説明

カレンダ装置

【課題】カレンダ装置の全長を抑える。
【解決手段】カレンダ装置10は、樹脂材料を練って押し出す押出ユニット3と、押し出された樹脂材料を加圧する第1のロールユニット5と、第1のロールユニット5からの樹脂材料を圧延する第2のロールユニット7と、第2のロールユニット7で圧延された樹脂材料を巻き取る巻取ロール11とを備える。第2のロールユニット7が第1のロールユニット5よりも前方側に位置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プラスチックやゴムなどの熱可塑性の樹脂材料から樹脂フィルムを成形するカレンダ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
カレンダ装置は、図1に示すように、連続混練機81、複数本(図1の例では5本)の圧延ロール83a、83b、83c、83d、83e、テイクオフロール85、複数本(図1の例では4本)の冷却ロール87a、87b、87c、87d、巻取ロール89などを備える。
連続混練機81には、溶融した樹脂材料が供給される。連続混練機81は、この樹脂材料を混練して第1および第2の圧延ロール83a、83b間へ供給する。その後、樹脂材料は、第1および第2の圧延ロール83a、83b間で圧延され、次いで、第2および第3の圧延ロール83b、83c間で圧延され、第3および第4の圧延ロール83c、83d間で圧延され、第4および第5の圧延ロール83d、83e間で圧延されて樹脂フィルムとなる。この樹脂フィルムは、テイクオフロール85により、第5のロール83eから引き離され、第1〜第4の冷却ロールへ87a、87b、87c、87dへ送られる。第1〜第4の冷却ロール87a、87b、87c、87dでは、その内部に流れる冷却媒体により、通過する樹脂フィルムを冷却する。このように冷却された樹脂フィルムは、巻取ロール89に巻き取られる。
【0003】
上述のようなカレンダ装置は、例えば下記の特許文献1、2に記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2781836号
【特許文献2】特許第3968879号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、図1のような構成では、複数の圧延ロール、テイクオフロール、複数の冷却ロール、巻取ロールが、ほぼ一列に配置されているので、カレンダ装置の全長が大きくなってしまう。例えば、カレンダ装置の全長が7〜9mにもなってしまう。
【0006】
そこで、本発明の目的は、カレンダ装置の全長を抑えることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明によると、樹脂材料から樹脂フィルムを成形するカレンダ装置であって、
樹脂材料を練って押し出す押出ユニットと、
押し出された樹脂材料を加圧する第1のロールユニットと、
第1のロールユニットからの樹脂材料を圧延する第2のロールユニットと、
第2のロールユニットで圧延された樹脂材料を巻き取る巻取ロールと、を備え、
第2のロールユニットが第1のロールユニットよりも前方側に位置し、
巻取ロールが第2のロールユニットよりも後方側に位置する、ことを特徴とするカレンダ装置が提供される。
【0008】
本発明の好ましい実施形態によると、前記押出ユニットは、樹脂材料が供給される材料供給口を有し、
前記押出ユニットは、前記第1のロールユニットの上方に配置され、
第1のロールユニットは、鉛直方向に関して、第2のロールユニットより上方側に位置し、
樹脂材料は、前記材料供給口に供給された後、押出ユニットで練られ、次いで、第1のロールユニットで加圧され、その後、第2のロールユニットで圧延され、樹脂フィルムとなって後方側に送られる。
【0009】
第1のロールユニットと第2のロールユニットとが、上下方向に部分的に重複してよい。
【0010】
本発明の好ましい実施形態によると、上述のカレンダ装置は、
第2のロールユニットから樹脂フィルムを引き離すテイクオフロールと、
内部を流れる冷媒により冷却され、テイクオフロールからの樹脂フィルムに接触することで該樹脂フィルムを冷却する複数の冷却ロールと、を備え、
テイクオフロールは、第2のロールユニットの後方側に設けられ、
複数の冷却ロールは、テイクオフロールの後方側において、上段側から下段側にわたって配置され、
