロイシン、イソロイシンまたはバリンである〕
の構造を有する環状デプシペプチドまたはその誘導体、または環状デプシペプチドまたはその誘導体の薬学的に許容される塩に関する。
【0013】
好ましくは、カリクレイン7依存性疾患はネザートン症候群、掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、膿疱性乾癬およびがん、特に卵巣がんから成る群から選択される。
【0014】
本発明の環状デプシペプチドの具体的な態様は:
【化3】

である。
【0015】
式(II)〜(VII)の環状デプシペプチドは、本発明のコンドロマイセス・クロカツス(Chondromyces crocatus)株(DSM 19329)によって生産することができる。
【0016】
本発明の環状デプシペプチドの他の態様は:
【化4】

である。
【0017】
式(VIII)〜(X)の環状デプシペプチドは、本発明のコンドロマイセス・ロブスツス(Chondromyces robustus)(DSM 19330)によって生産することができる。
【0018】
本発明の環状デプシペプチドのさらなる具体的な態様は次のとおりである:
表1
【表1】

【表2】

【表3】

【表4】

【0019】
略語表
【表5】

【0020】
「化学残基」は何れかの有機または無機化学基であってよい。表現「化学残基」は、置換もしくは非置換脂肪族基、例えばC−Cアルキル、C−CアルキルまたはC−C12アルキル、置換もしくは非置換アリール、置換もしくは非置換アリールアルキル、置換もしくは非置換ヘテロアリールまたはハロゲンを含むが、これらに限定されない。例えば、特許請求の範囲に定義の化学残基は下記の化学基のいずれかであってよい。
【0021】
表現「化学残基」は、アミノ酸、ペプチド、ポリペプチド、タンパク質等を含むが、これらに限定されない。
無機化学基の例は、例えばBrまたはClのようなハロゲンである。
【0022】
「脂肪族基」は炭素原子、水素原子、ハロゲン原子、酸素、窒素または他の原子の何れかの組合せを含む非芳香族性基であり、所望により1個以上の不飽和単位、例えば二重および/または三重結合を含んでいてもよい。脂肪族基は直鎖、分枝鎖または環式であってよく、好ましくは約1〜約24個の炭素原子、より典型的には約1〜約12個の炭素原子を含む。脂肪族炭化水素基に加えて、脂肪族基は例えば、ポリアルコキシアルキル、例えばポリアルキレングリコール、ポリアミンおよびポリイミンを例えば含む。かかる脂肪族基はさらに置換されていてもよい。
【0023】
用語「C−Cアルキル」、「C−Cアルキル」、「C−C12アルキル」は、本明細書において使用するとき、それぞれ1〜3個、1〜6個または1〜12個の炭素原子を含む飽和直鎖または分枝鎖炭化水素基を意味する。C−Cアルキル基の例はメチル、エチル、プロピルおよびイソプロピル基を含み;C−Cアルキル基の例はメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、tert−ブチル、sec−ブチル、n−ペンチル、ネオペンチルおよびn−ヘキシル基を含むがこれらに限定されず;C−C12アルキル基の例はエチル、プロピル、イソプロピル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、ノニル、デシル、ウンデシル、ドデシル基等を含む。
【0024】
用語「置換アルキル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の脂肪族置換基で置換された、C−C12アルキルまたはC−Cアルキル基のようなアルキルを意味する。
好適な脂肪族置換基は、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、保護ヒドロキシ、脂肪族エーテル、芳香族性エーテル、オキソ、−NO、−CN、所望によりハロゲンで置換されていてもよい−C−C12−アルキル(例えばペルハロアルキル)、所望によりハロゲンで置換されていてもよいC−C12−アルケニル、所望によりハロゲンで置換されていてもよい−C−C12−アルキニル、−NH、保護アミノ、−NH−C−C12−アルキル、−NH−C−C12−アルケニル、−NH−C−C12−アルケニル、−NH−C−C12−シクロアルキル、−NH−アリール、−NH−ヘテロアリール、−NH−ヘテロシクロアルキル、−ジアルキルアミノ、−ジアリールアミノ、−ジヘテロアリールアミノ、−O−C−C12−アルキル、−O−C−C12−アルケニル、−O−C−C12−アルキニル、−O−C−C12−シクロアルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−O−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−C−C12−アルキル、−C(O)−C−C12−アルケニル、−C(O)−C−C12−アルキニル、−C(O)−C−C12−シクロアルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロアリール、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−CONH、−CONH−C−C12−アルキル、−CONH−C−C12−アルケニル、−CONH−C−C12−アルキニル、−CONH−C−C12−シクロアルキル、−CONH−アリール、−CONH−ヘテロアリール、−CONH−ヘテロシクロアルキル、−CO−C−C12−アルキル、−CO−C−C12−アルケニル、−CO−C−C12−アルキニル、−CO−C−C12−シクロアルキル、−CO−アリール、−CO−ヘテロアリール、−CO−ヘテロシクロアルキル、−OCO−C−C12−アルキル、−OCO−C−C12−アルケニル、−OCO−C−C12−アルキニル、−OCO−C−C12−シクロアルキル、−OCO−アリール、−OCO−ヘテロアリール、−OCO−ヘテロシクロアルキル、−OCONH、−OCONH−C−C12−アルキル、−OCONH−C−C12−アルケニル、−OCONH−C−C12−アルキニル、−OCONH−C−C12−シクロアルキル、−OCONH−アリール、−OCONH−ヘテロアリール、−OCONH−ヘテロシクロアルキル、−NHC(O)−C−C12−アルキル、−NHC(O)−C−C12−アルケニル、−NHC(O)−C−C12−アルキニル、−NHC(O)−C−C12−シクロアルキル、−NHC(O)−アリール、−NHC(O)−ヘテロアリール、−NHC(O)−ヘテロシクロアルキル、−NHCO−C−C12−アルキル、−NHCO−C−C12−アルケニル、−NHCO−C−C12−アルキニル、−NHCO−C−C12−シクロアルキル、−NHCO−アリール、−NHCO−ヘテロアリール、−NHCO−ヘテロシクロアルキル、−NHC(O)NH、NHC(O)NH−C−C12−アルキル、−NHC(O)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(O)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(O)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(O)NH−アリール、−NHC(O)NH−ヘテロアリール、−NHC(O)NH−ヘテロシクロアルキル、NHC(S)NR、NHC(S)NH−C−C12−アルキル、−NHC(S)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(S)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(S)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(S)NH−アリール、−NHC(S)NR−ヘテロアリール、−NHC(S)NH−ヘテロシクロアルキル、−NHC(NH)NH、NHC(NH)NH−C−C12−アルキル、−NHC(NH)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(NH)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(NH)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(NH)NH−アリール、−NHC(NH)NH−ヘテロアリール、−NHC(NH)NH−ヘテロシクロアルキル、NHC(NH)−C−C12−アルキル、−NHC(NH)−C−C12−アルケニル、−NHC(NH)−C−C12−アルキニル、−NHC(NH)−C−C12−シクロアルキル、−NHC(NH)−アリール、−NHC(NH)−ヘテロアリール、−NHC(NH)−ヘテロシクロアルキル、−C(NR)NH−C−C12−アルキル、−C(NH)NH−C−C12−アルケニル、−C(NR)NH−C−C12−アルキニル、−C(NH)NH−C−C12−シクロアルキル、−C(NH)NH−アリール、−C(NH)NH−ヘテロアリール、−C(NH)NH−ヘテロシクロアルキル、−S(O)−C−C12−アルキル、−S(O)−C−C12−アルケニル、−S(O)−C−C12−アルキニル、−S(O)−C−C12−シクロアルキル、−S(O)−アリール、−S(O)−ヘテロアリール、−S(O)−ヘテロシクロアルキル−SONH、−SONH−C−C12−アルキル、−SONH−C−C12−アルケニル、−SONH−C−C12−アルキニル、−SONH−C−C12−シクロアルキル、−SONH−アリール、−SONH−ヘテロアリール、−SONH−ヘテロシクロアルキル、−NHSO−C−C12−アルキル、−NHSO−C−C12−アルケニル、−NHSO−C−C12−アルキニル、−NHSO−C−C12−シクロアルキル、−NHSO−アリール、−NHSO−ヘテロアリール、−NHSO−ヘテロシクロアルキル、−CHNH、−CHSOCH、−アリール、−アリールアルキル、−ヘテロアリール、−ヘテロアリールアルキル、−ヘテロシクロアルキル、−C−C12−シクロアルキル、ポリアルコキシアルキル、ポリアルコキシ、−メトキシメトキシ、−メトキシエトキシ、−SH、−S−C−C12−アルキル、−S−C−C12−アルケニル、−S−C−C12−アルキニル、−S−C−C12−シクロアルキル、−S−アリール、−S−ヘテロアリール、−S−ヘテロシクロアルキルまたはメチルチオメチルを含むがこれらに限定されない。アリール、ヘテロアリール、アルキル等はさらに置換されていてもよいと理解される。
【0025】
用語「C−C12アルケニル」または「C−Cアルケニル」は、本明細書において使用するとき、2〜12個または2〜6個の炭素原子を含み、炭素−炭素二重結合を少なくとも1個有する炭化水素基に由来する1個の水素原子の除去による1価基を意味する。アルケニル基は例えば、エテニル、プロペニル、ブテニル、1−メチル−2−ブテン−1−イル、アルカジエン等を含むが、これらに限定されない。
用語「置換アルケニル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の脂肪族置換基で置換された上記定義の「C−C12アルケニル」または「C−Cアルケニル」基を意味する。
【0026】
用語「C−C12アルキニル」または「C−Cアルキニル」は、本明細書において使用するとき、2〜12個または2〜6個の炭素原子を含み、炭素−炭素三重結合を少なくとも1個有する炭化水素基に由来する1個の水素原子の除去による1価基を意味する。代表的なアルキニル基は、例えばエチニル、1−プロピニル、1−ブチニル等を含むが、これらに限定されない。
【0027】
用語「置換アルキニル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の脂肪族置換基で置換された上記定義の「C−C12アルキニル」または「C−Cアルキニル」基を意味する。
用語「C−Cアルコキシ」は、本明細書において使用するとき、酸素原子を介して親分子部分と結合している、上記定義のC−Cアルキル基を意味する。C−C−アルコキシの例は、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、n−ブトキシ、sec−ブトキシ、tert−ブトキシ、n−ペントキシ、ネオペントキシおよびn−ヘキソキシを含むが、これらに限定されない。
【0028】
用語「ハロ」および「ハロゲン」は、本明細書において使用するとき、フッ素、塩素、臭素およびヨウ素から選択される原子を意味する。
【0029】
用語「アリール」は、本明細書において使用するとき、1〜2個の芳香環を有する単環または二環式炭素環式環を意味し、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、インダニル、インデニル等を含むが、これらに限定されない。
【0030】
用語「置換アリール」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の芳香族置換基によって置換された、上記定義のアリール基を意味する。
