説明

カルシウム含有乳組成物の製造方法

【課題】沈殿が生じ難いカルシウム強化乳組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】カゼインを含有する乳類と、乳カルシウム剤を含む乳カルシウム剤液とを混合した後に、ナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)で濃縮する工程を有するカルシウム強化乳組成物の製造方法。乳カルシウム剤が、乳清蛋白質、乳糖、および乳カルシウムを含有し、全固形分に対する乳清蛋白質の含有量が5〜70質量%、カルシウム含有量が3〜15質量%であるカルシウム強化乳組成物の製造方法。乳カルシウム剤が、ホエイを限外濾過膜(UF膜)処理またはナノフィルトレーション膜(NF膜)処理して得られる透過液のpHを6.0〜9.0に調整することにより乳カルシウムを沈殿させ、該乳カルシウムと乳蛋白質とを混合して得られる乳カルシウム剤であるカルシウム強化乳組成物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はカルシウム含有乳組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
乳中に含まれるカルシウムは、吸収性が良く、良質のカルシウム供給源として注目されている。しかし、乳からカルシウムを単に分離精製すると、不溶性のリン酸カルシウムとなるため、飲料に配合する際に分散性の悪さが問題となる。
これに対して、特許文献1には、分散性の良い乳カルシウム剤を製造する方法として、乳酸および乳酸イオンを含有する、ホエイを、UF膜又はNF膜処理して透過液を得、該透過液のpHを調整することにより乳カルシウムを沈殿させ、この乳カルシウムを乳蛋白質と混合したものを乳カルシウム剤とする方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−299281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、上記の製造方法で得られた乳カルシウム剤を水に分散させたときに、良好な分散性が得られることが確認されているが、本発明者等の知見によれば、該乳カルシウム剤を乳類に配合すると沈殿が生じてしまう場合がある。
【0005】
本発明は前記事情に鑑みてなされたもので、乳類に乳カルシウム剤を配合してカルシウム強化乳組成物を製造する方法であって、沈殿が生じ難い製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等が鋭意研究した結果、カルシウム強化乳組成物を調製する際に、得ようとする組成よりも低濃度の状態で乳類と乳カルシウム剤とを混合した後、該混合物を濃縮して所望の組成とすることにより、かかる濃縮工程を経ないで同じ組成に調製する場合に比べて沈殿が生じ難いことを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明のカルシウム強化乳組成物の製造方法は、カゼインを含有する乳類と、乳カルシウム剤を含む乳カルシウム剤液とを混合した後に、ナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)で濃縮する工程を有することを特徴とするカルシウム強化乳組成物の製造方法。
【0007】
前記乳カルシウム剤が、乳清蛋白質、乳糖、および乳カルシウムを含有し、全固形分に対する乳清蛋白質の含有量が5〜70質量%、カルシウム含有量が3〜15質量%であることが好ましい。
【0008】
前記乳カルシウム剤が、ホエイを限外濾過膜(UF膜)処理またはナノフィルトレーション膜(NF膜)処理して得られる透過液のpHを6.0〜9.0に調整することにより乳カルシウムを沈殿させ、該乳カルシウムと乳蛋白質とを混合して得られる乳カルシウム剤であることが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、乳類に乳カルシウム剤を配合してカルシウム強化乳組成物を製造する際に、沈殿を生じ難くすることができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のカルシウム強化乳組成物の製造方法は、乳類と乳カルシウム剤とを混合し、得られた混合物をナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)で濃縮する工程を有する。
【0011】
<乳類>
本発明において、乳カルシウム剤と混合する乳類は、少なくともカゼインを含有する。乳類に乳カルシウム剤を配合したときに沈殿が生じる問題は、乳類がカゼインを含む場合に起こりやすいと考えられ、かかる場合に本発明の効果が充分に発揮される。