前記巻取ロールは、複数の冷却ロールの後方側に設けられ、前記複数の冷却ロールを通過した樹脂フィルムを巻き取る。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によると、樹脂材料は、後方側から前方側へ送られUターンするように後方側に移動する過程で樹脂フィルムにされる。すなわち、樹脂材料は、第1のロールユニットで加圧され、次いで、第1のロールユニットより前方側に位置する第2のロールユニットで圧延され、樹脂フィルムとなり、その後、第2のロールユニットより後方側に位置する巻取ロールに巻き取られる。このように樹脂材料がUターンするように移動するので、カレンダ装置の全長(前後方向の寸法)を小さくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】従来のカレンダ装置の構成を示す。
【図2】本発明の実施形態によるカレンダ装置を示す。
【図3】図2のIII−III矢視断面図である。
【図4】(A)は、図2のIVA−IVA矢視図であり、(B)は(A)のB−B矢視図である。
【図5】圧延ロールに適用した誘導加熱式ロール装置の構成図である。
【図6】図5のVI−VI矢視断面図である。
【図7】カレンダ装置のフレーム構造を示す。
【図8】本発明のカレンダ装置の変形例を示す。
【図9】図8のIX−IX矢視図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の好ましい実施形態を図面に基づいて説明する。なお、各図において共通する部分には同一の符号を付し、重複した説明を省略する。
【0014】
図2は、本発明の実施形態によるカレンダ装置10の構成図である。カレンダ装置10は、プラスチックやゴムなどの樹脂材料から樹脂フィルムを成形する装置である。カレンダ装置10は、押出ユニット3、第1のロールユニット5、第2のロールユニット7、複数の冷却ロール9a、9b、9c、9d、および、巻取ロール11を備える。
【0015】
押出ユニット3(連続混練機)には、溶融した樹脂材料が供給される。押出ユニット3は、この樹脂材料を混練して第1のロールユニット5(図2の例では、圧延ロール5a、5b間)へ供給する。押出ユニット3は、樹脂材料が供給される材料供給口3aを有する。押出ユニット3は、材料供給口3aから供給された樹脂材料を、後方側から前方側へ送りながら混合しまたは練る。
このような押出ユニット3は、その内部空間に設けられたスクリュー3bにより、樹脂材料を、後方側から前方側へ送りながら練って混合するものであってよい。この場合、後方側(図2の左側)から前方側へ軸が延びているスクリュー3bが、自身の軸周りに回転することで、螺旋状のスクリュー3b(ネジ)を形成する螺旋溝の間を通って、樹脂材料が後方側から前方側へ送られる。
【0016】
第1のロールユニット5は、押出ユニット3に押し出された樹脂材料を加圧して圧延する。この例では、第1のロールユニット5は、自身の軸周りに回転駆動される圧延ロール5a、5bを有する。圧延ロール5a、5bの間に、樹脂材料が押出ユニット3から供給され、これにより、圧延ロール5a、5bの間で樹脂材料が加圧されて圧延される。
本実施形態では、第1のロールユニット5は、鉛直方向に関して、第2のロールユニット7より上方側に位置する。
【0017】
第2のロールユニット7は、第1のロールユニット5を通過した樹脂材料を圧延する。この例では、第2のロールユニット7は、自身の軸周りに回転駆動される圧延ロール7a、7b、7cを有する。圧延ロール7a、7b間には、第1のロールユニット5から樹脂材料が送られて来る。この樹脂材料が、圧延ロール7a、7b間で圧延され、次いで、圧延ロール7b、7c間で圧延される。第2のロールユニット7を通過した樹脂材料は、第1および第2のロールユニット5、7の圧延によりフィルム状になっている。本願において、フィルム状の樹脂材料を、樹脂フィルムという。
第2ロールユニット7は、第1ロールユニット5よりも前方側に位置する。図2では、第2のロールユニット7(すなわち、圧延ロール7a、7b、7cまたはこれらの付属物)は、第1のロールユニット5(すなわち、圧延ロール5a、5bまたはこれらの付属物)と上下方向(図2の上下方向)に部分的に重複するように配置される。
【0018】
テイクオフロール13は、自身の軸周りに回転自在であり、第2のロールユニット7から樹脂フィルムを引き離す。図2の例では、テイクオフロール13は、圧延ロール7cから樹脂フィルムを引き離す。
【0019】
複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dは、回転駆動され、内部を流れる冷媒により冷却される。各冷却ロール9a、9b、9c、9dが、テイクオフロール13からの樹脂フィルムに接触することで該樹脂フィルムを冷却する。複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dは、図2において、図2における上下方向に少なくとも部分的に重複するように配置されている。