芳香族置換基は、−F、−Cl、−Br、−I、−OH、保護ヒドロキシ、脂肪族エーテル、芳香族性エーテル、オキソ、−NO、−CN、所望によりハロゲンで置換されていてもよい−C−C12−アルキル(例えばペルハロアルキル)、所望によりハロゲンで置換されていてもよいC−C12−アルケニル、所望によりハロゲンで置換されていてもよい−C−C12−アルキニル、−NH、保護アミノ、−NH−C−C12−アルキル、−NH−C−C12−アルケニル、−NH−C−C12−アルケニル、−NH−C−C12−シクロアルキル、−NH−アリール、−NH−ヘテロアリール、−NH−ヘテロシクロアルキル、−ジアルキルアミノ、−ジアリールアミノ、−ジヘテロアリールアミノ、−O−C−C12−アルキル、−O−C−C12−アルケニル、−O−C−C12−アルキニル、−O−C−C12−シクロアルキル、−O−アリール、−O−ヘテロアリール、−O−ヘテロシクロアルキル、−C(O)−C−C12−アルキル、−C(O)−C−C12−アルケニル、−C(O)−C−C12−アルキニル、−C(O)−C−C12−シクロアルキル、−C(O)−アリール、−C(O)−ヘテロアリール、−C(O)−ヘテロシクロアルキル、−CONH、−CONH−C−C12−アルキル、−CONH−C−C12−アルケニル、−CONH−C−C12−アルキニル、−CONH−C−C12−シクロアルキル、−CONH−アリール、−CONH−ヘテロアリール、−CONH−ヘテロシクロアルキル、−CO−C−C12−アルキル、−CO−C−C12−アルケニル、−CO−C−C12−アルキニル、−CO−C−C12−シクロアルキル、−CO−アリール、−CO−ヘテロアリール、−CO−ヘテロシクロアルキル、−OCO−C−C12−アルキル、−OCO−C−C12−アルケニル、−OCO−C−C12−アルキニル、−OCO−C−C12−シクロアルキル、−OCO−アリール、−OCO−ヘテロアリール、−OCO−ヘテロシクロアルキル、−OCONH、−OCONH−C−C12−アルキル、−OCONH−C−C12−アルケニル、−OCONH−C−C12−アルキニル、−OCONH−C−C12−シクロアルキル、−OCONH−アリール、−OCONH−ヘテロアリール、−OCONH−ヘテロシクロアルキル、−NHC(O)−C−C12−アルキル、−NHC(O)−C−C12−アルケニル、−NHC(O)−C−C12−アルキニル、−NHC(O)−C−C12−シクロアルキル、−NHC(O)−アリール、−NHC(O)−ヘテロアリール、−NHC(O)−ヘテロシクロアルキル、−NHCO−C−C12−アルキル、−NHCO−C−C12−アルケニル、−NHCO−C−C12−アルキニル、−NHCO−C−C12−シクロアルキル、−NHCO−アリール、−NHCO−ヘテロアリール、−NHCO−ヘテロシクロアルキル、−NHC(O)NH、NHC(O)NH−C−C12−アルキル、−NHC(O)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(O)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(O)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(O)NH−アリール、−NHC(O)NH−ヘテロアリール、−NHC(O)NH−ヘテロシクロアルキル、NHC(S)NH、NHC(S)NH−C−C12−アルキル、−NHC(S)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(S)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(S)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(S)NH−アリール、−NHC(S)NH−ヘテロアリール、−NHC(S)NH−ヘテロシクロアルキル、−NHC(NH)NH、NHC(NH)NH−C−C12−アルキル、−NHC(NH)NH−C−C12−アルケニル、−NHC(NH)NH−C−C12−アルキニル、−NHC(NH)NH−C−C12−シクロアルキル、−NHC(NH)NH−アリール、−NHC(NH)NH−ヘテロアリール、−NHC(NH)NH−ヘテロシクロアルキル、NHC(NH)−C−C12−アルキル、−NHC(NH)−C−C12−アルケニル、−NHC(NH)−C−C12−アルキニル、−NHC(NH)−C−C12−シクロアルキル、−NHC(NH)−アリール、−NHC(NH)−ヘテロアリール、−NHC(NH)−ヘテロシクロアルキル、−C(NH)NH−C−C12−アルキル、−C(NH)NH−C−C12−アルケニル、−C(NH)NH−C−C12−アルキニル、−C(NH)NH−C−C12−シクロアルキル、−C(NH)NH−アリール、−C(NH)NH−ヘテロアリール、−C(NH)NH−ヘテロシクロアルキル、−S(O)−C−C12−アルキル、−S(O)−C−C12−アルケニル、−S(O)−C−C12−アルキニル、−S(O)−C−C12−シクロアルキル、−S(O)−アリール、−S(O)−ヘテロアリール、−S(O)−ヘテロシクロアルキル−SONH、−SONH−C−C12−アルキル、−SONH−C−C12−アルケニル、−SONH−C−C12−アルキニル、−SONH−C−C12−シクロアルキル、−SONH−アリール、−SONH−ヘテロアリール、−SONH−ヘテロシクロアルキル、−NHSO−C−C12−アルキル、−NHSO−C−C12−アルケニル、−NHSO−C−C12−アルキニル、−NHSO−C−C12−シクロアルキル、−NHSO−アリール、−NHSO−ヘテロアリール、−NHSO−ヘテロシクロアルキル、−CHNH、−CHSOCH、−アリール、−アリールアルキル、−ヘテロアリール、−ヘテロアリールアルキル、−ヘテロシクロアルキル、−C−C12−シクロアルキル、ポリアルコキシアルキル、ポリアルコキシ、−メトキシメトキシ、−メトキシエトキシ、−SH、−S−C−C12−アルキル、−S−C−C12−アルケニル、−S−C−C12−アルキニル、−S−C−C12−シクロアルキル、−S−アリール、−S−ヘテロアリール、−S−ヘテロシクロアルキルまたはメチルチオメチルを含むが、これらに限定されない。アリール、ヘテロアリール、アルキル等はさらに置換されていてもよいと理解される。
【0031】
用語「アリールアルキル」は、本明細書において使用するとき、C−CアルキルまたはC−Cアルキル基を介して親化合物と結合しているアリールを意味する。例にはベンジル、フェネチル等が含まれるが、これらに限定されない。
用語「置換アリールアルキル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の芳香族置換基で置換された上記定義のアリールアルキル基を意味する。
【0032】
用語「ヘテロアリール」は、本明細書において使用するとき、単、二または三環式芳香族性基または少なくとも1個の環原子がS、OおよびNから選択され;0、1または2個の環原子がS、OおよびNから独立して選択されるさらなるヘテロ原子であり;残りの環原子が炭素である5〜10個の環原子を有する環であって、ここで当該環に含まれるいずれかのNまたはSは所望により酸化されていてもよい環を意味する。ヘテロアリールはピリジニル、ピラジニル、ピリミジニル、ピロリル、ピラゾリル、イミダゾリル、チアゾリル、オキサゾリル、イソオキサゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、チオフェニル、フラニル、キノリニル、イソキノリニル、ベンゾイミダゾリル、ベンゾオキサゾリル、キノキサリニル等を含むが、これらに限定されない。ヘテロ芳香環は炭素またはヘテロ原子を介して化学構造と結合することができる。
【0033】
用語「置換ヘテロアリール」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の芳香族置換基で置換された上記定義のヘテロアリール基を意味する。
用語「C−C12−シクロアルキル」は、本明細書において使用するとき、単環式または二環式飽和炭素環式環化合物に由来する1個の水素原子の除去による1価基を意味する。例は、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、ビシクロ[2.2.1]ヘプチルおよびビシクロ[2.2.2]オクチルを含むがこれらに限定されない。
【0034】
用語「置換C−C12−シクロアルキル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の脂肪族置換基で置換された上記定義のC−C12−シクロアルキル基を意味する。
【0035】
用語「ヘテロシクロアルキル」は、本明細書において使用するとき、非芳香族性5、6もしくは7員環または二もしくは三環式基縮合系を意味し、ここで(i)各環は酸素、硫黄および窒素から独立して選択される1〜3個のヘテロ原子を含み、(ii)各5員環は0〜1個の二重結合を有し、各6員環は0〜2個の二重結合を有し、(iii)窒素および硫黄ヘテロ原子は所望により酸化されていてもよく、(iv)窒素ヘテロ原子は所望により第四級化されていてもよく、(iv)何れかの上記環はベンゼン環と縮合していてもよく、そして(v)残りの環原子は所望によりオキソ置換されていてもよい炭素原子である。代表的なヘテロシクロアルキル基は、[1,3]ジオキソラン、ピロリジニル、ピラゾリニル、ピラゾリジニル、イミダゾリニル、イミダゾリジニル、ピペリジニル、ピペラジニル、オキサゾリジニル、イソキサゾリジニル、モルホリニル、チアゾリジニル、イソチアゾリジニル、キノキサリニル、ピリダジノニルおよびテトラヒドロフリルを含むが、これらに限定されない。
【0036】
用語「置換ヘテロシクロアルキル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の脂肪族置換基で置換された、上記定義のヘテロシクロアルキル基を意味する。
【0037】
用語「ヘテロアリールアルキル」は、本明細書において使用するとき、C−CアルキルまたはC−Cアルキル基を介して親化合物と結合しているヘテロアリール基を意味する。例にはピリジニルメチル、ピリミジニルエチル等を含むが、これらに限定されない。
【0038】
用語「置換ヘテロアリールアルキル」は、本明細書において使用するとき、1個、2個、3個またはそれ以上の芳香族置換基で置換された、上記定義のヘテロアリールアルキル基を意味する。
【0039】
用語「C−C−アルキルアミノ」は、本明細書において使用するとき、窒素原子を介して親化合物と結合している、上記定義の1または2個のC−C−アルキル基を意味する。C−C−アルキルアミノの例は、メチルアミノ、ジメチルアミノ、エチルアミノ、ジエチルアミノおよびプロピルアミノを含むが、これらに限定されない。
【0040】
用語「アルキルアミノ」は、構造−NH(C−C12アルキル)(ここで、C−C12アルキルは上記定義のとおりである)を有する基を意味する。
【0041】
用語「ジアルキルアミノ」は、構造−N(C−C12アルキル)(C−C12アルキル)(ここで、C−C12アルキルは上記定義のとおりである)を有する基を意味する。ジアルキルアミノの例は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、メチルエチルアミノ、ピペリジノ等を含むが、これらに限定されない。
用語「アルコキシカルボニル」は、エステル基、すなわちカルボニル基を介して親分子部分と結合しているアルコキシ基、例えばメトキシカルボニル、エトキシカルボニル等を意味する。
【0042】
用語「カルボキシアルデヒド」は、本明細書において使用するとき、式−CHOの基を意味する。
用語「カルボキシ」は、本明細書において使用するとき、式−COOHの基を意味する。
用語「カルボキサミド」は、本明細書において使用するとき、式−C(O)NH(C−C12アルキル)または−C(O)N(C−C12アルキル)(C−C12アルキル)、−C(O)NH、NHC(O)(C−C12アルキル)、N(C−C12アルキル)C(O)(C−C12アルキル)等の基を意味する。
【0043】
用語「ヒドロキシ保護基」は、本明細書において使用するとき、合成法のあいだヒドロキシル基を望ましくない反応から保護することが当該技術分野において知られている不安定な化学基を意味する。当該合成法の後、本明細書に記載のヒドロキシ保護基は、選択的に除去することができる。当該技術分野において既知のヒドロキシ保護基は、T. H. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, New York (1999)に一般に記載されいている。ヒドロキシル保護基の例は、ベンジルオキシカルボニル、4−ニトロベンジルオキシカルボニル、4−ブロモベンジルオキシカルボニル、4−メトキシベンジルオキシカルボニル、メトキシカルボニル、tert−ブトキシカルボニル、イソプロポキシカルボニル、ジフェニルメトキシカルボニル、2,2,2−トリクロロエトキシカルボニル、2−(トリメチルシリル)エトキシカルボニル、2−フルフリルオキシカルボニル、アリルオキシカルボニル、アセチル、ホルミル、クロロアセチル、トリフルオロアセチル、メトキシアセチル、フェノキシアセチル、ベンゾイル、メチル、t−ブチル、2,2,2−トリクロロエチル、2−トリメチルシリルエチル、1,1−ジメチル−2−プロペニル、3−メチル−3−ブテニル、アリル、ベンジル、パラ−メトキシベンジルジフェニルメチル、トリフェニルメチル(トリチル)、テトラヒドロフリル、メトキシメチル、メチルチオメチル、ベンジルオキシメチル、2,2,2−トリクロロエトキシメチル、2−(トリメチルシリル)エトキシメチル、メタンスルホニル、パラ−トルエンスルホニル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリイソプロピルシリル等を含む。本発明のための好ましいヒドロキシル保護基は、アセチル(Acまたは−C(O)CH)、ベンゾイル(Bnまたは−C(O)C)およびトリメチルシリル(TMSまたは−Si(CH)である。
【0044】
用語「保護ヒドロキシ」は、本明細書において使用するとき、例えばベンゾイル、アセチル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、メトキシメチル基を含む上記定義のヒドロキシル保護基で保護されたヒドロキシ基を意味する。
【0045】
用語「アミノ保護基」は、本明細書において使用するとき、本明細書において使用するとき、合成法のあいだアミノ基を望ましくない反応から保護することが当該技術分野において知られている不安定な化学基を意味する。当該合成法の後、本明細書に記載のアミノ保護基は、選択的に除去することができる。当該技術分野において既知のアミノ保護基は、T. H. Greene and P. G. M. Wuts, Protective Groups in Organic Synthesis, 3rd edition, John Wiley & Sons, New York (1999)に一般に記載されている。アミノ保護基の例はt−ブトキシカルボニル、9−フルオレニルメトキシカルボニル、ベンジルオキシカルボニル等を含むが、これらに限定されない。
【0046】
用語「保護アミノ」は、本明細書において使用するとき、上記定義のアミノ保護基で保護されたアミノ基を意味する。
【0047】
用語「アシル」はカルボン酸、カルバミン酸、炭酸、スルホン酸およびリン酸を含むがこれらに限定されない酸に由来する基を含む。例には脂肪族カルボニル、芳香族カルボニル、脂肪族スルホニル、芳香族スルフィニル、脂肪族スルフィニル、芳香族スルホニル、脂肪族スルファミル、芳香族スルファミル、芳香族ホスフェートおよび脂肪族ホスフェートが含まれる。
【0048】
「アミノ酸」はアミンおよびカルボキシル官能基を両方含む、一般式NH2CHRCOOHを有する分子である。用語アミノ酸は、標準アミノ酸および非標準アミノ酸を含む。
【0049】
「標準アミノ酸」は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンを含む。
【0050】
「アスパラギン酸以外の標準アミノ酸」は、アラニン、アルギニン、アスパラギン、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンから成る群から選択される。
【0051】
「非標準アミノ酸」は、標準アミノ酸のものではないアミノ酸(アミンおよびカルボキシル官能基の両方を含む分子)を意味する。その例は、セレノシステイン(UGAコドンでいくつかのタンパク質に挿入される)、ピロリジン(メタン生成細菌によってメタンを生産する酵素において使用され、コドンUAGでコードされる)、ランチオニン、2−アミノイソ酪酸、デヒドロアラニン、3−アミノ−6−ヒドロキシ−2−ピペリドン、ガンマ−アミノ酪酸、オルニチン、シトルリン、ホモシステイン、ドーパミンまたはヒドロキシプロリンである。
【0052】
「非塩基性標準アミノ酸」は、アラニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、スレオニン、トリプトファン、チロシンおよびバリンである。
【0053】
「Ahp」(3−アミノ−6−ヒドロキシ−2−ピペリドン)は、例えばシアノバクテリアにおいて見られる非標準アミノ酸である。「Ahp誘導体」は、3−アミノ−5,6−ジヒドロ−2−ピペリドン(デヒドロ−AHP)、3−アミノ−2−ピペリドンおよび「AHPのエーテルおよびエステル誘導体」を含むが、これらに限定されない。好ましいAhp誘導体は3−アミノ−2−ピペリドンである。
【0054】
非標準アミノ酸のこの群の別のメンバーは:
【化5】