乳類中のカゼイン含有量は、乳カルシウム剤と混合する直前において、0.57質量%以下が好ましく、0.43質量%以下がより好ましい。該カゼイン含有量が0.57質量%以下であると、乳カルシウム剤と混合した混合液および該混合液を濃縮した組成物において沈殿が生じ難い。かかるカゼイン含有量を達成するために、必要に応じて乳類を希釈する。
乳カルシウム剤と混合する直前の乳類におけるカゼイン含有量の下限値は特に限定されないが、本発明による効果が充分に得られやすい点からは0.01質量%以上が好ましく、0.14質量%以上がより好ましい。
【0012】
一方、濃縮工程を経て最終的に得られるカルシウム強化乳組成物におけるカゼイン含有量は1.43質量%以上が好ましく、2.29質量%以上がより好ましい。該カゼイン含有量が1.43質量%以上のカルシウム強化乳組成物は、濃縮工程を経ずに乳類と乳カルシウム剤とを混合する従来の方法で得ようとすると、沈殿が生じやすいため、本発明の効果が大きい。
該濃縮工程後のカルシウム強化乳組成物におけるカゼイン含有量の上限値は特に限定されないが、風味の点からは4.29質量%以下が好ましく、2.86質量%以下がより好ましい。
【0013】
乳類中の無脂乳固形分の含有量は、上記カゼイン含有量の好ましい範囲が得られる範囲であればよく、特に限定されない。例えば、乳カルシウム剤と混合する直前の乳類における無脂乳固形分含有量は、0.03〜2質量%が好ましく、0.5〜1.5質量%がより好ましい。また濃縮工程を経て最終的に得られるカルシウム強化乳組成物における無脂乳固形分含有量は5〜15質量%が好ましく、8〜10質量%がより好ましい。
【0014】
乳類の具体例としては、生乳、牛乳、無脂肪牛乳、低脂肪牛乳、成分調整牛乳、濃縮乳または脱脂濃縮乳を必要に応じて水で希釈した希釈液;全粉乳または脱脂粉乳の水溶液等が挙げられる。
乳類は1種でもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
【0015】
<乳カルシウム剤>
本発明において用いられる乳カルシウム剤は、乳由来のカルシウム、すなわち乳カルシウムを含有する組成物であり、カゼインを含まないものである。乳カルシウム剤は、乳カルシウムの他に、乳清蛋白質および乳糖を含むことが好ましい。
乳カルシウム剤におけるカルシウム含有量は、全固形分に対して3〜15質量%が好ましく、3〜10質量%がより好ましい。3質量%未満であるとカルシウム強化剤として不適当であり、15質量を超えるとカルシウムの分散性が悪くなる。
なお、本発明におけるカルシウム含有量は、ICP発光分光分析法により得られる値である。
【0016】
乳カルシウム剤における乳清蛋白質の含有量は、全固形分に対して5〜70質量%が好ましく、8〜40質量%がより好ましい。5質量%未満であるとカルシウムの分散性が悪くなり、70質量%を超えると好ましくない風味が増大する。
乳カルシウム剤における乳糖の含有量は全固形分に対して15〜92質量%が好ましい。
【0017】
乳カルシウム、乳清蛋白質および乳糖を上記の好ましい範囲で含有する乳カルシウム剤は、ホエイを限外濾過膜(UF膜)処理またはナノフィルトレーション膜(NF膜)処理して透過液を得、該透過液のpHを6.0〜9.0に調整することにより乳カルシウムを沈殿させ、該乳カルシウムと乳蛋白質とを混合する方法で製造できる。
例えば、上記特許文献1に記載の製造方法で製造することができる。ただしホエイは、乳酸および乳酸イオンを含有するものに限られない。
すなわち、限外濾過膜(UF膜)処理またはナノフィルトレーション膜(NF膜)処理に供するホエイとしては、乳を乳酸発酵させた乳酸ホエイのほか、チーズホエイ、塩酸ホエイ等を用いることができる。また前記透過液のpHを6.0〜9.0に調整して乳カルシウムを沈殿させる工程における、該透過液の温度は30〜80℃が好ましい。乳カルシウムと乳蛋白質とを混合する工程においては、透過液中の沈殿を回収して得られるスラリー状の沈殿と、乳蛋白質を含有する水溶液とを混合することが好ましい。乳蛋白質として乳清蛋白質を用いることが好ましい。乳蛋白質を含有する水溶液は、乳清蛋白質および乳糖を含むものが好ましい。例えば、ホエイパウダーの水溶液、蛋白質濃縮ホエイパウダーの水溶液等が用いられる。
【0018】
本発明で用いられる乳カルシウム剤は、液体であっても、粉末等の固体であってもよいが、乳類と混合する際は、乳カルシウム剤を含む液状の乳カルシウム剤液とする。乳カルシウム剤が液体である場合は、そのまま乳カルシウム剤液として使用できるが、希釈して用いることが好ましい。乳カルシウム剤液は乳カルシウム剤の溶液でもよく、分散液でもよい。好ましくは乳カルシウム剤の水溶液が用いられる。