【0020】
巻取ロール11は、自身の軸周りに回転駆動され、複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dからの樹脂フィルムを巻き取る。巻取ロール11は、第2のロールユニット7よりも後方側に位置する。
【0021】
本実施形態によると、押出ユニット3は、上段に配置され、押出ユニット3の材料供給口3aは上段の後方側に位置し、第1のロールユニット5は、上段の前方側に配置され、第2のロールユニット7は、下段の前方側に配置される。この配置により、上段の後方側で材料供給口3aに供給された樹脂材料は、前方側に移動する過程で押出ユニット3で練られ、次いで、上段の前方側に位置する第1のロールユニット5で圧延されて、その後、下段の前方側に位置する第2のロールユニット7で圧延され、樹脂フィルムになって後方側に送られる。
このように、樹脂材料は、後方側から前方側へ送られUターンするように後方側に移動する過程で樹脂フィルムにされるので、カレンダ装置10の全長を小さくすることができる。第1のロールユニット5と第2のロールユニット7とが、上下方向(図2の上下方向)に少なくとも部分的に重複することで、カレンダ装置10の全長を一層小さくできる。例えば、カレンダ装置10の全長を、2.5m程度にすることができる。
なお、本願において、前方側とは、巻取ロール11と第2のロールユニット7とを間隔をおいて配置する場合に、巻取ロール11と第2のロールユニット7との中間位置から見て、巻取ロール11と第2のロールユニット7のうち第2のロールユニット7の側を意味する。図2の例では、前方側とは、水平方向一方側(この図における左側)を意味する。一方、本願において、後方側とは、巻取ロール11と第2のロールユニット7とを間隔をおいて配置する場合に、巻取ロール11と第2のロールユニット7との中間位置から見て、巻取ロール11と第2のロールユニット7のうち巻取ロール11の側を意味する。図2の例では、後方側とは、水平方向他方側(この図における右側)を意味する。
【0022】
また、本実施形態によると、テイクオフロール13は、第2のロールユニット7の後方側に設けられ、複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dは、テイクオフロール13の後方側において、上段側から下段側にわたって配置され、巻取ロール11は、複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dの後方側に設けられている。この配置により、樹脂材料から成形された樹脂フィルムが、前方側から後方側に戻る過程で、当該樹脂フィルムに対し、第2のロールユニット7からの引き離し、冷却、および巻き取りを行うことができる。従って、テイクオフロール13、冷却ロール9a、9b、9c、9d、巻取ロール11を設けても、カレンダ装置10の全長を小さく抑えることができる。
【0023】
本実施形態によると、カレンダ装置10は、成形部15、エンボスユニット17、トリミングユニット19をさらに備えていてよい。
【0024】
成形部15は、押出ユニット3から押し出された樹脂材料を板状に成形する。図3は、図2のIII−III矢視断面図である。図2、図3のように、成形部15は、押出ユニット3から樹脂材料を受け入れる受入口15aと、受入口15aから下方に延びる第1部分15bと、第1部分15bの下端に結合される第2部分15cとを有する。受入口15aからの樹脂材料が、第1部分15bと第2部分15cの内部空間を通過する。第2部分15cの内部空間は、図3の左右方向には、第1部分15bの内部空間から拡大するが、図3の紙面と垂直な方向には、第1部分15bの内部空間から縮小する。これにより、成形部15内を通過する樹脂材料は、図3の紙面と垂直な方向に薄い板状にされる。
【0025】
エンボスユニット17は、回転駆動される1対のエンボスロール17a、17bからなる。エンボスロール17a、17bの少なくとも一方の外周面には、凹凸により模様が描かれている。従って、樹脂フィルムが1対のエンボスロール17a、17bの間を通過することで、エンボスロール17a、17bの前記模様が樹脂フィルムに転写される。
【0026】
トリミングユニット19は、1対のピンチロール19a、19bと、カッタ19cとからなる。1対のピンチロール19a、19bで樹脂フィルムを挟み込むことで、樹脂フィルムに張力を与える。この状態で、カッタ19cが樹脂フィルムに切り込むことで、樹脂フィルムの幅方向端部を切り落とし、これにより、樹脂フィルムの幅を短くする。