である。
【0055】
「アミノ酸誘導体」はO−アルキル、O−アリール、O−アシル、S−アルキル、S−アリール、S−S−アルキル、アルコキシカルボニル、O−カルボニル−アルコキシ、カルボネート、O−カルボニル−アリールオキシ、O−カルボニル−アルキルアミノ、O−カルボニル−アリールアミノ、N−アルキル、N−ジアルキル、N−トリアルキルアンモニウム、N−アシル、N−カルボニル−アルコキシ、N−カルボニル−アリールオキシ、N−カルボニル−アルキルアミノ、N−カルボニル−アリールアミノ、N−スルホニルアルキルまたはN−スルホニルアリールを含むが、これらに限定されない。
【0056】
「非塩基性標準アミノ酸誘導体」は、O−アルキル、O−アリール、O−アシル、S−アルキル、S−アリール、S−S−アルキル、アルコキシカルボニル、O−カルボニル−アルコキシ、カルボネート、O−カルボニル−アリールオキシ、O−カルボニル−アルキルアミノ、O−カルボニル−アリールアミノ、N−アルキル、N−ジアルキル、N−triアルキルアンモニウム、N−アシル、N−カルボニル−アルコキシ、N−カルボニル−アリールオキシ、N−カルボニル−アルキルアミノ、N−カルボニル−アリールアミノ、N−スルホニルアルキルまたはN−スルホニルアリールを含むが、これらに限定されない。
【0057】
「チロシン誘導体」は−O−アルキル、O−アリール、O−ヘテロアリール、O−アシル、O−POHおよびO−SOHならびにオルトまたはメタ位でのハロゲン化を含むが、これらに限定されない。
【0058】
「デプシペプチド誘導体」は、本明細書に記載のとおり修飾したデプシペプチドおよび後記実施例に具体的に記載したものを含むが、これらに限定されない。該誘導体は当該技術分野において周知の方法を用いて製造することができる。
【0059】
本発明はさらに、本発明の化合物の薬学的に許容される塩および誘導体、ならびにかかる化合物を得るための方法に関する。当該化合物を得る一つの方法は、コンドロマイセスまたはその突然変異体もしくは変異体を好適な条件下で、好ましくは本明細書に記載の発酵プロトコルを用いて培養することである。
【0060】
少なくとも1個の塩形成基を有する本発明の化合物の「塩」は、自体公知の方法で製造することができる。例えば、酸性基を有する本発明の化合物の塩は、例えば当該化合物を金属化合物、例えば好適な有機カルボン酸のアルカリ金属塩、例えば2−エチルヘキサン酸のナトリウム塩で、有機アルカリ金属化合物またはアルカリ土類金属化合物、例えば対応するヒドロキシド、カルボネートまたはハイドロゲンカルボネート、例えばナトリウムまたはカリウムのヒドロキシド、カルボネートまたはハイドロゲンカルボネートで、対応するカルシウム化合物で、あるいはアンモニアもしくは好適な有機アミンで、好ましくは化学量論量またはわずかに過剰の塩形成剤を用いて処理して、形成することができる。本発明の化合物の酸付加塩は、常套の方法で、例えば該化合物を酸または好適なアニオン交換剤で処理して得られる。酸性および塩基性塩形性基、例えば遊離カルボキシ基と遊離アミノ基を含む本発明の化合物の分子内塩は、例えば弱塩基による等電点への、酸付加塩のような塩の中和またはイオン交換剤による処理によって形成させることができる。
【0061】
塩は常套の方法で遊離化合物に変換することができ;金属塩およびアンモニウム塩は例えば好適な酸で処理して変換することができ、酸付加塩は例えば好適な塩基剤で処理して変換することができる。
【0062】
本発明に従って得られた異性体の混合物は、自体公知の方法で個々の異性体に分離することができる;ジアステレオマーは例えば多相溶媒混合物での分配、再結晶および/または例えばシリカゲルでのクロマトグラフ分離または例えば逆相カラムでの中圧液体クロマトグラフィーによって分離することができ、ラセミ体は例えば光学的に純粋な塩形成剤との塩の形成と例えば分画結晶化による得られたジアステレオマー混合物の分離によって、または光学的に活性なカラム材でのクロマトグラフィーによって分割することができる。
【0063】
中間体および最終生成物は標準的な方法、例えばクロマトグラフ法、分配法、(再)結晶化等を用いて後処理および/または精製することができる。
【0064】
本発明の環状デプシペプチドはカリクレイン7を阻害する。「阻害剤」は、100μM未満、50μM、30μM、20μMまたは10μM未満の測定IC50で酵素反応を阻害する環状デプシペプチドである。特に好ましいものは、ヒトカリクレイン7について30μM未満のIC50を有する環状デプシペプチド、例えば10μM、1μM、100nM、50nM、40nM、30nM、20nM、10nMまたはそれ未満のIC50を有する環状デプシペプチドである。ヒトカリクレインのIC50はBiosyntan(Berlin, Germany)から購入可能な蛍光消光基質Ac−Glu−Asp(EDANS)−Lys−Pro−Ile−Leu−Phe^Arg−Leu−Gly−Lys(DABCYL)−Glu−NH(ここで、^はMS分析で同定した解離しやすい結合を示す)を用いて測定することができる。酵素反応は150mMのNaClおよび0.05%(w/v)のCHAPSを含む50mMのクエン酸ナトリウムバッファー中pH5.6で実施する。IC50値の検出のために、該アッセイは室温、384ウェルプレートで実施する。総最終アッセイ体積は30μlである。試験化合物を90%(v/v)DMSO/水に溶解し、水(0.05%(w/v)のCHAPSを含む)で所望のアッセイ濃度の3倍に希釈する。11種類の最終化合物濃度は:0.3nM、1nM、3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、10μMおよび30μMである。それぞれのアッセイについて、10μlの水/CHAPS(±試験化合物)、次いで10μlのプロテアーゼ溶液(1.5xアッセイバッファーで希釈)をウェル毎に加える。最終アッセイ溶液のプロテアーゼ濃度は0.2nM(Bradford法によって測定した酵素濃度による)である。室温で1時間インキュベートした後、10μlの基質溶液(1.5xアッセイバッファーに溶解させた基質、最終濃度は2μMである)を加えて反応を開始させる。酵素活性に対する化合物の効果は、線形プログレス曲線から得られ、基質の添加直後に得た最初のもの(t=0分)と1時間後の第二のもの(t=60分)の2つの読み取りから決定する。IC50値は非線形回帰分析ソフトウェア(XLfit, Vers. 4.0; ID Business Solution Ltd., Guildford, Surrey, UK)を用いて阻害率対阻害剤濃度のプロットから計算する。
【0065】
ヒトカリクレイン7(hK7)はヒト皮膚に存在するセリンプロテアーゼ活性を有する酵素である。これは当初は角質層キモトリプシン酵素(SCCE)と記載され、角質層のタンパク質(例えばコルネオデスモシンおよびプラコグロビン)を切断することによって角質層の落屑に関与し得る。角質層は、上皮の障壁形成最外層であり、高度に組織化された脂質に囲まれた角化上皮細胞から成る。これは上皮分化によって継続的に形成され、正常上皮において角質層の一定の厚みは角化細胞の増殖と落屑のバランスによって維持される。炎症性皮膚疾患におけるSCCEの上昇した発現は、病因的意義が存在し得る(Hansson, et al. (2002))。上皮角化細胞においてヒトカリクレイン7を発現するトランスジェニックマウスは、増加した上皮厚による病的皮膚変化、角質増殖症、皮膚炎症および重度の掻痒症(掻痒)を発症することが見出された。角質層キモトリプシン酵素遺伝子の3’UTRにおける4bp(AACC)挿入とアトピー性皮膚炎の遺伝的関連性が報告されており(Vasilopoulos, et al. (2004))、これは該酵素がアトピー性皮膚炎の発症に重要な役割を有する可能性を示唆している。アトピー性皮膚炎は15〜20%の小児が罹患している皮膚障壁不全による疾患である。
【0066】
カリクレイン7は、キモトリプシン様活性を示すカリクレイン遺伝子ファミリーのS1セリンプロテアーゼである。ヒトカリクレイン7(hK7、KLK7または角質層キモトリプシン酵素(SCCE)、Swissprot P49862)は皮膚生理学において重要な役割を果たす(1、2、3)。これは主として皮膚において発現し、皮膚生理に深く関与していることが報告されている。hK7は落屑プロセスにおける角化扁平上皮細胞の細胞間接着構造の分解に関与する。落屑プロセスは、皮膚障壁機能に深く関与する皮膚の最外層である角質層の一定の厚みを維持するために十分に制御され、角質細胞のデノボ生産と繊細に釣り合いを取っている。この観点から、hK7は角質接着斑タンパク質コルネオデスモシンおよびデスモコリン1を切断することができると報告されている(4、5、6)。両方のコルネオデスモソームの分解は、落屑に必要である。さらに、ごく最近、2種の脂質プロセッシング酵素β−グルコセレブロシダーゼおよび酸性スフィンゴミエリナーゼがhK7によって分解され得ることが示されている(7)。両方の脂質プロセッシング酵素は、それらの基質であるグルコシルセラミドおよびスフィンゴミエリンと共に分泌され、これらの極性脂質前駆体をそれらのより非極性な生成物、例えばセラミドに処理し、これは次いで、細胞外層状膜に取り込まれる。該層状膜構造は機能的皮膚障壁に重要である。最後に、hK7はインビトロでインターロイキン−1β(IL−1β)前駆体をその活性形態に活性化することが示されている(8)。角化細胞はIL−1βを発現するが、特異的IL−1β変換酵素(ICEまたはカスパーゼ1)の活性形態を発現しないため、ヒト上皮におけるIL−1β活性化は別のプロテアーゼ(潜在的な候補はhK7である)を介して生じることが提案されている。