乳類と混合する直前の乳カルシウム剤液における、カルシウム含有量は、60mg/100g以下であることが好ましい。該カルシウム含有量が60mg/100g以下であると、乳類と乳カルシウム剤液を混合した混合液、および該混合液を濃縮した組成物において沈殿の生成が良好に抑えられる。
【0019】
また、濃縮工程を経て最終的に得られるカルシウム強化乳組成物におけるカルシウム含有量は、100mg/100g以上が好ましい。該カルシウム含有量が100mg/100g以上であるカルシウム強化乳組成物は、濃縮工程を経ずに乳類と乳カルシウム剤とを混合する従来の方法で得ようとすると沈殿が生じやすいため、本発明の効果が大きい。
【0020】
<混合工程>
乳類と乳カルシウム剤液との混合は、液温10℃以下で行うことが好ましい。
<濃縮工程>
乳類と乳カルシウム剤液との混合液の濃縮は、ナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)を用いて行う。NF膜またはRO膜を用いることにより、固形分の組成を変化させずに濃縮することができる。
該混合液の濃縮は、液温10℃以下で行うことが好ましい。
濃縮倍率は、混合直前の乳類および乳カルシウム剤液における各成分の好ましい含有量と、濃縮後のカルシウム強化乳組成物における各成分の好ましい含有量に応じて設定され、特に限定されない。例えば5〜10倍程度が好ましく、5〜7倍程度がより好ましい。
【0021】
本発明の製造方法にあっては、乳類と乳カルシウム剤を混合する際に、通常、混合だけで所望の組成が得られるように乳類と乳カルシウム剤を調製するところ、両者を希釈するなどして低濃度の状態に調製して混合した後、ナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)で濃縮して所望の組成にすることにより、沈殿が生じるのを防止できる。
かかる効果が得られる理由は明確ではないが、例えば特許文献1に記載されているような、水への分散性が改善された乳カルシウム剤であっても、乳類と混合すると沈殿を生じるのは、乳類中のカゼインとカルシウムとが反応して不溶性の反応物が生成するからであり、かかる反応は、カゼインおよびカルシウムの濃度が高い場合に生じ易いためと考えられる。
【実施例】
【0022】
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。以下において「%」は、特に断りのない限り「質量%」を意味する。
[調製例1:乳カルシウム剤の調製]
乳酸ホエイ300kgを分画分子量10kDaのUF膜(DK3840C:Desalination社製)で10倍まで濃縮し、透過液270kgを得た。次にこの透過液をRO膜で3倍に濃縮し、濃縮液85kgを得た。この濃縮液を50℃に昇温し、1N水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整した。1時間後、クラリファイヤーで処理して、沈殿4.4kgを回収した。このようにして得られた沈殿と乳清蛋白質濃縮物(組成;乳清蛋白質35%、乳糖55%、脂肪2%、灰分5%及び水分3%)の15質量%水溶液とを、全固形分当りのカルシウム量が5質量%となるように混合し、均質圧500kg/cmで均質処理した後、噴霧乾燥して乳カルシウム剤とした。得られた乳カルシウム剤における乳清蛋白質含有量は28.7%、カルシウム含有量は4.77%であった。
【0023】
[調製例2:乳カルシウム剤の調製]
チーズホエイ200kgを調製例1と同じUF膜で10倍まで濃縮し、透過液180kgを得た。次にこの透過液を50℃に昇温し、1N水酸化ナトリウムを添加してpH7.0に調整した。1時間後、クラリファイヤーで処理して、沈殿2.6kgを回収した。このようにして得られた沈殿と、調製例1と同じ乳清蛋白質濃縮物の15質量%水溶液とを、全固形分当りのカルシウム量が5質量%となるように混合し、均質圧500kg/cmで均質処理した後、噴霧乾燥して乳カルシウム剤とした。得られた乳カルシウム剤における乳清蛋白質含有量は28.7%、カルシウム含有量は4.77%であった。
【0024】
[試験例1:従来法]
濃縮工程を経ずに、所望の組成が得られるように乳類と乳カルシウム剤とを混合する従来の方法でカルシウム強化乳組成物を調製した。
乳類としては、脱脂粉乳の水溶液を用い、混合前の無脂乳固形分濃度が10質量%(カゼイン濃度2.86質量%)と20質量%(カゼイン濃度5.72質量%)の2種を用意した。乳カルシウム剤としては、調製例1で得られた乳カルシウム剤(カルシウム含有量4.77%)の水溶液を用い、混合前のカルシウム濃度が100、200、250、300、400、500、600(単位:mg/100g)の7種を用意した。
【0025】
表1に示す組み合わせで、脱脂粉乳の水溶液と、乳カルシウム剤の水溶液を、等量混合し、混合物(カルシウム強化乳組成物)中に生じた沈殿の量を測定した。該混合物中における、無脂乳固形分濃度、カルシウム濃度、および沈殿量を表1に示す。