【0027】
本実施形態において、好ましくは、カレンダ装置10を小型化するために、以下の構成1、2を採用するのがよい。
【0028】
[構成1]
図4(A)は、図2のIVA−IVA矢視図である。図4(B)は、図4(A)のB−B矢視図である。図4のように、好ましくは、各圧延ロール5a、5bには、当該圧延ロールの軸方向に、当該圧延ロールを回転駆動するモータ21a、21bが直結されている。圧延ロール5aに直結されているモータ21aと、圧延ロール5bに直結されているモータ21bとは、互いに干渉しないように、これら圧延ロール5a、5bの軸方向において、圧延ロール5a、5bを基準に互いに反対側に位置している。
【0029】
これにより、ユニバーサルジョイントを用いなくても、各圧延ロール5a、5bを回転駆動することができるので、カレンダ装置10の幅(図2の紙面と垂直な方向における寸法)を抑えることができる。なお、圧延ロール5a、5bは、フレーム部61aに回転可能に支持されている。
【0030】
同様に、各圧延ロール7a、7b、7cには、当該圧延ロールの軸方向に、当該圧延ロールを回転駆動するモータが直結されている。圧延ロール7a、7cに直結されているモータと、圧延ロール7bに直結されているモータとは、これら圧延ロール7a、7b、7cの軸方向において、圧延ロール7a、7b、7cを基準に互いに反対側に位置している。
【0031】
[構成2]
図5は、圧延ロール5aに、誘導加熱式ロール装置を適用した場合を示す。図6は、図5のVI−VI矢視断面図である。以下では、簡単のため、圧延ロール5aの場合のみを説明するが、他の圧延ロール5b、7a、7b、7cにも、同様に、誘導加熱式ロール装置を適用してよい。
【0032】
誘導加熱式ロール装置は、圧延ロール5a、誘導加熱コイル25、冷媒供給装置27、温度センサ29、および制御装置31から構成される。
【0033】
誘導加熱コイル25は、圧延ロール5aの内部に設けられる。誘導加熱コイル25は、自身に交流電圧が印加されることにより、圧延ロール5aを誘導加熱する。図5の例では、誘導加熱コイル25は、圧延ロール5aの中心軸Caの周りに巻かれるように配置されている。回転側にある誘導加熱コイル25に、静止側から非接触で、電圧を供給するために、図5のように、回転トランス33が設けられる。回転トランス33は、静止側にあるステータコイル33aと回転側にあるロータコイル33bとを有し、ステータコイル33aとロータコイル33bとの間における磁界の作用により、静止側の電源34から誘導加熱コイル25に交流電圧を印加する。
なお、ロータコイル33bは、圧延ロール5aに結合されている円柱状の延長部35に設けられている。図5の例では、延長部35は、モータ21aと反対側に位置しており、圧延ロール5aより径が小さい。
また、誘導加熱コイル25は、例えば、次のように圧延ロール5a内に配置されてよい。圧延ロール5aを、その端部の分割面Pにおいて分割しておく。この分割面Pから環状の内部空間Sに誘導加熱コイル25を配置する。その後、分割されている圧延ロール部分の分割面P同士を適宜の手段で結合させる。
【0034】
冷媒供給装置27は、圧延ロール5aの内部に形成された冷媒流路37に、ミスト状の冷媒を供給することで、誘導加熱コイル25により誘導加熱された圧延ロール5aを冷却する。
【0035】
冷媒供給装置27は、図5の例では、エア源27a、冷媒源27b、ノズル部27cを有する。エア源27aは、ノズル部27cに、加圧されたエア(ガス)を供給する。冷媒源27bは、液体(好ましくは、水)である冷媒をノズル部27cに供給する。ノズル部27cは、供給された冷媒を、供給された加圧エアにより、冷媒流路37側に(図5の例では連通路36に)噴霧することで、ミスト状の冷媒を冷媒流路37に供給する。図5の例では、ノズル部27cは、延長部35の内部に形成されている連通路36を介して、ミスト状の冷媒を冷媒流路37に供給する。これにより、冷媒流路37には、ミスト状の冷媒が供給される。冷媒流路37に供給されたミスト状の冷媒は、冷媒流路37を通過することで圧延ロール5aを冷却し、その後、圧延ロール5aおよび延長部35の内部に形成された排出流路39を通って圧延ロール5a外へ排出される。排出流路39は、冷却流路37と連通している。
【0036】
冷媒流路37は、この例では、図6のように、圧延ロール5aの軸方向から見た形状が円弧状であり、周方向に間隔を置いた4つの円弧状流路として形成されている。各円弧状流路は、圧延ロール5aの軸方向に延びている。各円弧状流路には、連通路36からミスト状の冷媒が供給され、当該冷媒は、圧延ロール5aの軸方向に各円弧状流路を流れた後、排出流路39へ流入する。排出流路39は、図5の例では、冷媒流路37よりも中心軸Ca側に位置して、圧延ロール5aの軸方向に延びている。