【0067】
最近の研究は、hK7の増加した活性と、アトピー性皮膚炎、乾癬またはネザートン症候群のような炎症性皮膚疾患に関連付けている。これは脱制御落屑を引き起こすコルネオデスモソームの脱制御分解、阻害された層状膜構造を引き起こす脂質プロセッシング酵素の向上した分解または前炎症性サイトカインIL−1βの脱制御活性化を導き得る。その最終結果は、皮膚障壁機能不全および炎症である(WO-A-2004/108139も参照されたい)。
【0068】
hK7活性が様々なレベルで制御されているため、炎症性皮膚疾患において、多様な因子が上昇したhK7活性に関与している可能性がある。第一に、発現されるプロテアーゼの量は遺伝的因子によって影響され得る。かかる遺伝的リンク、hK7遺伝子の3’−UTRにおける多型は、近年記載された(9)。著者らはカリクレイン7遺伝子の3’−UTRにおける記載の4塩基対挿入がhK7mRNAを安定化して、hK7の過剰発現をもたらすと仮定している。第二に、hK7は層状体を介して角質層細胞外空間に酵素原として分泌され、自己活性化することができないため、別のプロテアーゼ、例えばhK5によって活性化される必要がある(5)。かかる活性化酵素の制御されていない活性はhK7の過剰活性化をもたらす可能性がある。第三に、活性化hK7はLEKTI、ALPまたはエラフィンのような天然阻害剤によって阻害することができる(10、11)。かかる阻害剤の発現低下または欠如は、hK7の活性上昇を引き起こす可能性がある。近年、LEKTIをコードするspink5遺伝子における変異がネザートン症候群の原因であり(12)、該遺伝子における点突然変異がアトピー性皮膚炎に関連している(13、14)ことが見出された。最後に、hK7の活性を制御する別のレベルはpHである。hK7は中性乃至わずかにアルカリ性のpHが至適であり(2)、皮膚の最内層から最外層にかけて中性から酸性のpH勾配が存在する。石けんのような環境因子は、角質層の最外層においてhK7の至適pHにpHを上昇させて、hK7活性を上昇させる可能性がある。
【0069】
上昇したhK7活性は炎症性および過増殖性皮膚疾患を含む皮膚障壁機能不全による皮膚疾患に関与している。第一に、ネザートン症候群患者はセリンプロテアーゼ活性の表現型依存性上昇、コルネオデスモソームの減少、脂質プロセッシング酵素β−グルコセレブロシダーゼおよび酸性スフィンゴミエリナーゼの減少および障壁機能不全を示す(15、16)。第二に、ヒトカリクレイン7を過剰発現するトランスジェニックマウスはアトピー性皮膚炎を有する患者において見られるものと同様の皮膚表現型を示す(17、18、19)。第三に、アトピー性皮膚炎および乾癬患者の皮膚において、上昇したhK7濃度が記載された(17、20)。さらにまた、上昇したK7の活性およびそれによる上皮障壁機能不全はまた、炎症性腸疾患およびクローン病のような他の上皮疾患の病理に重要な役割を果たし得る。
【0070】
処置はそれぞれ、当該技術分野において周知の、局所または全身投与、例えばクリーム、軟膏および座薬によって、または経口、皮下または静脈内投与であってよい。
【0071】
一つの局面において、本発明のデプシペプチドはDSMZに2007年4月24日に寄託したコンドロマイセス・クロカツス(Chondromyces crocatus)株(DSM 19329)を培養して得られ、あるいはDSMZに2007年4月24日に寄託したコンドロマイセス・ロブスツス(Chondromyces robustus)株(DSM 19330)を培養して得られる。
菌株の寄託は特許手続上の微生物の寄託の国際承認に関するブダペスト条約に基づいて行った。寄託した菌株は特許の発行によって取引不能の形で、制限または条件を付加することなく公に開放される。寄託した菌株は単に便宜のために当業者に提供され、寄託が実施可能用件であることを認めるわけではない。
【0072】
本発明は特定の菌株コンドロマイセス・クロカツスおよびコンドロマイセス・ロブスツスの培養に限定されないと理解される。むしろ本発明は、デプシペプチドを生産することができる他の生物、例えばX線照射、紫外線照射、化学変異誘発剤、ファージ曝露、抗生物質選択等のような既知の方法による、この生物に由来し得る株の突然変異体または変異体の培養を意図する。
【0073】
本発明のデプシペプチドは、多様な微生物によって生合成され得る。本発明の化合物を合成することができる微生物は、粘液細菌とも称されるミクソコックス目の細菌を含むが、これらに限定されない。粘液細菌属に属するメンバーの非限定的な例は、コンドロマイセス、ソランギウム、ポリアンギウム、ビソファーガ(Byssophaga)、ハプロアンギウム(Haploangium)、ジャーニア(Jahnia)、ナノシスティス、コフレリア(Koffleria)、ミキソコッカス、コラロコッカス(Corallococcus)、シストバクター、アーキアンギウム、スチグマテラ、ヒアランギウム、メリタンギウム、ピクシコッカス(Pyxicoccus)を含む。粘液細菌の分類学は複雑であり、2004年5月5日に発売されたGarrity GM, Bell JY, Lilburn TG (2004) Taxonomic outline of the prokaryotes, Bergey’s manual of systematic bacteriology、第二版(http://141.150.157.80/bergeysoutline/main.htm)を参照する。
【0074】
構造式(I〜X)の化合物は、好適な培地の好気的発酵によって、制御された条件下で、コンドロマイセス・クロカツスまたはコンドロマイセス・ロブスツスの培養によって生産される。好適な培地は、好ましくは水性であり、同化炭素、窒素および無機塩源を含む。
【0075】
好適な培地は、実施例1および2に記載の増殖培地を含むが限定されない。発酵は約3〜約20日間、約10℃〜約40℃で実施し;しかし最適な結果のために、約30℃で発酵を実施することが好ましい。発酵の間、培養液のpHは約6.0〜約9.0であり得る。
【0076】
デプシペプチド産生微生物を播種した培養培地は、例えば回転振盪機または撹拌タンク発酵槽を用いて、好気的条件下でインキュベートすることができる。インキュベーション中に播種培養培地に空気、酸素または適切な気体混合物を注入して、通気を行うことができる。十分量の抗生物質化合物が蓄積すると、これを常套の通常の方法で、例えば抽出およびクロマトグラフ法、沈殿または結晶化および/または本明細書に記載の方法で、培養物から濃縮し、単離することができる。抽出の例として、培養物をn−ブタノール、酢酸エチル、シクロヘキサン、n−ヘキサン、トルエン、n−ブチルアセテートまたは4−メチル−2−ペンタノンのような好適な有機溶媒と混合し、撹拌して、減圧下で溶媒を除去して、有機層中の抗生物質化合物を回収することができる。得られた残留物は、所望により、例えば水、エタノール、メタノールまたはそれらの混合物で再構成して、ヘキサン、四塩化炭素、塩化メチレン、ジクロロメタンまたはそれらの混合物のような好適な有機溶媒で再抽出することができる。溶媒を除去した後、例えばクロマトグラフ法によって化合物をさらに精製してもよい。クロマトグラフィーの例として、エーテル、ケトン、エステル、ハロゲン化炭化水素またはアルコールを含む有機溶出溶媒またはそれらの混合物によるシリカゲルまたは酸化アルミナのような固定相、あるいは多様な官能基を有する修飾シリカゲルでの、多様なpHのアセトニトリル、メタノールまたはテトロヒドロフランのような有機溶媒またはその水性混合物で溶出する逆相クロマトグラフィーを適用することができる。別の例は、例えば固体−液体または液体−液体モードの分配クロマトグラフィーである。また、例えばSephadex LH-20(Sigma-Aldrich)を用いて、多様な溶媒、好ましくはアルコールで溶出するサイズ排除クロマトグラフィーが適用される。
【0077】
この分野において一般的である通り、生産ならびに回収および精製プロセスは、多様な分析方法、例えばバイオアッセイ、TLC、HPLCまたはそれらの組合せによって、そして種々の検出方法(TLCには典型的にはUV光、ヨウ素蒸気または着色剤スプレー、HPLCには典型的にUV光、質量感知または光散乱法)を適用して、モニターすることができる。例えば、HPLC技術は、機能化シリカゲルでの逆相カラムを用いて、極性水混和性溶媒と水の特定のpHでの直線グラジエント混合物である溶離剤および多様な波長でのUV光または質量感知検出器による検出方法を適用することによって代表される。
【0078】
微生物から生合成したデプシペプチドは、所望により無作為および/または定方向化学修飾に付して誘導体または構造アナログである化合物を形成してもよい。同様の機能的活性を有するかかる誘導体または構造アナログは、本発明の範囲に含まれる。デプシペプチドは所望により、当該技術分野において周知または本明細書に記載の方法を用いて修飾してもよい。
【0079】
例えば、本発明のデプシペプチドの誘導体は、次の製造を含む式
【化6】