混合は、10℃の脱脂粉乳水溶液をプロペラ式攪拌装置を用いて、60rpmで攪拌し、その中に10℃の乳カルシウム剤水溶液1kgを10ml/秒の速度で添加した。
沈殿量(単位:ml/30ml)の測定は、容量50mlの遠心管に30mlの混合物(カルシウム強化乳組成物)を入れ、遠心機(himac CT5DL、日立工機社製)を用いて、回転半径16.2cmで2000rpm、10分間の遠心分離を行い、遠心管の容量目盛により沈殿量を測定する方法で行った(以下、同様。)
【0026】
カルシウム強化乳組成物が飲料として用いられる場合、カルシウム強化乳組成物中の沈殿は、飲料をプレート式殺菌機で殺菌する際にプレートへの付着物の原因となりやすい。また飲料の保存中に沈殿が生成するのは好ましくない。これらの点からカルシウム強化乳組成物における沈殿量は、0.10ml/30ml以下が望ましい。沈殿量が0.10ml/30ml以下のものを「適」、これを超えるものを「否」と評価して表1に示す。
【0027】
【表1】

【0028】
[試験例2:本発明の製造方法]
得ようとする組成よりも低濃度の状態で乳類と乳カルシウム剤とを混合した後、該混合物を濃縮して所望の組成とする方法でカルシウム強化乳組成物を調製した。
混合前の乳類として、無脂乳固形分濃度が2質量%(カゼイン濃度0.57質量%)の脱脂粉乳水溶液を用意した。乳カルシウム剤としては、試験例1と同じ乳カルシウム剤の水溶液を用い、混合前のカルシウム濃度が40、50、60(単位:mg/100g)の3種を用意した。
該脱脂粉乳水溶液と3種の乳カルシウム剤水溶液を、それぞれ等量混合し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分濃度が1質量%(カゼイン濃度0.29質量%)で、乳カルシウム剤由来のカルシウム濃度が20、25、30(単位:mg/100g)の3種の混合物を得た。混合条件は試験例1と同様である。得られた混合物(濃縮前)中の沈殿量を試験例1と同様にして測定した。混合前における無脂乳固形分濃度およびカルシウム濃度を表2に示す。
【0029】
こうして得られた混合物を、NF膜を用い10倍、又は5倍に濃縮し、6種類のカルシウム強化乳組成物を得た。NF膜はNTR−7450HG(日東電工社製)を用い、10℃にて、入口圧力2.65MPa、出口圧力2.58MPaの条件で濃縮を行った。
得られたカルシウム強化乳組成物中の沈殿量を試験例1と同様にして測定した。濃縮後のカルシウム強化組成物中における、無脂乳固形分濃度、カルシウム濃度、および沈殿量を表2に示す。
【0030】
【表2】

【0031】
表1に示されるように、無脂乳固形分が10質量%(カゼイン濃度2.86質量%)または5質量%(カゼイン濃度1.43質量%)で、カルシウム濃度が100mg/100g以上であるカルシウム強化乳組成物を、従来法で製造すると沈殿量が多く、評価は「否」となる。
これに対して、表2に示されるように、無脂乳固形分が10質量%(カゼイン濃度2.86質量%)で、カルシウム濃度が200、250、300(mg/100g)であるカルシウム強化乳組成物、または無脂乳固形分が5質量%(カゼイン濃度1.43質量%)で、カルシウム濃度が100、125、150(mg/100g)であるカルシウム強化乳組成物であっても、本発明の方法で製造すると沈殿量はいずれも0.05ml/30mlであり、ほとんど沈殿は生じない。
また、表1の結果より、無脂乳固形分が10質量%または5質量%であっても、カルシウム濃度が50mg/100gであるカルシウム強化乳組成物は、従来法で製造しても沈殿量は少ないことがわかる。
【0032】
[実施例1]
無脂乳固形分濃度が2%(カゼイン濃度0.57質量%)となるように水に溶解した脱脂粉乳(森永乳業社製)の水溶液150kgと、調製例1で得られた乳カルシウム剤を、カルシウム濃度が60mg/100gとなるように水に溶解した乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、NF膜(製品名:NTR−7450HG、日東電工社製)で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が300mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量は0.05ml/30mlであった。
【0033】
[実施例2]
実施例1と同じ脱脂粉乳水溶液150kgと、調製例1で得られた乳カルシウム剤を、カルシウム濃度が40mg/100gとなるように水に溶解した乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、実施例1と同じNF膜で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が200mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量0.05ml/30mlであった。