【0037】
ノズル部27cは、圧延ロール5aに結合されている円柱状の延長部35の内部に空間として形成されている。ノズル部27cには、エア源27aから、エア供給管41、エア供給路43、およびエア導入路45を介して加圧エアが供給される。エア供給管41は、エア源27aから延びて、エア源27aからの加圧エアをエア供給路43に供給する。エア供給路43は、延長部35を回転可能に支持する静止側部材44の内部に形成されており、供給された加圧エアをエア導入路45に供給する。エア導入路45は、延長部35の内部において圧延ロール5aの軸方向から見て環状に形成され、延長部35の外周面に開口することで、エア供給路43からの加圧エアを受ける。エア導入路45は、エア供給路43から受けた加圧ガスをノズル部27cに導入する。
なお、図5において、延長部35の外周面には、軸方向から見た形状が環状のシールリング47が複数設けられる。シールリング47により、エア供給路43とエア導入路45との連通箇所から外部へ加圧エアが漏れることを防止する。
【0038】
同様に、ノズル部27cには、冷媒源27bから、冷媒供給管49、冷媒供給路51、および冷媒導入路53を介して液体状の冷媒が供給される。冷媒供給管49は、冷媒源27bから延びて、冷媒源27bからの冷媒を冷媒供給路51に供給する。冷媒供給路51は、静止側部材44の内部に形成されており、供給された冷媒を冷媒導入路53に供給する。冷媒導入路53は、延長部35の内部において圧延ロール5aの軸方向から見て環状に形成され、延長部35の外周面に開口することで、冷媒供給路51からの冷媒を受ける。冷媒導入路53は、冷媒供給路51から受けた冷媒をノズル部27cに導入する。
なお、図5において、延長部35の外周面には、軸方向から見た形状が環状のシールリング47が設けられる。シールリング47により、冷媒供給路51と冷媒導入路53との連通箇所から外部へ冷媒が漏れることを防止する。
【0039】
温度センサ29は、圧延ロール5aの温度を検出する。温度センサ29は、図5の例では、圧延ロール5aに組み込まれている。回転側にある温度センサ29から、静止側の制御装置31に、温度検出信号(電圧信号)を、非接触で伝達するために、図5のように回転トランス55が設けられる。回転トランス55は、静止側にあるステータコイル55aと回転側にあるロータコイル55bとを有し、ステータコイル55aとロータコイル55bとの間における磁界の作用により、回転側の温度センサ29から静止側の制御装置31に温度検出信号(電圧信号)を伝達する。
【0040】
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度に基づいて、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下になるように、冷媒供給装置27による冷媒流路37への冷媒供給を制御する。制御装置31は、冷媒供給装置27による冷媒流路37への冷媒供給の制御を、流量調節弁57、59の開度を制御することで行ってよい。流量調節弁57は、冷媒供給管49に設けられたものであり、流量調節弁59は、エア供給管41に設けられたものである。
【0041】
制御装置31は、上述の制御を、例えば、次の制御方法A1、A2またはA3のように行うことができる。
【0042】
(制御方法A1)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度が設定上限温度に達したら、冷媒供給装置27が冷媒流路37へ冷媒を供給するように冷媒供給装置27を制御する。この場合、制御装置31は、温度センサ29により検出された温度が設定上限温度に達したら、流量調節弁57、59を開くことで、冷媒供給装置27が冷媒流路37へミスト状の冷媒を供給するようにしてよい。これにより、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下に抑えられる。このような制御を行いながら、誘導加熱コイル25が、圧延ロール5aを誘導加熱してよい。
【0043】