の環状デプシペプチドの誘導化によって製造することができる:
a)− A4が
【化7】

である化合物を有機または無機酸、例えばトリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸またはルイス酸、例えば三フッ化ホウ素エーテルで、溶媒、例えばジクロロメタン、THF中または溶媒の非存在下、−78℃〜150℃、好ましくは−30℃〜室温で処理することによる、A4が
【化8】

である化合物の製造。
【0080】
b)− A4が
【化9】

である化合物を水素分子または水素源、例えばシクロヘキセン、ギ酸アンモニウムで、触媒、例えばパラジウムの存在下、溶媒、例えば2−プロパノール中、−50℃〜100℃、好ましくは室温で処理することによる、A4が
【化10】

である化合物の製造。
【0081】
c)− A4が
【化11】

である化合物を有機または無機酸、例えば硫酸、塩酸またはルイス酸、例えば三フッ化ホウ素エーテルで、還元剤、例えばトリエチルシランの存在下、溶媒、例えばジクロロメタン、THF中または溶媒の非存在下、−78℃〜150℃、好ましくは−50℃〜室温で処理することによる、A4が
【化12】

である化合物の製造。
【0082】
d)− A4が
【化13】

である化合物を置換または非置換アルカノールと有機または無機酸、例えばトリフルオロ酢酸、硫酸、塩酸またはルイス酸、例えば三フッ化ホウ素エーテルで、還元剤、例えばトリエチルシランの存在下、溶媒、例えば置換または非置換アルカノール中または溶媒の非存在下、−78℃〜150℃、好ましくは−30℃〜室温で処理することによる、A4が
【化14】

である化合物の製造。
【0083】
特に定めのない限り、本明細書および特許請求の範囲において用いる成分の量、分子量の様な特性、反応条件、IC50等を表現するあらゆる数は、全ての場合において用語「約」で修飾されているものと理解される。したがって、異なることが特記されない限り、本明細書および添付の特許請求の範囲に記載の数値パラメーターは、近似値である。少なくとも、特許請求の範囲への均等論の適用を限定することを意図しないが、それぞれの数値パラメーターは、少なくとも有効桁数を踏まえて、そして通常の四捨五入を適用して構成される。本発明の広い範囲を説明する数値範囲およびパラメーターは近似値であるが、実施例、表および図に示す数値は可能な限り正確に報告している。あらゆる数値は、実験のゆらぎ、測定試験、統計的分析等に由来するある種の誤差を潜在的に含んでいてもよい。
【0084】
特に定義がない限り、本明細書において使用されるあらゆる技術および化学用語は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者によって通常理解されるものと同じ意味を有する。本明細書に記載のものと同様または均等な方法および物質が本発明の実施または試験において使用されてもよいが、好適な方法および物質は次に記載する。本明細書に記載の全ての公報、特許出願、特許および他の参考文献はそれらの全体において引用して本明細書に組み込む。相反する記載がある場合には、定義を含め、本明細書が制御下に置く。さらに、本物質、方法および実施例は、単なる説明であり、限定されることを意図しない。
【実施例】
【0085】
実施例1
式(II)〜(VII)の化合物の製造
株: コンドロマイセス・クロカツス菌株は、発明者らの研究室において、クルミの木の腐木の環境サンプルから単離した。
子実体の形態学ならびに16S−RNA遺伝子の部分配列に基づいて、当該株がコンドロマイセス・クロカツスと明確に同定した。コンドロマイセス・クロカツスはDSMZによって生物学的リスク群1に指定されている(DSMZ (2007))。コンドロマイセスはポリアンギウム科(Polyangiaceae)の1種であり、デルタプロテオバクテリアのミキソコッカス目(Myxocccales)に属する。粘液細菌目とも称されるミキソコッカス目の細菌は、他のほとんどの細菌とそれらを区別する2個の特徴を有する、グラム陰性桿菌である。それらは、飢餓状態になると能動的滑走メカニズムを用いて固体表面上に集合し、集合して子実体を形成する(Kaiser (2003))。
【0086】
本発明のコンドロマイセス・クロカツス菌株は、DSMZに受託番号19329で寄託した。
【0087】
本発明のコンドロマイセス・クロカツス菌株は純粋培養としての生存能力がなく、共生菌株の非存在下では維持することができない。共生菌株は寒天プレートの発酵共培養物(LB培地)のアリコートを画線して、純粋培養物として得て、維持することができる。同様の観察がReichenbachのグループによって行われた(Jacobi, et al. (1996), Jacobi, et al. (1997))。本発明のコンドロマイセス・クロカツスの共生菌株の16S−rRNA遺伝子の部分DNA配列に基づくと、最も近いマッチはアルファ−プロテオバクテリアのリゾビウム目(Rhizobiales)由来のボセア・チオオキシダンス(Bosea thiooxidans)である。調査した424bp配列フラグメント16S−rRNAは、遺伝子バンクのAF508112配列(B. thiooxidans)と約98%の同一性(少なくとも8ヌクレオチド交換)を有する。ボセア・チオオキシダンス(B. thiooxidans)はインドのカルカッタ周辺の様々な農業用地から採取された土壌サンプルから単離された。これはある有機基質の存在下で還元無機硫黄化合物を酸化することができ、1996年に新菌種および新属として記載された(Das, et al. (1996))。記載されたボセア種5種類全ての部分16S−RNA配列に由来する系統樹は、コンドロマイセス・クロカツスから単離されたボセア共生菌株とは別の位置を示している。
【0088】
培養: 100Lの発酵槽培養を次のプロトコルに従って実施した:
本発明のコンドロマイセス・クロカツス菌株の液体培養物5ml(=10%)を200mlのバッフル付振盪フラスコ中の50mlのMD1培地(Bode et al. 2003に適合している、表6参照)に播種して、前培養を開始する。30℃、回転振盪機で120rpmで11日間インキュベーションした後、500mlのバッフル付振盪フラスコ中の5×100mlのMD1培地に前培養物10ml(=10%)をそれぞれ播種して、一次中間培養を開始した。30℃、回転振盪機で120rpmで7日間インキュベーションした後、2Lのバッフル無し振盪フラスコ中の19×500mlのMD1培地に一次中間培養物25ml(=5%)をそれぞれ播種して、二次中間培養を開始した。30℃、回転振盪機で120rpmで6日間インキュベーションした後、全二次中間培養物(9.5リットル=9.5%)を用いて100リットルのPOL1生産培地(Kunze et al. 1995に適合している、表7参照)に播種した。この100L主培養物は100Lスケールの鉄タンク発酵槽中で実施した。温度は30℃で制御し、通気は20リットル/分(=0.2vvm)であり、撹拌速度は50rpmであった。0.5barのわずかな加圧を培養槽容器内で維持した。3NのHSOまたは3NのNaOHを加えて、培養pHは6.9〜7.1で維持した。約1日間の遅滞期の後、酸素消費が約4日間加速したが、これは培養の指数的増殖を示している。最後の2日間で、酸素消費はわずかに減少したが、これは培養の静止期を示している。7日後、培養物を濃度5.3mg/lの式IIの環状デプシペプチドとして収穫した。
【0089】
抽出: 全ての発酵ブロスを1600Lの鉄容器に移し、1時間デキャンタした。濾紙で濾過して、湿った細胞ペレット(200g)を底分画から得た。細胞ペレットを10リットルの酢酸エチルでそれぞれ30分間turax処理(turaxing)して3回抽出した。次いで、残留水を溶媒相から分離した。溶媒相を5リットルの水で洗浄し、次いで蒸発させて、「細胞抽出物」と称する乾燥抽出物を得た。
培養濾液を200リットルの酢酸エチルで抽出した。1時間のturax処理を含む2時間の接触時間の後、有機相を分離し、20リットルの水で洗浄し、最後に蒸発させて、「培養濾液抽出物」と称する乾燥抽出物を得た。
【0090】
化合物単離: 培養濾液抽出物(4.4g)を80mLのメタノールに溶解させた。遠心分離して不溶性成分を除去し、上清を蒸発乾固させて3.3gの抽出物を得た。該抽出物を7.5mLのMeOH、3mLのDMSOおよび0.5mLのジクロロメタンに溶解させて、0.01%のギ酸(溶媒A)および0.1%のギ酸を含むアセトニトリル(溶媒B)を溶媒として用いる逆相クロマトグラフィー(Waters Sunfire RP18 10μm, 30 x 150 mm)で精製した。流速は50mL/分であった。グラジエントは表1に示す。7回クロマトグラフを実施して、物質を精製した。それぞれの実行から回収した濾液をHPLCで分析し、本発明の環状デプシペプチドを含む分画を合併し、真空下で蒸発乾固させた。クロマトグラフィーによって134mgの式(II)の環状デプシペプチドを純度>97%で、80mgを純度>90%で得た。
【0091】
表2
式(II)の環状デプシペプチドの精製に用いたHPLCグラジエント
【表6】