【0034】
[実施例3]
無脂乳固形分濃度が2%(カゼイン濃度0.57質量%)となるように水で希釈した脱脂濃縮乳(森永乳業社製)の希釈液150kgと、実施例1と同じカルシウム濃度60mg/100gの乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、実施例1と同じNF膜で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が300mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。
濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量は0.05ml/30mlであった。
【0035】
[実施例4]
実施例1と同じ脱脂粉乳水溶液150kgと、実施例1と同じカルシウム濃度60mg/100gの乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、RO膜(製品名:NTR−759HG、日東電工社製)で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が300mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量は0.05ml/30mlであった。
【0036】
[実施例5]
実施例3と同じ脱脂濃縮乳の希釈液150kgと、実施例2と同じカルシウム濃度40mg/100gの乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、実施例1と同じNF膜で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が200mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量は0.05ml/30mlであった。
【0037】
[実施例6]
実施例1と同じ脱脂粉乳水溶液150kgと、実施例2と同じカルシウム濃度40mg/100gの乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、実施例4と同じRO膜で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が200mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物における沈殿量は0.05ml/30mlであった。
【0038】
[実施例7]
実施例1と同じ脱脂粉乳水溶液150kgと、調製例2で得られた乳カルシウム剤を、カルシウム濃度が60mg/100gに水に溶解した乳カルシウム剤水溶液150kgを混合した。混合後、実施例1と同じNF膜で10倍まで濃縮し、脱脂粉乳由来の無脂乳固形分が10%(カゼイン濃度2.86質量%)、乳カルシウム剤由来のカルシウム含有量が300mg/100gのカルシウム強化乳組成物を得た。濃縮後のカルシウム強化乳組成物の沈殿量は0.05ml/30mlであった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カゼインを含有する乳類と、乳カルシウム剤を含む乳カルシウム剤液とを混合した後に、ナノフィルトレーション膜(NF膜)または逆浸透膜(RO膜)で濃縮する工程を有することを特徴とするカルシウム強化乳組成物の製造方法。
【請求項2】
前記乳カルシウム剤が、乳清蛋白質、乳糖、および乳カルシウムを含有し、全固形分に対する乳清蛋白質の含有量が5〜70質量%、カルシウム含有量が3〜15質量%である、請求項1記載のカルシウム強化乳組成物の製造方法。
【請求項3】
前記乳カルシウム剤が、ホエイを限外濾過膜(UF膜)処理またはナノフィルトレーション膜(NF膜)処理して得られる透過液のpHを6.0〜9.0に調整することにより乳カルシウムを沈殿させ、該乳カルシウムと乳蛋白質とを混合して得られる乳カルシウム剤である、請求項2に記載のカルシウム強化乳組成物の製造方法。

【公開番号】特開2010−187595(P2010−187595A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35299(P2009−35299)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000006127)森永乳業株式会社 (269)
【Fターム(参考)】