(制御方法A2)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度と設定温度範囲(例えば、200℃〜250℃)とに基づいて、冷媒流路37に供給するミスト状の冷媒の量を調節する。これにより、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下に抑えられるとともに、圧延ロール5aの温度が、設定温度範囲内に維持される。この場合、制御装置31は、図4の例では、流量調節弁57の開度を調節することにより、冷媒流路37に供給するミスト状の冷媒の量を調節する。代わりに、制御装置31は、流量調節弁57の開度だけでなく流量調節弁59の開度も調節することにより、冷媒流路37に供給するミスト状の冷媒の量を調節してもよい。このような制御を行いながら、誘導加熱コイル25が、圧延ロール5aを誘導加熱してよい。
【0044】
(制御方法A3)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度と設定温度範囲とに基づいて、冷媒流路37に供給するミスト状の冷媒量を調節するだけでなく、供給電力調節部32を制御することで、誘導加熱コイル25に電源34から供給する電力量を調節してもよい。これにより、圧延ロール5aの温度を、設定温度範囲内により維持しやすくなる。この制御方法A3において、冷媒流路37に供給するミスト状の冷媒量の調節は、流量調節弁57の開度、または流量調節弁57、59の開度を調節することにより行う。
【0045】
上述の誘導加熱式ロール装置により、圧延ロール5aを加熱するための装置を、次のように従来と比較して小型にすることができる。
従来では、圧延ロールを加熱するために、油や軟水などの熱媒体を加熱して圧延ロールの内部に供給していた。この場合、圧延ロールの温度調節は、熱媒体を加熱する温調装置による当該加熱を調節することで行われていた。しかし、温調装置を設置する分だけ、カレンダ装置が大型化する。
これに対し、本実施形態では、温調装置を設けることなく、誘導加熱コイル25を圧延ロール5aの内部に設けたので、カレンダ装置を小型化することができる。
【0046】
なお、圧延ロール5aに、誘導加熱式ロール装置を適用することで、次の効果(1)〜(6)も得られる。
(1)従来では、カレンダ装置における圧延ロール5aの加熱に誘導加熱コイル25を用いていなかった。なぜなら、樹脂材料が、圧延ロール5aに圧延されることで発熱するが、誘導加熱コイル25には冷却機能がないので、圧延ロール5aの温度を設定温度範囲内に調節するのが困難であったためである。これに対し、本実施形態では、圧延ロール5aの温度調節を、冷媒の供給により可能とした。
(2)誘導加熱により、圧延ロール5aを急速に加熱することができる。例えば、従来の温調装置では、圧延ロール5aの温度を、40℃/hr程度でしか上昇させることができなかったが、本実施形態では、圧延ロール5aの温度を、200℃/hr程度で上昇させることができる。
(3)冷媒を、ミスト状にして圧延ロール5aの内部に供給すると、冷媒は、高温の圧延ロール5a内で蒸発しやすい。従って、圧延ロール5aの熱を、冷媒の気化熱に変換することができるので、圧延ロール5aを急速に冷却することができる。
(4)圧延ロール5aの熱を冷媒の気化熱に変換することで、少ない冷媒量で圧延ロール5aを冷却できる。その結果、冷媒の使用量を抑えることができる。
(5)空気を汚染しない誘導加熱コイル25で加熱し、空気を汚染する可能性の小さい少量の水を冷媒として用いることができるので、クリーンルームでもカレンダ装置を使用できる。
(6)図5では、圧延ロール5aの径方向において、誘導加熱コイル25は、圧延ロール5aの中心軸Ca側に位置し、冷媒流路37は、圧延ロール5aの外周面側に位置している。これにより、圧延ロール5aの外周面を、一層速やかに冷却することができる。
【0047】
(フレーム構造)
図7は、本実施形態によるとカレンダ装置10のフレーム構造を示す。図7において、各フレームを点線で概略図示している。
図7のようにカレンダ装置10は、第1のフレーム61と、第2のフレーム63とを備える。
【0048】
第1のフレーム61は、上段フレーム部61aと下段フレーム部61bとからなる。第1のフレーム61は、上段フレーム部61aと下段フレーム部61bとに分割可能であるのがよい。
上段フレーム部61aは、第1のロールユニット5の構成要素である。上段フレーム部61aは、圧延ロール5a、5bを回転可能に支持する。また、上段フレーム部61aには、押出ユニット3が取り付けられてよい。
下段フレーム部61bは、第2のロールユニット7の構成要素である。下段フレーム部61bは、圧延ロール7a、7b、7cを回転可能に支持する。
【0049】
第2のフレーム63は、下段フレーム部61bよりも後方側(図7の右側)の下段に設けられる。