【0092】
表3
通常相分離で用いたグラジエント
【表7】

【0093】
細胞抽出物(6.67g)をジクロロメタン/メタノール 4:1に溶解させた。該溶液を濾過し、濾液を珪藻(2gの珪藻/1gの抽出物、Isolute(登録商標)、International Sorbent Technology Ltd., Hengoed Mid Glam, UK)に吸着させ、次いで蒸発させた。予め詰め込んだシリカゲルカラム(4x18cm、90gのシリカゲル40〜63)に固体残渣をロードし、シクロヘキサン、酢酸エチルおよびメタノールのグラジエントで溶出した。グラジエントは表2に示し、流速は28ml/分であった。28mlの分画体積を回収した。UVトレースで目に見えるピークに従ってフラクションを合併して、12個のプールフラクション(A〜L)を得た。逆相クロマトグラフィーを用いてデプシペプチドを含む分画(H〜J)をさらに精製した。クロマトグラフ法および後処理方法は培養濾液について記載した精製方法と同じである。全体で、46.1mgの式(II)の環状デプシペプチド、17.9mgの式(III)の環状デプシペプチドおよび6.1mgの式(VI)デプシペプチドと式(VII)のデプシペプチドの1:1混合物を単離した。化合物(VI)および(VII)の構造の帰属は、高分解能MSおよび化合物(VI)と(VII)の混合物のH−NMRと、化合物(II)のH−NMRの比較に基づく。
他の式(II)の環状デプシペプチドはまた、細胞抽出物においてより低い濃度で見出される。これらの他の環状デプシペプチドは式(IV)および(V)のものであった。
【0094】
化合物の特徴付け:
式(II)の化合物の物理データ
IR (KBr ペレット): 3337, 3297, 3062, 2966, 2936, 2877, 1736, 1659, 1533, 1519, 1464, 1445, 1410, 1385, 1368, 1249, 1232, 1205, 989, 832 cm -1
FT-MS (9.4 T APEX-III): 951.5165; C46H72N8O12+Naの計算値: 951.5162
1H NMR (600 MHz, d6-DMSO) δH: -0.10 (3H, d, J =7.0 Hz), 0.65 (4H, m), 0.78 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.82 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.85 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.89 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.02 (1H, m), 1.03 (6H, 2 x d, J = 7.0 Hz), 1.10 (1H, m), 1.21 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.25 (1H, m), 1.40 (1H, m), 1.52 (1H, m), 1.76 (6H, m), 1.84 (1H, m), 1.93 (1H, m), 2.15 (2H, m), 2.48 (1H, m), 2.59 (1H, m), 2.69 (1H, m), 2.72 (3H, s), 3.17 (1H, m), 4.32 (2H, m), 4.44 (2H, m), 4.64 (1H, d, J = 9.5 Hz), 4.71 (1H, m), 4.94 (1H, s), 5.06 (1H, m), 5.49 (1H, m), 6.08 (1H, d, J = 2.2 Hz), 6.65 (2H, d, J = 8.4), 6.74 (1H, s), 7.00 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.27 (1H, s), 7.36 (1H, d, J = 9.5 Hz), 7.66 (1H, d, J = 10.2 Hz), 7.74 (1H, d, J = 8.8 Hz), 8.02 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.43 (1H, d, J = 8.1 Hz), 9.19 (1H, s).
13C NMR (150 MHz) d6-DMSO δC: 10.35, CH3; 11.22, CH3; 13.79, CH3; 16.00, CH3; 17.63, CH3; 19.49, 2 x CH3; 20.83, CH3; 21.72, CH2 ; 23.30, CH3; 23.70, CH2 ; 24.16, CH; 24.41, CH2 ; 27.35, CH2; 29.74, CH2; 30.07, CH3; 31.44, CH2; 33.13, CH; 33.19, CH2; 33.68, CH; 37.39, CH; 39.05, CH2; 48.75, CH; 50.59, CH; 52.01, CH; 54.11, CH; 54.65, CH; 55.24, CH; 60.60, CH; 71.86 CH; 73.89, CH; 115.28, 2 x CH; 127.31, Cq; 130.35, 2 x CH; 156.25, Cq; 169.09, Cq; 169.25, Cq; 169.34, Cq; 169.74, Cq; 170.60, Cq; 172.41, Cq; 172.52, Cq; 173.78, Cq; 176.32, Cq
【0095】
式(III)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III):実測値: 965.5318;C47H74N8O12+Naの計算値: 965.5318
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH: -0.10 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.64 (4H, m), 0.78 (3H,d, J = 7.0 Hz), 0.82 (3H, t, J = 7.0 Hz), 0.83 (3H, t, J = 7.3 Hz), 0.85 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.89 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.04 (1H, m), 1.10 (1H, m), 1.21 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.25 (1H, m), 1.32 (1H, m), 1.40 (1H, m), 1.53 (2H, m), 1.77 (6H, m), 1.84 (1H, m), 1.92 (1H, m), 2.12 (1H, m), 2.16 (1H, m), 2.28 (1H, m), 2.59 (1H, m), 2.68 (1H, m), 2.72 (3H, s), 3.17 (1H, m), 4.32 (1H, m), 4.38 (1H, m), 4.43 (1H, d, J = 10.2 Hz), 4.46 (1H, m), 4.63 (1H, d, J = 9.5 Hz), 4.71 (1H, m), 4.94 (1H, m), 5.06 (1H, m), 5.49 (1H, m), 6.11 (1H, s, broad), 6.65 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.73 (1H, s), 7.00 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.27 (1H, s), 7.37 (1H, d, J = 9.5 Hz), 7.66 (1H, d, J = 10.2 Hz), 7.75 (1H, d, J = 9.7 Hz), 8.07 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.45 (1H, d, J = 8.8 Hz), 9.24 (1H, broad)
【0096】
式(IV)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III): 実測値: 947.5196; C47H72N8O11+Naの計算値: 947.5213
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH: 0.08 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.68 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.71 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.78 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.83 (3H, t, J = 7.3 Hz), 0.84 (1H, m), 0.87 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.88 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.99 (3H, d, J = 7.1 Hz), 1.08 (1H, m), 1.17 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.18 (1H, m), 1.31 (2H, m), 1.43 (1H, m), 1.51 (1H, m), 1.54 (1H, m), 1.76 (2H, m), 1.90 (1H, m), 1.94 (1H, m), 2.01 (1H, m), 2.10 (1H, m), 2.16 (1H, m), 2.26 (1H, m), 2.46 (2H, m), 2.73 (1H, m), 2.74 (3H, s), 3.19 (1H, m), 4.34 (1H, m), 4.36 (1H, m), 4.51 (1H, m), 4.55 (1H, m), 4.66 (1H, d, J = 10.0 Hz), 4.79 (1H, d, J = 11.0 Hz), 5.19 (1H, m), 5.28 (1H, m), 5.44 (1H, m), 6.25 (1H, d, J = 7.3 Hz), 6.33 (1H, d, J = 8.8 Hz), 6.68 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.75 (1H, s), 7.04 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.28 (1H, s), 7.32 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.91 (1H, d, J = 9.5 Hz), 8.05 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.57 (1H, d, J = 8.9 Hz), 9.38 (1H, broad)
【0097】
式(V)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III): 実測値: 933.5053; C46H70N8O11+Naの計算値: 953.5056
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH: 0.08 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.68 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.71 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.79 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.83 (1H, m), 0.88 (3H, t, J = 7.2 Hz), 0.89 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.01 (3H, d, J = 7.0 Hz), 1.03 (3H, d, J = 7.0 Hz) 1.08 (1H, m), 1.17 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.20 (1H, m), 1.31 (1H, m), 1.42 (1H, m), 1.54 (1H, m), 1.74 (2H, m), 1.91 (2H, m), 2.02 (1H, m), 2.10 (1H, m), 2.15 (1H, m), 2.46 (3H, m), 2.75 (3H, s), 2.76 (1H, m), 3.19 (1H, m), 4.32 (1H, m), 4.34 (1H, m), 4.51 (1H, m), 4.55 (1H, m), 4.66 (1H, d, J = 9.5 Hz), 4.79 (1H, d, J = 11.0 Hz), 5.19 (1H, m), 5.28 (1H, m), 5.43 (1H, m), 6.25 (1H, d, J = 7.0 Hz), 6.33 (1H, d, J = 8.5 Hz), 6.68 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.75 (1H, s), 7.04 (2H, d, J = 8.8 Hz), 7.28 (1H, s), 7.31 (1H, d, J = 8.8 Hz), 7.90 (1H, d, J = 9.5 Hz), 7.99 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.52 (1H, d, J = 8.8 Hz), 9.30 (1H, broad)
【0098】
実施例2: 式(VIII、IX、X)の化合物の生産
株: コンドロマイセス・ロブスツス菌株を糞サンプルから単離した。子実体の形態学ならびに16S−RNA遺伝子の部分配列に基づいて、本発明のコンドロマイセス・ロブスツス菌株はコンドロマイセス・ロブスツスと同定した。コンドロマイセス・ロブスツスはDSMZによって生物学的リスク群1に指定されている(DSMZ (2007))。コンドロマイセスはポリアンギウム科(Polyangiaceae)の1種であり、デルタプロテオバクテリアのミキソコッカス目(Myxocccales)に属する。粘液細菌目とも称されるミキソコッカス目の細菌は、他のほとんどの細菌とそれらを区別する2個の特徴を有する、グラム陰性桿菌である。それらは、飢餓状態になると能動的滑走メカニズムを用いて固体表面上に集合し、集合して子実体を形成する(Kaiser (2003))。
【0099】
本発明のコンドロマイセス・ロブスツス属菌株は、DSMZに受託番号19330で寄託している。
【0100】
培養: 100Lの発酵槽培養を次のプロトコルに従って実施した:
本発明のコンドロマイセス・ロブスツス菌株の液体培養物20ml(=20%)を500mlのバッフル付振盪フラスコ中の6×100mlのMD1培地(Bode et al. 2003に適合している)に播種して、前培養を開始する。30℃、回転振盪機で120rpmで1日間インキュベーションした後、2Lのバッフル付振盪フラスコ中の6×400mlのMD1培地に前培養物100ml(=25%)をそれぞれ播種して、一次中間培養を開始した。30℃、回転振盪機で120rpmで3日間インキュベーションした後、15リットルのMD1培地を含む20L鉄タンク発酵槽に一次中間培養物3リットル(=20%)を播種して、二次中間培養を開始した。温度は30℃で制御し、通気は20リットル/分(=1.0vvm)であり、撹拌速度は80rpmであった。0.5barのわずかな加圧を培養槽容器内で維持した。pH制御は行わなかったが、培養物のpHは開始時のpH6.95から7日目のpH6.88にわずかに低下しただけであった。7日後、全二次中間培養物(18リットル=20%)を用いて90リットルのPOL1生産培地(Kunze et al. 1995に適合している、表7参照)に播種した(開始体積=108リットル)。この主培養物は100Lスケールの鉄タンク発酵槽中で実施した。温度は30℃で制御し、通気は30リットル/分(=0.3vvm)であり、撹拌速度は最初は50rpm、4日後は80rpmであった。0.5barのわずかな加圧を培養槽容器内で維持した。2NのHSOまたは1.5NのNaOHを加えて、培養pHは6.8〜7.2で維持した。
14日後、培養物を濃度3mg/lで収穫した。
【0101】
抽出: 全ての発酵ブロスを1600Lの鉄容器に移し、1時間デキャンタした。濾紙で濾過して、湿った細胞ペレット(約200g)を底分画から得た。細胞ペレットを10リットルの酢酸エチルでそれぞれ30分間turax処理して3回抽出した。次いで、残留水を溶媒相から分離した。溶媒相を5リットルの水で洗浄し、次いで蒸発させて、「細胞抽出物」と称する乾燥抽出物11.9gを得た。
培養濾液を200リットルの酢酸エチルで抽出した。1時間のturax処理を含む2時間の接触時間の後、有機相を分離し、20リットルの水で洗浄し、最後に蒸発させて、「培養濾液抽出物」と称する乾燥抽出物12.5gを得た。
【0102】
化合物単離: 各抽出物(菌糸体および培養濾液由来)をジクロロメタン/メタノール 4:1に溶解させた。溶液を濾過し、濾液を珪藻(2gの珪藻/1gの抽出物、Isolute(登録商標)、International Sorbent Technology Ltd., Hengoed Mid Glam, UK)に吸着させ、次いで蒸発させた。予め詰め込んだシリカゲルカラム(4x18cm、90gのシリカゲル40〜63)に固体残渣をロードし、シクロヘキサン、酢酸エチルおよびメタノールのグラジエントで溶出した。グラジエントは表4に示し、流速は28ml/分であった。28mlの分画体積を回収した。UVトレースで目に見えるピークに従ってフラクションを合併した。0.01%のギ酸(溶媒A)および0.1%のギ酸を含むアセトニトリル(溶媒B)を溶媒として用いる逆相クロマトグラフィー(Waters Sunfire RP18 10μm, 30 x 150 mm)で本発明の環状デプシペプチドを含む分画をさらに精製した。流速は50mL/分であった。グラジエントは表5に示す。注入のために、物質はMeOH/DMSO 1:1(濃度200mg/mL)に溶解させた。回収した分画をHPLCで分析し、本発明の環状デプシペプチドを含む分画を合併して、真空下で蒸発乾固させた。抽出物のクロマトグラフィーによって、52mgの純粋な(>97%)式(VIII)の環状デプシペプチドを得た。全体で、85mgの純粋な式(VIII)の環状デプシペプチドを合併した抽出物から単離した。
他の式(VIII)の環状デプシペプチドはまた、細胞抽出物においてより低い濃度で見出される。これらの他の環状デプシペプチドは式(IX)および(X)のものであった。
【0103】
(a)表4
(b)通常相分離で用いたグラジエント
【表8】