第2のフレーム63には、テイクオフロールユニット65、冷却ロールユニット67、および巻取ロールユニット69、エンボスユニット17、およびトリミングユニット19が取り付けられている。
テイクオフロールユニット65は、テイクオフロール13と、テイクオフロール13を回転可能に支持するフレーム部65aとからなる。このフレーム部65aが、第2のフレーム63に取り付けられる。
冷却ロールユニット67は、複数の冷却ロール9a、9b、9c、9dと、これら冷却ロール9a、9b、9c、9dを回転可能に支持するフレーム部67aとからなる。このフレーム部67aが、第2のフレーム63に取り付けられる。
巻取ロールユニット69は、巻取ロール11と、巻取ロール11を回転可能に支持するフレーム部69aとからなる。このフレーム部69aが、第2のフレーム63に取り付けられる。
エンボスユニット17は、エンボスロール17a、17bを回転可能に支持するフレーム部17cを有する。このフレーム部17cが、第2のフレーム63に取り付けられる。
トリミングユニット19は、ピンチロール19a、19bを回転可能に支持するフレーム部19dを有する。フレーム部19dには、カッタ19cが取り付けられている。このフレーム部19dが、第2のフレーム63に取り付けられる。
各フレーム部65a、67a、69a、17c、19dは、第2のフレーム63に対し着脱可能であるのがよい。
【0050】
本発明は上述した実施の形態に限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、以下の変形例1、2、3を、任意に組み合わせて、または単独で採用してよい。
【0051】
[変形例1]
図8は、カレンダ装置10の変形例を示す。図9は、図8のIX−IX矢視図である。
第1のロールユニット5は、樹脂材料を圧延する代わりに、複数種類の樹脂からなる樹脂材料を練って混合してもよい。この場合、図8のように、上述の成形部15が省略され、第1のロールユニット5は、回転駆動される第1および第2の混合ロール5a、5bからなる。
各混合ロール5a、5bの外周面には、押出ユニット3から供給される樹脂材料が付着する。付着した樹脂材料は、混合ロール5a、5bの回転と共に回転しながら、混合ロール5a、5bの間を通過して混合ロール5a、5b間で加圧されて練られ、この過程で混合される。混合ロール5a、5bに付着している樹脂材料は、図9のように1対のカッタ71により、混合ロール5a、5bから切り出されて、第2のロールユニット7へ送られる。
【0052】
なお、図8の場合において、他の点は上述と同様である。例えば、以下のように上述と同様である。
混合ロール5a、5bに上述の構成1を採用してよい。すなわち、混合ロール5a、5bには、当該混合ロールの軸方向に、当該混合ロールを回転駆動するモータ21a、21bが直結されていてよい。混合ロール5aに直結されているモータ21aと、混合ロール5bに直結されているモータ21bとは、これら混合ロール5a、5bの軸方向において、混合ロール5a、5bを基準に互いに反対側に位置している。
また、混合ロール5a、5bの一方または両方に上述の構成2を採用してよい。すなわち、混合ロール5a、5bの一方または両方に、誘導加熱式ロール装置を適用してよい。
混合ロール5a、5bは、回転可能に上段フレーム部61aに支持されてよい。
【0053】
[変形例2]
冷媒供給装置27は、ミスト状の冷媒の代わりに、ミスト状でない液体の冷媒を冷媒流路37に供給することで、誘導加熱コイル25により誘導加熱された圧延ロール5aを冷却してもよい。この場合、図5において、エア源27a、エア供給管41、エア供給路43、エア導入路45、流量調節弁59が省略され、ノズル部27cは、連通路36に連通する単なる空間であってよい。
【0054】
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度に基づいて、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下になるように、冷媒供給装置27による冷媒流路37への液体冷媒供給を制御する。
制御装置31は、この制御を、例えば、次の制御方法B1、B2またはB3のように行ってよい。
【0055】
(制御方法B1)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度が設定上限温度に達したら、冷媒供給装置27が冷媒流路37へ液体の冷媒を供給するように冷媒供給装置27を制御する。この場合、制御装置31は、温度センサ29により検出された温度が設定上限温度に達したら、流量調節弁57を開くことで、冷媒供給装置27が冷媒流路37へ冷媒を供給してよい。これにより、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下に抑えられる。このような制御を行いながら、誘導加熱コイル25が、圧延ロール5aを誘導加熱してよい。