【0104】
(c)表5
(d)式(VIII)の環状デプシペプチドの精製で用いたHPLCグラジエント
【表9】

【0105】
培地 (50mMのHEPESでpHを7.0に調節した)
表6
(e)MD1(前培養培地)
【表10】

【0106】
表7
(f)POL1(生産培地)
【表11】

【0107】
化合物の特徴付け:
式(VIII)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III): 実測値: 985.5007; C49H70N8O12+Naの計算値: 985.5005.
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH: 0.74 (6H, d, J = 7.0 Hz), 0.85 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.88 (3H, d, J = 7.0 Hz), 0.89 (6H, d, J = 7.0 Hz), 1.18 (3H, d, J = 6.7 Hz), 1.32 (1H, m), 1.46 (1H, m), 1.57 (2H, m), 1.72 (3H, m), 1.81 (1H, m), 1.88 (1H, m), 1.98 (1H, m), 2.02 (2H, m), 2.11 (3H, m), 2.42 (1H, m), 2.73 (1H, m), 2.77 (3H, s), 2.87 (1H, m), 3.12 (1H, m), 3.64 (1H, m), 4.23 (1H, m), 4.40 (1H, m), 4.58 (1H, d, J = 9.5 Hz), 4.75 (2H, m), 4.93 (1H, m), 5.07 (1H, s), 5.40 (1H, m), 6.03 (1H, s), 6.74 (1H, s), 6.79 (2H, d, J = 8.4 Hz), 6.84 (2H, d, J = 7.8 Hz), 7.02 (2H, d, J = 8.4 Hz), 7.10 (1H, d, J = 9.3 Hz), 7.14 (1H, t, J = 7.8 Hz), 7.19 (2H, t, J = 7.8 Hz), 7.26 (1H, s), 7.42 (1H, d, J = 9.8 Hz), 7.89 (1H, d, J = 9.2 Hz), 8.03 (1H, d, J = 7.9 Hz), 8.38 (1H, d, J = 8.9 Hz), 9.40 (1H, s)
13C NMR (150 MHz) d6-DMSO δC: 17.13, CH3; 17.63, CH3; 19.32, CH3; 20.90, CH3; 21.64, CH2; 22.34, CH3; 22.34, CH3; 23.32, CH3; 24.10, CH; 25.63, CH; 27.63, CH2; 29.30, CH2; 30.37, CH3; 30.86, CH; 31.52, CH2; 32.83, CH2; 35.33, CH2; 38.98, CH2; 44.42, CH2; 48.52, CH; 50.19, CH; 50.24, CH; 51.99, CH; 54.62, CH; 55.63, CH; 60.90, CH; 71.86 CH; 73.70, CH; 115.32, 2 x CH; 126.21, CH; 127.50, Cq; 127.74, 2 x CH; 129.42, 2 x CH; 130.43, 2 x CH; 136.72, Cq; 156.23, Cq; 168.93, Cq; 169.18, Cq; 169.18, Cq; 170.18, Cq; 170.39, Cq; 171.72, Cq; 171.96, Cq; 172.50, Cq; 173.82, Cq
【0108】
式(IX)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III): 実測値: 969.5058; C49H70N8O11+Naの計算値; 969.5056.
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH: 0.53 (3H, d, J = 6.6 Hz), 0.73 (3H, d, J = 6.6 Hz), 0.74 (3H, d, J = 6.6 Hz), 0.81 (3H, d, J = 6.6 Hz), 0.86 (6H, d, J = 6.6 Hz), 1.08 (3H, d, J = 6.5 Hz), 1.20 (1H, m), 1.33 (3H, m), 1.52 (1H, m), 1.64 (1H, m), 1.80 (2H, m), 2.01 (1H, m), 2.04 (2H, m), 2.15 (4H, m), 2.25 (1H, m), 2.30 (1H, m), 2.74 (3H, s), 2.83 (1H, m), 3.12 (1H, m), 3.32 (1H, m), 3.38 (1H, m), 4.14 (1H, m), 4.27 (1H, m), 4.40 (1H, m), 4.59 (1H, m), 4.61 (1H, m), 4.94 (1H, m), 4.99 (1H, m), 5.10 (1H, m), 6.42 (2H, d, J = 8.8 Hz), 6.75 (1H, s), 7.04 (2H, d, J = 8.8 Hz),7.10 (1H, t, J = 7.3 Hz), 7.15 (2H, t, J = 7.3 Hz), 7.23 (2H, d, J = 7.3 Hz), 7.30 (1H, s), 7.41 (1H, d, J = 9.5 Hz), 8.05 (1H, d, J = 9.5 Hz), 8.23 (1H, d, J = 8.1 Hz), 8.47 (1H, d, J = 4.4 Hz), 8.71 (1H, d, J = 10.2 Hz). (チロシンのヒドロキシ基のプロトンのシグナルは見えなかった)
【0109】
式(X)の化合物の物理データ
FT-MS (9.4 T APEX-III): 実測値: 955.4896; C48H68N8O11+Naの計算値:955.4900.
1H NMR (600 MHz) d6-DMSO δH:)δH: 化合物(IX)のNMRデータについてケミカルシフトの帰属は行わなかった(回転異性体の混合物、NMRデータ(N−メチル基を含まない)の比較に基づく構造の帰属)。
【0110】
実施例3: 生物学的活性
例えば式(II)〜(X)の化合物を含む本発明の化合物は薬理学的活性を示し、したがって医薬として有用である。例えば本発明の化合物はカリクレイン−7活性を阻害することが見出される。
本発明の化合物は次のアッセイで測定したとき、1nM〜10μMのIC50値を有する:
物質およびバッファー
蛍光消光基質Ac−Glu−Asp(EDANS)−Lys−Pro−Ile−Leu−Phe^Arg−Leu−Gly−Lys(DABCYL)−Glu−NH(ここで、^はMS分析で同定した解離しやすい結合を示す)をBiosyntan(Berlin, Germany)から購入し、DMSO中5mM原液として20℃で保った。他の全ての化学物質は分析グレードである。
150mMのNaClおよび0.05%(w/v)のCHAPSを含む50mMのクエン酸ナトリウムバッファー pH5.6中で酵素反応を実施する。
全タンパク質およびペプチドを含む溶液はシリコン化試験管(Life Systems Design, Merenschwand, Switzerland)中で取り扱う。化合物溶液ならびに酵素と基質の溶液をCyBi-Well 96チャンネルピペッター(CyBio AG, Jena, Germany)によって384ウェルプレート(黒色、Cliniplate;カタログ番号95040020、Labsystems Oy, Finland)に移す。
【0111】
FI測定のための装置
蛍光強度(FI)測定のために、Ultra Evolution リーダー(TECAN, Maennedorf, Switzerland)を用いる。該装置は、蛍光励起および放出捕捉のためのそれぞれ350nm(20nmのバンド幅)および500nm(25nmのバンド幅)バンド通過フィルターの組合せを備えている。シグナル:バックグラウンド比を増加させるため、適切なダイクロイックミラーを使用する。光学フィルターおよびダイクロイックミラーはTECANから購入する。各ウェルのフルオロフォアは、3フラッシュ/測定で励起する。
【0112】
IC50値の測定
IC50値の測定のため、アッセイを室温で、384ウェルプレート中で実施する。総最終アッセイ体積は30μlであった。試験化合物を90%(v/v)のDMSO/水に溶解させ、水(0.05%(w/v)のCHAPS)で所望のアッセイ濃度の3倍に希釈した。11種類の最終化合物濃度は:0.3nM、1nM、3nM、10nM、30nM、100nM、300nM、1μM、3μM、10μMおよび30μMである。それぞれのアッセイについて、10μlの水/CHAPS(±試験化合物)、次いで10μlのプロテアーゼ溶液(1.5xアッセイバッファーで希釈)をウェル毎に加える。最終アッセイ溶液のプロテアーゼ濃度は0.2nM(Bradford法によって測定した酵素濃度による)である。室温で1時間インキュベートした後、10μlの基質溶液(1.5xアッセイバッファーに溶解させた基質、最終濃度は2μMである)を加えて反応を開始させる。酵素活性に対する化合物の効果は、線形プログレス曲線から得られ、基質の添加直後に得た最初のもの(t=0分)と1時間後の第二のもの(t=60分)の2つの読み取りから決定する。IC50値は非線形回帰分析ソフトウェア(XLfit, Vers. 4.0; ID Business Solution Ltd., Guildford, Surrey, UK)を用いて阻害率対阻害剤濃度のプロットから計算する。
【0113】
表8
【表12】

【0114】
さらに、本環状デプシペプチドはヒトキモトリプシンおよびヒト好中球エラスターゼをそれぞれ0.001μM〜0.02μMおよび0.01μM〜0.07μMのIC50で阻害した。
式(VIII)の環状デプシペプチドの生物学的活性はカリクレイン7で測定した。本発明の環状デプシペプチドは、3nM未満のIC50でヒトカリクレイン7を阻害する。この環状デプシペプチドはヒトキモトリプシンおよびヒト好中球エラスターゼをそれぞれ約0.004μMおよび約0.0025μMのIC50で阻害した。
【0115】
実施例4: 本発明の環状デプシペプチドの誘導体化
式(II)の環状デプシペプチド(20mg)とトリエチルシラン(0.027mL)のジクロロメタン/アセトニトリル(1:1、2mL)溶液に、−50℃で三フッ化ホウ素エーテル(0.014mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を−5℃まで温め、この温度でさらに30分間保ち、飽和NaHCO溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させて、溶媒を真空下で除去した。HPLC(XTerra[5cm];アセトニトリル/炭酸アンモニウムバッファーpH10グラジエント)で得られた残渣を精製して、Ahpが3−アミノ−2−ピペリドンに変換された式(II)の環状ペプチド誘導体(9.8mg)を得た。
【0116】
実施例5: 本発明の環状デプシペプチドの誘導体化
式(II)の環状デプシペプチド(75mg、0.081mmol)の1−PrOH(5mL)溶液に硫酸(30μL)を加え、反応混合物をrtで48時間撹拌した。後処理のために反応混合物を塩化メチレンで希釈し、飽和ビカルボネート溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(cHex/EtOAc(1:1)+10%のMeOH)で精製した。収率:Ahpが1−プロピル−ケタール−Ahpに変換された式(II)の環状デプシペプチド誘導体(65mg(83%))。
【0117】
実施例6: 本発明の環状デプシペプチドの誘導体化
式(II)の環状デプシペプチド(75mg、0.081mmol)の1−オクチルOH(5mL)溶液に、硫酸(30μL)を加え、反応混合物をrtで48時間撹拌した。後処理のために反応混合物を塩化メチレンで希釈し、飽和ビカルボネート溶液で洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(cHex/EtOAc(1:1)+10%のMeOH)で精製した。収率:Ahpが1−オクチル−ケタール−Ahpに変換された式(II)の環状デプシペプチド誘導体(52mg(62%))。
【0118】
実施例7: 本発明の環状デプシペプチドの誘導体化
式(II)の環状デプシペプチド(25mg、0.027mmol)のジクロロメタン(MC)(2mL)溶液を0℃に冷却した。次いでDIEAおよびトリフルオロ酢酸無水物(TFAA)を加えた。反応混合物を室温までゆっくりと温め、さらに4時間撹拌した。後処理のために反応混合物をMCで希釈し、塩酸および飽和ビカルボネート溶液で洗浄した。硫酸ナトリウムで乾燥させた後、溶媒を除去し、得られた残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(cHex/EtOAc(1:1)+10%のMeOH)で精製した。収率:A1のアミドがニトリルに変換された式(II)の環状デプシペプチド誘導体(14mg(57%))。
【0119】
実施例8: 本発明の環状デプシペプチドの誘導体化
式(II)環状デプシペプチド(1g)のジクロロメタン/アセトニトリル(1:1、300mL)溶液に、−50℃で三フッ化ホウ素エーテル(0.68mL)をゆっくりと加えた。反応混合物を−20℃まで温めた。さらなる三フッ化ホウ素エーテル(0.68mL)をゆっくりと加え、出発物質が観察されなくなるまで(HPLC)該反応混合物をこの温度で保った。次いで、反応混合物を飽和NaHCO溶液に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥させ、溶媒を真空下で除去して、Ahpが3−アミノ−3,4−ジヒドロ−1H−ピリジン−2−オンに変換された式(II)の環状デプシペプチド誘導体を得た。
該粗物質を2−プロパノール(400mL)に溶解させ、Pd/C(10%、115mg)を加え、出発物質が消費されるまで(HPLC)混合物を大気圧下で水素化した。得られた残渣をクロマトグラフィー(SiO;cHex/EtOAc(1:1)+10%のMeOH)で精製して、Ahpが3−アミノ−2−ピペリドンに変換された式(II)の環状デプシペプチド(684mg)を得た。
【0120】
参考文献
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【特許請求の範囲】
【請求項1】
カリクレイン7依存性疾患の処置用医薬として使用するための、式(I):
【化1】

〔式中、A7のカルボキシ基とA2のヒドロキシ基の間にエステル結合が見られ、
XおよびAはそれぞれ独立して任意的に存在しており、
Xは何れかの化学残基であり、
は標準アミノ酸であり、
はスレオニン、セリンまたは5−メチルヒドロキシプロリンであり、
は非塩基性標準アミノ酸または非塩基性非標準アミノ酸、またはその非塩基性誘導体であり、
はAhp、デヒドロ−AHP、プロリンまたはその誘導体であり、
はイソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、プロリン、スレオニンまたはバリンであり、
はアラニン、フェニルアラニン、トリプトファン、チロシンまたはその誘導体であり、
はロイシン、イソロイシンまたはバリンであり、
ここでA5とA6間のアミド結合の窒素原子はメチルで置換されていてもよい〕
の構造を有する環状デプシペプチドまたはその誘導体、または環状デプシペプチドもしくはその誘導体の薬学的に許容される塩。
【請求項2】
カリクレイン7依存性疾患がネザートン症候群、掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、膿疱性乾癬およびがん、特に卵巣がんから成る群から選択される、請求項1の環状デプシペプチドまたはその誘導体。
【請求項3】
XがHまたはアシル残基である、請求項1または2の環状デプシペプチドまたはその誘導体。
【請求項4】
XがCHCHCH(CH)CO、(CHCHCHCOまたは(CHCHCOである、請求項1〜3の何れかの環状デプシペプチドまたはその誘導体。
【請求項5】
ネザートン症候群、掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、膿疱性乾癬およびがん、特に卵巣がんを有する対象を処置する方法であって、当該対象に治療上有効量の請求項1〜4の何れかの環状デプシペプチドまたはその誘導体を投与することを含む方法。
【請求項6】
カリクレイン7依存性疾患の処置用医薬の製造のための、治療上有効量の請求項1〜4の何れかの環状デプシペプチドまたはその誘導体の使用。
【請求項7】
カリクレイン7依存性疾患がネザートン症候群、掻痒性皮膚疾患、例えば結節性痒疹、膿疱性乾癬およびがん、特に卵巣がんから成る群から選択される、請求項6の使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2010−536732(P2010−536732A)
【公表日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520587(P2010−520587)
【出願日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際出願番号】PCT/EP2008/060693
【国際公開番号】WO2009/024528
【国際公開日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】