【0056】
(制御方法B2)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度と設定温度範囲(例えば、200℃〜250℃)とに基づいて、冷媒流路37に供給する液体の冷媒量を調節する。これにより、圧延ロール5aの温度が設定上限温度(例えば、250℃)以下に抑えられるとともに、圧延ロール5aの温度が、設定温度範囲内に維持される。この場合、制御装置31は、流量調節弁57の開度を調節することにより、冷媒流路37に供給する冷媒の量を調節する。このような制御を行いながら、誘導加熱コイル25が、圧延ロール5aを誘導加熱してよい。
【0057】
(制御方法B3)
制御装置31は、温度センサ29により検出された温度と設定温度範囲とに基づいて、冷媒流路37に供給する液体の冷媒量を調節するだけでなく、供給電力調節部32を制御することで、誘導加熱コイル25に電源34から供給する電力量を調節してもよい。これにより、圧延ロール5aの温度を、設定温度範囲内により維持しやすくなる。この制御方法B3において、冷媒流路37に供給する冷媒の量の調節は、流量調節弁57の開度を調節することにより行う。
【0058】
変形例2において、他の点は、上述と同じである。
【0059】
[変形例3]
第2のロールユニット7は、第1のロールユニット5よりも前方側に位置していれば、第2のロールユニット7と上下方向に部分的に重複していなくてもよい。
【符号の説明】
【0060】
3 押出ユニット、3a 材料供給口、3b スクリュー、5 第1のロールユニット、5a、5b 圧延ロールまたは混合ロール、7 第2のロールユニット、7a、7b、7c 圧延ロール、9a、9b、9c、9d 冷却ロール、10 カレンダ装置、11 巻取ロール、13 テイクオフロール


【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂材料から樹脂フィルムを成形するカレンダ装置であって、
樹脂材料を練って押し出す押出ユニットと、
押し出された樹脂材料を加圧する第1のロールユニットと、
第1のロールユニットからの樹脂材料を圧延する第2のロールユニットと、
第2のロールユニットで圧延された樹脂材料を巻き取る巻取ロールと、を備え、
第2のロールユニットが第1のロールユニットよりも前方側に位置し、
巻取ロールが第2のロールユニットよりも後方側に位置する、ことを特徴とするカレンダ装置。
【請求項2】
前記押出ユニットは、樹脂材料が供給される材料供給口を有し、
前記押出ユニットは、前記第1のロールユニットの上方に配置され、
第1のロールユニットは、鉛直方向に関して、第2のロールユニットより上方側に位置し、
樹脂材料は、前記材料供給口に供給された後、押出ユニットで練られ、次いで、第1のロールユニットで加圧され、その後、第2のロールユニットで圧延され、樹脂フィルムとなって後方側に送られる、ことを特徴とする請求項1に記載のカレンダ装置。
【請求項3】
第1のロールユニットと第2のロールユニットとが、上下方向に部分的に重複する、ことを特徴とする請求項2に記載のカレンダ装置。
【請求項4】
第2のロールユニットから樹脂フィルムを引き離すテイクオフロールと、
内部を流れる冷媒により冷却され、テイクオフロールからの樹脂フィルムに接触することで該樹脂フィルムを冷却する複数の冷却ロールと、を備え、
テイクオフロールは、第2のロールユニットの後方側に設けられ、
複数の冷却ロールは、テイクオフロールの後方側において、上段側から下段側にわたって配置され、
前記巻取ロールは、複数の冷却ロールの後方側に設けられ、前記複数の冷却ロールを通過した樹脂フィルムを巻き取る、ことを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のカレンダ装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2011−218731(P2011−218731A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−92493(P2010−92493)
【出願日】平成22年4月13日(2010.4.13)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【出願人】(000198329)株式会社IHI機械システム (27)
【Fターム(参考)】